特許第6852258号(P6852258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6852258切削インサートおよび刃先交換式切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852258
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】切削インサートおよび刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20210322BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B23C5/20
   B23C5/10 D
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-235850(P2015-235850)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-100249(P2017-100249A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 純
(72)【発明者】
【氏名】石森 茂
(72)【発明者】
【氏名】山崎 喜市
(72)【発明者】
【氏名】萩原 隆行
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/114094(WO,A1)
【文献】 特開2015−077647(JP,A)
【文献】 特開2013−091153(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0013661(US,A1)
【文献】 特開平11−254207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20
B23C 5/10
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに背を向けた2つの四角形面と、これらの四角形面の周囲に配置される4つの側面とを備えたインサート本体を有し、
上記四角形面の1つの対角線上に位置する2つの一方のコーナ部にはコーナ刃が形成されるとともに、上記コーナ部に連なる上記四角形面の2つずつの辺稜部には主切刃と副切刃とがそれぞれ形成され、
上記四角形面には、上記コーナ刃に連なる第1コーナすくい面と、上記主切刃に連なる第1主すくい面と、上記副切刃に連なる第1副すくい面とが形成され、
上記第1コーナすくい面と、上記第1主すくい面および上記第1副すくい面の上記第1コーナすくい面に連なる部分とは、上記1つの対角線方向に上記四角形面の内側に向かうに従い反対の四角形面側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置されているとともに、
上記副切刃は、上記コーナ刃に連なる直線状の第1副切刃と、この第1副切刃の上記コーナ刃とは反対側に連なる第2副切刃とを備え、これら第1、第2副切刃が上記四角形面に対向する方向から見たときに鈍角に交差しており、
上記第2副切刃は、上記四角形面の他方のコーナ部側で上記一方のコーナ部から延びる上記主切刃に連なっており、
上記すくい面には、上記第1コーナすくい面、上記第1主すくい面、上記第1副すくい面の内周側に連なり、これら第1コーナすくい面、第1主すくい面、第1副すくい面よりも急角度で上記四角形面の内周側に向かうに従い反対の四角形面側に向けて傾斜する第2コーナすくい面、第2主すくい面、第2副すくい面が形成され、
上記第1コーナすくい面、上記第1主すくい面、上記第1副すくい面と、上記第2コーナすくい面、上記第2主すくい面、上記第2副すくい面との交差稜線は、上記四角形面に対向する方向から見て上記一方のコーナ部側において凸曲線状をなしているとともに、この凸曲線状をなす上記交差稜線の半径は、上記四角形面に対向する方向から見たときの上記コーナ刃の半径よりも大きくされていることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
互いに背を向けた2つの四角形面と、これらの四角形面の周囲に配置される4つの側面とを備えたインサート本体を有し、
上記四角形面の1つの対角線上に位置する2つの一方のコーナ部にはコーナ刃が形成されるとともに、上記コーナ部に連なる上記四角形面の2つずつの辺稜部には主切刃と副切刃とがそれぞれ形成され、
上記四角形面には、上記コーナ刃に連なる第1コーナすくい面と、上記主切刃に連なる第1主すくい面と、上記副切刃に連なる第1副すくい面とが形成され、
上記第1コーナすくい面と、上記第1主すくい面および上記第1副すくい面の上記第1コーナすくい面に連なる部分とは、上記1つの対角線方向に上記四角形面の内側に向かうに従い反対の四角形面側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置されているとともに、
