(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の流路は、前記ガスが流入可能な第1の部分と、前記第2の開口に連通された第2の部分と、前記第2の開口の少なくとも一部よりも前記端部に近い位置で前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分と、を有する、請求項1乃至請求項5のいずれか一つの溶接装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図3を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称で特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によって説明され得る。
【0008】
図1は、第1の実施形態に係る溶接装置1を概略的に示す例示的な断面図である。本実施形態における溶接装置1は、レーザビーム溶接により、対象物2を溶接する。なお、溶接装置1は、この例に限られず、例えば、レーザビーム溶接とアーク溶接とを組み合わせて対象物2を溶接しても良い。
【0009】
本実施形態において、対象物2は、金属製の部材であり、略平坦な表面2aを有する。溶接装置1は、表面2aにレーザ光Lを照射することで、対象物2を溶接する。レーザ光Lは、エネルギー線の一例である。なお、対象物2は、上記の例に限られず、例えば曲面状の表面2aを有しても良い。
【0010】
図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸及びY軸は、表面2aに沿う。Z軸は、表面2aと直交する。
【0011】
以下の説明では、Z軸の正方向(Z軸の矢印が示す方向)が鉛直上方であり、Z軸の負方向(Z軸の矢印の反対方向)が鉛直下方であるものとする。なお、溶接装置1及び対象物2の位置及び方向は、以下の説明に限定されない。
【0012】
溶接装置1は、光学装置11と、ガス供給装置12と、ワイヤ供給装置13と、吸引装置14と、移動装置15とを有する。光学装置11は、照射装置の一例である。ガス供給装置12は、ノズル装置の一例である。なお、溶接装置1は、ワイヤ供給装置13を省略されても良い。
【0013】
光学装置11は、対象物2の上方に位置し、レーザ光Lを対象物2の表面2aに照射する。光学装置11は、例えば、CWレーザ(Continuous wave laser)であり、発振素子の発振によりレーザ光Lを出射する。なお、光学装置11は、パルスレーザであっても良い。また、光学装置11は、例えば、表面2aにおけるレーザ光Lの照射位置Pを移動(走査)可能なガルバノスキャナをさらに有しても良い。
【0014】
ガス供給装置12は、ノズル21を有する。ノズル21は、例えば、部材とも称され得る。また、ノズル21は、単体でノズル装置の一例たり得る。ノズル21は、表面2aから上方に離間するとともに、照射位置PからX軸の負方向(X軸の矢印の反対方向)に離間する。なお、ノズル21の一部が、照射位置Pの上方に位置しても良い。
【0015】
ガス供給装置12は、ノズル21から、吐出方向DeにシールドガスG1を吐出する。吐出方向Deは、第1の方向の一例である。シールドガスG1は、シールドガス及び第1のガスの一例である。シールドガスG1は、窒素、アルゴン、又はヘリウムのような不活性ガスである。
【0016】
本実施形態において、吐出方向Deは、X軸の正方向(X軸の矢印が示す方向)とZ軸の負方向との間の方向(斜め下方向)である。なお、吐出方向Deは、この例に限られず、例えばZ軸の負方向であっても良い。
【0017】
吐出方向Deは、表面2aに向く方向でもある。このため、ノズル21から吐出されたシールドガスG1は、表面2aに衝突するとともに、表面2aに沿って広がり、照射位置Pに到達する。このように、ノズル21は、照射位置PにシールドガスG1を供給する。なお、吐出方向Deは、ノズル21から照射位置Pに向かう方向であっても良い。
【0018】
ワイヤ供給装置13は、照射位置PからX軸の正方向に離間する。このため、照射位置Pは、X軸方向において、ノズル21とワイヤ供給装置13との間に位置する。ワイヤ供給装置13は、ワイヤWを照射位置Pに供給する。ワイヤWは、例えば、溶接棒、溶加材、又は電極とも称され得る。
【0019】
