特許第6852371号(P6852371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6852371眼科情報処理装置、および眼科情報処理プログラムに関する。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852371
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】眼科情報処理装置、および眼科情報処理プログラムに関する。
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   A61B3/10 100
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-234577(P2016-234577)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-104535(P2017-104535A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-236160(P2015-236160)
(32)【優先日】2015年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 寿成
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 倫全
【審査官】 相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−232034(JP,A)
【文献】 特開2013−154121(JP,A)
【文献】 特開2011−135933(JP,A)
【文献】 特開2014−128366(JP,A)
【文献】 特開2015−136626(JP,A)
【文献】 特開2011−120656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理装置であって、
前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報として、第1のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第1層厚情報と、前記第1のOCTデバイスとは仕様が異なる第2のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第2層厚情報と、を取得する層厚情報取得手段と、
前記第1層厚情報と前記第2層厚情報とを、前記第1のOCTデバイスと前記第2のOCTデバイスとの間における深さ方向に関するOCT信号の感度の違いを考慮して整合させる整合手段と、
前記整合手段による層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御手段と、を有する眼科情報処理装置。
【請求項2】
前記整合手段は、眼底を構成する層毎に或いは眼底の深度毎に異なる補正量を用いて層厚情報を整合させる請求項1記載の眼科情報処理装置。
【請求項3】
前記整合手段は、深度毎に、異なる補正量を用いて層厚情報を整合させる請求項1記載の眼科情報処理装置。
【請求項4】
異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理装置であって、
前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報として、SD−OCTによって取得された前記OCTデータに基づく第1層厚情報と、SS−OCTによって取得された前記OCTデータに基づく第2層厚情報とを、取得する層厚情報取得手段と、
前記第1層厚情報と前記第2層厚情報とを、前記SD−OCTと前記SS−OCTとの間における深さ方向に関するOCT信号の感度の違いを考慮して、整合させる整合手段と、
前記整合手段による層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御手段と、を有する眼科情報処理装置。
【請求項5】
異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理装置であって、
前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の各層の層厚情報を取得する層厚情報取得手段と、
少なくとも網膜内層に関する層厚情報と網膜外層に関する層厚情報とを、各々の前記OCTデータにおける取得条件の違いを考慮して個別に整合させる整合手段と、
前記整合手段による層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御手段と、を有する眼科情報処理装置。
【請求項6】
異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理プログラムであって、
眼科情報処理装置のプロセッサで実行されることにより、
前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報として、第1のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第1層厚情報と、前記第1のOCTデバイスとは仕様が異なる第2のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第2層厚情報と、を取得する層厚情報取得ステップと、
前記第1層厚情報と前記第2層厚情報とを、前記第1のOCTデバイスと前記第2のOCTデバイスとの間における深さ方向に関するOCT信号の感度の違いを考慮して整合させる整合ステップと、
