特許第6852301号(P6852301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6852301生麺または生皮用鮮度保持包装袋、生麺または生皮入り包装体、および生麺または生皮の鮮度保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852301
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】生麺または生皮用鮮度保持包装袋、生麺または生皮入り包装体、および生麺または生皮の鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20210322BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20210322BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20210322BHJP
【FI】
   B65D85/50 100
   B65D81/24 F
   A23L7/109 C
   A23L7/109 D
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-161064(P2016-161064)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-27809(P2018-27809A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年7月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−155463(JP,A)
【文献】 特開2014−172632(JP,A)
【文献】 特開2016−113172(JP,A)
【文献】 特開2002−37347(JP,A)
【文献】 特開2001−340050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 81/24
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生麺または生皮を内容物として収容するための鮮度保持包装袋であって、
前記鮮度保持包装袋は、無孔の合成樹脂フィルムからなり、
前記鮮度保持包装袋の内部空間に前記生麺または前記生皮が前記内容物として収容されている包装体において、前記包装体の40℃、90%RHにおける前記内容物100gあたりの水蒸気透過量Aが、2.5[g/100g・day]以上12[g/100g・day]以下であり、
前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける厚み10μmあたりの水蒸気透過量Bが、150[g/m・day]以上300[g/m・day]以下であり、
前記合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける厚み10μmあたりの酸素透過量が、1[cc/m・day・atm]以上300[cc/m・day・atm]以下であり、
前記合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量が、1[cc/m・day・atm]以上70[cc/m・day・atm]以下であ
前記合成樹脂フィルムの厚みが、20μm以上50μm以下である、
生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
【請求項2】
前記包装袋の内表面に対する水の接触角が5°以上80°以下である、請求項1に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
【請求項3】
前記鮮度保持包装袋の内表面にエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂内層を有する、請求項1または2に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
【請求項4】
前記鮮度保持包装袋の外表面にポリアミド樹脂材料を含む樹脂外層を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
【請求項5】
前記内容物の含水率が、前記内容物全量に対して25質量%以上70質量%以下である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋の内部空間に、生麺または生皮が内容物として密封されてなる、生麺または生皮入り包装体。
【請求項7】
前記内容物の含水率が、前記内容物全量に対して25質量%以上70質量%以下である、請求項に記載の生麺または生皮入り包装体。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋の内部空間に、生麺または生皮を内容物として収容した後、前記鮮度保持包装袋を密封する工程を有する、生麺または生皮の鮮度保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生麺または生皮用鮮度保持包装袋、生麺または生皮入り包装体、および生麺または生皮の鮮度保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場に流通させることを目的とした生麺や生皮は、包装袋に密封収容されて出荷されることが多い。すなわち、市場に流通させることを目的とした生麺や生皮は、生麺または生皮入り包装体の状態で出荷されることが多い。
【0003】
ここで、生麺や生皮は、加熱殺菌等の品質保持を目的とした加工処理が施されていないものであるが故、生タイプ麺や乾麺等と比べて、品質の劣化速度が速いとされている。
そこで、近年においては、市場に流通させることを目的とした生麺や生皮の品質を長期間安定的に保持すべく、種々の検討がなされている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、トランスグルタミナーゼを含有させた生麺のpHと含水率とが特定の条件を満たすように制御することで、カビの増殖や腐敗の進行にくわえて、麺線同士の結着が生じることを抑制できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−155463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の生麺または生皮入り包装体は、その保存時に、生麺または生皮を包装するために用いた袋の内表面に結露が発生することが多い。そして、従来の生麺または生皮入り包装体において上述した結露が発生した場合には、かかる結露による影響で、いわゆる「麺溶け」と呼ばれる現象が引き起こされ、内容物である生麺や生皮の外観劣化が促進されることになる。
