特許第6852238号(P6852238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852238
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】エーテル組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/01 20060101AFI20210322BHJP
   C07C 43/11 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C07C41/01
   C07C43/11
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-136804(P2017-136804)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2019-19064(P2019-19064A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年5月10日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】397019151
【氏名又は名称】日本特殊化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 祐史
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 スウェーデン国特許発明第00352337(SE,C2)
【文献】 特開昭55−108840(JP,A)
【文献】 特開昭55−100343(JP,A)
【文献】 特開2002−207289(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/091960(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/087811(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/117522(WO,A1)
【文献】 特開2006−082253(JP,A)
【文献】 Monatshefte fuer Chemie,2011年,142(12),p.1241-1247
【文献】 STN(online),2008.06.06(検索日2020.04.23)CAS登録番号 1026059-64-2
【文献】 STN(online),1984.11.16(検索日2020.04.23)CAS登録番号 41890-72-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/00
C07C 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキレングリコールを、4級アンモニウム化合物の存在下、ハロゲン化アルキルと反応させる工程を少なくとも行うことにより、
下記式:
【化1】
で表されるジプロピレングリコールジプロピルエーテル、又は
下記式:
【化2】
で表されるジプロピレングリコールジブチルエーテルを、
98質量%以上の純度で含有する、エーテル組成物を得る、
エーテル組成物の製造方法
【請求項2】
前記ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、又は前記ジプロピレングリコールジブチルエーテルの、水への溶解度が0.2質量%以下である、請求項1に記載のエーテル組成物の製造方法
【請求項3】
前記工程は、前記ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル又は前記ジアルキレングリコールを、前記4級アンモニウム化合物、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの存在下で、溶媒を用いずに、前記ハロゲン化アルキルと反応させる工程である、
請求項1又は2に記載のエーテル組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のジアルキレングリコールジアルキルエーテルを高純度で含有するエーテル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエチレングリコールジメチルエーテルや、ジエチレングリコールジエチルエーテルに代表される、ジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、高い沸点を有する有機溶媒であり、各種の化学反応を行う際の反応溶媒として用いられている。一般に、ジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、水や、各種の有機溶媒との混和性に優れることが知られており、このような各種の溶媒との高い親和性を一つの利点として、反応溶媒として広く用いられるに至っている。
【0003】
ジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、Williamson法により合成できることが知られている。このWilliamson法は、アルコキシドによるハロゲン化アルキルの求核置換反応(S2)であり、エーテル一般の合成に広く用いられているが、求核置換反応であるがために、嵩高いアルコキシドや、嵩高いハロゲン化アルキルを用いた場合には、目的の生成物のみが必ずしも生成せず、副生成物が生成し易くなることが知られている。このような場合、目的の生成物と、副生成物は、沸点や他の溶媒への溶解度等の物理的特性が似通っている場合が多いため、目的の生成物を容易に分離・精製することができず、結果として、目的の生成物を高純度で得ることができなくなることがあった。
【0004】
このような嵩高いアルコキシドや、嵩高いハロゲン化アルキルから生成されるものとされるジアルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、ジプロピレングリコールジプロピルエーテルが挙げられる。例えば、特許文献1には、金型の洗浄薬液が開示されているが、この洗浄薬液に用いられる溶剤として多数列挙された有機化合物の一つに、ジプロピレングリコールジプロピルエーテルが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−082253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル等の、嵩高いアルコキシドや、嵩高いハロゲン化アルキルから合成されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルを、実際に調製したことを示す実施例は一切開示されておらず、特許文献1には、高純度のジプロピレングリコールジプロピルエーテルの入手元や製造方法等も一切開示されていない。これらの化合物は、単純な化学構造を有しながらも、現時点に至るまで、単離・精製されるに至ってはいないものと考えられる。
【0007】
したがって、本発明は、嵩高いアルコキシドや、嵩高いハロゲン化アルキルから合成されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルを含むエーテル組成物であって、このジアルキレングリコールジアルキルエーテルを高純度で含むエーテル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、Williamson法を使用し、生成した生成物の分離方法を選択することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、下記一般式(1)で表される化合物の中から選ばれる、1種のジアルキレングリコールジアルキルエーテルを、97質量%以上の純度で含有する、エーテル組成物である。
【化1】
[式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の、プロピル基又はブチル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の、プロピレン鎖である。]
