特許第6852077号(P6852077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852077
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】液圧装置および併用液圧機器
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20210322BHJP
   F01D 17/10 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   F15B20/00 G
   F01D17/10 G
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-530011(P2018-530011)
(86)(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公表番号】特表2019-506573(P2019-506573A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】US2016061949
(87)【国際公開番号】WO2017116573
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】14/985,770
(32)【優先日】2015年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ボビー、ディラン、ティー
(72)【発明者】
【氏名】ブーベック、デヴィッド、ジェイ
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−056306(JP,A)
【文献】 特開平04−231608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00
F01D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
或るデバイス(6)の動作の少なくとも1つの側面を制御するために当該デバイスへの作動液の供給を操作するように構成された液圧装置(4)であって、
当該デバイスに流体連通関係に接続されるように構成された第1の制御レグ(10)と、
当該デバイスに流体連通関係に接続されるように構成された第2の制御レグ(12)と、
当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間に流体連通関係に接続され、当該第1の制御レグから当該第2の制御レグへの作動液の流れを阻止し、当該第2の制御レグから当該第1の制御レグへの作動液の流れを許容する逆止弁(46)と、
当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間に流体連通関係にかつ当該逆止弁と並列に接続され、第1の状態と第2の状態の間で作動可能であり、当該第1の状態にあるとき当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間の作動液の流れを阻止し、当該第2の状態にあるとき当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間の作動液の流れを許容するバイパス装置(48)と、
当該第1の制御レグ、加圧された作動液の供給管(22)および減圧された排出管(24)と流体連通関係に接続された多数の第1の弁(18A、18B、18C)と、
当該第2の制御レグ、当該供給管および当該排出管と流体連通関係に接続された多数の第2の弁(34A、34B、34C)とより成り、
当該多数の第1の弁は第1の状態と第2の状態の間で作動可能であり、
当該多数の第1の弁が当該第1の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第1の状態にあるとき、
当該第1の制御レグは当該供給管と流体連通し、
当該多数の第1の弁が当該第2の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第1の状態にあるとき、
当該第1の制御レグは当該排出管と流体連通し、かつ
当該第2の制御レグは当該逆止弁を介して当該排出管と流体連通し、
