特許第6852260号(P6852260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6852260-ころ軸受 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852260
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/46 20060101AFI20210322BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20210322BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20210322BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20210322BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   F16C33/46
   F16C33/78 C
   F16C33/80
   F16C19/36
   F16C33/58
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-7344(P2016-7344)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-129174(P2017-129174A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】獅子原 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌本 繁夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 順司
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/076419(WO,A1)
【文献】 特開2007−051715(JP,A)
【文献】 特開2015−169300(JP,A)
【文献】 特開2008−069808(JP,A)
【文献】 特開2015−218842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/22−19/48
F16C 33/46−33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪軌道面を外周に有する内輪と、前記内輪の外周側に同心に配置され前記内輪軌道面に対向する外輪軌道面を内周に有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に介在する複数のころと、前記ころを周方向に沿って所定間隔毎に保持する保持器と、を備えたころ軸受であって、
前記外輪軌道面の少なくとも軸方向一端部が前記保持器の回転を案内する案内面とされており、
前記内輪の外周には、前記内輪軌道面の軸方向一方側に外周円筒面が形成されており、
前記保持器の外周には、
前記案内面に摺接するとともに、当該案内面に対してラビリンス隙間をあけて配置される摺接面と、
前記摺接面よりも軸方向内側に位置し、径方向内方に凹む凹部と、
が形成され
前記保持器の内周には、前記内輪の外周円筒面に対してラビリンス隙間をあけて配置される内周円筒面が形成され、
前記内周円筒面は、
前記外周円筒面との間に第1ラビリンス隙間を形成する第1内周円筒面と、
前記第1内周円筒面の軸方向他方側に位置し、前記外周円筒面との間に前記第1ラビリンス隙間よりも大きい第2ラビリンス隙間を形成する第2内周円筒面と、を含む
ころ軸受。
【請求項2】
前記外輪軌道面の軸方向両端部が、前記保持器の回転を案内する複数の前記案内面とされており、
前記保持器の外周には、複数の前記案内面にそれぞれ摺接するとともに、複数の当該案内面に対してそれぞれラビリンス隙間をあけて配置される複数の摺接面が形成され、
前記凹部は、軸方向において、複数の前記摺接面の間に位置する、請求項1に記載のころ軸受。
【請求項3】
前記外輪軌道面にはクラウニングが施されており、
前記案内面は、当該外輪軌道面におけるクラウニング中心付近から軸方向に離れた位置に形成されている、請求項1又は請求項2に記載のころ軸受。
【請求項4】
