(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2組成物の熱可塑性エラストマーが、少なくとも1個のスチレンブロック(そのスチレンモノマーは置換されているかまたは置換されていない)と少なくとも1個のジエンブロックとを含む非水素化または部分水素化ブロックコポリマーからなる群から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項記載の多層ラミネート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量パーセントである。
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外する)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを包含する)。
【0017】
本出願においては、“エラストマー100部当りの部”または“phr”は、検討する組成物(第1組成物または第2組成物)のエラストマー(1種以上)の100質量部当りの、即ち、検討する組成物中に存在する、熱可塑性または非熱可塑性のいずれであれ、エラストマー(1種以上)の総質量当りの構成成分の質量部を意味する。従って、60phrでの構成成分は、例えば、検討する組成物の100gのエラストマー当りの60gのこの構成成分を意味する。
【0018】
そのように、本発明の第1の主題は、少なくとも2層の重ね合せ層を含むタイヤ用の多層ラミネートである:
・第1層としての、少なくとも50phrの、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの1種以上のコポリマーを含む第1組成物、
・第2層としての、i) 少なくとも50phrの、上記イソブチレンと置換または非置換スチレンとのコポリマー(1種以上)と相溶性の少なくとも1個の第1ブロックとジエンポリマーと相溶性の少なくとも1個の第2ブロックとを含む1種以上の熱可塑性エラストマーと、ii) 1種以上のポリアリールエーテルポリマーとを含む第2組成物。
【0019】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、知られている通り、熱可塑性ポリマーとエラストマーの間の中間の構造を有するポリマーを意味するものと理解されたい。
熱可塑性エラストマーは、1以上の可撓性“エラストマー”配列に連結した1以上の硬質“熱可塑性”配列からなる。上記硬質および可撓性セグメントは、線状に、或いは星型枝分れまたは枝分れ形状で位置させ得る。
【0020】
典型的には、これらのセグメントまたはブロックの各々は、少なくとも5個よりも多い、一般的には10個よりも多い基本単位を含有する。
【0021】
既に説明しているように、本発明に従う多層ラミネートの第1層は、少なくとも50phのイソブチレンと置換または非置換スチレンとの1種以上のコポリマーを含む第1組成物からなる。
換言すれば、上記第1組成物のイソブチレンと置換または非置換スチレンとのコポリマーの含有量は、50phr〜100phrである。
【0022】
イソブチレンと置換または非置換スチレンとのコポリマーは、イソブチレンモノマーに由来する単位と置換または非置換スチレン単位に由来する単位の少なくとも1種の混合物からなるポリマーを意味するものと理解されたい。
【0023】
本発明の意義の範囲内において、置換または非置換スチレンモノマーは、非置換または置換スチレンをベースとする任意のモノマーを意味するものと理解されたい。置換スチレンのうちでは、メチルスチレン、例えば、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン;並びに、クロロスチレン、例えば、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンを挙げることができる。
【0024】
イソブチレンと置換または非置換スチレンとのこのまたはこれらのコポリマーは、本発明の意義の範囲内において、熱可塑性エラストマーである。
イソブチレンと置換または非置換スチレンとのこのまたはこれらのコポリマーは、一般に、上記多層ラミネートに優れた気密特性を付与する。
【0025】
好ましくは、本発明においては、上記第1組成物のイソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)は、イソブチレンと置換または非置換スチレンとのブロックコポリマーから選ばれる。
【0026】
本発明においては、イソブチレンと置換または非置換スチレンとのブロックコポリマーは、少なくとも1個のポリスチレンブロック(そのスチレンモノマーは置換されているかまたは置換されていない)と少なくとも1個のポリイソブチレンブロックとを含む任意の熱可塑性スチレンコポリマーを意味するものと理解すべきであり、これらのブロックには、他の飽和または不飽和ブロックおよび/または他のモノマー単位を結合させていても或いは結合させてなくてもよい。
【0027】
特に好ましくは、本発明においては、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)は、スチレン/イソブチレン(SIB)ジブロックコポリマー、スチレン/イソブチレン/スチレン((SIBS)トリブロックコポリマー、およびこれらのポリマーの混合物から選ばれる。
【0028】
SIBまたはSIBSコポリマーのようなイソブチレンおよび置換または非置換スチレンの各ブロックを有するコポリマーは、既知であって、商業的に入手可能であり、例えば、SIBSコポリマーについては、Kaneka社からSibstarの品名、例えば、Sibstar 103Т、Sibstar 102Т、Sibstar 073ТまたはSibstar 072Тとして、さらに、SIBコポリマーについては、Sibstar 042Dとして販売されている。これらのコポリマーは、これらコポリマーの合成と併せて、特許文献EP 731 112号、US 4 946 899号およびUS 5 260 383号に記載されている。
有利には、本発明においては、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)は、5質量%〜50質量%、好ましくは10質量%〜40質量%、さらに好ましくは15質量%〜35質量%である、置換または非置換スチレンモノマーに由来する単位の含有量を有する。
