特許第6852212号(P6852212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6852212
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】債権管理装置及び債権管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20210322BHJP
【FI】
   G06Q40/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-132380(P2020-132380)
(22)【出願日】2020年8月4日
【審査請求日】2020年8月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598049322
【氏名又は名称】株式会社三菱UFJ銀行
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本間 一誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】阪田 美雪
【審査官】 池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−108760(JP,A)
【文献】 特開2014−215824(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0114705(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101458807(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1事業者の第1サーバから目的債権に関する目的債権情報を取得する情報取得部と、
前記目的債権情報に基づき前記目的債権に付帯収益が付帯されているか判定する情報処理部と、
を有し、
前記付帯収益が付帯されていると判定されると、前記情報取得部は、前記目的債権の付帯収益に関する付帯収益情報を取得する債権管理装置。
【請求項2】
前記付帯収益は、第2事業者からの補填金を含み、
前記付帯収益情報は、前記第2事業者の第2サーバから発信される補填金情報を含む、請求項1記載の債権管理装置。
【請求項3】
前記付帯収益は、前記目的債権に対する保険の満期後に第3事業者から支払われる配当金を含み、
前記付帯収益情報は、前記第3事業者の第3サーバから発信される配当金情報を含む、請求項1又は2記載の債権管理装置。
【請求項4】
前記目的債権情報及び前記付帯収益情報に基づき、前記目的債権の金銭価値を算定する債権管理部を更に含む、請求項1乃至3何れか一項記載の債権管理装置。
【請求項5】
前記債権管理部は、前記算定された金銭価値に基づき、前記目的債権を譲渡対象債権として決定する、請求項4記載の債権管理装置。
【請求項6】
サーバが、第1事業者の第1サーバから目的債権に関する目的債権情報を取得するステップと、
前記サーバが、前記目的債権情報に基づき前記目的債権に付帯収益が付帯されているか判定するステップと、
前記付帯収益が付帯されていると判定されると、前記サーバが、前記目的債権の付帯収益に関する付帯収益情報を取得するステップと、
を有する債権管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融技術(フィンテック)に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関の健全化を図るため、バーゼル規制によって、銀行は一定以上の自己資本比率を維持することが求められている。具体的には、国際業務を営む銀行は8%以上の自己資本比率を維持することが要求され、国内業務のみの銀行は4%以上の自己資本比率を維持することが要求されている。従って、各銀行は、貸出を増やすためには、自己資本を増やす必要がある。
【0003】
一方、出資等により自己資本をフレキシブルに増やすことはしばしば困難であり、自己資本を増やすことなく貸出を増やすためのスキームとして債権譲渡や債権証券化が利用されている。これにより、貸出資産を増やすことなく貸出を増やすことができる。
【0004】
住宅ローンの貸出を増やすため、銀行は事業会社と連携して貸出金利の低減を図るための各種取り組みを行っている。例えば、住宅ローン契約者が新居における電気や通信サービスを所定の事業会社と契約すると、当該事業会社から補填金が提供され、これによって貸出金利を下げる取り組みが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−220554号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】https://www.kddi.com/jibun-denki/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
資金需要の低下と歴史的な低金利によって、各銀行による住宅ローンを含む各種ローンの貸出競争は激しくなっており、貸出金利は低水準に抑えられている。このため、ローン債権の収益性は低く、債権譲渡の成立も難しくなってきている。
