(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記工程(2)及び(3)において、その材質が、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム若しくはウレタンゴムを基材とするゴム組成物;ウレタン樹脂若しくはフッ素樹脂を基材とする樹脂組成物;セラミックス又は金属である上記第一擦動具及び上記第二擦動具が用いられる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウェブにダイス加工が施されれば、カーボンナノチューブが高密度で集束しうる。しかし、カーボンナノチューブは微細なので、ウェブをダイスに通す作業には、困難が伴う。ダイス加工では、カーボンナノチューブがダイスと擦動することで、線の表面が毛羽立つ。毛羽立ちは、線の品質を阻害する。毛羽立ちで生じたカス(Residue)がダイスに蓄積されて、円滑なダイス加工を阻害することもある。このカスが小塊を形成し、この小塊が線に混入して線の局所的な欠陥(例えばネップ)を招来することもある。
【0007】
本発明の目的は、高密度かつ高品質なカーボンナノチューブ線が得られる製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカーボンナノチューブ線の製造方法は、
(1)多数のカーボンナノチューブを含むウェブを得る工程、
(2)このカーボンナノチューブに擦動具を当接させる工程、
及び
(3)この擦動具をウェブの延在方向に対して傾斜する方向に移動させて、カーボンナノチューブを集束させる工程
を含む。
【0009】
好ましくは、上記工程(2)において、ウェブが擦動具に当接する。
【0010】
好ましくは、工程(2)及び(3)において、その材質が、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム若しくはウレタンゴムを基材とするゴム組成物;ウレタン樹脂若しくはフッ素樹脂を基材とする樹脂組成物;セラミックス又は金属である擦動具が用いられる。
【0011】
他の観点によれば、本発明に係るカーボンナノチューブ線のための製造装置は、
多数のカーボンナノチューブを含むウェブ、又はこのウェブから得られた束に、当接する擦動具
及び
この擦動具をウェブの延在方向に対して傾斜する方向に移動させうる駆動機構
を有する。
【0012】
好ましくは、擦動具の材質は、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム若しくはウレタンゴムを基材とするゴム組成物;ウレタン樹脂若しくはフッ素樹脂を基材とする樹脂組成物;セラミックス又は金属である。
【0013】
他の観点によれば、本発明に係る撚り線は、多数のカーボンナノチューブを含む。この撚り線は、撚り方向がS方向である右撚り部と、撚り方向がZ方向である左撚り部とを有する。
【0014】
撚り線が、複数の右撚り部と複数の左撚り部とを有してもよい。好ましくは、これらの右撚り部と左撚り部とは、交互に並ぶ。
【0015】
撚り線が、中間部を有してもよい。この中間部は、右撚り部と左撚り部との間に位置する。この中間部では、カーボンナノチューブは撚られていない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る製造方法では、擦動具の移動がカーボンナノチューブの密度を高める。この擦動具は、線の品質を大幅には阻害しない。この製造方法により、高密度かつ高品質なカーボンナノチューブ線が得られうる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1には、本発明の一実施形態に係る製造方法に使用される設備2が、アレイ4(後に詳説)と共に示されている。この設備2は、集束機6、散布機8及び乾燥機10を有している。
【0020】
図2は、
図1の設備2の集束機6が示された正面図である。
図3は、
図2の集束機6が示された左側面図である。この集束機6は、ベース12、第一パート14a、第二パート14b及び駆動装置16を有している。ベース12は、その上面に4つの溝18を有している、第一パート14aは、第二パート14bよりも上流(
図2の左側)に位置している。
【0021】
第一パート14aは、第一マウント20a、一対の第一サポート22a、第一ローラ24a(擦動具)及び第一アーム26aを有している。
【0022】
第一マウント20aは、2個の第一レール28aを有している。それぞれの第一レール28aは、ベース12の溝18に嵌まっている。この第一レール28aは、溝18に対して擦動可能である。レール28aに代えて、又はレール28aと共に、第一マウント20aがコロ、車輪等を有してもよい。
【0023】
それぞれの第一サポート22aは、第一マウント20aから起立している。この第一サポート22aは、第一マウント20aに固定されている。一方の第一サポート22aと他方の第一サポート22aとの間に、第一ローラ24aが架けられている。この第一ローラ24aは、