当該多数の第1の弁が当該第1の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第2の状態にあるとき、
当該第1の制御レグは当該供給管と流体連通し、かつ当該バイパス装置を介して当該第2の制御レグと流体連通し、
当該多数の第1の弁が当該第2の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第2の状態にあるとき、
当該第1の制御レグは当該排出管と流体連通し、かつ
当該第2の制御レグは当該逆止弁および当該バイパス装置を介して当該排出管と流体連通し、
当該多数の第2の弁は第1の状態と第2の状態の間で作動可能であり、
当該多数の第2の弁が当該第1の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第1の状態にあるとき、
当該第2の制御レグは当該供給管と流体連通し、
当該多数の第2の弁が当該第2の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第1の状態にあるとき、
当該第2の制御レグは当該排出管と流体連通し、
当該多数の第2の弁が当該第1の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第2の状態にあるとき、
当該第2の制御レグは当該供給管と流体連通し、かつ当該バイパス装置を介して当該第1の制御レグと流体連通し、
当該多数の第2の弁が当該第2の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第2の状態にあるとき、
当該第2の制御レグは当該排出管と流体連通し、かつ
当該第1の制御レグは当該バイパス装置を介して当該排出管と流体連通することを特徴とする液圧装置。
【請求項2】
前記バイパス装置は多数のポペット式ロジック弁(58)から成る、請求項1の液圧装置。
【請求項3】
前記バイパス装置はさらに、前記多数のポペット式ロジック弁と流体連通する多数の電磁弁(54)から成る、請求項2の液圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願で開示および特許請求する発明は概して液圧設備に関し、具体的には、或るデバイスの動作の少なくとも1つの側面を制御するために当該デバイスへの作動液の供給を制御する液圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧システムは、有用な仕事の実施をはじめとする多くの用途のあることが関連技術分野でよく知られている。一部のシステムでは、電気制御弁が作動液回路の別の場所への加圧された作動液の流れを制御して、有用な仕事を実施させる。液圧システムは、一般的に、有用な仕事を実行するデバイスと流体連通する加圧作動液供給管と、圧力が低下した作動液を貯蔵器に還流させる戻り管とを含む。使用する弁にもよるが、供給管および戻り管を単一の配管によって提供する状況もある。液圧システムにはさらに、供給管を所定の液圧に維持するため、また、他の目的のために、余剰の作動液を貯蔵器へ還流させるバイパス管または戻り管と呼ばれる別の配管を設けることがある。
【0003】
或る特定の設備では、液圧システム、または液圧システムにより作動されるデバイスには、所与の液圧機器または回路が故障すると、故障した機器が修理または交換されるまでの間、別の液圧機器または回路が必要な機能を果たせるように、システムに冗長性を組み込むことが重要である。そうした冗長性が要求される一例として、発電機に接続された蒸気タービンを作動させる蒸気発生タイプの火力発電所または原子力発電所のような環境がある。そのような蒸気をタービンに供給制御する弁は閉位置付勢型であり、液圧によりその付勢力に抗して弁を開くことによりタービンに蒸気を供給する。液圧が喪われると供給弁が閉じるので、このシステムは故障時に安全側に作動するフェイルセーフシステムのようなものである。かかる設備においてそのような液圧を必要に応じて解放できることは非常に重要であるため、従前のシステムは主停止回路と予備停止回路の両方を使用してきた。したがって、何らかの理由で主停止回路が故障しても、予備停止回路が作動して、タービンへの蒸気の流れを止めることにより、タービンを作動列から外してタービン、発電機または他の構成機器の損傷を防ぐことができる。そのようなシステムは、所期の目的達成に概して有効であるが、それなりの制約もある。