【0029】
本出願においては、熱可塑性エラストマー(ブロックコポリマー)のガラス転移温度に言及する場合、その温度は、エラストマーブロックに関連するガラス転移温度である。事実、知られている通り、熱可塑性エラストマーは、2つのガラス転移温度ピーク(Tg、ASTM D3418に従って測定)を有し、最低温度は熱可塑性エラストマーのエラストマー部分に関連し、最高温度は熱可塑性エラストマーの熱可塑性部分に関連する。従って、熱可塑性エラストマーの可撓質ブロックは周囲温度(25℃)よりも低いTgによって定義され、一方、硬質ブロックは80℃よりも高いTgを有する。エラストマー性および熱可塑性双方の性質を有するには、そのエラストマーは、十分に不適合性(即ち、ブロックそれぞれの質量、ブロックそれぞれの極性またはブロックそれぞれのTgに基づき異なる)であってそれらブロックの特徴的なエラストマーブロックまたは熱可塑性ブロック特性を保持している各ブロックを有さなければならない。
【0030】
有利には、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)は、−20℃よりも低い、好ましくは−40℃よりも低いガラス転移温度を有する。これらの最低値よりも高いTg値は、極めて低い温度において使用中の上記多層ラミネートの性能レベルを低下させ得る。そのような使用のためには、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)のTgは、好ましくは−50℃よりも低い。
【0031】
イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)の数平均分子量(Mnで示す)は、好ましくは30 000g/モルと500 000g/モルの間、さらに好ましくは40 000g/モルと400 000g/モルの間である。上記最低値よりも低いと、エラストマー鎖間の凝集力は、特に上記コポリマーの増量剤オイルまたは他の液体可塑剤による実施し得る希釈故に、影響を受けるリスクを伴う。さらにまた、過度に高い分子量Mnは、上記2つの層の可撓性にとって有害であり得る。従って、50 000〜300 000g/モルの範囲内の値が、特に空気式タイヤにおける上記多層ラミネートの使用に特に良好に適することが判明している。
【0032】
本出願の上記熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、既知の方法で測定する。サンプルを、先ず、約1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解し、次いで、溶液を、0.45μmの有孔度を有するフィルターにより、注入前に濾過する。使用する装置は、Waters Allianceクロマトグラフィー系である。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragelを有する直列4本のWatersカラムセット(HMW7、HMW6Eおよび2本のHT6E)を使用する。ポリマーサンプル溶液の注入容量は、100μlである。検出器はWaters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを使用するその関連ソフトウェアは、Waters Milleniumシステムである。算出した平均分子量を、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線と対比する。
【0033】
イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上) の多分散性指数PI (注:PDI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量である)の値は、好ましくは3よりも低い;さらに好ましくは、上記多分散性指数は2よりも低い。
【0034】
本発明に従う多層ラミネートの第1組成物は、任意構成成分として、上記第1組成物のイソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)と異なる他のエラストマーを少量(50phr未満)で含み得る。
【0035】
そのようなさらなるエラストマーは、例えば、天然ゴムまたは合成ポリイソプレン、ブチルゴムのようなジエンエラストマー、或いは、そのミクロ構造がイソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)と適合し得る限りにおいては飽和の熱可塑性スチレンエラストマーさえであり得る。
【0036】
好ましくは、上記第1組成物のイソブチレンと置換または非置換スチレンとのコポリマーの含有量は、70〜100phr、さらに好ましくは80〜100phrである。
特に好ましくは、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)は、上記多層ラミネートの第1組成物の唯一のエラストマーである。従って、そのような場合、上記第1組成物のイソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)の含有量は100phrに等しい。
【0037】
イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)は、上記コポリマー自体で、これらのコポリマーを使用する空気式物品に関連する気密性の、上記多層ラミネートの第1組成物における役割を満たすのに十分である。
【0038】
しかしながら、本発明に従う多層ラミネートの上記第1組成物は、また、好ましくは、増量剤オイルも含み得る。
増量剤オイルは、一般に、モジュラスを低下させ且つ粘着付与力を増大させることによって、加工、特に、上記多層ラミネートの空気式物品中への組込みを容易にする役割を有する。また、増量剤オイルは、可塑剤とも称し得る。
【0039】
このオイルは、本発明の意義の範囲内におけるエラストマーではない。
