(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘弾性測定部は、前記被検物に0.5Hz以上5Hz以下の周期で、0.1%以上20%以下の歪を与えることを特徴とする、請求項9に記載の口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置。
前記試験液供給部は、前記被検物が吸水可能な量の50%以上の前記試験液を前記被検物に添加することを特徴とする、請求項8に記載の口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置。
前記試験液供給部は、前記被検物が吸水可能な量の50%以上の前記試験液を前記被検物に添加することを特徴とする、請求項9に記載の口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置。
前記試験液供給部は、前記被検物が吸水可能な量の50%以上の前記試験液を前記被検物に添加することを特徴とする、請求項10に記載の口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
口腔内の唾液や少量の水を吸水することによる崩壊過程、食感や残留感を安全かつ客観的に評価する方法は、これまでに報告されていない。このような評価方法が実現すれば、口腔内崩壊錠のみならず、散剤、顆粒剤などの医薬品および清涼菓子やミントタブレットのような錠菓についても、崩壊過程、食感や残留感を評価することが可能となる。
【0007】
本発明の一つの目的は、口腔内環境を模した口腔内崩壊錠や錠菓等の口腔内での崩壊性を有する医薬品や食品の食感を評価するための評価方法を提供することである。また、本発明の一つの目的は、口腔内環境を模した口腔内崩壊錠や散剤、顆粒剤などの医薬品、更には錠菓等の口腔内での崩壊性を有する食品の食感を評価するための評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、測定装置が、口腔内崩壊性を有する被検物に所定の圧力を加えながら、所定の周期で所定の歪を与え、前記被検物に所定量の試験液を添加し、経時的に前記被検物の損失正接を測定することを特徴とする、口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価方法が提供される。
【0009】
前記被検物の食感評価方法において、φ12mmの治具を用いたときに、前記被検物に加える前記圧力が、1Nより大きく10Nより小さくてもよい。
【0010】
前記被検物の食感評価方法において、前記被検物に0.5Hz以上5Hz以下の周期で、0.1%以上20%以下の歪を与えてもよい。
【0011】
前記被検物の食感評価方法において、前記被検物が吸水可能な量の50%以上の前記試験液を添加してもよい。
【0012】
前記被検物の食感評価方法において、前記被検物が崩壊するまでの前記損失正接の値で食感を評価し、前記被検物が崩壊した後の値で残留感を評価してもよい。
【0013】
また、本発明の一実施形態によると、口腔内崩壊性を有する被検物に所定の圧力を加えながら、所定の周期で所定の歪を与え、経時的に前記被検物の損失正接を測定する粘弾性測定部と、前記被検物に所定量の試験液を添加する試験液供給部と、前記被検物の特性を解析する解析部と、を備えることを特徴とする、口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置が提供される。
【0014】
前記被検物の食感評価装置において、前記粘弾性測定部はφ12mmの治具を備え、1Nより大きく10Nより小さい圧力を前記被検物に加えてもよい。
【0015】
前記被検物の食感評価装置において、前記粘弾性測定部は、前記被検物に0.5Hz以上5Hz以下の周期で、0.1%以上20%以下の歪を与えてもよい。
【0016】
前記被検物の食感評価装置において、前記試験液供給部は、前記被検物が吸水可能な量の50%以上の前記試験液を前記被検物に添加してもよい。
【0017】
前記被検物の食感評価装置において、前記解析部は、前記被検物が崩壊するまでの前記損失正接の値として食感を示し、前記被検物が崩壊した後の値として残留感を示してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によると、口腔内環境を模した口腔内崩壊錠や散剤、顆粒剤などの医薬品、錠菓等の口腔内での崩壊性を有する食品の食感を評価するための評価方法が提供される。また、本発明の一実施形態によると、口腔内環境を模した口腔内崩壊錠や錠菓等の口腔内での崩壊性を有する医薬品や食品の食感を評価するための評価装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価方法及び食感評価装置について説明する。但し、本発明の口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価方法及び食感評価装置は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
