(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(B)が、酢酸トコフェロール、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸、パルミチン酸レチノール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、アラントイン、メントール、グアイアズレン及び油溶性甘草エキスからなる群から選ばれる少なくとも一種の生理活性物質である、請求項1に記載の製剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、クロロホルムなどの有機溶剤やリン脂質を用いることなく容易に製造することができ、経時的にも安定なマルチラメラベシクル構造を有する製剤を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、成分(A)下記式(1)で示される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう)またはその塩、(B)少なくとも一種の生理活性物質及び(C)水だけで意外にもマルチラメラベシクルが形成され、該マルチラメラベシクルが経時的にも安定であり、容易に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]成分(A):式(1)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基であり、
R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基であり、
zは0以上の整数であり、
xおよびyは、各々独立して、2〜4の整数である。)で示される化合物またはその塩;
成分(B):生理活性物質、及び
成分(C):水
を含有するマルチラメラベシクル製剤。
[2]成分(A)が、前記式(1)においてzが0〜10の整数である化合物またはその塩である、[1]に記載の製剤。
[3]成分(A)が、前記式(1)においてzが7または8である化合物またはその塩である、[1]または[2]に記載の製剤。
[4]成分(A)が、前記式(1)においてxおよびyが共に4である化合物またはその塩である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製剤。
[5]成分(A)が、前記式(1)においてR
1およびR
2が各々独立して、炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基である化合物またはその塩である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製剤。
[6]成分(A)が、前記式(1)においてR
3およびR
4が共に水素原子である化合物またはその塩である、[1]〜[5]のいずれかに記載の製剤。
[7]成分(A)が、ビス(N
ε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミドまたはその塩である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製剤。
[8]成分(B)の生理活性物質が、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、清涼剤、及び動植物由来成分からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[7]のいずれかに記載の製剤。
[9]成分(B)の生理活性物質が、酢酸トコフェロール、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸、パルミチン酸レチノール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、アラントイン、メントール、グアイアズレン及び油溶性甘草エキスからなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[8]のいずれかに記載の製剤。
[10]成分(A)1重量部に対して、成分(B)を0.0001〜2重量部含有する、[1]〜[9]のいずれかに記載の製剤。
[11]成分(A)1重量部に対して、成分(C)を30〜200重量部含有する、[1]〜[10]のいずれかに記載の製剤。
[12][1]〜[11]のいずれかに記載の製剤を含有する外用剤。
[13][1]〜[11]のいずれかに記載の製剤を含有する化粧料。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化合物(1)を使用することでクロロホルムなどの有機溶媒を使用することなく、簡便にマルチラメラベシクル製剤を製造することができる。
また本発明によれば、リン脂質を添加せずともマルチラメラベシクルを提供できることから、リン脂質由来の臭いや色の問題が無い、保存安定性に優れたマルチラメラベシクル製剤を提供することができる。
また本発明によれば、リン脂質を添加する場合に必要な高圧処理等を行うことなく、簡便に製造することができる。
また本発明によれば、様々な生理活性物質をマルチラメラベシクル内に担持できるため、高機能素材として、医薬品、飲食品、化粧品、医薬部外品、飼料等に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のマルチラメラベシクル製剤は、成分(A):式(1)
【0018】
(式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基であり、
R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基であり、
zは0以上の整数であり、
xおよびyは、各々独立して、2〜4の整数である。)で示される化合物またはその塩、
成分(B):少なくとも一種の生理活性物質、および
成分(C):水
を含有することを特徴とする。
【0019】
「マルチラメラベシクル」とは、内部構造中に、二重膜が幾重にも巻いた構造を有する球状の構造体を意味し、「マルチラメラベシクル製剤」は当該構造体を有する製剤を意味する。