増量剤オイルとしては、好ましくは弱極性を有し、エラストマー、特に、熱可塑性エラストマーを増量または可塑化することのできる任意の増量剤オイルを使用し得る。周囲温度(23℃)において、これらのオイルは、比較的粘稠であり、本来固体である特に樹脂またはゴムと対比して液体(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形に適合する能力を有する物質)である。
【0040】
好ましくは、上記増量剤オイルは、ポリオレフィン系オイル(即ち、モノオレフィン系またはジオレフィン系オレフィンの重合に由来する)、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル(低または高粘度を有する)、芳香族オイル、鉱油およびこれらのオイルの混合物からなる群から選ばれる。
【0041】
さらに好ましくは、上記増量剤オイルは、オレフィン系オイルから選ばれ、好ましくはポリブチレンオイルから選ばれ、さらに好ましくはポリイソブチレン(PIB)オイルから選ばれる。何故ならば、このオイルが試験した他のオイルと比較して、特に通常のパラフィンタイプのオイルと比較して諸性質の最良の妥協点を示していることによる。
【0042】
例えば、ポリイソブチレンオイルは、特に、Univar社から品名Dynapak Poly (例えば、Dynapak Poly 190)として、INEOS Oligomer社から品名INDOPOL H1200として、さらに、BASF社から品名Glissopal (例えば、Glissopal 1000)またはOppanol (例えば、Oppanol B12)として販売されている。パラフィン系オイルは、例えば、Exxon社から品名Telura 618としてまたはRepsol社から品名Extensol 51として販売されている。
【0043】
上記増量剤オイルは、好ましくは、350〜4000g/モル範囲、さらに好ましくは400〜3000g/モル範囲の数平均分子量を有する。
事実、過度に低い数平均分子量においては、オイルが上記組成物の外に移行するリスクが存在し、一方、過度に高い分子量は、この組成物の過度の硬質化をもたらし得る。この選択は、目標とする用途にとって、特に、空気式タイヤにおける使用にとって優れた妥協点を構成することが証明されている。
【0044】
上記増量剤オイルの数平均分子量(Mn)は、存在する場合、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、既知の方法で測定し得る;オイルのサンプルを、前以って、約1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解する;次いで、溶液を、0.45μmの有孔度を有するフィルターにより、注入前に濾過する。使用する装置は、Waters Allianceクロマトグラフィー系である。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は30分である。商品名Styragel HT6Eを有する2本のWatersカラムセットを使用する。オイルサンプル溶液の注入容量は、100μlである。検出器はWaters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを使用するその関連ソフトウェアは、Waters Milleniumシステムである。算出した平均分子量を、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線と対比する。
【0045】
好ましくは、上記増量剤オイルは、上記第1組成物において、15phrよりも多い、好ましくは15phrと90phrの間、さらにより好ましくは20phrよりも多い、特に、20phrと80phrの間の含有量で存在する。
【0046】
上記最低値よりも少ないと、本発明に従う多層ラミネートの第1組成物がある種の用途にとって高過ぎる剛性を示すリスクが存在し、一方、推奨する最高値よりも多いと、上記第1組成物の不十分な凝集性および検討する用途次第では有害であり得る気密性の損減のリスクが生ずる。
【0047】
本発明の1つの特に好ましい実施態様においては、本発明に従う多層ラミネートの第1組成物は、板状充填剤から選ばれる1種以上の充填剤を含む。
これらの“板状”充填剤は、当業者にとって周知である。これらの板状充填剤は、特に空気式タイヤにおいては、ブチルゴムをベースとする通常の気密層の透過性を低下させるために使用されている。
【0048】
これらの板状充填剤は、一般に、多少顕著な異方性を伴って、積層プレート、プレートレット、シートまたはラメラの形状で供給される。これら板状充填剤のアスペクト比 (A = L/T)は、一般に3よりも高く、より頻繁には5よりもまたは10よりも高い;Lは長さ(または最大寸法)を示し、Tはこれらの板状充填剤の平均厚さを示し、これらの平均値は数基準である。数十、実際には数百にさえ達するアスペクト比も頻繁である。これら板状充填剤の平均長さは、好ましくは1μmよりも長く(即ち、“マイクロメートル”板状充填剤がその場合含まれる)、典型的には数μm (例えば、5μm)と数百μm (例えば、500μm、実際には800μmでさえも)との間である。
【0049】
好ましくは、本発明に従って使用する板状充填剤は、グラファイト、フィロシリケート、およびそのような充填剤の混合物からなる群から選ばれる。グラファイトのうちでは、天然グラファイト、膨張グラファイトまたは合成グラファイトを挙げることができる。フィロシリケートのうちでは、特に、クレー、タルク、雲母、カオリンが挙げられる。
【0050】
上記フィロシリケートは、例えば表面処理によって随意に変性し得る。特に、そのような変性フィロシリケートの例としては、酸化チタンで被覆した雲母および界面活性剤によって変性したクレー(“オルガノクレー”)を挙げることができる。
【0051】
雲母の例としては、CMMP社から販売されている雲母(例えば、Mica−MU (登録商標)、Mica−Soft (登録商標)、Briomica (登録商標))、バーミキュライト(特に、CNNP社から販売されているShawatec (登録商標)バーミキュライトまたはW.R. Grace社から販売されているMicrolite (登録商標) バーミキュライト、または変性または処理雲母(例えば、Merck社から販売されているIriodin (登録商標)範囲物)を挙げることができる。
【0052】
