特許第6851978号(P6851978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851978ミトコンドリアプロファイリングによるアルボシジブ応答の予測
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851978
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ミトコンドリアプロファイリングによるアルボシジブ応答の予測
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/453 20060101AFI20210322BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20210322BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20210322BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20210322BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
   A61K31/453ZMD
   A61K31/7068
   A61K31/136
   A61P43/00 111
   A61P35/02
   G01N33/48 M
   C12Q1/6813 Z
   !C07K14/47
【請求項の数】10
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2017-554864(P2017-554864)
(86)(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公表番号】特表2018-516245(P2018-516245A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】US2016028443
(87)【国際公開番号】WO2016172214
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】62/150,138
(32)【優先日】2015年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510055334
【氏名又は名称】スミトモ ダイニッポン ファーマ オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー, スティーブン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ベアス, デイビッド ジェイ.
【審査官】 原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/010094(WO,A1)
【文献】 Randomized Phase II Trial of Timed-Sequential Therapy (TST) with Flavopiridol (Alvocidib), Ara-C and Mitoxantrone (FLAM) Versus "7+3" for Adults Ages 70 Years and Under with Newly Diagnosed Acute Myeloid Leukemia (AML),Blood,2012年,120 (21),47
【文献】 WILLIAM E PIERCEALL; RYAN J LENA; BRUNO C MEDEIROS; ET AL,MCL-1 DEPENDENCE PREDICTS RESPONSE TO VORINOSTAT AND GEMTUZUMAB OZOGAMICIN IN ACUTE MYELOID LEUKEMIA,LEUKEMIA RESEARCH,米国,2014年 2月28日,VOL:38, NR:5,PAGE(S):564 - 568,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.leukres.2014.02.007
【文献】 BOSE P; GRANT S,MCL-1 AS A THERAPEUTIC TARGET IN ACUTE MYELOGENOUS LEUKEMIA (AML),LEUKEMIA RESEARCH REPORTS,英国,ELSEVIER LTD,2013年 1月22日,VOL:2, NR:1,PAGE(S):12 - 14,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.lrr.2012.11.006
【文献】 A subset of small cell lung cancer (SCLC) cell lines is Mcl-1-dependent and responds to cyclin-dependent kinase (cdk)9 inhibition in vitro and in vivo,Cancer Research,2012年,72(8) Supp. SUPPL. 1,Abstract2016
【文献】 SCIENCE,2011年,Vol. 334,pp. 1129-1133
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/453
A61K 31/136
A61K 31/7068
A61P 35/02
A61P 43/00
C12Q 1/6813
G01N 33/48
C07K 14/47
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MCL−1に依存する急性骨髄性白血病(AML)の哺乳動物を処置する方法において用いるための、アルボシジブを含む医薬組成物であって、シタラビンおよびミトキサントロンと併用され、前記哺乳動物が、MCL−1プライミングが少なくとも15%である骨髄細胞を有し、前記MCL−1プライミングが、前記哺乳動物の骨髄由来の細胞をMCL−1に選択的なBH3ペプチドで処理し、MCL−1プライミングに対応する、生じるミトコンドリアの脱分極の割合(%)の変化を決定することにより、決定されたものであり、BH3ペプチドがNOXAである、医薬組成物。
【請求項2】
MCL−1に依存する急性骨髄性白血病(AML)の哺乳動物を処置する方法において用いるための、アルボシジブを含む医薬組成物であって、シタラビンおよびミトキサントロンと併用され、前記方法が、
前記哺乳動物から複数の骨髄細胞を得ること、
前記骨髄細胞をMCL−1に選択的なBH3ペプチドで処理し、MCL−1プライミングに対応する、生じるミトコンドリアの脱分極の割合(%)の変化を決定することにより、前記骨髄細胞のMCL−1プライミングを決定すること、ここで、BH3ペプチドはNOXAである、および
前記骨髄細胞のMCL−1プライミングが少なくとも15%である場合に、前記哺乳動物に、アルボシジブ、シタラビンおよびミトキサントロンを投与すること、
を含む、医薬組成物。
【請求項3】
MCL−1プライミングの決定が、前記骨髄細胞を透過処理することを含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
AMLが抵抗性である、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
AMLが抵抗性である、または前記哺乳動物が再発した哺乳動物である、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記哺乳動物が、MCL−1プライミングが少なくとも20%である骨髄細胞を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記哺乳動物が、MCL−1プライミングが少なくとも25%である骨髄細胞を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記哺乳動物が、MCL−1プライミングが少なくとも30%である骨髄細胞を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記哺乳動物が、MCL−1プライミングが少なくとも35%である骨髄細胞を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記哺乳動物が、MCL−1プライミングが少なくとも40%である骨髄細胞を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2015年4月20日に出願された米国仮特許出願第62/150,138号の利益を主張し、この出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野
本開示は、アルボシジブを含むレジメンに応答する可能性の高い患者に、アルボシジブを含むレジメンを施すことによって、がんを処置する方法に一般的に関する。いくつかの実施態様において、本方法は、アルボシジブを含む処置レジメンに対する患者の応答を予測することを含む。
【0003】
背景
がんの標的治療と組み合わせる予測および予後バイオマーカーの使用は、薬剤の開発期間を減らし、薬剤の効能を改良し、および臨床的判断を導くための鍵を握り得る。がんの処置において進歩はあるが、化学療法の大部分は未だ非効率的で、効果のないままである。化学療法の性能が概して不十分である一つの理由は、選択される処置が大抵、個々の患者の疾患に厳密には合致しないことである。正確な診断と治療とを連結する個別化医療の手法は、この問題を緩和しうる。
【0004】
現在、臨床腫瘍学の診療の価値を高めてきたバイオマーカーはほんの一握りしかない。部分的には、これは感知マーカーが大抵、薬剤の機構に相関的であるが、因果関係はないためである。「バイオマーカー」の生物学がコンパニオン治療の薬理学と一致する場合でさえ、薬剤が患者にどのように作用するかを予測するには、未だ重要な課題がある。それ以上に、臨床開発へ進むには、検査の価値を理解し、それが患者に利益をもたらし得ると考える医者−科学者の関与が必要となる。
【0005】
抗アポトーシス性のBcl−2ファミリータンパク質は、化学療法に応答するがん細胞の重要な因子である。ミトコンドリアのアポトーシスの調節におけるこれらのタンパク質の機能性の測定は、処置に応答するがん患者に予測バイオマーカーを提供することを示してきた。多くの化学療法は有効であるためにアポトーシスに依存しており、いくつかの場合では、特異的な抗アポトーシスタンパク質によるアポトーシスの調節は、特定の治療に対する応答性と相関する。そして、特定のタンパク質の測定は、薬剤応答のためのバイオマーカーを提供する。したがって、治療薬に対して予期される応答を決定するバイオマーカーは非常に望まれ続けている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、一つの実施態様において、本開示は、がんの処置を必要とする患者のためのがんの処置方法を提供し、この方法は、
a)患者の骨髄から得られるがん細胞標本のBH3プロファイリングデータを要求すること、
b)がん細胞標本のNOXAプライミング(NOXA priming)が少なくとも15%である場合に、患者にアルボシジブを含む処置レジメンを施すこと、
を含む。
【0007】
別の実施態様において、本開示は、がんの処置を必要とする患者のためのがんの処置方法を提供し、この方法は、
a)患者の骨髄から得られたがん細胞標本のMCL−1発現データを要求すること、
b)がん細胞標本のMCL−1発現が正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合に、患者にアルボシジブを含む処置レジメンを施すこと、
を含む。
【0008】
さらに他の実施態様において、本開示は、アルボシジブを含む処置レジメンに患者が応答する可能性を決定する方法に関し、この方法は、
患者の骨髄からの透過処理されたがん細胞標本を一以上のBH3ドメインペプチドに接触させること、
標本のNOXAプライミングを決定すること、
標本のNOXAプライミングが少なくとも15%である場合に、その患者を処置レジメンに応答すると推定される者として分類すること、
を含む。
【0009】
他の関連する実施態様において、本開示は、アルボシジブを含む処置レジメンに患者が応答する可能性を決定する方法を提供し、この方法は、
患者の骨髄からのがん細胞標本のMCL−1発現を決定すること、
標本のMCL−1発現が正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合に、その患者を処置レジメンに応答すると推定される者として分類すること、
を含む。
【0010】
別の実施態様において、本発明は患者へのがん処置を選択する方法を提供し、これは、患者のがん細胞のBH3プロファイリングを用いて、アポトーシス促進タンパク質を捕捉する、MCL1およびBFL1タンパク質の機能を乱す物質への応答を決定し、患者の一以上の臨床学的因子を特定し、MCL1の機能を乱す一以上のがん処置に対する臨床応答の可能性によって患者を分類することを含む。
【0011】
いくつかの実施態様において、本明細書で示すように、患者のがん標本は骨髄穿刺液から精製されたがん細胞で構成される。BH3オンリータンパク質(only protein)であるNOXA、またはMCL1もしくはMCL1およびBFL1に選択的なBH3模倣物を含むペプチドを用いて決定されるように、がん細胞を、アポトーシス促進タンパク質Bim、Bid、BaxまたはBakに結合するMCL1またはMCL1およびBFL1を選択的に乱す薬剤に暴露する。
【0012】
いくつかの実施態様において、本明細書で示すように、骨髄穿刺液から精製されたがん細胞で構成される患者のがん標本からのBH3アッセイの読み出しと、末梢血からのBH3プロファイリングの読み出しとを比較する。この異なる読み出しは、異なる選択肢の処置に対する応答を予測する。さらに、患者の骨髄由来のAML細胞で行ったBH3プロファイリングはFLAM処置の予測を示したが、末梢血からのAML細胞のBH3プロファイリングでは、FLAM処置ではなく、7+3処置を予測する。
【0013】
いくつかの実施態様において、本明細書で示すように、様々な臨床学的因子(アポトーシスに関連しない、または関連することが知られていない臨床学的因子でさえ)を用いることで、BH3プロファイリングの予測力を向上し、その検査を単なる予後ではない、予測検査に変えることができる。
【0014】
いくつかの実施態様において、本明細書に記述される方法は、CDK−9を阻害する化合物に対する白血病患者の応答を予測する診断検査を提供する。いくつかの態様において、CDK−9阻害剤はフラボピリドール(アルボシジブ)である。追加の態様において、CDK−9阻害剤を、治療のレジメンの一部としての一以上の追加の化合物と共に投与してもよい。例えば、レジメンはara−Cおよびミトキサントロンと併用するアルボシジブ(FLAM)であってもよい。アッセイの変数の感度を向上するため、追加の変数を考慮してもよい。例えば、患者の細胞遺伝学的プロファイルまたは状態および/または年齢を予測アルゴリズムの因子としてもよい。いくつかの実施態様において、診断検査はMCL1の機能を測定することを含み、BH3ペプチドであるNoxaまたはMCL1/Bfl−1選択的BH3模倣化合物EU5346(D. Richard et al. Molecular Cancer Therapeutics, 2013における化合物9)に対するミトコンドリア膜電位の変化を測定することを含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、患者へのがん処置を決定する方法であって、患者の透過処理したがん細胞を一以上のBH3ドメインペプチドと接触させ、プライミングの程度を決定し、免疫組織化学および/または蛍光インサイチュ(in situ)ハイブリダイゼーション(FISH)によって、患者のがん細胞における一以上の臨床学的因子の有無を決定し、一以上のがん処置に対する臨床応答の可能性によって患者を分類することを含む、方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、アルボシジブまたはFLAM処置に応答するAML患者を決定する方法であって、骨髄から収集される患者のAMLがん細胞標本のBH3プロファイルを決定し、患者の一以上の臨床学的因子を決定し、ここで一以上の臨床学的因子は年齢のプロファイルおよび/または細胞遺伝学的な状態から選択され、一以上のがん処置に対する臨床応答の可能性によって患者を分類することを含む、方法を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、アルボシジブもしくはFLAM処置、またはシタラビンに基づく単独の処置に応答するAML患者を決定する方法であって、骨髄から収集された患者のAMLがん細胞標本のBH3プロファイルを決定し、患者の一以上の臨床学的因子を決定し、ここで一以上の臨床学的因子は年齢のプロファイルおよび/または細胞遺伝学的な状態から選択され、一以上のがん処置に対する臨床応答の可能性によって患者を分類することを含む、方法を提供する。次いで、この読み出しを末梢血標本からのBH3プロファイルの読み出しと比較する。具体的には、0.1PMのBim BH3ペプチドにおけるBH3プロファイルの読み出しは、アルボシジブなしのara−Cに基づく処置における予測を示した。