【0007】
本発明者は、結露による影響で生じる上述した内容物の外観劣化が、特許文献1に記載されている品質安定性を向上させた生麺を密封収容してなる包装体においても、従来の生麺または生皮入り包装体と同様に生じることを確認した。このことから、本発明者は、市場に流通させることを目的とした生麺や生皮を収容するために用いる包装材料について、結露防止という観点において、より一層高い技術水準が要求されていることを見出した。
【0008】
そこで、本発明は、生麺または生皮の外観を保持しつつ、生麺または生皮の鮮度を長期間維持することが可能な包装技術を提供することを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、生麺または生皮を内容物として収容するための鮮度保持包装袋であって、
前記鮮度保持包装袋は、無孔の合成樹脂フィルムからなり、
前記鮮度保持包装袋の内部空間に前記生麺または前記生皮が前記内容物として収容されている包装体において、前記包装体の40℃、90%RHにおける前記内容物100gあたりの水蒸気透過量Aが、2.5[g/100g・day]以上12[g/100g・day]以下であり、
前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける厚み10μmあたりの水蒸気透過量Bが、150[g/m・day]以上300[g/m・day]以下であり、
前記合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける厚み10μmあたりの酸素透過量が、1[cc/m・day・atm]以上300[cc/m・day・atm]以下であり、
前記合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量が、1[cc/m・day・atm]以上70[cc/m・day・atm]以下であ
前記合成樹脂フィルムの厚みが、20μm以上50μm以下である、
生麺または生皮用鮮度保持包装袋が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記生麺または生皮用鮮度保持包装袋の内部空間に、生麺または生皮が内容物として密封されてなる、生麺または生皮入り包装体が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記生麺または生皮用鮮度保持包装袋の内部空間に、生麺または生皮を内容物として収容した後、前記鮮度保持包装袋を密封する工程を有する、生麺または生皮の鮮度保持方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生麺または生皮の外観を保持しつつ、生麺または生皮の鮮度を長期間維持することが可能な包装技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<生麺または生皮用鮮度保持包装袋>
本実施形態に係る生麺または生皮用鮮度保持包装袋(以下、本包装袋ともいう。)は、合成樹脂フィルムからなるものであって、生麺または生皮を内容物として収容するために用いるものである。そして、本包装袋は、以下の2つの条件を満たす構成を採用したものである。これにより、生麺または生皮の外観を保持しつつ、生麺または生皮の鮮度を長期間維持することが可能となる。
【0014】
第1の条件は、本包装袋の内部空間に生麺または生皮が内容物として収容されている包装体において、かかる包装体の40℃、90%RHにおける上記内容物100gあたりの水蒸気透過量Aが、1[g/100g・day]以上20[g/100g・day]以下となることである。
【0015】
第2の条件は、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける厚み10μmあたりの水蒸気透過量Bが、100[g/m・day]以上1000[g/m・day]以下となることである。
【0016】
ここで、本包装袋に内容物として収容する生麺は、公知の方法により製麺されたものであり、かつ加熱殺菌処理などの各種処理が施されていない生の状態にある麺であれば特に限定されない。このような生麺の具体例としては、日本蕎麦等のそば粉を主原料として用いて製麺されたもの、うどん、冷麦、素麺、沖縄そば、中華麺、烙麺、パスタおよびラグマン等の小麦を主原料として用いて製麺されたもの、ビーフン、フォー等のライスヌードルなどが挙げられる。
また、本包装袋に内容物として収容する生皮の具体例としては、餃子の皮、焼売の皮、春巻の皮、雲呑の皮、ピザ生地等が挙げられる。
【0017】
そして、本包装袋は、上述にした各種生麺や各種生皮の中でも、腐敗進行の原因の1つとされている、単位質量あたりの含細菌数が多い日本蕎麦を収容して保存するために用いることが好ましい。
【0018】
市場に流通させることを目的とした生麺や生皮に関する従来の鮮度保持技術は、背景技術の項で前述したように、内容物である生麺や生皮自体の鮮度保持性能を向上させるものがほとんどであった。実際、市場に流通させることを目的とした生麺や生皮を内容物として収容するために用いる包装資材を改良して、かかる内容物の鮮度保持性能を向上させることに着眼した技術は、これまでに報告されていなかった。
【0019】
本包装袋は、生麺や生皮を内容物として収容するために用いる包装資材の結露防止性能を向上させたものである。そのため、本包装袋によれば、従来の生麺や生皮用の包装袋と比べて、高度に、該包装袋内に結露が発生することを抑制することができる。これにより、本包装袋内に生麺または生皮を内容物として密封収容した場合、従来の包装袋内に生麺または生皮を内容物として密封収容した場合と比べて、包装袋の内表面に発生する結露による影響で内容物の外観が劣化してしまうことを効果的に抑制することが可能となる。
【0020】
以下、本包装袋の構成について詳細に説明する。
【0021】
本包装袋は、かかる包装袋内に生麺または生皮を内容物として収容してなる包装体の単位内容物重量(100g)あたりの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量Aと、かかる包装袋を構成する合成樹脂フィルムの単位厚み(10μm)あたりの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量Bとが、それぞれ特定の条件を満たすように制御されたものである。このため、本包装袋によれば、以下の効果が得られる。