【0008】
また、従来の債権譲渡や債権証券化では、貸付金融機関と債権買取金融機関との間に信託銀行が介在し、債権から得られる収益の一部が信託銀行の受託業務の対価として支払われるため、譲渡債権の収益性を更に低下させる。
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明の課題は、譲渡債権の収益性を向上させるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、第1事業者の第1サーバから目的債権に関する目的債権情報を取得する情報取得部と、前記目的債権情報に基づき前記目的債権に付帯収益が付帯されているか判定する情報処理部と、を有し、前記目的債権に付帯収益が付帯されていると判定されると、前記情報取得部は、前記目的債権の付帯収益に関する付帯収益情報を取得する債権管理装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、譲渡債権の収益性を向上させることによって、債権譲渡を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例による債権譲渡スキームを示す概略図である。
図2】本発明の一実施例による債権譲渡システムを示す概略図である。
図3】本発明の一実施例による各装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施例による債権管理装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施例による目的債権情報を示す。
図6】本発明の一実施例による補填金情報及び配当金情報を示す。
図7】本発明の一実施例による譲渡債権決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
以下の実施例では、付帯収益付きの債権譲渡を実現する債権譲渡システムが開示される。
【0015】
[付帯収益付き目的債権の債権譲渡スキーム]
本発明の一実施例による債権譲渡スキームを概略すると、図1に示されるように、貸付金融機関は、住宅ローンユーザに貸出を実行し、当該貸出に対する目的債権を保持する。典型的には、貸付金融機関は、多数の住宅ローンユーザに対する個々の目的債権をまとめることによって譲渡対象の目的債権を組成する。本実施例による債権譲渡スキームでは、貸付金融機関は、住宅ローンユーザが所定の電力、通信等のサービスを利用することによって事業会社から提供される補填金や住宅ローンユーザが利用する団体信用保険等から得られる保険会社からの配当金などの付帯収益を譲渡対象の目的債権の金銭価値に加算し、付帯収益付き目的債権を組成し、組成した付帯収益付き目的債権を信託銀行の介在なく債権買取金融機関に譲渡する。当該債権譲渡スキームによると、付帯収益によって目的債権の収益性を向上させることができ、これにより、債権譲渡を促進することが可能になる。
【0016】
なお、以下の実施例では、目的債権は住宅ローン債権であり、付帯収益は提携事業者からの補填金及び団体信用保険からの配当金であるが、本発明はこれに限定されず、他のタイプの債権及び付帯収益を有する付帯収益付き目的債権であってもよい。
【0017】
[債権譲渡システム]
図2を参照して、本発明の一実施例による債権譲渡システムを説明する。図2は、本発明の一実施例による債権譲渡システムを示す概略図である。
【0018】
図2に示されるように、債権譲渡システム10は、貸付金融機関サーバ20、提携事業者サーバ30、保険会社サーバ40及び債権管理装置100を有する。
【0019】
貸付金融機関サーバ20は、住宅ローンなどのローン貸出を実行する貸付金融機関によって運営され、ローンユーザに貸し出したローン債権に関する目的債権情報を生成及び保持する。例えば、目的債権情報は、当該目的債権の識別情報、貸付額、変動金利又は固定金利などの金利種別、貸出金利(例えば、変動金利の場合は基準金利からのスプレッド、固定金利の場合は当該固定金利)、貸出期間等の貸出条件と共に、提携事業者からの補填金、保険会社からの配当金など、当該目的債権に付帯する付帯収益の有無を示すフラグを含んでもよい。
【0020】
提携事業者サーバ30は、貸付金融機関とローン貸出に関して提携する事業者によって運営され、電力サービスや通信サービスなどの自社のサービスを利用するローンユーザに対するローン金利の低減のための原資として貸付金融機関に提供する補填金に関する補填金情報を生成及び保持する。例えば、補填金情報は、識別情報、補填金の基礎となる目的債権の識別情報、補填金額、提供方法等を含んでもよい。例えば、提供方法は、補填金が一括で提供されるか、あるいは、分割で提供されるかなどの提供方法の詳細を示すものであってもよい。
【0021】
保険会社サーバ40は、貸付金融機関による住宅ローンなどのローン貸出のための団体信用保険を提供する保険会社によって運営され、収集した保険料と実際に払い出した保険金との差額によって剰余金が生じた場合に分配される配当金に関する配当金情報を生成及び保持する。例えば、配当金情報は、識別情報、配当金の基礎となる目的債権の識別情報、配当金額等を含んでもよい。なお、配当金額は、予想される将来の配当金の総額の現在価値の予想値などであってもよい。