グラファイトの例としては、Timcal社から販売されているグラファイト(Timrex (登録商標)範囲物)を挙げることができる。
タルクの例としては、Luzenac社から販売されているタルク類を挙げることができる。
【0053】
好ましくは、低表面エネルギーを有する、即ち、比較的無極性である板状充填剤、例えば、グラファイト、タルク、雲母およびこれらの混合物からなる群から選ばれる板状充填剤を使用する;これらの充填剤は、変性してもまたは変性しなくてもよい。
【0054】
特に好ましくは、本発明に従う多層ラミネートの第1組成物の板状充填剤(1種以上)は、グラファイト、タルク、雲母およびそのような充填剤の混合物から選ばれる。
本発明のこの極めて好ましい実施態様においては、上記第1組成物の板状充填剤含有量は、一般に5〜15phr、好ましくは10〜15phrである。
【0055】
本発明に従う多層ラミネートの第1層は、好ましくは、0.05mm以上の、好ましくは0.1〜10mmの範囲、さらに好ましくは0.1〜2mmの範囲の厚さを有する。
特定の用途分野、関連する寸法および圧力に従えば、本発明の実施態様は変化し得、上記多層ラミネートの第1層は、その場合、幾つかの好ましい厚さ範囲を含むことは、容易に理化し得るであろう。
【0056】
従って、例えば、乗用車タイプの空気式タイヤにおいては、上記第1層は、少なくとも0.4mm、好ましくは0.8mmと2mmの間の厚さを有し得る。もう1つの例によれば、大型車または農業用車両の空気式タイヤにおいては、好ましい厚さは、1mmと3mmの間であり得る。もう1つの例によれば、土木工学分野におけるまたは航空機用の車両の空気式タイヤにおいては、好ましい厚さは、2mmと10mmの間であり得る。
【0057】
上記で説明したように、本発明に従う多層ラミネートの第2層は、i) 少なくとも50phrの、上記イソブチレンと置換または非置換スチレンとの1種以上のコポリマーと相溶性の少なくとも1個の第1ブロックとジエンポリマーと相溶性の少なくとも1個の第2ブロックとを含む1種以上の熱可塑性エラストマーと、ii) 1種以上のポリアリールエーテルポリマーとを含む第2組成物からなる。
【0058】
換言すれば、上記第2組成物のイソブチレンと置換または非置換スチレンとの1種以上の上記コポリマー(1種以上)と相溶性の少なくとも1個の第1ブロックとジエンポリマーと相溶性の少なくとも1個の第2ブロックとを含む熱可塑性エラストマーの含有量は、50phrよりも多くから100phrまでである。
【0059】
本出願においては、“イソブチレンと置換または非置換スチレンとの1種以上の上記コポリマー(1種以上)と相溶性の少なくとも1個の第1ブロックとジエンポリマーと相溶性の少なくとも1個の第2ブロックとを含む熱可塑性エラストマー”なる表現は、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)と相溶性の上記第1ブロックと、イソブチレンと置換または非置換スチレンとの上記コポリマー(1種以上)との混合物が単一のガラス転移温度を有すること並びにジエンポリマーと相溶性の第2ブロックとジエンポリマーとの混合物も単一のガラス転移温度(Tg)を有することを意味するものと理解されたい。
【0060】
また、この“相溶性”も、Fox方程式を使用して定量化し得る。特に、Fox方程式によるブレンドのTg値の適合化は、ブレンドの組成中へ混入したポリマーが相溶性であることを断言することを可能にする(T.G.Fox, “Influence of Diluent and of Copolymer Composition on the Glass Temperature of a Polymer System”, Bull.Am.Phys.Soc., vol.1, p.123, 1956)。
【0061】
好ましくは、上記第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)は、熱可塑性スチレンエラストマーから選択する。
特に好ましくは、第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)は、少なくとも1個のスチレンブロック(そのスチレンモノマーは置換されているかまたは置換されていない)と少なくとも1個のジエンブロックとを含む非水素化または部分水素化ブロックコポリマーからなる群から選ばれる。
【0062】
上記ジエンブロック(1種以上)は、好ましくは、ポリイソプレン、ポリブタジエン、水素化されていてもよいスチレン/スチレンランダムコポリマーおよびこれらのポリマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0063】
従って、上記第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)は、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)、スチレン/ブタジエン−スチレンランダムコポリマー/スチレン(SOE)の各ブロックコポリマー、およびこれらのコポリマーの混合物からなる群から選ばれる;これらのコポリマーは、水素化されていないかまたは水素化されている。
【0064】
極めて好ましくは、上記第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)は、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー、部分水素化スチレン/(ブタジエン−スチレン)ランダムコポリマー(SBRブロックとも称する)/スチレン(SOE)ブロックコポリマー、およびこれらのコポリマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0065】
周知のとおり、上記SOEタイプのコポリマー、即ち、スチレンブロックを有し且つブタジエン−スチレンランダムコポリマー((SBRブロック)ブロックを有するコポリマーは、スチレン含有分、ブタジエン成分の1,2−結合含有分およびブタジエン成分の1,4−結合含有分を含み、上記1,4−結合含有分は、ブタジエン成分が水素化されていない場合、トランス−1,4−結合含有分およびシス−1,4−結合含有分からなる。
【0066】