第1に、本包装袋によれば、かかる包装袋に内容物として収容する生麺または生皮の外観を長時間保持することができる。
第2に、本包装袋によれば、かかる包装袋に内容物として収容する生麺または生皮の鮮度を長時間保持することができる。
【0022】
なお、生麺や生皮を内容物として収容するために用いる従来の包装袋は、上記水蒸気透過量Aが0.7[g/100g・day]未満の値を示すものがほとんどであった。また、生麺や生皮を内容物として収容するために用いる従来の包装袋に関する上記水蒸気透過量Bは、70[g/m・day]未満の値を示すことがほとんどであった。
【0023】
本実施形態において、本包装袋の内部空間に生麺または生皮が内容物として収容されている包装体の40℃、90%RHにおける上記内容物100gあたりの水蒸気透過量Aの下限値は、1[g/100g・day]以上であるが、好ましくは、1.5[g/100g・day]以上であり、より好ましくは、2[g/100g・day]以上であり、さらに好ましくは、2.5[g/100g・day]以上であり、最も好ましくは、3[g/100g・day]以上である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Aの値が上記下限値以上となるように制御した場合、本包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、該包装袋の内表面に結露が発生することを長期間安定的に抑制することができる。そのため、本包装袋に係る水蒸気透過量Aの値が上記下限値以上となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の外観が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0024】
本実施形態において、本包装袋の内部空間に生麺または生皮が内容物として収容されている包装体の40℃、90%RHにおける上記内容物100gあたりの水蒸気透過量Aの上限値は、20[g/100g・day]以下であるが、好ましくは、18[g/100g・day]以下であり、より好ましくは、15[g/100g・day]以下であり、さらに好ましくは、12[g/100g・day]以下であり、最も好ましくは、10[g/100g・day]以下である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Aの値が上記上限値以下となるように制御した場合、本包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、該包装袋の内部空間の条件がカビ等の微生物が生育するために適した条件に変化してしまうことを抑制することができる。そのため、本包装袋に係る水蒸気透過量Aの値が上記上限値以下となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の鮮度が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける内容物100gあたりの水蒸気透過量Iの下限値は、好ましくは、30[g/100g・m・day]以上であり、より好ましくは、35[g/100g・m・day]以上であり、さらに好ましくは、38[g/100g・m・day]以上であり、最も好ましくは、40[g/100g・m・day]以上である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Iの値が上記下限値以上となるように制御した場合、本包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、該包装袋の内表面に結露が発生することを長期間安定的に抑制することができる。そのため、本包装袋に係る水蒸気透過量Iの値が上記下限値以上となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の外観が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0026】
本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける内容物100gあたりの水蒸気透過量Iの上限値は、好ましくは、250[g/100g・m・day]以下であり、より好ましくは、200[g/100g・m・day]以下であり、さらに好ましくは、150[g/100g・m・day]以下であり、最も好ましくは、120[g/100g・m・day]以上である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Iの値が上記上限値以下となるように制御した場合、該包装袋の内部空間に収容した生麺または生皮が保存時に乾燥して固くなることを抑制できる。そのため、本包装袋に係る水蒸気透過量Iの値が上記上限値以下となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の鮮度が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量Xの下限値は、好ましくは、30[g/m・day]以上であり、より好ましくは、40[g/m・day]以上であり、さらに好ましくは、45[g/m・day]以上であり、最も好ましくは、50[g/m・day]以上である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Xの値が上記下限値以上となるように制御した場合、本包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、該包装袋の内表面に結露が発生することを長期間安定的に抑制することができる。そのため、本包装袋に係る水蒸気透過量Xの値が上記下限値以上となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の外観が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0028】
