(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分析により把握した前記第1ニッケルめっき層の品質から、前記第1ニッケルめっき層上ではんだを溶融させることによって得られるはんだ層の前記第1ニッケルめっき層に対する接合強度を推定することを更に含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
【背景技術】
【0002】
半導体チップなどの表面実装部品を実装するための配線基板は、電極パッドと、この電極パッドと電気的に接続された回路パターンとを備えている。配線基板において、電極パッド以外の部分は、ソルダーレジスト層で被覆されている。電極パッド及び回路パターンは、典型的には、銅又は銅合金からなる。
【0003】
この電極パッドには、表面実装の形態に応じて各種の表面処理が行われる。最も一般的な実装の形態は、はんだ付けである。はんだ付けによる表面実装では、電極パッド上にはんだ層を設け、このはんだ層を介して配線基板に表面実装部品を固定する。はんだ層は、電極パッド上にはんだボール又ははんだペーストを供給した後、はんだボール又ははんだペーストが溶融する温度(240℃程度)にまでこれらを加熱することにより形成される。しかしながら、この加熱処理により、電極パッド表面が酸化し、はんだ濡れ性が悪化することがある。
【0004】
このような問題に対処するために、電極パッド表面には、はんだ層の形成に先立って、耐熱性に優れた表面処理層が形成される。表面処理層としては、例えば、ニッケル層と、このニッケル層上に設けられた金層との複層めっき層、又は、ニッケル層と、このニッケル層上に設けられたパラジウム層と、このパラジウム層上に設けられた金層との複層めっき層を挙げることができる。これらの金層、又はパラジウム層と金層との積層体は、高温でも酸化されにくい。したがって、電極パッドとはんだ層との間にこのような表面処理層を設けると、高温ではんだボール又ははんだペーストを溶融させた場合であっても、はんだ濡れ性が保持される。
【0005】
表面処理層上、すなわち、金層又はパラジウム層と金層との積層体上に、はんだボール又ははんだペーストを溶融させると、金層又はパラジウム層と金層との積層体は、はんだ層に溶解する。その結果、はんだ層とニッケルめっき層との界面には、金属間化合物及びボイドを含む金属間化合物層が形成される。すなわち、表面処理層上にはんだボール又ははんだペーストを溶解させると、金属間化合物層を介してニッケルめっき層と接合されたはんだ層が形成される。
【0006】
ここで、はんだ層のニッケルめっき層との接合強度を、はんだ接合性という。はんだ接合性は、熱応力、反り力又はせん断力などの外力が、はんだ層、ニッケルめっき層及び電極パッドを含む積層構造に加わったときにおける、はんだ層のニッケルめっき層からのはがれにくさを示す。したがって、はんだ接合性に優れた配線基板に表面実装部品を実装すると、表面実装部品は配線基板から外れにくいため、接続不良を生じにくい。
【0007】
上述したように、表面処理層上ではんだボール又ははんだペーストを溶融させると、表面処理層に含まれる金層又はパラジウム層と金層との積層体は、はんだ層に溶解するため、はんだ層は、表面処理層に含まれるニッケルめっき層と接合する。したがって、はんだ接合性には、はんだ層とニッケルめっき層との界面の状態が大きく関わっている。
【0008】
ニッケルめっき層は、無電解めっき法により、無電解ニッケルめっき液からニッケルを析出させることによって得られる被膜である。無電解ニッケルめっき液には、ニッケル(II)塩と、錯化剤としての塩と、還元剤として働く次亜りん酸塩と、液のpHを調整するために用いる水酸化アルカリ又はアンモニアとが主成分として含まれている。
【0009】
また、無電解ニッケルめっき液には、鉛、ビスマス及び硫黄などを含む添加剤が更に加えられている。これら添加剤由来の、鉛、ビスマス及び硫黄は、ニッケルめっき被膜中に析出する。これらの添加剤は、無電解ニッケルめっき液が自己分解することを抑制する。これらの添加剤の濃度は、1リットル当たり数mg程度であり、非常に低い。しかしながら、これらの添加剤は、ごくわずかの量であっても顕著な効果を示し、めっき被膜の析出速度やめっき被膜の特性に大きな影響を及ぼすことがわかっている。
【0010】