好ましくは、特に、例えばSBRブロックの総質量に対して10質量%〜60質量%の範囲内の、好ましくはSBRブロックの総質量に対して20質量%〜50質量%のスチレン含有量、そして、ブタジエン成分においては、ブタジエン単位の総モル数に対して4%〜75%(モル%)の範囲内の1,2−結合含有分およびブタジエン単位の総モル数に対して25%〜96%(モル%)の範囲内の1,4−結合含有分を有するSBRブロックを使用する。
【0067】
水素化度は、NMR分析によって測定する。スペクトルは、1H−X 5mm Cryoprobeを備えたBruker Avance 500 MHzスペクトロメーターにおいて獲得する。定量
1H NMR試験は、単純30°パルスシーケンスと獲得毎に5秒間の繰返し時間を使用する。64回の集積を実施する。サンプル(約25mg)を約1mlのCS
2に溶解し、100μlの重水素化シクロヘキサンを、獲得中のロッキングのために添加する。化学シフトを、TMS (0ppmでの1H δppm)を参照して、7.18ppmでのCS
2 1Hδppmのプロトン化不純物に対して較正する。
1H NMRスペクトルは、種々の単位のシグナルピーク特性の積分によってミクロ構造を定量することを可能にする:
・SBRおよびポリスチレンブロックに由来するスチレン。このスチレンは、5個のプロトンに対しての6.0ppmと7.3ppmの間の芳香族領域において定量可能である(7.18ppmにおけるCS
2不純物のシグナルの積分の減算による)。
・SBRに由来するPB1−2 (非水素化1,2−ブタジエン単位)。このPB1−2は、2個のプロトンに対する4.6ppmと5.1ppmの間のエチレン領域において定量可能である。
・SBRに由来するPB1−4 (非水素化1,4−ブタジエン単位)。このPB1−4は、2個のプロトンに対する5.1ppmと6.1ppmの間のエチレン領域において、さらに、上記PB1−2単位の1個のプロトンの欠失によって定量可能である。
・水素化に由来し且つ脂肪族プロトンのみを水素化PB1−2 (水素化1,2−ブタジエン単位)。該水素化PB−2のペンダントCH
3基は、同定され、3個のプロトンに対する0.4ppmと0.8ppmの間の脂肪族領域において定量可能である。
・水素化に由来し且つ脂肪族プロトンのみを水素化PB1−4 (水素化1,4−ブタジエン単位)。この水素化PB−4は、各種単位からの脂肪族プロトンを減算することによって推定し、8個のプロトンに対するものとみなす。
【0068】
ミクロ構造は、以下のように、モル%を単位として定量し得る:単位のモル% = 単位/Σの
1H積分 (各単位の
1H 積分)。例えば、スチレン単位については:スチレンのモル% = (スチレンの
1H積分)/(スチレンの
1H積分 + PB1−2の
1H積分 + PB1−4の
1H積分 + 水素化PB1−2の
1H積分 + 水素化PB1−4の
1H積分)。
【0069】
SBRブロックの水素化度に応じて、SBRブロックのブタジエン成分中の二重結合の含有量は、完全水素化SBRの0モル%の含有量まで低下し得る。好ましくは、本発明の前提条件において使用するSBRおよびPSの各ブロックを有するTPEにおいては、SBRエラストマーブロックは、ブタジエン成分中の二重結合の25モル%〜100モル%の範囲の割合が水素化されるように水素化する。さらに好ましくは、ブタジエン成分中の二重結合の50モル%〜100モル%、極めて好ましくは80モル%〜100モル%を水素化する。
【0070】
特に、上記第2組成物の熱可塑性エラストマーとしては、Kraton社からの品名Kraton DとしてのSISコポリマー (例えば、製品D1161、D1118、D1116、D1163のような)、Dynasol社からの品名 CalpreneとしてのSISコポリマー (例えば、製品C405、C411、C412のような)、或いはAsahi社からの品名TuftecとしてのSISコポリマー(例えば、製品P1500のような)を挙げることができる。また、Asahi Kasei 社からの品名SOE S1611、SOE L605またはSOE L606としてのSOEコポリマーも挙げることができる。
【0071】
有利には、上記第2組成物の熱可塑性エラストマーは、5質量%〜50質量%、好ましくは10質量%〜40質量%、さらに好ましくは15質量%〜35質量%である、置換または非置換スチレンモノマーに由来する単位の含有量を有する。
【0072】
有利には、上記第2組成物の熱可塑性エラストマーは、25℃よりも低い、好ましくは15℃よりも低いガラス転移温度(Tg、規格ASTM D3418に従って測定)を有する。これらの最低値よりも高いTg値は、上記多層ラミネートの性能レベルを低下させ得る。
【0073】
上記第2組成物の上記熱可塑性エラストマー(1種以上)の数平均分子量(Mnで示す)は、好ましくは30 000g/モルと500 000g/モルの間、さらに好ましくは40 000g/モルと400 000g/モルの間である。上記最低値よりも低いと、エラストマー鎖間の凝集力は、特に上記コポリマーの増量剤オイルまたは他の液体可塑剤による実施し得る希釈故に、影響を受けるリスクを伴う。さらにまた、過度に高い分子量Mnは、上記2つの層の可撓性にとって有害であり得る。従って、50 000〜300 000g/モルの範囲内の値が、特に空気式タイヤにおける上記多層ラミネートの使用に特に良好に適することが判明している。
【0074】
上記第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)の多分散性指数(PDI)は、好ましくは3よりも低く、さらに好ましくは、上記多分散性指数は2よりも低い。
【0075】
好ましくは、上記第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)の含有量は、60〜100phr、好ましくは70〜100phrである。
特に好ましくは、上記第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)は、上記多層ラミネートの上記第2組成物の唯一のエラストマーである。従って、そのような場合、上記第2組成物の熱可塑性エラストマーの含有量は100phrに等しい。
【0076】
にもかかわらず、本発明に従う上記多層ラミネートの第2組成物は、任意構成成分として、上記で説明した第2組成物の上記熱可塑性エラストマーと異なる他のエラストマーを小量(50phr未満)で含み得る。