【0018】
別の態様において、本発明は、IL−6(インターロイキン−6)拮抗治療剤および/またはMCL1選択的BH3模倣物に応答するAML患者を決定する方法であって、骨髄から収集された患者のAMLがん細胞標本のBH3プロファイルを決定し、患者の一以上の臨床学的因子を決定し、ここで一以上の臨床学的因子は年齢のプロファイルおよび/または細胞遺伝学的な状態から選択され、一以上のがん処置に対する臨床応答の可能性によって患者を分類することを含む、方法を提供する。次いで、この読み出しを末梢血標本からのBH3プロファイルの読み出しと比較する。
【0019】
本発明の実施態様の詳細を添付の明細書に後述する。本明細書に記述される方法および材料に類似または相当する方法および材料を、本発明の実践または試験において使用できるが、ここでは説明のための方法および材料を記述する。本発明の他の特徴、目的および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかである。明細書および補正された特許請求の範囲において、単数形はまた、文中に明らかな他の指示がない限り、複数を含む。他に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術的および科学的用語は、本発明における当業者が一般的に理解するものと同じ意味を持つ。
【0020】
さらに、がん細胞のインビボ(in vivo)での状況は、MCL1タンパク質ががんの発症および維持に関与する程度およびMCL1標的治療の効率に影響を与える。具体的には、骨髄間質にある骨髄性白血病および骨髄腫細胞は、末梢血中に循環するそれらよりも、生存のためにMCL1により依存している。さらに、末梢血試料からのBIM BH3ペプチドは、ara−Cを伴うアントラサイクリン(7+3)に応答するAML患者に相関することが立証された。しかしながら、この読み出しおよび、末梢血の白血病細胞からのあらゆるBH3プロファイリングの読み出しのどちらも、FLAMまたは他のMCL1を阻害する治療に応答するAML患者を予測しない。
【0021】
BH3プロファイリングはそれのみで、治療に対する化学的感受性または化学的応答性の一般的な判断を与えることが知られている。しかしながら、ここで、MCL1タンパク質に注目する機構における固有な相関を識別することは、MCL1に影響を与える処置に応答する患者を予測する、独特で高感度な方法を提供する。しかしながら、これは、がん細胞を骨髄間質から単離する場合における特定のMCL1標的治療においてのみ当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1A−Eは、FLAMレジメンで処置した患者から得られた骨髄試料における、代表的なBH3プロファイリングデータを示す。この図は、AML患者からの高度と低度にプライミングされた芽細胞のパターンの差を示す。骨髄のNOXAプライミングのROC分析によって理想的だと同定されたカットオフは約10.7%であった。図1A−Cは、高いNOXAプライミングを示し、CRを経験した、各細胞遺伝学的リスクのカテゴリー(Fav:有益、adv:有害、int:中間)の例を示す。図1DおよびEは、処置が失敗した、低いNOXAプライミングを伴う、中間のリスクおよび有害なリスクを示す。
【0023】
図2図2A−Fは、FLAM処置された患者全ての標本の応答における、受信者操作特性(ROC)曲線分析によるBH3ペプチドの関連を示す。図2A、CおよびEは、細胞遺伝学的なリスク因子およびMDS病歴の臨床的変数を組み合わせた、BAD、BIM100およびPUMAの受信者操作特性(ROC)曲線分析を示す。図2B、DおよびFは、CRに到達しなかった患者と比較した、CRに到達した患者における、この測定基準の組合せ(combined metrics)からの各患者のデータ点を図示する、対応するドットプロット(dot plot)を示す。
【0024】
図3図3A−Cは、骨髄由来のFLAM処置された患者の標本における、応答に対するドットプロット相関分析による、Noxa BH3ペプチドの関連を示す。NOXAプライミング単独で、骨髄試料における予測価値を示す。図3A−Cは、全試料(A)および骨髄(B)または末梢血(C)由来の試料において測定されたNOXAプライミングを表すドットプロットを示す。骨髄から得られる試料は、CRとの有意な関連を示し、これは末梢血由来の試料では見られなかった。
【0025】
図4図4A−Dは、骨髄由来のFLAM処置された患者の標本における、応答に対する受信者操作特性(ROC)曲線分析による、Noxa BH3ペプチドの関連を示す。図4AおよびBは、全試料における、細胞遺伝学的なリスク因子およびMDS病歴の臨床的変数を組み合わせた、NOXAペプチドプライミングの受信者操作特性(ROC)曲線分析を示す。図4CおよびDは、末梢血からの試料を含まない、骨髄から取り出した試料における同様の分析を示す。細胞遺伝学的なリスク因子およびMDS病歴の追加は、検査の予測力を向上し、細胞遺伝学的なリスク因子およびMDS病歴を伴うBM NOXAプライミングにおいて、AUC値を0.92とした。
【0026】
図5図5A−Bは、BIM0.1およびNOXAプロファイリングの例を示す。
図6図6は、未処置のAML患者のがん治療を選択するためのアルゴリズムを同定する方法を示す。相対的なBIM0.1およびNOXAプロファイリングを比較することにより、患者をFLAM治療もしくは7+3治療に割り当てるか、またはどちらの治療にも適さないと同定できる。
【0027】
図7図7A−Bは、アルボシジブが、MV−4−11細胞において、発がん性のmRNAを用量および時間依存的に抑制することを示すデータである。
図8図8は、アルボシジブが、A549細胞において、発がん性のmRNAを用量依存的に抑制することを示すデータである。
【0028】
図9図9A−Bは、アルボシジブが、洗浄の工程を伴い(図9A)、および伴わずに(図9B)、MCL−1の発現を時間依存的に抑制することを示すゲルである。
図10図10A−Bは、アルボシジブが、MV−4−11細胞において、発がん性の重要なタンパク質を用量および時間依存的に抑制することを示す追加のゲルである。
【0029】
図11図11は、アルボシジブが、SK−N−AS細胞(固形腫瘍、神経芽細胞腫)において、N−Mycの発現を時間依存的に抑制することを示す。
図12図12は、アルボシジブが、A549細胞に反復投与のレジメンを用いると、発がん性のタンパク質の発現を時間依存的に抑制することを示す。
【0030】
図13図13A−Bは、アルボシジブが、Panc−1細胞において、洗浄の工程を伴う場合(図13A)、および伴わない場合に(図13B)、発がん性のタンパク質の発現を時間依存的に抑制することを示す。
図14図14は、アルボシジブが、Panc−1細胞に反復投与のレジメンを用いると、発がん性のタンパク質の発現を時間依存的に抑制することを示す。
【0031】
図15図15A−Bは、アルボシジブが、Yugen8細胞において、洗浄の工程を伴う場合(図15A)および伴わない場合に(図15B)、発がん性のタンパク質の発現を時間依存的に抑制することを示す。
図16図16は、アルボシジブが、Yung8細胞に反復投与のレジメンを用いると、発がん性のタンパク質の発現を時間依存的に抑制することを示す。
【0032】
図17図17A−Bは、アルボシジブが、ACM(またはFLAM)の組み合わせを用いると、MCL−1を抑制することを示す。処置の日程(図17A)および免疫ブロット法の結果(図17B)を示す。
【0033】
表1は、FLAM患者の研究を示す。患者全体の要約を表内に示し、これは各値において利用できるデータを有する全体数の上に各測定基準に陽性であった患者の数を含む。
表2は、FLAM処置された患者の分析を示す。表には得られた全試料を記載する。患者を、3つの異なるプロトコル(J0669、J0856およびJ1101)に登録し、患者の大部分は新たに診断されたAML患者であった。試料を、末梢血または骨髄穿刺液のいずれかから得た。診断時の年齢を計算した。細胞遺伝学的なリスク因子を、CALGBガイドラインを用いて決定した。細胞遺伝学、FLT−3およびNPM1の変異の状態、MDS病歴、化学療法歴、骨髄芽球率、白血球(WBC)数、処置ならびに応答を全て得た。灰色に網掛けされた試料は、BH3プライミングのアッセイが成功せず、その後の全ての分析から除外された(MRD:微小残存病変、TF:処置失敗、PR:部分応答、CR:完全寛解)。
【0034】
表3は、FLAM応答との臨床的特徴の関連を示す。臨床的変数の統計解析を、応答と比較して行った。それぞれの示された測定基準を、有意性について、順位和のマン・ホイットニー検定およびロジスティック回帰分析によって検定した。ROC曲線分析からAUC(曲線下面積)を得た。
【0035】
表4は、FLAM患者の研究におけるBH3プロファイリングデータを示す。BH3プロファイリングを、表2に記載される全ての患者の試料について行った。灰色に網掛けされた行は、処置中にBH3プロファイリングの判定基準を満たさなかった試料である。ダッシュ記号(−)を含む全てのセルは、示された試料において、それぞれのBH3ペプチドアッセイを行うのに十分な細胞を有さなかった。信号対雑音(Signal to noise)は、CCCP JC−1の平均蛍光強度(MFI)の読み取りに対するDMSO JC−1の赤色MFIの尺度である。細胞数および生存率を、トリパンブルー色素排除法を用いて手動の細胞計算によって決定した。芽球率は、透過処理された生細胞のCD45が弱く、CD3/CD20が陰性、およびSSCが低いものの百分率である。全てのBH3プロファイリングをこれらのゲート(gate)された芽細胞において行った。
【0036】
表5は、個々のBH3ペプチドプロファイルとCRとの関連を示す。BHペプチドの統計解析を応答に対して行い、CR試料を、全ての部分応答、微小残存病変および処置失敗(NR:不応答者)と比較した。それぞれの示された測定基準を、有意性について、順位和のマン・ホイットニー検定およびロジスティック回帰分析によって、検定した。ROC曲線分析からAUC(曲線下面積)を得た。
【0037】
表6は、FLAM研究における他の臨床的変数を含むBH3ペプチドプロファイリングの多変量解析を示す。BH3ペプチドの統計解析を応答に対して行い、CR試料をNR試料と比較した。変数の組み合わせをロジスティック回帰分析を用いて検定し、ロジスティック回帰モデルにおける係数および定数を決定し、次いでこれらの係数および定数を、順位和のマン・ホイットニー検定およびROC曲線分析によって、検定した。
【0038】
表7は、骨髄試料における、個々のBH3ペプチドプロファイルとCRとの関連を示す。BH3ペプチドの統計解析を、骨髄から得られたこれらの試料のみにおいて、表5でなされたように行った。それぞれの示された測定基準を、有意性において、順位和のマン・ホイットニー検定およびロジスティック回帰分析によって、検定した。ROC曲線分析からAUC(曲線下面積)を得た。この解析は、NOXAプライミングが、非応答者に比べて、処置に応答した患者において有意に高かったことを明らかにした。
【0039】
表8は、骨髄から得られた試料のみにおいて行った、BH3ペプチドの統計解析を示す。BH3ペプチドの統計解析を、骨髄から得られた試料のみにおいて、表6でなされたように行った。変数の組み合わせをロジスティック回帰分析を用いて検定し、ロジスティック回帰モデルにおける係数および定数を決定し、次いでこれらの係数および定数を順位和のマン・ホイットニー検定およびROC曲線分析によって、検定した。この解析は、BAD、BIM100およびPUMAの組み合わせもまた、骨髄試料単独での応答に関連することを示す。NOXAおよびこの3つのペプチドの読み出しはいずれも、細胞遺伝学的なリスク因子およびMDS病歴に付加的であり、結果としてより高い有意性およびAUC値をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、BH3プロファイリングアッセイの医学的有用性が、患者の骨髄穿刺液のみから収集されたがん細胞における応答を測定することによって、CDK−9阻害剤(例えば、アルボシジブ)単独または併用治療法などのCDK阻害剤に対する応答を予測するために実現され得るという発見に部分的に基づく。BH3プロファイリング測定の感度および/または特異度は、末梢血から収集された血液または末梢血試料および骨髄試料の組み合わせよりも、著しく向上する。同じ患者の末梢血試料と比べて、骨髄のみに由来する試料では、Noxaによって生成する信号の相関における著しい向上が生じ、0.445のp値が0.0007に向上することがわかった(表6および7)。臨床的変数、細胞遺伝学および年齢を分析の因子とすると、アッセイの感度は0.805(AUC)から0.91(AUC)に向上した。
【0041】
本明細書で記述される診断の手法は、MCL1を乱す治療に対する応答を予測する新規な手法を提供する。
一つの態様において、本発明は患者のがん処置を決定する方法であって、骨髄のみから収集された患者の腫瘍またはがん細胞標本におけるMCL1依存性の程度を決定し、患者の一以上の臨床学的因子を決定し、一以上のがん処置に対する臨床応答の可能性によって患者を分類することを含み、ここで一以上の臨床学的因子は、臨床応答との関連についての、MCL1に特異的なBH3プロファイリングの読み出しの特異度および感度を向上するように選択される、方法を提供する。
【0042】
別の実施態様において、本発明は患者のがん処置を決定する方法であって、患者の透過処理されたがん細胞をNoxa BH3ドメインペプチドと接触させ、プライミングの程度を決定し、免疫組織化学および/または蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)によって、患者のがん細胞における一以上の臨床学的因子の有無を決定し、一以上のがん処置に対する臨床応答の可能性によって患者を分類することを含む、方法を提供する。
【0043】
別の実施態様において、本発明は、シタラビンおよび/またはFLAMに応答するAML患者の応答を決定する方法であって、骨髄または末梢血由来の患者のAMLがん細胞標本におけるBH3プロファイルを決定し、これら2つのがん細胞源からの読み出しを比較し、その情報を、FLAMまたはシタラビンに基づく処置のいずれかを導くために用いることを含む、方法を提供する。
【0044】
様々な実施態様において、臨床学的因子は、年齢、細胞遺伝学的な状態、パフォーマンス(performance)、組織学的サブクラス、性別および病期の1つまたはそれ以上である。別の実施態様において、本方法はさらに、変異の状態、一塩基多型、定常状態のタンパク質レベルおよび動的なタンパク質のレベルから選択される追加のバイオマーカーの測定を含み、これは検定の特異度および/または感度をさらに上げることができる。別の実施態様において、本方法は患者の臨床応答を予測することをさらに含む。別の実施態様において、臨床応答は、少なくとも約1年、約2年、約3年または約5年の無憎悪/無再発生存期間である。
【0045】
