(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下方向に伸びる回転軸を有するロータと、該ロータに対向するステータと、該ステータを保持するハウジングと、該ハウジングに取り付けられるヒートシンクと、電子部品が実装されて前記ヒートシンク上に配される回路基板と、を備え、
前記電子部品が発熱素子を含み、
前記ハウジングが、筒状の筒部と、該筒部の端面を覆う蓋部と、を有し、
前記ヒートシンクが、前記蓋部の上面に接し、固定部材を用いて前記蓋部に直接取り付けられ、
前記発熱素子が熱伝導部材を介して前記ヒートシンクに接し、
前記蓋部は、軸方向のうちの前記ヒートシンク側へ突出する突出部と、該突出部の外周端に連続して形成される環状の環状部と、を有し、
前記ヒートシンクは、下面において前記蓋部に面した凹部で形成された収納部を有し、
前記突出部の少なくとも一部は、前記収納部内に配され、
前記環状部は、前記ヒートシンクに接しており、
前記収納部の底面には、前記固定部が固定される孔が形成され、
前記発熱素子を除く少なくとも一部の前記電子部品は、前記回路基板上の前記ヒートシンクと反対側の面に実装され、
前記回路基板上の前記ヒートシンクと反対側の面に実装された前記電子部品の軸方向の寸法は、前記発熱素子の軸方向の寸法よりも大きいことを特徴とするモータ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明の例示的な実施形態を説明する。なお、本明細書では、ロータ101の回転軸(後述する
図1のシャフト101a参照)が延びる方向を単に「軸方向」と呼ぶ。さらに、該軸方向において、シャフト101aからヒートシンク2に向かう方向を単に軸方向の「上方」と呼び、ヒートシンク2からシャフト101aに向かう方向を単に軸方向の「下方」と呼ぶ。また、シャフト101aを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。また、各構成要素の表面において、軸方向の上方に向く面を「上面」と呼び、軸方向の下方に向く面を「下面」と呼び、径方向に向く面を「側面」と呼ぶ。
【0012】
<1.第1実施形態>
<1−1.モータの概略構成>
まず、本発明の例示的な第1実施形態に係るモータ100について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータ100の構成例を示す概略縦断面図である。
図1は、ロータ101の回転軸線を含む切断面でモータ100を切断した場合の断面を示す。
図1のモータ100は車両などに搭載されるモータである。
【0013】
モータ100は、ロータ101と、環状のステータ102と、ハウジング1と、ヒートシンク2と、回路基板3と、ベアリング5と、カバー104と、コネクタ105と、を備える。
【0014】
ロータ101はシャフト101aと複数のマグネット101bとを有する。シャフト101aは軸方向の上下方向に伸びる回転軸である。ステータ102は、モータ100の電機子であり、ロータ101と対向して配される。ハウジング1は、ロータ101及びステータ102などを収容する金属製の筐体であり、ステータ102及びベアリング5を保持する。
【0015】
ヒートシンク2は、たとえばアルミニウム、銅などの熱伝導性が良好な材料を用いて形成され、ネジ6を用いてハウジング1に取り付けられる。回路基板3は、モータ100の制御回路を搭載し、ヒートシンク2の上に配される。制御回路は、ヒートシンク2とハウジング1(後述する蓋部1b)とに設けられた貫通孔を介してステータ102と電気的に接続される。
【0016】
また、回路基板3の下面には位置検出センサ103が設けられる。位置検出センサ103は、その中心がシャフト101aの回転軸線上に位置し、ロータ101の回転角度を検出する。
【0017】
ベアリング5は、シャフト101aを回転可能に支持する軸受である。ベアリング5は、たとえばボールベアリング又はスリーブ軸受などで構成される。カバー104は、回路基板3を保護する部材であり、ヒートシンク2及び回路基板3の上に設けられて、これらの上面を覆う。
