【文献】
蘓原祥夫,電子戦(電子対処)技術全般,防衛技術ジャーナル,日本,一般財団法人防衛技術協会,2017年11月 1日,第37巻 第11号,Pages 4-11,ISSN 0919-8555
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受信系統は、高レートサンプリング信号を、所定の時間幅に分割し、前記時間幅毎にFFTしたfast-timeの周波数軸の第1の結果と、パルス内の変調信号に対応する時間軸の信号をFFTしたfast-time軸の周波数軸の第2の結果を用いて、前記第1の結果と前記第2の結果を各々N個の同じ周波数帯に分割して、各々の分割毎に相関処理し、各分割周波数帯の中心周波数に対応する位相補正後、各相関処理結果を合成して、低レートのサンプリング信号を得てドップラ及びレンジを抽出する請求項2記載のレーダシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至
図8を参照して、第1の実施形態に係るレーダシステムを説明する。
【0011】
図1乃至
図8は第1の実施形態に係るレーダシステムの構成、処理例を示しており、
図1は送信系統の概略構成を示すブロック図、
図2は受信系統の概略構成を示すブロック図、
図3は送信ファンビーム及び受信マルチビームを形成する様子を示す概念図、
図4は送信系統において混合パルス列を生成する様子を示すタイミング図、
図5は混合パルス列による送信信号に対する受信信号からドップラ信号を抽出する様子を示すタイミング図、
図6は受信信号からパルス列を抽出してレンジセル毎のslow-time軸の処理を行う様子を示すタイミング図、
図7はドップラ補正参照信号による相関処理によって目標のレンジを抽出する様子を示すタイミング図、
図8は時間軸をセル単位でスライディングして畳み込み積分することで目標のレンジを抽出する様子を示すタイミング図である。
【0012】
まず、
図1に示す送信系統では、基準信号生成器11で生成される送信用の基準信号を符号生成器12で生成されるランダム符号を共に変調器13に送り、パルス制御器14からの制御パルスに従って基準信号に符号化変調を施すことでランダムパルス列を生成し、周波数変換器15で高周波(RF)信号に変換し、高出力増幅器16で電力増幅して、送信アンテナ17から送信する。
【0013】
次に、
図2に示す受信系統では、目標からの反射信号を受信アンテナ21で捕捉し、低雑音増幅器22でノイズを低減して増幅した後、周波数変換器23でベースバンドに周波数変換し、AD変換器24でデジタル信号に変換する。その後、ドップラ用パルス列抽出器25で受信信号からドップラ用パルス列を抽出し、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理器26で周波数領域の信号に変換し、ドップラ抽出器27で目標からのドップラ周波数信号を抽出する。続いて、レンジ抽出用参照信号補正器28でレンジ抽出用参照信号を生成し、すでに抽出されたドップラ周波数信号を用いて参照信号を補正する。一方、レンジ用パルス列抽出器29でレンジ用パルス列を抽出し、補正された参照信号を用いて相関処理器2Aでレンジ用パルス列との相関をとり、レンジ抽出器2Bで相関結果から目標のレンジを抽出し、出力処理器2Cで目標の速度を算出して、レンジ・速度情報を出力する。
【0014】
上記構成において、以下に処理動作を説明する。なお、本実施形態に係るレーダシステムでは、
図3に示すように、観測範囲を送信ビームが覆い、受信ビームは、時分割かDBF(Digital Beam Forming)により同時に形成するマルチビームを想定し、長時間の積分ができる場合を考える。ただし、必ずしも長時間積分が必要ということではない。
【0015】
送信パルスは、
図4(a)に示すドップラ抽出用パルス列と
図4(b)に示すレンジ抽出用パルス列の合成して、
図4(c)に示すように生成された混合パルス列である。ドップラ抽出用パルス列は、時間軸で等間隔のパルス列を間引くことにより、周期性を崩してLPI性を確保する。レンジ抽出用パルス列は、パルス幅、パルス間隔及び振幅の少なくともいずれか1つをパルス毎に変える。
図4では、わかりやすいように「パルス振幅は一定」の場合としている。このドップラ抽出用パルス列とレンジ抽出用パルス列を合成(混合)することで、相手方の受信装置に用いられるESM(Electronic Support Measure:電子支援対策)装置のパルス諸元(パルス幅、パルス間隔、パルス振幅)によるレーダ識別を困難にする欺瞞処理を行うものとする。なお、