前記整合ステップによる層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御ステップと、を前記眼科情報処理装置に実行させる眼科情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異なる日時で得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理装置および眼科情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用光干渉断層計(OCT:optical coherence tomography)等の眼科装置によって、
異なる日時に被検眼のOCTデータを取得し、経過観察を行う場合がある。例えば、眼底のOCTデータが複数回にわたって取得され、OCTデータの変化から病変部の経過が観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2012−232034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼科分野では、例えば、緑内障の場合等、数年間にわたって経過観察を行う必要があり、長い場合には、数十年にわたる場合もありうる。そして、複数年が経過していると、OCTデータの取得に使用される装置が、異なる仕様の装置へ変更されている場合がありうる。また、同一の仕様の装置を使用していても、装置の仕様以外の取得条件が、データを取得した時期によって異なっている場合がありうる。このような互いに異なる取得条件にて取得された複数のOCTデータが利用される場合には、経過観察を良好に行うことが難しい場合が考えられる。
【0005】
本開示は、被検眼の経過観察を良好に行うことができる眼科情報処理装置、および眼科情報処理装置プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る眼科情報処理装置は、異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理装置であって、前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報として、第1のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第1層厚情報と、前記第1のOCTデバイスとは仕様が異なる第2のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第2層厚情報と、を取得する層厚情報取得手段と、前記第1層厚情報と前記第2層厚情報とを、前記第1のOCTデバイスと前記第2のOCTデバイスとの間における深さ方向に関するOCT信号の感度の違いを考慮して整合させる整合手段と、前記整合手段による層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御手段と、を有する。
本開示の第2態様に係る眼科情報処理装置は、異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理装置であって、前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報として、SD−OCTによって取得された前記OCTデータに基づく第1層厚情報と、SS−OCTによって取得された前記OCTデータに基づく第2層厚情報とを、取得する層厚情報取得手段と、前記第1層厚情報と前記第2層厚情報とを、前記SD−OCTと前記SS−OCTとの間における深さ方向に関するOCT信号の感度の違いを考慮して、整合させる整合手段と、前記整合手段による層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御手段と、を有する。
本開示の第3態様に係る眼科情報処理装置は、異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理装置であって、前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の各層の層厚情報を取得する層厚情報取得手段と、少なくとも網膜内層に関する層厚情報と網膜外層に関する層厚情報とを、各々の前記OCTデータにおける取得条件の違いを考慮して個別に整合させる整合手段と、前記整合手段による層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御手段と、を有する。
【0007】
本開示の第態様に係る眼科情報処理プログラムは、異なる日に得られた複数のOCTデータに基づいて被検眼の経過観察を行うための眼科情報処理プログラムであって、眼科情報処理装置のプロセッサで実行されることにより、前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報前記被検眼のOCTデータの処理結果である眼底の層厚情報として、第1のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第1層厚情報と、前記第1のOCTデバイスとは仕様が異なる第2のOCTデバイスによって取得された前記OCTデータに基づく第2層厚情報と、を取得する層厚情報取得ステップと、前記第1層厚情報と前記第2層厚情報とを、前記第1のOCTデバイスと前記第2のOCTデバイスとの間における深さ方向に関するOCT信号の感度の違いを考慮して整合させる整合ステップと、前記整合ステップによる層厚情報の整合結果をモニタに表示させる表示制御ステップと、を前記眼科情報処理装置に実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る眼科情報処理装置の装置構成を示すについて説明するブロック図である。
図2】OCTデータの一例である三次元画像データを示した図である
図3】眼科情報処理装置における制御部の動作の一例を示したフローチャートである。