【0018】
コネクタ105は、外部接続端子であり、配線105aを介して回路基板3と外部電源(図示省略)及びその他の外部装置(図示省略)とを電気的に接続する。外部電源からコネクタ105及び回路基板3を介してステータ102に電力が供給されると、ロータ101はステータ102に対して相対的に回転可能となる。
【0019】
<1−2.ハウジングの構成>
ハウジング1は、筒状の筒部1aと、蓋部1bと、下蓋1cと、を有する。蓋部1bは、筒部1aと同一部材により形成され、筒部1aの上方側の端面を覆う。下蓋1cは、筒部1aの下方側の開口した端面を覆い、図示しない固定手段により筒部1aの下方端に取り付けられる。下蓋1cの中央部分には、中央開口10aが形成される。中央開口10aには、ベアリング5が取り付けられ、シャフト101aが挿通される。なお、
図1の例示に限定されず、筒部1aと蓋部1bとは別部材であってもよい。
【0020】
蓋部1bは、突出部11と、環状の環状部12と、突壁部13と、挿通孔14と、を有する。突出部11は環状部12の内周端から軸方向に突出する。つまり、環状部12は突出部11の外周端に連続して形成される。突出部11の内側は上方に向けて凹んでおり、その底面の中央部分には、シャフト101aが挿通される中央開口10bが形成される。
【0021】
中央開口10bの周囲には、中央開口10bに沿って突壁部13が形成される。突壁部13は、突出部11の底面から軸方向の下方に延びる。突壁部13の内側にはベアリング5が取り付けられる。すなわち、突壁部13は、突出部11内に配されてベアリング5を保持する保持部である。蓋部1bの中央開口10bに取り付けられたベアリング5は、下蓋1cの中央開口10aに取り付けられたベアリング5と共に、シャフト101aを回転可能に支持する。
【0022】
突壁部13の外側には、複数の挿通孔14が形成される。これらの挿通孔14にはネジ6が挿通される。なお、
図1では、ヒートシンク2を蓋部1bに取り付けて固定する固定部材としてネジ6を用いているが、この例示に限定されず、固定部材はリベットなどの他の部材であってもよい。
【0023】
また、蓋部1bの上面及び下面(特に突出部11の外面及び内面)において、挿通孔14の周囲には研磨加工などが施され、挿通孔14の周囲の表面粗さはハウジング1の他の部分(たとえば筒部1aの外周面)の表面粗さよりも小さくされる。こうすれば、ネジ6及びヒートシンク2が蓋部1bに密着し易くなる。従って、ネジ6を用いてヒートシンク2を蓋部1bにより強固に取り付けて固定することができる。
【0024】
<1−3.ヒートシンクの構成>
ヒートシンク2は、
図1に示すように、蓋部1bの上面に接し、ネジ6を用いて蓋部1bに取り付けられる。モータ100では、ハウジング1とヒートシンク2との間にフレーム等の他の部材が介在しないので、たとえばフレームが介在する従来構造のモータよりも軸方向の寸法を小さくすることができ、容易に組立を行うことができる。さらに、部品数を低減して、モータ100の製造コストも削減することもできる。
【0025】
ヒートシンク2は、収納部21と、挿通開口22と、ネジ孔23と、を有する。収納部21は、ヒートシンク2の下面において、
図1に示すように蓋部1bに面した凹部である。本実施形態において、ヒートシンク2は単一の部材である。なお、この例示に限定されず、ヒートシンク2は、複数の部材から構成されてもよい。
【0026】
収納部21の底面には、挿通開口22とネジ孔23とが形成される。挿通開口22は、軸方向にヒートシンク2を貫通し、回路基板3の下面に配された位置検出センサ103に向かって開口している。挿通開口22内では、シャフト101aの上端部が位置検出センサ103に対して軸方向の下方に配される。
【0027】
ネジ孔23は挿通開口22の径方向外側に設けられる。ヒートシンク2が蓋部1bに取り付けられる際、ネジ6が挿入孔14を介してネジ孔23に固定される。
【0028】