【0077】
そのようなさらなるエラストマーは、例えば、天然ゴムまたは合成ポリイソプレン、ブチルゴムのようなジエンエラストマー、またはそのミクロ構造が上記で説明した第2組成物の上記熱可塑性エラストマー(1種以上)と適合し得る限りの飽和熱可塑性スチレンエラストマーさえであり得る。
【0078】
上記で説明したように、本発明に従う多層ラミネートの第2組成物は、1種以上のポリアリールエーテルポリマーを含む。
このまたはこれらのポリアリールエーテルポリマーは、本発明の意義の範囲内におけるエラストマーではない。
本発明の意義の範囲内においては、用語“アリール”は、6~12個の炭素原子を含む飽和または不飽和の芳香族炭化水素を意味するものと理解されたい。
【0079】
好ましくは、ポリアリールエーテルポリマー(1種以上)は、ポリフェニレンエーテル(PPE)ポリマーから選ばれる。このタイプの化合物は、例えば、百科事典 "Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry" published by VCH, vol.A 21, pages 605−614, 5th edition, 1992に記載されている。
【0080】
好ましくは、本発明の前提条件において有用である上記ポリアリールエーテルポリマーは、0℃〜280℃、好ましくは5℃〜250℃、さらに好ましくは5℃〜220℃の範囲内の1999年の規格ASTM D3418に従うDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有する。0℃よりも低いと、上記ポリアリールエーテルポリマーは、このポリマーを含む上記組成物において十分なTgシフトを可能とせず、280℃よりも高いと、特に均質な混合物の取得に関しての製造上の問題に遭遇し得る。
【0081】
知られている通り、上記ポリアリールエーテルポリマーは、特に、およそ1000〜45 000g/モル、一般に15 000〜45 000g/モルであり得る数平均分子量(Mn)を有する;Mnは、SEC (GPCとも称する、文献US 4 588 806号、第8欄におけるように)によって当業者とって既知の方法で測定する。本発明の目的においては、10 000〜45 000g/モル、好ましくは15 000〜40 000g/モル、さらに好ましくは25 000〜40 000g/モルである範囲の分子量Mnを有する1種以上のポリアリールエーテルポリマーが、本発明の組成物において好ましい。
【0082】
好ましくは、上記1種以上のポリアリールエーテルポリマーの多分散性指数PI (注:PI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量である)の値は、好ましくは5よりも低く、より好ましくは3よりも低く、さらにより好ましくは2よりも低い。
【0083】
一般に、上記第2組成物のポリアリールエーテルポリマーの含有量は、1〜20phr、好ましくは5〜15phrである。
【0084】
上記多層ラミネートの第2層は、好ましくは、0.01mmよりも大きい厚さを有するが、特に上記第2層を上記多層ラミネートの第1層上に付着させる方法に応じて、大幅に、例えば0.01mmと0.5mmの間であり得る。
【0085】
1つの好ましい実施態様によれば、経済的理由および製造の簡素化の理由のために、本発明の上記多層ラミネートの組成物は、上記で記載した成分以外の成分を含まない。
【0086】
代替的に、また、好ましくは、諸性質の改良のために、本発明に従う多層ラミネートは、さらにまた、当業者にとって既知の膨張ガスに対して気密性のエラストマー層に通常存在する各種添加剤を含み得る。これらの添加剤は、上記第1層中および/または第2層中で、但し好ましくは第1層中で見出される。
【0087】
例えば、本発明に従う多層ラミネートにおいて存在し得る添加剤としては、当業者にとって周知の補強用充填剤および特にシリカを使用する場合の関連カップリング剤;上記多層ラミネートを着色するのに有利に使用し得る着色剤;前述の増量剤オイル以外の可塑剤;酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤のような保護剤;UV安定剤;各種加工助剤または安定剤;或いは空気式物品構造体の残余部への接着を促進させ得る促進剤が挙げられる。
【0088】
本発明に従う多層ラミネートは、文献、特に本説明の従来技術の提示において引用した文献において知られ記載されている合成方法よって製造し得る。当業者であれば、如何にして適切な重合条件を選択し且つ重合過程の種々のパラメーターを調整して本発明に従う多層ラミネートの特定の構造的特徴をもたらすかは承知していることであろう。
【0089】
従って、上記多層ラミネートを製造するための第1の戦略は、上記多層エラストマーの2つの構成層を別々に製造することおよびこれらの層を任意の適切な手段によって組合せることにあり、空気式タイヤに組込む前の本発明の多層ラミネートは最後に取得する。
【0090】
そのように、第1の製造戦略の第1工程は、上記第1および第2層を、上記各々の組成物の構成成分を通常の方法で混合することによって別々に製造することにある。
上記第1および第2組成物は、その後、組合せる。
【0091】
第2の製造戦略は、上記2つの層を、適切な固有のダイによる共押出によって同時に製造することにある。上記ラミネートは、混合した組成物から単一の工程において製造する。また、その押出機は、上記第1および第2層を所望寸法に共押出することを可能にするダイも備え得る。
【0092】
第3の製造戦略は、第1組成物の構成成分を通常の方法で最初に混合することによって第1層のみを押出により製造することにある。そのようにして得られた混合物を、その後、押出機、例えばツインスクリュー押出機で押出す。この押出機は、上記第1層を所望寸法に共押出することを可能にするダイを含み得る。
【0093】
第2層は、それ自体、溶解し上記第1層に適用して本発明に従う多層ラミネートを形成させることによって製造する。
これを実施するには、上記第2の各成分を溶媒、好ましくはトルエンに導入し、次いで、シェーカーにおいて、好ましくは少なくとも24時間、完全に溶解して10質量%の溶質を含有する溶液を生成するまで攪拌する。従って、上記構成成分の総和は、上記溶液の10質量%を示す。