前記保持器は、前記ラビリンス隙間に侵入した異物が当該保持器内に埋没する程度の硬さを有する樹脂材料から形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載のころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を含む潤滑油により潤滑されるころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や各種建設用機械等のトランスミッションやディファレンシャル等に組み込まれる円すいころ軸受として、トランスミッションやディファレンシャル等の動力伝達機構を潤滑する潤滑油(オイル)を用いて潤滑されるものが知られている。この潤滑油は、動力伝達機構のケース内に収容されており、ギヤの摩耗粉等(鉄粉等)の異物が比較的多く含まれている。
【0003】
このため、潤滑油に含まれる異物が円すいころ軸受の内部に侵入すると、異物の噛み込みによって内外輪の軌道面や円すいころの転動面が剥離し、円すいころ軸受の耐久性が低下するおそれがある。そこで、従来の円すいころ軸受では、軸受内部に異物が侵入しないように、外輪と内輪との間の環状空間における軸方向外側の開口をシール装置で覆うものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−231856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の円すいころ軸受にあっては、異物の侵入を抑制するためのシール装置が必要になるため、部品点数が多くなり、構造が複雑になるという問題があった。
そこで、本発明は、構造を簡素化しつつ軸受内部への異物の侵入を抑制することができるころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のころ軸受は、内輪軌道面を外周に有する内輪と、前記内輪の外周側に同心に配置され前記内輪軌道面に対向する外輪軌道面を内周に有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に介在する複数のころと、前記ころを周方向に沿って所定間隔毎に保持する保持器と、を備えたころ軸受であって、前記外輪軌道面の少なくとも軸方向一端部が前記保持器の回転を案内する案内面とされており、前記保持器の外周には、前記案内面に摺接するとともに、当該案内面に対してラビリンス隙間をあけて配置される摺接面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記のように構成されたころ軸受によれば、保持器の外周に形成された摺接面が、外輪軌道面の案内面に対してラビリンス隙間をあけて配置されるので、潤滑油に含まれる異物がころ軸受の軸方向一端部側から外輪軌道面上に侵入するのを抑制することができる。これにより、外輪軌道面や円すいころの転動面が異物によって剥離するのを抑制することができ、ころ軸受の耐久性を向上させることができる。また、異物の侵入を抑制するために新たな部材を追加する必要がないので、ころ軸受の構造を簡素化することができる。
【0008】
前記外輪軌道面にはクラウニングが施されており、前記案内面は、当該外輪軌道面におけるクラウニング中心付近から軸方向に離れた位置に形成されているのが好ましい。
この場合、保持器の摺接面は、外輪軌道面においてクラウニング中心付近から軸方向に離れた位置に形成された案内面に摺接するので、案内面がクラウニング中心付近に形成されている場合に比べて、摺接面と案内面との接触面圧を低くすることができる。このため、摺接面と案内面との間に異物が侵入しても、摺接面及び案内面が異物によって剥離するのを抑制することができ、ころ軸受の耐久性をさらに向上させることができる。
【0009】
前記内輪の外周には、前記内輪軌道面の軸方向一方側に外周円筒面が形成されており、前記保持器の内周には、前記内輪の外周円筒面に対してラビリンス隙間をあけて配置される内周円筒面が形成されているのが好ましい。
この場合、保持器の内周円筒面が、内輪の外周において内輪軌道面の軸方向一方側に形成された外周円筒面に対してラビリンス隙間をあけて配置されるので、潤滑油に含まれる異物が内輪の外周円筒面側から内輪軌道面上に侵入するのを抑制することができる。これにより、内輪軌道面や円すいころの転動面が異物によって剥離するのを抑制することができ、ころ軸受の耐久性をさらに向上させることができる。
【0010】
前記保持器は、前記ラビリンス隙間に侵入した異物が当該保持器内に埋没する程度の硬さを有する樹脂材料から形成されているのが好ましい。この場合、潤滑油に含まれる異物がラビリンス隙間に侵入しても、保持器の内部に異物を埋没させることができるので、異物が外輪軌道面上又は内輪軌道面上に侵入するのをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のころ軸受によれば、構造を簡素化しつつ軸受内部への異物の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る円すいころ軸受を示す軸方向断面図である。