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のエーテル組成物であって、R及びRが、それぞれ独立に、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、又はtert−ブチル基であり、R及びRが、それぞれ独立に、n−プロピレン鎖、又は2−プロピレン鎖であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のエーテル組成物であって、R及びRが、共にn−プロピル基又はn−ブチル基であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のエーテル組成物であって、R及びRが、共にn−プロピル基であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のエーテル組成物であって、一般式(1)で表される化合物の、水への溶解度が0.2質量%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、Williamson法を使用し、生成した生成物の分離方法を選択することにより、従来、高純度で精製することが困難であった、嵩高いアルコキシドや、嵩高いハロゲン化アルキルから合成されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルを高純度で提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ジプロピレングリコールジプロピルエーテル(DPGDPE)のH−NMRスペクトルである。
図2】ジプロピレングリコールジブチルエーテル(DPGDBE)のH−NMRスペクトルである。
図3】DPGDBEの13C−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0017】
<エーテル組成物>
[ジアルキレングリコールジアルキルエーテル]
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物の中から選ばれる、1種のジアルキレングリコールジアルキルエーテルを、97質量%以上の純度で含有するエーテル組成物である。
【化2】
[式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の、プロピル基又はブチル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の、プロピレン鎖である。]
【0018】
ここで、R及びRとして挙げられる、直鎖又は分岐鎖のプロピル基又はブチル基としては、炭素数3又は4の飽和アルキル基を挙げることができ、より具体的には、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、又はtert−ブチル基等を挙げることができる。これらの中でも、原料入手の容易性や合成の容易性の観点等から、n−プロピル基又はn―ブチル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。また、R及びRとして挙げられる、直鎖又は分岐鎖の、プロピレン鎖としては、n−プロピレン鎖、及び2−プロピレン鎖を挙げることができる。
【0019】
一般式(1)に属する具体的な化合物としては、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルブチルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも、特に、ジプロピレングリコールジプロピルエーテルが好ましい。
【0020】
[ジアルキレングリコールジアルキルエーテルの物性]
(水への溶解度、水の溶解度)
一般に、ジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、極性基を有しているために、水への溶解度や、水の溶解度が高い傾向にある。しかしながら、本発明の発明者らは、上記一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルの水への溶解度や、このジアルキレングリコールジアルキルエーテルの水の溶解度が、驚くほど低いことを世界で初めて見出した。特に、上記一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルの、水への溶解度は、0.2質量%以下であり、水の上記一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルへの溶解度は、0.5質量%以下である。このため、上記一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、従来公知の、一般的なジアルキレングリコールジアルキルエーテルとは異なり、水と混和せず、自ら容易に分離する性質を有する。
【0021】
(沸点)
上記一般式(1)のジアルキレングリコールジアルキルエーテルの沸点は、220℃から290℃程度である。一方、従来公知の、一般的なジアルキレングリコールジアルキルエーテルの沸点は、80℃から190℃程度となることが多い。このように、上記一般式(1)のジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、従来公知の、一般的なジアルキレングリコールジアルキルエーテルよりも高い沸点を有する傾向にあるので、一般的なジアルキレングリコールジアルキルエーテルに比べて揮発性も低く、取扱性がより容易となる。
【0022】
[ジアルキレングリコールジアルキルエーテルの製造方法]
本発明の、上記一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、例えば、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルや、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等、一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルに対応するジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、及びジプロピレングリコール等、一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルに対応するジアルキレングリコールをエーテル化することにより、合成する。ここで、ジアルキレングリコールジアルキルエーテルの合成法は、一般に、Williamson法として、広く知られている合成法を採用することができる。一般式(1)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルは、それに対応するジアルキレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキレングリコールを、無溶媒又は水溶媒中、好ましくは無溶媒で、塩基及び触媒としての4級アンモニウム化合物の存在下、ハロゲン化プロピルや、ハロゲン化ブチル等の、対応するハロゲン化アルキルと反応させ、水等で洗浄・分離することにより得ることができる。ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキレングリコールのエーテル化には、Williamson法に使用できる触媒を非限定的に使用することができる。
【0023】
(触媒)
Williamson法において用いられる触媒としては、一般的な相間移動触媒を挙げることができ、より具体的には、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物、ピリジニウム塩、クラウンエーテル等を使用することができる。より具体的には、4級アンモニウム化合物として、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、トリブチルメチルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルオクチルアンモニウムクロリド、メチルトリヘキシルアンモニウムクロリド、べンジルジメチルオクタデカニルアンモニウムクロリド、メチルトリデカニルアンモニウムクロリド、ベンジルトリプロピルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、フェニルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリブチルアンモニウムブロミド;4級ホスホニウム化合物として、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、セチルトリブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド;ピリジニウム塩として、1−ドデカニルピリジニウムクロリド;クラウンエーテルとして、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8等を挙げることができる。これらの中でも4級アンモニウム化合物を用いることが好ましい。