【0004】
前述した例の発電機に接続された蒸気タービンにおいて、液圧制御回路は、過速度状態に対処するためタービンへの蒸気の流れを一時的に減少または遮断する第3の液圧制御系をさらに含むのが一般的である。例えば、タービンは通常、毎分1800回転で周波数60Hzの電気を発生させるが、タービンの回転速度が毎分1800回転を超えると電気の周波数が60Hzを超えるため問題である。そのような状況下では、液圧制御によって、タービンへの蒸気の流れを減少させるか停止して、タービンが過速度状態から徐々に減速して毎分1800回転になるようにし、その時点でタービンへの蒸気の供給を毎分1800回転を維持するレベルに戻すか増加させる。しかし、そのような液圧制御系は規模、複雑さおよびコストが過大になっている。状況によっては、電磁弁の代わりに、それぞれが同時に作動される複数の弁を用いる複数の弁マニホールドブロックを使用し、各ブロックのすべての弁のうち或る特定の数の弁が正しく作動すればシステムが正しく作動する(すなわち適切に制御される)ように構成したものがある。例えば、一部の弁マニホールドブロックは3つの弁を使用し、3つの弁のうち2つが入力に応答して作動すればシステムは正しく作動するように設計されている。したがって、弁のうちの1つが開状態で固着した場合、その弁への作動液の流れを遮断しても、接続された液圧システムの運転が大きく妨げられることにはならない。同様に、3つの弁のうちの1つが閉位置で固着した場合、開状態に作動される他の2つの弁が、必要な機能を正しくかつ十分に実行する。並列に接続された複数の弁のうちの一部が作動状態にある限り、接続された液圧回路を正しく作動させるように構成されたシステムの例が数多く存在する。
【0005】
しかしながら、弁マニホールドブロックを使用するそのような液圧システムのコストは、特に冗長性付与のためにそうしたシステムを複数個必要とする場合、例えば過速度制御のために弁や別の制御装置の追加が必要な場合に過大なものとなっている。前述のように、そのような追加部品のコストは、合算される費用のうちの1つの要素に過ぎないが、その理由は、かかるシステムの実装に必要な複雑な配管および接続部品にかかる別の支出およびかかるシステムの占有空間の体積が単に大きいことによる別の支出があるからである。したがって、改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
液圧装置は、停止能力を提供する第1の弁マニホールドおよび過速度制御能力を提供する第2の弁マニホールドを含む。当該液圧装置はさらに、逆止弁およびバイパス装置から成る液圧機器を有効利用する。当該液圧機器の使用により、第2の弁マニホールドは代替機能としての冗長な停止能力を新たに提供できるため、3つ目の弁マニホールドを設ける必要性がなくなる。
【0007】
したがって、本願で開示および特許請求する発明は、コストと複雑さを減少するために、バイパス装置を使用して、一連の弁が一次機能と冗長な二次機能の両方を実行できるようにした改良型液圧装置を提供するものである。
【0008】
本願で開示および特許請求する発明は、別の側面として、弁マニホールドよりはるかに安価なバイパス装置を使用することにより、たった2つの弁マニホールドによって3つの液圧動作(例えば停止、速度制御および冗長な停止)を提供することができる改良型液圧装置を提供するものである。
【0009】
本願で開示および特許請求する発明は、別の側面として、液圧装置の複雑さおよびコストを低減するものである。
【0010】
本願で開示および特許請求する発明は、別の側面として、改良型液圧装置に実装可能な、弁マニホールドよりも安価で、占有空間が小さく、必要な液圧接続部が少ない改良型液圧機器を提供するものである。
【0011】