【0022】
債権管理装置100は、以下で詳細に説明されるように、貸付金融機関によって貸し出しされたローン債権を債権譲渡の目的債権として買い取る買取金融機関によって運営され、付帯収益(例えば、補填金、配当金など)を有する目的債権の抽出、組成、管理等を実行する。また、目的債権の買取後、債権買取金融機関は、貸付金融機関から付帯収益を取得してもよいし、あるいは、貸付金融機関を経由することなく、提携事業者等の付帯収益の提供元から直接付帯収益を取得してもよく、債権管理装置100は、付帯収益の収受状況を管理してもよい。なお、本発明による債権管理装置100はこれに限定されず、債権管理装置100の一部又は全ての機能は、例えば、貸付金融機関、仲介機関などの他の主体によって運営されるサーバ等によって実現されてもよい。
【0023】
ここで、債権管理装置100は、サーバによって実現され、例えば、図3に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、債権管理装置100は、バスBを介し相互接続されるドライブ装置101、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU(Central Processing Unit)104、インタフェース装置105及び通信装置106を有する。
【0024】
債権管理装置100における後述される各種機能及び処理を実現するプログラムを含む各種コンピュータプログラムは、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory)などの記録媒体107によって提供されてもよい。プログラムを記憶した記録媒体107がドライブ装置101にセットされると、プログラムが記録媒体107からドライブ装置101を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体107により行う必要はなく、ネットワークなどを介し何れかの外部装置からダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータなどを格納する。メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムやデータを読み出して格納する。プロセッサとして機能するCPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムやプログラムを実行するのに必要なパラメータなどの各種データに従って、後述されるような債権管理装置100の各種機能及び処理を実行する。インタフェース装置105は、ネットワーク又は外部装置に接続するための通信インタフェースとして用いられる。通信装置106は、外部装置と通信するための各種通信処理を実行する。
【0025】
しかしながら、債権管理装置100は、上述したハードウェア構成に限定されるものでなく、他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。
【0026】
また、貸付金融機関サーバ20、提携事業者サーバ30及び保険会社サーバ40もまた、上述したハードウェア構成によって実現されうる。
【0027】
[債権管理装置]
次に、図4及び5を参照して、本発明の一実施例による債権管理装置100を説明する。本実施例では、債権管理装置100は、債権買取金融機関によって運用され、債権買取金融機関が貸付金融機関からローン債権を買い取る際、ローン債権に付帯収益があるか判定し、付帯収益がある場合、付帯収益を含めて買取対象のローン債権を目的債権として管理する。なお、本実施例では、説明の簡単化のため、変動金利ローンを対象とするが、本発明はこれに限定されず、固定金利ローン、固定金利ローンと変動金利ローンとの組み合わせなどであってもよい。また、本実施例では、ローンユーザに対する貸出を実行した貸付金融機関から目的債権が買い取られるが、本開示による目的債権は、これに限定されるものでない。例えば、本開示による目的債権は、当該目的債権を買い取った債権買取金融機関から他の債権買取金融機関に更に売却される目的債権であってもよい。図4は、本発明の一実施例による債権管理装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0028】
図4に示されるように、債権管理装置100は、情報取得部110、情報処理部120及び債権管理部130を有する。
【0029】
情報取得部110は、貸付金融機関サーバ20から目的債権に関する目的債権情報を取得する。例えば、情報取得部110は、貸付金融機関によって貸し出されたローン債権に関する目的債権情報を貸付金融機関サーバ20から通信ネットワークを介し受信する。
【0030】
目的債権情報は、各ローン債権の契約内容などを示し、例えば、図5に示されるように、各ローン債権について、ローン識別情報、貸出条件、及び付帯収益が付属されているか否かを示すフラグを含んでもよい。ローン識別情報は、各ローン債権を識別する識別子(例えば、L001,L002,L003,・・・)である。貸出条件は、典型的には、貸付額、金利(例えば、短期プライムレートなどの基準金利からのスプレッド)、期間などを含みうる。フラグは、当該ローン債権が補填金及び/又は配当金などの付帯収益を有するか否かを示す。なお、本発明による目的債権情報は、図示された情報項目に限定されず、ローン債権の契約内容を示す他の何れか適切な情報項目から構成されてもよい。