吸引装置14は、照射位置PからX軸の正方向に離間するとともに、ワイヤ供給装置13の上方に位置する。このため、照射位置Pは、X軸方向において、ノズル21と吸引装置14との間に位置する。吸引装置14は、例えば、シールドガスG1のような気体を吸引する。
【0020】
移動装置15は、例えば、対象物2を支持する。移動装置15は、対象物2を、X軸方向及びY軸方向に移動させる。これにより、光学装置11、ガス供給装置12、ワイヤ供給装置13、及び吸引装置14は、対象物2に対して相対的に移動する。なお、移動装置15は、光学装置11、ガス供給装置12、ワイヤ供給装置13、及び吸引装置14を移動させても良い。
【0021】
移動装置15は、光学装置11、ガス供給装置12、ワイヤ供給装置13、及び吸引装置14を、進行方向Daへ対象物2に対して相対的に移動させる。進行方向Daは、照射側方向及び第2の方向の一例であり、走査方向とも称され得る。なお、移動装置15は、光学装置11、ガス供給装置12、ワイヤ供給装置13、及び吸引装置14を、進行方向Daの反対方向や、Y軸方向のような他の方向にも移動させることができる。
【0022】
本実施形態において、進行方向Daは、X軸の正方向である。すなわち、進行方向Daは、対象物2の表面2aに沿う方向であって、ノズル21から照射位置Pに向かう方向である。このため、ノズル21は、レーザ光Lによって溶融した部分に向かって、対象物2に対して相対的に移動する。また、進行方向Daは、吐出方向Deと交差する方向である。なお、光学装置11、ガス供給装置12、ワイヤ供給装置13、及び吸引装置14が、進行方向Daの反対方向へ対象物2に対して相対的に移動しても、溶接は可能である。
【0023】
ガス供給装置12は、網部材22と、マニホールド23と、第1の調整装置24と、第2の調整装置25とをさらに有する。なお、ガス供給装置12は、第1の調整装置24又は第2の調整装置25が省略されても良い。
【0024】
図2は、第1の実施形態のノズル21を概略的に示す例示的な斜視図である。ノズル21は、例えば、金属により一体に形成される。ノズル21は、例えば、3Dプリンタのような積層造形装置により製造されることで、容易に作られ得る。なお、ノズル21は、組み合わされた複数の部材によって形成されても良い。
【0025】
図3は、第1の実施形態のノズル21及びマニホールド23を概略的に示す例示的な断面図である。
図2及び
図3に示すように、ノズル21は、大よそ吐出方向Deに延びる。ノズル21は、第1の端面31と、第2の端面32と、前面33と、後面34と、二つの側面35と、フランジ36とを有する。第1の端面31は、端部の一例である。前面33は、外面の一例である。前面33、後面34、及び側面35の名称は、進行方向Daを基準として便宜上付されるものであり、前面33、後面34、及び側面35の位置及び向きを限定するものではない。
【0026】
第1の端面31、第2の端面32、前面33、後面34、及び側面35は、ノズル21の外部に露出された、ノズル21の外面である。なお、第1の端面31、第2の端面32、前面33、後面34、及び側面35の少なくとも一部が、他の部材に覆われても良い。
【0027】
図1に示すように、第1の端面31は、吐出方向Deにおけるノズル21の端部である。また、第1の端面31は、Z軸の負方向におけるノズル21の端部でもある。第1の端面31は、X−Y平面に広がり、Z軸の負方向に向く略平坦な面である。このため、第1の端面31は、対象物2の表面2aと略平行な面である。第1の端面31は、間隔を介して表面2aに向く。第2の端面32は、第1の端面31の反対側に位置する。
【0028】
前面33、後面34、及び側面35はそれぞれ、第1の端面31と、第2の端面32との間に設けられる。前面33、後面34、及び側面35の一方の端部は、第1の端面31に接続される。言い換えると、前面33、後面34、及び側面35は、第1の端面31から、第2の端面32に向かって延びる。
【0029】
前面33は、X軸方向において、X軸の正方向に向く。別の表現によれば、前面33が向く方向の単位ベクトルは、X軸の正方向の成分を含む。また、前面33の少なくとも一部は、第1の端面31、第2の端面32、後面34、及び側面35に対してX軸の正方向に位置する。
【0030】