図4の横軸はfast-time軸の時間である。
【0016】
図1に示す送信系統において、送信信号の生成方法について述べる。高周波信号(RF信号)を得るための基準信号生成(11)を、符号生成(12)によりパルス内及びパルス間の符号を生成した変調信号により変調器(13)で変調し、高周波(RF)信号に周波数変換(15)し、高出力増幅(16)で、変調器(13)で生成したパルス幅に応じて高出力増幅し、送信アンテナ(17)より送信する。この際、パルス制御(14)により、パルス毎に符号系列、パルス幅、パルス間隔、パルス振幅を変化させる。
【0017】
ドップラ抽出用のパルス列Sig1は、同じ符号をパルス間で繰り返すパルスであるが、繰り返し周期を検知しにくくするために、ランダムに間引いた信号とする。
【0019】
レンジ抽出用のパルス列Sig2は、パルス内及びパルス間でランダム符号(M系列等、非特許文献3,4)により変調する。この信号列を用いて、パルス幅及びパルス間隔が異なる送信波形を生成する。この混合波形の様子を
図4に示す。
【0021】
これを合成すると、次式の混合パルス列を生成できる。
【0023】
次に、
図2に示す受信系統において、受信処理を述べる。受信アンテナ21により受信した信号は、低雑音増幅(22)された後、周波数変換(23)されて、AD変換(24)によりデジタル信号になる。このようにして得られた受信信号は、次式となる。
【0025】
本実施形態では、比較的長い観測時間を想定するため、レンジ抽出用パルス列の相関処理の際には、ドップラ補正が必要である。まず、受信パルス列から、既知のパルス間隔のドップラ抽出用パルス列を抽出(25)する。
【0027】
この様子を
図5に示す。
図5(a)は送信パルス列、(b)は受信パルス列、(c)はドップラ抽出用パルス列、(d)はドップラ抽出結果を示している。
【0028】
ここで、ドップラパルス列抽出(25)は、ドップラパルス列のPRI(Pulse Repetetion Interval)に分割する処理であり、レンジ抽出用パルス列を含んでいる。このレンジ抽出用パルスは、次に示すslow-time軸FFTにより、抑圧できるため、
図5では簡単のために、レンジ抽出用パルス列を除去した図としている。一方、パルス内変調を用いてドップラ抽出用とレンジ抽出用のパルスを弁別する手法もあるが、これについては第2の実施形態で述べることとする。
【0029】
上記ドップラ抽出用パルス列を用いて、ドップラ抽出を行うために、fast-time軸のセル毎にslow-time軸のFFT(26)を行う。
【0031】
この様子を
図6に示す。
図6(a)は受信パルス列、(b)はslow-time軸を示している。このSr1out(ωs,tf)を用いて、レンジ−ドップラ軸で、CFAR(非特許文献6)等により検出することで、ドップラfd(ωs=2πfd)を抽出(27)でき、次式により速度に換算できる。
【0033】
次に、レンジ抽出用パルス列を用いて測距を行う手法について述べる。この信号列は、パルス毎に符号が異なるため、
図7に示すように、参照信号との相関処理(2A)になる。
図7において、(a)は送信パルス列、(b)は受信パルス列、(c)はレンジ抽出結果を示している。
【0034】
まず、受信信号Sr(tf)をfast-time軸でFFTする。この場合は、パルス番号pnによらない。
【0036】
参照信号は、ドップラ抽出用パルス列で抽出したドップラによる補正(28)を含めて、信号長を揃えるためにゼロ埋めを行う。
【0040】
(8)式と(10)式より、次式により相関出力Sr2を得る。
【0042】
これにより、レンジ(fast-time)軸で相関出力が得られるため、CFAR処理等により、目標を検出し、目標距離(レンジ)を抽出(2B)できる(
図7参照)。これにより目標のドップラと距離を出力(2C)できる。
【0043】
以上、入力信号と参照信号の相関処理の際に、パルス振幅が0も含めて相関処理を行う場合について述べた。この処理は、処理規模が小さい長所があるが、パルス振幅が0の部分も含めると、ノイズを含めた相関処理になるため、SN(信号対雑音電力比)が低下する。この対策として、
図8に示すように、送信パルス振幅が0以外のレンジ(時間)軸セルを抽出して相関処理する手法が考えられる。
図8において、(a)は送信パルス列、(b)は受信パルス列、(c)は受信信号抽出結果、(d)は受信信号時間のみ抽出した結果、(e)はレンジ抽出結果を示している。ここで、送信パルス振幅が0以外の部分では、周期性が無いため、レンジセルをずらせた畳み込み積分を行う必要があり、処理規模が増えるが、SNを向上できる。以下に、この場合の処理を具体化する。