本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量Xの上限値は、好ましくは、200[g/m・day]以下であり、より好ましくは、190[g/m・day]以下であり、さらに好ましくは、180[g/m・day]以下であり、最も好ましくは、160[g/m・day]以上である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Xの値が上記上限値以下となるように制御した場合、該包装袋の内部空間に収容した生麺または生皮が保存時に乾燥して固くなることを抑制できる。そのため、本包装袋に係る気透過量Xの値の値が上記上限値以下となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の鮮度が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0029】
上述した水蒸気透過量A、水蒸気透過量Iおよび水蒸気透過量Xの値は、それぞれ以下の方法で算出することができる。
まず、合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量X[g/m・day]は、たとえば、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率測定装置(パーマトラン(登録商標)PERMATRAN−W 3/61)を使用して、JIS K7129Bに準拠した方法で測定することができる。また、合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率Xの値は、JIS Z0208(カップ法)に準拠した方法によっても測定することができる。
【0030】
次に、上述した方法で得られた合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量X[g/m・day]に関する測定値を、包装袋内に収容する内容物の重量[g]で除し、算出された値に、100を乗ずる。こうすることで、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける内容物100gあたりの水蒸気透過量I[g/100g・m・day]を算出することができる。
次に、上述した本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける内容物100gあたりの水蒸気透過量I[g/100g・m・day]の値に、包装体の内表面積[m]を乗ずることにより、本包装袋の内部空間に生麺または生皮が内容物として収容されている包装体の40℃、90%RHにおける上記内容物100gあたりの水蒸気透過量A[g/100g・day]を算出することができる。
【0031】
本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける厚み10μmあたりの水蒸気透過量Bの下限値は、100[g/m・day]以上であるが、好ましくは、110[g/m・day]以上であり、より好ましくは、120[g/m・day]以上であり、さらに好ましくは、135[g/m・day]以上であり、最も好ましくは、150[g/m・day]以上である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Bの値が上記下限値以上となるように制御した場合、本包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、該包装袋の内表面に結露が発生することを長期間安定的に抑制することができる。そのため、本包装袋に係る水蒸気透過量Bの値が上記下限値以上となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の外観が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0032】
本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける厚み10μmあたりの水蒸気透過量Bの上限値は、1000[g/m・day]以下であるが、好ましくは、800[g/m・day]以下であり、より好ましくは、500[g/m・day]以下であり、さらに好ましくは、400[g/m・day]以下であり、最も好ましくは、300[g/m・day]以下である。このように、本包装袋に係る水蒸気透過量Bの値が上記上限値以下となるように制御した場合、本包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、該包装袋の内部空間の条件がカビ等の微生物が生育するために適した条件に変化してしまうことを抑制することができる。そのため、本包装袋に係る水蒸気透過量Bの値が上記上限値以下となるように制御した場合には、結果として、内容物である生麺または生皮の鮮度が劣化してしまうことを長期間安定して抑制することができる。
【0033】
上述した水蒸気透過量Bの値は、以下の方法で算出することができる。
【0034】
まず、上述した方法で、合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量X[g/m・day]を測定する。次に、合成樹脂フィルムの水蒸気透過性能と、かかるフィルムの厚みとの間には、一般に、反比例の関係が成り立つことを考慮し、上述した方法で得られた合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過量X[g/m・day]に関する測定値に対して、フィルムの厚み[μm]を乗じ、算出された値を10[μm]で除す。こうすることで、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける厚み10μmあたりの水蒸気透過量B[g/m・day]を算出することができる。
【0035】
また、本包装袋の内表面に対する水の接触角は、かかる包装袋内に内容物として収容する生麺や生皮について、その外観と鮮度をバランスよく保持する観点から、好ましくは、5°以上80°以下であり、より好ましくは、10°以上70°以下であり、さらに好ましくは、20°以上60°以下であり、最も好ましくは、20°以上50°以下である。
【0036】
なお、水の接触角の値は、小さいほど対象物の表面が水に濡れやすいことを示し、大きいほど対象物の表面が水をはじきやすいことを示すものである。また、かかる水の接触角の測定方法としては、たとえば、協和界面科学社製、DROPMASTER−501等の市販の接触角計を使用し、測定対象表面に精製水2μLを着滴して7秒後の接触角を液適法にて測定する手法がある。
【0037】
