(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852289
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ワイヤレスセンサシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/02 20060101AFI20210322BHJP
H03H 9/42 20060101ALI20210322BHJP
G01N 29/024 20060101ALI20210322BHJP
G01N 29/032 20060101ALI20210322BHJP
G08C 15/06 20060101ALI20210322BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20210322BHJP
G08C 17/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
G01N29/02 501
H03H9/42
G01N29/024
G01N29/032
G08C15/06 A
G08C17/00 Z
G08C17/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-121318(P2016-121318)
(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-227444(P2017-227444A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 高裕
(72)【発明者】
【氏名】古市 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃
(72)【発明者】
【氏名】仲村 慎吾
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−191889(JP,A)
【文献】
特開2005−092555(JP,A)
【文献】
特開2007−140880(JP,A)
【文献】
特開2005−092490(JP,A)
【文献】
特開2007−317084(JP,A)
【文献】
特開2006−170864(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0121999(US,A1)
【文献】
特開2005−092704(JP,A)
【文献】
特開2015−129647(JP,A)
【文献】
特開2010−261840(JP,A)
【文献】
特開2015−180871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 − G01N 29/52
G08C 13/00 − G08C 25/04
H03H 3/08 − H03H 3/10
H03H 9/145
H03H 9/25
H03H 9/42 − H03H 9/44
H03H 9/64
H03H 9/68
H03H 9/72
H03H 9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の読取り装置に収容され、かつ、高周波の電波を無線にて送受信するn(nは複数)個の高周波回路と、
前記読取り装置に収容され、かつ、前記高周波回路の動作を制御する制御回路と、
圧電基板上に形成された櫛歯電極及び反射電極によりセンサを構成すると共に、前記高周波回路からの送信電波を受信して前記櫛歯電極と前記反射電極との間に弾性表面波を発生させ、前記弾性表面波の伝播面における物理量に応じた伝播特性を有する応答信号を前記高周波回路に送信する弾性表面波素子を有する複数のセンサ素子と、を備え、
前記制御回路が、複数の前記センサ素子からの前記応答信号に基づいて前記弾性表面波素子における前記伝播面の物理量を測定するワイヤレスセンサシステムにおいて、
複数の前記センサ素子をn個のグループに分け、1つのグループに属する少なくとも1つの前記センサ素子の前記弾性表面波素子の特性を、他のグループに属する1つの前記センサ素子の前記弾性表面波素子の特性と同一に構成し、
前記n個のグループに対応するn個の前記高周波回路は、それぞれが対応する前記グループに属する前記センサ素子との間でのみ電波を送受信可能に構成されることを特徴とするワイヤレスセンサシステム。
【請求項2】
請求項1に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、
個々の前記高周波回路は、時分割で前記送信電波を送信し、
各グループに属するセンサ素子は、当該グループに対応する前記高周波回路との間でのみ送受信可能な位置に配置されることを特徴とするワイヤレスセンサシステム。
【請求項3】
請求項1に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、