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について詳述する。
【0021】
1.成分(A):式(1)で示される化合物(化合物(1))またはその塩
R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基である。
炭素原子数5〜21のアルキル基とは、炭素原子数5〜21の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、ネオヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
炭素原子数5〜21のアルケニル基とは、炭素原子数5〜21の直鎖または分岐状のアルケニル基を意味し、具体的には、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
炭素原子数5〜15のアルキル基とは、炭素原子数5〜15の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。
炭素原子数7〜11のアルキル基とは、炭素原子数7〜11の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等が挙げられる。
R
1およびR
2は、好ましくは各々独立して、炭素原子数5〜15のアルキル基であり、より好ましくは各々独立して、炭素原子数7〜11のアルキル基である。
また、R
1およびR
2は、直鎖のアルキル基であることが好ましい。さらに、R
1およびR
2は、同一であることが好ましい。
【0022】
R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基である。
炭素原子数1〜22のアルキル基とは、炭素原子数1〜22の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、ネオヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
炭素原子数2〜22のアルケニル基とは、炭素原子数2〜22の直鎖または分岐状のアルケニル基を意味し、具体的には、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
R
3およびR
4は、好ましくは共に水素原子である。
【0023】
zは、0以上の整数である。
zは、好ましくは0〜10の整数であり、より好ましくは7または8である。
【0024】
xおよびyは、各々独立して、2〜4の整数である。
xおよびyは、好ましくは共に4である。
【0025】
式(1)で示される化合物として、好ましくは、以下の化合物が挙げられる。
(化合物A)
R
1およびR
2が、各々独立して、炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基であり、
R
3およびR
4が、共に水素原子であり、
zが、0〜10の整数であり、
xおよびyが、共に4である化合物。
【0026】
(化合物B)
R
1およびR
2が、共に炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基であり、
R
3およびR
4が、共に水素原子であり、
zが、7または8であり、
xおよびyが、共に4である化合物。
【0027】
(化合物C)
R
1およびR
2が、共に炭素原子数7〜11の直鎖アルキル基であり、
R
3およびR
4が、共に水素原子であり、
zが、7または8であり、
xおよびyが、共に4である化合物。
【0028】
式(1)で示される化合物の具体例としては、
ビス(N
ε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミド、および
ビス(N
ε-オクタノイル-L-リジン)セバコイルアミド、
またはそれらの塩が挙げられる。
【0029】
式(1)で示される化合物の塩としては特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛との塩等の無機塩、あるいはアンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩や、アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等の有機塩が挙げられる。これらのうち1種を使用してもよいし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。入手の容易性、取り扱い性等の観点から、アルカリ金属塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。
【0030】
化合物(1)は、公知の化合物であり、自体公知の方法またはそれに準じた方法により製造することができる(特開2004−323505号公報、Org. Biomol. Chem., 2003, 1, 4124-4131、New J. Chem., 2005, 29, 1439-1444等参照)。
【0031】
成分(A)の含有量は、本発明のマルチラメラベシクルを有する製剤100重量部中、通常0.1〜10重量部であり、0.2〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。
【0032】
2.成分(B):生理活性物質
本明細書における「生理活性物質」は、従来のリポソームやマルチラメラベシクルに適用できる生理活性物質であれば限定されない。
生理活性物質は、水溶性、油溶性、両親媒性の物質のいずれでも良いが、油溶性または両親媒性の物質が好ましく、油溶性の物質がより好ましい。
【0033】
生理活性物質としては、例えば美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、清涼剤、動植物由来成分などが挙げられる。ただし水溶性保湿成分を除く。
【0034】
美白剤としては、アルブチン、コウジ酸、アスコルビン酸、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルなどのアスコルビン酸誘導体、トラネキサム酸、ヒノキチール、N−アセチル−2−メチルチアゾリン−2,4−ジカルボン酸‐2−エチルエステル(以下、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸)などが挙げられる。