図2において矢印A1が示す方向に回転しうる。
【0024】
第一アーム26aの一端は、第一マウント20aに連結されている。
図3に示されるように、第一アーム26aは、Y方向に延在している。この第一アーム26aの他端は、駆動装置16に連結されている。典型的な駆動装置16は、モーターである。この駆動装置16により、
図3において矢印A2が示すように、第一アーム26aが往復運動を行う。この往復運動は、Y方向の運動である。この往復運動に伴い、第一パート14aが全体として往復運動を行う。この往復運動は、第一レール28aが溝18に案内されつつ、なされる。
【0025】
第二パート14bは、第二マウント20b、一対の第二サポート22b、第二ローラ24b(擦動具)及び第二アーム26bを有している。
【0026】
第二マウント20bは、2個の第二レール28bを有している。それぞれの第二レール28bは、ベース12の溝18に嵌まっている。この第二レール28bは、溝18に対して擦動可能である。レール28bに代えて、又はレール28bと共に、第二マウント20bがコロ、車輪等を有してもよい。
【0027】
それぞれの第二サポート22bは、第二マウント20bから起立している。この第二サポート22bは、第二マウント20bに固定されている。一方の第二サポート22bと他方の第二サポート22bとの間に、第二ローラ24bが架けられている。この第二ローラ24bは、
図2において矢印A3が示す方向に回転しうる。
【0028】
第二アーム26bの一端は、第二マウント20bに連結されている。図示されていないが、第二アーム26bはY方向に延在している。この第二アーム26bの他端は、駆動装置16に連結されている。この駆動装置16により、第二アーム26bがY方向に往復運動を行う。この往復運動に伴い、第二パート14bが全体として往復運動を行う。この往復運動は、第二レール28bが溝18に案内されつつ、なされる。
【0029】
図3から明らかなように、本実施形態では、第一ローラ24aのトップ30は、第二ローラ24bのボトム32よりも、上方に位置している。
【0030】
図4には、
図1の設備2による製造方法に使用されるアレイ4が、基板34と共に示されている。アレイ4は、ブロック形状を有する。このアレイ4は、多数のカーボンナノチューブ36の集合体である。説明の便宜上、
図4において、カーボンナノチューブ36にハッチングが施されている。これらのカーボンナノチューブ36は、アレイ4の厚み方向(Z方向)に配向している。換言すれば、個々のカーボンナノチューブ36は、基板34に対して概ね起立している。アレイ4の製造には、種々の方法が採用されうる。典型的な方法は、化学気相成長法である。この方法では、基板34から上方に向かって、カーボンナノチューブ36が徐々に成長する。
【0031】
それぞれのカーボンナノチューブ36の直径は、通常は0.5nm以上100nm以下である。このカーボンナノチューブ36の長さは、通常は0.5μm以上10mm以下である。カーボンナノチューブ36の層構造は、単層構造であってもよく、二層構造であってもよく、多層構造であってもよい。構造の異なる複数種類のカーボンナノチューブ36から、アレイ4が形成されてもよい。
【0032】
図5は、
図1の設備2が用いられたカーボンナノチューブ線の製造方法が示されたフロー図である。この製造方法では、アレイ4からの、カーボンナノチューブ36の引き出し(ドローイング)が、開始される(STEP1)。
【0033】
図6に、この引き出しの様子が示されている。
図6(a)は正面図であり、
図6(b)は平面図である。
図6に示されるように、引き出しは、アレイ4の側面38からなされる。1本又は少数本数のカーボンナノチューブ36がチャックされ、引き出される。引き出されたカーボンナノチューブ36に追従して、アレイ4から、他のカーボンナノチューブ36が順次引き出される。このときのカーボンナノチューブ36同士は、ファンデルワールス力によって結合している。カーボンナノチューブ36は、下流側(
図6における右側)へと進行する。
【0034】
この引き出しが継続されることにより、ウェブ40が形成される(STEP2)。
図6(a)に示されるように、ウェブ40の厚み(Z方向のサイズ)は小さい。
図6(b)に示されるように、ウェブ40の幅(Y方向のサイズ)は大きい。換言すれば、ウェブ40は、シート状である。
【0035】
このウェブ40は、集束機6へと送られる。このウェブ40は、第一ローラ24aと第二ローラ24bとの間を通される。前述の通り、第一ローラ24aのトップ30は第二ローラ24bのボトム32よりも上方に位置している。従って
図6では、ウェブ40は、第一ローラ24aのトップ30の近傍と当接し、かつ第二ローラ24bのボトム32の近傍とも当接している。この状態のウェブ40には、張力がかかっている。第一ローラ24aのボトムが第二ローラ24bのトップよりも下方に位置してもよい。この場合、ウェブ40は、第一ローラ24aのボトムの近傍と当接し、かつ第二ローラ24bのトップの近傍とも当接する。