(口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置)
図1は、本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置100を示す模式図である。
図1(a)は、食感評価装置100のブロック構成図である。
図1(b)は、粘弾性測定部110及び試験液供給部120を示す模式図である。食感評価装置100は、例えば、粘弾性測定部110と、試験液供給部120と、解析部130と、を備える測定装置であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
粘弾性測定部110は、例えば、試料台111と、試料台111と対向して配置された治具113と、を備える。試料台111は、口腔内崩壊性を有する被検物(以下、試料1とも称す。)を配置する台である。治具113は、試料1に所定の圧力を加えながら、所定の周期で所定の歪を与える。粘弾性測定部110は、治具113を駆動し、経時的に試料1の損失正接(tanδ)を測定する。
【0023】
より詳細には、粘弾性測定部110は、治具113を駆動して、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")を測定する。解析部130は、粘弾性測定部110で貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")から下記式(1)により、損失正接(tanδ)を算出する。
損失正接(tanδ)=損失弾性率(G")/貯蔵弾性率(G') (1)
【0024】
なお、損失正接(tanδ)を解析部130が算出せずに、粘弾性測定部110が算出してもよい。例えば、粘弾性測定部110が計算部を備える場合には、粘弾性測定部110が損失正接(tanδ)を算出することができる。
【0025】
粘弾性測定部110はφ12mmの治具113を備える場合、1Nより大きく10Nより小さく圧力を試料1に加える。また、粘弾性測定部110は治具113を0.5Hz以上5Hz以下の周期で駆動し、0.1%以上20%以下の歪を与える。一実施形態において、粘弾性測定部110は治具113を3Hzで駆動し、5%の歪を与えながら、5Nの圧力を試料1に加えることが好ましい。例えば、Utanohara Y. et al., Dysphagia, 23:286-290, 2008には、ヒトの舌圧は40kPa程度との報告があり、φ12mmの治具113が試料1に加える5Nの圧力はおよそ35kPaとなり、ほぼこれに対応する。粘弾性測定部110としては、上記の測定条件を満たすことが可能なレオメータを用いることができる。
【0026】
試験液供給部120は、試料1に近接して配置され、試料1に所定量の試験液を添加する。試験液としては、水、人工唾液、緩衝液等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。試験液供給部120は、試料1が吸水可能な量の50%以上の試験液を添加する。一般的な口腔内崩壊錠について評価する場合には、試験液供給部120から試料1に滴下する試験液は0.5mlであることが好ましい。
【0027】
試験液供給部120として、例えば、シリンジポンプを用いることができるが、本発明に係る食感評価装置100においては、これに限定されない。シリンジ、スポイトやピペット等から手動により、試験液を試料1に滴下してもよい。試験液の滴下速度は任意に設定可能である。
【0028】
解析部130は、粘弾性測定部110から受信したデータを解析する装置であり、例えば、解析プログラムを処理する演算装置である。解析部130は、解析プログラムを格納したROM(Read Only Memory)を備えた専用装置であってもよく、解析プログラムを格納又はオンラインで提供される汎用装置であってもよい。解析部130は、例えば、解析プログラムを実行可能なパーソナルコンピュータ(PC)や、タブレット等の携帯端末であってもよい。
【0029】
解析部130は、粘弾性測定部110から受信した損失正接(tanδ)から、試料1の崩壊時の状態の変化を解析する。解析部130は、粘弾性測定部110から受信した試料1の損失正接(tanδ)に基づき、食感及び残留感を評価することができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊性を有する試料1の食感を示す図である。