上記副切刃は、上記コーナ刃に連なる直線状の第1副切刃と、この第1副切刃の上記コーナ刃とは反対側に連なる第2副切刃とを備え、これら第1、第2副切刃が上記四角形面に対向する方向から見たときに鈍角に交差しており、
上記第2副切刃は、上記四角形面の他方のコーナ部側で上記一方のコーナ部から延びる上記主切刃に連なっており、
上記インサート本体は、上記2つの四角形面の間の間隔が、該四角形面の辺稜部のうち上記副切刃が形成された辺稜部の長さよりも大きい縦刃式のインサート本体であることを特徴とする切削インサート。
【請求項3】
軸線回りに回転される工具本体の先端部外周にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に請求項1または請求項2に記載の切削インサートが、1つの上記四角形面を工具回転方向に向けて、この1つの四角形面の1つの上記コーナ部に形成された上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に突出させるとともに、このコーナ刃に連なる上記主切刃を上記工具本体の外周側に突出させ、該コーナ刃に連なる上記副切刃を上記工具本体の先端側に突出させて着脱可能に取り付けられていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先交換式切削工具の工具本体に形成されたインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサート、および該切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような切削インサートに焼結させられる切削インサート未焼結体として、例えば特許文献1には、主側面と上部および下部の端面との交差部によって形成される2つの主縁部、副側面と上部および下部の端面との交差部によって形成される2つの副縁部、およびコーナ面と上部および下部の端面の各々との交差部によって形成される4つのコーナ縁部を備えたものが記載されている。このような切削インサート未焼結体は、ダイとパンチを備えたツールセット(プレス成形金型)によって焼結性粉末を締め固めすることにより成形され、上記主縁部には主切刃が、副縁部には副切刃が、コーナ縁部にはコーナ刃が形成された両面仕立ての切削インサートに焼結させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−528306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような切削インサートを、軸線回りに回転される工具本体の先端部外周に形成されたインサート取付座に取り付け、被削材に肩削り加工を行って凹部を形成する場合には、上記主切刃によって凹部の壁面が形成されるとともに、上記副切刃によって凹部の底面が形成され、そして上記コーナ刃によってこれらの壁面と底面とが交差する隅角部が形成されることになる。ところが、このうち隅角部については様々な半径のものを形成することが要求されることがある。
【0005】
このような要求に対応するには、隅角部の半径に応じた様々な半径のコーナ刃を有する複数種の切削インサートを用意しなければならないが、これら複数種の切削インサートに結させられる切削インサート未焼結体ごとに専用のプレス成形金型を用意するのは非効率的かつ非経済的である。そこで、そのような場合には、コーナ刃の半径が最も小さい切削インサート用のプレス成形金型を用意しておき、このプレス成形金型によって成形した切削インサート未焼結体を焼結した後、逃げ角を維持したままコーナ刃や主切刃、副切刃に連なる逃げ面を研磨することにより、所望の半径のコーナ刃を有する複数種の切削インサートを製造することが行われる。
【0006】
しかしながら、このようにして複数種の切削インサートを製造する場合において、コーナ刃や主切刃、副切刃に連なるすくい面が凹曲面状であったり、逆に凸曲面状であったりすると、コーナ逃げ面を研磨したときに研磨量によってこれらの切刃のすくい角や刃物角が変化してしまうおそれがある。そして、このように切刃のすくい角や刃物角が変化すると切削性能にも相違が生じてしまうため、コーナ刃の半径ごとに異なる切削条件で加工を行わなければならなくなったり、切削インサートの寿命も異なるものとなるため管理が煩雑となったりすることになる。また、特に主切刃と副切刃に連なるすくい面がコーナ刃に連なるすくい面を介してV字状に凹曲していると、これらの切刃によって生成された切屑が干渉して切屑排出性が損なわれるおそれもある。