(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリビニルアルコール系樹脂から成る偏光膜と、前記偏光膜の一方の面、又は、一方の面及び他方の面の双方に直接又は他の光学フィルムを介して接合された光学的に透明な偏光膜保護フィルムを備える偏光フィルム積層体と、前記偏光膜の一方の面に接合された偏光膜保護フィルムの一方の面とは反対側の他方の面に粘着剤を介して積層された所定の強度を有する透明光学フィルムとを含む、動力走行車両の車体に取り付けられる光学表示パネルに使用される補強型偏光性光学フィルム積層体であって、
前記偏光フィルム積層体は、
x−軸に前記偏光膜のヨウ素濃度(wt.%)を、y−軸に前記偏光フィルム積層体の水分量(g/m2)をそれぞれとったx−y直交座標系において、
ヨウ素濃度4.0wt.%及び水分量2.3g/m2の第1座標点と、ヨウ素濃度2.2wt.%及び水分量3.2g/m2の第2座標点とを結ぶ第6の線分、
前記第2座標点と、ヨウ素濃度2.2wt.%及び水分量4.0g/m2の第3座標点とを結ぶ第2の線分、
前記第3座標点と、ヨウ素濃度3.0wt.%及び水分量4.0g/m2の第4座標点とを結ぶ第3の線分、
前記第4座標点と、ヨウ素濃度4.0wt.%及び水分量3.5g/m2の第7座標点とを結ぶ第7の線分、及び
前記第1座標点と前記第7座標点とを結ぶ第8の線分
により囲まれる領域内に含まれるヨウ素濃度及び水分量を有し、
前記補強型偏光性光学フィルム積層体のMD方向における破断強度が135N/10mm以上であることを特徴とする補強型偏光性光学フィルム積層体。
前記偏光フィルム積層体が前記偏光膜の一方の面にのみ前記偏光膜保護フィルムを備える場合において、前記透明光学フィルムを設けた側とは反対側の前記偏光膜の他方の面に直接又は他の光学フィルムを介して他の偏光膜保護フィルムが設けられている、請求項6乃至8のいずれかに記載の光学表示パネル。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な一つの実施形態について説明する。説明の便宜のため好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
【0032】
本発明は、光学表示パネル、特に、自動車、電車、飛行機、その他、動力によって走行する動力走行車両の車体に取り付けられる光学表示パネル、及び、該光学的表示パネルに使用される偏光フィルム積層体の強度を高めた補強型偏光性光学フィルム積層体を対象とする。ここで、「車体に取り付けられる」とは、必ずしも、光学表示パネルや補強型偏光性光学フィルム積層体が車体に固定されている場合だけでなく、例えば、スマートフォン等に使用されている光学表示パネルや補強型偏光性光学フィルム積層体のように、それらが動力走行車両に自由に搭載、持ち込み等される場合も含まれる。更に言えば、「車体に取り付けられる」とは、光学表示パネルや補強型偏光性光学フィルム積層体が、動力走行車両とともに使用され、高温ないしは高湿環境下に晒される可能性のある全ての状況を含む。
【0033】
1.光学表示パネル
図1に、光学的表示パネル1の層構成の一例を模式図で示す。光学的表示パネル1は、少なくとも、光学的表示セル10と、光学的表示セル10の一方の面10a側(視認側)に積層された補強型偏光性フィルム積層体12Aと、光学的表示セル10とは反対側、即ち、視認側において補強型偏光性フィルム積層体12Aに沿って配置された光学的に透明なカバー板14を含む。光学的表示セル10と、補強型偏光性フィルム積層体12Aと、カバー板14は、それらの間を空隙がない状態に充填する透明接着剤11、13の層により接着されている。なお、本明細書において、特に断りがない場合、「接着」の語は、粘着(感圧接着)を含む。光学的表示セル10と偏光フィルム積層体12は、透明接着剤11によって直接接着されてもよいが、必要に応じて、位相差フィルム、視野角補償フィルム等の他の光学フィルム19を介して接着されてもよい。光学的表示セル10の他方の面10b側には、透明接着剤16を介して他の偏光フィルム積層体17が配置される。
【0034】
1−1.光学的表示セル
光学的表示セル10の例として、液晶セルや有機ELセルを挙げることができる。
有機ELセルとしては、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成したもの等が好適に用いられる。有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、これらの発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、あるいは正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々層構成が採用され得る。
【0035】
液晶セルとしては、外光を利用する反射型液晶セル、バックライト18等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。液晶セルが光源からの光を利用するものである場合、
図1に示すように、光学的表示セル(液晶セル)10の視認側と反対側にも偏光フィルム積層体17が配置され、更に、例えば、バックライトのような光源18が配置される。光源側の偏光フィルム積層体17と液晶セル10とは、適宜の透明接着剤17の層により接着されている。液晶セルの駆動方式としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用いうる。
【0036】
1−2.カバー板
カバー板14の例として、透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等を挙げることができる。透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。カバー板14の表面には、例えば、低反射フィルム(図示されていない)によって低反射処理が施されていてもよい。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等の各種タッチパネルや、タッチセンサー機能を備えるガラス板や透明樹脂板等が用いられる。
【0037】
カバー板14として静電容量方式のタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルよりもさらに視認側に、ガラスや透明樹脂板からなる前面透明板が設けられることが好ましい。また、この場合には、カバー板14と偏光フィルム積層体12との間を接合する透明接着剤13に、容量型タッチセンサーの構成要素となるITO層(図示されていない)を設ける。
【0038】
1−3.透明接着剤
透明接着剤11、13、16としては、例えば、特許6071459号に開示されているような、様々な接着剤を適宜用いることができる。例えば、(メタ)アクリル系の粘着剤を用いることもできるし、(メタ)アクリル酸を含有しない硬化型接着剤を用いることもできる。後者の例としては、例えばイソプレン系のUV硬化性接着剤が好適に用いられる。イソプレン系のUV硬化性接着剤は、モノマー成分としてイソプレンの他、イソプレン誘導体を含有してもよい。接着剤中には、イソプレン系モノマー以外のモノマー成分が含まれていてもよい。モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体が含まれていてもよい。尚、ポリビニルアルコールのポリエン化による透過率の低下を抑制するためには、透明接着剤11、13、16中の酸成分の含有量を小さくすることが有効である。
【0039】
2.補強型偏光性フィルム積層体
補強型偏光性フィルム積層体12Aは、少なくとも、偏光フィルム積層体12と、偏光フィルム積層体12の強度を高めることを目的とした透明光学フィルム240、及び、これらを貼り合わせる粘着剤230を含む。透明光学フィルム240は、例えば、光学的表示セル10の一方の面10aに積層された偏光フィルム積層体12の一方の面12aとは反対側の他方の面12bに、粘着剤230を介して積層される。必要に応じて、偏光フィルム積層体の一方の面12bに他の透明光学フィルムを積層してもよい。
【0040】
2−1.偏光フィルム積層体
偏光フィルム積層体12は、少なくとも、偏光膜200と、偏光膜200の少なくとも一方の面、例えば、視認側の面200aに接合された、偏光膜保護フィルム210を含む。本実施形態のように、偏光膜200の両面、即ち、偏光膜200の視認側と、視認側とは反対側の双方に、偏光膜保護フィルム210、220がそれぞれ接合されてもよい。また、特に図示していないが、偏光膜200と光膜保護フィルム210、220との間に他の光学フィルムを設けてもよい。偏光膜保護フィルム210の一方の面210aは、適切な接着剤(図示されていない)を介して偏光膜200の一方の面200aに接合され、同様に、偏光膜保護フィルム220も、適切な接着剤(図示されていない)を介して偏光膜200に接合されている。透明光学フィルム240は、偏光膜保護フィルム210の一方の面210aとは反対側の他方の面210b(12b)に、粘着剤230を介して積層される。
【0041】
本発明は、高温ないし高湿環境下で生じる問題、特に、「ポリエン化」、「色抜け」、及び「加熱赤変」の問題を包括的に解決するため、特に、偏光膜200のヨウ素濃度(wt.%)と、偏光フィルム積層体210、220の水分量(g/m
2)に着目している。これらの値は、例えば、偏光膜の製造時や偏光フィルム積層体の製造時に調整することができる。
【0042】
2−1−1.偏光膜
偏光膜200は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール(PVA)系の樹脂フィルムから成る。偏光膜に適用されるPVA系フィルムの材料としては、PVAまたはその誘導体が用いられる。PVAの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる。PVAは、重合度が1000〜10000程度、ケン化度が80〜100モル%程度のものが一般に用いられる。これらの材料でできたPVA系フィルムは、水分を含有し易い傾向を有する。
【0043】
PVA系フィルムは、可塑剤等の添加剤を含有してもよい。可塑剤としては、ポリオールおよびその縮合物等が挙げられ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。可塑剤の使用量は、特に制限されないがPVA系フィルム中20重量%以下が好適である。
【0044】
(1)偏光膜の製造
膜厚6μm以上の偏光膜の製造にあたっては、例えば、上記PVA系フィルムがヨウ素により染色される染色処理、およびPVA系フィルムが少なくとも一方向に延伸される延伸処理が施される。一般には、上記PVA系フィルムを、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥処理を含む一連の処理に供する方式が採用される。
【0045】