図2には、試料1の損失正接(tanδ)が時間軸に対してプロットされる。損失正接(tanδ)の領域Bは試料1が口腔内で崩壊する時の食感に対応し、損失正接(tanδ)の領域Cは試料1が口腔内で崩壊した後の残留感に対応する。
【0030】
図2には、試料1の損失正接(tanδ)と併せて、試料台111からの治具113の距離(gap)が時間軸に対してプロットされる。治具113からの距離(gap)を示す曲線は、領域Aにおいて、試料台111から離れる傾向を示す。これは、試験液供給部120から滴下される試験液が試料1に吸水され、試料1が膨潤するためである。
【0031】
試験液を吸水した試料1は、治具113により加えられる圧力により、崩壊を開始する(時間S)。試料1は崩壊を開始すると急激に崩壊するため、試料台111からの治具113の距離(gap)が時間軸に対して直線的に減少する。
図2において、時間S以降の治具113の距離(gap)の直線的な減少は試料1の崩壊速度を示す。試料1が崩壊すると(時間E)、試料1に含まれる原薬や添加剤等の粉体の粒子が出現(残留)し、治具113により加えられる圧力により、この粒子がさらに崩壊する。粒子の崩壊時には崩壊速度が大きく減速し、治具113からの距離(gap)を示す曲線は、時間軸に対して緩やかな傾斜を有する直線状となる。
【0032】
このように、試料1が崩壊を開始すると治具113からの距離(gap)を示す曲線の傾きは大きくなり、試料1が崩壊を終了する(粒子の崩壊のみに移行する)と治具113からの距離(gap)を示す曲線の傾きは小さくなる。このような傾きの変化が生じる時間を時間S及び時間Eとそれぞれ判断することができる。このため、解析部130は、時間Sから時間E迄の期間と重複する期間に現れる損失正接(tanδ)の値(領域B)を、試料1が口腔内で崩壊する時の食感と判断することができる。
【0033】
解析部130は、時間Sから時間E迄の期間と重複する期間に現れる損失正接(tanδ)の値(領域B)の平均値又は最大値(又は極大値)を試料1の口腔内崩壊時の食感(柔らかさ、滑らかさ等)として評価することができる。
【0034】
また、試料1が崩壊した後に残留する粒子の崩壊に伴う損失正接(tanδ)が、領域Cにおいて比較対象の口腔内崩壊錠より小さい値であった場合には、残留感(粉っぽさ)が大きいことを示す。領域Cにおいて損失正接(tanδ)の値が比較対象の口腔内崩壊錠よりも大きければ、比較対象よりも滑らかな口溶けであることを示す。
【0035】
食感評価装置100は、粘弾性測定部110や試験液供給部120を制御する制御部140をさらに備える。制御部140は、粘弾性測定部110や試験液供給部120を制御する制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)を備えた専用装置であってもよく、解析プログラムを格納又はオンラインで提供される汎用装置であってもよい。制御部140は、例えば、解析プログラムを実行可能なパーソナルコンピュータ(PC)や、タブレット等の携帯端末であってもよい。
【0036】
また、制御部140は、解析部130を含んでもよく、解析部130とは別に食感評価装置100に設置されてもよい。したがって、解析部130は、制御部140に組み込まれたモジュールであってもよく、制御部140で実行可能なプログラムであってもよい。
【0037】
また、図示しないが、食感評価装置100は、例えば、キーボードやタッチパネル、マウス等の入力装置を備える。利用者は、入力装置により、食感評価装置100操作することができる。例えば、利用者は、入力装置を用いて、試験液供給部120から滴下する試験液の量や滴下速度を任意に設定することができる。
【0038】
また、図示しないが、食感評価装置100は、表示装置を備える。食感評価装置100は、例えば、
図2に示したような試料1の損失正接(tanδ)の経時曲線、治具113からの距離(gap)の経時曲線等を利用者に表示することができる。
【0039】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置100は、試料1の損失正接(tanδ)の経時曲線、治具113からの距離(gap)の経時曲線等を提供するとともに、試料1の口腔内崩壊時の食感や残留感を評価することができる。
【0040】
(口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価方法)
上述した口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価装置を用いた被検物の評価方法について、以下に説明する。
【0041】