【0031】
また、情報取得部110は、付帯収益に関する付帯収益情報を取得する。例えば、情報取得部110は、貸付金融機関によって貸し出されたローン債権に付属して得られる付帯収益に関する付帯収益情報を貸付金融機関サーバ20から通信ネットワークを介し受信する。
【0032】
付帯収益情報は、各ローン債権に付帯して提携事業者から提供される補填金に関する補填金情報、各ローン債権に付帯して保険会社から提供される配当金に関する配当金情報などから構成されてもよい。
【0033】
例えば、補填契約では、ローンユーザがローン契約時に提携事業者から提供される電力サービス、通信サービス等の各種サービスの利用契約を締結し、契約したサービスを利用し続けると、事業者からの補填金によってローンの開始から完済までローン金利が低減される。例えば、貸付金融機関がローンユーザに0.8%の金利で貸出を行いたいとする。このとき、提携電力事業者がローンユーザによる電力サービスの利用によって0.02%の金利分を補填する補填契約をローンユーザと締結した場合、貸付金融機関は、ローンユーザと0.78%の金利のローンを提供し、0.02%の金利分の補填を提携事業者から受け取る。このように補填金がある場合、本実施例では、債権買取金融機関は、0.78%のローン債権を買い取る際、0.78%のローン債権だけでなく、0.02%の金利分の補填金も付帯収益として受け取ることができるようにする。これにより、譲渡対象の目的債権の収益性を向上させることが可能になる。
【0034】
補填金に関する補填金情報は、各補填契約の内容と基礎となるローン債権などを示し、例えば、図6(a)に示されるように、各補填契約について、補填契約識別情報、ローン識別情報及び補填金から構成されてもよい。補填契約識別情報は、各補填契約を識別する識別子(例えば、C001,C002,C003,・・・)である。ローン識別情報は、当該補填契約の基礎となるローン債権を識別する識別子(例えば、L001,L002,L003,・・・)である。補填金は、当該ローン債権の金利の低減分を示す。なお、補填金は、これに限定されず、提携事業会社から提供される補填金額であってもよい。なお、本発明による補填金情報は、図示された情報項目に限定されず、補填契約の内容を示す他の何れか適切な情報項目から構成されてもよい。
【0035】
また、配当金は、ローンユーザが当該ローンに対して団体信用保険などの保険契約に加入している場合、保険会社がローンユーザから受け取った保険料から、死亡等によって実際に支払った保険金、保険会社の経費等を差し引くことによって剰余金が発生すると、保険会社から貸付金融機関に払い戻される分配金である。配当金を目的債権の付帯収益として加えることにより、譲渡対象の目的債権の収益性を向上させることが可能になる。
【0036】
配当金に関する配当金情報は、各配当の内容と基礎となるローン債権などを示し、例えば、図6(b)に示されるように、各配当について、配当識別情報、ローン識別情報及び配当金から構成されてもよい。配当識別情報は、各配当を識別する識別子(例えば、D001,D002,D003,・・・)である。ローン識別情報は、当該配当の基礎となるローン債権を識別する識別子(例えば、L001,L002,L003,・・・)である。配当金は、配当金の金額を示す。なお、配当金は、将来時点に確定するものであり、現時点では未確定であるため、支払った保険料に過去のデータから予想される予想分配率を乗算することによって得られる金額又はその現在価値であってもよい。
【0037】
なお、付帯収益情報は、補填金情報及び配当金情報に限定されず、ローン債権に付帯する他の何れかの収益に関する情報を含んでもよい。
【0038】
情報処理部120は、目的債権情報に基づき目的債権に付帯収益が付帯されているか判定する。具体的には、情報処理部120は、情報取得部110が受信した目的債権情報の各ローン債権の付帯収益フラグを参照し、当該ローン債権に付帯収益が付帯されているか判断する。ローン債権に付帯収益が付帯されている場合、情報取得部110は更に、貸付金融機関サーバ20から当該ローン債権の付帯収益に関する付帯収益情報を取得する。しかしながら、本開示はこれに限定されず、例えば、情報取得部110は、貸付金融機関サーバ20を介することなく、提携事業者サーバ30などの付帯収益を提供する事業者のサーバから付帯収益情報を直接取得してもよい。
【0039】
例えば、図5及び6に示された具体例では、ローン識別情報"L001"の付帯収益フラグが"有り"であることを情報処理部120が検出すると、情報取得部110は、貸付金融機関サーバ20からローン識別情報"L001"に対応する補填金情報及び/又は配当金情報を抽出する。図示された具体例では、情報取得部110は、ローン識別情報"L001"に対応して補填契約識別情報"C001"及び配当識別情報"D001"を検出し、これにより、ローン識別情報"L001"に対応する目的債権が、補填金"0.03%"及び配当金"0.01%"の付帯収益を有することがわかる。
【0040】