図4】SD−OCTと、SS−OCTとにおける深度と、OCT信号感度強度との関係を示すグラフである。なお、『眼底用光干渉断層計の進歩、Medical Photonics No. 7”、株式会社オプトロニクス社、2011年11月発行』から引用した図である。
図5】制御部によって整合された複数の層厚情報の表示出力の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る典型的な実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本実施例の眼科情報処理装置1の概略構成を示すブロック図である。以下の実施形態において、眼科情報処理装置1は、長期にわたって異なる日時で得られた複数のOCTデータ(換言すれば、時系列のOCTデータ)に基づいて被検眼の経過観察を行うために利用される。以下の説明において、眼科情報処理装置1は、「本装置1」と省略する。
【0010】
図1の例に示す本装置1は、主に、制御部70、およびメモリ(記憶部)72を有する。また、本装置1は、操作部(入力インターフェイス)90、および、モニタ75を有していてもよい。
【0011】
制御部70は、各部の制御処理と演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。制御部70は、例えば、表示制御部、画像処理部として用いられる。
【0012】
また、本装置1は、図1に示すように、第1の撮影装置200および第2の撮影装置300とそれぞれ接続されていてもよい。各装置は、ネットワーク(バス、LAN等)を介して接続されており、相互に画像データ等を送受信することが可能である。なお、本装置1は、撮影装置200および撮影装置300と同時に接続される必要はない。長期的な経過観察において、本装置1と接続される撮影装置が、ある撮影装置から別の撮影装置に変更されてもよい。
【0013】
撮影装置200,300は、それぞれ断層像撮影光学系(例えば、光断層干渉計(OCT
:optical coherence tomography))を有するOCTデバイスである。撮影装置200,300は、光源から出射された光束を測定光と参照光とに分割し、測定光を被検眼の眼底に導く。また、参照光と、眼底からの測定光の戻り光と、の干渉信号を検出器によって取得する。その結果、検出器で得られた干渉信号に基づいて、OCTデータが取得(生成)される。なお、干渉信号に基づいてOCTデータを生成する画像処理部は、例えば、本実施形態では、本装置1とは別体として撮影装置200,300に設けられているものとする。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、本装置1が、撮影装置200,300のプロセッサ(例えば、画像処理部)を兼用してもよい。なお、撮影装置200,300によって取得されるOCTデータは、例えば、一次元ないしは三次元のOCTデータのうち、いずれであってもよい。
【0014】
ここで、一次元OCTデータは、眼底上の1点での深さ方向の反射強度分布(つまり、Aスキャン(深さプロファイル))であってもよいし、その一点での一次元機能OCTデータ(機能OCTデータの例としては、モーションコントラストデータ等)であってもよい。二次元OCTデータは、測定光を眼底上で一次元的に走査することによって得られるデータである。二次元OCTデータは、ある断層面における二次元的な反射強度分布(例えば、断層画像)であってもよいし、その断層面における機能OCTデータであってもよい。三次元OCTデータは、例えば、測定光を眼底上で二次元的に走査することによって得られるデータである。三次元OCTデータは、眼底の構造を示す三次元画像(図2参照)であってもよいし、三次元機能OCTデータであってもよい。
【0015】
撮影装置200と、撮影装置300とは、装置の仕様(主には、光学系の仕様)が互いに異なるOCTデバイスであってもよい。例えば、撮影装置200と撮影装置300とは、撮影方式が互いに異なっていてもよい。一例として、以下の説明において、撮影装置200は、SD−OCT(Spectral domain OCT)であり、撮影装置300は、SS−OC
T(Swept source OCT)であるものとする。この場合、撮影装置200は、光源として、低コヒーレント長の光束を出射する光源を持ち、検出器として、参照光と被検眼からの測定光の戻り光との干渉信号を波長成分毎に検出する分光検出器を持つ。撮影装置200は、分光検出器で得られた各波長での干渉信号に基づいて被検眼のOCTデータを得る。一方、撮影装置300は、光源として、出射波長を時間的に掃引させる波長掃引光源を持ち、検出器として、点検出器を持つ。点検出器は、1つの検出器であってもよいし、複数(例えば、2つ)の検出器を用いて平衡検出を行う平衡検出器であってもよい。撮影装置300は、波長掃引光源による出射波長の変化に応じて参照光と測定光の戻り光の干渉信号をサンプリングし、サンプリングによって得られた各波長での干渉信号に基づいて被検眼のOCTデータを得る。但し、各装置の撮影方式は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0016】
撮影装置200,300で取得されたOCTデータは、ネットワークを介して本装置1に転送される。本装置1は、例えば、各撮影装置200,300によって取得されたOCTデータをネットワークを介して取得し、各OCTデータ(例えば、三次元断層画像データ(図2参照)、正面画像データ等)をメモリ72に記憶し、管理する。また、本装置1は、取得されたOCTデータを解析し、解析結果を出力(例えば、モニタ75へ表示)する。
【0017】