図3に示すように、前面33は、曲面33aと、平面33bとを有する。曲面33aは、第1の端面31に接続され、平面33bよりも第1の端面31に近い、略円弧状の曲面である。曲面33aは、X軸の正方向とZ軸の負方向との間の方向(斜め下方向)に向く部分と、X軸の正方向に向く部分と、X軸の正方向とZ軸の正方向との間の方向(斜め上方向)に向く部分と、を有する。平面33bは、曲面33aから第2の端面32に向かって延び、斜め上方向に向く、略平坦な面である。なお、前面33は、この例に限られない。
【0031】
後面34は、前面33の反対側に位置する。後面34は、X軸方向において、X軸の負方向に向く。
図2に示すように、側面35は、Y軸方向に向く。フランジ36は、側面35からY軸方向に突出する。フランジ36は、例えばネジによって、マニホールド23に取り付けられる。
【0032】
図3に示すように、ノズル21に、第1の流路41と、第1の流入口42と、第1の流出口43と、第2の流路44と、第2の流入口45と、第2の流出口46とが設けられる。第1の流出口43は、第1の開口の一例である。第2の流出口46は、第2の開口の一例である。
【0033】
第1の流路41は、ノズル21の内部に設けられ、吐出方向Deに延びる。このため、前面33は、第1の流路41に対してX軸の正方向(進行方向Da)に位置(離間)する。本実施形態では、第1の流路41の断面積は、吐出方向Deに向かうにつれて大きくなる。なお、第1の流路41は、この例に限られない。
【0034】
第1の流入口42は、第2の端面32に設けられ、第1の流路41に連通する。言い換えると、第1の流入口42は、第2の端面32に開口する第1の流路41の一方の端部である。
【0035】
第1の流出口43は、第1の端面31に設けられ、第1の流路41に連通する。言い換えると、第1の流出口43は、第1の端面31に開口する第1の流路41の他方の端部である。第1の流出口43は、対象物2の表面2aに向かって開口する。
【0036】
第2の流路44は、ノズル21の内部に設けられ、大よそ吐出方向Deに延びる。第2の流路44は、第1の流路41と前面33との間に位置する。なお、第2の流路44は、この例に限られない。例えば、第1の流路41と第2の流路44とが、Y軸方向に並んでも良い。第2の流路44は、第1の流路41から隔てられる。別の表現によれば、第2の流路44は、第1の流路41から独立して設けられる。
【0037】
第2の流入口45は、第2の端面32に設けられ、第2の流路44に連通する。言い換えると、第2の流入口45は、第2の端面32に開口する第2の流路44の一方の端部である。
【0038】
第2の流出口46は、前面33に設けられ、第2の流路44に連通する。言い換えると、第2の流出口46は、前面33に開口する第2の流路44の他方の端部である。第2の流出口46は、複数の孔51を有する。複数の孔51は、複数の第1の孔55と、複数の第2の孔56とを含む。
【0039】
図2に示すように、第1の孔55は、前面33の曲面33aに設けられる。第1の孔55は、Y軸方向に延びるスリットである。第1の孔55は、Z軸方向に並べられる。なお、第1の孔55は、この例に限られず、例えば略円形の孔であっても良い。
【0040】
第2の孔56は、平面33bに設けられる。このため、第2の孔56は、第1の孔55よりも第1の端面31から離間している。第2の孔56は、略円形の孔である。第2の孔56は、例えば、Y軸方向及びZ軸方向に格子状に並べられる。なお、第2の孔56は、この例に限られず、例えばスリットであっても良い。
【0041】
それぞれの第1の孔55は、それぞれの第2の孔56よりも大きい。また、孔51の密度は、第1の端面31に近いほど大きい。孔51の密度は、前面33における単位面積当たりの孔51の面積である。
【0042】
図3に示すように、網部材22は、第1の流路41に配置される。網部材22は、例えば、網、多孔質、又はスチールウールのような、気体が通行可能な部材である。網部材22は、例えば、ピンによってノズル21に保持される。
【0043】
図1に示すように、マニホールド23に、第1の供給流路61と、第2の供給流路62とが設けられる。第1の供給流路61は、第1の調整装置24と第1の流入口42とを接続する。第2の供給流路62は、第2の調整装置25と第2の流入口45とを接続する。
【0044】
第1の調整装置24は、シールドガスG1を、第1の供給流路61を介して第1の流路41に供給する。第1の調整装置24は、例えば、シールドガスG1を収容するタンクと、当該タンクと第1の供給流路61との間に設けられたバルブと、を有する。第1の調整装置24は、例えばバルブにより、第1の流路41へのシールドガスG1の流入を調整可能である。例えば、第1の調整装置24は、第1の流路41へのシールドガスG1の供給の有無や、シールドガスG1の流量を調整できる。