抗酸化剤としては、ビタミンE、酢酸トコフェロールなどのビタミンE誘導体、レチノール、パルミチン酸レチノールなどのレチノール誘導体、γーオリザノールなどが挙げられる。
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、アラントイン、アズレン、グアイアズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾンなどが挙げられる。
清涼剤としては、メントール、カンフルなどが挙げられる。
【0035】
動植物由来成分としては、動物や植物そのものや植物の抽出成分、一般に食用の植物または植物の加工品や動物を由来とする成分が挙げられ、具体的には、カキョクエキス、ホエイ、ニコチン酸アミド、ジイソプロピルアミンジクロロ酢酸、メバロン酸、γ−アミノ酪酸、トウガラシチンキ、ショオウキョウチンキ、カンタリスチンキ、アルテアエキス、アロエエキス、アンズ核エキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、海水乾燥物、加水分解コムギ末、加水分解シルク、センブリエキス、カロットエキス、キューカンバエキス、ゲンチアナエキス、酵母エキス、米胚芽油、コンフリーエキス、サボンソウエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シラカバエキス、セイヨウハッカエキス、センブリエキス、ビサボロ−ル、プロポリス、ヘチマエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マロニエエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、油溶性甘草エキス、海草、米ヌカ、チンピ、トウキ、モモノハの粉砕物などが挙げられる。
【0036】
また、上記の生理活性物質は2以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において生理活性物質としては酢酸トコフェロール、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸、パルミチン酸レチノール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、アラントイン、メントール、グアイアズレン、油溶性甘草エキス、アルブチン、コウジ酸、アスコルビン酸、トラネキサム酸、ビタミンE、レチノール、グリチルリチン酸誘導体及びニコチン酸アミドが好ましく、酢酸トコフェロール、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸、パルミチン酸レチノール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、アラントイン、メントール、グアイアズレン及び油溶性甘草エキスがより好ましい。
【0037】
成分(B)の含有量は、本発明のマルチラメラベシクルを有する製剤100重量部中、通常0.001〜20重量部であり、0.002〜10重量部が好ましく、0.002〜5重量部がより好ましい。
【0038】
本発明のマルチラメラベシクルを有する製剤においては、成分(A)1重量部に対して、成分(B)を通常0.0001〜2重量部、好ましくは0.0002〜1重量部、より好ましくは0.0002〜0.5重量部を含有する。この範囲であればマルチラメラベシクル製剤が安定に保存できる。
【0039】
3.成分(C):水
本発明における水は、食品や化粧料などに使用できるものであれば特に限定されない。例えば、精製水、滅菌水、水道水、硬水、軟水、天然水、海水、海洋深層水、電解アルカリイオン水、電解酸性イオン水、イオン水、クラスター水などが挙げられる。
この水には、必要に応じて、防腐剤、等張化剤等を含有させてもよい。防腐剤としては、例えばパラベン類、クロルブタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール等が挙げられる。等張化剤としては、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
本発明における水の含有量は、本発明のマルチラメラベシクル製剤100重量部中、通常30〜99重量部、好ましくは40〜99重量部、より好ましくは50〜98.5重量部である。
【0041】
本発明のマルチラメラベシクル製剤においては、成分(A)1重量部に対して、成分(C)を通常30〜200重量部、好ましくは40〜199重量部、より好ましくは50〜199重量部を含有する。この範囲であればマルチラメラベシクル製剤が安定に保存できる。
【0042】
本発明のマルチラメラベシクル製剤は、必要に応じて、マルチラメラベシクル形成助剤(膜安定化剤)、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤、ポリオール、高分子、油剤、粉体等を1種以上含有してもよい。
【0043】
マルチラメラベシクル形成助剤は、化合物(1)がマルチラメラベシクル構造を形成するのを助け、得られるマルチラメラベシクル構造の経時的安定性を高める機能を有する物質であれば特に限定されない。具体的には、ステロール、スチグマステロール、ラノステロール、エルゴステロールなどのステロール類、該ステロール類の脂肪酸エステル(例えばイソステアリン酸コレステロースエステル)、及び該ステロール類のアルキルエーテル、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの飽和および不飽和の直鎖および分岐の脂肪酸のエステル(例えばラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル))などが挙げられる。
【0044】
本発明におけるマルチラメラベシクル形成助剤の含有量は、本発明のマルチラメラベシクル製剤100重量部中、通常0〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部である。
【0045】