また、本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける厚み10μmあたりの酸素透過量O1は、該包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、内容物である生麺や生皮が酸化して風味が損なわれてしまうことを抑制する観点から、好ましくは、0.1[cc/m・day・atm]以上6000[cc/m・day・atm]以下であり、より好ましくは、0.1[cc/m・day・atm]以上1000[cc/m・day・atm]以下であり、さらに好ましくは、1[cc/m・day・atm]以上300[cc/m・day・atm]以下である。
【0038】
さらに、本実施形態において、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量O2は、該包装袋を用いて生麺または生皮を保存している最中に、内容物である生麺や生皮が酸化して風味が損なわれてしまうことを抑制する観点から、好ましくは、0.1[cc/m・day・atm]以上6000[cc/m・day・atm]以下であり、より好ましくは、0.1[cc/m・day・atm]以上500[cc/m・day・atm]以下であり、さらに好ましくは、0.5[cc/m・day・atm]以上200[cc/m・day・atm]以下であり、最も好ましくは、1[cc/m・day・atm]以上70[cc/m・day・atm]以下である。
【0039】
上述した合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける厚み10μmあたりの酸素透過量O1と、合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量O2は、それぞれ以下の方法で算出することができる。
【0040】
まず、合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量O2[cc/m・day・atm]を、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(オキシトラン(登録商標)OX−TRAN 2/21)を使用し、JIS K7126−2における付属書Bに準拠した方法で測定する。次に、合成樹脂フィルムの酸素透過性能と、かかるフィルムの厚みとの間には、一般に、反比例の関係が成り立つことを考慮し、上述した方法で得られた合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量O2[cc/m・day・atm]に関する測定値に対して、フィルムの厚み[μm]を乗じ、算出された値を10[μm]で除す。こうすることで、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける厚み10μmあたりの酸素透過量O1[cc/m・day・atm]を算出することができる。
【0041】
また、本包装袋内に収容する内容物の量は、消費者の需要や、製造コストのバランスを向上させる観点から、たとえば、100g以上400g以下であることが好ましい。
【0042】
次に、本包装袋を構成する合成樹脂フィルムの材料について説明する。
【0043】
合成樹脂フィルムを構成する合成樹脂は、生麺や生皮の包装に用いることのできるものであり、かつ、本包装袋に係る水蒸気透過量AおよびBの値が上述した特定の条件を満たすように制御することができるものであれば公知のものを使用することができる。このような合成樹脂の具体例としては、各種ポリエチレンおよびエチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸などのポリエステル樹脂、6ナイロンなどのポリアミド樹脂などが挙げられる。これらはホモポリマーであってもかまわないし、2種類以上のコポリマーであってもよく、これらホモポリマーやコポリマーを2種類以上含むブレンド物であってもよい。
また、上記各種ポリエチレンおよびエチレン共重合体の具体例としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン−直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーやエチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−α−オレフィンコポリマーなどのコポリマーあるいはアイオノマーなどが挙げられ、これらあるいはこれらと他の樹脂との2種類以上のブレンド物であってもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、合成樹脂フィルムとして、前述で例示した合成樹脂を成型して得られるフィルムを単層フィルムとして用いてもよいし、厚み方向に2以上の層が積層された多層構造を有するフィルム、すなわち2層以上の積層構造を有する多層フィルムの形で用いてもよい。
以下、合成樹脂フィルムが上述した多層フィルムである場合を例に挙げて説明する。
【0045】
本実施形態に係る合成樹脂フィルムは、当該包装袋の内表面がエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂内層から形成されるよう、かかるフィルムの一方の表面がエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂材料により形成されたものであることが好ましい。こうすることで、包装袋の内表面における結露防止性をより一層向上させることができる。また、包装袋の内表面を形成する樹脂内層を形成する材料中には、公知の防曇剤を含有させてもよい。上記防曇剤の具体例としては、グリセリンラウレート、ジグリセリンラウレート、デカグリセリンラウレートおよびグリセリンモノステアレート及びソルビタンステアレート等が挙げられる。
【0046】
また、本実施形態に係る合成樹脂フィルムは、当該包装袋の外表面がポリアミド樹脂材料を含む樹脂外層から形成されるよう、かかるフィルムの一方の表面がポリアミド樹脂を含む樹脂内層から形成されたものであることが好ましい。こうすることで、包装袋の外表面におけるインキ印刷適性またはラベル貼り付け性をより一層向上させることができる。そして、かかる樹脂外層の厚みは、本包装袋の成形性を向上させつつ、当該包装袋内に収容する内容物の鮮度保持性を向上させる観点から、たとえば、10μm以上25μm以下とすることができる。一方、樹脂内層の厚みは、本包装袋の成形性を向上させつつ、当該包装袋の内表面における結露防止特性を向上させる観点から、たとえば、0.1μm以上20μm以下とすることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る合成樹脂フィルムは、一方の表面がエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂材料により形成され、かつ他方の表面がポリアミド樹脂を含む樹脂材料により形成されたものであることが好ましい。こうすることで、包装袋の外表面に対するインキ印刷適性またはラベル貼り付け性と、包装袋の内表面における結露防止性とを両立し、かつ生麺または生皮の保存に適した条件を安定的に構築できる包装袋を実現することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る合成樹脂フィルムにおいて、上述した樹脂外層の厚みをaとし、上述した樹脂内層の厚みをbとしたとき、a/bの値は、包装袋の外表面に対するインキ印刷適性またはラベル貼り付け性と、包装袋の内表面における結露防止性とのバランスを向上させる観点から、好ましくは、0.3以上300以下であり、より好ましくは、0.5以上100以下である。