【0045】
第2の調整装置25は、保護ガスG2を、第2の供給流路62を介して第2の流路44に供給する。第2の調整装置25は、例えば、保護ガスG2を収容するタンクと、当該タンクと第2の供給流路62との間に設けられたバルブと、を有する。第2の調整装置25は、例えばバルブにより、第2の流路44への保護ガスG2の流入を調整可能である。例えば、第2の調整装置25は、第2の流路44への保護ガスG2の供給の有無や、保護ガスG2の流量を調整できる。
【0046】
本実施形態において、保護ガスG2は、シールドガスG1と同じガスである。すなわち、保護ガスG2は、窒素、アルゴン、又はヘリウムのような不活性ガスである。このため、シールドガスG1を収容するタンクと、保護ガスG2を収容するタンクとが、一つのタンクであっても良い。なお保護ガスG2は、この例に限られず、空気のような他のガスであっても良い。
【0047】
以上の溶接装置1において、光学装置11が、対象物2に対して相対的に移動しながら、対象物2の表面2aにレーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、対象物2及びワイヤWを溶融し、対象物2を溶接する。
【0048】
第1の調整装置24から、第1の流路41にシールドガスG1が流入する。第1の流出口43は、第1の流路41を流れるシールドガスG1を、表面2aに向かって、吐出方向Deに吐出する。例えば、シールドガスG1は、表面2aに衝突するとともに、表面2aに沿って広がり、照射位置Pに到達する。これにより、照射位置PがシールドガスG1によって大気から遮蔽され、照射位置Pにおいて酸化が生じることが抑制される。
【0049】
レーザ光Lにより対象物2及びワイヤWが溶融すると、照射位置Pから金属ヒュームFが発生する。金属ヒュームFは、蒸発した対象物2及びワイヤWの蒸気や、当該蒸気が凝集した粒子を含む。金属ヒュームFは、照射位置Pから略上方向に上る。このため、対象物2に対して進行方向Daに相対的に移動するノズル21は、金属ヒュームFに近づく。
【0050】
第2の調整装置25から、第2の流路44に保護ガスG2が流入する。第2の流出口46の複数の孔51は、第2の流路44を流れる保護ガスG2を、X軸の正方向、又はX軸の正方向とZ軸の正方向との間の方向(斜め上方向)に吐出する。複数の孔51は、保護ガスG2をX軸の正方向に吐出する孔51と、保護ガスG2を斜め上方向に吐出する孔51と、を含んで良い。
【0051】
X軸の正方向は、前面33から進行方向Daに離れる方向であって、表面2aと平行な方向である。斜め上方向は、前面33から進行方向Daに離れる方向であって、表面2aから離間する方向である。
【0052】
複数の孔51が保護ガスG2を吐出することで、前面33の近傍に、保護ガスG2の層が形成される。保護ガスG2の層は、前面33と金属ヒュームFとの間に介在し、金属ヒュームFが前面33に付着することを抑制する。
【0053】
第2の流出口46から吐出される保護ガスG2は、金属ヒュームFを進行方向Daへ流す。さらに、第1の流出口43から吐出され、表面2aに沿って広がるシールドガスG1も、金属ヒュームFを進行方向Daへ流す。これにより、金属ヒュームFは、前面33から遠ざかり、前面33に付着することが抑制される。
【0054】
さらに、吸引装置14は、シールドガスG1及び保護ガスG2を吸引する。このため、ノズル21から吸引装置14へ向かうシールドガスG1及び保護ガスG2の流れが生じる。金属ヒュームFは、当該流れに乗って吸引装置14に吸引される。これにより、金属ヒュームFは、前面33から遠ざかり、前面33に付着することが抑制される。
【0055】
以上説明された第1の実施形態に係る溶接装置1において、ノズル21は、表面2aに向く第1の端面31と、第1の端面31に接続されるとともに第1の流路41に対して進行方向Daに位置する前面33と、を有する。第1の端面31に、第1の流路41に連通するとともにシールドガスG1を表面2aに向かって吐出方向Deに吐出可能な第1の流出口43が設けられる。前面33に、第2の流路44に連通するとともに、前面33から進行方向Daに離れる方向に保護ガスG2を吐出可能な第2の流出口46が設けられる。ノズル21が進行方向Daに移動すると、ノズル21の前面33が、照射位置Pに生じた金属ヒュームFに向かって移動する。しかし、前面33に設けられた第2の流出口46から保護ガスG2が吐出されることで、保護ガスG2の層が金属ヒュームFと前面33との間に介在し、金属ヒュームFが前面33に付着することを抑制する。これにより、前面33に付着した金属ヒュームFが対象物2へと剥落して溶接歩留まりが低下すること、が抑制される。