膨潤処理は、例えば、PVA系フィルムを、膨潤浴(水浴)中に浸漬することより行われる。この処理により、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄すると共に、PVA系フィルムを膨潤させることで、染色ムラ等の不均一性を防止できる。膨潤浴には、グリセリンやヨウ化カリウム等が適宜に添加されていてもよい。膨潤浴の温度は、例えば20〜60℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、例えば0.1〜10分間程度である。
【0046】
染色処理は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素溶液に浸漬することにより行われる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であり、ヨウ素および溶解助剤としてヨウ化カリウムを含有する。ヨウ素濃度は例えば0.01〜1重量%程度であり、0.02〜0.5重量%であることが好ましい。ヨウ化カリウム濃度は例えば0.01〜10重量%程度であり、0.02〜8重量%であることが好ましい。
【0047】
染色処理において、ヨウ素溶液の温度は、例えば20〜50℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は例えば10〜300秒間程度、好ましくは20〜240秒間の範囲である。ヨウ素染色処理にあたっては、PVA系フィルム中のヨウ素含有量およびカリウム含有量が前記範囲になるように、ヨウ素溶液の濃度、PVA系フィルムのヨウ素溶液への浸漬温度、および浸漬時間等の条件が調整される。
【0048】
架橋処理は、例えば、ヨウ素染色されたPVA系フィルムを、架橋剤を含む処理浴中に浸漬することによって行われる。架橋剤としては任意の適切な架橋剤が採用される。架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で、または組み合わせて使用される。架橋浴の溶液に用いられる溶媒としては、水が一般的であるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。架橋剤は、溶媒100重量部に対して、例えば、1〜10重量部の割合で用いられる。架橋浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが望ましい。助剤の濃度は好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。架橋浴の温度は、例えば、20〜70℃程度、好ましく40〜60℃である。架橋浴への浸漬時間は、例えば、1秒間〜15分間程度、好ましくは5秒間〜10分間である。
【0049】
延伸処理は、PVA系フィルムが、少なくとも一方向に延伸される処理である。一般には、PVA系フィルムが、搬送方向(長手方向)に1軸延伸される。延伸方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。湿式延伸法が採用される場合、PVA系フィルムは、処理浴中で所定の倍率に延伸される。延伸浴の溶液としては、水または有機溶媒(例えばエタノール)などの溶媒中に、各種の処理に必要な化合物等が添加された溶液が好適に用いられる。乾式延伸法としては、たとえば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等が挙げられる。偏光膜の製造において、延伸処理はいずれの段階で行われてもよい。具体的には、膨潤、染色、架橋と同時に行われてもよく、これら各処理の前後いずれに行われてもよい。また、延伸は、多段で行われてもよい。PVA系フィルムの累積延伸倍率は、例えば、5倍以上であり、好ましくは5〜7倍程度である。
【0050】
上記の各処理が施されたPVA系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って、水洗浄処理、乾燥処理に供される。
【0051】
水洗処理は、例えば、PVA系フィルムを水洗浴中に浸漬することにより行われる。水洗浴は、純水であってもよく、ヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等)の水溶液であってもよい。ヨウ化物水溶液の濃度は、好ましくは0.1〜10重量%である。ヨウ化物水溶液には硫酸亜鉛、塩化亜鉛などの助剤が添加されていてもよい。
【0052】
水洗温度は、例えば、5〜50℃、好ましくは10〜45℃、さらに好ましくは15〜40℃の範囲である。浸漬時間は、例えば10〜300秒程度、好ましくは20〜240秒である。水洗処理は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。水洗処理が複数回実施される場合、各処理に用いられる水洗浴に含まれる添加剤の種類や濃度は適宜に調整される。
【0053】
PVA系フィルムの乾燥処理は、任意の適切な方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)より行われる。
【0054】
(2)偏光膜の製造
膜厚6μm未満の偏光膜は、 例えば、特許第4751481号公報に開示された製造方法によって製造することができる。この製造方法は、熱可塑性基材上へPVA系樹脂層を形成する積層体作製処理、PVA系樹脂層を熱可塑性樹脂基材と一体に延伸する延伸処理、PVA樹脂層に二色性物質を吸着させる染色処理等を含む。必要に応じてPVA系樹脂層の不溶化処理および架橋処理、乾燥処理、洗浄処理などを適用することもできる。延伸処理は、染色処理の先に実施することもできるし、後に実施することもでき、また空中延伸およびホウ酸水溶液などの水中での延伸のいずれの延伸方式をも採用することができる。さらに延伸は、一段階の延伸であっても、2段階以上の多段階の延伸であってもよい。
【0055】
図2を参照して、偏光膜の製造方法の一例を説明する。ここでは、樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層を前記樹脂基材と一体に延伸することによって偏光膜が作製されている。
【0056】
[積層体作製処理(A)]
まず、ガラス転移温度が75℃の200μm厚を有する非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材、例えば、イソフタル酸を6mol%共重合させたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、「非晶性PET」という)6と、重合度1000以上、ケン化度99%以上のPVA粉末を水に溶解した4〜5重量%濃度のPVA水溶液とを準備する。次に、塗工手段21と乾燥手段22および表面改質処理装置23を備えた積層体作製装置20において、この非晶性PET基材6にPVA水溶液を塗布し、50〜60℃の温度で乾燥させ、PET基材6にガラス転移温度が80℃の7μm厚を有するPVA層2を製膜する。これにより、7μm厚のPVA層を含む積層体7が作製される。この際、表面改質処理装置23で非晶性PET基材6の表面をコロナ処理することにより、非晶性PET基材6とこれに製膜されるPVA層2の密着性を向上させることができる。
【0057】
次いで、PVA層を含む積層体7を、空中補助延伸およびホウ酸水中延伸の2段延伸処理を含む以下の処理を経て、最終的に3μm厚の偏光膜として作製する。
【0058】
[空中補助延伸処理(B)]
第1段の空中補助延伸処理(B)では、7μm厚のPVA層2を含む積層体7をPET基材6と一体に延伸し、5μm厚のPVA層2を含む「延伸積層体8」を生成する。具体的には、オーブン33内に延伸手段31が配備された空中補助延伸処理装置30において、7μm厚のPVA層2を含む積層体7を130℃の延伸温度環境に設定されたオーブン33の延伸手段31にかけ、延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸し、延伸積層体8を生成する。この段階でオーブン30に併設させた巻取装置32によって延伸積層体8のロール8’を製造することができる。
【0059】
[染色処理(C)]
次に、染色処理(C)によって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層2に二色性物質のヨウ素を吸着させた着色積層体9を生成する。具体的には、染色液41の染色浴42を備えた染色装置40において、染色装置40に併設されたロール8’を装着した繰出装置43から繰り出される延伸積層体8を液温30℃のヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色液41に、最終的に生成される偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体8の配向されたPVA層2にヨウ素を吸着させた着色積層体9を生成する。
【0060】
本処理において、染色液41は、延伸積層体8に含まれるPVA層2を溶解させないようにするため、水を溶媒として、ヨウ素濃度を0.30重量%とする。また、染色液41は、ヨウ素を水に溶解させるためのヨウ化カリウム濃度を2.1重量%とする。ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1対7である。より詳細には、ヨウ素濃度0.30重量%、ヨウ化カリウム濃度2.1重量%の染色液41に延伸積層体8を60秒間浸漬することによって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層2にヨウ素を吸着させた着色積層体9を生成する。
【0061】
[ホウ酸水中延伸処理(D)]
第2段のホウ酸水中延伸処理によって、ヨウ素を配向させたPVA層2を含む着色積層体9をさらに延伸し、3μm厚の偏光膜を構成するヨウ素を配向させたPVA層を含む光学フィルム積層体60を生成する。具体的には、ホウ酸水溶液51のホウ酸浴52と延伸手段53を備えたホウ酸水中延伸処理装置50において、染色装置40から連続的に繰り出された着色積層体9をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温65℃の延伸温度環境に設定されたホウ酸水溶液51に浸漬し、次にホウ酸水中処理装置50に配備された延伸手段53にかけ、延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸することによって、3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体60を生成する。
【0062】
[洗浄処理(G)]
次いで、偏光膜を含む光学フィルム積層体60を、好ましくは、そのまま、洗浄処理(G)に送る。洗浄処理(G)は、洗浄装置80の洗浄液81によって偏光膜の表面に付着した不要残存物を洗い流すことを目的とする。但し、洗浄処理(G)を省き、取り出された偏光膜を含む光学フィルム積層体60を直接乾燥処理(H)に送り込むこともできる。
【0063】
[乾燥処理(H)]