図2】上記円すいころ軸受の保持器を示す斜視図である。
図3図1の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の一実施形態に係る円すいころ軸受を示す軸方向断面図である。本実施形態の円すいころ軸受1は、自動車や各種建設用機械等のトランスミッションやディファレンシャル等に組み込まれるものである。この円すいころ軸受1は、内輪2、外輪3、複数の円すいころ4、及びこれら円すいころ4を保持する保持器10を有している。内輪2、外輪3及び保持器10は、共通する軸線Xを中心線とする環状(短円筒状)の部材である。そして、この円すいころ軸受1は、トランスミッションやディファレンシャル等の動力伝達機構を潤滑する潤滑油(オイル)によって潤滑される。
【0014】
内輪2は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成されており、その外周には、複数の円すいころ4が転動するテーパー状の内輪軌道面2aが形成されている。また、内輪2は、内輪軌道面2aの軸方向一方側(図1では左側)に設けられ径方向外側に突出する小鍔部5と、内輪軌道面2aの軸方向他方側(図1では右側)に設けられ径方向外側に突出する大鍔部6とを有している。
外輪3も、内輪2と同様、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成されており、その内周には、内輪軌道面2aに対向し複数の円すいころ4が転動するテーパー状の外輪軌道面3aが形成されている。
【0015】
円すいころ4は、軸受鋼等を用いて形成された部材であり、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間に転動自在に介在している。円すいころ4の外周には、円すい形状の転動面4cが形成されている。また、円すいころ4は、軸方向一方側に直径の小さい小端面4aを有し、軸方向他方側に直径の大きい大端面4bを有している。大端面4bは、大鍔部6の鍔面7と摺接する。
【0016】
図2は、保持器10を示す斜視図である。図1及び図2において、保持器10は、軸方向一方側の小径環状部11、軸方向他方側の大径環状部12、及び複数の柱部13を有している。小径環状部11および大径環状部12は円環状であり、軸方向に所定間隔離れて設けられている。柱部13は、周方向に間隔をあけて設けられ、環状部11,12を連結している。両環状部11,12の間であって周方向で隣り合う二つの柱部13,13の間に形成される空間が、円すいころ4を収容(保持)するポケット14となる。本実施形態の保持器10は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)等の樹脂材料から形成されている。
【0017】
図1において、保持器10は、内輪2と外輪3との間に形成されている環状空間S0に設けられており、各ポケット14に一つの円すいころ4を収容し、複数の円すいころ4を周方向に等しい間隔をあけて配置し保持している。また、小径環状部11は、内輪2の小鍔部5の径方向外側に位置し、大径環状部12は、内輪2の大鍔部6の径方向外側に位置する。
【0018】
図1において、保持器10は、両環状部11,12のポケット14側に臨む軸方向内側面11c,12cが、円すいころ4の小端面4a及び大端面4bに接触可能となっており、これにより保持器10の軸方向への移動が規制される。本実施形態では、特に大端面4bに軸方向内側面12cが接触することで保持器10の軸方向への移動が規制される。つまり、保持器10は、環状部11,12が円すいころ4に接触することで、軸方向について位置決めされる。
【0019】
また、保持器10は、その一部(摺接面40,39)が外輪3の外輪軌道面3aに摺接することで、径方向について位置決めされる。このための構成について説明する。図2において、保持器10は、柱部13と一体成形されている第1のころ止め部41及び第2のころ止め部42を有している。柱部13の径方向外側面の一部(小径環状部11側の部分)と第1のころ止め部41の径方向外側面とは、連続する平滑な円弧面からなる。また、柱部13の径方向外側面の他部(大径環状部12側の部分)と第2のころ止め部42の径方向外側面とは、連続する平滑な円弧面からなる。
【0020】
これら円弧面は、外輪3の外輪軌道面3aよりも僅かに直径が小さい仮想のテーパー面に沿った形状を有しており、これら円弧面が、外輪3の外輪軌道面3a(後述する案内面3b,3c)に摺接可能な摺接面40,39となる。この摺接面40,39が、外輪3の外輪軌道面3aに摺接することで保持器10の径方向について位置決めされる。なお、摺接面40には、小径環状部11の外周面の一部も含まれる。