例えば、非特許文献1には、無電解ニッケルめっき液に含まれる鉛イオンの拡散形態が、ニッケルめっき層の形成に影響を及ぼすことが記載されている。
図1は、非特許文献1に記載された、鉛イオンの拡散形態を示す図である。
図1(a)は、無電解ニッケルめっき液中の鉛イオンの非線形拡散を示す図である。
図1(a)に示す配線基板PBは、基材BOと、基材BO上に設けられたパッド層PLと、基材BO及びパッド層PLの一部を被覆するソルダーレジスト層SRとを備えている。パッド層PLは、ソルダーレジスト層SRにより被覆されていないマイクロパッドP1と、このマイクロパッドP1の周辺に位置し、ソルダーレジスト層SRにより被覆されている配線P2とを含んでいる。
【0011】
非特許文献1には、このような配線基板PBのマイクロパッドP1上に、無電解ニッケルめっき液を用いて無電解めっき処理を行うと、無電解めっき液に含まれる鉛イオンが、
図1(a)中の矢印の向きに示すように非線形拡散すること、すなわち、マイクロパッドP1上に集中することが記載されている。また、非特許文献1には、このようにマイクロパッドP1上に鉛イオンが集中すると、マイクロパッドP1にニッケルめっき層が形成されないことがあることが記載されている。
【0012】
図1(b)は、無電解ニッケルめっき液中の鉛イオンの線形拡散を示す図である。
図1(b)に示す配線基板PBは、
図1(a)に示すソルダーレジスト層SRを備えておらず、基材BOの一部とパッド層PLの配線P2とがむき出しになっていること以外は、
図1(a)に示す配線基板PBと同様のものである。
【0013】
非特許文献1には、このような配線基板PBのパッド層PL上に、無電解ニッケルめっき液を用いて無電解めっき処理を行うと、無電解ニッケルめっき液に含まれる鉛イオンは、
図1(b)中の矢印の向きに示すように線形拡散すること、すなわち、マイクロパッドP1と配線P2とに均一に拡散することが記載されている。非特許文献1には、このようにマイクロパッドP1と配線P2とに鉛イオンが均一に輸送されると、マイクロパッドP1及び配線P2にニッケルめっき層が形成されることが記載されている。
【0014】
更に、ニッケルめっき層上に、金めっき液を用いてめっき処理を行うと、金めっき液に含まれる金の錯イオンと、ニッケルめっき層に含まれるニッケルとの間で置換反応が起こり、ニッケルめっき層が腐食される。上述したように、ニッケルめっき層には、ニッケルに加えて、鉛、ビスマス及び硫黄が共析している。これら共析物は、腐食反応の程度にも関与している。
【0015】
以上のことから、ニッケルめっき層における、鉛、ビスマス及び硫黄などの共析物の含有量は、ニッケルめっき層の特性に大きく影響している。それゆえ、これらの共析物の含有量は、はんだ接合性にも大きく関与していると考えられる。
【0016】
特許文献1には、連続して無電解めっき処理を行うと、無電解ニッケルめっき液中に老廃物である炭素が蓄積され、その結果、ニッケルめっき被膜に炭素が共析して、はんだ濡れ性が低下することが記載されている。このような問題に対して、特許文献1には、二次イオン質量分析計を用いて、ニッケルめっき被膜中の炭素の含有量を測定し、この結果に基づいてニッケルめっき被膜中の炭素の含有量を低減させる処理を行うことが記載されている。
【0017】
特許文献2には、Ni、P、BiおよびSが共析して形成された無電解ニッケルめっき層であって、Pの含有量が5質量%以上10質量%未満であり、Biの含有量が1〜1000質量ppmであり、Sの含有量が1〜2000質量ppmであり、Biの含有量に対するSの含有量の質量比(S/Bi)が1.0より大きい無電解ニッケルめっき層を備えた配線基板は、優れた実装信頼性を得られることが記載されている。
【0018】
特許文献3には、基材上に、Ni、Cr、Mn、Fe、Co及びCuのA構成元素群から選択された1種又は2種以上からなる下層と、下層上に形成された中層と、Sn及びInのB構成元素群から選択された1種又は2種と、Ag、Au、Pt、Pd、Ru、Rh、Os及びIrのC構成元素群から選択された1種又は2種類以上の合金からなる上層と、上層上のO、C、S、P及びNから選択された1種以上を含む処理層とを備え、X線光電子分析法による表面深さ方向分析で、上層構成金属及びO、C、S、P、Nに対するOの濃度(原子%)が10原子%以上となる領域が、最表面からの深さ方向で3nm以内であり、最表面からの深さ方向で0.2〜5nmの領域におけるSnの濃度(原子%)の最大値Mと最小値mとが、M/m≦3を満たす電子部品用金属材料を接点部分に用いたコネクタ端子は、低ウィスカ性、低凝着磨耗性及び高耐久性を有することが記載されている。