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のように逃げ面を研磨してコーナ刃の半径の異なる複数種の切削インサートを製造する場合でも、これらの切削インサートの間で切削性能が変化するのは抑制することが可能で、切屑排出性にも優れた切削インサート、およびこのような切削インサートを着脱可能に取り付けた刃先交換式切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の切削インサートは、互いに背を向けた2つの四角形面と、これらの四角形面の周囲に配置される4つの側面とを備えたインサート本体を有し、上記四角形面の1つの対角線上に位置する2つの一方のコーナ部にはコーナ刃が形成されるとともに、上記コーナ部に連なる上記四角形面の2つずつの辺稜部には主切刃と副切刃とがそれぞれ形成され、上記四角形面には、上記コーナ刃に連なる第1コーナすくい面と、上記主切刃に連なる第1主すくい面と、上記副切刃に連なる第1副すくい面とが形成され、上記第1コーナすくい面と、上記第1主すくい面および上記第1副すくい面の上記第1コーナすくい面に連なる部分とは、上記1つの対角線方向に上記四角形面の内側に向かうに従い反対の四角形面側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置されているとともに、上記副切刃は、上記コーナ刃に連なる直線状の第1副切刃と、この第1副切刃の上記コーナ刃とは反対側に連なる第2副切刃とを備え、これら第1、第2副切刃が上記四角形面に対向する方向から見たときに鈍角に交差しており、上記第2副切刃は、上記四角形面の他方のコーナ部側で上記一方のコーナ部から延びる上記主切刃に連なっており、上記すくい面には、上記第1コーナすくい面、上記第1主すくい面、上記第1副すくい面の内周側に連なり、これら第1コーナすくい面、第1主すくい面、第1副すくい面よりも急角度で上記四角形面の内周側に向かうに従い反対の四角形面側に向けて傾斜する第2コーナすくい面、第2主すくい面、第2副すくい面が形成され、上記第1コーナすくい面、上記第1主すくい面、上記第1副すくい面と、上記第2コーナすくい面、上記第2主すくい面、上記第2副すくい面との交差稜線は、上記四角形面に対向する方向から見て上記一方のコーナ部側において凸曲線状をなしているとともに、この凸曲線状をなす上記交差稜線の半径は、上記四角形面に対向する方向から見たときの上記コーナ刃の半径よりも大きくされていることを特徴とする。
また本発明の切削インサートは、互いに背を向けた2つの四角形面と、これらの四角形面の周囲に配置される4つの側面とを備えたインサート本体を有し、上記四角形面の1つの対角線上に位置する2つの一方のコーナ部にはコーナ刃が形成されるとともに、上記コーナ部に連なる上記四角形面の2つずつの辺稜部には主切刃と副切刃とがそれぞれ形成され、上記四角形面には、上記コーナ刃に連なる第1コーナすくい面と、上記主切刃に連なる第1主すくい面と、上記副切刃に連なる第1副すくい面とが形成され、上記第1コーナすくい面と、上記第1主すくい面および上記第1副すくい面の上記第1コーナすくい面に連なる部分とは、上記1つの対角線方向に上記四角形面の内側に向かうに従い反対の四角形面側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置されているとともに、上記副切刃は、上記コーナ刃に連なる直線状の第1副切刃と、この第1副切刃の上記コーナ刃とは反対側に連なる第2副切刃とを備え、これら第1、第2副切刃が上記四角形面に対向する方向から見たときに鈍角に交差しており、上記第2副切刃は、上記四角形面の他方のコーナ部側で上記一方のコーナ部から延びる上記主切刃に連なっており、上記インサート本体は、上記2つの四角形面の間の間隔が、該四角形面の辺稜部のうち上記副切刃が形成された辺稜部の長さよりも大きい縦刃式のインサート本体であることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の刃先交換式切削工具は、軸線回りに回転される工具本体の先端部外周にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に上記構成の切削インサートが、1つの上記四角形面を工具回転方向に向けて、この1つの四角形面の1つの上記コーナ部に形成された上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に突出させるとともに、このコーナ刃に連なる上記主切刃を上記工具本体の外周側に突出させ、該コーナ刃に連なる上記副切刃を上記工具本体の先端側に突出させて着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成の切削インサートでは、コーナ刃に連なる第1コーナすくい面と、主切刃に連なる第1主すくい面および副切刃に連なる第1副すくい面第1コーナすくい面に連なる部分とが、インサート本体の上記四角形面の1つの対角線方向において該四角形面の内側に向かうに従いこの四角形面とは反対の四角形面側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置されているので、上述のように逃げ角を維持したままコーナ刃や主切刃、副切刃の逃げ面を研磨した場合には、これらコーナ刃や主切刃、副切刃のすくい角や刃物角が変化することはない。