ある実施態様において、プライミングは以下の数式で定義される:ここで、AUCは曲線下面積または信号強度のいずれかを含む;DMSOはベースラインの負の対照を含む;および、CCCP(カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン)は、ミトコンドリアの電子伝達鎖における電子伝達体が正常な活性である間に確立されるプロトン勾配の脱共役剤として働くことによるタンパク質合成のエフェクターを含み、これはベースラインの正の対照を含む。いくつかの実施態様において、曲線下面積は均一性時間分解蛍光法(homogenous time-resolved fluorescence; HTRF)によって確立される。いくつかの実施態様において、時間は約0から約300分の間から、約0から約30分の間までのウインドウにわたって生じる。いくつかの実施態様において、曲線下面積は蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting; FACS)によって確立される。いくつかの実施態様において、信号強度は約5分乃至約300分で生じる単一の時点での測定値である。
【数1】
【0046】
典型的な臨床決定
いくつかの実施態様において、本明細書で記述する方法は、患者の評価(例えば、診断、予後、および処置に対する応答の評価)において有用である。様々な実施態様において、本発明は腫瘍または血液がんを評価することを含む。様々な実施態様において、評価は、診断、予後、および処置に対する応答から選ばれ得る。
【0047】
診断とは、例えばがんなどの疾患または障害の可能性を決定または同定するために試みる方法を指す。予後とは、例えばがんなどの疾患または障害の起こりうる結果の予測を指す。完全な予後は、予期される期間、機能および疾患の経過の記述(進行性の衰弱、間欠的な発作または予測できない突然の発作など)をしばしば含む。処置に対する応答は、処置を受けた際の患者の医学的な結果の予測である。限定されない例として、処置に対する応答は、病理学的完全奏効、生存および無憎悪生存、無憎悪期間、再発の可能性であってもよい。
【0048】
様々な実施態様において、本方法は患者が特定の処置を受けるか否かに関する臨床決定を導く。一つの実施態様において、本方法は、ネオアジュバントおよび/またはアジュバント化学療法に対する正の応答、またはネオアジュバントおよび/またはアジュバント化学療法に応答しないことを予測する。一つの実施態様において、本方法は、アポトーシス促進剤またはアポトーシスを介して働く薬剤および/またはアポトーシスを介して働かない薬剤に対する正の応答、またはアポトーシスエフェクター薬剤および/またはアポトーシスを介して働かない薬剤に対して応答しないことを予測する。様々な実施態様において、本発明は、例えばどの種類の処置を施し、または控えるべきかなどを含む、がん患者の処置を導く。
【0049】
一つの実施態様において、本方法は、患者が、限定されないが単一単独のアジュバント療法を含む、一次の、主要な、または最初の処置の後に、アジュバント療法を受けるべきか否かに関する臨床決定を導く。アジュバント療法(アジュバントケアとも言われる)は、一次の、主要な、または最初の処置に加えて行われる処置である。限定されない例として、アジュバント療法は、全ての検出可能な疾患が除去されたが、潜在性疾患のため再発の統計的リスクが残っている外科手術の後に通常行われる追加の処置でもよい。
【0050】
いくつかの実施態様において、本発明はアジュバント療法を含む患者の処置を導く。例えば、特定の処置に応答すると評価される患者は、アジュバント療法としてそのような処置を受けてもよい。さらに本方法は、限定されない例として、アポトーシス促進の様式で誘導および/または作用する処置、またはそうでない処置として、アジュバント療法の同定を導きうる。一つの実施態様において、本方法は、患者が特定の処置に応答しない、またはあまり応答しないことを示すことができ、したがってそのような患者はアジュバント療法としてその処置を受けなくてもよい。したがって、いくつかの実施態様において、本方法は、患者の起こりうる応答に従ってアジュバント療法を施す、または控えることを提供する。このように、患者の生活の質および治療費を改善できる。
【0051】
いくつかの実施態様において、本方法は患者が特定のタイプの処置を受けるべきか否かに関する臨床決定を導く。したがって、いくつかの実施態様において、本方法は、患者の処置を導く検査である。
【0052】
いくつかの実施態様において、本方法は特定の処置に対して患者が起こし得る応答についての情報を提供する。いくつかの実施態様において、本方法は、高い応答可能性を提供し、積極的な処置を含む処置を導き得る。いくつかの実施態様において、本方法は、低い応答可能性を提供し、積極的な処置を含む処置の停止および緩和ケアの使用を導き、より良い生活の質のために、効果のない化学療法による必要のない毒性を避けることができる。
【0053】
典型的な実施態様において、本方法は特定の処置に対する応答の可能性を示す。例えば、いくつかの実施態様において、本方法は、アポトーシス促進剤および/またはアポトーシスを介して働く薬剤および/または直接のタンパク質の調節によって駆動するアポトーシスを介して働く薬剤に対する高いまたは低い応答可能性を示す。様々な実施態様において、典型的なアポトーシス促進剤および/またはアポトーシスを介して働く薬剤および/または直接のタンパク質の調節によって駆動するアポトーシスを介して働く薬剤は、ABT−263(ノビトクラックス)およびオバトクラックス、WEP、ボルテゾミブ、およびカルフィルゾミブを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、アポトーシスを介して働かない薬剤および/または直接のタンパク質の調節によって駆動するアポトーシスを介して働かない薬剤に対する高いまたは低い応答可能性を示す。様々な実施態様において、アポトーシスを介して働かない典型的な薬剤は、キネシンスピンドルタンパク質阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、三酸化ヒ素剤(TRISENOX)、MEK阻害剤、ポモリドミド、アザシチジン、デシチビン、ボリノスタット、エンチノスタット、ジナシクリブ、ゲムツズマブ、BTK阻害剤、PI3キナーゼデルタ阻害剤、レノリジミド、アントラサイクリン、シタラビン、メルファラン、Akt阻害剤、mTOR阻害剤を含む。
【0054】
代表的な実施態様において、本方法は、患者ががん処置のために、アポトーシス促進剤またはアポトーシスを介して働く薬剤を受けるべきか否かを示す。別の典型的な実施態様において、本方法は、患者がアポトーシスを介して働かない薬剤を受けるべきか否かを示す。
【0055】
特定の実施態様において、本方法は、本明細書に記述されるあらゆる処置(薬剤を含む)に対するがん患者の応答を予測するのに有用である。典型的な実施態様において、本発明はシタラビンおよびアザシチヂンに対するAML患者の応答の可能性を予測し、患者のBH3プロファイル、年齢プロファイルおよび細胞遺伝学的因子を評価することを含む。
【0056】
様々な実施態様において、本明細書に記述される方法に基づいて、がん処置を施し、または控える。典型的な処置は、外科的な切除、放射線療法(本明細書に記載される化合物の使用、または放射線増感剤との併用を含む)、化学療法、薬力学的療法、標的療法、免疫療法、および補助的療法(例えば、鎮痛剤、利尿剤、抗利尿剤、抗ウイルス剤、抗生物質、栄養サプリメント、貧血治療、血液凝固治療、骨治療、精神医学および心理学的治療)を含む。
【0057】
様々な他の実施態様において、本発明はがんの処置を必要とする患者のためのがん処置の方法に関し、この方法は、
a)患者の骨髄から得られたがん細胞標本のBH3プロファイリングデータを要求すること、
b)がん細胞標本のNOXAプライミングが少なくとも15%である場合に、患者にアルボシジブを含む処置レジメンを施すこと、
を含む。
上述のいくつかの実施態様において、がん細胞標本のNOXAプライミングが、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%または少なくとも40%である場合にのみ、処置レジメンを患者に施す。
【0058】
さらなる実施態様において、がん細胞標本のMCL−1発現も用いて、アルボシジブを含むレジメンの処置における患者の適合性を決定し、ここでこの方法はさらに、がん細胞標本から得られるMCL−1発現データを要求し、がん細胞標本のMCL−1発現が正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合にのみ、患者に処置レジメンを施すことを含む。さらなる実施態様において、がん細胞標本のMCL−1発現が、正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍または10倍である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す。
【0059】
さらなる他の実施態様において、患者の細胞遺伝学的なリスクが高い場合にのみ、患者に処置レジメンを施す。
先述のさらなる実施態様において、患者が骨髄異形成症候群(MDS)の既往歴を持つ場合にのみ、患者に処置レジメンを施す。
【0060】
先述のさらなる他の実施態様において、がん細胞標本を透過処理し、透過処理された細胞を一以上のBH3ドメインペプチドと接触させた際のミトコンドリア膜電位の変化を決定し、ミトコンドリア膜電位の損失を、アポトーシスを誘導する化学療法剤に対する細胞の化学的感受性と相関させることを含む方法から、BH3プロファイリングデータを得る。
【0061】
さらなる典型的な実施態様において、BH3ドメインペプチドはBIM、BIM2A、BAD、BID、HRK、PUMA、NOXA、BMF、BIK、PUMA2Aまたはそれらの組み合わせである。例えば、いくつかの実施態様において、BH3ドメインペプチドを、0.1μMから200μMの範囲の濃度で用いる。
【0062】
さらなる他の実施態様において、MCL−1発現を、アルボシジブを含むレジメンの処置についての患者の適合性を決定するための主要な指針として用いる。例えば、いくつかの実施態様において、本発明は患者に必要とされるがん処置のための方法を提供し、この方法は、
a)患者の骨髄から得られたがん細胞標本のMCL−1発現データを要求すること、
b)がん細胞標本のMCL−1発現が、正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合に、患者にアルボシジブを含む処置レジメンを施すこと、
を含む。いくつかの実施態様において、がん細胞は腫瘍細胞である。
【0063】
先述の他の実施態様において、がん細胞標本のMCL−1発現が、正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍または10倍である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す。
【0064】
さらなる実施態様において、MCL−1発現と共にNOXAプライミングを考慮し、この方法はさらに、がん細胞標本のBH3プロファイリングデータを要求し、腫瘍またはがん細胞標本のNOXAプライミングが、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%または少なくとも40%である場合にのみ、処置レジメンを施すことを含む。
【0065】
さらなる実施態様において、患者の細胞遺伝学的なリスクが高い場合にのみ、患者に処置レジメンを施す。他の実施態様において、患者が骨髄異形成症候群(MDS)の既往歴を持つ場合にのみ、患者に処置レジメンを施す。
【0066】
先述の任意の処置方法において、がんは血液がんである。例えば、いくつかの実施態様において、血液がんは、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫から選択される。いくつかの特定の実施態様において、血液がんは、急性骨髄性白血病(AML)である。
【0067】
先述のいくつかの他の実施態様において、血液がんは骨髄異形成症候群(MDS)である。先述の異なる実施態様において、血液がんは慢性リンパ性白血病(CLL)である。
【0068】
先述の他のあらゆる実施態様において、アルボシジブを含む処置レジメンは、アルボシジブ、シタラビンおよびミトキサントロン(FLAM)を含む。
先述のさらなる実施態様において、がん細胞標本は非固形腫瘍の生検(biopsy)由来である。例えば、いくつかの実施態様において、がん細胞標本は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫または非ホジキンリンパ腫の患者の生検由来である。
【0069】
さらなる他の実施態様において、がん細胞標本は、固体マトリックスまたはビーズに結合した抗CD138抗体による生検試料からの選定によって濃縮された、多発性骨髄腫の細胞である。例えば、いくつかの実施態様において、がん細胞標本は、CD45に対する抗体と結合することによって濃縮された急性骨髄性白血病細胞である。別の実施態様において、がん細胞標本は、非B細胞の除去(depletion)によって濃縮された慢性リンパ性白血病またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0070】
さらなる実施態様において、本発明は、アルボシジブを含む処置レジメンに患者が応答する可能性を決定する方法に関し、この方法は、
患者の骨髄からの透過処理されたがん細胞を一以上のBH3ドメインペプチドと接触させること、
その標本のNOXAプライミングを決定すること、
標本のNOXAプライミングが少なくとも15%である場合に、患者を処置レジメンに応答すると推定される者として分類すること、
を含む。
「応答すると推定される者」とは、処置に対して50%よりも高い確率で有利に応答(例えば、部分寛解または完全寛解)する患者である。
【0071】
さらなる他の実施態様において、本発明は、アルボシジブを含む処置レジメンに患者が応答する可能性を決定する方法を提供し、この方法は、
患者の骨髄からのがん細胞標本のMCL−1発現を決定すること、
標本のMCL−1発現が正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合に、患者を処置レジメンに応答すると推定される者として分類すること、
を含む。
先述のさらなる実施態様において、本方法は、応答すると推定される者として分類される患者に処置レジメンを施すことをさらに含む。
【0072】
さらなる実施態様において、本発明は、処置前のAML患者におけるがん治療の戦略を選択する方法に関し、この方法は、
(a)患者の骨髄(BM)試料のNOXAプライミングを決定するための検査の結果を要求し、
(b)患者の末梢血(PB)試料のBIM0.1プライミングを決定するための検査の結果を要求し、
(c)NOXAプライミングをBIM0.1プライミングと比較し、
(i)BM NOXA>10.8%およびBM/PB BIM0.1<35%の患者にアルボシジブを含むレジメン(例えば、FLAM)を施し、
(ii)BM NOXA<10.8%およびBM/PB BIM0.1>15%の患者に7+3レジメンを施し、
(iii)BM NOXA<10.8%およびBM/PB BIM0.1>35%の患者に7+3レジメンを施し、
(iv)BM NOXA<10.8%およびBM/PB BIM0.1<15%の患者に別の治療を施す、
ことを含む。
【0073】
典型的な処置
典型的な実施態様において、本発明は処置の薬剤を選択する。そのような薬剤の例は、限定されないが、一以上の抗がん剤、化学療法、外科手術、アジュバント療法およびネオアジュバント療法を含む。一つの実施態様において、がんの処置は、一以上のBH3模倣物、エピジェネティック修飾薬(epigenetic modifying agent)、トポイソメラーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、およびキネシンスピンドルタンパク質安定化剤である。別の実施態様において、がんの処置は、プロテアソーム阻害剤、および/または細胞周期制御の修飾因子(限定されない例として、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤)および/または細胞エピジェネティック機構の修飾因子(限定されない例として、一以上のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)(たとえば一以上のボリノスタットまたはエンチノスタット)、アザシチジン、デシタビン)および/またはアントラサイクリン、またはアントラセネジオン(限定されない例として、一以上のエピルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン);および/またはプラチナベースの治療剤(限定されない例として、一以上のカルボプラチン、シスプラチン、およびオキザリプラチン)、シタラビンもしくはシタラビン系化学療法剤、BH3模倣物(限定されない例として、一以上のBCL2、BLCXL、またはMCL1)およびMCL1阻害剤である。