【0036】
図7は、
図6のVII−VII線に沿った断面図である。
図7(a)には、集束機6を通された直後のカーボンナノチューブ36が示されている。これらのカーボンナノチューブ36は、幅方向(Y方向)に分散している。
【0037】
図7(a)に示された状態から、第一ローラ24aが矢印A4が示す方向に移動し、第二ローラ24bが矢印A5が示す方向に移動する。第二ローラ24bの移動方向は、第一ローラ24aの移動方向とは逆である。第一ローラ24aは、カーボンナノチューブ36と擦動しながら、移動する。第二ローラ24bも、カーボンナノチューブ36と擦動しながら、移動する。これらの移動後の第一ローラ24a及び第二ローラ24bが、
図7(b)に示されている。擦動により、カーボンナノチューブ36同士が絡み合う。従って、
図7(a)に示された状態に比べ、
図7(b)では、カーボンナノチューブ36が集束している。
【0038】
図7(b)に示された状態から、第一ローラ24aが矢印A6が示す方向に移動し、第二ローラ24bが矢印A7が示す方向に移動する。第二ローラ24bの移動方向は、第一ローラ24aの移動方向とは逆である。第一ローラ24aは、カーボンナノチューブ36と擦動しながら、移動する。第二ローラ24bも、カーボンナノチューブ36と擦動しながら、移動する。これらの移動後の第一ローラ24a及び第二ローラ24bが、
図7(c)に示されている。擦動により、カーボンナノチューブ36同士が、さらに絡み合う。従って、
図7(b)に示された状態に比べ、
図7(c)では、カーボンナノチューブ36が集束している。
【0039】
第一ローラ24aは、矢印A4が示す方向への移動と、矢印A6が示す方向への移動とを、繰り返す。換言すれば、第一ローラ24aは、往復運動を繰り返す。この往復運動の方向は、ウェブ40の延在方向(X方向)に対して傾斜している。好ましい傾斜角度は、90°である。本実施形態では、往復運動の方向は、ウェブ40の延在方向に対して垂直である。換言すれば、傾斜角度は、90°である。往復運動のストロークの、ウェブ40の幅W(
図6参照)に対する比率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上が特に好ましい。この比率は1000%以下が好ましく、800%以下がより好ましく、700%以下が特に好ましい。
【0040】
第二ローラ24bは、矢印A5が示す方向への移動と、矢印A7が示す方向への移動とを、繰り返す。換言すれば、第二ローラ24bは、往復運動を繰り返す。この往復運動の方向は、ウェブ40の延在方向(X方向)に対して傾斜している。好ましい傾斜角度は、90°である。本実施形態では、往復運動の方向は、ウェブ40の延在方向に対して垂直である。換言すれば、傾斜角度は、90°である。往復運動のストロークの、ウェブ40の幅W(
図6参照)に対する比率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上が特に好ましい。この比率は1000%以下が好ましく、800%以下がより好ましく、700%以下が特に好ましい。
【0041】
第二ローラ24bが運動せず、第一ローラ24aのみが往復運動をしてもよい。第一ローラ24aが運動せず、第二ローラ24bのみが往復運動をしてもよい。
【0042】
第一ローラ24a又は第二ローラ24bの往復運動により、カーボンナノチューブ36が密に集束される(STEP3)。集束により、カーボンナノチューブ36は束42を形成する。集束機6には、ウェブ40が連続的に投入される。従って集束機6から、カーボンナノチューブ36の束42が、連続的に取り出される。連続的な投入及び連続的な取り出しにおいて、第一ローラ24aが矢印A1が示す方向(
図2参照)に回転することが、好ましい。さらに、第二ローラ24bが矢印A3が示す方向(
図2参照)に回転することが、好ましい。
【0043】
ウェブ40が集束機6に到達するまでに、カーボンナノチューブ36が集束して束が形成されてもよい。この場合は、集束機6に束が投入され、この集束機6によってこの束における集束の程度が高められる。ウェブ40の引き出し速度に対して、第一ローラ24a又は第二ローラ24bの往復運動が十分に大きい場合に、集束機6に到達する前の集束が起こりうる。ウェブ40の引き出し速度がゼロの状態でこの往復運動がなされ、集束がなされてもよい。
【0044】
この束42は、散布機8へと送られる。この散布機8にて、束42に溶剤が滴下される(STEP4)。この溶剤は、束42の密度を高める。揮発性の溶剤が、好ましい。好ましい溶剤として、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、アンモニア及びグリセリンが例示される。エタノール及びアセトンが特に好ましい。
【0045】