ポリオールは、分子内に水酸基を2個以上有する、炭素原子数2個以上(好ましくは、炭素原子数2〜6)の直鎖または分岐状の多価アルコールを意味する。具体的には、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブタンジオール(1,3−ブチレングリコール)、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1、4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクトース、フラクトース、マルトース、ソルビタン、グルコース、アラビトール、キシリトール、マンニトール等が挙げられる。なかでも1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましく、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール等が好ましい。
これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
本発明におけるポリオールの含有量は、本発明のマルチラメラベシクル製剤100重量部中、通常0〜30重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0047】
非イオン性界面活性剤としては、ポリグリセリル脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル(ポリソルベート80)など)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG−40水添ヒマシ油及び、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本発明における非イオン性界面活性剤の含有量は、本発明のマルチラメラベシクル製剤100重量部中、通常0〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0049】
本発明のマルチラメラベシクル製剤の製造方法としては以下が挙げられる。
【0050】
(生理活性物質が親油性の場合)
親油性の生理活性物質である成分(B)、必要に応じて非イオン性界面活性剤及び/又はマルチラメラベシクル形成助剤を加熱し完全に均一に溶解し混合する(油溶性成分)。加熱温度は通常60〜80℃、好ましくは70〜80℃である。次に、成分(A)、必要に応じてポリオールを成分(C)水に添加し(水溶性成分)、油溶性成分と同温まで加温し、油溶性成分の相へゆっくり滴下する。その後温度を保ちながら均一になるように撹拌する。
【0051】
(生理活性物質が親水性の場合)
成分(A)、水溶性の生理活性物質である成分(B)、必要に応じてポリオールを成分(C)水に添加し(水溶性成分)、加熱し完全に均一に溶解し混合する。加熱温度は通常60〜80℃、好ましくは70〜80℃である。必要に応じて、同温で加熱溶解し混合していた非イオン性界面活性剤、マルチラメラベシクル形成助剤に、水溶性成分の相をゆっくり滴下する。その後、温度を保ちながら均一になるように撹拌する。
【0052】
(親油性及び親水性生理活性物質を併用する場合)
親油性の成分(B)、必要に応じて非イオン性界面活性剤及び/又はマルチラメラベシクル形成助剤を加熱し完全に均一に溶解し混合する(油溶性成分)。加熱温度は通常60〜80℃、好ましくは70〜80℃である。次に、成分(A)、親水性の成分(B)、必要に応じてポリオールを成分(C)水に添加し(水溶性成分)、油溶性成分と同温まで加温し、油溶性成分の相へゆっくり滴下する。その後温度を保ちながら均一になるように撹拌する。
【0053】
撹拌装置としては、パドルミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザーなどが挙げられる。撹拌速度は、通常500〜5000rpm、好ましくは1500〜3000rpmである。撹拌時間は通常5〜20分、好ましくは10〜15分である。その後、ゆっくり攪拌を行ないながら系内温度を徐々に40℃前後まで冷却して目的とするマルチラメラベシクル製剤を得る。
【0054】
上述の方法で製造したマルチラメラベシクル製剤は、必要に応じてエクストルーダー、高圧乳化機、超音波等を用いて、マルチラメラベシクルの粒子径を均一な微粒子に調整することができる。
【0055】
マルチラメラベシクルの粒子径は、通常25〜10000nmであり、50〜3000nmが好ましく、80〜2500nmがより好ましい。粒子径は慣用の方法で、通常、粒度分布計を用いて測定することができる。
【0056】
このようにして得られたマルチラメラベシクル製剤はそのまま用いることも可能であるが、必要に応じて公知の添加剤などを混合して常法により、医薬品、飲食品、医薬部外品、飼料等とすることができる。
【0057】
また前記マルチラメラベシクル製剤を含む外用剤又は化粧料も本発明の別の態様である。本発明の外用剤又は化粧料は、必要に応じて公知の添加剤などを混合して常法により製造することができる。
【0058】
添加剤としては、水溶性成分、油性成分、粉末成分、界面活性剤、高分子成分、増粘剤、粘着性改良剤、被膜形成剤、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、殺菌剤、保存剤、保型剤、保湿剤、皮膚保護剤、清涼化剤、香料、着色剤、キレート剤、潤沢剤、抗炎症剤、鎮痒剤、血行促進剤、収斂剤、組織修復促進剤、制汗剤、無機又は有機粉体、紫外線吸収剤、植物抽出成分、動物抽出成分等を、発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0059】
外用剤としては、クリーム剤、液剤、ローション剤、乳剤、チンキ剤、軟膏剤、水性ゲル剤、油性ゲル剤、エアゾール剤、パウダー剤、シャンプー、石鹸、爪塗布用エナメル剤などが挙げられる。
【0060】