【0044】
まず、入力信号としては、Sr(tf)であり、送信振幅が0以外の信号系列に従って、開始時間tの受信信号セル列を抽出する。
【0046】
参照信号は、ドップラ抽出用パルス列で抽出したドップラによる補正(28)を含めて、信号長を揃えるために、ゼロ埋めを行う。
【0048】
(12)と(13)を用いて畳み込み積分を行う。
【0050】
以上により、時間軸(レンジ軸)に対応する各相関出力Sr(t)が得られるため、CFAR等を用いて目標の距離を出力することができる。
【0051】
なお、ドップラ抽出においては、加速度がある場合には、
図5及び
図6におけるslow-time軸のFFT時に、パルス列を時系列に分割して、各々の分割単位でFFTして、時系列のドップラfd(t)を抽出してもよい。時系列のドップラfd(t)を、(9)式の参照信号補正に適用することで、レーダと目標の相対目標が加速度を持つ場合にも、本実施形態が適用できることになる。
【0052】
以上のように、第1の実施形態に係るレーダシステムによれば、符号化またはランダム信号(ノイズ)による変調パルスを用いて、レンジ抽出用のパルス幅、パルス間隔、パルス振幅を、パルス毎に変化させたパルス列と、ドップラ抽出用のパルス間隔が一定で、所定の間引き率ρ(ρ≧0)で間引いたパルス列を重複(混合)して送信アンテナより送信し、受信アンテナで受信した信号に対して、ドップラ抽出用のパルス列でドップラを抽出し、抽出したドップラで補正したレンジ抽出用の参照信号を用いて、相関処理により目標のレンジを抽出して、速度とレンジを出力する。すなわち、間引きしたドップラ抽出用パルス列により、ドップラを抽出し、パルス幅、パルス間隔、パルス振幅等を変えることで、LPI性を確保しつつ測距及び測速を行うことができる。
【0053】
(第2の実施形態)角度欺瞞
第1の実施形態では、パルス毎にパルス幅、パルス間隔、パルス振幅を変えることにより、相手側の受信装置に用いられるESM装置を欺瞞する方式について述べた。第2の実施形態では、
図9乃至
図18を参照して、パルス毎にESM装置の測角を欺瞞する方式について述べる。
図9乃至
図18は第2の実施形態に係るレーダシステムの構成、処理例を示しており、
図9は送信系統の概略構成を示すブロック図、
図10は受信系統の概略構成を示すブロック図、
図11は角度欺瞞のための送信開口分割を示す概念図、
図12は高レート信号を低レート信号に変換する処理系統を示すブロック図、
図13は送信系統において混合パルス列を生成する様子を示すタイミング図、
図14は受信信号を高レート信号から低レート信号に変換する様子を示す図、
図15は高レート受信信号からドップラ抽出用パルス内符号列、レンジ抽出用パルス内符号列でそれぞれ相関処理する様子を示す図、
図16は高レート受信信号からM系統のサブアレイ用パルス内符号列でそれぞれ相関処理する様子を示す図、
図17は高レート送受信信号から生成されるサブアレイ分割信号の合成出力を用いてドップラ抽出を行う様子を示す図、
図18は高レート送受信信号から生成されるサブアレイ分割信号の合成出力を用いてレンジ抽出を行う様子を示す図である。
【0054】
まず、角度欺瞞を実施するためには、送信系統を
図9に示すようにM系統(121〜171,…,12M〜17M)に分割し、送信開口を
図11に示すようにM分割して、各々の開口で変調信号を変化させる。これにより、相手側のESM装置では、レーダ波を観測する際に、受信ビーム幅内に複数の信号源があることになり、振幅や位相が異なるベクトル合成によって測角値を欺瞞することができる。
【0055】
次に、この送信分割信号の受信について、
図10乃至
図18を用いて説明する。なお、
図17及び
図18では、簡単のために、送信開口分割が2系統(LとR、M=2)の場合としている。
【0056】
まず、分割単位の各送信信号は、受信処理で分離できるように、
図13(a)のドップラ抽出用パルス列、
図13(b)のレンジ抽出用パルス列、
図13(c)の混合パルス列に示すように、任意の幅のパルス内を高レートでサンプルし、所定の同一幅のサンプル単位で符号変調等を施して、送信開口分割単位のアイソレ−ションを確保する。これにより、送受信のDBFであるMIMO処理(非特許文献6)を行う。送信開口2分割の場合は、送信M=2ch、受信N=1chのM×Nチャンネルの送受信DBFに相当する。また、パルス間では、異なる符号系列、パルス幅、パルス間隔としている。その他、必要に応じて、パルス毎に振幅も変えることができる。