この束42は、乾燥機10に送られる。この乾燥機10において、束42が加熱(STEP5)される。この加熱により、溶剤が気化する。加熱に代えて、又は加熱と共に、束42に対する送風がなされることで、溶剤が気化してもよい。気化により溶剤が束42から除去され、線(Yarn)が得られる。この線が、リール等に巻き取られる。
【0046】
溶剤の滴下(STEP4)がなされることなく、線が得られてもよい。乾燥機10による処理がなされることなく、線が得られてもよい。
【0047】
第一ローラ24aの表面(すなわちカーボンナノチューブ36との接触面)の好ましい材質として、ゴム組成物、樹脂組成物、セラミックス、金属及び炭素系材料が例示される。ゴム組成物の好ましい基材として、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びウレタンゴムが例示される。樹脂組成物の好ましい基材として、ウレタン樹脂及びフッ素樹脂が例示される。好ましい金属として、ステンレススチールが例示される。好ましい炭素系材料として、黒鉛が例示される。第一ローラ24aの表面が、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素系材料でコーティングされてもよい。表面がこれらの材質である第一ローラ24aは、カーボンナノチューブ36を固着しにくい。この観点から、前述のゴム組成物が、特に好ましい。
【0048】
第二ローラ24bの表面(すなわちカーボンナノチューブ36との接触面)の好ましい材質として、ゴム組成物、樹脂組成物、セラミックス、金属及び炭素系材料が例示される。ゴム組成物の好ましい基材として、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びウレタンゴムが例示される。樹脂組成物の好ましい基材として、ウレタン樹脂及びフッ素樹脂が例示される。好ましい金属として、ステンレススチールが例示される。好ましい炭素系材料として、黒鉛が例示される。第二ローラ24bの表面が、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素系材料でコーティングされてもよい。表面がこれらの材質である第二ローラ24bは、カーボンナノチューブ36を固着しにくい。この観点から、前述のゴム組成物が、特に好ましい。
【0049】
第一パート14aが、第一ローラ24aに代えて、他の擦動具を有してもよい。第二パート14bが、第二ローラ24bに代えて、他の擦動具を有してもよい。他の擦動具の断面形状として、楕円、楕円以外の長円、矩形、板形状及び矩形以外の多角形(三角形、五角形、六角形、八角形等)が例示される。長円の概念には、陸上競技場のトラックに類似の形状が含まれる。この形状は、所定間隔を隔てて対向する2つの半円と、これらの半円の間を結ぶ2つの直線とからなる。
【0050】
図8は、
図5の方法で製造されたカーボンナノチューブ線44の一部が示された拡大図である。この線44では、多数のカーボンナノチューブ36が集束している。この線44は、右撚り部46、中間部48及び左撚り部50を有している。右撚り部46では、カーボンナノチューブ36が撚られている。右撚り部46の撚り方向は、右方向である。この方向は、「S方向」と称されている。中間部48では、カーボンナノチューブ36は、実質的に撚られていない。左撚り部50では、カーボンナノチューブ36が撚られている。左撚り部50の撚り方向は、左方向である。この方向は、「Z方向」と称されている。右撚り部46及び左撚り部50における撚りは、第一ローラ24a又は第二ローラ24bの往復運動に由来する。線44が、中間部48を含まない構造を有してもよい。
【0051】
線44は、複数の右撚り部46と複数の左撚り部50とを有する。この線44では、残留応力が小さい。好ましくは、これらの右撚り部46と左撚り部50とは、線44の長さ方向に沿って交互に並ぶ。右撚り部46と左撚り部50とが、ランダムに並んでもよい。
【0052】
線44が、カーボンナノチューブ36が撚られていない構造を有してもよい。ローラの往運動による撚りと復運動による撚りとが打ち消し合うことで、撚りを実質的には有さない線44が得られうる。
【0053】
この製造方法では、ダイス加工を経ることなく、高密度な線44が得られうる。従って、ダイス加工に起因する毛羽立ちを、この線44は有さない。しかもこの製造方法により、簡便に線44が得られうる。この線44に、補助的にダイス加工が施されてもよい。
【0054】
この線44に、さらなる撚り加工が施されてもよい。撚り加工は、既知の撚糸機が使用されうる。典型的な装置は、リング撚糸機である。
【0055】
図9(a)は本発明の他の実施形態に係る製造方法の一工程が示された正面図であり、
図9(b)はその平面図である。