個々の前記高周波回路は、偏波面が異なるアンテナを有し、
各グループに属するセンサ素子は、当該グループに対応する前記高周波回路のアンテナと同じ偏波面のアンテナを有することを特徴とするワイヤレスセンサシステム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、
前記弾性表面波素子の前記櫛歯電極と前記反射電極との間の距離を等しくすることにより、前記センサ素子の前記弾性表面波素子の特性を同一にしたことを特徴とするワイヤレスセンサシステム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、
前記センサ素子は、前記櫛歯電極と複数の前記反射電極とを同一の前記圧電基板上に形成した複数のセンサを有することを特徴とするワイヤレスセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象ポイントの圧力や温度等の物理量をワイヤレスにて測定可能なワイヤレスセンサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)を利用したワイヤレスセンサシステムは各種知られており、例えば、ワイヤレスセンサとして特許文献1に記載された識別タグを用いるものがある。
図5は、この識別タグ101の基本構成を示すもので、102は圧電基板、103は櫛歯電極、104,105は反射電極、106は櫛歯電極103に接続されたアンテナである。ここで、複数の反射電極104は、その個数と配置とによって識別タグ101の特徴を示すコードを形成している。一方、少なくとも一つの反射電極105は、他の反射電極104よりも大きい反射率を有している。
【0003】
この従来技術では、図示されていない読取り装置から送られる高周波の電波をアンテナ106により受信し、その電力により櫛歯電極103を機械的に振動させて圧電基板102上に弾性表面波を発生させる。複数の反射電極104により反射した弾性表面波は櫛歯電極103によって電力に変換され、応答信号としてアンテナ106から読取り装置に送信される。
【0004】
この場合、複数の反射電極104により反射して櫛歯電極103に到達した弾性表面波の波形は、反射電極104の個数や配置により相違するため、読取り装置は、受信波形に基づいて識別タグ101の特徴を示すコードを認識することができる。なお、反射電極104よりも反射率が大きい反射電極105からの反射波形は振幅が大きくなるので、単に識別タグ101の有無を検出できれば良い用途では、外部の読取り装置から微小電力にて高周波信号を送信し、識別タグ101からの応答信号によって識別タグ101の有無を検出することが可能である。
【0005】
また、反射電極104により反射した弾性表面波の伝播遅延時間や振幅減衰量等の伝播特性は、圧電基板上の弾性表面波の伝播面の圧力や温度等によって変化するため、応答信号の波形に基づいて伝播面における物理量を測定することができる。
上記の原理を利用して、圧電基板上に複数の反射電極と単一の櫛歯電極とを組み合わせて複数のセンサを形成し、これらのセンサによって多数のポイントにおける物理量を同時に測定するようにしたワイヤレスセンサシステムが、非特許文献1に記載されている。
なお、
図6は、非特許文献1に記載されたシステムにより、4つの反射電極と単一の櫛歯電極とをそれぞれ組み合わせて構成した4つのセンサ(チャンネルCH1〜CH4)により測定した、各反射電極からの伝播遅延時間と反射減衰量との関係を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平9−508974号公報(請求項1、第4頁第3行〜第5頁第21行、FIG.1,FIG.3等)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SAWパッシブワイヤレスセンサシステム(062302002),戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)第5回成果発表会,平成21年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や非特許文献1に記載されたワイヤレスセンサシステムにおいて、一個の圧電基板上に作製可能なセンサの数は圧電基板の大きさによって制約を受ける。例えば、一個の圧電基板につき、最大でも数十個程度のセンサが作製上の限界となる。従って、仮に数十箇所を超えるポイントを対象として多点測定する場合には、そのポイントの数に応じた複数の圧電基板と、これらに対応した複数の読取り装置とが必要になる。
しかしながら、このように複数の読取り装置を使用する場合には、複数の読取り装置が同一のセンサからの信号を同時に読み取ることによって混信が生じ、目的とするポイントの物理量を正確に測定することができないおそれがあった。全ての素子の特性を変えれば混信が生じないようにすることは可能であるが、その場合には素子の製造コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の解決課題は、複数の弾性表面波素子を用いて多点測定を行う場合にも、混信のおそれがなく信頼性の高い測定を可能にしたワイヤレスセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、