口腔内崩壊錠の口腔内崩壊性を有する被検物の食感を評価するために、任意の試料1を準備する。食感評価の精度や再現性の観点から、試料1を可能な限り多く準備することが好ましい。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊性を有する被検物の損失正接(tanδ)の測定方法を示すフローチャートである。粘弾性測定部110の試料台111に試料1を配置し、治具113で試料1を挟持する(S101)。治具113を駆動し、損失正接(tanδ)の測定を開始する(S103)。
【0043】
粘弾性測定部110は治具113を駆動し、1Nより大きく10Nより小さい圧力を試料1に加える。また、粘弾性測定部110は治具113を0.5Hz以上5Hz以下の周期で駆動し、0.1%以上20%以下の歪を与える。一実施形態において、粘弾性測定部110は治具113を3Hzで駆動し、5%の歪を与えながら、5Nの圧力を試料1に加えることが好ましい。
【0044】
損失正接(tanδ)の測定データは、粘弾性測定部110から解析部130へ送信し、記憶する。また、粘弾性測定部110は、治具113を駆動して、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")を測定してもよい。解析部130は、粘弾性測定部110で貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")から下記式(1)により、損失正接(tanδ)を算出する。
損失正接(tanδ)=損失弾性率(G")/貯蔵弾性率(G') (1)
【0045】
なお、損失正接(tanδ)を解析部130が算出せずに、粘弾性測定部110が算出してもよい。例えば、粘弾性測定部110が計算部を備える場合には、粘弾性測定部110が損失正接(tanδ)を算出することができる。
【0046】
試験液供給部120から試料1が吸水可能な量の50%以上の試験液を滴下する(S105)。一般的な口腔内崩壊錠について評価する場合には、試験液供給部120から試料1に滴下する試験液は0.5mlであることが好ましい。
【0047】
試料1が崩壊し、所定の時間が経過した後に、損失正接(tanδ)の測定を終了する(S107)。一般的な口腔内崩壊錠について評価する場合には、損失正接(tanδ)の測定時間は、3〜5分程度であればよい。
【0048】
以上、説明した処理により、試料1の損失正接(tanδ)を測定することができる。このようにして求めた損失正接(tanδ)の値から、試料1の口腔内崩壊時の食感や残留感を評価することができる。
【0049】
図4は、本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊性を有する被検物の損失正接(tanδ)の測定方法を示すフローチャートである。粘弾性測定部110の試料台111に試料1を配置し、治具113で試料1を挟持する(S201)。粘弾性測定部110は、試料台111から治具113までの距離を測定し、解析部130へ送信する(S203)。
【0050】
治具113を駆動し、損失正接(tanδ)の測定を開始する(S205)。粘弾性測定部110はφ12mmの治具113を備える場合、1Nより大きく10Nより小さい圧力を試料1に加える。また、粘弾性測定部110は治具113を0.5Hz以上5Hz以下の周期で駆動し、0.1%以上20%以下の歪を与える。一実施形態において、粘弾性測定部110は治具113を3Hzで駆動し、5%の歪を与えながら、5Nの圧力を試料1に加えることが好ましい。
【0051】
損失正接(tanδ)の測定データは、粘弾性測定部110から解析部130へ送信し、記憶する。また、粘弾性測定部110は、治具113を駆動して、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")を測定してもよい。解析部130は、粘弾性測定部110で貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")から下記式(1)により、損失正接(tanδ)を算出する。
損失正接(tanδ)=損失弾性率(G")/貯蔵弾性率(G') (1)
【0052】
なお、損失正接(tanδ)を解析部130が算出せずに、粘弾性測定部110が算出してもよい。例えば、粘弾性測定部110が計算部を備える場合には、粘弾性測定部110が損失正接(tanδ)を算出することができる。
【0053】
試験液供給部120から試料1が吸水可能な量の50%以上の試験液を滴下する(S207)。一般的な口腔内崩壊錠について評価する場合には、試験液供給部120から試料1に滴下する試験液は0.5mlであることが好ましい。
【0054】