洗浄された光学フィルム積層体60は、乾燥処理(H)に送られ、ここで乾燥される。次いで、乾燥された光学フィルム積層体60は、乾燥装置90に併設された巻取装置91によって、連続ウェブの光学フィルム積層体60として巻き取られ、偏光膜を含む光学フィルム積層体60のロールが生成される。乾燥処理(H)として、任意の適切な方法、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥を採用することができる。例えば、オーブンの乾燥装置90において、60℃の温風で、240秒間、乾燥を行うことができる。
【0064】
(3)その他
偏光膜は、亜鉛を含有することが好ましい。偏光膜が亜鉛を含有することで、加熱試験後の偏光フィルム積層体の透過率の低下および色相劣化が抑制される傾向がある。偏光膜が亜鉛を含有する場合、偏光膜中の亜鉛の含有量は、0.002〜2重量%が好ましく、0.01〜1重量%がより好ましい。
【0065】
偏光膜は、また、硫酸イオンを含有することが好ましい。偏光膜が硫酸イオンを含有することで、加熱試験後の偏光フィルム積層体の透過率の低下が抑制される傾向がある。偏光膜が硫酸イオンを含有する場合、偏光膜中の硫酸イオンの含有量は、0.02〜0.45重量%が好ましく、0.05〜0.35重量%がより好ましく、0.1〜0.25重量%がさらに好ましい。なお、偏光膜中の硫酸イオンの含有量は、硫黄原子含有量から算出される。
【0066】
偏光膜中に亜鉛を含有させるためには、偏光膜の製造工程において、亜鉛含浸処理が行われることが好ましい。また、偏光膜中に硫酸イオンを含有させるためには、偏光膜の製造工程において、硫酸イオン処理が行われることが好ましい。
【0067】
亜鉛含浸処理は、例えば、PVA系フィルムを、亜鉛塩溶液に浸漬することより行われる。亜鉛塩としては、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等の水溶液の無機塩化合物が好適である。また、亜鉛含浸処理には、各種亜鉛錯体化合物が用いられてもよい。また、亜鉛塩溶液は、ヨウ化カリウム等によりカリウムイオンおよびヨウ素イオンを含有させた水溶液を用いるのが亜鉛イオンを含浸させやすく好ましい。亜鉛塩溶液中のヨウ化カリウム濃度は0.5〜10重量%程度、さらには1〜8重量%とするのが好ましい。
【0068】
硫酸イオン処理は、例えば、硫酸金属塩を含む水溶液に、PVA系フィルムを浸漬することにより行われる。硫酸金属塩としては、処理液中で、硫酸イオンと金属イオンとに分離し易く、PVA系フィルム中に、当該硫酸金属塩がイオンの状態で導入されやすいものが好ましい。例えば、硫酸金属塩を形成する金属の種類としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;コバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガン、鉄等の遷移金属が挙げられる。
【0069】
偏光膜の製造において、上記の亜鉛含浸処理および硫酸イオン処理はいずれの段階で行われてもよい。すなわち、亜鉛含浸処理および硫酸イオン処理は、染色処理の前に行われてもよく、染色処理の後に行われてもよい。亜鉛含浸処理と硫酸イオン処理とが同時に行われてもよい。前記亜鉛塩および前記硫酸金属塩として硫酸亜鉛を用い、硫酸亜鉛を含有する処理浴に、PVA系フィルムを浸漬することにより、亜鉛含浸処理と硫酸イオン処理とが同時に行われることが好ましい。また、染色溶液中に前記亜鉛塩や前記硫酸金属塩を共存させておいて、亜鉛含浸処理および/または硫酸イオン処理を、染色処理と同時に行うこともできる。亜鉛含浸処理および硫酸イオン処理は、延伸と同時に行われてもよい。
【0070】
2−1−2.偏光膜保護フィルム
偏光膜保護フィルム210、220を構成する材料としては、例えば、透明性、機械強度、および熱安定性に優れる熱可塑性樹脂が挙げられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、PVA系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
偏光膜保護フィルムは、位相差フィルムの機能を兼ね備えるものであってもよい。
【0071】
偏光膜保護フィルムの厚みは、偏光フィルム積層体の水分量を調整するために適宜に調整される。強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点からは1〜500μm程度が好ましく、2〜300μmがより好ましく、5〜200μmがさらに好ましい。
偏光膜保護フィルム中には任意の添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。
【0072】
2−1−3.他の光学フィルム
偏光膜200と偏光膜保護フィルム210、220との間に設ける他の光学フィルムについて特に限定はされないが、例えば、位相差フィルム、視野角補償フィルム等を用いることができる。他の光学フィルムとしての位相差フィルムは、保護フィルムとしての機能を有するものであってもよい。
【0073】
上に説明したように、偏光膜保護フィルムは、位相差フィルムの機能を兼ね備えるものであってもよいが、この場合、他の光学フィルムとしての位相差フィルムを省略することもできる。一方、偏光膜保護フィルムが、位相差フィルムの機能を兼ね備える場合であっても、他の光学フィルムとして位相差フィルムを設けることもできる。この場合、実質的に2つ又は3つ以上の位相差フィルムが含まれることになる。
【0074】
2−1−4.接着剤
偏光膜200と偏光膜保護フィルム210、220との接合、或いは、位相差フィルム等の他の光学フィルムとそれらとの接合には、例えば、ラジカル重合硬化型接着剤やカチオン重合硬化型接着剤、水性接着剤を使用することができる。
【0075】
(ラジカル重合硬化型接着剤)
前記ラジカル重合硬化型接着剤は、硬化性化合物としてのラジカル重合性化合物を含む。ラジカル重合性化合物は、活性エネルギー線により硬化する化合物であってもよく、熱により硬化する化合物であってもよい。活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。
【0076】
前記ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の炭素−炭素2重結合を有するラジカル重合性官能基を有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、多官能ラジカル重合性化合物が好ましく用いられる。ラジカル重合性化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、多官能ラジカル重合性化合物と単官能ラジカル重合性化合物を併用してもよい。
【0077】
前記重合性化合物として、logP値(オクタノール/水分配係数)が高い化合物を用いることが好ましく、ラジカル重合性化合物としても、logP値が高い化合物を選択することが好ましい。ここで、logP値とは、物質の親油性を表す指標であり、オクタノール/水の分配係数の対数値を意味する。logP値が高いということは、親油性であることを意味し、すなわち、吸水率が低いことを意味する。logP値は測定することも可能(JIS−Z−7260記載のフラスコ浸とう法)であるし、硬化型接着剤の構成成分(硬化性成分等)である各化合物の構造をもとに計算によって算出(ケンブリッジソフト社製のChemDraw Ultra)することもできる。
【0078】
ラジカル重合性化合物のlogP値は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が特に好ましい。このような範囲であれば、偏光子の水分による劣化を防止することができ、高温高湿下での耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。
【0079】
前記多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートと多価アルコールとのエステル化物;9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン;エポキシ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
前記多官能ラジカル重合性化合物の中でも、logP値の高い多官能ラジカル重合性化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート(logP=3.05)、イソボルニル(メタ)アクリレート(logP=3.27)等の脂環(メタ)アクリレート;1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート(logP=3.68)、1,10−デカンジオールジアクリレート(logP=4.10)等の長鎖脂肪族(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物(logP=3.35)、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート(logP=3.92)等の多分岐(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(logP=5.46)、ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物ジ(メタ)アクリレート(logP=5.15)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物ジ(メタ)アクリレート(logP=6.10)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド4モル付加物ジ(メタ)アクリレート(logP=6.43)、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(logP=7.48)、p−フェニルフェノール(メタ)アクリレート(logP=3.98)等の芳香環を含有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0081】
多官能ラジカル重合性化合物と単官能ラジカル重合性化合物とを併用する場合、多官能ラジカル重合性の含有割合は、ラジカル重合性化合物の全量に対して、20〜97重量%が好ましく、50〜95重量%がより好ましく、75〜92重量%がさらに好ましく、80〜92重量%が特に好ましい。このような範囲であれば、高温高湿下での耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。
【0082】