したがって、本願で開示および特許請求する発明は、一側面として、或るデバイスの動作の少なくとも1つの側面を制御するために、当該デバイスへの作動液の供給を操作するように構成された改良型液圧装置を提供するものである。当該液圧装置は、当該デバイスに流体連通関係に接続された第1の制御レグと、当該デバイスに流体連通関係に接続された第2の制御レグと、当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間に流体連通関係に接続され、当該第1の制御レグから当該第2の制御レグへの作動液の流れを阻止し、当該第2の制御レグから当該第1の制御レグへの作動液の流れを許容する逆止弁と、当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間に流体連通関係にかつ当該逆止弁と並列に接続され、第1の状態と第2の状態の間で作動可能であり、当該第1の状態にあるとき当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間で作動液の流れを阻止し、当該第2の状態にあるとき当該第1の制御レグと当該第2の制御レグの間で作動液の流れを許容するバイパス装置と、当該第1の制御レグ、加圧された作動液の供給管および減圧された排出管に流体連通関係に接続され、第1の状態と第2の状態の間で作動可能な多数の第1の弁と、から成ると一般的に言える。本願で用いる用語「多数の」およびその変化形は、広義には、ゼロを除き1を含む任意の数量を意味する。当該多数の第1の弁が第1の状態で、かつ当該バイパス装置が第1の状態にあるとき、当該第1の制御レグは当該供給管と流体連通する。当該多数の第1の弁が第2の状態で、かつ当該バイパス装置が第1の状態にあるとき、当該第1の制御レグは当該排出管と流体連通し、かつ当該第2の制御レグは当該逆止弁を介して当該排出管と流体連通する。当該多数の第1の弁が第1の状態で、かつ当該バイパス装置が第2の状態にあるとき、当該第1の制御レグは当該供給管と流体連通し、当該バイパス装置を介して当該第2の制御レグと流体連通する。当該多数の第1の弁が第2の状態で、かつ当該バイパス装置が第2の状態にあるとき、当該第1の制御レグは当該排出管と流体連通し、かつ当該第2の制御レグは当該逆止弁および当該バイパス装置を介して当該排出管と流体連通する。当該液圧装置は一般的に、当該第2の制御レグ、当該供給管および当該排出管に流体連通関係に接続され、第1の状態と第2の状態の間で作動可能な多数の第2の弁をさらに含むと言える。当該多数の第2の弁が第1の状態で、かつ当該バイパス装置が第1の状態にあるとき、当該第2の制御レグは当該供給管と流体連通する。当該多数の第2の弁が第2の状態で、かつ当該バイパス装置が第1の状態にあるとき、当該第2の制御レグは当該排出管と流体連通する。当該多数の第2の弁が第1の状態で、かつ当該バイパス装置が第2の状態にあるとき、当該第2の制御レグは当該供給管と流体連通し、当該バイパス装置を介して当該第1の制御レグと流体連通する。当該多数の第2の弁が当該第2の状態で、かつ当該バイパス装置が当該第2の状態にあるとき、当該第2の制御レグは当該排出管と流体連通し、かつ当該第1の制御レグは当該バイパス装置を介して当該排出管と流体連通する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本願で開示および特許請求する発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0013】
図1】或るデバイスの動作の少なくとも1つの側面を制御するために当該デバイスへの作動液の流れを制御する、本願で開示および特許請求する発明による改良型液圧装置を示す。
【0014】
図2】一次制御動作を説明する点を除き図1に類似する図である。
【0015】
図3】別の一次制御動作を説明する点を除き図2に類似する図である。
【0016】
図3A】別の一次制御動作の別の側面を説明する点を除き図3に類似する図である。
【0017】
図4】冗長な制御動作である二次制御動作を説明する点を除き図1に類似する図である。
【0018】
本願で使用する同じ参照番号は、同様の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
改良型液圧装置4を図1〜4に示す。液圧装置4は、それに接続されたデバイス6の動作の少なくとも1つの側面を制御するために、当該デバイス6への作動液の流れを制御するように作動可能である。例示する実施態様において、デバイス6は発電機に作動的に接続された蒸気タービンであり、液圧装置4が当該デバイス6へ作動液を供給して、タービンへの蒸気の供給を制御する弁を作動させる。ただし、本発明の思想から逸脱することなく、この液圧装置4は他のタイプの機械装置等を制御できることを理解されたい。
【0020】