【0074】
様々な実施態様において、本発明は、がん処置に関し、これは限定されないが、米国特許公開第US2012−0225851号および国際特許公開第WO2012/122370号(それらの内容は、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるがん処置を含む。
【0075】
様々な実施態様において、本発明は、がん処置に関し、このがん処置は、限定されないが、一以上のアルキル化剤(チオテパおよびサイトキサン(シクロフォスファミド)など);アルキルスルホン酸塩(ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなど);アジリジン(ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパなど);エチレンイミンおよびメチラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチルオロメラミンを含む);アセトゲニン(例えば、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリー(cally)スタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8など);ドラスタチン;デュオカルマイシン(その合成類似体、KW−2189、およびCB1−TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード(クロラムブチル、クロルナファジン、コロフォスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなど);ニトロソウレア(カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチンなど);抗生物質(エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガンマIIとカリケマミシンオメガII(例えば、Agnew, Chem. Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照);ディネミシンAを含むディネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連するクロモタンパク質であるエンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)(モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラミシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラミシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、チュベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン);抗代謝剤(例えば、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU));葉酸類似体(デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなど);プリン類似体(フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど);ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン(ancitabine)、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン);アンドロゲン(例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎剤(anti-adrenal)(例えば、アミノグルテチミド(minoglutethimide)、ミトタン、トリロスタン);フロリン酸などの葉酸補給物;アセグラトン;アルドフォスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;ガリウムニトレート;ハイドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド(例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体(JHSナチュラルプロダクト、ユージン、オレゴン);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(例えば、T−2毒素、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロフォスファミド;チオテパ;タキソイド(例えばタキソール(パクリタキセル)(ブリストルマイヤーズスクイブオンコロジー、プリンストン、ニュージャージー)、アブラキサン(クレモフォール非含有)、アルブミン加工ナノ粒子型のパクリタキセル製剤(アメリカンファーマシューティカルパートナーズ、シャウンバーグ、111)、およびタキソテール(ドセタキセル(doxetaxel))(ローヌプーランローラー、アントニー、フランス);クロランブシル;ジェムザール(ゲムシタビン);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ類似体(例えばシスプラチン、オキザリプラチンおよびカルボプラチン);ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(カンプトサー、CPT−11)(5FUおよびロイコボリンを伴うイリノテカンの処置レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン(オキサリプラチン処置レジメン(FOLFOX)を含む);ラパチニブ(タイケルブ);細胞増殖を低減する、PKC−I、Raf、H−Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(タルセバ))およびVEGF−Aの阻害剤、ダコゲン、ベルケード、ならびに薬学的に受容可能な塩、酸、または上記のあらゆる薬剤の誘導体、を含む。
【0076】
典型的な検出方法
様々な実施態様において、本方法はタンパク質および/または核酸の有無またはレベルを評価することを含む。様々な実施態様において、本方法は、BH3プロファイリングの特異度および/または感度を高めることができるタンパク質および/または核酸の有無またはレベルを評価することを含む。いくつかの実施態様において、その評価は患者の応答についてのマーカーの評価である。いくつかの実施態様において、本方法は、一以上の免疫組織化学染色法、ウエスタンブロッティング、インセルウエスタン(in cell western)、免疫蛍光染色法、ELISA、および蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いる測定法、または本明細書に記載される、もしくは当分野で知られている他のあらゆる方法を含む。本方法は、抗体を腫瘍の標本(例えば、生検、または組織、または体液)に接触させ、組織または体液に特異的であり、がんの状況の指標となるエピトープを同定することを含み得る。
【0077】
一般的に、体液または組織における抗原上のエピトープを検出するために用いる二つの戦略(直接法および間接法)がある。直接法は一段階の染色を含み、体液または組織試料中の抗原に直接反応する標識抗体(例えば、FITCを結合した抗血清)を含んでも良い。間接法は体液または組織の抗原に反応する非標識の一次抗体、および一次抗体と反応する標識された二次抗体を含む。標識は、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素を含んでもよい。これらのアッセイを実施する方法は当分野で広く知られている。例えば、Harlow et al. (Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1988), Harlow et al. (Using Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1999), Virella (Medical Immunology, 6th edition, Informa HealthCare, New York, 2007), and Diamandis et al. (Immunoassays, Academic Press, Inc., New York, 1996)を参照。これらのアッセイを実施するキットは、例えばクロンテックラボラトリーズ社(Mountain View, CA)から市販されている。
【0078】
さまざまな実施態様において、抗体は、抗体全体、および/またはあらゆる抗原結合フラグメント(例えば、抗原結合部分)、および/またはこれらの一本鎖(例えば、ジスルフィド結合で相互に結合する少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む抗体、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結する2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab)2フラグメント;VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメントなど)を含む。様々な実施態様において、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、単離されるヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはその機能的なフラグメントとして、有用である。
【0079】
様々な種の標的に対する抗体の結合能を評価するための標準的なアッセイは、当分野で公知である(例えば、ELISA、ウエスタンブロットおよびRIAを含む)。抗体の結合キネティクス(例えば、結合親和性)をまた、当分野で知られる標準的アッセイ(ビアコア(Biacore)分析など)によって評価できる。
【0080】
別の実施態様において、測定は、核酸の有無、またはレベルを評価することを含む。当業者は、適切なマーカーのDNA/RNAレベルを検出または定量するのに使用できる多くの方法を認識している。
【0081】
遺伝子の発現を、例えば低から中プレックス(low-to-mid-plex)の技術(限定されないが、レポーター遺伝子アッセイ、ノーザンブロット、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)および逆転写PCR(RT−PCR)を含む)を用いて測定してもよい。遺伝子の発現をまた、例えばより高いプレックス(plex)の技術(限定されないが、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、DNAマイクロアレイ、タイリングアレイ、RNAシークエンス/全トランスクリプトームショットガンシークエンシング(WTSS)、ハイスループットシークエンシング、マルチプレックスPCR、マルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)、ライゲーションによるDNAシークエンシング、およびルミネックス/XMAPを含む)を用いて測定してもよい。当業者は、試料中のバイオマーカーにおけるRNA産物のレベルを検出または定量するのに使用できる多くの方法(マイクロアレイ、RT−PCR(定量PCRを含む)、ヌクレアーゼプロテクションアッセイおよびノーザンブロット分析などのアレイを含む)を認識している。
【0082】
典型的ながんおよび患者
いくつかの実施態様において、本発明は、がん処置を決定するための方法を提供し、かつ/または、患者の腫瘍またはがん細胞標本を含む。がんまたは腫瘍は、制御不能な細胞増殖、および/または細胞生存の異常な上昇、および/または体の器官およびシステムの正常な機能を損なうアポトーシスの阻害を指す。がんまたは腫瘍を有する対象とは、対象の体内に客観的に測定できるがん細胞を有する対象である。本発明は、良性および悪性のがん、ならびに休止状態の腫瘍または微小転移を含む。元の場所から移動し、重要な臓器に播種するがんは、影響を受けた臓器の機能悪化によって最終的には対象に死をもたらす。
【0083】
様々な実施態様において、本発明は転移前のがんまたは転移がんに適用できる。転移とは、がんがその原発巣から体内の他の場所に広がることを指す。がん細胞は原発腫瘍から遊離し、リンパ管および血管に浸入し、血流によって循環し、身体の他の正常組織における遠隔の病巣で増殖する(転移する)。転移は局所的または遠位であり得る。転移は、腫瘍細胞が原発腫瘍から遊離し、血流によって移動し、遠隔部位で留まることを伴う、連続的な過程である。その新たな部位において、その細胞は血液供給を確立し、増殖して、致死的な腫瘤を形成しうる。腫瘍細胞中の刺激性および阻害性の分子経路は共に、この挙動を制御しており、遠隔部位における腫瘍細胞と宿主細胞との間の相互作用もまた重要である。転移は、特有の症状のモニタリングに加えて、磁気共鳴画像法(MRI)のスキャン、コンピュター断層撮影(CT)、血球数および血小板計算、肝機能検査、胸部X線検査および骨スキャンの単独または組み合わせの使用によってよく検出される。
【0084】
本明細書に記述される方法は、がんの予後、がんの診断、がんの処置、および/または、細胞生存の増加またはアポトーシスの阻害に関連する悪性腫瘍および増殖性障害の診断、予後、処置、予防、または、成長、進行および/もしくは転移の改善に関する。いくつかの実施態様において、がんは血液がんであり、これは、限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫(限定されないが、マントル細胞リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む)を含む。いくつかの実施態様において、がんは固形腫瘍であり、これは、限定されないが、非小細胞肺がん、卵巣がん、および黒色腫を含む。
【0085】
いくつかの実施態様において、本発明は一以上の以下のがんに関する:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質がん、AIDS関連がん、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫(例えば、小児の小脳または大脳)、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳幹グリオーマ、脳がん、脳腫瘍(例えば、小脳アストロサイトーマ、大脳アストロサイトーマ/悪性グリオーマ、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(supratentorial primitive neuroectodermal tumor)、視路及び視床下部グリオーマ)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳アストロサイトーマ、子宮頸がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、皮膚T細胞性リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮体がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼のがん、胆嚢がん、胃(胃)がん、消化管間質腫瘍(GIST)、杯細胞腫瘍(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性トロフォブラスト腫瘍、グリオーマ(例えば、脳幹、大脳アストロサイトーマ、視路および視床下部)、胃カルチノイド、頭頸部腫瘍、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、下咽頭がん、視床下部および視路グリオーマ、眼内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、腎臓がん(腎細胞がん)、喉頭がん、白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞)、口唇および口腔がん、脂肪肉腫、肝がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん)、リンパ腫(例えば、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫)、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性頸部扁平上皮がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、慢性鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵臓がん、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、喉頭がん、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫および/または胚細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞癌(腎臓がん)、腎盂および尿管がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、ユーイングファミリー、カポジ、軟部組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚がん(例えば、非黒色腫、黒色腫、メルケル細胞)、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞性リンパ腫、睾丸がん、咽喉がん、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、栄養膜腫瘍、尿管および腎盂がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、視路及び視床下部グリオーマ、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍。