単一の読取り装置に収容され、かつ、高周波の電波を無線にて送受信する
n(nは複数)個の高周波回路と、
前記読取り装置に収容され、かつ、前記高周波回路の動作を制御する制御回路と、
圧電基板上に形成された櫛歯電極及び反射電極によりセンサを構成すると共に、前記高周波回路からの送信電波を受信して前記櫛歯電極と前記反射電極との間に弾性表面波を発生させ、前記弾性表面波の伝播面における物理量に応じた伝播特性を有する応答信号を前記高周波回路に送信する弾性表面波素子を有する複数のセンサ素子と、を備え、
前記制御回路が、複数の前記センサ素子からの前記応答信号に基づいて前記弾性表面波素子における前記伝播面の物理量を測定するワイヤレスセンサシステムにおいて、
複数の前記センサ素子を
n個のグループに分け、1つのグループに属する少なくとも1つの前記センサ素子の前記弾性表面波素子の特性を、他のグループに属する1つの前記センサ素子の前記弾性表面波素子の特性と同一に構成し、
前記
n個のグループに対応
するn個の前記高周波回路は、
それぞれが対応する前記グループに属する前記センサ素子との間でのみ電波を送受信可能に構成されるものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、個々の前記高周波回路は、時分割で前記送信電波を送信し、各グループに属するセンサ素子は、当該グループに対応する前記高周波回路との間でのみ送受信可能な位置に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、個々の前記高周波回路は、偏波面が異なるアンテナを有し、各グループに属するセンサ素子は、当該グループに対応する前記高周波回路のアンテナと同じ偏波面のアンテナを有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、前記弾性表面波素子の前記櫛歯電極と前記反射電極との間の距離を等しくすることにより、前記センサ素子の前記弾性表面波素子の特性を同一にしたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載したワイヤレスセンサシステムにおいて、前記センサ素子は、前記櫛歯電極と複数の前記反射電極とを同一の前記圧電基板上に形成した複数のセンサを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の素子部からの応答信号が混信するおそれがなく、信頼性の高いワイヤレスセンサシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイヤレスセンサシステムの全体構成図である。
【
図2】
図1における弾性表面波素子の構成図である。
【
図4】
図3において制御回路から出力される駆動指令の説明図である。
【
図5】特許文献1に記載された識別タグの説明図である。
【
図6】非特許文献1に記載された伝播遅延時間と反射減衰量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、
図1は、この実施形態に係るワイヤレスセンサシステムの全体構成図である。
図1において、読取り装置10は、制御回路13及び第1,第2の高周波回路11A,11Bを有し、高周波回路11A,11Bにはアンテナ12A,12Bがそれぞれ設けられている。
【0018】
21A1,21A2,21A3は第1の高周波回路11Aとの間で電波を送受信する弾性表面波素子、21B1,21B2,21B3は第2の高周波回路11Bとの間で電波を送受信する弾性表面波素子であり、それぞれがアンテナ22A1,22A2,22A3、またはアンテナ22B1,22B2,22B3を備えている。
ここで、弾性表面波素子21A1,21A2,21A3は第1素子部20A(第1のグループ)を構成し、弾性表面波素子21B1,21B2,21B3は第2素子部20B(第2のグループ)を構成しており、各素子21A1,21A2,21A3,21B1,21B2,21B3は、目的とする測定ポイントにそれぞれ配置されている。
【0019】
なお、第1素子部2Aと第2素子部20Bとは、互いにある程度離して配置されており、第1の高周波回路11Aは第1素子部2Aのみとの間で、第2の高周波回路11Bは第2素子部20Bのみとの間で、それぞれ電波を送受信可能となっている。
ここで、高周波回路の数(素子部の数)はn(nは複数)個であれば良い。また、各素子部を構成する弾性表面波素子の数は、この実施形態では第1素子部2A,第2素子部2Bともに各3個であるが、一般に1以上の任意の数であれば良い。更に、各素子部を構成する弾性表面波素子の数が異なっていても良い。
【0020】
次に、