【0011】
このため、切削性能がコーナ刃の半径によって変化するのも抑えることができ、半径ごとに加工条件を変更する必要がなくなるとともに、切削インサートの管理が煩雑となるのも防ぐことができる。また、第1主すくい面および第1副すくい面第1コーナすくい面に連なる部分が同一傾斜平面上にあるので、主切刃と副切刃のコーナ刃に連なる部分で生成された切屑は干渉することはなく、切屑排出性の向上を図ることもできる。
【0012】
また、本発明では、上述のような刃先交換式切削工具において、工具本体を軸線回りに回転しながら軸線に交差する横方向に送り出しつつ僅かに軸線方向にも送り出して、いわゆるランピング加工を行う場合のために、上記副切刃に、上記コーナ刃に連なる直線状の第1副切刃と、この第1副切刃の上記コーナ刃とは反対側に連なる第2副切刃とを備えてこれら第1、第2副切刃は上記四角形面に対向する方向から見たときに鈍角に交差している
【0013】
すなわち、このような第2副切刃を形成した場合、第1、第2副切刃の逃げ面が同一面であると、第2副切刃に逃げ角を与えるときに第1副切刃や主切刃のすくい角が小さくなって切れ味が損なわれたり、第1副切刃のコーナ刃とは反対側で加工面に毟れが生じ易くなったりするおそれがある。ところが、第1、第2副切刃を上記四角形面に対向する方向から見たときに鈍角に交差するように形成することにより、これら第1、第2副切刃に連なる逃げ面も鈍角に交差することになるので、第2副切刃およびその逃げ面を第1副切刃によって形成された加工面から離すことができ、その分第1副切刃や主切刃のすくい角を大きく設定することができて、切れ味を確保して切削抵抗を低減するとともに毟れの発生も防止することができる。
【0014】
また、上述のような傾斜平面上に位置する第1主すくい面、第1副すくい面、および第1コーナすくい面を、1つのインサート本体の2つの四角形面の各2つのコーナ部に、互いに反対側の四角形面側に向かって傾斜するように形成するにあたり、本発明では、インサート本体の強度を確保するために、このインサート本体は、上記2つの四角形面の間の間隔が、該四角形面の辺稜部のうち上記副切刃が形成された辺稜部の長さよりも大きい縦刃式のインサート本体である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、コーナ刃の半径の異なる切削インサートを研磨により製造しても切削性能が変化するのを抑制することができて、加工条件の変更を要したり、インサート寿命管理の煩雑化を招いたりすることがなく、また切屑の干渉を防いで優れた切屑排出性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の切削インサートの一実施形態を示す第1の斜視図である。
図2図1に示す実施形態の第2の斜視図である。
図3図1に示す実施形態の第3の斜視図である。
図4図1に示す実施形態の第4の斜視図である。
図5図1に示す実施形態を四角形面に対向する方向から見た正面図である。
図6図1に示す実施形態を第1の側面に対向する方向から見た側面図である。
図7図1に示す実施形態を第2の側面に対向する方向から見た平面図である。
図8図1に示す実施形態の切削インサートを取り付けた本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態の先端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし図7は、本発明の切削インサートの一実施形態を示すものであり、図8は、この実施形態の切削インサートを着脱可能に取り付けた本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態を示すものである。本実施形態の切削インサートのインサート本体1は、超硬合金等の硬質材料により四角形板状に形成されている。このようなインサート本体1は、特許文献1に記載されているのと同様に、超硬合金等の原料粉末をプレス成形金型によって圧粉成形した成形体を焼結することによって製造される。
【0018】
インサート本体1は、互いに背を向けた2つの四角形面2と、これらの四角形面2の周囲に配置されるそれぞれ2つずつの第1の側面3と第2の側面4とを備えている。このうち第1の側面3の中央にはインサート本体1を貫通する取付孔5が形成されており、インサート本体1は、この取付孔5の中心線に関して180°回転対称形状、すなわち2つの四角形面2に関して表裏反転対称形状であるとともに、2つずつの第1、第2の側面3、4に関しても表裏反転対称形状である。
【0019】