液圧装置4は、デバイス6と流体連通する第1の制御レグ10と、同じくデバイス6と流体連通する第2の制御レグ12とを含むと言える。第1の制御レグ10および第2の制御レグ12によるデバイス6への作動液の供給によって、当該デバイス6への蒸気の供給を制御する当該デバイス上の弁の動作が制御される。液圧装置4はさらに、第1の制御レグ10と流体連通する第1の弁マニホールド16と、第2の制御レグ12と流体連通する第2の弁マニホールド30とを含む。以下で詳述するように、第1の弁マニホールド16および第2の弁マニホールド30はそれぞれ、並列で互いに流体連通関係にあり、内在する動作機構によって同時に作動される複数の弁を含む。さらに、第1の弁マニホールド16および第2の弁マニホールド30はそれぞれ、複数の弁のうちの一部が命令どおりに作動しない状態でも正しく機能する(すなわち所期の機能を果たす)ように構成されている。第1の弁マニホールド16および第2の弁マニホールド30が他の弁システムの形態をとる、本発明の思想から逸脱しない別の実施態様があることを理解されたい。
【0021】
第1の弁マニホールド16は、参照符号18A、18B、18Cで表される3つの第1の弁を含むが、これらを集合的または個別に参照符号18で表すことがある。これらの第1の弁18は、並列で互いに流体連通関係に接続され、第1の状態と第2の状態の間で同時に作動可能である。第1の弁マニホールド16には、第1の供給管22、第1の排出管24および第1の戻り管28が流体連通関係に接続されている。第1の供給管22は、第1の弁マニホールド16が第1の状態(図1に示す)にあるとき、第1の制御レグ10と流体連通して、加圧された作動液を供給する。第1の弁マニホールド16は、第1の状態(図1、2に略示)と、第1の制御レグ10が第1の排出管24と流体連通する第2の状態(図3、3Aに略示)の間で作動可能である。第1の弁マニホールド16が第2の状態になると、第1の供給管22が第1の戻り管28と流体連通し、第1の供給管22から供給される加圧された作動液が第1の供給管22の供給元である貯蔵器に還流する。代替策として、第1の弁マニホールド16が第2の状態になると、第1の供給管22が第1の排出管24と流体連通し、第1の供給管22からの加圧された作動液が、第1の供給管22へ作動液を供給する貯蔵器に還流するようにしてもよい。また、第1の供給管22の液圧が第1の制御レグ10にとって望ましいレベルを超えている場合、第1の状態にある第1の弁マニホールド16により、第1の戻り管28が第1の供給管22と流体連通するため、余剰の作動液を貯蔵器に戻すこともできる。
【0022】
第1の弁マニホールド16と同様に、第2のマニホールド30も、参照符号34A、34B、34Cで表される3つの第2の弁を含むが、これらを集合的または個別に参照符号34で表すことがある。互いに並列で流体連通関係にあるこれらの第2の弁34は、制御システムによって第1の状態と第2の状態の間で同時に作動可能である。第1の弁マニホールド16と同様に、第2の弁マニホールド30も、第2の供給管36、第2の排出管40および第2の戻り管42と流体連通関係に接続されている。第2の弁マニホールド30は、図1、3、3Aに示す第1の状態で、第2の供給管36を第2の制御レグ12に流体連通関係に接続する。第2の弁マニホールド30はまた、図2、4に示す第2の状態で、第2の制御レグ12を第2の排出管40に流体連通関係に接続する。第2の排出管40および第2の戻り管42は、第2の供給管36および/または第1の供給管22の供給元である貯蔵器と流体連通関係にある。一般的に、第1の供給管22および第2の供給管36は、加圧された作動液の単一の供給源から作動液の供給を受ける可能性が高く、当該供給源の供給元である単一の作動液貯蔵器に液圧装置4のすべての流れが還流することがわかる。ただし、特定の設備の要求にもよるが、これは必然的な要件ではない。
【0023】
液圧装置4は、第1の制御レグ10と第2の制御レグ12の間に流体連通関係に接続された逆止弁46をさらに含む。逆止弁46は、第2の制御レグ12から第1の制御レグ10への流体の流れを許容するが、その反対方向の流れは阻止する。
【0024】
液圧装置4はさらに、第1の制御レグ10および第2の制御レグ12に流体連通関係に接続されたバイパス装置48を含むが、当該バイパス装置は逆止弁46と並列であると言える。バイパス装置48は、さまざまな状況にもよるが、以下に詳述するように、逆止弁46を迂回する、第1の制御レグ10から第2の制御レグ12への作動液の流れと、第2の制御レグ12から第1の制御レグ10への作動液の流れとを許容する。