【0057】
受信系統では、
図10に示すように、受信アンテナ21で捕捉された受信信号は、低雑音増幅器22で増幅され、周波数変換器23でベースバンドに変換されて、AD変換器24によりデジタル信号に変換される。この信号は高レートサンプリング信号であるため、レート変換器2Dにおいて、低サンプリングレート信号に変換する。その後、ドップラ用パルス列抽出器251〜25M、レンジ用パルス列抽出器291〜29Mに分配する。
【0058】
次に、ドップラ用パルス列抽出器251〜25Mで抽出されたM系統のドップラ用パルス列をFFT処理器261〜26Mで周波数領域の信号に変換し、補正後合成器2Eで位相を補正して合成し、ドップラ抽出器27でドップラ周波数信号を抽出する。続いて、レンジ抽出用参照信号補正器28でレンジ抽出用参照信号を生成し、すでに抽出されたドップラ周波数信号を用いて参照信号を補正する。一方、M系統のレンジ用パルス列抽出器291〜29Mで抽出されるレンジ用パルス列を抽出し、補正された参照信号を用いて相関処理器2A1〜2AMでレンジ用パルス列との相関をとり、補正後合成器2Fで位相を補正して合成した後、レンジ抽出器2Bで相関合成結果から目標のレンジを抽出し、出力処理器2Cで目標の速度を算出して、レンジ・速度情報を出力する。
【0059】
ここで、上記レート変換器2Dは、
図12に示すように、時間軸分割部2D1、fast-time FFT処理部2D2、周波数分割部2D3、乗算部2D4、fast-time IFFT処理部2D5、位相補正部2D6、相関結果加算部2D7、参照信号生成部2D8、参照信号fast-time FFT処理部2D9、周波数分割部2DAで構成される。
【0060】
上記構成によるレート変換器2Dでは、まず、
図14(a)に示す符号変調信号を入力すると、
図14(b)に示すように、fast-time軸において、所定の時間幅Tdiv毎に信号を時間軸分割(2D1)し、各Tdivにおけるfast-time軸の信号をFFT(2D2)する。
【0062】
なお、Tdivは、ドップラ抽出用のパルスの場合は、間引き前のパルス間隔PRI(Pulse Repetition Interval)が決まっているため、Tdiv=PRIとする。これを
図14(c)に示すようにM系統の周波数帯域に分割(2D3)する。
【0064】
次に、周波数分割毎に、参照信号を相関処理するため、参照信号を生成(2D8)する。
【0070】
これを用いて、各周波数分割毎の相関処理は、乗算(2D4)して、IFFT(2D5)となり、次式となる。
【0072】
この各周波数分割毎の相関処理結果を、位相補正(2D6)して、
図14(d)に示すように加算(2D7)する。
【0074】
補正された位相は、周波数分割帯域毎の信号を加算するための中心周波数差による位相を補正する項であり、次式で表現できる。
【0076】
(22)式の信号は、高レートな(15)式の入力信号に比べて、低レートな信号になっている。
【0077】
この高レート信号を低レート信号に変換する手法は、fast-time軸の信号を所定のTdivで分割して適用できるため、ドップ抽出用とレンジ抽出用のいずれの信号にも適用できる。特に、レンジ抽出用のようなパルス間隔がランダムな場合にも適用できる。
【0078】
例えば、送信サブアレイ分割数Mが1の場合において、ドップラ抽出用とレンジ抽出用で変調符号を変えた場合の適用例を
図15に示す。
図15において、(a)は受信パルス列、(b)はTdiv で区分して時間軸(slow-time)上に揃えた受信パルス列、(c)は低レートに変換したドップラ抽出用パルス内符号化列での相関処理結果、(d)は低レートに変換したレンジ抽出用パルス内符号列での相関処理結果を示している。
【0079】
ここでは、Tdivで分割したfast-time軸の各々に対して、高レート信号を低レート信号に変換する手法を適用する。
【0080】
また、送信サブアレイ毎に変調符号を変えた場合の適用例を
図16に示す。
図16において、(a)は受信パルス列、(b)はTdivで区分して時間軸(slow-time)上に揃えた受信パルス列、(c)は低レートに変換したサブアレイ1用パルス内符号列での相関処理結果、(d)は低レートに変換したサブアレイM用パルス内符号列での相関処理結果を示している。これは、ドップラ抽出用、レンジ抽出用及び送信サブアレイ毎に全て変調符号を変えた場合にも適用できる。この場合は、M(送信アサブアレイ数)×2(ドップラ抽出用、レンジ抽出用)の異なる変調符合が必要となる。
【0081】