化粧料としては、具体的には、基礎化粧品(例、化粧水、乳液、化粧下地、美容液、ナイトクリーム、パック、メイク落とし製品(クレンジングジェル等)、爪用クリーム等)、サンケア製品(例、サンスクリーン、日焼け肌用化粧水等)、ヘアトリートメント剤(例、ヘアトリートメント、アウトバストリートメント、毛髪用美容液、枝毛コート剤等)、ヘアスタイリング剤(例、ブラッシングローション、カーラーローション、ポマード、チック、セット用ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアリキッド、スタイリングフォーム、ヘアジェル、ウォーターグリース等)、髭剃り用製品(例、シェービングクリーム、アフターシェーブローション等)、メイクアップ化粧品(例、ファンデーション(固形、クリーム状、液状等)、BBクリーム、CCクリーム、コンシーラー、口紅、リップグロス、アイシャドウ、アイライナー、チーク、マスカラ、ブロンザー等)、香水類、リップクリーム、制汗剤、口腔化粧品、歯磨き粉、浴用化粧品(例、入浴剤、バスソルト等)等が挙げられる。
【0061】
化粧料または外用剤中に含まれる本発明のマルチラメラベシクル製剤の含有量は、剤形や目的等に応じて適宜決められる。
【実施例】
【0062】
次に製造例および実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の製造例および実施例に限定されるものではない。
【0063】
<製造例1>
ビス(Nε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩の合成
N
ε−ラウロイル−L−リジン8.2g(25mmol)を、水70gおよび25%水酸化ナトリウム水溶液(10g)に溶解させ、ジエチルエーテル80gを加えた。そこへセバコイルクロライド3.3g(14mmol)をエーテル層にゆっくり加えた。この2層溶液を0℃に保持したまま1時間ほど攪拌し、その後室温で23時間攪拌した。次いで、75%硫酸を滴下し、pH2に調整した後、得られた白色沈殿を濾取し、水でよく洗い乾燥した。得られた化合物を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて10%のビス(N
ε−ラウロイル−L−リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩水溶液を得た。
【0064】
<製造例2>
アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸の合成
L−システイン塩酸塩一水和物(100g、569mmol)を水(200ml)に溶解後、6N水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを5.03に調整した。反応混合物を40℃に加熱し、ピルビン酸エチルエステル(76ml、684mmol)を徐々に添加し、40℃にて3.5時間撹拌し、2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルを得た。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた酢酸エチル溶液にアルゴン下にてトリエチルアミン(159ml、1141mmol)を加え、塩化アセチル(61ml、858mmol)をゆっくりと滴下後、反応混合物を4時間加熱還流し、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸を得た。反応終了後、水(300ml)を加え、さらにHClでpHを1.0に調整した。水層を分離後、有機層を水(300ml)で洗浄し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた酢酸エチル溶液を約500g濃縮し、ヘプタンを加えて再結晶し、ヘプタン/酢酸エチル=2/1で洗浄し、減圧下50℃にて乾燥し、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボン酸の結晶を得た(81g、収率55%)。
1H−NMR(CDCl
3):δ;1.27(3H,t,J=7.12Hz),1.94(3H,s),2.18(3H,s),3.40(1H,d,J=11.6Hz),3.56(1H,dd,J=5.5,11.0Hz),4.20(2H,t,J=7.08Hz),5.00(1H,d,J=5.9Hz),9.10(1H,brs).
【0065】
<調製方法1>
表1に記載の量に従い、成分(B)の化合物、非イオン性界面活性剤、マルチラメラベシクル形成助剤を80℃で完全に均一に溶解し混合する。次に、成分(A)製造例1の化合物(10%水溶液)、ポリオールを成分(C)水に添加し、80℃に加温し、油溶性成分の相へゆっくり滴下する。ホモディスパー、特殊機化株式会社(現PRIMIX株式会社)を使用して、2500rpm、80℃で5分間の撹拌終了後、ゆっくり攪拌を行ないながら、系内温度を徐々に40℃前後まで冷却し、マルチラメラベシクル製剤を得た。
【0066】
<調製方法2>
いっぽう、表2に記載の通り、上記成分(A)を添加しない以外は調製方法1と同じ方法で組成物を得た。
【0067】
<評価法>
マルチラメラベシクル構造の形成の有無
偏光顕微鏡(Nikon社製、倍率400倍)での観察で、マルテーゼクロス像の存在が確認出来るかどうかで判断を行った。
図1に示すようにマルテーゼクロス像が確認出来たものは、マルチラメラベシクル構造を形成していると判断した。評価基準は以下の通りである。
◎:全体にマルテーゼクロス像が確認できた。
○:部分的にマルテーゼクロス像が確認できた。
×:マルテーゼクロス像が確認できなかった。
【0068】
保存安定性試験
調製した組成物を、40℃、25℃、−5℃の恒温槽にそれぞれ2週間保存した後、偏光顕微鏡観察を行った。マルテーゼクロス像が確認出来たものは、マルチラメラベシクル構造を形成していると判断した。評価基準は上述の通りである。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1に示すように、成分(A)〜(C)のみ(実施例1)でもマルチラメラベシクル構造を形成し保存安定性にも優れたマルチラメラベシクル製剤が得られた。さらにポリオール、非イオン性界面活性剤、マルチラメラベシクル形成助剤を加える場合も
図2(実施例2)に示すようにマルチラメラベシクル構造を形成し保存安定性にも優れたマルチラメラベシクル製剤が得られた。いっぽう、成分(A)を加えない場合には、表2及び
図3(比較例2)に示すようにマルチラメラベシクル構造を形成しなかった。