【0019】
また、特許文献4には、基材上に形成された、Ni、Cr、Mn、Fe、Co及びCuからなる群であるA構成元素群から選択された1種又は2種以上で構成された下層と、下層上に形成された中層と、中層上に形成された、Sn及びInからなる群であるB構成元素群から選択された1種又は2種と、Ag、Au、Pt、Pd、Ru、Rh、Os及びIrからなる群であるC構成元素群から選択された1種又は2種類以上との合金で構成された上層とを備え、この上層の表面を波長分散型の蛍光X線で分析したときに得られる、S、Pの検出強度が1000mm
2当たりそれぞれ0.6kcps、1.2kcps以上である電子部品用金属材料を接点部分に用いたコネクタ端子は、低ウィスカ性、低凝着磨耗性及び高耐久性を有することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一態様に係る管理方法について図を参照しながら説明する。
本発明の一態様に係る管理方法では、先ず、
図2及び
図3に示す基板を準備する。
図2及び
図3に示す基板1は、回路パターンとこの回路パターンの一部を被覆する絶縁層とが、両面に設けられた配線基板である。
図2及び
図3に示す基板1は、インターポーザとして使用することができる。
【0031】
図2は、本発明の一態様に係る管理方法に用いる基板の一方の主面を概略的に示す平面図である。
図2に示す基板1の一方の主面は、中央部に位置する第1領域10と、この第1領域10の周囲に位置する第2領域20とを含んでいる。
【0032】
第1領域10には、複数の第1電極パッド11が設けられている。第1領域10のうち、第1電極パッド11が設けられた領域以外の部分には、第1絶縁層12が設けられている。第1電極パッド11は、回路パターンと電気的に接続されている。
【0033】
第1電極パッド11は、表面実装部品をフリップチップ接続するためのフリップチップ(FC)パッドである。表面実装部品は、例えば、半導体チップである。第1電極パッド11は、フリップチップパッドでなくてもよい。第1電極パッド11は、典型的には、銅又は銅合金からなる。
【0034】
第1電極パッド11は、アレイ状に設けられている。第1電極パッド11の各々は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。
【0035】
第1電極パッド11の形状は、正方形である。第1電極パッド11の形状は、三角形であってもよく、四角形のように角の数が4以上の多角形であってもよく、円形であってもよく、楕円形であってもよい。多角形の第1電極パッド11の一辺の長さ、又は円形の第1電極パッド11の直径は、一例によると、0.05mm以上である。第1電極パッド11の各々の面積は、一例によると、0.002mm
2以上である。
【0036】
この第1電極パッド11の大きさは、今後の技術革新により更に小さくなることが予想される。したがって、多角形の第1電極パッド11の一辺の長さ、又は円形の第1電極パッド11の直径は、0.05mmより短くてもよい。また、第1電極パッド11の各々の面積は、0.002mm
2より小さくてもよい。
【0037】
第1絶縁層12は、典型的には、ソルダーレジスト材料からなる。
【0038】
第2領域20には、導電体からなる第1測定スポット21が設けられている。第2領域20のうち、第1測定スポット21が設けられた領域以外の部分には、第2絶縁層22が設けられている。
【0039】
第1測定スポット21は、典型的には、銅又は銅合金からなる。
【0040】
第1測定スポット21の面積は、第1電極パッド11の面積と近いことが好ましい。第1測定スポット21の面積と第1電極パッド11の面積とが近いと、ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0041】
第1測定スポット21の面積は、複数の第1電極パッド11のうち、最も面積の小さい第1電極パッド11の面積に対して、5000倍以下の面積であることが好ましい。第1電極パッド11が円形であり、その径が0.05mmである場合、第1測定スポット21の面積は、10mm