図9には、カーボンナノチューブ36からなるアレイ4と、集束機52とが示されている。この集束機52は、第一ローラ24a及び第二ローラ24bを有している。アレイ4からカーボンナノチューブ36が引き出され、ウェブ40が形成されている。カーボンナノチューブ36は、第一ローラ24aのトップ54に当接しており、かつ第二ローラ24bのトップ56に当接している。第一ローラ24a又は第二ローラ24bがY方向の往復運動を行うことにより、カーボンナノチューブ36が集束して束58が得られる。集束機52が、3以上のローラを有してもよい。ローラの数は、6以下が好ましい。
【0056】
図10(a)は本発明のさらに他の実施形態に係る製造方法の一工程が示された正面図であり、
図10(b)はその平面図である。
図10には、カーボンナノチューブ36からなるアレイ4と、集束機60とが示されている。この集束機60は、1つのローラ24を有している。アレイ4からカーボンナノチューブ36が引き出され、ウェブ40が形成されている。カーボンナノチューブ36は、このローラ24のトップ62に当接している。このローラ24がY方向の往復運動を行うことにより、カーボンナノチューブ36が集束して束が得られる。
【0057】
図11(a)は本発明のさらに他の実施形態に係る製造方法の一工程が示された正面図であり、
図11(b)はその平面図である。
図11には、カーボンナノチューブ36からなるアレイ4と、集束機66とが示されている。この集束機66は、第一ローラ24a、第二ローラ24b及び第三ローラ24cを有している。アレイ4からカーボンナノチューブ36が引き出され、ウェブ40が形成されている。カーボンナノチューブ36は、第一ローラ24aのトップ68に当接しており、第二ローラ24bのボトム70に当接しており、かつ第三ローラ24cのトップ72に当接している。第一ローラ24a、第二ローラ24b又は第三ローラ24cがY方向の往復運動を行うことにより、カーボンナノチューブ36が集束して束74が得られる。集束機66が、4以上のローラ24を有してもよい。ローラ24の数は、6以下が好ましい。
【0058】
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係る製造方法の一工程が示された正面図である。
図12には、第一アレイ4a、第二アレイ4b及び集束機76が示されている。第二アレイ4bは、第一アレイ4aの下方に位置している。換言すれば、2つのアレイ4a、4bは、厚み方向(Z方向)に並んでいる。集束機76は、第一ローラ24a及び第二ローラ24bを有している。第一アレイ4aからカーボンナノチューブ36が引き出され、第一ウェブ40aが形成されている。第二アレイ4bからカーボンナノチューブ36が引き出され、第二ウェブ40bが形成されている。集束機76には、第一ウェブ40a及び第二ウェブ40bが投入される。第一ローラ24a又は第二ローラ24bが往復運動を行うことにより、第一ウェブ40aのカーボンナノチューブ36及び第二ウェブ40bのカーボンナノチューブ36が集束し、1つの束78が得られる。3以上のアレイから1つの束が得られてもよい。複数のアレイが、幅方向に並んでもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0060】
[実施例1]
幅が50mmであるアレイを準備した。このアレイからカーボンナノチューブを徐々に引き出して、ウェブを得た。このウェブを、
図2、3及び6に記載された集束機に供給した。この集束機の詳細は、以下の通りである。
ローラの材質:アクリロニトリル−ブタジエンゴム
ローラの直径:25mm
ローラの幅:100mm
ローラの傾斜角度:90°
第一ローラのセンターと第二ローラのセンターとのX方向距離:30mm
第一ローラのセンターと第二ローラのセンターとのZ方向距離:10mm
往復運動のストローク:30mm
往復運動の速度:150回/min
【0061】
この集束機にてカーボンナノチューブを集束させ、束を得た。束の送りの速度は、40m/minであった。この束に散布機にてエタノールを滴下し、カーボンナノチューブの密度を高めた。この束から乾燥機にてエタノールを除去し、線を得た。150mの線を製造したが、束の破断は発生しなかった。
【0062】
[実施例2]
幅が5mmであるアレイを用いた他は実施例1と同様にして、線を得た。150mの線を製造したが、束の破断は発生しなかった。
【0063】
[比較例1]
集束機に代えて内径が0.05mmであるダイスにてカーボンナノチューブを集束させ、加工速度を1m/minとした他は実施例1と同様にして、線を得た。20mの線を製造した時点で、束が破断した。
【0064】
[比較例2]
幅が5mmであるアレイを用い、内径が0.02mmであるダイスにてカーボンナノチューブを集束させようとしたが、束を形成することはできなかった。
【0065】
[外観検査]
線の毛羽立ち及びネップを、目視で観察した。この結果が、下記の表1に示されている。実施例1の製造方法で得られた線については、1500倍の倍率で顕微鏡写真を撮影した。
図13は、この写真である。毛羽のない美しい線であることが、
図13によって確認できた。
【0066】
【表1】