前記単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体を用いれば、接着性に優れる粘着剤層を高い生産性で形成することができる。(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−プロパン(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド等のN−アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のN−メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。また、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体として、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等を用いてもよい。これらの中でも、N−ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0083】
また、前記単官能ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するビニル系モノマー等を用いてもよい。
【0084】
多官能ラジカル重合性化合物と単官能ラジカル重合性化合物とを併用する場合、単官能ラジカル重合性の含有割合は、ラジカル重合性化合物の全量に対して、3〜80重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましく、8〜25重量%がさらに好ましく、8〜20重量%が特に好ましい。このような範囲であれば、高温高湿下での耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。
【0085】
前記ラジカル重合硬化型接着剤は、その他の添加剤をさらに含み得る。ラジカル重合硬化型接着剤が活性エネルギー線により硬化する硬化性化合物を含む場合、該接着剤は、例えば、光重合開始剤、光酸発生剤、シランカップリング剤等をさらに含み得る。また、ラジカル重合硬化型接着剤が熱により硬化する硬化性化合物を含む場合、該接着剤は、熱重合開始剤、シランカップリング剤等をさらに含み得る。また、その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0086】
(カチオン重合硬化型接着剤)
前記カチオン重合硬化型接着剤は、硬化性化合物としてのカチオン重合性化合物を含む。カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が好ましく用いられる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)等が挙げられる。
【0087】
前記カチオン重合硬化型接着剤は、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。また、カチオン重合硬化型接着剤は、前記添加剤をさらに含み得る。
【0088】
(水性接着剤)
前記水性接着剤としては、例えば、イソシアネート系接着剤、PVA系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等の水性接着剤の水溶液(例えば固形分濃度0.5〜60重量%)が好適に用いられる。
【0089】
接着剤の塗布は、偏光膜200、偏光膜保護フィルム210、220、他の光学フィルムのいずれに行ってもよく、それらのいずれかの両者に行ってもよい。一般には、偏光膜を接着剤水溶液中に浸漬した後、ロールラミネーター等により偏光膜保護フィルム210、220と積層する方法が好適である。接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、乾燥後の厚みで30nm〜1000nm程度である。
【0090】
偏光膜と偏光膜保護フィルム、及びその他の光学フィルムとが接着剤を介して積層された後、この積層体は、乾燥処理に供される。この積層体の乾燥工程では、接着剤を乾燥固化させるとの目的に加えて、偏光フィルム積層体の初期光学特性を向上させる水分量を低下させる目的で行われる。乾燥方法としては、加熱乾燥が一般的である。乾燥条件として好ましくは50〜95℃の範囲、60〜85℃の範囲がより好ましい。
【0091】
上記積層体の乾燥条件は、特に限定されないが、処理の効率や実用性を考慮すると、乾燥温度は50℃以上であることが好ましく、偏光フィルム積層体の光学特性を均一とする観点からは95℃以下が好ましい。乾燥温度は上記温度範囲内で段階的に昇温して実施することもできる。
【0092】
積層体の乾燥は、偏光膜と偏光膜保護フィルム、及びその他の光学フィルムとの接合処理と連続して行うことができる。また、偏光膜と偏光膜保護フィルム、及びその他の光学フィルムとの積層体を一旦ロール状態に巻回した後、別の処理として、乾燥が行われてもよい。
【0093】
一般に、偏光フィルム積層体の水分量を小さくするためには、高温・長時間の乾燥条件が必要となる。高温・長時間の乾燥は、偏光フィルム積層体の水分量低下の観点からは好ましいが、その反面、偏光フィルム積層体の光学特性等の低下につながる場合がある。飽和吸水量が小さい偏光膜保護フィルムや、透湿度の高い偏光膜保護フィルムが用いられることにより、過酷な乾燥条件を採用せずとも偏光フィルム積層体の水分量を前記所望の範囲に調整することができる。
【0094】
2−2.透明光学フィルム
透明光学フィルム240は、偏光フィルム積層体12の強度を高めることを目的としたものであるから、所定の強度を有するものであれば足りる。例えば、偏光フィルム積層体12を構成する偏光膜保護フィルム210、220と同じ材質のものを用いることができる。透明光学フィルム240の厚みは、偏光膜保護フィルム210、220と同じ材質の保護フィルムを用いた場合、偏光膜保護フィルム210、220の厚みとの関係にもよるが、一般には、10μm以上200μm以下、好ましくは、20μm以上100μm以下である。
【0095】
2−3.粘着剤
上述した「1−3.透明接着剤」に記載した粘着剤を同様に用いることができる。
【0096】
3.信頼性評価項目
3−1.偏光フィルム積層体について
偏光フィルム積層体に生じ得る複数の現象、即ち、ポリエン化、色抜け、及び加熱赤変を評価する。各現象が生ずるメカニズムは必ずしも明らかではないが、おおよそ、以下のようなものであると推測される。
【0097】
<ポリエン化>
高温高湿環境下では偏光フィルム積層体の単体透過率が低下する。この低下はPVAのポリエン化が原因と推測される。ポリエンとは、−(CH=CH)
n−を指し、加熱により偏光膜中に形成されうる。ポリエンは偏光膜の透過率を著しく低下させる。また、高温高湿環境下ではPVA−ポリヨウ素錯体が破壊されてI
-及びI
2が生成されやすい。
PVAのポリエン化は、以下の化学式1に示すように、高温高湿環境下において生成されたヨウ素(I
2)と加熱により、脱水反応が促進されることで起こると考えられている。
(化学式1)
偏光膜中に存在するPVA−ポリヨウ素錯体が加熱により壊れることにより発生するI
2とPVA中のOH基が電荷移動錯体(HO・・・I
2)を形成し、その後OI基を経由しポリエン化すると考えられる。
【0098】
<色抜け>
ヨウ素染色され、かつ、延伸されたPVA系フィルム(偏光膜)において、ヨウ素はI
3-とI
5-のポリヨウ素イオンの形態で、配向したPVAと錯体を形成している(PVAポリヨウ素錯体)。このとき、PVAはホウ酸等の架橋剤により架橋点が形成され、これにより配向性を維持している。
しかしながら、偏光膜が高温高湿下におかれると、ホウ酸架橋の加水分解が起こり、PVAの配向性が低下し、PVAポリヨウ素錯体の崩壊が生じる。これにより、PVAポリヨウ素錯体にもとづく可視光吸収が低下し、約700nmの長波長側及び約410nmの短波長側の透過率が上昇する。こうして、高温高湿下におかれた偏光膜では、黒色表示での色抜けが起きる。
【0099】
<加熱赤変>
ヨウ素染色され、かつ、延伸されたPVA系フィルム(偏光膜)において、ヨウ素はI
3-とI
5-のポリヨウ素イオンの形態でPVAと錯体を形成している(PVAポリヨウ素錯体)。I
3-は、470nm付近にブロードな吸収ピークをもち、I
5-は、600nm付近にブロードな吸収ピークをもつ。つまり、PVA−I
3-錯体は、短波長側(青色側)の吸収を担い、PVA―I
5-錯体は、長波長側(赤色側)の吸収を担っている。
しかしながら、このPVA―I
5-錯体は加熱に弱く、偏光膜が高温下におかれるとPVAとI
5-との錯体形成が崩れ、I
5-は分解してしまう。
したがって、高温下におかれた偏光膜において、長波長側の吸収を担うPVA―I
5-錯体が減少するため、すなわち、約700nmの長波長側の透過率が上昇し、偏光膜が赤く変色してしまう。
【0100】
3−2.補強型偏光性光学フィルム積層体について
偏光フィルム積層体における「クラック」を評価する。この現象は、例えば、高温ないし高湿といった使用環境に起因して、偏光フィルム積層体、及び/又は、偏光フィルム積層体の一方の面及び他方の面の双方に貼り合わされた光学フィルム等の他の部材が、収縮及び/又は膨張し、それらの収縮及び/又は膨張の大きさの相違に起因して、偏光フィルム積層体に不所望の収縮力又は膨張力が加わることによって生じ得る。同様の原因によって、偏光フィルム積層体の「剥がれ」も生ずることから、この点についても評価する。
【0101】
4.実施例等
以下に、実施例を参考例や比較例とともに説明するが、勿論、本発明はこれらの実施例に記載されたものに限定されるものではない。
4−1.偏光フィルム積層体について
「偏光膜の膜厚(μm)」、及び/又は、「偏光膜のヨウ素濃度(wt.%)」、及び/又は、「偏光フィルム積層体の水分量(g/m
2)」が異なる、種々の偏光フィルム積層体のサンプルを準備した。
【0102】
<偏光膜の膜厚>
偏光膜の膜厚(μm)は、分光膜厚計MCPD−1000(大塚電子(株)製)を用いて測定する。偏光膜保護フィルムの厚みも、これを用いて測定する。サンプルに含まれる偏光膜は、サンプルを溶剤に浸漬し、偏光膜保護フィルムを溶解させることによって取り出すことができる。溶剤には、例えば、偏光膜保護フィルムがトリアセチルセルロース樹脂の場合は、ジクロロメタンを、偏光膜保護フィルムがシクロオレフィン樹脂の場合は、シクロヘキサンを、偏光膜保護フィルムがアクリル樹脂の場合は、メチルエチルケトンを、それぞれ使用することができる。尚、偏光膜の一方の面に設けられている偏光膜保護フィルムの樹脂と、他方の面に設けられている偏光膜保護フィルムの樹脂が、相違する場合には、それぞれの樹脂を上述した溶剤を用いて順次に溶解させる。
【0103】
<偏光膜のヨウ素濃度>
偏光膜のヨウ素濃度(wt.%)は、偏光膜の製造時に、例えば、PVA系フィルムやPVA層を浸漬するヨウ素水溶液の濃度や浸漬時間を調整することによって変更することができる。
偏光膜のヨウ素濃度は以下の方法で測定する。尚、サンプルに含まれる偏光膜は、偏光膜の膜厚を測定するときと同様に、サンプルを溶剤に浸漬し、偏光膜保護フィルムを溶解させることによって取り出すことができる。
(蛍光X線測定)