【0086】
一つの実施態様において、がんはAMLである。AMLは2番目に多い一般的な白血病であり、アメリカ合衆国では年間に約13,000人の新規に診断される症例および9000人の死者をもたらす。認可された治療法が存在するが、多くの白血病患者の予後は悪く、処置が成功する可能性は低い。現在の標準的なAMLの治療は、アントラサイクリン剤(例えばダウノルビシン、イダルビシンまたはミトキサントロンなど)を組み合わせたシトシンアラビノシド(ara−C)の導入である。この治療レジメンでは典型的に、高投与量のシタラビンの投与および/または幹細胞移植をその後に行う。これらの処置は若い患者に良好な結果をもたらす。急性前骨髄球性白血病の処置においても進歩が見られ、全トランス型レチノイン酸(ATRA)または三酸化ヒ素を用いる標的治療は非常に良い生存率をもたらしてきた。しかしながら、AMLの症例の大部分を示す集団である、60歳以上の患者には治療上の謎が残っている。65−85%の患者は最初に既存の処置に応答するが、その応答者の65%は再発し、多くの患者は病に負ける。少なくともこの理由のため、および前述の処置は深刻な副作用をもたらし得るため、本発明の予測検査は、これらの訴えを緩和する処置の使用を導くことができる。いくつかの実施態様では、本発明は、適切な患者に適切な処置を適合する事で処置が成功する可能性を改善する。さらに、現在、処置に対するAML患者の応答を予測する試験はない。
【0087】
本明細書における用語対象は、他に定義されない限り、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、または非ヒト霊長類(サル、チンパンジー、またはバブーンなど))である。用語「対象」および「患者」は交換可能に使用される。
【0088】
典型的な標本
ある実施態様において、標本はヒト腫瘍由来の細胞株である。ある実施態様において、標本はがん幹細胞である。他の実施態様において、標本は固形腫瘍の生検(結腸直腸原発腫瘍、乳腺原発腫瘍、前立腺原発腫瘍、肺原発腫瘍、膵臓原発腫瘍、腎臓原発腫瘍、または卵巣原発腫瘍の生検など)に由来する。
【0089】
ある実施態様において、標本は、例えば本明細書に記載されるいずれかのがんなどの、非固形腫瘍の生検に由来する。特定の実施態様において、標本は多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および非ホジキンリンパ腫の患者の生検に由来する。特定の実施態様において、標本は、固体マトリックスまたはビーズに結合した抗CD138抗体による生検試料からの選定によって濃縮された多発性骨髄腫細胞である。特定の実施態様において、標本は、CD45に対する抗体と結合することによって濃縮された急性骨髄性白血病細胞である。特定の実施態様において、標本は、非B細胞の除去により濃縮された、慢性リンパ性白血病またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
いくつかの実施態様において、標本は循環腫瘍細胞に由来する。
【0090】
BH3プロファイリング
様々な実施態様において、本発明はBH3プロファイリングを含む。様々な実施態様において、本発明は、少なくとも2種、または3種、または4種、または5種、または6種、または7種、または8種、または9種、または10種のBH3ペプチドを一度に評価する、BH3プロファイリングを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、単一のBH3ペプチドの評価とは対照的な、マルチペプチド解析を含む。いくつかの実施態様において、BH3ペプチドのパネル(panel)を単一の患者の標本に対してスクリーニングする。
【0091】
BH3プロファイリングおよびその方法に有用な試薬は、米国特許第7868133号、同第8221966号、および同第8168755号、ならびに米国特許公開第2011/0130309号(これらの内容は、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0092】
簡潔に述べると、理論に拘束される意図はないが、異常な表現型の結果として、がん細胞は、アポトーシス経路の遮断を展開する。これらの遮断によって、がん細胞はいくつかの治療法に対して耐性となり、驚くべきことに、いくつかのがん細胞は他の治療法に対して感受性となる。「癌遺伝子中毒」という概念は、がん細胞が生存のために特定のタンパク質への依存性または中毒性(addiction)を獲得する現象を表す。BH3プロファイリングは、特定のアポトーシス制御タンパク質へのそのような依存性が所与のがん細胞において生じるかを決定し、その依存性タンパク質を同定する。がん細胞は、常にではないが、アポトーシスを受けるようにあらかじめ設定されていることがあり、この機能のために、これらの細胞は、意図されない生存のために抗アポトーシス性のBcl−2ファミリータンパク質のいずれかまたは全てに依存的である。これは、処置に対してがん細胞が応答する可能性についての知見を提供する。
【0093】
理論に拘束される意図はないが、がん細胞は、DNA損傷、遺伝的不安定性、増殖因子の異常なシグナル伝達、および異常な、または欠損したマトリックスの相互作用(これらのいずれも、典型的に内因性(ミトコンドリア性)のアポトーシス経路を介してアポトーシスを誘導するはずである)などの異常を示す。しかしながら、これらのアポトーシスシグナルに応答するのではなく、がん細胞はむしろ生存する。そうすることで、これらの細胞はよく、慢性的なアポトーシスシグナルに対する選択的な遮断に高度に依存する。この適応は、がん細胞に生存の機構を与えるが、しかしながら、これらの適応はまた、がん細胞を特定のアポトーシス誘導治療法に対して感受性にし得る。細胞に内因性アポトーシスによる死をもたらす極めて重要な現象は、ミトコンドリア外膜の透過化(MOMP)およびエフェクターであるカスパーゼを活性化する分子の放出である。多くの事例において、MOMPは内因性アポトーシス経路における不可逆となる段階である。Bcl−2ファミリータンパク質はMOMPの重要な制御分子であり、それらの活性は、リンパ系のがんや幾つかの固形腫瘍のがんの発生と関連しており、多くのがんにおいて、化学療法への耐性の重要な媒介物質であると考えられている。
【0094】
Bcl−2タンパク質は、生存促進(抗アポトーシス)性のメンバーとアポトーシス促進性のメンバーとの間の明確なタンパク質−タンパク質相互作用によって制御される。これらの相互作用は、主にBH3(Bcl−2ホモロジードメイン−3)を媒介する結合を通して生じる。アポトーシス開始のシグナル伝達は、ほとんどの場合ミトコンドリアの上流で起こり、短い、BH3オンリー(BH3-only)の、Bcl−2ファミリーメンバーがミトコンドリアに移動し、そこでMOMPを活性化する、または感受性にする。活性化因子であるBH3オンリータンパク質のBimおよびBidは、エフェクターであるアポトーシス促進タンパク質のBaxおよびBakと結合して直接活性化し、また抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質のBcl−2、MCL1、Bfl−1、Bcl−wおよびBcl−xLに結合して阻害する。感作因子(sensitizer)であるBH3タンパク質のBad、Bik、Noxa、Hrk、BmfおよびPumaは、抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質のBcl−2、MCL1、Bfl−1、Bcl−wおよびBcl−xLのみと結合し、それらの抗アポトーシスの機能を遮断する。理論に拘束される意図はないが、各感作因子のタンパク質は特有の特異度プロファイルを持つ。例えばNoxa(AおよびB)はMCL1と高い親和性で結合し、BadはBcl−xLおよびBcl−2と結合するが、MCL1とは弱くしか結合せず、Pumaはこれら3つの標的全てに良く結合する。これらのタンパク質の抗アポトーシスの機能は、活性化因子であるBH3タンパク質BimおよびBidの捕捉である。感作因子のペプチドによるこれらの活性化因子の置換は、Bax/Bak介在性のアポトーシスの決定をもたらす。これらの相互作用は、限定されないが、恒常性、細胞死、アポトーシスに対する感受性の増加、およびアポトーシスの阻害を含む、様々な結果を有し得る。
【0095】
アポトーシスのシグナル伝達を遮断するがん細胞の決定的な特徴は、ミトコンドリア表面における活性化因子のBH3オンリータンパク質の蓄積であり、これは抗アポトーシスタンパク質によってこれらのタンパク質が捕捉された結果である。この蓄積およびそれらエフェクターの標的タンパク質への近接が、「BH3がプライミングされた」状態にあるBcl−2ファミリータンパク質の拮抗に対する感受性が増加する原因である。
【0096】
いくつかの実施態様において、Noxa(AまたはB)に対する高いアポトーシス性の応答を示す細胞は、MCL1がプライミングされており、一方Badペプチドに対する高い応答は、Bcl−xLまたはBcl−2がアポトーシスを遮断する事を示唆する。いくつかの実施態様において、Pumaは汎Bcl−2ファミリーのプライミングを反映する。このように、MCL1またはBcl−xLのいずれかに、その両方に、または数種のBcl−2ファミリーメンバーに依存する細胞は容易に区別され、それに応じて適切な処置を適合できる。これらのペプチドに対するミトコンドリアの応答の差異は、MCL1またはBcl−xLのいずれかに影響される内因性シグナル伝達に集まる経路を介して働くことが知られている治療法の使用を導く。Bcl−2阻害化合物またはMCL1阻害化合物の使用は、そのような事例において示され得る。いくつかの実施態様において、本方法はまた、MCL1またはBcl−xLの上流の要素を標的とする治療法を示す、または禁忌とする。
BH3プロファイリングアッセイは、がん細胞がいつプライミングの状態にあるか、そしてプライミングがどの配置で起こるかを同定し、これは予測価値を有する。
【0097】
典型的な臨床学的因子および追加のバイオマーカー
いくつかの実施態様において、本発明は臨床学的因子の評価を含む。いくつかの実施態様において、本発明は、患者の応答を評価するためのBH3プロファイリングおよび/または臨床学的因子の評価を含む。いくつかの実施態様において、BH3プロファイリング研究と組み合わせて患者の応答の情報を提供する臨床学的因子は、アポトーシスに関連しなくてもよい。いくつかの実施態様において、臨床学的因子はアポトーシスに影響を与えない。
【0098】
一つの実施態様において、臨床学的因子を表3に示す。
一つの実施態様において、臨床学的因子は、年齢、細胞遺伝学的状態、パフォーマンス、組織学的サブクラス、性別、および病期の1つまたはそれ以上である。
一つの実施態様において、臨床学的因子は年齢である。一つの実施態様において、患者の年齢プロファイルは約10歳以上、または約20歳以上、または約30歳以上、または約40歳以上、または約50歳以上、または約60歳以上,または約70歳以上,または約80歳以上で分類される。
【0099】
一つの実施態様において、臨床学的因子は細胞遺伝学的状態である。いくつかのがん(ウィルムス腫瘍および網膜芽細胞腫など)において、腫瘍の抑制因子に関連する染色体領域は通常、欠失または変異しているため、例えば遺伝子欠失または遺伝子不活性化は、がんの進行を引き起こす原因となる。例えば、欠失、逆位および転位は通常、グリオーマ、非小細胞肺がん、白血病および黒色腫において染色体9p21領域で検出される。理論に拘束される意図はないが,これらの染色体変化は、腫瘍抑制因子のサイクリン依存性キナーゼ阻害剤2Aを不活化する。特定の遺伝子におけるこれらの欠失とともに、染色体の大部分が欠損することもある。例えば、染色体1pおよび16qは固形腫瘍細胞において一般に欠損している。遺伝子重複や遺伝子コピー数の増加もまた、がんに寄与することがあり、転写解析またはコピー数多型アレイで検出できる。例えば、染色体領域12q13−q14は、多くの肉腫において増幅されている。この染色体領域は、p53と呼ばれる腫瘍抑制因子に結合することが知られているMDM2と呼ばれる結合タンパク質をコードする。MDM2が増幅されると、MDM2はP53による細胞増殖の制御を妨げ、結果として腫瘍の形成をもたらす。さらにある種の乳がんは、ヒト表皮増殖因子受容体2をコードするERBB2遺伝子のコピー数の過剰発現および増加と関連している。また、染色体1qおよび3qなどの染色体数の増加もまた、がんのリスクの増加と関連している。
【0100】
細胞遺伝学的状態は、当分野で公知の様々な様式で測定できる。例えば、FISH、従来の核型分析および仮想(virtual)核型分析(例えば、比較ゲノムハイブリダイゼーションアレイ(CGH)および一塩基多型アレイ)を用いてもよい。例えば、FISHは特定の遺伝子座における染色体の再配列を調べるのに用いてもよく、これらの現象は疾患のリスクの状態に関連する。いくつかの実施態様において、細胞遺伝学的状態は好ましく、好ましくなく、またはその中間である。
【0101】
一つの実施態様において、臨床学的因子はパフォーマンスである。パフォーマンス状態は、患者のパフォーマンス状態を点数化する、当分野で公知のあらゆるシステムおよび方法で定量化できる。この測定は、患者が化学療法を受けることができるかどうか、用量調節の調節、および緩和ケアの強度を決定するためによく使用される。カルノフスキースコアおよびズブロッドスコアを含む、様々な点数化のシステムがある。パラレルスコアリングシステム(parallel scoring system)は、機能の全体的評定(GAF)スコア(これは精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)の5番目の軸として組み込まれている)を含む。より高度なパフォーマンス状態(例えば、カルノフスキースコアシステムを用いて少なくとも80%または少なくとも70%)は、疾患状態の進行を防止し、患者が化学療法および/または放射線処置を許容する能力を増強する処置を示し得る。例えば、これらの実施態様において、患者は外来であり自己管理できる。他の実施態様において、従来の放射線療法および/または化学療法が耐容されるために、評価は低いパフォーマンス状態(例えば、カルノフスキースコアシステムを用いて、50%未満、30%未満、または20%未満)の患者を示すものである。これらの実施態様において、患者はほとんど寝たきりまたは座りっぱなしにされ、自己管理さえできなくされる。
【0102】