例えば、制御部70は、撮影装置200,300によって取得された被検眼のOCTデータ(ここでは、三次元OCTデータ)を処理して、眼底の層厚情報を取得する。ここで、層厚情報は、眼底を構成する層の厚みに関する情報である。例えば、層厚情報としては、眼底全体の厚みに関する情報,網膜、脈絡膜、および強膜等の部位ごとの厚みに関する情報、更には、それら各部位を構成する層の厚みに関する情報等が例示される。なお、層厚を求める場合、例えば、OCTデータに対する画像処理(例えば、セグメンテーション処理)によってOCTデータが層毎に分割処理され、層境界の間隔に基づいて各層の厚みが計測される。
【0018】
以下、具体例として、網膜の厚みに関する情報である網膜厚情報が、制御部70によって少なくとも取得される場合を説明する。網膜厚として、例えば、網膜の各層の厚み(具体的には、視神経線維層(NFL)の厚み、内境界膜(ILM)から網膜色素上皮層(RPE)までの厚み等)が取得されてもよい。制御部70は、眼底上のスキャン位置が異なる画像から得られる眼底上の各位置における網膜厚を用いて二次元的な網膜厚情報(例えば、層厚マップ)を生成する。
【0019】
本実施形態では、層厚マップを用いて二次元的な網膜厚情報が経過観察される。本装置1によって取得(又は、生成)される層厚マップは、制御部70によってメモリ72に記憶される。また、制御部70は、層厚情報に基づく解析チャートを生成し、解析チャートをメモリ72に記憶してもよい。
【0020】
なお、取得された断層画像を処理することにより、脈絡膜の厚みが測定されてもよい。もちろん、二次元的な脈絡膜厚情報(厚みマップ)が経過観察されてもよい。
【0021】
以下の説明において、便宜上、制御部70は、撮影装置200,300からOCTデータを取得する都度、取得したOCTデータに基づく層厚情報を取得し、メモリ72に記憶するものとする。なお、OCTデータから層厚情報を生成するタイミングは、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、各OCTデータを比較するタイミングで、各OCTデータから層厚情報を生成してもよい。
【0022】
ここで、OCTデバイスにおけるOCTデータの取得条件が変わることで、OCTデバイスにおいて取得されるOCTデータの階調,コントラスト,および,S/N比等が変化し得る。その結果、取得条件の違いが、OCTデータの処理結果として取得される層厚情報に対しても影響することが考えられる。ここでいう取得条件には、例えば、各OCTデータを取得したOCTデバイスにおける装置の仕様に関する条件が少なくとも含まれる。具体例として、OCTデータの取得方式(撮影方式)、測定光源から出射される測定光の波長帯、検出器の受光特性、OCTデータの解像度等の条件が例示される。
【0023】
前述したように、経過観察のために長期にわたって複数回のOCTデータの取得が行われる場合、各OCTデータにおいて、取得条件が異なる場合がありうる。この場合、それぞれのOCTデータから得られる各層厚情報の整合がとれず、それ故、各層厚情報の比較等が難しくなることが考えられる。
【0024】
これに対し、本実施形態では、制御部70は、各々のOCTデータに基づく層厚情報を、各々のOCTデータにおける取得条件の違いを考慮して整合させ、整合結果を出力する(整合処理)。この整合処理において、制御部70は、各層厚情報を、少なくとも深さ方向に関して整合させる。同時に、横断方向(深さ方向と交差する方向)に関して各OCTデータが整合されてもよい。整合処理の結果として、層厚情報に基づく経過観察を、検者が良好に行うことができるようになる。なお、整合処理の詳細については、後述する。
【0025】
メモリ72は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。メモリ72としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、外部サーバー、およびUSBメモリ等のいずれかが用いられてもよい。
【0026】
メモリ72には、例えば、本装置1を動作させるための各種プログラムが格納される。例えば、メモリ72に記憶される解析プログラム(本実施形態における眼科情報処理プログラム)が制御部70で処理(実行)されることによって、図3のフローチャートに示す本装置1の動作が実行される。
【0027】
メモリ72は、例えば、撮影装置200,300を介して取得されるOCTデータ、および、OCTデータを処理することで得られる層厚情報等を記憶する。なお、以下の説明において、撮影装置200で得られるOCTデータに基づく層厚情報を、「第1層厚情報」と称し、撮影装置300で得られるOCTデータに基づく層厚情報を、「第2層厚情報」と称する。
【0028】
更に、OCTデータにおける取得条件を特定する情報(以下、「取得条件データ」という)が、OCTデータ,および,層厚情報のそれぞれと対応づけて記憶されていてもよい。本実施形態において、取得条件データは、OCTデータの取得に使用したOCTデバイスの仕様を、少なくとも特定する。なお、装置の仕様を特定するためのデータは、例えば、OCTデバイスの機種名、機種のバージョン情報、OCTデバイスの撮影方式、測定光源から出射される測定光の波長帯、および、検出器の受光特性等の少なくともいずれかであってもよい。
【0029】
このような取得条件データは、各撮影装置200,300の記憶部に予め記憶されたデータであって、OCTデータと一緒に、各撮影装置200,300から本装置1に転送されるデータであってもよい。この場合、本装置1の制御部70は、一緒に受信されるOCTデータと取得条件データとを、互いに対応付けてメモリ72に記憶してもよい。
【0030】