収納部21内には、蓋部1bの少なくとも一部が配され、特に、突出部11全体が収納部21に嵌まる。なお、
図1の例示に限定されず、突出部11の少なくとも一部が収納部21に配されていればよい。こうすれば、軸方向におけるモータ100の寸法をさらに小さくできる。
【0029】
収納部21の底面には蓋部1bの突出部11が接する。従って、ハウジング1の突出部11をヒートシンク2に直接に当てて、軸方向におけるハウジング1に対するヒートシンク2の位置決めを行うことができる。
【0030】
また、収納部21の周囲では、環状部12がヒートシンク2の下面に接する。従って、ヒートシンク2をハウジング1の環状部12に直接に当てて、軸方向におけるハウジング1に対するヒートシンク2の位置決めをより確実に行うことができる。
【0031】
ヒートシンク2の下面(特に収納部21の底面)において、蓋部1bと接する部分の少なくとも一部(特に突出部11と接する領域)には、研磨加工などが施され、その表面粗さはヒートシンク2の下面以外の表面(たとえば側面)の表面粗さよりも小さくされる。こうすれば、ヒートシンク2が蓋部1bにネジ止めされる際、ヒートシンク2と蓋部1bとの間の密着性が高まり、特に突出部11が収納部21の底面に密着し易くなる。従って、ネジ6を用いてフランジ部1dにヒートシンク2をより強固に取り付けることができる。さらに、ヒートシンク2が熱をハウジング1に伝え易くなるので、ヒートシンク2の放熱性を向上させることができる。
【0032】
なお、収納部21の底面において、
図1では挿通開口22が形成されているが、この例示に限定されず、挿通開口22に代えて凹部が形成されてもよい。凹部が形成される場合、該凹部内にシャフト101aの上端部が配され、該凹部の底面に位置検出センサ103が設けられる。なお、位置検出センサ103はたとえばヒートシンク2に設けられた図示しない貫通孔を介して回路基板3に接続される。
【0033】
また、収納部21は、
図1では凹部で形成されるが、この例示に限定されず、蓋部1bに向かって開口する貫通孔で形成されてもよい。但し、この場合、ネジ孔23はヒートシンク2の下面において収納部21の径方向外側に設けられ、挿通孔14は蓋部1bの環状部12に設けられる。
【0034】
<1−4.回路基板の構成>
回路基板3は、エポキシなどの樹脂材料を用いた基板である。回路基板3は、たとえば図示しないネジ又はリベットなどを用いてヒートシンク2の上面に取り付けられる。
図2は、本発明の第1実施形態に係るヒートシンク2と回路基板3との間の構成例を示す概略縦断面図である。
図2は、軸方向に平行な面でヒートシンク2及び回路基板3を切断した場合の縦断面を示す。
【0035】
回路基板3には、電子部品4が実装される。電子部品4は、発熱量が比較的多い発熱素子4aと、発熱量が比較的少ない低発熱素子4bと、を含む。発熱素子4aは、たとえば、FET(Field Emission Transistor)などのスイッチング素子である。低発熱素子4bは、たとえばコンデンサなどである。
【0036】
発熱素子4aは、
図2に示すように、回路基板3上のヒートシンク2に対向する面(すなわち回路基板3の下面)に実装されて、ヒートシンク2と回路基板3との間に配される。発熱素子4aの下面(たとえばヒートシンク2に対向する面)には、放熱グリス7が塗布される。
図2において発熱素子4aは、放熱グリス7を介してヒートシンク2に接する。発熱素子4aから放熱グリス7を介してヒートシンク2に熱が伝わることにより、発熱素子4aで発生した熱をヒートシンク2に伝え易くすることができる。
【0037】
発熱素子4aを除く少なくとも一部の電子部品4(たとえば低発熱素子4b)は回路基板3上のヒートシンク2と反対側の面(回路基板3の上面)に実装される。こうすれば、軸方向の寸法が発熱素子4aよりも大きい電子部品4がヒートシンク2と回路基板3との間に配されない。そのため、放熱グリス7を介してヒートシンク2と発熱素子4aとを容易に接触させることができる。従って、回路基板3に実装された発熱素子4aで発生する熱をヒートシンク2に伝え易くなり、発熱素子4aの温度上昇を抑制することができる。