【0021】
図2において、柱部13の径方向外側には、径方向内方に凹むことで互いに隣り合うポケット14,14同士を連通する凹部33が設けられている。これにより、外輪3の外輪軌道面3a近傍の潤滑油を、互いに隣り合うポケット14,14間で流動させることができ、潤滑油の撹拌抵抗を弱めることができる。
【0022】
図1において、円すいころ軸受1では、外輪3の外輪軌道面3aが、軸方向一方側から他方側に向かって拡径している。このため、円すいころ軸受1(本実施形態では内輪2)が回転すると、内輪2と外輪3との間に形成されている環状空間S0を潤滑油が軸方向一方側から他方側に向かって流れる作用(ポンプ作用)が生じる。このような円すいころ軸受1の回転に伴うポンプ作用により、軸受外部の潤滑油が、軸方向一方側から、内輪2と外輪3との間の環状空間S0に流入し、軸方向他方側から流出する。つまり、潤滑油が環状空間S0を通過する。以上より、図1に示す円すいころ軸受1では、軸方向一方側が潤滑油の流入側となり、軸方向他方側が潤滑油の流出側となる。
【0023】
ところで、円すいころ軸受1を潤滑する潤滑油は、トランスミッションやディファレンシャル等の動力伝達機構のケース内に収容されており、ギヤの摩耗粉等(鉄粉等)の異物が比較的多く含まれている。このため、本実施形態の円すいころ軸受1は、潤滑油に含まれる異物が軸受内部に侵入するのを抑制する構成となっている。以下、その構成について説明する。
【0024】
図3は、図1の要部拡大断面図である。保持器10の外輪軌道面3aには、その軸方向全長にわたって、径方向内方にごく僅かに突出した断面円弧状のクラウニングが施されている。また、外輪軌道面3aの軸方向両端部は、保持器10の回転を案内する第1案内面3b及び第2案内面3cとされている。第1案内面3bには保持器10の軸方向一方側の摺接面40が摺接し、第2案内面3cには保持器10の軸方向他方側の摺接面39が摺接する。
【0025】
第1及び第2案内面3b,3cは、外輪軌道面3aにおけるクラウニング中心C付近から軸方向に離れた位置に形成されている。具体的には、外輪軌道面3aにおけるクラウニング中心Cから第1案内面3bまでの長さL1は、外輪軌道面3aの軌道面有効長さL0の20%以上の長さとなるように設定されている。同様に、外輪軌道面3aにおけるクラウニング中心Cから第2案内面3cまでの長さL2は、前記軌道面有効長さL0の20%以上の長さとなるように設定されている。このように前記長さL1,L2を設定することで、第1及び第2案内面3b,3cは、対応する摺接面40,39との接触面圧が最も高くなるクラウニング中心C付近から離れた位置で当該摺接面40,39に接触するので、その接触面圧を低くすることができる。
【0026】
保持器10の摺接面40は、第1案内面3bに対してラビリンス隙間S1をあけて配置されている。同様に、保持器10の摺接面39は、第2案内面3cに対してラビリンス隙間S2をあけて配置されている。本実施形態では、保持器10を外輪3に対して偏心させることによって、保持器10の摺接面40,39における周方向の一部分(図3の下側部分(図示省略))を外輪3の案内面3b,3cに接触させた状態で、当該一部分に対して周方向の反対側(図3の上側)に形成されるラビリンス隙間S1,S2が例えば100μmとなるように設定されている。このようにラビリンス隙間S1,S2を形成することで、円すいころ軸受1の軸方向両側から軸受内部の内輪軌道面2a上および外輪軌道面3a上に異物が侵入するのを抑制することができる。
【0027】
内輪2の小鍔部5の外周には、軸線Xを中心とする外周円筒面5aが形成されている。また、保持器10の小径環状部11の内周には、軸方向外側に軸線Xを中心とする第1内周円筒面11aが形成されるとともに、軸方向内側に軸線Xを中心とする第2内周円筒面11bが形成されている。第2内周円筒面11bは第1内周円筒面11aよりも大径に形成されている。
【0028】
小径環状部11の第1内周円筒面11aは、小鍔部5の外周円筒面5aに対してラビリンス隙間S3をあけて配置されている。本実施形態では、保持器10を内輪2に対して偏心させることによって、第1内周円筒面11aの周方向の一部分(図3の下側部分(図示省略))を小鍔部5の第1内周円筒面11aに当接させた状態で、当該一部分に対して周方向の反対側(図3の上側)に形成されるラビリンス隙間S3が例えば200μmとなるように設定されている。このようにラビリンス隙間S3を形成することで、円すいころ軸受1の軸方向一方側から軸受内部の内輪軌道面2a上に異物が侵入するのを抑制することができる。