【0056】
第2の流出口46から吐出される保護ガスG2は、シールドガスG1と同じガスである。これにより、第2の流出口46から吐出される保護ガスG2が、シールドガスG1と異なる影響を溶接に生じさせることが抑制される。
【0057】
第1の調整装置24が第1の流路41へのシールドガスG1の流入を調整し、第2の調整装置25が第2の流路44への保護ガスG2の流入を調整する。これにより、照射位置Pへ供給されるシールドガスG1の流量と、前面33を保護する保護ガスG2の流量と、をそれぞれ独立して調整することができる。従って、シールドガスG1の流量と保護ガスG2の流量とが、互いを制限することが抑制される。
【0058】
前面33は第1の端面31に近いほど、照射位置Pに近く、金属ヒュームFが付着しやすい。本実施形態では、第2の流出口46は、第1の孔55と、第1の孔55よりも第1の端面31から離間した第2の孔56とを含む。第1の孔55は、第2の孔56よりも大きい。これにより、第1の端面31に近い第1の孔55から吐出される保護ガスG2の流量が、第1の端面31から遠い第2の孔56から吐出される保護ガスG2の流量より多くなり、前面33の第1の端面31に近い部分に金属ヒュームFが付着することが抑制される。
【0059】
第2の流出口46は、表面2aと平行な方向に、又は表面2aから離間する方向に、保護ガスG2を吐出可能である。これにより、第2の流出口46から吐出された保護ガスG2がシールドガスG1に干渉することが抑制される。従って、保護ガスG2に干渉されたシールドガスG1に渦が生じて照射位置Pに酸化が生じることが抑制される。
【0060】
前面33は第1の端面31に近いほど、照射位置Pに近く、金属ヒュームFが付着しやすい。本実施形態では、第2の流出口46は、複数の孔51を有する。複数の孔51の密度は、第1の端面31に近いほど大きい。これにより、第1の端面31に近い位置で孔51から吐出される保護ガスG2の流量が、第1の端面31から遠い位置で孔51から吐出される保護ガスG2の流量より多くなり、前面33の第1の端面31に近い部分に金属ヒュームFが付着することが抑制される。
【0061】
吸引装置14は、照射位置Pから進行方向Daに離間し、保護ガスG2を吸引可能である。これにより、第2の流出口46から吸引装置14までの保護ガスG2の流れが生じる。従って、金属ヒュームFが保護ガスG2によって吸引装置14に向かって流され、金属ヒュームFが前面33に付着することが抑制される。
【0062】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図4を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0063】
図4は、第2の実施形態に係るノズル21及びマニホールド23を概略的に示す例示的な断面図である。
図4に示すように、第2の実施形態の第2の流路44は、第1の部分71と、第2の部分72と、第3の部分73とを有する。
【0064】
第2の流入口45が、第1の部分71に連通する。言い換えると、第2の流入口45は、第2の端面32に開口する第1の部分71の一方の端部である。このため、保護ガスG2が、第2の供給流路62を介して第1の部分71に流入する。
【0065】
第2の部分72は、第1の部分71と前面33との間に位置する。言い換えると、第2の部分72は、第1の部分71よりも前面33に近い。なお、第2の部分72は、この例に限られない。例えば、第1の部分71と第2の部分72とが、Y軸方向に並んでも良い。第2の流出口46が、第2の部分72に連通する。
【0066】
第3の部分73は、第2の流出口46の少なくとも一部よりも第1の端面31に近い位置で、第1の部分71と第2の部分72とを接続する。本実施形態では、第3の部分73は、第2の流出口46の第2の孔56よりも第1の端面31に近い位置で、第1の部分71の他方の端部と第2の部分72の他方の端部とを接続する。このため、第2の孔56は、第3の部分73よりも下流に位置する。一方、第1の孔55と第1の端面31との間の距離は、第3の部分73と第1の端面31との間の距離と略等しい。