図1における弾性表面波素子21A1,21A2,21A3,21B1,21B2,21B3の構成について説明する。
図2(a),(b)は、弾性表面波素子の構成例を示しており、これらの弾性表面波素子210,250は、
図1の弾性表面波素子21A1,21A2,21A3,21B1,21B2,21B3に用いられるものである。
【0021】
図2(a)に示す弾性表面波素子210は、圧電基板211の一端に配置され、かつアンテナ220と接地との間に接続された櫛歯電極212と、圧電基板211の他端に配置された反射電極213と、から構成されている。
また、
図2(b)に示す弾性表面波素子250は、圧電基板251のほぼ中央に配置され、かつアンテナ260と接地との間に接続された櫛歯電極252と、圧電基板251の両端にそれぞれ配置された反射電極253,254と、から構成されている。
図2(a)の例では、櫛歯電極212と反射電極213とにより1個のセンサが構成され、
図2(b)の例では、櫛歯電極252と反射電極253,254とにより2個のセンサがそれぞれ構成されることになる。
【0022】
これらの弾性表面波素子210,250において、弾性表面波の伝播遅延時間は、櫛歯電極212と反射電極213との間の距離(
図2(a))、または、櫛歯電極252と反射電極253,254との間の距離(
図2(b))に応じて変化するので、これらの距離を変えれば各素子における弾性表面波の伝播遅延時間、すなわち各素子の特性を変えることができ、制御回路13による各素子の識別が可能になる。
【0023】
例えば、
図2(a)の弾性表面波素子210を用いて
図1の弾性表面波素子21A1,21A2,21A3(または21B1,21B2,21B3)を構成する場合には、個々の素子における櫛歯電極212と反射電極213との間の距離を変えることにより、制御回路13は、特性が互いに異なる弾性表面波素子21A1,21A2,21A3(または21B1,21B2,21B3)をそれぞれ識別することが可能である。
このことは、
図2(b)に示した弾性表面波素子250を用いて
図1の弾性表面波素子21A1,21A2,21A3(または21B1,21B2,21B3)を構成する場合にも同様である。
【0024】
ここで、
図1における第1素子部20Aの弾性表面波素子21A1と第2素子部20Bの弾性表面波素子21B1とは同一の特性(櫛歯電極と反射電極との間の距離が等しい)であれば良く、同様に、第1素子部20Aの弾性表面波素子21A2と第2素子部20Bの弾性表面波素子21B2とは同一の特性、第1素子部20Aの弾性表面波素子21A3と第2素子部20Bの弾性表面波素子21B3とは同一の特性であれば良い。
このように、第1素子部20Aと第2素子部20Bとで特性が同一の弾性表面波素子を使用することにより、仮に各素子部20A,20Bを構成する弾性表面波素子の個数が等しい場合(
図1の例では、各3個)、その個数分、すなわち3種類の特性を有する弾性表面波素子を用いて全ての弾性表面波素子21A1,21A2,21A3,21B1,21B2,21B3を構成することができ、全体的なコストの低減が可能になる。
【0025】
次に、
図3は、
図1における読取り装置10の構成図である。
図3では、
図1の制御回路13及び第1の高周波回路11Aの内部構成を示しているが、第2の高周波回路11Bは第1の高周波回路11Aと同様に構成されている。
【0026】
図3において、制御回路13は、CPU131、メモリ132及び表示部133を備え、高周波回路11Aは高周波信号発生回路111及び送受信回路112を備えている。
CPU131は、第1の高周波回路11Aに対する駆動指令SAを生成すると共に、高周波回路11A内の送受信回路112が受信した応答信号に基づいて、第1素子部20Aの弾性表面波素子21A1,21A2,21A3を識別する。また、CPU131は、応答信号から弾性表面波の伝播遅延時間、振幅等を演算し、個々の弾性表面波素子21A1,21A2,21A3が測定した圧力、温度等の物理量を演算する。
更に、CPU131は、第2の高周波回路11Bに対する駆動指令SBを生成し、前記同様の処理によって第2素子部20Bの弾性表面波素子21B1,21B2,21B3が測定した物理量を演算する。
【0027】
メモリ132は、検出動作を行うための所定のプログラムや、測定結果である物理量等を記憶するものであり、表示部133は、必要に応じて測定結果等を表示するために用いられる。
なお、制御回路13及び高周波回路11A,11Bの構成は、
図3に示したものに何ら限定されないのは言うまでもない。
【0028】
図4は、制御回路13から出力される駆動指令SA,SBの一例を示している。
図示するように、駆動指令SA,SBは互いに時分割でON,OFFを繰り返し、駆動指令SAのON期間では高周波回路11Aによる第1素子部20Aとの間の送受信動作を有効とし、駆動指令SBのON期間では高周波回路11Bによる第2素子部20Bとの間の送受信動作を有効とするものである。
【0029】