【0049】
また、本実施形態に係る合成樹脂フィルムは、厚み方向に積層された3層以上の多層構造を有しており、かつ上記多層構造における2の最外層間に配された中間層を有するものであってもよい。いわば、本実施形態に係る合成樹脂フィルムは、中間層を有した3層以上の多層フィルムであってもよい。そして、かかる中間層の厚みは、好ましくは、0.001μm以上0.5μm以下であり、より好ましくは、0.01μm以上0.45μm以下である。なお、中間層を形成する材料としては、公知のアンカーコート剤を使用することができる。
【0050】
フィルムの成型方法は、特に限定されないが、押出、インフレーション、カレンダーリング等の方法が用いられる。フィルムを成型する際、必要に応じて防曇剤等の添加物を混練してもよいし、2種類以上の樹脂をブレンドしてもよい。また、フィルムに対して、延伸処理やアニーリング処理などを施してもよい。これらのフィルム表面にシーラント層を設けたものであってもよいし、何らかの機能を付与するためにコーティングしたフィルムであってもよい。さらに、これらのフィルムは透明であっても、不透明であってもよく、フィルムの製品情報が印刷されたものであってもよい。
【0051】
本包装袋に用いられる合成樹脂フィルムの厚さは、たとえば20μm以上50μm以下とすればよい。フィルムが薄すぎると、強度が不足する懸念がある。一方、フィルムが厚すぎると、製造コストが高くなるため実用性が低下する。
【0052】
また、本包装袋は、微細孔が設けられた合成樹脂フィルムにより形成されたものであってもよいが、内容物である生麺や生皮について、その外観と鮮度のバランスを長期間安定的の保持する観点から、無孔フィルムにより形成されたものであることが好ましい。
【0053】
本包装袋の製造方法は、従来の製造方法とは異なるものであって、以下の3つの条件に係る各種因子を高度に制御することが特に重要である。すなわち、以下の3つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて、本包装袋を作製することができる。なお、包装袋を作製するために用いる合成樹脂フィルムは、以下の3つの条件に係る各種因子を高度に制御しさえすれば、その他の公知の製造条件を組み合わせることにより、作製することができる。
(1)合成樹脂フィルムを形成するために用いる樹脂材料の組み合わせ
(2)合成樹脂フィルムの層構成と製膜方法の組み合わせ
(3)合成樹脂フィルムのヒートシール加工条件
具体的には、実施例にて後述する。
【0054】
次に、本包装袋は、その内部空間に生麺または生皮を内容物として密封した生麺または生皮入り包装体を作製することができる。言い換えれば、本実施形態における包装体は、上述した本包装袋により生麺または生皮を密閉されてなるものである。以下、本実施形態に係る生麺または生皮入り包装体の製造方法の一例を説明する。
まず、上述した方法で作製した合成樹脂フィルムを準備する。次に、合成樹脂フィルムを所望のサイズに切り出した後、2枚のフィルムを重ね合わせ、シーラーを用いて3方にヒートシール加工を施して10mm幅の熱シール部分を形成することにより、包装袋を作製する。次いで、包装袋の内部空間に所定量の内容物を収容する。その後、包装袋において未だ熱シール部分が形成されていない1方にヒートシール加工を施して10mm幅の熱シール部分を形成し、本包装体を得る。
なお、本実施形態に係る生麺または生皮入り包装体の製造方法は、上述した方法に限られず、たとえば、縦ピロー包装や横ピロー包装のように自動包装機で製造してもよい。また、本包装袋は、底折り返し溶断製袋や背張り袋の形態であってもよい。
【0055】
また、本包装袋に内容物を収容してなる上記包装体は、該内容物中に含まれる細菌の増殖を防ぐ観点から、0℃以上15℃以下の温度条件で保存することが好ましく、2℃以上10℃以下の温度条件で保存するとさらに好ましい。
【0056】
本包装体の内表面積は、包装される内容物の種類や重量等に応じて、適宜、設定することができる。そして、内容物100gあたりの包装体の内表面積は、たとえば、100cm(0.01m)以上1000cm(0.1m)以下としてもよいし、好ましくは300(0.03m)cm以上700cm(0.07m)以下としてもよい。
【0057】
また、本包装袋に収容する内容物の含水率は、該内容物全量に対して、好ましくは、25質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上65質量%以下である。こうすることで、内容物である生麺や生皮の外観や鮮度を、より一層長期間安定的に保持することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態における生麺または生皮の鮮度保持方法は、上述した本包装袋の内部空間に生麺または生皮を内容物として収容した後、かかる生麺用鮮度保持包装袋を密封する工程を含むものである。
【0059】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施形態の例を付記する。
1. 生麺または生皮を内容物として収容するための鮮度保持包装袋であって、
前記鮮度保持包装袋は、合成樹脂フィルムからなり、
前記鮮度保持包装袋の内部空間に前記生麺または前記生皮が前記内容物として収容されている包装体において、前記包装体の40℃、90%RHにおける前記内容物100gあたりの水蒸気透過量Aが、1[g/100g・day]以上20[g/100g・day]以下であり、
前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける厚み10μmあたりの水蒸気透過量Bが、100[g/m・day]以上1000[g/m・day]以下である、生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