【0067】
第2の調整装置25は、第2の供給流路62を介して、第1の部分71に保護ガスG2を供給する。保護ガスG2は、第1の部分71から、第3の部分73を通って、第2の部分72へと流れる。
【0068】
第2の実施形態において、第1の孔55は、第2の孔56よりも上流で第2の流路44に連通する。このため、保護ガスG2は、第2の孔56よりも先に、第1の孔55に到達する。第1の孔55から吐出される保護ガスG2の流量は、第2の孔56から吐出される保護ガスG2の流量よりも多くなる。
【0069】
以上説明されたように、前面33は第1の端面31に近いほど、照射位置Pに近く、金属ヒュームFが付着しやすい。第2の実施形態の溶接装置1において、第2の流路44は、保護ガスG2が流入可能な第1の部分71と、第2の流出口46に連通された第2の部分72と、第2の流出口46の少なくとも一部よりも第1の端面31に近い位置で第1の部分71と第2の部分72とを連通する第3の部分73と、を有する。これにより、第1の部分71から第3の部分73を介して第2の部分72に流入した保護ガスG2は、第2の流出口46の、第1の端面31に近い部分から吐出されやすい。従って、第2の流出口46から吐出される保護ガスG2の流量は、第1の端面31に近いほど多くなり、前面33の第1の端面31に近い部分に金属ヒュームFが付着することが抑制される。
【0070】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、
図5を参照して説明する。
図5は、第3の実施形態に係るノズル21を概略的に示す例示的な断面図である。
図5に示すように、第3の実施形態は、前面33の形状が第2の実施形態と異なる。なお、
図5において第1の部分71及び第2の部分72を二点鎖線で区切るように、第3の実施形態は、第1の実施形態の溶接装置1にも適用可能である。
【0071】
第3の実施形態において、前面33は、X軸の正方向(進行方向Da)に向かって凸に突き出た形状を有する。例えば、前面33は、頂部33cと、斜部33dとを有する。頂部33cは、斜部33d及び側面35に対してX軸の正方向に位置する。斜部33dは、頂部33cと側面35との間に設けられ、X軸の正方向に向かうに従って頂部33cに近づく。第2の流出口46の複数の孔51は、頂部33c及び斜部33dに設けられる。
【0072】
図5の例では、頂部33cは、Y軸方向における前面33の略中央に位置する。しかし、頂部33cはこの例に限られない。例えば、頂部33cは、Y軸方向において、一方の側面35と略同一位置に設けられても良い。
【0073】
また、
図5の例では、斜部33dは、略平坦に形成される。しかし、斜部33dはこの例に限られない。例えば、斜部33dは、頂部33cと側面35との間の仮想平面から、窪んでも良いし、突出しても良い。
【0074】
以上説明された第3の実施形態の溶接装置1において、前面33は、進行方向Daに向かって凸に突き出た形状を有する。すなわち、前面33が略流線形に形成されるため、金属ヒュームFが前面33に沿って流れやすくなる。従って、金属ヒュームFが前面33に付着することが抑制される。また、頂部33cに第2の流出口46が設けられることで、頂部33cに金属ヒュームFが付着することが抑制される。
【0075】
以上の複数の実施形態において、第2の流出口46は、複数の孔51を有する。しかし、第2の流出口46は、吐出方向Deに延びるスリットのような一つの孔であっても良い。また、第2の流出口46は、前面33のみならず、側面35に設けられても良い。
【0076】
以上説明された少なくとも一つの実施形態によれば、ノズルは、表面に向く端部と、端部から延びるとともに第1の流路に対して照射側方向に位置する外面と、を有する。端部に、第1の流路に連通するとともにシールドガスを表面に向かって吐出可能な第1の開口が設けられる。外面に、第2の流路に連通するとともに、外面から照射側方向に離れる方向にガスを吐出可能な第2の開口が設けられる。ノズルが照射側方向に移動すると、ノズルの外面が、照射位置に生じた金属ヒュームに向かって移動する。しかし、外面に設けられた第2の開口からガスが吐出されることで、ガスの層が金属ヒュームと外面との間に介在し、金属ヒュームが外面に付着することを抑制する。これにより、外面に付着した金属ヒュームが対象物へと剥落して溶接歩留まりが低下することが抑制される。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲の内容を付記する。