【0094】
そのようにして形成した溶液を、前以って形成した第1層に適用する。溶液は、周囲温度で一般に15分間乾燥させる。
本発明に従う多層ラミネートは、そのようにして形成する。
【0095】
従って、本発明のもう1つの主題は、下記の工程を含む本発明に従う多層ラミネートの製造方法である:
・上記第1層を、前記第1組成物の構成成分を混合し、引続き、得られた混合物を押出加工することによって製造する工程、次いで、
・上記第2層を、前記第2組成物の成分を溶媒中に導入し、その後、シェーカーにおいて完全に溶解して溶液を生成するまで攪拌することによって製造する工程、次いで、
・上記溶液を上記第1層に適用する工程、
・周囲温度において乾燥させる工程。
【0096】
好ましくは、本発明においては、上記多層ラミネートを上記第3戦略によって製造するのが好ましい。
上記の多層ラミネートは、固体(23℃において)で且つ弾性コンパウンドであり、特に、その特定の配合によって、極めて高い可撓性および極めて高い変形性に特徴を有する。
【0097】
本発明のこのましい実施態様によれば、この多層ラミネートは、10%の伸び(M10で示す)において、2MPaよりも低い、さらに好ましくは1.5MPaよりも低い(1MPaよりも低い)割線引張モジュラスを有する。この強度(magnitude)は、1回目の伸び(即ち、順応サイクル無し)において、23℃の温度で500mm/分の引張速度(規格ASTM D412)によって測定し、試験標本の初期断面に関連する。
【0098】
上記の多層ラミネートは、特に任意のタイプの空気式物品における気密層として使用し得る。挙げることのできるそのような空気式物品の例は、全てのタイプの車両用のタイヤ、ゴムボート、およびゲームまたはスポーツ用に使用するバルーンまたはボールがある。
【0099】
上記第2層のお陰で、本発明に従う多層ラミネートは、例えばタイヤのカーカス層のようなジエンエラストマー組成物に強力に付着し得る。
結果として、上記多層ラミネートは、空気式物品、ゴム製の最終または半製品における、特に、二輪車、乗用車または産業用車両のような自動車用のタイヤにおける気密層(または、任意の他の膨張ガス、例えば、窒素に対して気密性である層)として使用するのに良好に適している。
【0100】
従って、有利には、本発明に従う多層ラミネートの第2組成物の熱可塑性エラストマー(1種以上)の第2ブロックと相溶性のジエンエラストマーは、空気式物品のカーカスプライの構成成分ポリマーの1つである。
【0101】
従って、本発明のもう1つの主題は、上述したような多層ラミネートを含む空気式物品である。
好ましくは、上記多層ラミネートは空気式物品の内壁上に配置するが、上記多層ラミネートは、空気式物品の内部構造体内に全体的に取り込ませてもよい。
【0102】
本発明に従う空気式物品は、好ましくは、空気式タイヤである。
一般に、本発明に従う空気式物品は、乗用車タイプの自動車、SUV類(スポーツ用多目的車)、二輪車(特にモーターバイク)、航空機;さらにまた、バン類、大型車および他の輸送または材料取扱い車両のような産業用車両に装着することを意図する。
【0103】
大型車は、特に、地下鉄;バス;トラック、トラクター、トレーラーのような大型道路輸送車;および、農業用または土木工事用車両のような道路外車両を含む。
【0104】
また、本発明は、上記で定義したような多層ラミネートを製造中の上記空気式物品内に組込むか或いは製造後の上記空気式物品に追加することからなる、空気式物品に膨張ガスに対する気密性を付与する方法にも関する。
好ましくは、気密性を付与するこの方法においては、上記多層ラミネートは、空気式物品の内壁に付着させる。
【0105】
この方法の特定の変形においては、上記空気式物品は、空気式タイヤである。
この特定の変形においては、上記多層ラミネートは、上記多層ラミネートを空気式タイヤの構造体の残余で覆う前に、タイヤ構築用ドラム上に平らに付着させる。
【0106】
最後に、本発明は、上記で定義したような多層ラミネートの膨張ガスに対して気密性の層としての、好ましくはタイヤの気密相としての使用に関する。
【0107】
本発明、さらにまた、その利点は、半径断面において本発明に従う空気式タイヤを略図的に示している一葉の図面、さらにまた、以下の典型的な実施態様に照らせば、さらに十分に理解されるであろう。
【0108】
上記一葉の添付図面は、本発明に従う空気式タイヤの半径断面を極めて略図的に示している(具体的な縮尺で観察していない)。
【0109】
この空気式タイヤ1は、クラウン補強材即ちベルト6によって補強されたクラウン2、2枚の側壁3および2本のビード4を含み、これらのビード4の各々は、ビードワイヤー5によって補強されている。クラウン2は、この略図においては示していないトレッドが取付けられている。カーカス補強材7は、各ビード4内の2本のビードワイヤー5の周りに巻付けられており、この補強材7の上返し8は、例えば、タイヤ1の外側に向って位置しており、この場合、その車輪リム9上に取付けて示している。カーカス補強材7は、それ自体知られている通り、例えば繊維または金属製の“ラジアル”コードによって補強されている少なくとも1枚のプライからなる、即ち、これらのコードは、実際上、互いに平行に配置されて一方のビードから他方のビードに延びて円周正中面(2つのビード4の中間に位置しクラウン補強材6の中央を通るタイヤの回転軸に対して垂直の面)と80°と90°の間の角度をなしている。
【0110】
上記空気式タイヤ1は、その内壁が少なくとも2つの層(10aおよび10b)を含む多層ラミネート10を含み、内部空洞11の側面上に配置した上記第1層10aのために気密性であり且つその半径方向最外の第2層のためにタイヤ構造体の残余部に対し高度に接着性であることに特徴を有する。本発明の1つの好ましい実施態様によれば、上記2層(10aおよび10b)は、上記空気式タイヤの実質的に内壁全体を覆っており、一方の側面から他方の側面まで、少なくとも上記空気式タイヤが取付け位置にあるときのリムフランジのレベルまで延びている。
【0111】
測定方法
接着(または剥離)試験