そして、上記四角形面2の1つの対角線上に位置する2つの一方のコーナ部Cにはコーナ刃6が形成されるとともに、このコーナ部Cに連なる四角形面2の2つずつの辺稜部には主切刃7と副切刃8とがそれぞれ形成されている。本実施形態では、第1の側面3と交差する四角形面2の辺稜部に主切刃7が形成され、第2の側面4と交差する四角形面2の辺稜部に副切刃8が形成されている。ここで、本実施形態のインサート本体1は、2つの四角形面2の間の間隔が、この四角形面2の辺稜部のうち上記副切刃8が形成された辺稜部の長さよりも大きい、いわゆる縦刃式切削インサートのインサート本体1である。
【0020】
四角形面2に対向する方向から見て、コーナ刃6は1/4凸円弧等の凸曲線状であり、主切刃7は直線状あるいは半径が極めて大きな凸円弧等の曲線状であって、コーナ刃6に接するように連なっている。また、同じく四角形面2に対向する方向から見て、副切刃8は、コーナ刃6に接するように連なる直線状の第1副切刃8aと、コーナ刃6とは反対側で第1副切刃8aに鈍角に交差する第2副切刃8bとを備えており、主切刃7と第1副切刃8aとはコーナ刃6を介して、略直角あるいは直角よりも僅かに鋭角に交差する方向に延びている。
【0021】
さらに、上記四角形面2には、上記コーナ刃6、主切刃7、副切刃8の内周側に、これらコーナ刃6に連なるコーナすくい面9と、主切刃7に連なる主すくい面10と、副切刃8に連なる副すくい面11とが形成されている。また、これらコーナすくい面9、主すくい面10、副すくい面11のさらに内周側の四角形面2の中央部には、2つの四角形面2の中心を通って上記取付孔5の中心線に直交する直線に垂直な平坦面12が形成されている。
【0022】
コーナすくい面9、主すくい面10、副すくい面11はいずれも、コーナ刃6、主切刃7、副切刃8から離間して四角形面2の内周側に向かうに従い反対の四角形面2側に向けて傾斜する第1コーナすくい面9a、第1主すくい面10a、第1副すくい面11aと、その内周側にさらに連なり、第1コーナすくい面9a、第1主すくい面10a、第1副すくい面11aよりも急角度で四角形面2の内周側に向かうに従い反対の四角形面2側に向けて傾斜して上記平坦面12に連なる第2コーナすくい面9b、第2主すくい面10b、第2副すくい面11bとを備えている。
【0023】
そして、このうち第1コーナすくい面9aと、第1主すくい面10aおよび第1副すくい面11a第1コーナすくい面9aに連なる部分とは、四角形面2の上記1つの対角線方向に該四角形面2の内側に向かうに従い反対の四角形面2側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置されている。本実施形態では、第1コーナすくい面9aおよび第1主すくい面10aの略全体と第1副すくい面11aとが、このような傾斜平面上に配置されている。すなわち、1つのコーナ部Cのコーナ刃6および第1コーナすくい面9aと、このコーナ刃6に連なる主切刃7および第1主すくい面10aと第1副切刃8aおよび第1副すくい面11aとが、この傾斜平面に沿った方向から見たときに図2および図3に示すように一直線状に位置するように形成されている。
【0024】
従って、このように第1コーナすくい面9a、第1主すくい面10a、第1副すくい面11aが上記傾斜平面上に配置されることにより、1つのコーナ部Cに形成されるコーナ刃6とこれに連なる主切刃7および第1副切刃8aとは、図6および図7に示すように、コーナ刃6が四角形面2において最も突出し、主切刃7と第1副切刃8aはコーナ刃6から離間するに従い漸次反対の四角形面2側に向けて傾斜することになり、第1、第2の側面3、4は平行四辺形状を呈することになる。なお、第2副切刃8bは、図7に示すように第2の側面4に対向する方向から見て、第1副切刃8aと等しい傾斜で反対の四角形面2側に向けて傾斜した後に凹曲線状に切れ上がって1つの四角形面2の他方のコーナ部C側の主切刃7に連なっている。
【0025】
また、本実施形態では、第1コーナすくい面9a、第1主すくい面10a、第1副すくい面11aと第2コーナすくい面9b、第2主すくい面10b、第2副すくい面11bとの交差稜線は、四角形面2に対向する方向から見て図5に示すようにコーナ部Cにおいて1/4凸円弧等の凸曲線状をなしている。ただし、この交差稜線の半径は、同方向から見たときのコーナ刃6の半径よりも大きくされている。
【0026】
従って、コーナ刃6、主切刃7、第1副切刃8aから上記交差稜線までの間隔、すなわち第1コーナすくい面9a、第1主すくい面10a、第1副すくい面11aの幅は、四角形面2におけるコーナ刃6の内周側で最も大きく、主切刃7および第1副切刃8aに沿ってコーナ刃6から離間するに従い漸次小さくなる。なお、第1主すくい面10aの幅は、コーナ部Cにおいて上記交差稜線が凸曲線状をなしている部分から離れた部分では略一定とされている。
【0027】
一方、第1、第2の側面3、4が交差する交差稜線部の上記コーナ部C側には、コーナ刃6のコーナ逃げ面13が形成されるとともに、第1の側面3の主切刃7側と第2の側面4の副切刃8側には、それぞれこれら主切刃7および副切刃8の主逃げ面14および副逃げ面15が形成されている。副逃げ面15は、第1副切刃8aに連なる第1副逃げ面15aと、第2副切刃8bに連なる第2副逃げ面15bとを備えている。コーナ逃げ面13は主逃げ面14と副逃げ面15との間で湾曲してコーナ刃6に連なる略1/4円筒面等の凸曲面状であり、主逃げ面14は平面状または曲率半径の極めて大きな凸曲面状であり、第1、第2副逃げ面15a、15bは鈍角に交差する平面状である。