但し、取得条件データは、必ずしも本装置1が各撮影装置200,300から受信することで本装置1が取得するデータである必要はない。例えば、取得条件データは、検者が入力インターフェイス90を介して手動で入力(又は、選択)される情報であってもよい。より具体的には、メモリ72にOCTデータが格納された後で、そのOCTデータの取得条件と対応する情報を、検者が入力インターフェイス90を介して入力(又は、選択)し、その入力(又は、選択)結果として、OCTデータと対応する取得条件データが取得(例えば、メモリ72に記憶)されてもよい。また、OCTデータ、層厚情報、および取得条件データは、例えば、経過観察のため、時間軸に関連付けて記憶される。時間を関数とする層厚情報は、層厚の経時的変化を示す。
【0031】
更に、メモリ72は、正常眼における層厚情報を記憶する正常眼データベースを格納していてもよい。
【0032】
入力インターフェイス90は、検者からの操作が入力される。入力インターフェイス90としては、例えば、マウス、トラックボール、タッチパネルなどのデバイスが用いられてもよい。
【0033】
モニタ75は、OCTデータを視覚化したグラフィック(例えば、断層画像等)、層厚情報、および、複数の層厚情報の整合結果等が表示される。モニタ75は、タッチパネルであってもよい。この場合、モニタ75が入力インターフェイス90の一部として機能する。
【0034】
<動作の説明>
次に、図3のフローチャートを参照して、本装置1の動作をより具体的に説明する。
【0035】
便宜上、以下の説明では、長期にわたって取得された複数のOCTデータが予めメモリ72に記憶されており、それらのOCTデータは、次のようにして取得されていることを前提として、本装置1の動作を説明する。ここでは、まず、撮影装置200(SD−OCT)によって被検眼のOCTデータが異なる日時に複数回取得され、その後、撮影装置300(SS−OCT)によって被検眼のOCTデータが異なる日時に複数回取得されている。また、各撮影装置200,300がOCTデータを取得する都度、そのOCTデータがネットワークを介して本装置1によって取得され、これにより、異なる日時に取得された複数のOCTデータがメモリ72に記憶されている。換言すれば、メモリ72には、被検眼における時系列のOCTデータが記憶されている。
【0036】
また、便宜上、以下の説明では、各OCTデータに基づく層厚情報(ここでは、層厚マップ)と、各OCTデータについての取得条件を示す取得条件データと、が、各OCTデータにそれぞれ対応づけられて、メモリ72に記憶されているものとする。
【0037】
例えば、経過観察のための表示(例えば、グラフィック)を出力する場合、制御部70は、メモリ72に記憶されている複数の層厚情報の中から、経過観察に使用する層厚情報を2つ以上選択し、選択した層厚情報を整合させる。制御部70は、例えば、入力インターフェイス90を介して検者によって指定された層厚情報を、経過観察に用いる時系列の層厚情報として選択する。選択される層厚情報の中から更に、経過観察において比較の基準となるデータが選択されてもよい。
【0038】
この動作例では、経過観察に用いる時系列の層厚情報として、撮影装置200(SD−OCT)で得られたOCTデータに基づく第1層厚情報と、撮影装置300(SS−OCT)で得られたOCTデータに基づく第2層厚情報と、がそれぞれ1つ以上選択される。
【0039】
ここで、眼科分野において、SD−OCTの光源としては、800nm〜900nmを中心波長とする光源が、OCTデータの測定光の光源として利用される傾向にある。一方、SS−OCTの光源としては、いわゆる1μm帯で波長掃引を行う(約1050nmを中心に、波長掃引を行う)光源が利用される傾向にある。このような測定光の波長域の差によって、SS−OCTの方が、SD−OCTと比べて測定光の深達性が高く、深部(例えば、網膜外層側)での感度が高い傾向にある(図4参照)。一方、浅部(例えば、網膜内層側)での感度については、深部に比して有意な違いは、現状見られない。このため、SD−OCT(撮影装置200)によるOCTデータに基づく第1層厚情報は、SS−OCT(撮影装置300)によるOCTデータに基づく第2層厚情報と比べて、少なくとも深部側の層厚の値が小さくなりやすい場合がある。
【0040】
また、撮影装置200によって取得されるOCTデータと、撮影装置300によって取得されるOCTデータとは、OCTデバイスの仕様の違いに応じて、解像度が異なっていることが考えられる。例えば、撮影装置200(SD−OCT)と撮影装置300(SS−OCT)との測定光のバンド幅(測定光として利用される波長帯の幅)の違い等によって、このような違いが生じ得る。このような解像度の違いも、第1層厚情報と第2層厚情報とに異なる影響を与えると考えられる。
【0041】
このように、本実施形態では、OCTデータを取得した撮影装置200および撮影装置300の仕様が互いに異なることによって、第1層厚情報と第2層厚情報との比較が難しい場合が考えられる。撮影装置200および撮影装置300の仕様は、第1層厚情報に対応する取得条件データ、および、第2層厚情報に対応する取得条件データによってそれぞれ特定され得る。そこで、本装置1では、撮影装置200と撮影装置300との仕様の違いに応じた層厚情報の補正データを、第1層厚情報に対応する取得条件データと、第2層厚情報に対応する取得条件データと、に基づいて取得する。そして、補正データに基づいて、第1層厚情報および第2層厚情報の少なくとも一方を補正することにより、第1層厚情報と第2層厚情報とを、少なくとも深さ方向に関して整合させる(整合処理)。
【0042】
ここでいう整合とは、例えば、第1層厚情報および第2層厚情報のうち少なくとも一方における層厚の値を補正することであってもよい。この場合、例えば、第1層厚情報と第2層厚情報とのうち、一方の取得条件を基準として、他方の層厚情報を補正してもよい。また、第1層厚情報における取得条件、および、第2層厚情報における取得条件の両方と異なる所定の取得条件を基準として、第1層厚情報および第2層厚情報の両方を補正してもよい。また、第1層厚情報と第2層厚情報とのうち、他方の層厚情報にあわせて補正される側の層厚情報が、選択可能であってもよい。この場合、例えば、操作部からの操作に応じて、制御部70は、補正される側の層厚情報として、第1層厚情報と第2層厚情報とのうち一方を選択し、選択された一方を、他方の取得条件に対して整合させる。