制御部140は、測定終了条件を満たすかを判断する(S209)。例えば、解析部130が受信した試料台111から治具113までの距離が所定の値となったときに、制御部140は、測定終了を満たしたと判断する。また、解析部130がプロットした治具113からの距離(gap)を示す曲線が、時間軸に対して所定の傾斜を有する場合、即ち、試料台111と治具113との間にほとんど粒子が存在せず、粒子が崩壊した粉体のみが存在し、試料台111の方向への治具113の移動がほとんど進行しない場合に、制御部140は、粘弾性測定部110に測定を終了させてもよい。制御部140は、測定終了条件を満たすまで、測定を継続する。
【0055】
制御部140は、測定終了条件を満たしたと判断した場合、粘弾性測定部110に治具113の駆動を停止させ、試料台111から治具113までの距離の測定を終了させる(S211)。また、制御部140は、粘弾性測定部110に損失正接(tanδ)の測定を終了させる(S213)。
【0056】
解析部130は、時間軸に対して、試料台111から治具113までの距離と、損失正接(tanδ)をプロットする(S215)。
【0057】
以上、説明した処理により、試料台111から治具113までの距離と、試料1の損失正接(tanδ)を測定することができる。このようにして求めた試料台111から治具113までの距離と、損失正接(tanδ)の値から、試料1の口腔内崩壊時の食感や残留感を評価することができる。以下に、食感及び残留感の評価方法について説明する。
【0058】
図5は、本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊性を有する被検物の食感及び残留感の評価方法を示すフローチャートである。時間軸に対してプロットした、試料台111から治具113までの距離と、損失正接(tanδ)を読み込む(S301)。
【0059】
解析部130は、治具113からの距離(gap)を時間軸に対してプロットした曲線において、試料台111からの距離が増加する領域Aを検出する。解析部130は、領域Aの後に、試料台111からの治具113の距離(gap)が時間軸に対して直線的な減少に転じる点を崩壊開始点(時間S)として検出する。また、解析部130は、治具113からの距離(gap)を時間軸に対してプロットした曲線において、試料台111からの治具113の距離(gap)が時間軸に対して緩やかな減少に転じる点を崩壊終了点(時間E)として検出する(S303)。
【0060】
解析部130は、治具113からの距離(gap)を時間軸に対してプロットした曲線において、崩壊開始点(時間S)と崩壊終了点(時間E)との間の直線的な傾きから崩壊速度を算出する。また、解析部130は、崩壊開始点(時間S)から崩壊終了点(時間E)迄の期間を崩壊時間として算出する(S305)。
【0061】
解析部130は、時間Sから時間E迄の期間と重複する期間に現れる損失正接(tanδ)の値(領域B)を、試料1が口腔内で崩壊する時の食感と判断する(S307)。また、解析部130は、領域Cの損失正接(tanδ)を残留感として検出する(S309)。
【0062】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る口腔内崩壊性を有する被検物の食感及び残留感の評価方法を用いることにより、測定した試料台111から治具113までの距離と、試料1の損失正接(tanδ)のデータから試料1の口腔内崩壊時の食感や残留感を評価することができる。
【実施例】
【0063】
上述した本発明に係る口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価方法の具体的な実施例及び試験結果を示して、より詳細に説明する。
【0064】
口腔内崩壊錠を準備し、レオメータ(アントンパール社製、MCR302)に配置した。口腔内崩壊錠に0.5mlの35℃の水を滴下し、試料台111からの治具113の距離(d)と、損失正接(tanδ)を測定した。治具113を駆動し、3Hzの周期で0.5%の歪を与えながら、1N、5N又は10Nの3つの圧力を口腔内崩壊錠に加え、試料台111からの治具113の距離(d)と、損失正接(tanδ)を測定した。時間軸に対して、測定した距離(d)と、損失正接(tanδ)をプロットした。
【0065】
図6は、1N、5N又は10Nの3つの圧力を口腔内崩壊錠に加えて測定した試料台111からの治具113の距離(d)(ギャップ)と、損失正接(tanδ)を時間軸に対してプロットした図である。
図6の試料台111からの治具113の距離(d)(ギャップ)の曲線から、舌圧は崩壊速度には影響することが分かる。一方、損失正接(tanδ)の結果から、舌圧は食感には大きく影響はしないものの、ヒトの舌圧40kPaと同程度となる5Nの圧力が、口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時の食感(柔らかさ、滑らかさ等)を評価する領域Bの値の測定に適切であることが示された。