【0028】
また、このうちコーナ逃げ面13、主逃げ面14、および第2副逃げ面15bは、それぞれコーナ刃6、主切刃7、および第2副切刃8bから離間して反対の四角形面2側に向かうに従い僅かにインサート本体1の外側に向かうように傾斜している。従って、第2副逃げ面15bは、この第2副逃げ面15bが交差する四角形面2とは反対の四角形面2側の上記平坦面12に対して直角よりも僅かに鋭角に交差する方向に配置される。
【0029】
さらに、コーナ逃げ面13は、コーナ刃6から反対の四角形面2側に向けての逃げ面幅が、四角形面2に対向する方向から見たときのコーナ刃6がなす凸曲線の中央部で最も大きく、両端部に向かうに従い漸次小さくなる。一方、主逃げ面14の逃げ面幅はコーナ部Cから離間するに従い漸次小さくなり、第1、第2副逃げ面15a、15bの逃げ面幅はコーナ部Cから離間するに従い概ね漸次大きくなる。
【0030】
なお、1つの第1の側面3における2つの四角形面2側の主逃げ面14の間の部分は取付孔5の中心線に垂直な平面であり、取付孔5はこの平面部分に開口している。従って、第2副逃げ面15bは、この第2副逃げ面15bが隣接する第1の側面3とは反対の第1の側面3における平面部分に直角よりも僅かに鋭角に交差する方向に配置される。一方、本実施形態では、1つの第2の側面4における2つの第1副逃げ面15a同士は、この第2の側面4の中央部で鈍角に交差しており、これに伴い1つの第2の側面4における2つの第2副逃げ面15b同士は交差することなく分断されている。また、個々の第2副逃げ面15bの面積は、個々の第1副逃げ面15aの面積よりも大きい。
【0031】
このように構成された本実施形態の切削インサートは、本発明の一実施形態の刃先交換式切削工具において、図8に示すように軸線Oを中心とする円柱状の工具本体21の先端部に形成されたインサート取付座22にクランプネジ23によって着脱可能に取り付けられる。そして、この工具本体21が軸線O回りに工具回転方向Tに回転させられつつ、該軸線Oに交差する方向に送り出されることにより、例えば金型等の被削材の切削加工(転削加工)に使用される。
【0032】
工具本体21の先端部外周には、工具本体21の先端面に開口して後端側に延びる切屑排出溝24が周方向に間隔をあけて複数条形成され、インサート取付座22は、これらの切屑排出溝24の工具回転方向Tを向く壁面の先端外周部に形成されている。インサート取付座22は、工具本体21の外周側を向く平坦な底面と、この底面から外周側に延びて工具回転方向Tを向く壁面および工具本体21の先端側を向く壁面とを備えており、上記底面にはクランプネジ23がねじ込まれる図示されないネジ孔が形成されるとともに、工具回転方向Tを向く壁面には平坦な突端面を有する凸部が、工具本体21の先端側を向く壁面の外周側には、外周側と工具回転方向T側に向かうに従い僅かに先端側に向かうように傾斜する傾斜平面が形成されている。
【0033】
このようなインサート取付座22に、上記実施形態の切削インサートは、インサート本体1の1つの四角形面2を工具回転方向Tに向けるとともに、この1つの四角形面2とは反対の四角形面2の上記平坦面12が上記凸部の突端面に当接させられ、1つの第1の側面3が工具本体21の外周側に向けられるとともに、この1つの第1の側面3とは反対の第1の側面3が上記底面に当接させられ、1つの第2の側面4が工具本体21の先端側に向けられるとともに、この1つの第2の側面4とは反対の第2の側面4の工具本体21外周側に位置した第2副逃げ面15bが工具本体21の先端側を向く壁面の上記傾斜平面に当接させられて着座させられる。さらに、取付孔5に挿通された上記クランプネジ23上記ネジ孔にねじ込むことにより、インサート本体1は上記底面に押圧されるとともに、2つの壁面が交差する隅角部側にも押圧されて着脱可能に取り付けられる。
【0034】
このようにインサート取付座22に取り付けられた状態で、インサート本体1の上記1つの四角形面2の1つのコーナ部Cに形成されたコーナ刃6は工具本体21の先端外周側に突出させられるとともに、このコーナ刃6に連なる主切刃7は工具本体21の外周側に突出させられ、このコーナ刃6に連なる副切刃8は工具本体21の先端側に突出させられる。主切刃7の軸線O回りの回転軌跡は、複数のインサート取付座22に取り付けられた切削インサート同士で軸線Oを中心とした1つの円筒面上に略位置させられ、工具本体21の外周側に向けられたインサート本体1の第1の側面3は、この円筒面の内側に位置させられて外周側の逃げが与えられる。
【0035】