【0038】
なお、
図2の例示に限定されず、発熱素子4aの下面とヒートシンク2との間には、放熱グリス7以外の放熱剤、他の熱伝導部材などが設けられていてもよい。放熱剤、熱伝導部材などは、熱伝導性、電気絶縁性、及び低熱膨張性に優れていれば良く、放熱グリス7の代わりに設けられていてもよいし、放熱グリス7と共に設けられてもよい。
【0039】
<1−5.第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態のモータ100の変形例について説明する。
図3は、第1実施形態の変形例に係るヒートシンク2と回路基板3との間の構成例を示す概略縦断面図である。
図3は、軸方向に平行な面でヒートシンク2及び回路基板3を切断した場合の縦断面を示す。
【0040】
図3に示すように、ヒートシンク2の上面には、回路基板3の下面に実装された発熱素子4aに対応する位置に収容凹部2aが形成される。収容凹部2aには、発熱素子4aが収容される。発熱素子4aの下面は収容凹部2aの底面と放熱グリス7を介して接する。なお、発熱素子4a以外の電子部品4(たとえば低発熱素子4b)が回路基板3の下面に実装される場合、同様にして、該電子部品4の少なくとも一部が収容凹部2aに収容されてもよい。さらに、回路基板3の下面に実装された電子部品4の軸方向における寸法が異なる場合、対応する電子部品4の寸法に応じて収容凹部2aの深さが設定されてもよい。こうすれば、回路基板3をヒートシンク2に接近させて配置することができる。従って、モータの軸方向の寸法をより短縮することができる。
【0041】
<2.第2実施形態>
<2−1.回路基板の構成>
次に、本発明の例示的な第2実施形態に係るモータ100について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るヒートシンク2と回路基板3との間の構成例を示す概略縦断面図である。
図4は、軸方向に平行な面でヒートシンク2及び回路基板3を切断した場合の縦断面を示す。なお、本実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ符号又は同じ名称を付してその説明を省略する場合がある。
【0042】
回路基板3は、所謂銅インレイ(Cu Inlay)構造を有する基板である。回路基板3を貫通する貫通孔3b内には、金属部材3aが配される。本実施形態では、金属部材3aには、銅が用いられているが、他の金属材料が用いられてもよい。金属部材3aは、
図3に示すように回路基板3を貫通する。
【0043】
電子部品4(特に発熱素子4a)は回路基板3上のヒートシンク2と反対側の面(すなわち回路基板3の上面)に実装される。発熱素子4aは金属部材3aの上面に設けられる。放熱グリス7は回路基板3の下面のうちの少なくとも金属部材3aの下面に塗布される。従って、発熱素子4aは、金属部材3a及び放熱グリス7を含む熱伝導部材を介してヒートシンク2に接する。
【0044】
こうすれば、回路基板3のヒートシンク2と反対側の面に実装された発熱素子4aで発生した熱を金属部材3a及び放熱グリス7を含む熱伝導部材を介してヒートシンク2に伝えて放熱することができる。また、たとえば、軸方向の寸法が発熱素子4aよりも大きい電子部品4がヒートシンク2と回路基板3との間に配されない。これにより、金属部材3a及び放熱グリス7を介してヒートシンク2と発熱素子4aとを容易に接触させることができる。従って、回路基板3に実装された発熱素子4aで発生する熱をヒートシンク2に伝え易くなり、発熱素子4aの温度上昇を抑制することができる。
【0045】
<3.その他>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態は適宜任意に組み合わせることができる。
【0046】
たとえば、上述の第1及び第2実施形態では本発明が車載モータに適用される場合を示したが、本発明は車載モータ以外のモータに適用されてもよい。