同様に、付帯収益フラグが"有り"である目的債権を検出すると、情報取得部110は、当該目的債権に対応する補填金情報及び/又は配当金情報を抽出する。他方、付帯収益フラグが"無し"である目的債権を検出すると、それが付帯収益を有さない目的債権であると判定することができる。
【0041】
債権管理部130は、目的債権情報及び付帯収益情報に基づき、目的債権の価額などの金銭価値を算定する。具体的には、債権管理部130は、目的債権情報における金利に、付帯収益情報における収益を加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値を計算する。
【0042】
例えば、付帯収益として補填金が目的債権に付帯されている場合、債権管理部130は、目的債権情報における金利に補填金情報における補填金を加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値を計算する。例えば、図5に示される目的債権"L004"に対して、債権管理部130は、目的債権情報における金利"+0.30%"に、付帯する補填金契約"C003"の補填金"0.02%"を加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値"+0.32%"を導出する。
【0043】
また、例えば、付帯収益として配当金が目的債権に付帯されている場合、債権管理部130は、目的債権情報における金利に配当金情報における配当金を加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値を計算する。例えば、図5に示される目的債権"L005"に対して、債権管理部130は、目的債権情報における金利"+0.20%"に、付帯する配当"D003"の配当金"0.011%"を加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値"+0.211%"を導出する。
【0044】
また、例えば、付帯収益として補填金及び配当金が目的債権に付帯されている場合、債権管理部130は、目的債権情報における金利に、補填金情報における補填金と配当金情報における配当金とを加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値を計算する。例えば、図5に示される目的債権"L001"に対して、債権管理部130は、目的債権情報における金利"+0.30%"に、付帯する補填契約"C001"の補填金"0.03%と、付帯する配当"D001"の配当金"0.01%"を加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値"+0.34%"を導出する。
【0045】
このようにして、個別の付帯収益付きの目的債権の金銭価値を計算すると、債権管理部130は、1つ以上の付帯収益付きの目的債権を譲渡対象の目的債権群としてとりまとめ、目的債権群全体の金銭価値を算出する。例えば、図5に示される付帯収益付きの目的債権"L001","L002","L004","L005"が譲渡対象として決定された場合、債権管理部130は、目的債権情報における目的債権"L001","L002","L004","L005"の金利"+0.30%","+0.35%","+0.30%","+0.20%"に、補填金情報及び配当金情報における補填金及び/又は配当金を加算し、各目的債権の貸付額及び期間などの貸出条件に基づき適切な重み付けを行って、付帯収益付きの目的債権群の収益、価額などの金銭価値を算出する。
【0046】
このようにして、譲渡対象の目的債権群及びその金銭価値を確定すると、債権管理部130は、確定した譲渡対象の目的債権群及びその金銭価値を債権管理装置100のユーザに通知してもよい。
【0047】
また、債権管理部130は、上述した付帯収益付きの目的債権群の収益及び金銭価値の計算手法に従って、目的債権情報と、補填金情報及び配当金情報等の付帯収益情報とを利用して、付帯収益付きの目的債権の各種組み合わせについて目的債権群の収益、価額などの金銭価値を計算してもよい。そして、債権管理部130は、所定の閾値以上の金銭価値をもたらす目的債権群を決定すると、決定した目的債権群をユーザに通知してもよい。これにより、債権管理装置100は、ユーザが設定した金銭価値を上回る目的債権の組み合わせを自動的に決定することができ、買取債権金融機関は、貸付金融機関から取得した目的債権情報及び付帯収益情報に基づき、設定した金銭価値を上回る目的債権群を決定することができる。買取債権金融機関は、決定した目的債権群を譲渡対象債権として貸付金融機関に提示し、貸付金融機関から目的債権群を譲受することが可能になる。
【0048】
なお、上述した実施例では、付帯収益付きの目的債権のみから譲渡対象債権を決定したが、本発明による債権管理装置100は、これに限定されず、付帯収益のない目的債権を譲渡対象の目的債権群に含めてもよい。例えば、付帯収益付きの目的債権の収益より高い金利で貸し出された付帯収益なしの目的債権が存在する可能性があり、これを譲渡対象の目的債権群に含めてもよい。
【0049】
また、上述した実施例では、付帯収益はプラスの収益であったが、本発明はこれに限定されず、マイナスの収益、すなわち、付帯損失であってもよい。この場合、付帯収益付きの目的債権の収益は、付帯損失を差し引いて計算されうる。