偏光膜のヨウ素濃度を測定するに際し、先ず、蛍光X線分析の検量線法を用いてヨウ素濃度を定量する。装置は蛍光X線分析装置ZSX−PRIMUS IV((株)リガク製)を用いる。
蛍光X線分析装置によって直接得られる値は、各元素の濃度ではなく、各元素に固有の波長の蛍光X線強度(kcps)である。したがって、偏光膜に含まれるヨウ素濃度を求めるには、検量線を用いて蛍光X線強度を濃度に変換する必要がある。本明細書等における偏光膜のヨウ素濃度とは、偏光膜の重量を基準としたヨウ素濃度(wt%)を意味する。
【0104】
(検量線の作成)
検量線は以下の手順で作成する。
1.既知の量のヨウ化カリウムをPVA水溶液に溶解させて、既知の濃度のヨウ素を含むPVA水溶液を7種作製した。このPVA水溶液をポリエチレンテレフタレートに塗布乾燥後剥離し、既知の濃度のヨウ素を含むPVAフィルムの試料1〜7を作製する。
なお、PVAフィルムのヨウ素濃度(wt%)は以下の数式1で算出される。
[数式1] ヨウ素濃度(wt%)={ヨウ化カリウム量(g)/(ヨウ化カリウム量(g)+PVA量(g))}×(127/166)
(ヨウ素の分子量:127 カリウムの分子量:39)
【0105】
2.作製したPVAフィルムに対して、蛍光X線分析装置ZSX−PRIMUS IV((株)リガク製)を用いて、ヨウ素に対応する蛍光X線強度(kcps)を測定する。なお、蛍光X線強度(kcps)は蛍光X線スペクトルのピーク値とする。また、作製したPVAフィルムの膜厚を分光膜厚計MCPD−1000(大塚電子(株)製)を用いて測定する。
【0106】
3.蛍光X線強度をPVAフィルムの厚み(μm)で除し、フィルムの単位厚み当たりの蛍光X線強度(kcps/μm)とする。各試料のヨウ素濃度と単位厚み当たりの蛍光X線強度を表1に示す。
【0108】
4.表1に示された結果を元に、PVAフィルムの単位厚み当たりの蛍光X線強度(kcps/μm)を横軸に、PVAフィルムに含まれるヨウ素濃度(wt%)を縦軸にして、検量線を作成する。作成した検量線を
図3に示す。検量線からPVAフィルムの単位厚み当たりの蛍光X線強度からヨウ素濃度を求める数式を数式2のとおり定める。なお、
図3におけるR2は相関係数である。
[数式2] (ヨウ素濃度)(wt%)=14.474×(PVAフィルムの単位厚み当たりの蛍光X線強度)(kcps/μm)
【0109】
(ヨウ素濃度の算出)
サンプル測定で得られた蛍光X線強度を厚みで除して、単位厚み当たりの蛍光X線強度(kcps/μm)を求める。各サンプルの単位厚み当たりの蛍光X線強度を数式2に代入してヨウ素濃度を求める。
【0110】
<偏光フィルム積層体の水分量>
偏光フィルム積層体の水分量(g/m
2)は、主に、偏光膜の膜厚や、偏光膜に接合させる偏光膜保護フィルムの材質、厚み等を調整することにより決定され得る。また、偏光膜の製造時における架橋処理(ホウ酸含有量等)等によっても調整することができる。
偏光フィルム積層体の水分量は以下の方法で測定する。
先ず、実施例等で得られた偏光フィルム積層体を、0.1m×0.1mの正方形にカットする。
カットしたサンプルを恒温恒湿器内に投入し、温度23℃、相対湿度55%の環境下で48時間放置する。その後、恒温恒湿器内と同じ環境、即ち、温度23℃、相対湿度55%に設定したクリーンルームにてサンプルを取り出し、取り出し後5分以内に重量を測定する。このときのサンプル重量を初期重量W1(g)とする。尚、取り出し後、おおよそ15分以内であれば、たとえクリーンルーム内の温度が、2℃〜3℃程度変動しても、また、クリーンルーム内の相対湿度が±10%程度変動しても、初期重量に実質的な影響を与えることはない。
次に、取り出したサンプルを乾燥器内に投入し、120℃で2時間乾燥させる。その後、上述した温度23℃、相対湿度約55%に設定したクリーンルームにて乾燥させたサンプルを取り出し、取り出し後10分以内に重量を測定する。このときのサンプル重量を乾燥後重量W2(g)とする。上と異なり、5分以内ではなく10分以内としたのは、冷却時間を考慮したものである。尚、上と同様に、取り出し後、おおよそ15分以内であれば、乾燥後重量に実質的な影響を与えることはない。
こうして得られたサンプルの初期重量W1と乾燥後重量W2より、偏光フィルム積層体の平衡水分量M(g/m
2)を下式より算出する。
(式) M=(W1―W2)/(0.1×0.1)
本発明でいうところの「偏光フィルム積層体の水分量」は、上記の方法で算出された平衡水分量を意味する。
【0111】
[参考例1]
(偏光膜の作成)
樹脂基材として、長尺状の非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(イソフタル酸基変性度 5mol%、厚み:100μm)を用いた。(変性度= エチレンイソフタレートユニット/(エチレンテレフタレートユニット+エチレンイソフタレートユニット))樹脂基材の一方の面に、コロナ処理(処理条件:55W・min/m2)を施し、このコロナ処理面に、PVA(重合度4200、ケン化度99.2モル%)90重量部およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)10重量部で配合したPVAと、PVAに対して13重量部となるようにヨウ化カリウムを配合した水溶液を常温にて塗布した。その後、60℃で乾燥して、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、指定の透過率となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度3.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥(乾燥処理)しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の金属ロールに2秒以上接触させた(熱ロール乾燥処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み5.4μmの偏光膜を得た。
【0112】
(偏光フィルム積層体の作成)
得られた偏光膜の樹脂基材とは反対側の面に、偏光膜保護フィルムとして、シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、ZT12、18μm)を紫外線硬化型接着剤を介して接合させた。具体的には、以下に記載した硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して接合させた。その後、UV光線をシクロオレフィン系フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離して、シクロオレフィン系の偏光膜保護フィルムと偏光膜を含む偏光フィルム積層体を得た。
硬化型接着剤の詳細は以下の通りである。N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、接着剤を調製した。硬化後の接着剤層の厚みが1.0μmとなるように偏光膜上に塗布し、活性エネルギー線として、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm
2、積算照射量1000/mJ/cm
2(波長380〜440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola−Checkシステムを使用して測定した。
【0113】
(偏光膜の取り出し)
シクロヘキサンを溶剤として用いることにより、偏光フィルム積層体から偏光膜を取り出して偏光膜のヨウ素濃度を測定した。
【0114】
[参考例2]
参考例1の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例1と同様である。
【0115】
[参考例3]
参考例1の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。また、参考例1の偏光フィルム積層体の作成に際し、偏光膜保護フィルムとして、シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、ZF12、13μm)を接合させた。その他の条件については、参考例1と同様である。
【0116】
[参考例4]
参考例1の偏光フィルム積層体の作成に際し、偏光膜保護フィルムとして、トリアセチルセルロースフィルム系フィルム(富士フィルム社製 TJ40UL 厚み40μm)を接合させた。また、参考例1の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更した。その他の条件については、参考例1と同様である。
【0117】
[参考例5]
参考例1の偏光フィルム積層体の作成に際し、偏光膜保護フィルムとして、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚み40μmの透明保護フィルム(日東電工社製)を接合させた。また、参考例1の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更した。その他の条件については、参考例1と同様である。
【0118】
[比較例1]〜[比較例2]
参考例1の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例1と同様である。
【0119】
[比較例3]
参考例1の偏光フィルム積層体の作成に際し、偏光膜保護フィルムとして、シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、ZD12、27μm)を接合させた。また、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例1と同様である。
【0120】
[比較例4]
参考例1の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度を変更し及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、比較例3と同様である。
【0121】
[比較例5]
参考例1の偏光膜の作成に際し、厚み10μmのPVA系樹脂層を形成した積層体に、空中補助延伸及び水中延伸等を施すことにより、4.0μmの偏光膜を得た。また、参考例1の偏光フィルム積層体の作成に際し、偏光膜保護フィルムとして、シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、ZD12、27μm)を接合させた。更に、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例1と同様である。
【0122】
[参考例6]
(偏光膜の作成)