【0043】
ここで、補正データは、例えば、層厚の補正量を示すデータである。本実施形態において、第1層厚情報と第2層厚情報とを整合させるための補正データは、予めメモリ72に記憶されている。補正データにおける補正量は、例えば、次のようにして予め定められていてもよい。
【0044】
例えば、層間距離が既知である層状の被検物に対するOCTデータを撮影装置200と撮影装置300とのそれぞれで取得し、それぞれのOCTデータから得られる層厚情報を比較することによって、第1層厚情報と第2層厚情報とにおける層毎(或いは、深度毎)の層厚の比(又は差)であって、被検眼の経時変化に拘わらない比(又は差)を、予め算出してもよい。補正データには、このようにして予め求められた層厚の比(又は差)に基づく補正量が規定されていてもよい。なお、ここでいう、深度は、OCTデータ上の深度である。OCTデータ上の深度は、測定光および参照光の間の光路長差に依存する。
【0045】
なお、メモリ72には、撮影装置200と撮影装置300との組み合わせ以外にも、撮影装置の組合せごとに、異なる補正データがメモリ72に予め記憶されていてもよい。補正データは、例えば、例えば、それぞれの層(或いは、深度)に対する補正量を示すルックアップテーブルであってもよいし、層(或いは、深度)を変数とする補正式を示すデータであってもよい。
【0046】
前述したように、SD−OCT(撮影装置200)によるOCTデータに基づく第1層厚情報は、SS−OCT(撮影装置300)によるOCTデータに基づく第2層厚情報と比べて、より深部側の層ほど、層厚が小さくなりやすい場合がある。そこで、例えば、制御部70は、整合処理において、各層厚情報のうち、少なくとも網膜内層に相当する部分と、網膜外層に相当する部分(およびそれ以深の部分)と、に対して異なる補正量で補正を行ってもよい。その一例として、層厚情報における網膜内層に相当する部分は補正せずに、網膜外層に相当する部分(およびそれ以深の部分)のみを補正する(例えば、第1層厚情報における深部側の層厚の値を増大させる、第2層厚情報における深部側の層厚の値を減少させる、或いは、その両方を行う)ようにしてもよい。また、一例として、網膜内層に相当する部分への補正に対し、網膜外層(およびそれ以深の部分)をより大きな補正量で補正してもよい。
【0047】
このように、網膜内層に相当する部分と、網膜外層に相当する部分(およびそれ以深の部分)と、に対して異なる補正量で補正が行われる場合、両部分の境界位置は、予め定められていてもよい。例えば、図4のグラフでは、ある条件において、SD−OCTと、SS−OCTとにおけるOCT信号感度強度は、略1mm(網膜表面からの深度)以深の範囲で、傾きが大きく異なっている。そこで、例えば、略1mmの深度を、網膜内層に相当する部分と、網膜外層に相当する部分(およびそれ以深の部分)として補正が行われてもよい。なお、境界位置は、例えば、各装置における測定光の波長域の組合せに応じて異なる。このため、境界の深度は、略1mmに限られるものではなく、各層厚情報を得るために利用された波長域の組合せに応じて適宜定められてもよい。なお、網膜内層に相当する部分と、網膜外層に相当する部分(およびそれ以深の部分)との境界の深度は、必ずしも予め定められている必要はなく、制御部70によるセグメンテーション処理の結果に応じて設定されてもよい。例えば、セグメンテーション処理によって特定される所定の層境界が、内層と外層との境界として利用されてもよい。
【0048】
ここで、整合処理は、例えば、比較の基準となる層厚情報に、その他の層厚情報を整合させるように、その他の層厚情報を補正する処理であってもよい。また、任意の層厚情報(例えば、検者の指示に基づいて制御部70が選択した層厚情報)に、その他の層厚情報を整合させるように、その他の層厚情報を補正する処理であってもよい。また、それぞれの層厚情報を、ある一定の取得条件下での層厚情報となるように補正する処理であってもよい。
【0049】
整合処理後の第1層厚情報と第2層厚情報とは、同じ取得条件で得られたデータと看做すことができる。このため、本実施形態では、両者を比較することで、被検眼の網膜における層厚の時間的な変化を良好に把握できるようになる。つまり、本実施形態では、長期にわたってOCTデータを取得する場合において、途中で装置の仕様が変更されている場合であっても、層厚情報の経過観察を良好に行うことができる。
【0050】
整合処理の後、制御部70は、整合結果をモニタ75に表示させる。その際、制御部70は、整合処理後の第1層厚情報と第2層厚情報とのそれぞれに基づいて、層厚の継時的な変化を示すグラフィックを、整合結果として生成し、モニタ75に表示させる。このようなグラフィックは、例えば、マップ画像であってもよいし、二次元解析チャートであってもよいし、トレンドグラフであってもよいし、これら以外のグラフィックであってもよい。なお、これらのグラフィックの代わりに、又は、これらのグラフィックと共に、層厚の継時的な変化を示す数値情報を、整合結果としてモニタ75へ表示させてもよい。
【0051】
図5の表示例では、経過観察で使用される層厚情報毎に、マップ画像、および二次元解析チャートが、それぞれ1つずつ生成されている。そして、それぞれのマップ画像および二次元解析チャートが、同一画面上に並べられて表示されている。本実施形態では、整合処理によって補正された層厚情報に基づくグラフィックに対し、補正が行われたデータであることを示す識別表示が行われる。図5の例では、インデックス120が付されることで、識別表示が行われている。
【0052】
マップ画像は、例えば、被検眼眼底上の解析結果の分布を二次元的に表現するカラーマップであってもよい(例えば、図5のマップ画像100a参照)。マップ画像100aは、被検眼眼底における層厚の二次元的な分布を示すカラーマップであり、層厚に応じて色分けされてもよい。