【0024】
(ハロゲン化アルキル)
ハロゲン化アルキルについては、導入することが予測されるアルキル基に、ハロゲン原子が結合した化合物を用いることができる。このような化合物については、一般に入手可能であるが、ハロゲン原子が、塩素又は臭素であるハロゲン化アルキルが、反応性や入手容易性の点等から好ましい。ここで、ハロゲン化アルキルの使用量は、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル1当量に対して、1当量から10当量使用することが好ましく、ジアルキレングリコール1当量に対して2当量から20当量使用することが好ましい。
【0025】
[純度]
本発明のエーテル組成物は、上記一般式(1)で表される化合物の中から選ばれる、1種のジアルキレングリコールジアルキルエーテルを、97質量%以上の純度で含有し、98質量%以上の純度で含有することが好ましく、99質量%以上の純度で含有することが更に好ましい。従来、上記一般式(1)で表される化合物については、高純度で生成させることが難しかったため、この化合物を単離した例はこれまで知られていない。本発明は、予想外にも、上記一般式(1)で表される化合物を97質量%以上の純度で生成したものであり、このような点において、当業者の予測を超えた顕著な効果を有するものである。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
<実施例1;ジプロピレングリコールジプロピルエーテル(DPGDPE)の合成1>
四つ口フラスコに(1)ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、(2)n−プロピルクロライド、(3)水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの混合物、(4)テトラブチルアンモニウムブロマイドを、1.0:2.0:12:0.05のモル比で混合し、55℃から65℃で4時間加熱・攪拌した。その後、水及び塩酸で洗浄し、粗DPGDPEを得た。これを蒸留により精製し、目的のDPGDPEを99.0質量%の純度で得た。反応収率は70%であった。
【0028】
得られたDPGDPEについて、H−NMRスペクトルを測定して解析した結果を図1に示す。図1に示されるように、H−NMRスペクトルを測定した結果、ジプロピレングリコールジプロピルエーテルの化学構造に対応したH−NMRスペクトルが観察された。各ピークの面積比についても、ジプロピレングリコールジプロピルエーテルが有する水素原子の数に対応したものであった。
【0029】
<実施例2;ジプロピレングリコールジプロピルエーテル(DPGDPE)の合成2>
実施例1において、テトラブチルアンモニウムブロマイドを、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル 1.0モルに対して、0.08モル比で用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。この結果、目的のDPGDPEを99.0質量%の純度で得た。反応収率は75%であった。
【0030】
<実施例3;ジプロピレングリコールジプロピルエーテル(DPGDPE)の合成3>
実施例1において、テトラブチルアンモニウムブロマイドに変えてテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩を、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル 1.0モルに対して、0.08モル比で用いた点以外は、実施例1と同様に反応を行った。この結果、目的のDPGDPEを98.0質量%の純度で得た。反応収率は65%であった。
【0031】
<実施例4;ジプロピレングリコールジプロピルエーテル(DPGDPE)の合成4>
実施例1において、テトラブチルアンモニウムブロマイドに変えてテトラブチルアンモニウムアセタートを、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル 1.0モルに対して、0.08モル比で用いた点以外は、実施例1と同様に反応を行った。この結果、目的のDPGDPEを98.0質量%の純度で得た。反応収率は60%であった。
【0032】
<実施例5;ジプロピレングリコールジプロピルエーテル(DPGDPE)の合成5>
四つ口フラスコに(1)ジプロピレングリコール、(2)n−プロピルクロライド、(3)水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの混合物、(4)テトラブチルアンモニウムブロマイドを、1.0:5.0:5.0:0.07のモル比で混合し、55℃から65℃で10時間加熱・攪拌した。その後、水及び塩酸で洗浄し、粗DPGDPEを得た。これを蒸留により精製し、目的のDPGDPEを98.0質量%の純度で得た。反応収率は70%であった。
【0033】
<実施例6;ジプロピレングリコールジブチルエーテル(DPGDBE)の合成1>
四つ口フラスコに(1)ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、(2)n−ブチルクロライド、(3)水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの混合物、(4)テトラブチルアンモニウムブロマイドを、1.0:3.0:5.0:0.06のモル比で混合し、120℃から160℃で10時間加熱・攪拌した。その後、水及び塩酸で洗浄し、粗DPGDBEを得た。これを蒸留により精製し、目的のDPGDBEを99.0質量%の純度で得た。反応収率は70%であった。
【0034】
<実施例7;ジプロピレングリコールジブチルエーテル(DPGDBE)の合成2>
四つ口フラスコに(1)ジプロピレングリコール、(2)n−ブチルクロライド、(3)水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの混合物、(4)テトラブチルアンモニウムブロマイドを、1.0:6.0:6.0:0.08のモル比で混合し、120℃から160℃で20時間加熱・攪拌した。その後,水及び塩酸で洗浄し、粗DPGDBEを得た。これを蒸留により精製し、目的のDPGDBEを99.0質量%の純度で得た。反応収率は70%であった。
【0035】
得られたDPGDBEをCDCl溶媒に溶解し、H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを測定して解析した結果を図2及び図3に示す。図2及び図3に示されるように、H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを測定した結果、ジプロピレングリコールジブチルエーテルの化学構造に対応したH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルが観察された。H−NMRスペクトルの各ピークの面積比についても、ジプロピレングリコールジプロピルエーテルが有する水素原子の数に対応したものであった。
【0036】
<物性の解析;溶解度、沸点>
実施例で合成されたDPGDPE及びDPGDBEも含め、各種のジアルキレングリコールジアルキルエーテルの水への溶解度、水の溶解度、沸点等を比較検討した。
【表1】
【0037】
表1より明らかなように、従来公知のジアルキレングリコールジアルキルエーテルに比較して、製造例1及び2で合成されたDPGDPEやDPGDBEは、水への溶解度、水の溶解度が低く、沸点が高いことが分かる。
図1
図2
図3