【0025】
逆止弁46とバイパス装置48とは協働して、第1の制御レグ10および第2の制御レグ12と流体連通関係に接続された液圧機器52を形成すると考えられる。以下で詳述するように、液圧機器52は、第1の弁マニホールド16および第2の弁マニホールド30のいずれよりもコストが格段に低い。以下にさらに詳述するように、バイパス装置48は、第2の弁マニホールド30が単に1つではなく2つの機能を果たすのを可能にするが、これが液圧装置4のコスト削減に有利に働く。
【0026】
バイパス装置48は、参照符号54Aおよび54Bで示される一対の電磁弁を含むと言うことができるが、それらの電磁弁を集合的または個別に参照符号54で表すことがある。バイパス装置48はさらに、参照符号58Aおよび58Bで示される一対のポペット式ロジック弁を含むと言うことができるが、それらのロジック弁を集合的または個別に参照符号58で表すことがある。各電磁弁54は、対応するポペット弁58の1つと流体連通関係に接続されている。電磁弁54Aとポペット式ロジック弁58Aは第1の弁複合体62Aを形成し、電磁弁54Bとポペット式ロジック弁58Bは第2の弁複合体62Bを形成すると言える。第1の弁複合体62Aと第2の弁複合体62Bは、第1の制御レグ10および第2の制御レグ12に互いに並列で流体連通関係に接続され、相互に冗長性を付与する流体接続デバイスとして機能する。
【0027】
電磁弁54Aは、参照符号60A、64A、66Aで一般的に表される3つの接続部を有する。電磁弁54Bも同様に、参照符号60B、64B、66Bで表される3つの接続部を有する。接続部60A、60Bは第1の制御レグ10と流体連通関係に接続され、接続部64A、64Bは排出管または作動液貯蔵器と流体連通関係に接続されている。接続部66A、66Bはそれぞれ、ポペット式ロジック弁58A、58Bと流体連通関係に接続されている。さらに詳説すると、ポペット式ロジック弁58A、58Bはそれぞれ、接続部66A、66Bとそれぞれ流体連通関係にある制御接続部70A、70Bを有する。また、ポペット式ロジック弁58A、58Bはそれぞれ、第1の制御レグ10と流体連通関係にある第1の弁72A、72Bを有する。さらに、ポペット式ロジック弁58A、58Bはそれぞれ、第2の制御レグ12と流体連通関係にある第2の弁76A、76Bを有する。
【0028】
制御システムは、第1の弁マニホールド16および第2の弁マニホールド30の動作、ならびに電磁弁54の動作を制御する。電磁弁54は、制御システムによって通電されると、接続部60A、60Bをそれぞれ接続部66A、66Bと流体連通させる、図1〜3Aに略示するような第1の状態になる。電磁弁54は、制御システムによって非通電状態になると、接続部66A、66Bをそれぞれ接続部64A、64Bと流体連通させる、図4に示すような第2の状態に切り替わる。制御接続部70A、70Bに所定の液圧がかかっておれば、第1の弁72A、72Bおよび第2の弁76A、76Bは閉位置に留まり、第1の制御レグ10と第2の制御レグ12の間をポペット式ロジック弁58を介して流体が流れることはない。そのような所定の液圧は、図1に略示するように、第1の弁マニホールド16が第1の状態にあり、電磁弁54が第1の状態にあるとき、第1の制御レグ10から得られる。しかし、制御接続部70A、70Bの液圧が所定のしきい値を下回ると、ポペット式ロジック弁58が開状態になり、第1の制御レグ10と第2の制御レグ12の間のいずれの方向の流体の流れも許容するようになる。ポペット式ロジック弁58により第1の制御レグ10と第2の制御レグ12の間のそのような流体の流れが可能になると、ポペット式ロジック弁58を介する第1の制御レグ10から第2の制御レグ12への流体の流れの圧力降下が、ポペット式ロジック弁58を介する第2の制御レグ12から第1の制御レグ10への流れの圧力降下より大きくなる。
【0029】