【0050】
また、上述した実施例では、付帯収益フラグは有無のみを示したが、本発明はこれに限定されず、補填金、配当金などの付帯収益種別を示すものであってもよい。
【0051】
[譲渡債権決定処理]
次に、図7を参照して、本発明の一実施例による譲渡債権決定処理を説明する。当該処理は、例えば、上述した債権管理装置100によって実現されてもよく、特に、債権管理装置100のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することによって実現されてもよい。図7は、本発明の一実施例による譲渡債権決定処理を示すフローチャートである。
【0052】
図7に示されるように、ステップS101において、債権管理装置100は、処理対象の目的債権の目的債権情報を取得する。具体的には、債権管理装置100は、貸付金融機関サーバ20からローン債権に関する目的債権情報を受信する。例えば、目的債権情報は、図5に示されるようなローン識別情報、貸出条件及び付帯収益フラグを含むものであってもよい。
【0053】
ステップS102において、債権管理装置100は、目的債権に付帯収益が付帯されているか判定するため、目的債権情報における付帯収益フラグの有無を判定する。例えば、債権管理装置100は、目的債権情報における当該目的債権の付帯収益フラグが「有り」又は「無し」であるか確認する。
【0054】
付帯収益フラグが「有り」である場合(S102:YES)、ステップS103において、債権管理装置100は、当該目的債権の付帯収益情報を取得する。具体的には、債権管理装置100は、貸付金融機関サーバ20から、補填金情報、配当金情報などの付帯収益に関する付帯収益情報を受信し、目的債権に対応する付帯収益情報を抽出する。他方、付帯収益フラグが「無し」である場合、当該フローは、当該目的債権の付帯収益情報を取得することなく、ステップS104に移行する。
【0055】
ステップS104において、債権管理装置100は、当該目的債権の収益、価額などの金銭価値を算定する。具体的には、目的債権が補填金、配当金等の付帯収益を有する場合、債権管理装置100は、目的債権情報における金利に、補填金情報における補填金、配当金情報における配当金等を加算し、付帯収益付きの目的債権の金銭価値を算出する。一方、目的債権が付帯収益を有さない場合、債権管理装置100は、目的債権情報における金利に基づき目的債権の金銭価値を決定する。なお、目的債権の金銭価値を示す指標は収益又は価額に限定されず、目的債権の金銭価値を示す他の何れか適切な指標が利用されてもよい。
【0056】
ステップS105において、債権管理装置100は、算定した収益又は価額が所定の閾値以上であるか判定する。当該閾値は、例えば、債権管理装置100のユーザによって設定され、譲渡対象の目的債権群に対してユーザが要求する収益の下限であってもよい。
【0057】
当該目的債権の収益又は価額が閾値以上である場合(S106:YES)、ステップS106において、債権管理装置100は、当該目的債権を譲渡対象の目的債権群に組み入れる。すなわち、当該目的債権の収益はユーザによって要求された収益以上であるため、譲渡対象として適格であり、譲渡対象の目的債権群に組み入れられる。他方、当該目的債権の収益又は価額が閾値未満である場合(S106:NO)、当該フローは、当該目的債権を譲渡対象目的債権群に含めることなく、ステップS107に移行する。
【0058】
ステップS107において、債権管理装置100は、終了条件を充足したか判定する。例えば、貸付金融機関サーバ20が保持する全ての目的債権の目的債権情報に対して上述した処理を実行したか判定してもよい。あるいは、債権買取金融機関による買取条件(例えば、譲渡対象の目的債権群の全債権の金銭価値が閾値金額に到達したか、譲渡対象の目的債権群の金銭価値が閾値を上回ったかなど)を充足したか判定してもよい。
【0059】
終了条件を充足した場合(S107:YES)、債権管理装置100は、当該譲渡債権決定処理を終了する。他方、終了条件を充足していない場合(S107:NO)、債権管理装置100は、次の目的債権に対して上述したステップを繰り返す。
【0060】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 債権譲渡システム
20 貸付金融機関サーバ
30 提携事業者サーバ
40 保険会社サーバ
100 債権管理装置
110 情報取得部
120 情報処理部
130 債権管理部
【要約】
【課題】譲渡債権の収益性を向上させるための技術を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様は、第1事業者の第1サーバから目的債権に関する目的債権情報を取得する情報取得部と、前記目的債権情報に基づき前記目的債権に付帯収益が付帯されているか判定する情報処理部と、を有し、前記目的債権に付帯収益が付帯されていると判定されると、前記情報取得部は、前記目的債権の付帯収益に関する付帯収益情報を取得する債権管理装置に関する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7