【0053】
マップ画像100aとしては、例えば、厚みマップ、比較マップ、デビエーションマップ、差分マップの少なくとものいずれかが用いられてもよい。厚みマップは、網膜層の厚み量を示すマップであってもよい。比較マップは、被検眼の網膜層の厚みと正常眼データベースに記憶された正常眼の網膜層の厚みとの比較結果を示すマップであってもよい。デビエーションマップは、被検眼の網膜層の厚みと正常眼データベースに記憶された正常眼の網膜層の厚みとのずれ量を、標準偏差にて示すマップであってもよい。差分マップは、各検査時期(例えば、検査日)との厚みの差分を示す検査時期比較厚みマップであってもよい。
【0054】
また、解析チャート画像100b、100cは、眼底を分割したセクション(領域)における層厚を示す。解析チャートは、例えば、眼底における層厚の二次元的な分布を領域毎に分割し、領域毎の解析値を得ることによって作成される。
【0055】
解析チャートは、眼底上での撮影範囲を考慮して設定されてもよい。例えば、眼底上の撮影範囲において撮影中心から基準距離(例えば、9mm)に対応する領域において、複数のセクションが設定されてもよい。例えば、中心から第1距離(例えば、中心から1mm範囲内)に対応するセクション、第1距離から第2距離(例えば、中心に対し、1mm〜4mmの領域)に対応するセクション、第2距離から第3距離に対応するセクション(例えば、中心に対し、4mm〜9mmの領域)とに分割される。
【0056】
解析チャートは、例えば、予め設定されたセクション毎に解析値を示す。解析値として、例えば、予め設定されたセクション毎に解析結果の基本統計量が求められる。基本統計量しては、代表値(平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値、など)、散布度(分散、標準偏差、変動係数など)などであってもよい。セクション内での各位置での解析結果がセクション毎の解析結果に含まれることで、安定した解析値が得られる。
【0057】
より詳細には、解析チャートは、層厚マップと共に表示される。網膜厚マップ100aが黄斑マップの場合、GCHART、S/Iチャート、ETDRSチャート等が選択的に表示される。なお、層厚が乳頭マップの場合は、解析チャートとして、GCHART、S/Iチャート、ETDRSチャートの他にも、全体チャート、上下チャート(2分割)、TSNITチャート(4分割)、ClockHourチャート(12分割)等が選択的に表示される。
【0058】
また、解析チャートには、所定領域での層厚を数値にて表示する数値表示領域が付されてもよい。数値表示領域には、例えば、全体の平均網膜厚、中心窩での網膜厚、中心窩を中心とする所定エリア内での平均網膜厚(例えば、1、2、3mm)等が表示される。また、解析チャートには、層厚マップと正常眼データベースとの対比結果が示されてもよい。
【0059】
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、第少なくとも網膜内層に相当する部分と、網膜外層に相当する部分(およびそれ以深の部分)と、に対して異なる補正量で層厚を補正することによって、1層厚情報と第2層厚情報との間での層厚情報が整合された。但し、整合処理では、網膜の層構造(或いは深度)を更に細分化し、細分化された層毎に(或いは、深度毎に)、異なる補正量を用いて層厚を補正してもよい。
また、上記実施形態では、層間距離が既知である層状の被検物(試料)を測定することで、補正データ(主に、層厚情報の補正量)を得る場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、被検物(試料)は、既知の厚みを持っていれば、必ずしも層状である必要はない。この場合、OCTデータ上の各深度において試料を配置し、SD−OCTと、SS−OCTと、のそれぞれで、試料の層厚を測定する。結果、SD−OCTと、SS−OCTと、のそれぞれにおいて、試料の厚みの測定値が、試料が配置される深度毎に得られる。
ある深度における補正量は、SD−OCTと、SS−OCTと、の間における、その深度に配置された試料の厚みの測定値の比、または、差、に基づいて、得ることができる。層厚情報の補正データは、このようにして得られる、層毎、または、深度毎の補正量によって形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、撮影装置200で得られるOCTデータと、撮影装置300とで得られるOCTデータとの間の仕様の違い(取得条件の違いの一例)として、撮影画角、および1ピクセル当たりの寸法、の少なくともいずれかにおける違いが存在してもよい。この場合において、制御部70は、撮影画角、および1ピクセル当たりの寸法、の少なくともいずれかの違いを考慮して、第1層厚情報と第2層厚情報を整合させてもよい。この場合、例えば、第1層厚情報および第2層厚情報のそれぞれに対応付けられた取得条件データに基づいて、予めメモリ72に記憶される縮尺の補正データ(例えば、第1層厚情報と第2層厚情報とにおける縮尺を補正するためのデータ)が制御部70によって取得されるようにしてもよい。そして、そして、制御部70が、整合処理の際に、該補正データに基づいて第1層厚情報と第2層厚情報とにおける少なくとも一方の縮尺を補正してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、メモリ72に予め記憶されている補正データを用いて、第1層厚情報と第2層厚情報とを整合させる場合を説明した。しかし、整合処理で使用される補正データは、必ずしもメモリ72に予め記憶されている必要はない。例えば、各層に対する層厚の補正量を、取得条件の関数として与える補正式が、メモリ72等に予め記憶されており、整合処理の都度、整合される各層厚情報の取得条件データに応じて、制御部70が、補正量を補正式から算出してもよい。