2. 前記包装袋の内表面に対する水の接触角が5°以上80°以下である、1.に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
3. 前記合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける厚み10μmあたりの酸素透過量O1が、0.1[cc/m・day・atm]以上6000[cc/m・day・atm]以下である、1.または2.に記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
4. 前記鮮度保持包装袋の内表面にエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂内層を有する、1.乃至3.のいずれかに記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
5. 前記鮮度保持包装袋の外表面にポリアミド樹脂材料を含む樹脂外層を有する、1.乃至4.のいずれかに記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
6. 前記合成樹脂フィルムの厚みが20μm以上50μm以下である、1.乃至5.のいずれかに記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
7. 前記内容物の含水率が、前記内容物全量に対して25質量%以上70質量%以下である、1.乃至6.のいずれかに記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋。
8. 1.乃至7.のいずれかに記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋の内部空間に、生麺または生皮が内容物として密封されてなる、生麺または生皮入り包装体。
9. 前記内容物の含水率が、前記内容物全量に対して25質量%以上70質量%以下である、8.に記載の生麺または生皮入り包装体。
10. 1.乃至7.のいずれかに記載の生麺または生皮用鮮度保持包装袋の内部空間に、生麺または生皮を内容物として収容した後、前記鮮度保持包装袋を密封する工程を有する、生麺または生皮の鮮度保持方法。

【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下においては、特に記載しない限り、「重量部」との表現は、揮発成分を除く不揮発分の量、すなわち、固形分量のことを示す。
【0061】
<実施例1>
包装袋の外表面を構成する樹脂外層を形成する材料として、厚み15μmの二軸延伸ナイロン(O−Ny)フィルム(ユニチカ社製、エンブレム(登録商標)ONBC−15)を、包装袋の内表面を構成する樹脂内層を形成する材料として、エチレン含有量が29mol%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)100重量部に対して、グリセリンラウレートとデカグリセリンラウレートとを97:3の割合で配合した防曇剤を7.0重量部、変性ポリブタジエン(日本曹達社製、チタボンドT−180E)を1.5重量部添加したものを準備した。
次に、上記O−Nyフィルムの一方の表面に対し、上記樹脂内層を形成する材料をバーコーターでコートすることにより、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を含む層を形成した。これにより、二軸延伸ナイロン(O−Ny)からなる層と、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を含む層とが、厚み方向にこの順で積層された2層構造を有する厚さ16μmの合成樹脂フィルムを作製した。なお、得られた合成樹脂フィルムの各層の厚さは、二軸延伸ナイロン(O−Ny)からなる層が15μmであり、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を含む層が1μmであった。
次に、得られた合成樹脂フィルムを所定のサイズに切り出した後、2枚のフィルムを重ね合わせ、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI−400Y−10PK)を用いて3方にヒートシール加工を施して10mm幅の熱シール部分を形成することにより、実施例1の包装袋を作製した。
【0062】
次に、得られた包装袋(内寸:190mm×200mm)の内部空間に生の日本蕎麦131gを収容した。次いで、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI−400Y−10PK)を用いて、該包装袋における残りの一方に10mm幅の熱シール部分を形成することにより、実施例1の生麺入り包装体を得た。得られた生麺入り包装体の内表面積は、7.6×10−2であった。
【0063】
<実施例2>
二軸延伸ナイロン(O−Ny)からなる層の厚さが25μmとなり、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を含む層の厚さが1μmとなるように合成樹脂フィルムを作製した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の包装袋を作製した。
【0064】
次に、得られた包装袋(内寸:190mm×200mm)の内部空間に生の日本蕎麦131gを収容した。次いで、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI−400Y−10PK)を用いて、該包装袋における残りの一方に10mm幅の熱シール部分を形成することにより、実施例2の生麺入り包装体を得た。得られた生麺入り包装体の内表面積は、7.6×10−2であった。
【0065】
<実施例3>
包装袋の外表面を構成する樹脂外層を形成する材料として、ナイロン6(Ny)(宇部興産社製、UBEナイロン(登録商標)1022B)を、包装袋の内表面を構成する樹脂内層を形成する材料として、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)(クラレ社製、エバールE173B)100重量部に対して、防曇剤マスターバッチ(防曇剤MB)20重量部(理研ビタミン社製、リケマールEAR−5)を添加したものを準備した。