2以下であることが好ましい。
【0042】
第1測定スポット21の形状は、円形であってもよく、楕円形であってもよく、多角形であってもよい。
【0043】
円形の第1測定スポット21の直径は、0.04mm以上であることが好ましく、楕円形の第1測定スポット21の短径は、0.04mm以上であることが好ましい。また、多角形の第1測定スポット21は、直径0.03mm以上の円を内包し、かつ、面積が0.002mm
2以上であることが好ましい。
【0044】
第1測定スポット21は、第2領域20の4隅に設けられている。第1測定スポット21は、第2領域20の複数箇所に設けられていてもよく、1箇所のみに設けられていてもよい。
【0045】
図2に示すA−A線は、4隅のうち、左側の上部の隅に設けられた第1測定スポット21aにおける第1電極パッド11側の端面と、右側の上部の隅に設けられた第1測定スポット21bにおける第1電極パッド11側の端面とを結ぶ直線であって、第1電極パッド11までの距離が最も近いものである。すなわち、A−A線は、第1測定スポット21のうち、最も第1電極パッド11に近い点を通る水平線である。
【0046】
図2に示すB−B線は、第1領域10に配列した第1電極パッド11のうち、上側の最端列に位置する第1電極パッド11における第1測定スポット21側の端面を通り、A−A線と平行となる直線であって、A−A線と最も距離が近いものである。すなわち、B−B線は、第1電極パッド11のうち、最も第1測定スポット21に近い点を通る水平線である。
【0047】
A−A線とB−B線との間の距離d1は、十分に近いことが好ましい。この距離d1は、30mm以内にあることが好ましく、20mm以内にあることがより好ましい。第1測定スポット21の位置と、第1電極パッド11の位置とが十分に近いと、ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0048】
第2絶縁層22は、典型的には、ソルダーレジスト材料からなる。第2絶縁層22は、典型的には、第1絶縁層12と一体化している。
【0049】
図3は、
図2に示す基板の他方の主面を概略的に示す平面図である。
図3に示す基板1の主面は、中央部に位置する第3領域30と、この第3領域30の周囲に位置する第4領域40とを含んでいる。
【0050】
第3領域30は、第1領域10よりも大きい。第3領域30は、第1領域10と同じ大きさであってもよく、第1領域10よりも小さくてもよい。第3領域30は、典型的には、第1領域10の真裏に設けられている。
【0051】
第3領域30には、複数の第2電極パッド31が設けられている。第3領域30のうち、電極パッド31が設けられた領域以外の部分には、第3絶縁層32が設けられている。第2電極パッド31は、回路パターンと電気的に接続されている。
【0052】
第2電極パッド31は、基板1をマザーボードに接続するためのボールグリッドアレイ(BGA)パッドである。第2電極パッド31は、ボールグリッドアレイパッドでなくてもよい。
【0053】
第2電極パッド31は、アレイ状に設けられている。第2電極パッド31の各々は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。
【0054】
第2電極パッド31の形状は、典型的には、第1電極パッド11と同様の形状を採用することができる。すなわち、第2電極パッド31の形状は、多角形であってもよく、円形であってもよく、楕円形であってもよい。第2電極パッド31の形状は、第1電極パッド11の形状と異なっていてもよい。
【0055】
多角形の第2電極パッド31の一辺の長さ、又は円形の第2電極パッド31の直径は、一例によると、0.15mm以上である。第1電極パッド11の各々の面積は、一例によると、0.018mm
2以上である。
【0056】
この第2電極パッド31の大きさは、今後の技術革新により更に小さくなることが予想される。したがって、多角形の第2電極パッド31の一辺の長さ、又は円形の第2電極パッド31の直径は、0.15mmより短くてもよい。また、第2電極パッド31の各々の面積は、0.018mm
2より小さくてもよい。
【0057】
第3絶縁層32の組成は、典型的には、第1及び第2絶縁層の組成と同様である。
【0058】