平均重合度2700、厚み30μmのPVAフィルムを、周速比の異なるロール間で染色しながら延伸搬送した。まず、30℃の水浴中に1分間浸漬させてPVAフィルムを膨潤させつつ、搬送方向に1.2倍に延伸した後、ヨウ化カリウム(0.03重量%)およびヨウ素(0.3重量%)の水溶液(液温30℃)に1分間浸漬することで、染色しながら搬送方向に3倍(未延伸フィルム基準)に延伸した。次に、この延伸フィルムを、ホウ酸(4重量%)、ヨウ化カリウム(5重量%)および硫酸亜鉛(3.5重量%)の水溶液(浴液)中に30秒間浸漬しながら、搬送方向に6倍(未延伸フィルム基準)に延伸した。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、12.0μmの偏光膜を得た。
【0123】
(偏光フィルム積層体の作成)
接着剤として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1200,ケン化度98.5モル%,アセトアセチル化度5モル%)とメチロールメラミンとを重量比3:1で含有する水溶液を用いた。この接着剤を用いて、30℃の温度条件下で、偏光膜の一方の面に、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚み20μmの透明保護フィルム(日東電工社製)を、他方の面に厚み25μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「KC2UA」)に厚み2μmのハードコート層(HC)を形成した厚み27μmの透明保護フィルムをロール貼合機で接合させた後、引き続きオーブン内で70℃で5分間加熱乾燥させて、偏光膜の両面に透明保護フィルムが接合された偏光フィルム積層体を得た。
ハードコート層は、以下の方法で形成した。先ず、ハードコート層形成材料を準備する。これは、ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17−806」。固形分濃度80重量%)に、その溶液中の固形分100重量部当たり、光重合開始剤(BASF(株)製、製品名「IRGACURE906」)を5重量部、レベリング剤(DIC(株)製、製品名「GRANDIC PC4100」)を0.01重量部添加し、上記溶液中の固形分濃度が36重量%となるように、上記配合液にシクロペンタノン(以下、「CPN」と記す)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGM」と記す)を45:55の比率で加えることによって作製される。こうにして作製されたハードコート層形成材料を、硬化後のハードコートの厚みが2μmになるように、透明保護フィルム上に塗工して塗膜を形成した。次いで、90℃で1分間乾燥し、その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm
2の紫外線を照射し、上記塗膜を硬化処理した。
(偏光膜の取り出し)
ジクロロメタン及びメチルエチルケトンを溶剤として用いることにより、偏光フィルム積層体から偏光膜を取り出して偏光膜のヨウ素濃度を測定した。
【0124】
[比較例6]
参考例6の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例6と同様である。
【0125】
[参考例7]
参考例6の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更した。また、参考例6の偏光フィルム積層体の作成に際し、得られた偏光膜の一方の面に、偏光膜保護フィルムとして、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚み30μmの透明保護フィルム(日東電工社製)を、他方の面に、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「KC4UY」)に厚み9μmのHCを形成した厚み49μmの透明保護フィルムを接合させた。その他の条件については、参考例6と同様である。
【0126】
[比較例7]
参考例7の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例7と同様である。
【0127】
[比較例8]〜[比較例11]
参考例6の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例6と同様である。
【0128】
[参考例8]
参考例6の偏光膜の作成に際し、延伸処理において、厚み45μmのPVAフィルムを延伸搬送して、18.0μmの偏光膜を得、また、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更した。また、参考例6の偏光フィルム積層体の作成に際し、得られた偏光膜の一方の面に、偏光膜保護フィルムとして、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚み30μmの透明保護フィルム(日東電工社製)を、他方の面に、トリアセチルセルロースフィルム系フィルム(富士フィルム社製 TJ40UL 厚み40μm)を接合させた。その他の条件については、参考例6と同様である。
【0129】
[参考例9]〜[参考例13]、及び、[実施例1]
参考例8の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例8と同様である。
【0130】
[実施例2]
参考例6の偏光膜の作成に際し、延伸処理において、厚み45μmのPVAフィルムを延伸搬送して、18.0μmの偏光膜を得、また、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更した。また、参考例6の偏光フィルム積層体の作成に際し、得られた偏光膜の一方の面に、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚み30μmの透明保護フィルム(日東電工社製)に代えて、位相差層、更に言えば、厚み18μmの一方の位相差フィルム(ノルボルネン系シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン株式会社製、商品名「ゼオノアフィルム ZT12」)と、厚み5μmの他方の位相差フィルムを、これらの順に接合させた。偏光膜の他方の面には、参考例6と同様に、トリアセチルセルロースフィルム系フィルム(富士フィルム社製 TJ40UL 厚み40μm)を接合させた。その他の条件については、参考例6と同様である。
【0131】
上記他方の位相差フィルムは以下のようにして製造した。
メカニカルスターラーを備えた3つ口の丸底フラスコに、ニトロベンゼン(900g)と1、2−ジクロロエタン(300g)との溶媒混合物を入れ、該混合物中で、ポリスチレン(50.0g)を攪拌し、溶解させた。この攪拌混合物に、硝酸(86.0g)と濃硫酸(100.0g)からなる混合酸(ニトロ/スチレン当量比=2/1)を、30分間、滴下することにより加えた。この混合物を窒素下において全部で22時間、室温で反応させた。水で薄めた水酸化ナトリウム中に生じた黄色の混合物を注いで、有機層を分離させ、その後、メタノール中で沈殿させて、固体の塊を与えた。この固体を、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させ、メタノール中に再沈殿させた。得られた沈殿物を2時間攪拌し、ろ過し、メタノールで繰り返し洗浄し、真空下で乾燥させて、僅かにやや黄色の繊維状粉末(ポリ(ニトロスチレン)系樹脂)を得た。
得られたポリ(ニトロスチレン)系樹脂を、シクロペンタノンに溶解して20%溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持基板に流延し、40℃及び130℃で、各々4分間乾燥した後、真空下で乾燥させてフィルムを得て、このフィルムをロール延伸機を用いて、温度184℃、延伸倍率1.06倍で、搬送方向に自由端一軸延伸した。こうして、厚み5μmの他方の位相差フィルムを得た。なお、他方の位相差フィルムは、搬送方向に進相軸を有する正の二軸プレート(nz>nx>ny)であった。
【0132】
また、偏光フィルム積層体の作製にあたり、偏光膜保護フィルムとしての、トリアセチルセルロースフィルム系フィルム(富士フィルム社製 TJ40UL 厚み40μm)の片面に、アルミナコロイド含有接着剤を塗布し、上記方法で作製した偏光膜を接合した。次に、偏光膜保護フィルムが接合された側とは反対側の偏光膜の面に、厚み18μmの一方の位相差フィルムをアルミナコロイド含有接着剤を介して接合し、偏光膜保護フィルムと偏光膜と一方の位相差フィルムをロール・トゥー・ロールで積層した。この積層体において、更に、一方の位相差フィルムに接着剤を介して他方の位相差フィルムを接合し、これらを上記同様にロール・トゥー・ロールで積層した。こうして、偏光フィルム積層体を得た。
【0133】
偏光フィルム積層体の作製に用いた、これらの位相差フィルムは、位相差フィルムの機能を兼ね備えた偏光膜保護フィルムとして捉えることができる。更に言えば、本発明の偏光フィルム積層体の水分量を評価する上で、これらの位相差フィルムは、偏光膜保護フィルムと実質的に同じものとして捉えることができ、従って、偏光膜保護フィルムに代えて、本実施例のように、位相差フィルムを用いてもよい。
【0134】
[実施例3]
実施例2において、偏光膜の他方の面に、トリアセチルセルロースフィルム系フィルム(富士フィルム社製 TJ40UL 厚み40μm)の代わりに、厚み25μmのフィルム(富士フィルム社製 TJ25UL 厚み25μm)を接合させた。その他の条件については、参考例6と同様である。
【0135】
[比較例12]
参考例8〜13の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例8〜13と同様である。
【0136】
[比較例13]
(偏光膜の作成)
参考例8〜13の偏光膜の作成に際し、延伸処理において、厚み60μmのPVAフィルムを延伸搬送して、22μmの偏光膜を得た。また、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例8〜13と同様である。
(偏光フィルム積層体の作成)
得られた偏光膜の一方の面に、偏光膜保護フィルムとして、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚み30μmの透明保護フィルム(日東電工社製)を、他方の面に、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「KC4UY」)に厚み9μmのHCを形成した厚み49μmの透明保護フィルムを接合させた。その他の処理については、参考例8〜13と同様である。
(偏光膜の取り出し)
取り出しの条件については、参考例8〜13と同様である。
【0137】
[比較例14]
比較例13の偏光膜の作成に際し、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。また、偏光膜の一方の面に、偏光膜保護フィルムとして、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚み20μmの透明保護フィルム(日東電工社製)を接合させた。その他の条件については、比較例13と同様である。