そして、算出された補正量に基づいて、各層厚情報が整合されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態の制御部70によって実行される整合処理は、例えば、正常眼データベースに記憶されている正常眼の層厚情報(以下、正常眼層厚情報と称す)との整合が得られるようにそれぞれの層厚情報(第1層厚情報と第2層厚情報との少なくともいずれか)を深さ方向に関して補正してもよい。正常眼データベースに記憶される正常眼層厚情報は、ある取得条件で(例えば、ある仕様のOCTデータによって)複数の眼のOCTデータを取得し、それぞれのOCTデータから各々得られる複数の層厚情報に対して所定の統計処理を行った結果である場合がある。よって、例えば、正常眼データベースにおける正常眼についての層厚情報(正常眼層厚情報と称す)が第1の取得条件で取得されたOCTデータに基づいて生成されたデータであるのに対し、正常眼層厚情報と比較される被検眼の層厚情報が、第2の取得条件(第1の取得条件とは異なる)で取得されたOCTデータに基づいて生成されたデータである場合がありうる。具体例としては、正常眼データベースに、SD−OCTによって取得された正常眼のOCTデータに基づく正常眼層厚情報が記憶されており、SS−OCTによって取得される被検眼のOCTデータに基づく層厚情報が、正常眼層厚情報と比較される場合等が考えられる。
【0063】
これに対し、正常眼層厚情報との整合が得られるように本装置1によって取得される被検眼の層厚情報(第1層厚情報と第2層厚情報との少なくともいずれか)が補正されることで、被検眼の層厚情報と正常眼層厚情報との比較を良好に行うことが可能となる。また、制御部70が、整合処理の結果(整合後の第1層厚情報および第2層厚情報)と、正常眼層厚情報との比較処理を行い、比較結果を出力するようにしてもよい。例えば、上記実施形態に示した比較マップおよびデビエーションマップとして比較結果が出力されてもよい。結果、経過観察において、被検眼の層厚情報を、正常眼における層厚情報と精度よく比較できる。
【0064】
なお、第1の取得条件による正常眼層厚情報と、第2の取得条件による被検眼の層厚情報とを整合させる場合には、正常眼層厚情報と被検眼の層厚情報とうちの少なくとも一方が深さ方向に関して補正されることによって整合結果が得られれば良く、上記変容例のように、被検眼の層厚情報のみが補正される場合に限定されるものではない。
【0065】
この場合、正常眼データベースと共に、正常眼データベースの基となったOCTデータの取得条件データが、予めメモリ72に記憶されていてもよい。そして、被検眼の層厚情報および正常眼データベースの層厚情報のうち少なくとも一方を、正常眼データベースの層厚情報についての取得条件データと被検眼の層厚情報についての取得条件データとに基づいて補正することによって、互いの層厚情報を整合させてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、具体例として、撮影方式が互いに異なる複数種類のOCTデバイス(より詳細には、SD−OCTと、SS−OCT)で得られた層厚情報を、互いに整合させる場合について説明した。しかし、撮影方式が同種のOCTデバイスであって,装置の光学系の仕様が異なるデバイスで得られる層厚情報の整合に、本開示の技術は適用されてもよい。例えば、互いの光学系の仕様が異なる複数のSD−OCTで得られる層厚情報の整合が、本開示の技術によって行われてもよい。SD−OCT同士の場合において、「光学系の仕様が互いに異なる」典型例としては、2種類のSD−OCTにおける測定光の波長域、および、スペクトロメータの少なくとも一方が互いに異なる場合が挙げられる。
【0067】
また、上記実施形態では、複数のOCTデータからそれぞれ得られる層厚情報を、各OCTデータを取得したOCTデバイス間の仕様の違い(取得条件の違いの一例)を考慮して整合させる場合について説明した。しかし、層厚情報を整合するうえで考慮される取得条件の違いは、必ずしもOCTデバイスの仕様の違いに限られるものではない。例えば、OCTデータのSSI(Signal Strength Index:信号強度)に影響を与えるパラメータに関する条件の違いであってもよい。なお、OCTデータのSSIに影響を与えるパラメータとしては、例えば、被検眼に対して照射された測定光の光量、および、検出器におけるゲイン等が例示される。
【0068】
また、層厚情報を整合するうえで、OCTデータの取得時におけるアライメント状態をそのOCTデータの取得条件として利用されてもよい。を特定するためのデータは、例えば、OCTデータと共に撮影装置200,300で取得される前眼部または眼底の正面画像データ、および、アライメント指標の検出結果等が挙げられる。
【0069】
また、上記実施形態において、層厚情報は、本装置1の制御部70によって各OCTデータから生成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、各撮影装置200,300において、各々のOCTデータに基づく層厚情報が生成されてもよい。それぞれの層厚情報がネットワークを介して本装置1へ転送されることにより、本装置1の制御部70が、各OCTデータに基づく層厚情報(つまり、第1層厚情報および第2層厚情報)を取得する構成であってもよい。
【0070】
なお、本開示においては、上記実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う眼科画像処理ソフトウェア(プログラム)をネットワークや各種記憶媒体を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 眼科情報処理装置
70 制御部
72 メモリ
75 モニタ
200,300 撮影装置
図1
図2
図3
図4
図5