本実施形態において、例えば、第1の高周波回路11Aの高周波信号発生回路111は、駆動指令SAに従って高周波信号を生成し、この高周波信号を送受信回路112に送出する。送受信回路112は、高周波信号の変調、増幅、フィルタ処理等を行い、アンテナ12Aを介して第1素子部20Aの弾性表面波素子21A1,21A2,21A3に高周波の電波を送信する。
弾性表面波素子21A1,21A2,21A3は、アンテナ22A1,22A2,22A3を介して電波を受信し、各測定ポイントからの弾性表面波の伝播遅延時間、振幅等により測定した圧力、温度等の物理量を、応答信号として高周波回路11Aに送信する。高周波回路11A内の送受信回路112は、アンテナ12Aにより受信した応答信号のフィルタ処理、復調、増幅等を行い、制御回路13に送出する。
【0030】
制御回路13は、送受信回路112から送られた信号をディジタル信号に変換し、弾性表面波素子21A1,21A2,21A3が検出した物理量を各測定ポイントの測定値として記憶、表示等の処理を実行する。
その際、前述したように、弾性表面波素子21A1,21A2,21A3は、各素子における櫛歯電極と反射電極との間の距離が異なっていて特性が互いに異なるため、各素子の識別、言い換えれば各測定値がどの測定ポイントにおける測定値であるかを識別することが可能である。
【0031】
一方、第2の高周波回路11Bと第2素子部20Bとの間の送受信動作は、上述した第1の高周波回路11Aと第2素子部20Aとの間の送受信動作と同様に行われる。
但し、
図4に示したように駆動指令SA,SBが時分割で出力されることにより、第1の高周波回路11Aによる送受信動作が有効な期間は第2の高周波回路11Bによる送受信動作が無効になり、逆に第2の高周波回路11Bによる送受信動作が有効な期間は第1の高周波回路11Aによる送受信動作が無効になっている。
【0032】
制御回路13では、現時点で駆動指令SA,SBのどちらが有効であるかを認識可能であるため、応答信号が第1の高周波回路11Aまたは第2の高周波回路11Bのどちらを経由したものであるかを識別可能である。
従って、例えば、第1素子部20Aの弾性表面波素子21A1と第2素子部20Bの弾性表面波素子21B1とが同一特性であったとしても、各素子21A1,21B1から時分割で受信した電波を正確に識別して処理することができる。このことは、弾性表面波素子21A2と21B2、及び、弾性表面波素子21A3と21B3との関係においても同様である。
【0033】
以上のように、この実施形態では、第1素子部20Aについては第1の高周波回路11Aのみとの間で電波を送受信し、第2素子部20Bについては第2の高周波回路11Bのみとの間で電波を送受信すると共に、第1素子部20Aについては個々の弾性表面波素子21A1,21A2,21A3の特性がそれぞれ異なり、また、第2素子部20Bについては個々の弾性表面波素子21B1,21B2,21B3の特性がそれぞれ異なっている。更に、第1の高周波回路11Aと第2の高周波回路11Bとは、それぞれの送受信動作が時分割で有効となるように制御されている。
このため、制御回路13において、各素子21A1,21A2,21A3,21B1,21B2,21B3からの受信電波が混信する恐れがなく、各測定ポイントの測定値を正確に識別することができる。
【0034】
なお、上述したごとく第1の高周波回路11Aと第2の高周波回路11Bとを時分割で動作させる以外に混信を防止する方法としては、以下のような方法がある。
すなわち、第1の高周波回路11Aと第1素子部20Aとの間、及び、第2の高周波回路11Bと第2素子部20Bとの間で、アンテナの偏波面が異なるように設定すれば良い。例えば、高周波回路11Aのアンテナ12Aと第1素子部20A側のアンテナ22A1,22A2,22A3とを垂直偏波に設定し、高周波回路11Bのアンテナ12Bと第2素子部20B側のアンテナ22B1,22B2,22B3とを円偏波に設定すれば、例えば弾性表面波素子21A1と弾性表面波素子21B1とが同じ特性であっても混信を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、原理的に任意の複数の高周波回路を時分割で動作させることが可能であるから、各高周波回路との間で送受信する多数の弾性表面波素子を用いることにより、多点の物理量を同時に測定する大規模なワイヤレスセンサシステムとして利用することできる。
【符号の説明】
【0036】
10:読取り装置
11A,11B:高周波回路
12A,12B:アンテナ
20A:第1素子部
20B:第2素子部
21A1,21A2,21A3,21B1,21B2,21B3:弾性表面波素子
22A1,22A2,22A3,22B1,22B2,22B3:アンテナ
111:高周波信号発生回路
112:送受信回路
131:CPU
132:メモリ
133:表示部
210,250:弾性表面波素子
211,251:圧電基板
212,252:櫛歯電極
213,253,254:反射電極
220,260:アンテナ
SA,SB:駆動指令