また、副切刃8は、その第1副切刃8aの回転軌跡が複数のインサート取付座22に取り付けられた切削インサート同士で軸線Oに垂直な1つの平面上に略位置させられ、工具本体21の先端側に向けられたインサート本体1の第2の側面4は、この平面よりも工具本体21の後端側に位置させられて先端側の逃げが与えられる。さらに、四角形面2に対向する方向から見て第1副切刃8aと鈍角に交差する工具本体21の先端側に向けられた第2副切刃8bは、工具本体21の内周側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜し、この第2副切刃8bの工具回転方向Tとは反対側に連なる第2副逃げ面15bおよび第1副逃げ面15aも、工具回転方向Tとは反対側に向かうに従い工具本体21の後端側に向かうように傾斜して逃げが与えられる。
【0036】
このように切削インサートが取り付けられた刃先交換式切削工具(転削工具)は、通常の肩削り加工等では、工具本体21が上述のように軸線O回りに工具回転方向Tに回転させられつつ、軸線Oに直交する方向に送り出されてコーナ刃6、主切刃7、および副切刃8のうち第1副切刃8aによって切削加工を行う。また、軸線Oに直交する方向と軸線O方向の先端側に向けて工具本体21が僅かに斜めに送り出されてランピング加工を行う場合には、これらコーナ刃6、主切刃7、第1副切刃8aに加えて第2副切刃8bも切削に使用される。
【0037】
このような肩削り加工やランピング加工で被削材に形成される凹部において、上記主切刃7により切削される壁面と副切刃8により切削される底面とが交差する隅角部の半径を異なる大きさとする場合、この隅角部を切削するコーナ刃6の半径が異なる切削インサートを用いることになる。そのような場合に、本実施形態の切削インサートでは、図1ないし図7に示したようにインサート本体1のコーナ刃6の半径が最も小さい切削インサートを製造しておいて、このインサート本体1のコーナ部Cを図4図8に2点鎖線Lで示したようにコーナ刃6の半径が大きくなるように、このコーナ部Cの周辺のコーナ逃げ面13と主逃げ面14および副逃げ面15を研磨することにより、所望の異なる半径のコーナ刃6を形成し、そのような切削インサートを用いて切削加工を行う。
【0038】
このとき、上記構成の切削インサートでは、コーナ刃6の半径が最も小さいインサート本体1において、コーナ刃6に連なる第1コーナすくい面9aと、主切刃7に連なる第1主すくい面10aおよび副切刃8に連なる第1副すくい面11a第1コーナすくい面9aに連なる部分とが、インサート本体1の四角形面2の1つの対角線方向において該四角形面2の内側に向かうに従い、この四角形面2とは反対の四角形面2側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置されている。このため、コーナ刃6の半径が最も小さい元の切削インサートと等しい逃げ角を維持したまま、コーナ逃げ面13、主逃げ面14、および副逃げ面15を研磨すれば、これらと上記1つの傾斜平面上に位置するコーナ刃6や主切刃7、副切刃8のすくい角や刃物角が変化することはない。
【0039】
従って、コーナ刃6の半径が異なる切削インサートでも、切削性能が変化するのを抑えることができ、コーナ刃6の半径が変わっても共通した切削条件で加工を行うことが可能となるとともに、切削インサートの寿命にばらつきが生じるのを防いでインサート管理を容易とすることができる。また、このように第1コーナすくい面9aと、これに連なる部分の第1主すくい面10aおよび第1副すくい面11aとが1つの傾斜平面上に配置されていると、これらの部分に連なるコーナ刃6、主切刃7、および副切刃8によって生成された切屑は干渉し合うことなく、この傾斜平面に沿って流出するので、切屑排出性を向上させることができるという利点も得られる。
【0040】
また、本実施形態の切削インサートでは、副切刃8が、コーナ刃6に連なる直線状の第1副切刃8aと、この第1副切刃8aのコーナ刃6とは反対側に連なって上述のようなランピング加工に使用される第2副切刃8bとを備えており、これらの第1、第2副切刃8a、8bは四角形面2に対向する方向から見たときに鈍角に交差している。従って、これら第1、第2副切刃8a、8bに連なる第1、第2副逃げ面15a、15bも鈍角に交差するように形成される。
【0041】
このため、このようなランピング加工の際や、通常の肩削り加工等を行う場合でも、切削に使用される第1副切刃8aに連なる第2副切刃8bと、この第2副切刃8bに連なる第2副逃げ面15bを、第1副切刃8aによって被削材に形成された加工面(上記凹部の底面)から大きく離れるように配置することができる。このため、上述のように第1副切刃8aが位置する軸線Oに垂直な1つの平面に対して、工具本体21の先端側に向けられたインサート本体1の第2の側面4に先端側の逃げを与える場合でも、この第1副切刃8aや主切刃7の軸方向すくい角を正角側に比較的大きく設定することができ、これら主切刃7や第1副切刃8aの切れ味を鋭くして切削抵抗を低減するとともに、加工面に毟れ等が生じるのを防いで加工品位を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、このように第1、第2副逃げ面15a、15bが鈍角に交差していることと、1つの第2の側面4における2つの第1副逃げ面15a同士も鈍角に交差していて、2つの第2副逃げ面15b同士は交差することなく分断されていることによって、これら1つの第2の側面4の2つずつの第1、第2副逃げ面15a、15bは、互いに面一とはならずに独立した平面上に位置することになる。