この手法を用いて、入力の高レート信号を低レート信号に変換して、ドップラを抽出する処理を
図17に示す。
図17では、簡単のため、送信のサブアレイをLとRの2個に分割した場合を示しているが、勿論、任意のM個の分割であってよい。
図17において、(a),(b)は送信信号L,R、(c)は受信パルス列L,R、(d)はドップラ抽出用パルス列L,R、(e)はFFTパルス列L,R、(f)はドップラ抽出用パルス列の抽出結果を示している。
【0082】
上記構成では、送信信号LとRについて、第1の実施形態と同様に、分割したLとR毎に、全PRI間隔の時間軸に対応するslow-time軸のFFT(261〜26M)を行い、LとRの信号を開口分割の位置と観測方向に応じて各サブアレイの位相を揃えるようにMIMO処理(非特許文献6参照)により位相を補正して合成(2E)した信号により、CFAR等によりドップラを抽出(27)する。次に、入力の高レート信号を低レート信号に変換して、レンジを抽出する様子を
図18に示す。
図18において、(a),(b)は送信信号L,R、(c)は受信パルス列L,R、(d)は相関処理結果L,R、(e)はサブアレイ分割信号の合成からレンジ(距離)を抽出する様子を示している。
【0083】
次に、レート変換器2Dにより、低レートの信号に変換する。この際、
図15や
図16のように、所定の時間幅Tdivで分割して低レート信号に変換するが、レンジ抽出の場合は、低レートに変換後に、分割したTdivの信号を、一軸の時系列に再度並べ替える。この信号を用いて、レンジ用パルス列抽出(291〜29M)により抽出した信号に対して、参照信号ドップラ補正(28)によりドップラ補正した参照信号により、fast-time軸(低レート)で相関処理(2A1〜2AM)し、開口分割の位置と観測方向に応じて位相の補正後に合成(2F)して、CFAR等によりレンジ抽出(2B)して、ドップラとレンジを出力(2C)する。
【0084】
この方式では、開口を送信符号コード分にM分割し、受信は全開口を使った信号を用いて、M分割した信号を合成するMIMO処理であるため、分割及び合成によるSN劣化は生じない。なお、レンジ抽出においては、レンジ抽出用パルス列のみではなく、ドップラ抽出用パルス列を含めて用いてもよい。
【0085】
以上のように、第2の実施形態に係るレーダシステムによれば、送信系統において、符号化またはランダム信号(ノイズ)による変調パルスを用いた場合に、レンジ抽出用のパルス幅、パルス間隔、パルス振幅を、パルス毎に変化させたパルス列と、ドップラ抽出用のパルス間隔が一定で、所定の間引き率ρ(ρ≧0)で間引いたパルス列を重複した混合パルス列を生成し、送信アンテナの開口をM(M≧1)分割し、送信開口の分割単位で、パルス列のパルス内変調を変えたM種の信号を用いて、更に必要に応じて、ドップラ抽出用とレンジ抽出用のパルス内変調を変えた信号を用いて、送信アンテナより送信する。
【0086】
一方、受信系統において、アンテナの全開口で受信した信号に対して、パルス内変調を復調して低レートの信号に変換した後、M種の送信信号に対してパルス列を分離し、送信開口分割単位の位相中心の位相に応じて補正して加算してドップラ抽出する。次に、抽出したドップラで補正したレンジ抽出用の参照信号を用いて、M種の送信信号に対して相関処理した結果を、送信開口分割単位の位相中心の位相に応じて補正して加算してレンジ抽出して、速度とレンジを出力する。すなわち、間引きしたドップラ抽出用パルス列により、ドップラを抽出し、送信開口を分割して、分割単位で符号系列を変えることにより、相手の受信器の測角性能に対するLPI性を確保するとともに、測距及び測速ができる。
【0087】
また、上記システムでは、高レートサンプリング信号を、所定の時間幅Tdivに分割し、各TdivにおいてFFTしたfast-timeの周波数軸の結果Sig_fftと、パルス内の変調信号に対応する時間軸の信号をFFTしたfast-time軸の周波数軸の結果Ref_fftを用いて、Sig_fftとRef_fftを各々Ndiv個の同じ周波数帯に分割して、各々の分割毎に相関処理し、各分割周波数帯の中心周波数に対応する位相補正後、各相関処理結果を合成して、低レートのサンプリング信号を得て、ドップラ及びレンジを抽出する。すなわち、送信開口を分割して、分割単位で符号系列を変えたパルス内変調のような高レート信号を低レート信号に変換することにより、処理規模を低減して、測距及び測速ができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。