【0138】
[比較例15]
参考例8〜13の偏光膜の作成に際し、延伸処理において、厚み75μmのPVAフィルムを延伸搬送して、28μmの偏光膜を得た。また、染色処理において、ヨウ素水溶液の濃度及び浸漬時間を調整して、ヨウ素濃度を変更し、また、偏光膜保護フィルムの厚みを調整して、偏光フィルム積層体の水分量を変更した。その他の条件については、参考例8〜13と同様である。
【0139】
4−1−1.信頼性試験
実施例等で得られた偏光フィルム積層体12を用い、
図4に示すように、偏光フィルム積層体12の両面それぞれに粘着剤を11、13介してガラス板(松浪硝子製スライドグラス、品番:S2000423、仕様:水縁磨 65×165mm、 厚み1.3mm)を積層したものをサンプルとした。
【0140】
粘着剤として、偏光フィルム積層体の一方の面には厚み200μmのCS9868US(日東電工社製)を用い、偏光フィルム積層体の他方の面にはCRT1794YCUの偏光フィルム積層体(日東電工製)に用いられるアクリル系粘着剤(厚み20μm)を用いた。他方の面に用いたアクリル系粘着剤は、冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル99重量部(以下同じ)、アクリル酸4−ヒドロキシブチル1.0部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60°で4時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30%)を得、このアクリル系ポリマー溶液の固形分100部あたり0.3部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂製(株):ナイパーBMT)と、0.1部のトリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)):タケネートD110N)と、0.2部のシランカップリング剤(緑研化学株式会社製:A−100、アセトアセチル基含有シランカップリング剤)を配合することによって得られたものである。
【0141】
当該サンプルを、95℃で250時間(95℃/250H)放置後に色ぬけ及び加熱赤変を評価し、95℃で500時間(95℃/500H)放置後にポリエン化の評価を行った。
【0142】
4−1−2.評価基準
ポリエン化、加熱赤変、及び色抜けの評価基準を下記に示す。
【0143】
<ポリエン化>
95℃/500Hの加熱試験の前後で試料の単体透過率を測定し、単体透過率の変化量ΔTsを下式で求めた。
(式) ΔTs=Ts
500−Ts
0
ここで、Ts
0は加熱前における試料の単体透過率であり、Ts
500は95℃/500H加熱後における単体透過率である。
変化量ΔTsが負の値であるものを、試料の「ポリエン化(単体透過率の低下)」と評価した。言い換えると、95℃/500時間の加熱後の単体透過率が、加熱前の単体透過率と同じか又はそれより大きい場合には、ポリエン化の問題は存在しないと評価した。
単体透過率は、上記試料について、分光光度計(村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」)を用いて測定した。なお、単体透過率は、JlS Z 8701に準じて求めることができる。
【0144】
<色抜け・加熱赤変>
95℃/250Hの加熱試験の前後で、試料をクロスニコルに配置して波長410nmおよび波長700nmの直交透過率(%)を上記分光光度計によりそれぞれ測定し、それぞれの変化量ΔHs410およびΔHs700を求めた。
以下の2つの条件を全て満たすものを、試料の「色抜け」と評価した。
・変化量ΔHs410が1%以上
・変化量ΔHs700が5%以上
言い換えると、95℃/
250時間の加熱処理による、波長410nmでの直交透過率の変化量が1%未満、且つ、波長700nmでの直交透過率の変化量が5%未満である場合には、色抜けの問題は存在しないと評価した。
また、以下の条件を満たすものを、試料の「加熱赤変」と評価した。
・変化量ΔHs410が1%未満
・変化量ΔHs700が5%以上
言い換えると、95℃/
250時間の加熱処理による、波長410nmでの直交透過率の変化量が1%以上、且つ、波長700nmでの直交透過率の変化量が5%未満である場合には、加熱赤変の問題は存在しないと評価した。
【0145】
各実施例等における評価結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0146】
4−2.補強型偏光性光学フィルム積層体について
4−2−1.評価対象
実施例1乃至3の偏光フィルム積層体を使用して補強型偏光性光学フィルム積層体のサンプルを作成し、偏光フィルム積層体の「クラック」の有無について目視による試験を行った。同時に、偏光フィルム積層体の「剥がれ」の有無についても目視による試験を行った。また、これら「クラック」と「剥がれ」は共に、補強型偏光性光学フィルム積層体の「破断強度」と密接に関連すると考えられることから、これを評価対象として加えた。
【0147】
<クラック>及び<剥がれ>
補強型偏光性光学フィルム積層体として2種類の層構成を用いた。
一方は、実施例1の層構成を利用したもの、即ち、
図5の(a)に示すように、偏光フィルム積層体12−1、即ち、偏光膜200の一方の側に偏光膜保護フィルム210を、他方の側に保護フィルム220を、それぞれ接合させた偏光フィルム積層体12−1に、偏光膜保護フィルム210側にて粘着剤230を介して透明光学フィルム240を積層することによって形成した補強型偏光性光学フィルム積層体12A−1である。
【0148】
他方は、実施例2、3の層構成を利用したもの、即ち、
図5の(b)に示すように、偏光フィルム積層体12−2、即ち、偏光膜200の一方の側に偏光膜保護フィルム210を、他方の側に互いに接合された2枚の位相差フィルム191、192から成る位相差層19を、それぞれ接合させた偏光フィルム積層体12−2に、偏光膜保護フィルム210側にて粘着剤230を介して透明光学フィルム240を積層することによって形成した補強型偏光性光学フィルム積層体12A−2である。尚、上に説明したように、本発明の偏光フィルム積層体の水分量を評価する上で、位相差フィルムは、偏光膜保護フィルムと実質的に同じものとして捉えることができるため、偏光膜保護フィルムに代えて、本実施例のように、位相差フィルムを用いてもよい。
【0149】
これら
図5の(a)、(b)に示す層構成を有する補強型偏光性光学フィルム積層体12A−1、12A−2を、透明光学フィルム240とは反対側の面において、粘着剤250を介して、ガラス板(コーニング製無アルカリガラス、品番:イーグルXG、仕様:300×700mm、厚み0.7mmに貼り付け、この状態で95℃で500時間加熱した後、温度23℃、相対湿度55%に設定したクリーンルームにて取り出し、偏光フィルム積層体12−1、12−2に「クラック」及び「剥がれ」が生じているか否かを目視で確認した。
【0150】
粘着剤250として、アクリル系ポリマー(A1)を用いた。粘着剤250を作製するため、先ず、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート76.9重量部、ベンジルアクリレート18重量部、アクリル酸5重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100重量部に対して、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100重量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)195万、Mw/Mn=3.9のアクリル系ポリマー(A1)の溶液を調製した。次いで、上記で得られたアクリル系ポリマー(A1)の溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物)0.4重量部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.1重量部、および合成例1で合成したオルガノポリシロキサン化合物(B1)0.05重量部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0151】
<破断強度>
島津製作所製:オートグラフ AG-I 10kNを用いて測定する。測定条件は、引張速度:200mm/min、ロードセル:500Nとする。
測定方法は、JISK-7162-1Aの規格に準拠する。より詳細には、
図5の(a)又は(b)に示す層構成を有した補強型偏光性光学フィルム積層体12A−1、12A−2を、JIS規格に示された
図6に示す大きさ及び形状に切り出してサンプルを用意する。これらのサンプルについて、MD方向における初期、つまり、加熱しない状態の破断強度を測定する。
計3個のサンプルにつき、それぞれ、破断強度を求め、最も小さな数値を破断強度とした。
【0152】
4−2−2.実施例及び比較例
各実施例等における評価結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0153】
尚、偏光膜保護フィルムの厚み、及び、透明光学フィルムの厚み(μm)は、分光膜厚計MCPD−1000(大塚電子(株)製)を用いて測定した。
【0154】
[実施例1−1]
実施例1の偏光フィルム積層体を使用して、
図5の(a)に示す層構成を有する補強型偏光性光学フィルム積層体12A−1のサンプルを作成した。粘着剤230には、CWQ1463CUの偏光フィルム積層体(日東電工製)に用いられるアクリル系粘着剤(厚さ12μm)を用い、透明光学フィルム240には、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「KC4UY」)である透明保護フィルムを用いた。この補強型偏光性光学フィルム積層体12A−1について、破断強度を測定した。また、この補強型偏光性光学フィルム積層体12A−1を粘着剤250を介してガラス板に貼り付け、加熱、冷却して、偏光フィルム積層体12−1に「クラック」及び「剥がれ」が生じているか否かを目視で確認した。
尚、特に図示しないが、例えば、偏光膜保護フィルム210と粘着剤230の間、及び、粘着剤230とは反対側の透明光学フィルム240の面に、厚み1μm〜10μm程度のハードコート層を設けてもよい。この程度の厚みのハードコート層であれば、評価対象の結果に実質的に影響することはない(以下の実施例及び比較例において同様)。ハードコート層には、参考例6に記載したものを用いることができる。
【0155】
[実施例1−2]
実施例1−1の構成において、粘着剤230の厚みを12μmから23μmに変更し、透明光学フィルム240として、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「TD80」を用いた。その他の条件については、実施例1−1と同様である。
【0156】
[比較例1−1]