カルノフスキースコアは100から0に及び、100が「完全な」健康で0は死である
。スコアを10の間隔で採用してもよく、ここで100%は正常で、愁訴は無く、疾患の徴候も無く、90%は正常な活動が可能であり、疾患の症状または徴候はほとんどなく、80%は正常な活動であるがいくつかの困難を伴っており、いくつかの症状または徴候があり、70%は自己管理出来るが、正常な活動や仕事はできず、60%は介助が少し必要となり、ほとんどの個人的な要件は処理でき、50%は介助がよく必要となり、頻繁な医療介護を必要とし、40%は障害を持ち、特別な介護および介助が必要となり、30%は高度な障害を持ち、入院が示唆されるが死の危険性は無く、20%は非常に病状が悪化した状態であり、緊急入院が必要となり、対症手段または処置が必要であり、10%は瀕死であり、急激に進行する致死的な疾患過程である。
【0103】
パフォーマンス状態についてのズブロッドスコアシステムは、以下を含む:0、十分に活動的で、制限なしに発症前のすべてのパフォーマンスを実行できる;1、激しい肉体的な活動は制限されるが、歩行可能であり、軽度または座って行う性質の仕事(例えば、軽い家事、オフィスワーク)を実行できる;2、歩行可能であり、すべての自己管理ができるが、起きている時間の約50%以上の間、あらゆる仕事活動ができない;3、制限された自己管理しかできず、起きている時間の50%以上をベッドまたはイスで過ごす;4、完全に障害のある状態で、自己管理が全く出来ず、寝たきりまたは座りっぱなしでいる;5、死。
【0104】
一つの実施態様において、臨床学的因子は組織学的サブクラスである。いくつかの実施態様において、腫瘍の組織試料は、Elston&Ellis, Histopathology 1991, 19:403-10(その内容はその全体が引用によって本明細書に組み込まれる)に従って、段階分けされる。
一つの実施態様において、臨床学的因子は性別である。一つの実施態様において、その性別は男性である。他の実施態様において、その性別は女性である。
【0105】
一つの実施態様において、臨床学的因子は病期である。限定されない例として、ステージ全体の分類を用いて、ステージIのがんは体内の一カ所に局在しており、ステージIIおよびステージIIIのがんは局所的に進行している。がんがステージIIまたはステージIIIとして指定されるかは、具体的ながんの種類に依存する。一つの限定されない例として、ホジキン病では、ステージIIは横隔膜の上側か下側の一方のみのリンパ節が影響を受けることを示すが、一方、ステージIIIは上および下のリンパ節が影響を受けることを示す。したがって、ステージIIおよびIIIについての具体的な判断基準は、診断法によって異なる。ステージIVのがんは大抵転移しており、他の臓器または全身に拡散している。
【0106】
いくつかの実施態様において、臨床学的因子は血液病に対するフランス−米国−英国(FAB)分類システム(例えば、骨髄異形成の存在ならびに骨髄芽球および赤芽球の定量を示す)である。一つの実施態様において、急性リンパ芽球性白血病におけるFABはL1−L3であり、または急性骨髄性白血病においてはM0−M7である。別の実施態様において、この方法はさらに、変異状態、一塩基多型、定常状態のタンパク質レベルおよび動的なタンパク質レベルから選択される追加のバイオマーカーの測定を含む。別の実施態様において、この方法はさらに、患者の臨床応答を予測することを含む。別の実施態様において、臨床応答は約1、約2、約3、または約5年の無憎悪/無再発生存期間である。
【0107】
各種の臨床学的因子、例えば年齢プロファイルおよびパフォーマンス状態が同定されてきた。細胞遺伝学および分子事象(限定されないが、遺伝子MLL、AML/ETO、Flt3−ITD、NPM1(NPMc+)、CEBPI、IDH1、IDH2、RUNX1、rasおよびWT1における変異、ならびにエピジェネティク修飾遺伝子TET2およびASXLにおける変異、ならびに細胞シグナル伝達タンパク質のプロファイルの変化を含む)などの、多くの診断の静的な測定法もまた使用されてきた。
【0108】
いくつかの実施態様において、この予防的な方法は、本明細書に記述される方法によって導かれるように、がんを患う可能性のある患者に処置を施すことを含む。いくつかの実施態様において、対象が一以上の、がんに対する高いリスク、がんの遺伝的素因(例えば遺伝的な危険因子)、以前のがんの発症(例えば、新規がんおよび/または再発)、がんの家族歴、がん誘発剤(例えば、環境の物質)に対する暴露および薬理遺伝学的情報(薬物動態、薬力学または治療薬の効果プロファイルにおける遺伝子型の効果)によって特徴付けられる場合、対象はがんを患う可能性がある。
【0109】
いくつかの実施態様において、対象ががんに対する高いリスクによって特徴付けられる場合、対象はがんを患う可能性がある。いくつかの実施態様において、対象ががんに対する遺伝的素因によって特徴付けられる場合、被験者はがんを患う可能性がある。いくつかの実施態様において、がんに対する遺伝的素因は、当分野で知られるように、遺伝的な臨床学的因子である。そのような臨床学的因子は、例として、少なくとも結腸がん、子宮がん、小腸がん、胃がん、尿路がんについてのHNPCC、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2を含み得る。いくつかの実施態様において、対象が以前のがんの発症によって特徴付けられる場合、対象はがんを患う可能性がある。いくつかの実施態様において、対象は1、または2、または3、または4、または5、または6回のがんの以前の発症に苦しめられてきた。いくつかの実施態様において、対象ががんの家族歴によって特徴付けられる場合、対象はがんを患う可能性がある。いくつかの実施態様において、親および/または祖父母および/または兄弟姉妹および/または叔母/叔父および/または大叔父/大叔母、および/または従兄弟従姉妹が、今までまたは現在がんに苦しめられている。いくつかの実施態様において、対象ががん誘発剤(例えば、環境の物質)への暴露によって特徴付けられる場合、被験者はがんを患う可能性がある。例えば、強力な日光への皮膚の暴露は皮膚癌の臨床学的因子である。例として、喫煙は肺、口、喉頭、膀胱、腎臓、およびいくつかの他の臓器のがんにおける臨床学的因子である
【0110】
さらに、いくつかの実施態様において、以下の臨床学的因子の任意の1つは、本明細書で記述する方法に有用であり得る:性別、遺伝的危険因子、家族歴、個人歴、人種および民族性、特定の組織の特徴、様々な良性状態(例えば、非増殖性病変)、以前に受けた胸部放射線ならびに発癌物質への暴露など。
【0111】
さらになお、いくつかの実施態様において、以下の臨床学的因子の任意の1つは、本明細書に記述される方法に有用であり得る:一以上の、細胞表面マーカーCD33、細胞表面マーカーCD34、FLT3変異状態、p53変異状態、MEK−1キナーゼのリン酸化状態、およびBcl−2の70番目のセリンのリン酸化。
【0112】
いくつかの実施態様において、臨床学的因子は、限定されないがインターロイキン−6を含む、サイトカインの発現レベルである。いくつかの実施態様において、インターロイキン−6のレベルは、患者の不良な予後または患者の良好な予後を含む、MMの患者における応答の可能性に相関する。
【0113】
特定の実施態様において、応答の可能性はプライミングの割合を評価することによって決定される。特定の実施態様において、プライミングは以下の数式で定義される。
【数2】
式中、AUCは曲線下面積または信号強度のいずれかを含む;DMSOはベースラインの負の対照を含む;CCCP(カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン)はミトコンドリアの電子伝達鎖における電子伝達体が正常な活性である間に確立されるプロトン勾配の脱共役薬として働くことによるタンパク質合成のエフェクターを含み、これはベースラインの正の対照を含む。いくつかの実施態様において、曲線下面積は均一性時間分解蛍光法(HTRF)によって確立される。いくつかの実施態様において、時間は約0から約300分の間から、約0から約30分の間までのウインドウにわたって生じる。いくつかの実施態様において、曲線下面積は蛍光活性化細胞選別(FACS)によって確立される。いくつかの実施態様において、信号強度は約5分乃至約300分で生じる単一の時点の測定値である。
【0114】
別の実施態様において、本方法は、BH3プロファイリングアッセイと、細胞表面マーカーCD33、細胞表面マーカーCD34、FLT3変異状態、p53変異状態、MEK−1キナーゼのリン酸化状態およびBcl−2の70番目のセリンのリン酸化の1つまたはそれ以上を測定すること、ならびにシタラビンまたはシタラビン系の化学療法および/またはアザシチジンによるAML患者の処置の効能と相関させることを含む。
【0115】
別の実施態様において、本方法は、BH3プロファイリングアッセイと、一以上の細胞表面マーカーCD33、細胞表面マーカーCD34、FLT3変異状態、p53変異状態、MEK−1キナーゼのリン酸化状態、およびBcl−2の70番目のセリンのリン酸化の1つまたはそれ以上を測定すること、ならびに化学療法によるMM患者の処置の効能と相関させることを含む。
【0116】
さらに別の実施態様において、がんはAMLおよび/またはMMで、臨床学的因子は年齢プロファイルおよび/または細胞遺伝学的状態であり、またはがんはAMLおよび/またはMMで、がんの処置はシタラビンもしくはシタラビン系化学療法および/またはアザシチジンであり、またはがんの処置はシタラビンもしくはシタラビン系化学療法および/またはアザシチジンで、臨床学的因子は年齢プロファイルおよび/または細胞遺伝学的状態であり、またはがんの処置はシタラビンもしくはシタラビン系化学療法および/またはアザシチジンであり、がんはAMLおよび/またはMMであり、臨床学的因子は年齢プロファイルおよび/または細胞遺伝学的状態である。
【0117】
本発明はまた、腫瘍またはがん細胞標本の評価を簡素化できるキットを提供する。本発
明の典型的なキットは、様々な試薬(例えば、BH3ペプチドを検出する1以上の薬剤)を含む。キットはまた、様々な検出方法において有用な試薬(例えば抗体など)を含む、検出のための1以上の試薬を含んでもよい。このキットはさらに、ウェルプレート(welled plate)、シリンジなどを含む、評価に必要な器具を含んでもよい。このキットはさらに、記載される試薬の使用方法を指示するラベルまたは印刷された説明書を含んでもよい。このキットはさらに、検査のための処置剤を含んでもよい。
【0118】
用語「約(about)」は、言及される数値表示と連結して使用される場合、言及される数値表示にその言及される数値表示の最大で10%を加算または減算したものを意味する。例えば「約50」という言葉は、45から55の範囲を占める。
【0119】
本明細書において、用語「含む(include)」およびその変形は、リスト(list)内の項目の列挙が、本技術の材料、構成物、装置および方法において有用であり得る他の同様の項目を除外しないように、非限定的であることが意図される。同様に、用語「できる(can)」および「し得る(may)」ならびにそれらの変形は、ある実施態様が特定の要素または特徴を含むことができ、または含み得るという記載が、これらの要素または特徴を含まない本技術の他の実施態様を除外しないように、非限定的であることが意図される。含む(including)、含有する(containing)または有する(having)などの用語と同義語である、オープンエンド型(open-ended)の用語「含む(comprising)」は、本発明、本技術またはその実施態様を記述および主張するために本明細書で使用されるが、より限定的な用語(列挙される構成要素「からなる(consisting of)」または「から基本的になる(consisting essentially of)」など)を用いて代替的に記述され得る。
【0120】
他に定義されない限り、本明細書の全ての技術的および科学的用語は、本発明における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本明細書に記載のものと類似または同等のあらゆる方法および材料が、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料を本明細書に記述する。引用される全ての刊行物、特許および特許公報は、全ての目的のため、引用によってその全体が本明細書に取り込まれる。
【0121】
本発明の実施態様を、以下の非限定的な実施例でさらに例示する。
【実施例】
【0122】
実施例1:AML患者に基づくコホートを用いる研究
ジョンズ・ホプキンズ大学病院(Johns Hopkins University Hospitals and Clinics)は、その組織貯蔵所に、以前に行った2回の臨床試験からの生存できる状態の凍結したAML標本を有する。ジョンズ・ホプキンズ大学のプロトコルNCT00795002(J0856)、NCT00407966(J0669)またはNCT01349972(J1101)に登録し、新たに診断されたAMLまたはMDS患者からの63個の末梢血および骨髄試料を得て、分析した。患者をFLAM(アルボシジブ(フラボピリドール)、Ara−Cおよびミトキサントロン(n=54))または7+3(Ara−Cおよびダウノルビシン、n=9)で処置した。完全な応答は、全ての細胞株の正常な成熟を伴う5%未満の骨髄芽球、1000/μLのANCおよび100,000/μLの血小板数、末梢血中に芽球が存在しないこと、髄中に白血病細胞が存在しないこと、疾患に関連する細胞遺伝学の解消、過去の髄外の疾患の解消、に特徴付けられる。BH3プロファイリングを完了した後、患者全体の特徴はジョンズ・ホプキンズ大学によって提供され、表1に要約され、ここで表1は、患者の年齢、細胞遺伝学的なリスク、FLT−3変異、NPM1変異、MDS/髄障害歴、過去の化学療法歴、BM芽球%、診断時のWBC数、および治療に対する応答を含む。個々の患者の特徴を、表2に記載する。
【表1】
表2:患者の特徴
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0123】
ミトコンドリアプロファイリング
簡潔に述べると、抽出し、凍結した白血球試料を急速に解凍し、細胞の生存率をトリパンブルー色素排除法で決定した。細胞をFACS緩衝液(2%FBSを含む1x PBS)で洗浄し、蛍光標識されたCD45、CD3およびCD20モノクローナル抗体を用いて免疫表現型を決定した。次いで、細胞を、摂動の工程のためにニューマイヤー(Newmeyer)緩衝液(10mMトレハロース、10mM HEPES、80mM KCl、20μM EGTA、20μM EDTA、5mMコハク酸、pH7.4)中に再懸濁した。BH3ペプチドをニューマイヤー緩衝液中に希釈し、希釈標準溶液はBIM(100μM)、BIM(0.1μM)、NOXA(100μM)、Puma(10μM)、HRK(100μM)、BAD(100μM)およびBID(1.0μM)の終濃度となった。DMSOおよびCCCPをペプチドの負および正の対照として用いた。ジギトニンおよびオリゴマイシンを個々のFACSチューブに添加し、次いでBH3ペプチドを添加した。そして、細胞の透過処理、ペプチドまたは化合物の送達およびミトコンドリアの脱分極を生じさせるため、細胞をFACSチューブに添加し、室温で2時間15分インキュベートした。インキュベーション後、JC−1色素をニューマイヤー緩衝液中に調製し、処理された細胞に直接添加した。ペプチドまたは化合物で処理されていない細胞の追加のチューブを、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、細胞がジギトニンによって効率的に透過処理されたことを保証した。JC−1を伴う45分のインキュベーション後、細胞を3本のレーザーのBD FACSCanto IIで分析した。AML芽球を4つのパラメータに基づいてゲートした:1)透過処理(PI染色によって決定された)、2)SSCに基づくシングレット(singlet)の識別、3)CD45が弱く、CD3/CD20が陰性、および4)SSCが低い。次に、ゲートされた芽球の集団におけるJC−1の中央値の赤い蛍光を用いて、DMSO(負)およびCCCP(正)の対照と比較して、脱分極の割合(%)を計算した。細胞遺伝学的なリスクの状態を決定する細胞遺伝学的な分析は、ジョンズ・ホプキンズ大学によって提供された。個々の患者の細胞遺伝学的なリスクの分類を(有利、中間および不利)、がんおよび白血病のグループB(CALGB)のガイドラインから決定した:有利=inv16、t(8:21)、T(15;17)、中間=二倍体、不利=−5、−7、+8、t(6;9)、11q、PH1+、3つの関連しない細胞遺伝学的な異常など。