次に、上述した各種材料を、Tダイ押出機に投入し、共押出Tダイ法にて、ナイロン6からなる層と、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を含む層とが、厚み方向にこの順で積層された2層構造を有する厚さ30μmの合成樹脂フィルムを作製した。なお、得られた合成樹脂フィルムの各層の厚さは、ナイロン6からなる層が12μmであり、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を含む層が18μmであった。
【0066】
次に、得られた包装袋(内寸:190mm×200mm)の内部空間に生の日本蕎麦131gを収容した。次いで、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI−400Y−10PK)を用いて、該包装袋における残りの一方に10mm幅の熱シール部分を形成することにより、実施例3の生麺入り包装体を得た。得られた生麺入り包装体の内表面積は、7.6×10−2であった。
【0067】
<比較例1>
厚さ25μmの防曇2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)(東洋紡社製、パイレンフィルム−FG:P5562)を合成樹脂フィルムとして準備した点以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の包装袋を作製した。
【0068】
次に、得られた包装袋(内寸:190mm×200mm)の内部空間に生の日本蕎麦131gを収容した。次いで、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI−400Y−10PK)を用いて、該包装袋における残りの一方に10mm幅の熱シール部分を形成することにより、比較例1の生麺入り包装体を得た。得られた生麺入り包装体の内表面積は、7.6×10−2であった。
【0069】
<比較例2>
包装袋の内表面を構成する樹脂内層を形成する材料として、線状低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製、スミカセンF−218−0、以下、LLDPEとも示す。)を、中間層を形成する材料としてポリオレフィン系接着性樹脂(三菱化学製、モディック F515A)を、包装袋の外表面を構成する材料として、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル社製、SKYGREEN S2088、以下、PETGとも示す。)を準備した。
次に、上述した各種材料を、Tダイ押出機に投入し、共押出Tダイ法にて、LLDPEからなる層と、中間層と、PETGからなる層とが、厚み方向にこの順で積層された3層構造を有する厚さ45μmの合成樹脂フィルムを作製した。なお、得られた合成樹脂フィルムの各層の厚さは、LLDPEからなる層が15μmであり、中間層が15μmであり、PETGからなる層が15μmであった。
【0070】
次に、得られた包装袋(内寸:190mm×200mm)の内部空間に生の日本蕎麦131gを収容した。次いで、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI−400Y−10PK)を用いて、該包装袋における残りの一方に10mm幅の熱シール部分を形成することにより、比較例2の生麺入り包装体を得た。得られた生麺入り包装体の内表面積は、7.6×10−2であった。
【0071】
得られた実施例1〜3および比較例1〜2の合成樹脂フィルム、包装袋および生麺入り包装体について、下記に示す測定及び評価を行った。
また、以下の評価に用いる各生麺入り包装体は、10℃で8日間保存したものを使用した。後述においては、上述した条件で保存した後の状態にある生麺入り包装体を、保存後の生麺入り包装体と称して説明する。
【0072】
(評価項目)
・合成樹脂フィルムの水蒸気透過量:合成樹脂フィルムの水蒸気透過率は、JIS Z0208(カップ法)に準拠した方法で測定した。測定条件は、40℃、90%RHに設定した。また、秤量は、23℃、50%RHの条件下実施した。なお、単位は、g/m・dayである。
また、合成樹脂フィルムの水蒸気透過率が大きすぎることによりJIS Z0208(カップ法)に準拠した方法を使用できない場合には、カップの代わりに50mm×100mmの袋に塩化カルシウムをヒートシールで密封包装して、この袋の重さの経時変化より水蒸気透過率を算出した。この場合、袋の保管期間は、塩化カルシウムが吸湿しきらない範囲内とした。
【0073】
・合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量:合成樹脂フィルムの酸素透過量は、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(オキシトラン(登録商標)OX−TRAN 1/50)を使用して、JIS K7126−2における付属書Bに準拠した方法で測定した。測定条件は、23℃、60%RHに設定した。なお、単位は、cc/m・day・atmである。
【0074】
・水の接触角:得られた各包装袋の内表面について、接触角計(協和界面科学社製、DROPMASTER−501)を用い、測定面に精製水2μLを着滴してから7秒後の接触角を液滴法にて測定した。なお、単位は、°である。
【0075】
・生麺の外観:保存後の生麺入り包装体内に収容した生麺の外観を目視にて観察し、その外観について以下の基準で評価した。
◎:保存前の状態と比べて、生麺の外観に大幅な変化はなかった。
○:保存前の状態と比べて、若干乾燥していることが確認されたが、実用上問題ないレベルであった。
△:水分が染み出して湿った状態にあり、実用上問題のあるレベルであった。
×:表面が溶けた状態にあり、実用上問題のあるレベルであった。
【0076】
・生麺の臭気:保存後の生麺入り包装体内に収容した生麺の臭いを熟練したパネラーが以下の基準で評価した。
◎:異臭はなかった。
○:極わずかに異臭が発生していたが、実用上問題の無いレベルであった。
△:やや酸っぱい臭いが発生しており、実用上問題のあるレベルであった。
×:異臭が発生していた。
【0077】
・生麺の風味:保存後の生麺入り包装体内に収容した生麺の風味を、熟練したパネラーが食して以下の基準で評価した。
◎:良好な風味を維持できていることが確認された。
○:極わずかに風味が弱まっていたが、実用上問題の無いレベルであった。
△:明らかに風味が弱まっており、実用上問題のあるレベルであった。
×:ほぼ風味がない状態であった。
【0078】
【表1】
【0079】
上記表1からも分かるとおり、実施例1〜3の包装袋は、いずれも、生麺の外観を保持しつつ、生麺の鮮度を長期間維持するという観点において、比較例1〜2の包装袋と比べて優れたものであった。