実施例1−1の構成から、粘着剤230及び透明光学フィルム240を除いた層構成を有するサンプルを用いた。その他の条件については、実施例1−1と同様である。
【0157】
[実施例2−1]
実施例2の偏光フィルム積層体を使用して、
図5の(b)に示す層構成を有する補強型偏光性光学フィルム積層体12A−2のサンプルを作成した。この補強型偏光性光学フィルム積層体12A−2について、破断強度を測定した。また、この補強型偏光性光学フィルム積層体12A−2を粘着剤250を介してガラス板に貼り付け、加熱、冷却して、偏光フィルム積層体12−2に「クラック」及び「剥がれ」が生じているか否かを目視で確認した。その他の条件については、実施例1−1と同様である。
【0158】
[実施例2−2]
実施例2−1の構成において、粘着剤230の厚みを12μmから23μmに変更し、透明光学フィルム240として、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「TD80」を用いた。その他の条件については、実施例2−1と同様である。
【0159】
[比較例2−1]
実施例2−1の構成から、粘着剤230及び透明光学フィルム240を除いた層構成を有するサンプルを用いた。その他の条件については、実施例2−1と同様である。
【0160】
[実施例3−1]
実施例3の偏光フィルム積層体を使用して、
図5の(b)に示す層構成を有する補強型偏光性光学フィルム積層体12A−2のサンプルを作成した。その他の条件については、実施例2−1と同様である。
【0161】
[実施例3−2]
実施例3−1の構成において、粘着剤230の厚みを12μmから23μmに変更し、透明光学フィルム240として、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「TD80」を用いた。その他の条件については、実施例3−1と同様である。
【0162】
[比較例3−1]
実施例3−1の構成から、粘着剤230及び透明光学フィルム240を除いた層構成を有するサンプルを用いた。その他の条件については、実施例3−1と同様である。
【0163】
5.評価結果のまとめ
5−1.偏光フィルム積層体について
図7は、実施例及び比較例の結果をx−y直交座標系にプロットしたものである。x−軸(横軸)は、偏光膜のヨウ素濃度(wt.%)を、y−軸(縦軸)は、偏光フィルム積層体の水分量(g/m
2)を、それぞれ示す。
【0164】
(1)プロットの結果及び技術常識から、概して、ヨウ素濃度が小さく且つ水分量が小さすぎる場合には、高温状態で発生する加熱赤変の問題が生じ易く、一方、ヨウ素濃度が大きく且つ水分量が大きすぎる場合には、ポリエン化及び色抜けの問題が生じやすいということができる。また、ヨウ素濃度が小さく且つ水分量が大きすぎる場合には、高温高湿状態で発生する色抜けの問題が生じやすく、この場合、ヨウ素濃度が増すにつれて、ポリエン化の問題が生じ易いということができる。特に、色抜けとポリエン化の間には、それらの間の移行領域(比較例13、15)も見受けられた。
一方で、ヨウ素濃度及び水分量が所定の領域内に収まる場合には、加熱赤変、ポリエン化、及び色抜けの全てを包括的に解決できることが見て取れる。例えば、実施例の結果は全て、最も小さな水分量を有する実施例3の結果を示すプロットの周辺、即ち、ヨウ素濃度7.0wt.%及び水分量0.7g/m
2の座標点(以下、第1座標点)と、最も小さなヨウ素濃度を有する実施例9の結果を示すプロットの周辺、即ち、ヨウ素濃度2.2wt.%及び水分量3.2g/m
2の座標点(以下、第2座標点)とを通る仕切り線「α」、即ち、y=(1043−125x)/240の上側であって、且つ、最も大きな水分量を有する実施例8の結果を示すプロットの周辺、即ち、ヨウ素濃度3.0wt.%及び水分量4.0g/m
2の座標点(以下、第4座標点)と、最も大きなヨウ素濃度を有する実施例2の結果を示すプロットの周辺、即ち、ヨウ素濃度10.0wt.%及び水分量0.7g/m
2の座標点(以下、第5座標点)とを通る仕切り線「β」、即ち、y=(379−33x)/70の下側に位置付けられている。よって、これらの仕切り線「α」、「β」によって仕切られる領域を、加熱赤変、ポリエン化、及び色抜けの全てを包括的に解決するために必要な要件を示す線として捉えることができる。尚、これらの仕切り線「α」、「β」は、偏光膜の膜厚に関わらず、更に言えば、4〜20μm程度の膜厚を有する全ての偏光膜に関して適用されるものとなっている。
【0165】
(2)また、プロットの結果及び技術常識から、特に、4〜20μm程度の膜厚を有する全ての偏光膜について、ヨウ素濃度と、偏光フィルム積層体の水分量が、a乃至eにより囲まれる領域に、更に詳細には、ヨウ素濃度7.0wt.%及び水分量0.7g/m
2の第1座標点(図中の「a」)と、ヨウ素濃度2.2wt.%及び水分量3.2g/m
2の第2座標点(図中の「b」)とを結ぶ第1の線分、第2座標点「b」と、ヨウ素濃度2.2wt.%及び水分量4.0g/m
2の第3座標点(図中の「c」)とを結ぶ第2の線分、第3座標点「c」と、ヨウ素濃度3.0wt.%及び水分量4.0g/m
2の第4の座標点(図中の「d」)とを結ぶ第3の線分、第4座標点「d」と、ヨウ素濃度10.0wt.%及び水分量0.7g/m
2の第5座標点(図中の「e」)とを結ぶ第4の線分、及び第1座標点「a」と第5座標点「e」とを結ぶ第5の線分により囲まれる領域内に含まれる場合には、「ポリエン化」、「色抜け」、及び「加熱赤変」の全てを包括的に解決できることが分かる。
【0166】
(3)同様に、特に、11〜20μm程度の膜厚を有する偏光膜について、ヨウ素濃度と、偏光フィルム積層体の水分量が、f、b、c、d、gにより囲まれる領域、更に詳細には、ヨウ素濃度4.5wt.%及び水分量2.0g/m
2の第6座標点(図中の「f」)と第2座標点「b」とを結ぶ第6の線分、第2座標点「b」と第3座標点「c」とを結ぶ第2の線分、第3座標点「c」と第4座標点「d」とを結ぶ第3の線分、第4座標点「d」とヨウ素濃度4.5wt.%及び水分量3.3g/m
2の第7座標点(図中の「g」)とを結ぶ第7の線分、及び第6座標点「f」と第7座標点「g」とを結ぶ第8の線分により囲まれる領域内に含まれる場合に、「ポリエン化」、「色抜け」、及び「加熱赤変」の全てを包括的に解決できることが分かる。
特に、第6座標点「f」が、ヨウ素濃度4.0wt.%及び水分量2.3g/m
2の座標点「f−1」であり、第7座標点「g」が、ヨウ素濃度4.0wt.%及び水分量3.5g/m
2の座標点「g−1」である場合に、好ましい結果が得られるものと考えられる。
また、11〜20μm程度の膜厚を有する偏光膜については、ヨウ素濃度と、偏光フィルム積層体の水分量が、f、b、c、d、gにより囲まれ、且つ、hとiを繋ぐ線分によって仕切られる領域、更に詳細には、ヨウ素濃度3.3wt.%及び水分量2.6g/m
2の第8座標点(図中の「h」)と第2座標点「b」とを結ぶ第9の線分、第2座標点「b」と第3座標点「c」とを結ぶ第2の線分、第3座標点「c」と第4座標点「d」とを結ぶ第3の線分、第4座標点「d」と第7座標点「g」とを結ぶ第7の線分、第6座標点「f」と第7座標点「g」とを結ぶ第8の線分、及び第8座標点「h」と、ヨウ素濃度6.0wt.%及び水分量2.6g/m
2の第9座標点(図中の「i」)とを結ぶ第10の線分により囲まれる領域内に含まれる場合に、「ポリエン化」、「色抜け」、及び「加熱
【0167】
(4)更に、特に、4〜11μm程度の膜厚、好ましくは、4〜7μmの膜厚、より好ましくは、4.5〜6μmの膜厚を有する偏光膜について、ヨウ素濃度と、偏光フィルム積層体の水分量が、a、h、i、eにより囲まれる領域、更に詳細には、第1座標点「a」と第8座標点「h」とを結ぶ第11の線分、第8座標点「h」と第9座標点「i」とを結ぶ第10の線分、第9座標点「i」と第5座標点「e」とを結ぶ第12の線分、及び 第1座標点「a」と第5座標点「e」とを結ぶ第5の線分により囲まれる領域内に含まれる場合に、「ポリエン化」、「色抜け」、及び「加熱赤変」の全てを包括的に解決できることが分かる。
特に、第8座標点「h」が、第6座標点「f」であり、第9座標点「i」が、ヨウ素濃度7.2wt.%及び水分量2.0g/m
2の第10座標点(図中の「j」)である場合に、好ましい結果が得られるものと考えられる。
また、4〜11μm程度の膜厚、好ましくは、4〜7μmの膜厚、より好ましくは、4.5〜6μmの膜厚を有する偏光膜については、ヨウ素濃度と、偏光フィルム積層体の水分量が、a、k、i、eにより囲まれる領域、更に詳細には、第1座標点「a」と、ヨウ素濃度6.0wt.%及び水分量1.2g/m
2の第11座標点(図中の「k」)とを結ぶ第13の線分、第11座標点「k」と第9座標点「i」とを結ぶ第14の線分、第9座標点「i」と第5座標点「e」とを結ぶ第12の線分、及び第1座標点「a」と第5座標点「e」とを結ぶ第5の線分により囲まれる領域内に含まれる場合に、「ポリエン化」、「色抜け」、及び「加熱赤変」の全てにおいてより良好な結果が得られると推察される。
特に、第11座標点「k」が、ヨウ素濃度6.5wt.%及び水分量1.0g/m
2の座標点(k−1)であり、第9座標点「i」が、ヨウ素濃度6.5wt.%及び水分量2.3g/m
2の座標点(i−1)である場合に、更に好ましい結果が得られるものと考えられる。
【0168】
(5)尚、実施例2、3では、ポリエン化、加熱赤変、及び色抜けの評価を行っていないが、ヨウ素濃度及び水分量の値が、実施例1や参考例8乃至11等と近似したものであることから、実施例1等と同様に、「ポリエン化」、「色抜け」、及び「加熱赤変」の問題は包括的に解決され得ることは明らかである。尚、実施例2、3に対応するプロットは、
図7中では「●」で示した。
【0169】
5−2.補強型偏光性光学フィルム積層体について
透明光学フィルムを設けて補強した場合には、偏光フィルム積層体のクラック及び剥がれを抑制することができた。また、透明光学フィルムの厚みを大きくした場合に、抑制効果が大きくなった。
抑制には、補強型偏光性光学フィルム積層体のMD方向における破断強度は、135N/10mm以上であることが必要であり、140N/mm以上が好ましく、145N/mm以上、150N/mm以上、155N/mm以上、160N/10mm以上がより好ましく、200N/10mm以上が更に好ましい。
【0170】
6.その他
以上の説明は、好ましい実施形態に関するものであり、物品及びそれを製造する方法を単に代表するものであることを理解すべきである。異なる実施形態の変形及び修正が上述の教示に照らして当業者に容易に明らかになることを認めることができる。従って、例示的実施形態並びに代替的な実施形態は、添付の特許請求の範囲で説明する物品及び方法の精神から逸脱することなく行うことができる。
例えば、本実施形態では、光学的表示セル10(
図1参照)の視認側に配置された偏光フィルム積層体12についてのみ補強型偏光性フィルム積層体12Aを用いているが、これとは反対側に配置された偏光フィルム積層体17についても同様に補強型偏光性フィルム積層体を用いることができる。