【0029】
また、小径環状部11の第2内周円筒面11bと小鍔部5の外周円筒面5aとの間の隙間S4は、ラビリンス隙間S3の軸方向内端部から急激に大きくなるため、ラビリンス隙間S3から上記隙間S4に流通する潤滑油の圧力損失が大きくなる。これにより、ラビリンス隙間S4を流通する潤滑油の圧力は、隙間S3を流通する潤滑油の圧力よりも大きくなるので、ラビリンス隙間S3の軸方向一方側から軸方向他方側(隙間S4側)に潤滑油が流入しにくくなる。その結果、ラビリンス隙間S3から内輪軌道面2a上に流入する潤滑油の量が減少するので、潤滑油に含まれる異物が内輪軌道面2a上に侵入するのをさらに抑制することができる。
【0030】
保持器10は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の樹脂材料から形成されており、上記ラビリンス隙間S1〜S3に侵入した異物が当該保持器10内に埋没する程度の硬さを有する。具体的には、本実施形態の保持器10は、ロックウェル硬さがR110〜120とされている。ロックウェル硬さをこのような範囲とするのは、保持器10の表面硬度が高くなり過ぎると異物の埋没性が悪くなり、保持器10の表面硬度が低くなり過ぎると耐摩耗性が悪くなるからである。
【0031】
以上、本実施形態の円すいころ軸受1によれば、保持器10の外周に形成された摺接面40,39が、外輪軌道面3aの案内面3b,3cそれぞれに対してラビリンス隙間S1,S2をあけて配置されるので、潤滑油に含まれる異物が円すいころ軸受1の軸方向両側から外輪軌道面3a上に侵入するのを抑制することができる。これにより、外輪軌道面3aや円すいころ4の転動面4cが異物によって剥離するのを抑制することができ、円すいころ軸受1の耐久性を向上させることができる。また、異物の侵入を抑制するために新たな部材を追加する必要がないので、円すいころ軸受1の構造を簡素化することができる。
【0032】
また、保持器10の摺接面40(39)は、外輪軌道面3aにおいてクラウニング中心C付近から軸方向に離れた位置に形成された案内面3b(3c)に摺接するので、案内面3b(3c)がクラウニング中心C付近に形成されている場合に比べて、摺接面40(39)と案内面3b(3c)との接触面圧を低くすることができる。このため、摺接面40(39)と案内面3b(3c)との間に異物が侵入しても、摺接面40(39)及び案内面3b(3c)が異物によって剥離するのを抑制することができ、円すいころ軸受1の耐久性をさらに向上させることができる。
【0033】
また、保持器10の小径環状部11の第1内周円筒面11aが、内輪2の軸方向一方側の外周円筒面5aに対してラビリンス隙間S3をあけて配置されるので、潤滑油に含まれる異物が内輪2の外周円筒面5a側(潤滑油の流入側)から内輪軌道面2a上に侵入するのを抑制することができる。これにより、内輪軌道面2aや円すいころ4の転動面4cが異物によって剥離するのを抑制することができ、円すいころ軸受1の耐久性をさらに向上させることができる。
【0034】
また、保持器10は、ラビリンス隙間S1〜S3に侵入した異物が保持器10内に埋没する程度の硬さを有する樹脂材料から形成されているので、潤滑油に含まれる異物がラビリンス隙間S1〜S3に侵入しても、その異物を保持器10の内部に埋没させることができる。これにより、異物が内輪軌道面2a上又は外輪軌道面3a上に侵入するのをさらに抑制することができる。また、異物が埋没する保持器10の摺接面40(39)は上述のように案内面3b(3c)との接触面圧が低いので、これら摺接面40(39)および案内面3b(3c)が埋没した異物によって剥離するのを抑制することができる。
【0035】
なお、今回開示した実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。例えば、本発明は、円すいころ軸受に適用する場合について説明したが、円筒ころ軸受にも適用することができる。また、本実施形態では、外輪軌道面の軸方向両端部を保持器の回転を案内する案内面としているが、外輪軌道面の少なくとも軸方向一端部を案内面とすればよい。また、本実施形態では、保持器の軸方向一端部の外周側と内周側とにそれぞれラビリンス隙間S1,S3を形成しているが、少なくとも保持器の軸方向一端部の外周側にラビリンス隙間が形成されていればよい。
【符号の説明】
【0036】
1:円すいころ軸受(ころ軸受)、2:内輪、2a:内輪軌道面、3:外輪、3a:外輪軌道面、3b:第1案内面、3c:第2案内面、4:円すいころ(ころ)、5a:外周円筒面、10:保持器、11a:第1内周円筒面(内周円筒面)、39,40:摺接面、C:クラウニング中心、S1,S2,S3:ラビリンス隙間
図1
図2
図3