【0124】
統計解析:各ペプチドにおいて、プライミングの割合を、全くプライミングしない負の対照であるDMSOおよび100%プライミングされる参照としてのCCCPに基づいて、プライミングを決定する以下の式を用いて計算した。
【数3】
【0125】
解析において、CRとして分類されない全ての患者は不応答者[微小残存病変(MRD)、部分寛解(PR)およびTF(処置失敗)]として扱われた。BH3ペプチド(および細胞遺伝学などの他の腫瘍の特徴など)と応答との間の、スチューデントのt検定、マン・ホイットニーの順位和ノンパラメトリック検定、多変量ロジスティック回帰およびROC曲線分析をグラフパットプリズム(バージョン5.04)およびメッドカルク(MedCalc)(バージョン14.8.1)を用いて計算した。
【0126】
FLAMプロトコルに登録したAML患者の試料のミトコンドリアプロファイリング
全63個の試料を受け取り、処理し、これらの試料を表1および2に要約する。完全なプロファイリングを43個の試料から得、追加の9個をプロファイルのサブセットで処理した(全体のアッセイを行うには細胞数が不十分であったため)。残った11個の試料は、悪い信号対雑音比(細胞がアッセイ前に既にアポトーシスしていた)または不十分な細胞数のいずれかであったため、いずれかのBH3プロファイリングを決定するにも質が不十分であった。全ての続く解析は、任意のBH3プロファイリングで処理が成功したこれらの試料のみで行った(全体でn=52)。
【0127】
患者から得た臨床的変数を応答と比較し、もしあれば、どの因子が患者が治療に応答するか否かに影響するかを決定した(表3)。CRと有意な関連があることがわかった唯一の変数は、細胞遺伝学的なリスク因子であり、ここで不利な分類を伴うものは治療にあまり応答しなかった。WBC、MDS病歴およびどのプロトコルに従ったかは全て、ほとんど有意であり、より高いWBC値およびMDS歴は治療への応答に関連していた。プロトコルJ0856は、J1101(25の患者の内、8のCR)よりも高いCRの割合(25の患者の内、13のCR)を有し、プロトコルJ0669ではBH3プロファイリングが成功した2人の患者が示されたのみであった。年齢、BM芽球の割合およびNPM/FLT−3変異状態はこのデータセットでは応答に有意に関連しなかった。
【表3】
【0128】
BH3の個々の患者の全てのデータを表4および表5に要約し、これは芽細胞においてミトコンドリアの脱分極を誘導する、各BH3ペプチドの性能を詳述する。全ての応答を見ると、BIM100μMベプチドは最も高い脱分極の中央値(99.2%)をもたらし、NOXAは最も低い全体のプライミングを示す(16.0%)。次に、表6において、単一ペプチドのBH3プロファイルを、処置に応答した患者(CR)と応答しなかった患者(NR)とにおいて比較した。応答に有意に関連する単一のペプチドはなかった。しかしながら、BADペプチドはp値が0.09であり、有意に近いが、AUC値は0.65しかなかった。これは、全体の患者のセットを用いると、個々のBH3ペプチドは、FLAM処置などのアルボシジブを含むレジメンに応答する患者を同定するのに十分でないことを示す。
【表4】

【表5】
【表6】
【0129】
次に、BH3ペプチドを他のBH3プロファイルおよび臨床的変数と共に多変量解析で検定した(表7)。この解析は、BIM100μMプラスBADプラスPUMA間の応答に対する有意な強い関連が存在しており、これは0.009のp値および0.732のROC AUCを伴うことを明らかにする(図1)。これら3つのペプチドを細胞遺伝学的なリスクの区分と結びつけると、p値は0.0001となり、AUCは0.84であった。この解析へのMDS病歴のさらなる追加は、0.0001のp値および0.85のAUCを伴うさらなる有意性をもたらした。細胞遺伝学的なリスクの区分のみでは、0.60のAUC値のみをもたらす(細胞遺伝学的なリスクおよびMDS病歴では0.72のAUC値をもたらす)。これは、この解析へのBH3ペプチドのプライミングの追加がアルボシジブ(例えば、FLAM)に応答する患者を同定する能力を著しく向上することを示す。細胞遺伝学的なリスクの区分およびMDS病歴と共にBH3ペプチドデータを用いる理想的なカットオフ(ヨーデン指標(Youden index))では、このアッセイは、本研究における処置に応答した患者の同定において、89.5%の感度および76%の特異度である。これは、臨床上の情報およびこれらの3つのペプチドからのBH3ペプチドプライミングデータを用いることが、アルボシジブ処置における予測値に有益であり得ることを示す。
【表7】
【0130】
本研究の進行中、我々はまた、BH3プライミングに関与し得る他の因子を調べた。白血病細胞の供給源(すなわち、末梢血または骨髄)は異なる細胞群を単離できる可能性があるため、我々は、患者の骨髄から得られた試料のみにおいて解析を行った。表8は、骨髄試料のみにおける、応答に対する各BH3ペプチドの関連を示す。この試料のサブセットにおいて、NOXAプライミングは、処置に応答しなかった患者に比べて、処置に応答した患者において有意に高く(それぞれ5.2%および44.5%)、0.805のAUC値を有する(図2および図3)。他の単一のペプチドは、骨髄試料のみにおいて、応答と有意な関連を示さなかった。10.78%のNOXAプライミングよりも高いカットオフ値で、この検定は92%の感度および67%の特異度であった。15%またはそれ以上のNOXAプライミングはアルボシジブ処置(FLAMなど)に対する高い応答可能性に関連するようだが、約30%またはそれ以上のNOXAプライミングはアルボシジブを含むレジメンに対するほぼ100%の応答の予測となる。アルゴリズムへの細胞遺伝学的なリスク因子およびMDS病歴の追加は、NOXAプライミングが、処置に対する応答の予測においてこれらの変数を増強し、理想的なカットオフ値において0.92のAUC値、92%の感度および80%の特異度をもたらすことを示す(表8および図3)。
【表8】
【0131】
本研究の結果は、BH3プロファイリングが、FLAM処置などのアルボシジブ処置に対する応答の可能性がある患者を同定するのに有用であり得ることを示した。全体のデータセットを見ると、個々のBH3ペプチドは応答と相関しなかったが、数種のペプチド(BIM、BADおよびPUMA)の組み合わせはアルボシジブへの応答に強い相関を示した。これら数種のペプチドは、本研究において、骨髄および末梢血の両方の試料で、応答との相関を示した。これらのデータが公知の患者のリスク因子に対して付加的であったことは、患者のMDS病歴と細胞遺伝学的な状態を、患者の応答を予測する単一の指標に組み入れるアルゴリズムを同定するために、有望である。
【0132】
本研究の別の興味深い発見は、NOXAシグナリング(signaling)は全体のデータセットにおいてFLAM応答との有意な関連は見出されなかったが、骨髄試料のみの検査では、応答との非常に強い関連を示したことである。AML腫瘍細胞のニッチは骨髄にあるため、骨髄と比較して末梢血においてBH3プロファイリングが異なることは驚くべきことではなく、芽球の表現型マーカーは骨髄と末梢血とで異なり得る(1,2)。さらに骨髄間質は、直接的な細胞接触および骨髄中に存在する可溶性因子を通して、AML細胞に様々な治療法への抵抗力を与えることが以前に示されている(3)。骨髄の引き抜きは、AML芽球、可溶性因子および潜在的には実際の間質細胞を潜在的に回収するため、骨髄におけるBH3プライミングアッセイは、標準的な環境状況における白血病細胞のより直接的な検定を示しうる。FLT3キナーゼ阻害剤単独療法を伴うAML中での機能的な相違が以前に観察されており、循環する芽球はその療法によって末梢血から除去されるが、骨髄芽球はわずかしか影響されない(4)。NOXAの読み出しは同様の機能的な相違を検出している可能性があり、NOXAでのプライミングは、MCL−1の置換をもたらし、アポトーシスを導き、FLAMに応答する可能性のあるがんを同定する。
【0133】
本研究で特定されるアルゴリズム、即ちNOXAおよび[BAD+BIM100+PUMA]プライミングは共に、MCL−1プライミングされたがん細胞を同定し得る。NOXAに対する高いアポトーシス応答を生じる細胞はMcl−1プライミングされていると考えられ、一方ペプチドBadに対する高い応答は、Bcl−xLまたはBcl−2がアポトーシスの遮断を与えることを示す。PUMAは汎Bcl−2ファミリーのプライミングを反映し得、[BAD+BIM100+PUMA]の裏にあるアルゴリズムは、実際にはPUMA−BAD−BIM100であるので、事実上、これらの読み取りは共に、Mcl−1のプライミング状態を効果的に測定し、究極的にはFLAMレジメンなどのアルボシジブ処理に応答する患者はMcl−1に依存的であり得る。したがって、患者のがん細胞におけるMCL−1の過剰発現は、アルボシジブに対する高い応答可能性に関連すると考えられる。
【0134】
実施例2:FLAMレジメンと従来の7+3処置戦略とを見分けるアルゴリズム
AML患者の骨髄または末梢血のBIM0.1プライミングは7+3レジメン(シタラビンプラスアントラサイクリン)に対する応答と相関した:Pierceall, et al. "BH3 Profiling Discriminates Response to Cytarabine-based Treatment of Acute Myelogenous Leukemia" Molecular Cancer Therapeutics参照。上述のように、NOXA骨髄プライミングはFLAM(アルボシジブ、ara−C、ミトキサントロン)レジメンに対する応答と相関する。我々は、FLAMまたは7+3のどちらを、未処置のAML患者を処置するために使用すべきかを識別するアルゴリズムを研究した。
【0135】
BIM0.1はBM試料のサブセットにおいて、0.80のAUC値、64.3%の感度、100%の特異度で、7+3に対する応答を予測する(左下部)。しかしながら、これら同じ試料において、NOXAは0.54のAUC値、42.9%の感度、100%の特異度で、本質的に予測する能力を持たない。図5(FLAMで処理された際の0.81のAUCおよび92%/67%の感度/特異度との比較)参照。これは、処置前のAML患者由来の骨髄細胞における検出の際には、NOXAプライミングはFLAMに対する応答に相関するが、7+3に対する応答には相関せず、処置前に検定されたAML患者の末梢血からのBIM0.1の読み取りは7+3に対する応答に相関するが、FLAMに対する応答には相関しないことを示す。
【0136】
BIM0.1プライミングと比較すると、NOXAプライミングのさらなる調査は、ある薬剤に応答する可能性は低いが、別の薬剤には応答する可能性があることを示す、プライミングの値を有する患者のサブクラスがあることを明らかにした。図6は、従来の7+3研究からの骨髄試料のNOXAプライミング対BIM0.1プライミングを図示する(n=23)。図6のデータは、骨髄試料中のNOXAプライミングと患者の末梢血(PB)試料中のBIM0.1プライミングとを比較することによって、処置前のAML患者に対するがん療法の戦略を選択する方法を提供する。BM NOXA>10.8%およびBM/PB BIM0.1<35%の場合、患者はFLAMの候補者である。BM NOXA<10.8%およびBM/PB BIM0.1>15%の場合、患者は7+3療法の候補者である。BM NOXA<10.8%およびBM/PB BIM0.1>35%の場合も、患者は7+3療法の候補者である。最後に、BM NOXA<10.8%およびBM/PB BIM0.1<15%の場合、患者はFLAMまたは7+3療法のどちらの候補者でもない。
【0137】
実施例3:アルボシジブは、MV−411細胞中のMCL−1のmRNA発現を時間および用量依存的に低下させる
AML細胞株であるMV−4−11はMCL−1を発現する。MCL−1は、MV−4−11細胞において重要な抗アポトーシスタンパク質である。CDK9阻害剤であるアルボシジブはMCL−1のmRNA発現を低下させ、このことは既に文献で良く立証されている。アルボシジブはMV−4−11細胞中でMCL−1のmRNAを用量依存的に下方制御する(図7A)。用量依存性を、細胞に0−8μMの濃度のアルボシジブを投与した際に、対照と比較したMCL−1のmRNAの相対的な発現量をモニターすることによって、観測した。MV−4−11細胞をインビトロ(in vitro)で2時間、アルボシジブ処理した。処理後、細胞を回収し、対照と比較した変化のプローブとしてのMCL−1のmRNAの検出のために、標準的なリアルタイムPCR(RT−PCR)アッセイを用いて調製した。
【0138】
加えて、アルボシジブはまた、MV−4−11細胞中でMCL−1のmRNAを時間依存的に下方制御する(図7B)。時間依存性を、対照と比較したMCL−1のmRNAの相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1のmRNAの相対的な発現量を、100nMのアルボシジブ投与後0.5〜16時間の時点で測定した。
【0139】
図7Bで示す時間の間、MV−4−11細胞をインビトロにおいて100nMアルボシジブで処理した。処理後、細胞を回収し、MCL−1のmRNA発現の検出のために、標準的なRT−PCRアッセイを用いて調製した。アルボシジブは、早くも処理後30分でMCL−1のmRNA発現量を低下させた。MCL−1のmRNAの相対的な発現量は、アルボシジブがMV−4−11細胞においてMCL−1のmRNA発現を低下させることを示す。
【0140】
実施例4:アルボシジブはA549細胞中のMCL−1のmRNA発現を用量依存的に低下させ、発がんタンパク質の発現を時間依存的に低下させる
A549細胞株はヒト腺がん細胞株であり、MCL−1を発現する。アルボシジブはA549細胞中のMCL−1のmRNAを用量依存的に下方制御する(図8)。用量依存性を、細胞に0−8μMの濃度のアルボシジブを投与した際に、対照と比較したMCL−1のmRNAの相対的な発現量をモニターすることによって、観測した。A549細胞をインビトロで2時間、アルボシジブ処理した。処理後、細胞を回収し、対照と比較した変化のプローブとしてのMCL−1のmRNAの検出のために、標準的なRT−PCRアッセイを用いて調製した。
【0141】
加えて、アルボシジブはまた、A549細胞中でMCL−1を時間依存的に下方制御する(図9A−B)。時間依存性を、β−アクチンと比較したMCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を、350nMのアルボシジブ投与後0〜96時間の時点で測定した。一つの群において、処理の24時間後に、培地を除去し、350nMアルボシジブを含む新たな培地に交換した(すなわち、洗浄の工程;図9A参照)。
【0142】
図9A−Bで示す時間の間、A549細胞をインビトロにおいて350nMアルボシジブで処理した。処理(および該当する場合は洗浄の工程)後、細胞を回収し、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量は、アルボシジブがA549細胞において発がんタンパク質の発現を低下させることを示す。
【0143】
実施例5:アルボシジブはMV−4−11細胞中の発がんタンパク質の発現を時間および用量依存的に低下させる
アルボシジブはMV−4−11細胞中のMCL−1を用量依存的に下方制御する(図10A)。用量依存性を、細胞に0−8μMの濃度のアルボシジブを投与した際に、β−アクチンと比較したMCL−1の相対的な発現量をモニターすることによって、観測した。MV4−11細胞をインビトロにおいて2時間、アルボシジブ処理した。処理後、細胞を回収し、β−アクチンと比較した変化のプローブとしてのMCL−1の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。
【0144】
加えて、アルボシジブはまた、MV−4−11中のMCL−1を時間依存的に下方制御する(図10B)。時間依存性を、β−アクチンと比較したMCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を、80nMのアルボシジブ投与後1〜96時間の時点で測定した。
【0145】