【0066】
次に、3種類の市販プレミックス添加剤(A:グランフィラーD、B:ペアリトールフラッシュ、C:Pharmaburst500)にそれぞれステアリン酸マグネシウムを100:1で混合して製した口腔内崩壊錠(試料A〜C)を準備した。
【0067】
口腔内崩壊錠に0.5mlの35℃の水を滴下し、口腔内崩壊錠に5Nの圧力を加えて、試料台111からの治具113の距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')を測定した。治具113を駆動し、3Hzの周期で0.1%、0.2%、0.5%、5%、10%、20%又は50%の歪を与えながら、試料台111からの治具113の距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')を測定した。時間軸に対して、距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')をプロットした。
【0068】
図7及び8は、0.1%、0.2%、0.5%、5%、10%、20%又は50%の歪を与えながら測定した試料台111からの治具113の距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')を時間軸に対してプロットした図である。
図7(a)は試料Aを用いた測定結果を示し、
図7(b)は試料Bを用いた測定結果を示す。また、
図8は試料Cを用いた測定結果を示す。
図7及び8の損失正接(tanδ)の曲線から、試料A及びCでは20%以上の歪で治具113がスリップして正確な測定ができなかったが、試料Bでは20%の歪みでも治具113はスリップせず、測定可能であった。さらに試料Aでは0.2%以下の歪では不明な挙動を示すことが明らかとなったが、試料B及びCでは0.1%の歪みでも測定可能であった。これらの結果から、本発明に係る口腔内崩壊性を有する被検物の食感評価方法においては、試料の特性により適正範囲が変化するが、0.1%以上20%以下の歪が好ましいことが明らかとなった。
【0069】
次に、上述した試料A〜Cについて、0.5%及び5%の歪において測定した損失正接(tanδ)の値と、官能試験による滑らかさの評価とを比較した。
図9は、口腔内崩壊錠の損失正接(tanδ)の値と、官能試験による滑らかさの評価とを比較した図である。
図9(a)は0.5%の歪において測定した損失正接(tanδ)の値を示し、
図9(b)は5%の歪において測定した損失正接(tanδ)の値を示す。
図9の結果から、0.5%および5%の歪において測定した損失正接(tanδ)の値は、官能試験による滑らかさの評価と最も良好な相関を示すことが明らかとなった。
【0070】
測定時に添加する試験液の量について検討した。吸水量が0.230mlの試料Aと、吸水量が0.100mlの試料Bを準備した。試料A及びBを用いて、滴下する水の量を変更して試料台111からの治具113の距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')を測定した。試料A及びBに35℃の水を滴下し、3Hzの周期で0.5%の歪を与えながら、各試料に5Nの圧力を加えて、試料台111からの治具113の距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')を測定した。
【0071】
試料Aの試料台111からの治具113の距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')の測定結果を
図10(a)〜(c)に示す。また、試料Bの試料台111からの治具113の距離(d)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G')の測定結果を
図11(a)〜(c)に示す。
図10(b)及び
図11(b)の結果から、吸水可能な量の50%以上で貯蔵弾性率(G')及び損失正接(tanδ)に変化が見られ、100%以上で口腔内崩壊錠が完全に崩壊することが明らかとなった。
【0072】
上述した試料A〜Cを用い、歪を与える周期を0.5Hz、1Hz、3Hz及び5Hzとして、損失正接(tanδ)を測定した。なお、試料A〜Cに35℃の水を0.5mL滴下し、各周期で5%の歪みを与えながら、5Nの圧力を加えて、損失正接(tanδ)を測定した。試料A〜Cについての測定結果を
図12(a)〜(c)にそれぞれ示す。
図12(a)〜(c)の結果から、0.5Hz以上5Hz以下の周期範囲において、食感の評価が可能であることが明らかとなった。