第4領域40は、第2領域20よりも小さい。第4領域40は、第2領域20と同じ形状であってもよく、第2領域20より大きくてもよい。第4領域40は、典型的には、第2領域20の真裏に設けられている。
【0059】
第4領域40には、導電体からなる第2測定スポット41が設けられている。第4領域40のうち、第2測定スポット41が設けられた領域以外の部分には、第4絶縁層42が設けられている。
【0060】
第2測定スポット41の組成は、典型的には、第1測定スポット21の組成と同様である。
【0061】
第2測定スポット41は、第4領域40の4隅に設けられている。第2測定スポット41は、第4領域40の複数箇所に設けられていてもよく、1箇所のみに設けられていてもよい。第2測定スポット41は、典型的には、第1測定スポット21の真裏に位置する。第2測定スポット41と第1測定スポット21とは、電気的に接続していてもよい。
【0062】
第2測定スポット41の面積は、第2電極パッド31の面積と近いことが好ましい。これらの面積が近いと、ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0063】
第2測定スポット41の面積は、第1測定スポット21の面積と同一であってもよく、異なっていてもよい。また、第2測定スポット41の形状は、第1測定スポット21の形状と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
図3に示すC−C線は、4隅のうち、左側の上部の隅に設けられた第2測定スポット41aにおける第2電極パッド31側の端面と、右側の上部の隅に設けられた第2測定スポット41bにおける第2電極パッド31側の端面とを結ぶ直線であって第2電極パッド31までの距離が最も近いものである。すなわち、C−C線は、第2測定スポット41のうち、最も第2電極パッド31に近い点を通る水平線である。
【0065】
図3に示すD−D線は、第3領域30に配列した第2電極パッド31のうち、上側の最端列に位置する第2電極パッド31における第2測定スポット41側の端面を通り、C−C線と平行となる直線であって、C−C線と最も距離が近いものである。すなわち、D−D線は、第2電極パッド31のうち、最も第2測定スポット41に近い点を通る水平線である。
【0066】
C−C線とD−D線との間の距離d2は、十分に近いことが好ましい。この距離d2は、30mm以内にあることが好ましく、20mm以内にあることがより好ましい。第2測定スポット41の位置と、第2電極パッド31の位置とが十分に近いと、ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0067】
第4絶縁層42の組成は、典型的には、第1乃至第3絶縁層の組成と同様である。第4絶縁層42は、典型的には、第3絶縁層32と一体化している。
【0068】
ここでは、両面に電極パッド及び測定スポットを備えた基板1を例に挙げて説明したが、電極パッド及び測定スポットは、基板1の少なくとも一方の主面上に設けられていればよい。この場合、電極パッドと測定スポットとは、同一の主面上に設けられていることが好ましい。電極パッドと測定スポットとは、異なる主面上に設けられていてもよい。
【0069】
また、この基板1から、第1乃至第4絶縁層を省略してもよい。
【0070】
このような基板1は、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、及びアディティブ法などの公知の方法で得ることができる。
【0071】
次に、この基板1を無電解めっき処理に供する。
先ず、
図4を参照しながら、無電解めっき処理に用いる無電解めっき装置について説明する。
図4は、無電解めっき装置の一例を概略的に示す図である。
【0072】
図4に示す無電解めっき装置100は、めっき槽101と、無電解ニッケルめっき液102と、配管103a及び103bと、ポンプ104と、フィルタ105とを備えている。
【0073】
めっき槽101は、無電解ニッケルめっき液102を収容している。配管103a及び103bと、ポンプ104と、フィルタ105とは、無電解ニッケルめっき液102を循環させる経路を構成している。
【0074】
配管103aの一端は、めっき槽101と接続されている。配管103aの他端は、ポンプ104と接続されている。
配管103bの一端は、ポンプ104と接続されている。配管103bの他端は、めっき槽101において、配管103aの一端よりも下部に接続されている。
