(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852051
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/128 20060101AFI20210322BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20210322BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
H01F7/16 G
H01F7/16 R
F16K31/06 305A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-510303(P2018-510303)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2017012246
(87)【国際公開番号】WO2017175611
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-78023(P2016-78023)
(32)【優先日】2016年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】上村 純
【審査官】
五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/183306(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/124143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/128
F16K 31/06
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口部を有し、ボビンにコイルを巻回したソレノイド本体を前記上端開口部から収容するハウジングと、
前記ソレノイド本体を被覆するモールド樹脂よりなり、前記ハウジングの上端開口部に装着されてこの上端開口部との間に隙間を形成する1次外装体と、
前記隙間を閉塞するように前記1次外装体を被覆するモールド樹脂よりなる2次外装体と、
を備えることを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
請求項1記載のソレノイドにおいて、
前記1次外装体および2次外装体の接触面に、互いの接合強度を高めるためのアンカー形状を設けたことを特徴とするソレノイド。
【請求項3】
請求項1または2記載のソレノイドにおいて、
当該ソレノイドは、前記ソレノイド本体のほかに、前記コイルへ通電するためのコネクタ部を備え、
前記1次外装体は、前記ソレノイド本体および前記コネクタ部の双方を被覆し、
前記2次外装体は、前記1次外装体のうち前記ソレノイド本体を被覆した部分のみを被覆していることを特徴とするソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油空圧制御機器用ソレノイドバルブの駆動源として用いられるソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の用途に用いられるソレノイドとして
図6に示すように、電磁コイル53とこの電磁コイル53を巻回したボビン54とを備えるソレノイド本体52を有し、このソレノイド本体52をモールド樹脂よりなる外装体55で被覆した構造のソレノイド51が知られている。
【0003】
モールド樹脂よりなる外装体55は、電気的絶縁性を発揮するとともにソレノイド本体52を外部雰囲気(ダストや水分、熱など)から保護する作用を発揮するものであって、その形状は製品仕様に応じて様々な形状に設計されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−58480号公報
【特許文献2】特開平4−257206号公報
【特許文献3】WO2003/056579A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、上記モールド樹脂よりなる外装体55は、金型を用いて成形(モールド成形)されるものである。
【0006】
しかしながら、ソレノイド本体52をモールド樹脂よりなる外装体55で被覆するのみでは、当該ソレノイド51をハウジング(図示せず)に装着したときに外装体55およびハウジング間に隙間が形成されることがあるので、隙間から外部異物が侵入し、ソレノイド51の作動不良に繋がるおそれがある。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、外装体およびハウジング間の隙間から外部異物が侵入するのを抑制し、もってソレノイドに作動不良が発生するのを抑制することができるソレノイド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ソレノイド
の一態様は、
上端開口部を有し、ボビンにコイルを巻回したソレノイド本体
を前記上端開口部から収容するハウジングと、前記ソレノイド本体を被覆するモールド樹脂よりな
り、前記ハウジングの上端開口部に装着されてこの上端開口部との間に隙間を形成する1次外装体
と、前記隙間を閉塞するように前記1次外装体を被覆するモールド樹脂よりなる2次外装体
と、を備え
る。
【発明の効果】
【0014】
外装体およびハウジング間に隙間から外部異物が侵入するのを抑制し、もって異物の侵入を原因としてソレノイドに作動不良が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
第1実施例に係るソレノイドをハウジングに装着した状態の断面図
【
図2】
第2実施例に係るソレノイドをハウジングに装着した状態の断面図
【
図4】