前述のように、図1は、いずれも第1の状態にある第1の弁マニホールド16および第2の弁マニホールド30を示す。そのような状況下において、第1の制御レグ10には矢印78で示すように流体圧力がかかり、その結果、矢印84で示すように第1の制御レグ10からデバイス6に液圧がかかる。同様に、第2の制御レグ12には矢印82で示すように第2の弁マニホールド30によって流体圧力がかかり、その結果、矢印88で示すように第2の制御レグ12からデバイス6に液圧がかかる。矢印82に示すように第2の制御レグ12に液圧がかかり、通電状態の電磁弁54が第1の状態にあるため、第1の制御レグ10の液圧が矢印90Aで示すように接続部60A、66Aを介して制御接続部70Aにかかり、さらに当該液圧が矢印90Bで示すように接続部60B、66Bを介して制御接続部70Bにかかり、かくしてポペット式ロジック弁58が閉位置に保たれ、当該ロジック弁により作動液の流れが阻止される。
【0030】
図2は、第1の状態(図1に示す)から、第2の制御レグ12が第2の排出管40と流体連通する第2の状態へ変化した第2の弁マニホールド30を示す。この状態では、作動液は矢印182で示すように第2の制御レグ12から第2の弁マニホールド30へ流れたあと、矢印192で示すように第2の排出管40へ流入する。逆止弁46は第1の制御レグ10から第2の制御レグ12への作動液の流れを阻止し、第1の弁マニホールド16は第1の状態に留まるため、参照符号178で示すように第1の制御レグ10には引き続き液圧がかかり、矢印184で示すようにデバイス6にも引き続き液圧がかかる。第1の制御レグ10にかかり続けるこの液圧は、矢印190A、190Bで示すように、第1の状態にある電磁弁54を介して制御接続部70A、70Bに圧力を加え続ける。このため、ポペット式ロジック弁58は閉位置を持続し、流体の貫流を阻止する。したがって、図2に略示するシナリオでは、第2の弁マニホールド30はその一次機能(例示する実施態様ではデバイス6の過速度制御)を果たす。
【0031】
図3のシナリオでは、第1の弁マニホールド16が、制御システムの指示により、図1、2に略示する第1の状態から図3に示す第2の状態へ移行して保護機能を果たす。そのような状況下において、第1の制御レグ10は、第1の排出管24と流体連通関係にあるため、第1の制御レグ10から作動液が排出される。すなわち、作動液が矢印284で略示されるようにデバイス6から第1の制御レグ10へ流れたあと、矢印278で示すように第1の弁マニホールド16へ流入し、さらに矢印280で示すように第1の排出管24へ送られる。そのような状況下では、第1の制御レグ10の液圧が低下するため、矢印286で示すように作動液が加圧状態の第2の制御レグ10から逆止弁46を通って第1の制御レグ10へ流入する。このため、第2の制御レグ12から作動液が排出される。その結果、作動液は矢印288で示すようにデバイス6から第2の制御レグ12へ流入する。矢印288で示すそのような流体の流れおよび第1の供給管36からの加圧された流体の流れは、矢印282で示すように第2の制御レグ12を通ったあと、矢印286で示すように逆止弁46を通り抜ける。
【0032】
したがって、第1の弁マニホールド16が第2の状態になると、第1の制御レグ10からデバイス6にかかる液圧が低下または消失するため、矢印284で示すように作動液がデバイス6から離脱する方向に流れることがわかる。少なくとも当初は、前述のように、逆止弁46が第2の制御レグ12から第1の制御レグ10への作動液の流れを許容する(逆向きの流れは不可)ため、第1の排出管24から作動液が排出される。しかし、図3Aからわかるように、第1の制御レグ10にかかる液圧が所定のしきい値へ低下すると、制御接続部70A、70Bにかかる液圧が下がるため、作動液が制御接続部70A、70Bからそれぞれ矢印390A、390Bで示す方向へ流れ始め、通電による第1の状態の電磁弁54を介して第1の制御レグ10へ流入し、第1の排出管24から流出される。このように、制御接続部70A、70Bの圧力が所定のしきい値へ低下すると、ポペット式ロジック弁58が開状態となり、矢印394A、394Bで示すように第2の制御レグ12から第1の制御レグ10へポペット式ロジック弁58を介して作動液が流れるようになる。この流れ394A、394Bは、矢印286で示す第2の制御レグ12から第1の制御レグ10への逆止弁46を介する流れとは別に発生するものである。したがって、バイパス装置48の構成には、矢印288で示すようにデバイス6から第2の制御レグ12を介して作動液を排出するための、逆止弁46とは別の経路を提供するという利点がある。
【0033】