フィルタ105は、配管103b内に設置されている。
【0075】
この無電解めっき装置100を用いた無電解めっき処理は、無電解ニッケルめっき液102を循環させながら行われる。
図4に示す矢印の向きは、無電解ニッケルめっき液102の流れ方向を示している。
【0076】
めっき槽101に収容された無電解ニッケルめっき液102は、配管103a及び配管103bを介して、めっき槽101へと循環する。ポンプ104は、加圧により、無電解ニッケルめっき液102の流れを生み出す。循環経路を流れる無電解ニッケルめっき液102に含まれるごみや異物などの粒子状物質は、フィルタ105で除去される。
【0077】
このめっき槽101の無電解ニッケルめっき液102中に、複数の基板1を浸漬することにより、電極パッド11及び31並びに測定スポット21及び41上に、それぞれ、第1及び第3ニッケルめっき層並びに第2及び第4ニッケルめっき層が同時に形成される。
【0078】
なお、無電解めっき処理においては、配管103a又は103bに、無電解めっき反応によって消耗した成分を補給することが通常行われる。
【0079】
無電解ニッケルめっき液102には、ニッケル(II)塩と、錯化剤としての塩と、還元剤として働く次亜リン酸塩と、液のpHを調整するために用いる水酸化アルカリ又はアンモニアとが主成分として含まれる。錯化剤としての塩としては、例えば、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、グリシンなどの有機化合物塩を挙げることができる。
【0080】
無電解ニッケルめっき液102は、例えば、20g/Lの硫酸ニッケルと、20g/Lの次亜リン酸ナトリウムと、30g/Lの乳酸と、水酸化ナトリウムとを含んでいる。
無電解ニッケルめっき液102のpHは、例えば、4.5である。
【0081】
無電解ニッケルめっき液102は、第1添加剤を更に含んでいてもよい。第1添加剤は、無電解ニッケルめっき液102の自己分解を抑制する。無電解ニッケルめっき液102が第1添加剤を含んでいると、めっき槽の内壁や、基板1の電極パッド及び測定スポット以外の部分など、所望しない部分にニッケルめっき層が形成されることを抑制する。
【0082】
第1添加剤の濃度は、典型的には、1リットルあたり数mg程度である。第1添加剤の濃度が過剰に高いと、無めっきが生じやすい。無めっきとは、ニッケルめっき層の析出が抑制されすぎて、基板1の電極パッドや測定スポットなど、所望の部分にニッケルめっき層が形成されない現象を意味する。
【0083】
第1添加剤としては、例えば、鉛(II)塩、ビスマス(III)塩又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0084】
無電解ニッケルめっき液102は、第2添加剤として、硫黄化合物を含んでいてもよい。第2添加剤は、無電解めっき反応を促進する。無電解ニッケルめっき液102が第2添加剤を含んでいると、無電解めっき処理速度が高くなる。また、無電解ニッケルめっき液102が第2添加剤を含んでいると、ニッケルめっき層のリン含有率が低下する。また、第2添加剤は、無めっきを抑制する。
【0085】
第2添加剤の濃度は、典型的には、1リットルあたり数mg程度である。
第2添加剤としては、例えば、チオ尿素、チオシアン酸塩、チオール化合物又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0086】
第1ニッケルめっき層は、第1電極パッド11上に設けられる。第1ニッケルめっき層の形状及び面積は、典型的には、第1電極パッド11の形状及び面積と同一である。
【0087】
第1ニッケルめっき層は、ニッケル及びリンを含んでいる。第1ニッケルめっき層のリン含有率は、典型的には、3質量%乃至14質量%の範囲内にあり、好ましくは、7質量%乃至8質量%の範囲内にある。第1ニッケルめっき層のリン含有率がこの範囲内にあると、基板のはんだ接合性が良好な傾向にある。
【0088】
第1ニッケルめっき層は、鉛、硫黄、炭素及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を更に含んでいてもよい。第1ニッケルめっき層の鉛、硫黄、炭素及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の含有率は、0ppm乃至3000ppmの範囲内にあることが好ましい。