接着試験(剥離試験)を行って、本発明に従う多層ラミネートの気密層のジエンエラストマー層への、さらに正確には、(解凝固)天然ゴムとカーボンブラック N330 (天然ゴム100質量部当り65質量部)をベースとし、また、通常の添加剤(充填剤、イオウ、促進剤、ZnO、ステアリン酸、酸化防止剤)も含む空気式タイヤのカーカス補強材用の通常のゴム組成物への上記接着層の硬化後に接着する能力を試験した。
【0112】
剥離試験標本(180°剥離タイプ)は、多層ラミネートのカレンダー仕上げ層(1.5mm)とジエンエラストマーのカレンダー仕上げ層(1.2mm)を重ね合せることによって製造した。初期亀裂(incipient crack)は、上記2つのカレンダー仕上げ層の間に入れる。
【0113】
試験標本を、組立後、圧力下に180℃で10分間加硫し、冷却を圧力下に実施した。30mmの幅を有するストリップを、裁断機を使用して切り取った。初期亀裂の2つの面を、その後、Instron (登録商標)引張試験機の顎内に入れた。試験は、周囲温度および100mm/分の引張り速度で実施する。引張応力を記録し、その引張応力を試験標本の幅によって標準化する。引張試験機の可動クロスヘッド移動(0mmと200mmの間)の関数としての単位幅当りの強度(N/mmでの)の曲線を得る。選択した接着値は、試験標本における破損の初期に、ひいてはこの曲線の最高値に相当する。この試験は、周囲温度および80℃の両方において実施した。結果は、剥離破損パターン(“凝集”は、接着界面が上記混合物の凝集力よりも強いこと意味する)として、剥離値として、さらに、性能指数として表す(100の任意値を対照の接着力に対して与え、100よりも高い結果が接着力の増大を示す)
【実施例1】
【0114】
スチレン/イソプレン/スチレンコポリマーをベースとする第2組成物を含む多層ラミネート
エラストマー材料T1は、単一層のみを含み、参照として機能する。
多層ラミネートA1、A2およびA3の2つの層は、個々に、下記の方法並びに表1および2に従って製造する。
多層ラミネートA1、A2は、比較用多層ラミネートであり、多層ラミネートA3は、本発明に従う。
【0115】
第1層
3つの多層ラミネートA1、A2およびA3の第1層とエラストマー材料T1の単一層の組成は同一である。このことは、下記の表1に示している。
表1
(1) おおよそ15%のスチレン含有量、おおよそ−65℃のTgおよびおおよそ90 000g/モルの数平均分子量(Mn)を有するSibstar 102T SIBS;
(2) Indopol H1200 PIB;
(3) SYA 21R雲母。
【0116】
上記第1層は、次のようにして製造した。3種の構成成分(SIBS、ポリイソブチレンおよび雲母)の混合を、ツインスクリュー押出機を使用し、典型的には上記組成物の溶融温度(おおよそ190℃)よりも高い温度で通常の方法で実施した。使用した押出機は、SIBS用の第1供給口、雲母様の第2供給口(ホッパー)および最後のポリイソブチレン増量剤オイル用の加圧液体注入ポンプを含んでいた;上記押出機は、生成物を所望寸法に押出加工するのを可能にするダイを備えていた。
【0117】
第2層
多層ラミネートA1、A2およびA3の第2層の組成を下記の表2に示している。
表2
(1) おおよそ15%のスチレン含有量、−60℃のTgおよびおおよそ200 000g/モルの数平均分子量(Mn)を有するD1161 SIS;
(2) おおよそ30%のスチレン含有量、−60℃のTgおよびおおよそ200 000g/モルの数平均分子量(Mn)を有するPT1164 SIS;
(3) Xyron S203A。
【0118】
上記第2層は、次のように製造した。表2に従う組成物をトルエン中で混合し、シェーカーにおいて、完全に溶解して表2に従う組成物の10質量%溶液を生成するまで少なくとも24時間撹拌した。
その後、そのようにして生成させた上記溶液を、前以って形成させていた上記第1層に適用する。溶液を周囲温度で15分間乾燥させる。
多層ラミネートは、そのようにして作製する。
【0119】
剥離試験においては、試験標本を、下記の方法で作成する:
1)上記多層ラミネート(A1、A2およびA3における)または単一層エラストマー材料(T1における)を、上記の接着試験において説明しているようなタイヤにおいて通常使用するカーカスプライと接触せしめる;
2)上記ラミネートを、102T SIBSを含浸させたナイロン織布によって補強する;
3)上記アッセンブリを180℃で15分間18バールにて硬化させ、その後、上記圧力を維持しながらプレスを冷却する。
【0120】
結果
接着の度合を、周囲温度および80℃における剥離試験によって測定する。結果は、下記の表3において照合する。
表3
【0121】
これらの結果は、本発明に従う多層ラミネートA3が、周囲温度および80℃の双方において、剥離強度を著しく増大させることを可能にしていることを証明している。さらにまた、多層ラミネートA3は、凝集破壊を組織的にもたらしている。
【実施例2】
【0122】
実施例2:部分水素化スチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーをベースとする第2組成物を含む多層ラミネート。
多層ラミネートB1、B2は比較用多層ラミネートであり、多層ラミネートB3は本発明に従う。
多層ラミネートB1、B2およびB3の第1層は、多層ラミネートA1、A2およびA3の第1層と同一である(表1参照)。
【0123】
第2層
多層ラミネートB1、B2およびB3の第2層の組成は下記の表4に示している。
表4
(1) おおよそ50%のスチレン含有量、おおよそ−8℃のTgおよびおおよそ102 000g/モルの数平均分子量(Mn)を有するL606 SOE;
(2) おおよそ62%のスチレン含有量、おおよそ20%の水素化単位含有量、おおよそ+13℃のTgおよびおおよそ89 000g/モルの数平均分子量(Mn)を有するS1611 SOE;
(3) Xyron S203A。
【0124】
多層ラミネートB1、B2およびB3の第2層並びに多層ラミネートB1、B2およびB3を実施例1におけるのと同じ方法で製造した。
【0125】
結果
接着の度合を、周囲温度および80℃においての剥離試験によって測定する。結果は、下記の表5において照合する。
表5
【0126】
これらの結果は、本発明に従う多層ラミネートB3が、周囲温度および80℃の双方において、剥離強度を著しく増大させることを可能にしていることを証明している。さらにまた、多層ラミネートB3は、凝集破壊を組織的にもたらしている。