このため、個々の第1、第2副逃げ面15a、15bを研磨によって形成するような場合でも、それぞれの研磨面積は小さくすることができ、効率的な切削インサートの製造を図ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態の切削インサートでは、第1副逃げ面15aよりも面積の大きな第2副逃げ面15bが、この第2副逃げ面15bが交差する四角形面2とは反対の四角形面2側の平坦面12に対して直角よりも僅かに鋭角に交差する方向に配置されるとともに、該第2副逃げ面15bが隣接する第1の側面3とは反対の第1の側面3における平面部分にも直角よりも僅かに鋭角に交差する方向に配置されている。そして、本実施形態の刃先交換式切削工具では、工具本体21の後端側に向けられた第2の側面4の外周側に位置した上記第2副逃げ面15bが、工具本体21の先端側を向く壁面の外周側と工具回転方向T側に向かうに従い僅かに先端側に向かうように傾斜する傾斜平面に当接させられて押圧されることにより、切削インサートが取り付けられる。
【0044】
従って、この第2副逃げ面15bの上記反対の四角形面2側の平坦面12と上記反対の第1の側面3における平面部分に対する交差角を、インサート取付座22の上記傾斜平面の工具回転方向Tを向く壁面における上記凸部の突端面と工具本体21外周側を向く底面に対する傾斜角と等しく設定すれば、切削インサートをクランプネジ23によって押圧して取り付ける際に、面積の大きな第2副逃げ面15bを上記傾斜平面によって案内してインサート本体1をインサート取付座22の底面と突端面に強固に押し付けることができ、切削インサートの取付剛性向上を図ることができる。また、このような傾斜平面に第2副逃げ面15bが当接することにより、インサート本体1の工具回転方向Tや工具本体21外周側への抜け止めを図ることができる。
【0045】
さらに、本実施形態の切削インサートでは、コーナ逃げ面13および主逃げ面14がコーナ刃6および主切刃7から離間して反対の四角形面2側に向かうに従い僅かにインサート本体1の外側に向かうように傾斜しているとともに、本実施形態の刃先交換式切削工具では、インサート取付座22の工具回転方向Tを向く壁面において、上記凸部の突端面がインサート本体1の工具回転方向Tとは反対側に向けられた四角形面2の中央部の平坦面12と当接するので、工具回転方向Tとは反対側の工具本体21後端側に配置されたコーナ刃6やこれに連なる主切刃7が、インサート取付座22の底面と2つの壁面との隅角部に干渉することはない。そして、これらの隅角部を、インサート本体1のコーナ刃6の半径が最も小さい切削インサートに合わせて形成しておけば、上述のようにコーナ刃6の半径の大きな切削インサートを取り付けたときでも、このような干渉が生じるのを防ぐことができる。
【0046】
一方、本実施形態の切削インサートにおけるインサート本体1は、2つの四角形面2の間の間隔が、これら四角形面2の辺稜部のうち上記副切刃8が形成された辺稜部の長さよりも大きい縦刃式の切削インサートのインサート本体1とされている。このため、2つの四角形面2の各2つの上記コーナ部Cに連なる第1コーナすくい面9aと、第1主すくい面10aおよび第1副すくい面この第1コーナすくい面9aに連なる部分を、上述のようにこれらのコーナ部Cを結ぶ1つの対角線方向に四角形面2の内側に向かうに従い反対の四角形面2側に向かうように傾斜する1つの傾斜平面上に配置しても、両四角形面2の間に十分な肉厚をインサート本体1に確保することができ、過大な切削負荷が作用してもインサート本体1が破損するような事態を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 インサート本体
2 四角形面
3 第1の側面
4 第2の側面
5 取付孔
6 コーナ刃
7 主切刃
8 副切刃
8a 第1副切刃
8b 第2副切刃
9 コーナすくい面
9a 第1コーナすくい面
9b 第2コーナすくい面
10 主すくい面
10a 第1主すくい面
10b 第2主すくい面
11 副すくい面
11a 第1副すくい面
11b 第2副すくい面
12 平坦面
13 コーナ逃げ面
14 主逃げ面
15 副逃げ面
15a 第1副逃げ面
15b 第2副逃げ面
21 工具本体
22 インサート取付座
23 クランプネジ
24 切屑排出溝
C 四角形面2のコーナ部
O 工具本体21の軸線
T 工具回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8