【0089】
また、第1ニッケルめっき層の硫黄含有率は、200ppm乃至600ppmの範囲内にあることがより好ましい。第1ニッケルめっき層の硫黄含有率がこの範囲内にあると、基板のはんだ接合性が良好な傾向にある。
【0090】
第2ニッケルめっき層は、第1測定スポット21上に設けられる。すなわち、第1測定スポット21は、基板1の一方の主面上に第2ニッケルめっき層を形成するための部位である。第2ニッケルめっき層の形状及び面積は、典型的には、第1測定スポット21の形状及び面積と同一である。
【0091】
第2ニッケルめっき層の面積と、第1ニッケルめっき層の面積とは、近いことが好ましい。これら第1及び第2ニッケル層の面積は、第1測定スポット21の面積と第1電極パッド11の面積とを近づけることにより近づけることができる。
【0092】
無電解めっき処理により形成されるニッケルめっき層において、リン、鉛、硫黄、炭素及びビスマスなどの共析物の含有量は、ニッケルめっき層の面積の影響を受けることがある。例えば、これら第1及び第2ニッケルめっき層の面積が十分に近くなるほど、第1ニッケルめっき層の共析物の含有量と、第2ニッケルめっき層の共析物の含有量との差が小さくなる傾向にある。したがって、第1及び第2ニッケルめっき層の面積が十分に近いと、第2ニッケルめっき層における共析物の含有量を分析することにより、第1ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0093】
第2ニッケルめっき層は、分析の信頼性を高めるという観点からは、分析に十分な面積を有していることが好ましい。
【0094】
第2ニッケルめっき層の位置と、第1ニッケルめっき層の位置とは、近いことが好ましい。すなわち、第1測定スポット21の位置と第1電極パッド11の位置とは近いことが好ましい。
【0095】
無電解めっき処理により形成されるニッケルめっき層において、リン、鉛、硫黄、炭素及びビスマスなどの共析物の含有量は、基板1上におけるニッケルめっき層の位置の影響を受けることがある。例えば、これら第1及び第2ニッケルめっき層の位置が十分に近くなるほど、第1ニッケルめっき層の共析物の含有量と、第2ニッケルめっき層の共析物の含有量との差が小さくなる傾向にある。したがって、第1及び第2ニッケルめっき層の位置が十分に近いと、第2ニッケルめっき層における共析物の含有量を分析することにより、第1ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0096】
第3ニッケルめっき層は、第2電極パッド31上に形成される。第3ニッケルめっき層の形状及び面積は、典型的には、第2電極パッド31の形状及び面積と同一である。
【0097】
第4ニッケルめっき層は、第2測定スポット41上に設けられる。すなわち、第2測定スポット41は、基板1の一方の主面上に第4ニッケルめっき層を形成するための部位である。第4ニッケルめっき層の形状及び面積は、典型的には、第2電極パッド31の形状及び面積と同一である。
【0098】
第3ニッケルめっき層の面積と、第4ニッケルめっき層の面積とは、近いことが好ましい。すなわち、第2測定スポット41の面積と、第2電極パッド31の面積とは近いことが好ましい。
【0099】
上述したように、ニッケルめっき層における、リン、鉛、硫黄、炭素及びビスマスなどの共析物の含有量は、ニッケルめっき層の面積の影響を受けることがある。例えば、これら第3及び第4ニッケルめっき層の面積が十分に近くなるほど、第3ニッケルめっき層の共析物の含有量と、第4ニッケルめっき層の共析物の含有量との差が小さくなる傾向にある。したがって、第3及び第4ニッケルめっき層の面積が十分に近いと、第4ニッケルめっき層における共析物の含有量を分析することにより、第3ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0100】
第4ニッケルめっき層は、分析の信頼性を高めるという観点からは、分析に十分な面積を有していることが好ましい。
【0101】
第4ニッケルめっき層の位置と、第3ニッケルめっき層の位置とは、近いことが好ましい。これらの位置は、第2測定スポット41の位置と第2電極パッド31の位置とを近づけることにより近づけることができる。