[1]
エネルギー線を対象物の表面に照射可能な照射装置と、
シールドガスが流れる第1の流路と、前記第1の流路から隔てられるとともにガスが流れる第2の流路と、が設けられ、前記表面における前記エネルギー線の照射位置から離間し、前記表面に沿う方向であって前記照射位置に向かう照射側方向へ前記対象物に対して相対的に移動可能であり、前記照射位置に前記シールドガスを供給可能な、ノズルと、
を具備し、
前記ノズルは、前記表面に向く端部と、前記端部に接続されるとともに前記第1の流路に対して前記照射側方向に位置する外面と、を有し、
前記端部に、前記第1の流路に連通するとともに前記シールドガスを前記表面に向かって吐出可能な第1の開口が設けられ、
前記外面に、前記第2の流路に連通するとともに、前記外面から前記照射側方向に離れる方向に前記ガスを吐出可能な第2の開口が設けられる、
溶接装置。
[2]
前記ガスは、前記シールドガスと同じガスである、[1]の溶接装置。
[3]
前記第1の流路への前記シールドガスの流入を調整可能な第1の調整装置と、
前記第2の流路への前記ガスの流入を調整可能な第2の調整装置と、
をさらに具備する[1]又は[2]の溶接装置。
[4]
前記第2の開口は、第1の孔と、前記第1の孔よりも前記端部から離間した第2の孔と、を含み、
前記第1の孔は、前記第2の孔よりも大きい、
[1]乃至[3]のいずれか一つの溶接装置。
[5]
前記第2の開口は、前記表面と平行な方向に、又は前記表面から離間する方向に、前記ガスを吐出可能である、[1]乃至[4]のいずれか一つの溶接装置。
[6]
前記第2の流路は、前記ガスが流入可能な第1の部分と、前記第2の開口に連通された第2の部分と、前記第2の開口の少なくとも一部よりも前記端部に近い位置で前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分と、を有する、[1]乃至[5]のいずれか一つの溶接装置。
[7]
前記外面は、前記照射側方向に向かって凸に突き出た形状を有する、[1]乃至[6]のいずれか一つの溶接装置。
[8]
前記第2の開口は、複数の孔を有し、
前記複数の孔の密度は、前記端部に近いほど大きい、
[1]乃至[7]のいずれか一つの溶接装置。
[9]
前記照射位置から前記照射側方向に離間し、前記ガスを吸引可能な吸引装置、をさらに具備する[1]乃至[8]のいずれか一つの溶接装置。
[10]
第1の流路と、前記第1の流路から隔てられる第2の流路と、が設けられたノズル、
を具備し、
前記ノズルは、第1の方向における端部と、前記端部に接続されるとともに前記第1の流路に対して前記第1の方向と交差する第2の方向に位置する外面と、を有し、
前記端部に、前記第1の流路に連通し、前記第1の流路を流れる第1のガスを前記第1の方向に吐出可能な第1の開口、が設けられ、
前記外面に、前記第2の流路に連通し、前記外面から前記第2の方向に離れる方向に、前記第2の流路を流れる第2のガスを吐出可能な第2の開口、が設けられる、
ノズル装置。
[11]
前記第1の流路への前記第1のガスの流入を調整可能な第1の調整装置と、
前記第2の流路への前記第2のガスの流入を調整可能な第2の調整装置と、
をさらに具備する[10]のノズル装置。
[12]
前記第2の開口は、第1の孔と、前記第1の孔よりも前記端部から離間した第2の孔と、を含み、
前記第1の孔は、前記第2の孔よりも大きい、
[10]又は[11]のノズル装置。
[13]
前記第2の流路は、前記第2のガスが流入可能な第1の部分と、前記第2の開口に連通された第2の部分と、前記第2の開口の少なくとも一部よりも前記端部に近い位置で前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分と、を有する、[10]乃至[12]のいずれか一つのノズル装置。
[14]
前記外面は、前記第2の方向に向かって凸に突き出た形状を有する、[10]乃至[13]のいずれか一つのノズル装置。
[15]
前記第2の開口は、複数の孔を有し、
前記複数の孔の密度は、前記端部に近いほど大きい、
[10]乃至[14]のいずれか一つのノズル装置。