図4に略示するように、バイパス装置48は、制御システムまたは他の手段によって非通電状態になると、電磁弁54を第2の状態に移行させて第2の弁マニホールド30に二次機能を追加的に実行させることができるという利点がある。この二次機能は、第1の弁マニホールド16にとって図らずも冗長な機能、すなわちデバイス6の停止機能である。電磁弁54が非通電状態となって第1の状態から第2の状態へ移行すると、作動液が矢印490A、490Bで示すように制御接続部70A、70Bからそれぞれ接続部66A、66Bへ流れたあと、矢印496A、496Bで示すようにそれぞれ接続部64A、64Bから排出管へ流れるか、あるいは第1の供給管22および/または第2の供給管36への供給元である他の貯蔵器へ流れる。そのような状況下において、第2の弁マニホールド30が制御システムにより図4に示す第2の状態へ移行するよう指示されると、第2の制御レグ12は第2の排出管40と流体連通関係となり、矢印482で示すように作動液が第2の制御レグ12から第2の弁マニホールド30へ流入したあと、矢印492で示すように第2の弁マニホールド30から第2の排出管40へ排出される。このように第2の制御レグ12から作動液が排出されると、矢印488で示すように作動液がデバイス6から第2の制御レグ12へ流入し、第2の排出管40から排出される。
【0034】
しかし、前述のようにポペット式ロジック弁58は開状態にあるため、作動液は矢印494A、494Bで示すように、ポペット式ロジック弁58を通って第1の制御レグ10から第2の制御レグ12へ流れるようになる。第1の制御レグ10から第2の制御レグ12へ排出される作動液のこのような流れ494A、494Bは、矢印484および矢印478で示すようなデバイス6からの作動液の流れを発生させる。第1の制御レグ10を通り(矢印478で示す)ポペット式ロジック弁58を通過する(矢印494A、494Bで示す)そのような作動液の流れは、第1の制御レグ10から第2の制御レグ12への作動液の流れを阻止する逆止弁46を迂回する迂回流を形成する。
【0035】
図4に示すシナリオでは、第1の制御レグ10および第2の制御レグ12の両方から作動液が排出されるが、これは第2の弁マニホールド30がバイパス装置48と協働して実行するデバイス6の停止シナリオである。このように、バイパス装置48は、第2の弁マニホールド30が二次機能として追加的な停止動作を行うことを可能にする。そのような二次機能は、第1の弁マニホールド16が一次機能として提供する機能、すなわち停止機能を冗長化した機能である。
【0036】
したがって、2つの弁マニホールド16、30および液圧機器52は3つの個別の液圧機能、すなわち、第2の弁マニホールド30により提供される過速度制御機能、第1の弁マニホールド16により提供される停止機能、およびバイパス装置48が動作して第2の弁マニホールド30により提供される冗長な停止機能を果たすことがわかる。かくして、バイパス装置48の導入により、第2の弁マニホールド30に冗長な停止機能を実行させるのが可能になるため、当該機能のための個別の弁マニホールドを設ける必要がなくなる。さらに、バイパス装置48を組み込んだ液圧機器52のコストは、個別の弁マニホールドのおそらく10分の1程度で、格段に低い。
【0037】
したがって、液圧装置4に液圧機器52を組み込むと、第3の弁マニホールドが不要になるため、液圧装置4のコストが減少することがわかる。また、液圧機器52は第1の制御レグ10および第2の制御レグ12とそれぞれ直接接続されるため、液圧装置4の流体接続部の複雑さを減少できる。さらに、液圧機器52は、個別の弁マニホールドおよびその組込みに必要とされる多くの流体接続部と比べて嵩張らないので、液圧装置4の占有空間を、個別の第3の弁マニホールドを使用する場合に必要とされる占有区間よりも小さくすることができる。したがって、上記の事柄はすべて、構成機器のコストと、構成の複雑さおよびサイズの観点から、コスト削減につながる。その他の利点も明白である。
【0038】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明したが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替を想到できるであろう。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の記載の全範囲およびその全ての均等物を含むものである。
図1
図2
図3
図3A
図4