第3実施例に係るソレノイドを示す図で、(A)は1次外装体被覆後2次外装体被覆前の状態を示す平面図および正面図、(B)は1次外装体および2次外装体共に被覆後の状態を示す平面図および正面図
【
図5】(A)(B)(C)ともそれぞれ同ソレノイドに備えられるアンカー形状の拡大平面図
【
図7】比較例に係るソレノイドをハウジングに装着した状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎ
に実施例を説明するが、説明の便宜上先ず、比較例に係るソレノイド1を説明する。
【0017】
比較例・・・・
すなわち
図7は、比較例に係るソレノイド1をバルブ作動部31とともに円筒状のハウジング41の上端開口部に装着した状態を示している。
【0018】
当該比較例に係るソレノイド1は、電磁コイル3、ボビン4、ヨーク5および固定鉄心6等を備えるソレノイド本体2と、コイル3に通電するためのコネクタ部7とを有し、これらの構成要素が所定のモールド樹脂よりなる1次外装体11によって被覆(モールド成形)されている。したがって1次外装体11は、ソレノイド本体2をその外周面および上面から被覆した円盤状(伏せカップ状)の第1被覆部12と、コネクタ部7をその下面露出のかたちで被覆したフランジ状の第2被覆部13とを一体に有している。
【0019】
上記ソレノイド1を可動鉄心32、弁軸33およびバルブボディ34等を備えるバルブ作動部31とともに円筒状のハウジング41の上端開口部に装着すると図示した状態とされ、このとき1次外装体11とハウジング41上端部との間に隙間cが形成される。したがってこの隙間cから外部異物(図示せず)が侵入し(矢印d)、ソレノイド1の作動不良に繋がることがある。そこで、
本実施例に係るソレノイド1では、以下の構成が追加されている。
【0020】
第1実施例・・・・
すなわち
図1に示すように、上記電磁コイル3およびボビン4等を備えるソレノイド本体2を被覆した1次外装体11に対して更に2次外装体21が被覆され、この2次外装体21によって、上記1次外装体11およびハウジング41上端部間の隙間cが閉塞されている。
【0021】
2次外装体21は、所定のモールド樹脂によって成形されている。また2次外装体21は、1次外装体11の全部ではなく一部のみを被覆しており、具体的には、1次外装体11における円盤状の第1被覆部12の外周縁部のみを被覆して、第1被覆部12に対して庇状をなしている。
【0022】
1次外装体11および2次外装体21の材質については、互いに同じ種類の材質とするが、使用条件や環境などによっては、互いに異なる種類の材質としても良い。
【0023】
上記構成を備えるソレノイド1においては、ソレノイド本体2を被覆する1次外装体11を更に被覆する2次外装体21が設けられているため、この2次外装体21によって、上記1次外装体11およびハウジング41上端部間の隙間cを閉塞することが可能とされている。したがって1次外装体11およびハウジング41間の隙間cから外部異物が侵入するのを抑制し、もって異物の侵入を原因としてソレノイド1に作動不良が発生するのを抑制することができる。
【0024】
第2実施例・・・・
第2実施例として
図2に示すソレノイド1では、上記第1実施例の構成に加えて更に、1次外装体11および2次外装体21の接触面に、互いの接合強度を高めるためのアンカー形状8が設けられている。アンカー形状8は以下のように構成されている。
【0025】
すなわち
図3に拡大して示すように、1次外装体11における円盤状の第1被覆部12の外周面に2次外装体21によって被覆される鍔部14が一体に設けられ、この鍔部14に貫通穴部15が円周上複数設けられ、貫通穴部15にそれぞれ2次外装体21を構成するモールド樹脂の一部が充填され、抜け止めとされている。
【0026】
したがってこの構成によれば、1次外装体11および2次外装体21の接触面に、互いの接合強度を高めるためのアンカー形状8が設けられているため、1次外装体11から2次外装体21が脱落し外れてしまうのを防止することができる。
【0027】
第3実施例・・・・
上記アンカー形状8の形状については様々なものが考えられ、例えば、以下のようなものであっても良い。
【0028】
第3実施例として
図4に示すソレノイド1では、上記第1実施例の構成に加えて更に、1次外装体11および2次外装体21の接触面に、互いの接合強度を高めるためのアンカー形状8が設けられている。アンカー形状8は以下のように構成されている。
【0029】
すなわち
図4(A)の平面図に示すように、1次外装体11における円盤状の第1被覆部12の外周縁部の上面に有底の穴部16が円周上複数(図では5箇所)設けられ、穴部16にそれぞれ2次外装体21を構成するモールド樹脂の一部(図示せず)が充填され、抜け止めとされている。
【0030】
したがってこの構成によれば、1次外装体11および2次外装体21の接触面に、互いの接合強度を高めるためのアンカー形状8が設けられているため、1次外装体11から2次外装体21が脱落し外れてしまうのを防止することができる。
【0031】
穴部16の平面形状は特に限定されず、例えば
図5(A)に示すような円弧形や、
図5(B)に示すような円形などとされる。
【0032】
また、穴部16は1次外装体11の上面および側面(外周面)の双方に対し開口するものであっても良く、この場合には接合強度が更に高められる。
図5(C)はこの場合の例を示し、穴部16の平面形状がT字状とされて、T字の縦棒の先端が1次外装体11の側面(外周面)にも開口している。
【符号の説明】
【0033】
1 ソレノイド
2 ソレノイド本体
3 コイル
4 ボビン
5 ヨーク
6 固定鉄心
7 コネクタ部
8 アンカー形状
11 1次外装体
12 第1被覆部
13 第2被覆部
14 鍔部
15 貫通穴部
16 穴部
21 2次外装体
31 バルブ作動部
32 可動鉄心
33 弁軸
34 バルブボディ
41 ハウジング
c 隙間