図10Bで示す時間の間、MV4−11細胞をインビトロにおいて80nMアルボシジブで処理した。処理後、細胞を回収し、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量は、アルボシジブがMV−4−11細胞において発がんタンパク質の発現を低下させることを示す。
【0146】
実施例6:アルボシジブはSK−N−AS細胞中のN−Myc発現を時間依存的に低下させる
SK−N−AS細胞株は、N−Mycを発現するヒト神経芽細胞腫の細胞株であり、N−Mycは重要な発がんタンパク質である。アルボシジブはSK−N−AS細胞中のN−Mycを時間依存的に下方制御する(図11)。時間依存性を、β−アクチンと比較したN−Mycの相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。N−Mycの相対的な発現量を、300nMのアルボシジブ投与後1〜24時間の時点で測定した。
【0147】
図11で示す時間の間、SK−N−AS細胞をインビトロにおいて300nMアルボシジブで処理した。処理後、細胞を回収し、N−Myc発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。N−Mycの相対的な発現量は、アルボシジブがSK−N−AS細胞においてN−Mycの発現を低下させることを示す。
【0148】
実施例7:アルボシジブは、反復投与のレジメンで、A549細胞中のMCL−1の発現を時間依存的に低下させる
アルボシジブはA549細胞中のMCL−1を時間依存的に下方制御する(図12)。時間依存性を、β−アクチンと比較したMCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を、350nMのアルボシジブ投与後0〜96時間の時点で測定した。
【0149】
細胞をインビトロにおいて350nMアルボシジブで3回(24時間の処理期間を3回、その間に24時間の中断を2回)処理した。処理後、細胞を回収し、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量は、アルボシジブがA549細胞において発がんタンパク質の発現を低下させることを示す。
【0150】
実施例8:アルボシジブはPanc−1細胞中の発がんタンパク質の発現を時間依存的に低下させる
Panc−1細胞株は、MCL−1を発現するヒト膵臓がん細胞株である。アルボシジブはPanc−1細胞中のMCL−1を時間依存的に下方制御する。時間依存性を、β−アクチンと比較したMCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を、730nMのアルボシジブ投与後0〜96時間の時点で測定した。一つの群において、処理の24時間後に、培地を除去し、730nMアルボシジブを含む新たな培地に交換した(すなわち、洗浄の工程;図13A参照)。
【0151】
図13A−Bで示す時間の間、Panc−1細胞をインビトロにおいて730nMアルボシジブで処理した。処理(および該当する場合は洗浄の工程)後、細胞を回収し、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量は、アルボシジブがPanc−1細胞において発がんタンパク質の発現を低下させることを示す。
【0152】
実施例9:アルボシジブは、反復投与のレジメンで、Panc−1細胞中の発がんタンパク質の発現を時間依存的に低下させる
アルボシジブは、反復投与のレジメンを用いると、Panc−1細胞中のMCL−1を時間依存的に下方制御する(図14)。時間依存性を、β−アクチンと比較したMCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を、730nMのアルボシジブ投与後0〜96時間の時点で測定した。
【0153】
細胞をインビトロにおいて730nMアルボシジブで3回(24時間の処理期間を3回、その間に24時間の中断を2回)処理した。処理後、細胞を回収し、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量は、アルボシジブがPanc−1細胞において発がんタンパク質の発現を低下させることを示す。
【0154】
実施例10:アルボシジブはYugen8細胞中の発がんタンパク質の発現を時間依存的に低下させる
Yugen8細胞株は、MCL−1を発現する皮膚がん細胞株である。アルボシジブはYugen8細胞中のMCL−1を時間依存的に下方制御する。時間依存性を、β−アクチンと比較したMCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を、280nMのアルボシジブ投与後0〜96時間の時点で測定した。一つの群において、処理の24時間後に、培地を除去し、280nMアルボシジブを含む新たな培地に交換した(すなわち、洗浄の工程;図15A参照)。
【0155】
図15A−Bで示す時間の間、Yugen8細胞をインビトロにおいて280nMアルボシジブで処理した。処理(および該当する場合は洗浄の工程)後、細胞を回収し、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量は、アルボシジブがYugen8細胞において発がんタンパク質の発現を低下させることを示す。
【0156】
実施例11:アルボシジブは、反復投与のレジメンで、Yugen8細胞中の発がんタンパク質の発現を時間依存的に低下させる
アルボシジブは、反復投与のレジメンを用いると、Yugen8細胞中のMCL−1を時間依存的に下方制御する(図16)。時間依存性を、β−アクチンと比較したMCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を経時的にモニターすることによって、観測した。MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量を、280nMのアルボシジブ投与後0〜96時間の時点で測定した。
【0157】
細胞をインビトロにおいて280nMアルボシジブで3回(24時間の処理期間を3回、その間に24時間の中断を2回)処理した。処理後、細胞を回収し、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2発現の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1、Bcl−xLおよびBcl−2の相対的な発現量は、アルボシジブがYugen8細胞において発がんタンパク質の発現を低下させることを示す。
【0158】
実施例12:アルボシジブはACM(またはFLAM)の組み合わせにおいてMCL−1発現を抑制する
アルボシジブは、インビトロでモデル化されるように(図17A)、ACM(またはFLAM)のレジメン中に、MCL−1の発現を含むスーパーエンハンサー複合体に制御される遺伝子を抑制する。
【0159】
MV−4−11細胞をインビトロにおいて、80nMアルボシジブ、1μMパルボシクリブまたは50nMディナシクリブで処理した。各処理を、図17Aに示すように、それぞれ24時間EC50値で投与した。処理後、細胞を回収し、MCL−1の検出のために、標準的な免疫ブロッティング法を用いて調製した。β−アクチンと比較して、MCL−1の相対的な発現量は、種々の処理がMV−4−11細胞においてMCL−1の発現をどのように低下させるかを示す(図17B)。
【0160】
当業者は、本明細書に具体的に記述された特定の実施態様に対する多くの同等物を、単なる慣例的な実験を用いて、認識し、または確かめることができる。そのような同等物は、ある実施態様の範囲内に包含されることが意図される。
【0161】
参考文献
1 Rezaei, A., et al. "Leukemia Markers Expression of Peripheral Blood Vs Bone Marrow Blasts Using Flow Cytometry." Med Sci Monit. 9.8 (2003): 359-362.2.
2 Almarzooqi, S., et al. "Comparison of Peripheral Blood versus Bone Marrow Blasts Immunophenotype in Pediatric Acute Leukemias." Ibnosina J Med BS 195-204.
3 Zeng, Z., et al. "Targeting the Leukemia Microenvironment by CXCR4 Inhibition Overcomes Resistance to Kinase Inhibitors and Chemotherapy in AML." Blood 113.24 (2009): 6215-6224.
4 Yang, X. " Bone Marrow Stroma-mediated Resistance to FLT3 Inhibitors in FLT3-ITD AML Is Mediated by Persistent Activation of Extracellular Regulated Kinase." Br J Haematol 164.1 (2014): 61-72.
【0162】
本明細書または付属の出願データシートに引用される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許出願は、本明細書と矛盾しない範囲でその全体が、引用によって本明細書に取り込まれる。
【0163】
上述から、本発明の特定の実施態様が説明の目的で本明細書に記載されているが、様々な改変が本発明の精神および範囲を逸脱せずに施され得ることが理解される。したがって、本発明は、補正された特許請求の範囲による場合を除いて、限定されない。

本開示は、例えば以下を提供する。
[1]
がんの処置を必要とする患者のためのがんの処置方法であって、
a)患者の骨髄から得られたがん細胞標本のBH3プロファイリングデータを要求すること、および、
b)がん細胞標本のNOXAプライミングが少なくとも15%である場合に、患者にアルボシジブを含む処置レジメンを施すこと、
を含む方法。
[2]
がん細胞標本のNOXAプライミングが少なくとも20%である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記1記載の方法。
[3]
がん細胞標本のNOXAプライミングが少なくとも25%である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記1記載の方法。
[4]
がん細胞標本のNOXAプライミングが少なくとも30%である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記1記載の方法。
[5]
がん細胞標本から得られたMCL−1発現データを要求し、がん細胞標本のMCL−1発現が、正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合にのみ、患者に処置レジメンを施すことをさらに含む、前記1〜4のいずれかに記載の方法。
[6]
患者の細胞遺伝学的なリスクが高い場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記1〜5のいずれかに記載の方法。
[7]
患者が骨髄異形成症候群(MDS)の既往歴を持つ場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記1〜6のいずれかに記載の方法。
[8]
がん細胞標本を透過処理し、透過処理された細胞を一以上のBH3ドメインペプチドと接触させた際のミトコンドリア膜電位の変化を決定し、ミトコンドリア膜電位の損失をアポトーシスを誘導する化学療法剤に対する細胞の化学的感受性と相関させることを含む方法により、BH3プロファイリングデータを得る、前記1〜7のいずれかに記載の方法。
[9]
BH3ドメインペプチドがBIM、BIM2A、BAD、BID、HRK、PUMA、NOXA、BMF、BIK、PUMA2Aまたはそれらの組み合わせである、前記8記載の方法。
[10]
BH3ドメインペプチドを0.1μMから200μMの範囲の濃度で用いる、前記8または9に記載の方法。
[11]
がんの処置を必要とする患者のためのがんの処置方法であって、
a)患者の骨髄から得られたがん細胞標本のMCL−1発現データを要求すること、および、
b)がん細胞標本のMCL−1発現が、正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合に、患者にアルボシジブを含む処置レジメンを施すこと、
を含む方法。
[12]
がん細胞標本のMCL−1発現が、正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.5倍である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記11記載の方法。
[13]
がん細胞標本のMCL−1発現が正常細胞のMCL−1発現の少なくとも2倍である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記11記載の方法。
[14]
がん細胞標本のMCL−1発現が正常細胞のMCL−1発現の少なくとも5倍である場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記11記載の方法。
[15]
がん細胞標本のBH3プロファイリングデータを要求し、腫瘍またはがん細胞標本のNOXAプライミングが少なくとも15%である場合にのみ、処置レジメンを施すことをさらに含む、前記11〜14のいずれかに記載の方法。
[16]
患者の細胞遺伝学的なリスクが高い場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記11〜15のいずれかに記載の方法。
[17]
患者が骨髄異形成症候群(MDS)の既往歴を持つ場合にのみ、患者に処置レジメンを施す、前記11〜16のいずれかに記載の方法。
[18]
がんが血液がんである、前記1〜17のいずれかに記載の方法。
[19]
血液がんが、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫から選択される、前記18記載の方法。
[20]
血液がんが急性骨髄性白血病(AML)である、前記19記載の方法。
[21]
血液がんが骨髄異形成症候群(MDS)である、前記18記載の方法。
[22]
血液がんが慢性リンパ性白血病(CLL)である、前記18記載の方法。
[23]
処置レジメンが、アルボシジブ、シタラビンおよびミトキサントロン(FLAM)を含む、前記1〜22のいずれかに記載の方法。
[24]
がん細胞標本が非固形腫瘍の生検由来である、前記1〜23のいずれかに記載の方法。
[25]
がん細胞標本が、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫または非ホジキンリンパ腫の患者の生検由来である、前記24記載の方法。
[26]
がん細胞標本が、固体マトリックスまたはビーズに結合した抗CD138抗体による生検試料からの選定によって濃縮された、多発性骨髄腫細胞である、前記25記載の方法。
[27]
がん細胞標本が、CD45に対する抗体と結合することによって濃縮された、急性骨髄性白血病細胞である、前記26記載の方法。
[28]
がん細胞標本が、非B細胞の除去によって濃縮された慢性リンパ性白血病またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、前記26記載の方法。
[29]
アルボシジブを含む処置レジメンに患者が応答する可能性を決定する方法であって、
患者の骨髄からの透過処理されたがん細胞標本を一以上のBH3ドメインペプチドに接触させること、
標本のNOXAプライミングを決定すること、および、
標本のNOXAプライミングが少なくとも15%である場合に、その患者を処置レジメンに応答すると推定される者として分類すること、
を含む方法。
[30]
アルボシジブを含む処置レジメンに患者が応答する可能性を決定する方法であって、
患者の骨髄からのがん細胞標本のMCL−1発現を決定すること、および、
標本のMCL−1発現が正常細胞のMCL−1発現の少なくとも1.1倍である場合に、その患者を処置レジメンに応答すると推定される者として分類すること、
を含む方法。
[31]
応答すると推定される者として分類される患者に処置レジメンを施すことをさらに含む、前記29または30に記載の方法。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17