【0102】
上述したように、ニッケルめっき層における、リン、鉛、硫黄、炭素及びビスマスなどの共析物の含有量は、基板1上におけるニッケルめっき層の位置の影響を受けることがある。例えば、これら第3及び第4ニッケルめっき層の位置が十分に近くなるほど、第3ニッケルめっき層の共析物の含有量と、第4ニッケルめっき層の共析物の含有量との差が小さくなる傾向にある。したがって、第3及び第4ニッケルめっき層の位置が十分に近いと、第4ニッケルめっき層における共析物の含有量を分析することにより、第3ニッケルめっき層の品質をより正確に推定することができる。
【0103】
第2乃至第4ニッケルめっき層は、第1ニッケルめっき層と同時に形成される。それゆえ、第2乃至第4ニッケルめっき層の組成は、典型的には、第1ニッケルめっき層の組成と同様である。
【0104】
次に、第1乃至第4ニッケルめっき層上に、パラジウム層を形成する。パラジウム層は、第1乃至第4ニッケルめっき層が形成された基板1を、パラジウムめっき液を用いてめっき処理を行うことによって得ることができる。めっき処理は、無電解めっき法を用いてもよい。
【0105】
次に、第1乃至第4ニッケルめっき層上に設けられたパラジウム層上に、金めっき層を形成する。金めっき層は、パラジウム層が形成された基板1を、金めっき液を用いてめっき処理を行うことによって得ることができる。めっき処理は、無電解めっき法を用いてもよい。
【0106】
このようにして、電極パッド11及び31並びに測定スポット21及び41上の各々に、ニッケルとパラジウムと金との複層めっき層を形成する。この複層めっき層は、表面処理層として機能する。表面処理層は、高温下において、電極パッドの表面の酸化を抑制する。
【0107】
次に、表面処理層の表面の一部を除去して、第2及び第4ニッケルめっき層を露出させる。第2及び第4ニッケルめっき層において、共析した添加剤の成分を分析するためには、その表面にニッケルが露出していることが好ましい。これは、ニッケルめっき層の表面に何らかの層が形成されていると、蛍光X線分析を行ったときに、十分な検出強度が得られないためである。すなわち、蛍光X線分析では、測定すべき微量成分に対応する蛍光X線の強度は元々小さい。それゆえ、蛍光X線を遮蔽する層が対象物を被覆していると、十分な検出強度が得られない。特に、金めっき層がニッケルめっき層上に形成されている場合、金めっき層の遮蔽効果は大きい。したがって、金めっき層は、第2及び第4ニッケルめっき層上から、除去・剥離することが好ましい。
【0108】
この露出させる方法としては、例えば、化学的溶解、物理的研磨、又はドライエッチング処理などを挙げることができる。
【0109】
化学的溶解では、例えば、専用の金剥離液に浸漬して金めっきを溶解させる。このような金剥離液としては、例えば、エンストリップ Au78(メルテックス社)を使用することができる。このような金剥離液を用いると、ニッケルめっき層上から金めっき層が選択的に溶解され、ニッケルめっき層は溶解されない。
【0110】
物理的研磨では、研磨剤や研磨紙を用いて、表面処理層を削ることでニッケルめっき層を露出させる。この場合は、研磨量を規定してニッケル層を削り過ぎないことが必要である。
【0111】
ドライエッチング処理は、アルゴンイオンを用いたスパッタエッチング、又はイオンミリングなど、真空系の装置で表面処理層を処理することにより、ニッケルめっき層を露出させる。
【0112】
次に、この露出させた第2及び第4ニッケルめっき層における、リンの含有量と、鉛、硫黄、炭素及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の含有量とを分析する。
【0113】
ニッケルめっき層における、リン、鉛、硫黄、炭素又はビスマスなどの共析物の分析は、十分微小な領域において、微量の共析物を検出できる手法で行うことが好ましい。このような手法としては、二次イオン質量分析法(SIMS)、X線光分光分析法(XPS)又は蛍光X線分析などを挙げることができる。
【0114】
測定の簡便さ、感度及び装置の価格などのバランスを考慮すると、蛍光X線分析で行うことが好ましい。蛍光X線分析では、X線を試料に照射して成分に応じて得られる蛍光X線を検出することによって、成分の濃度を知ることができる。蛍光X線分析法の種類は、蛍光X線の検出法により、エネルギー分散法、波長分散法に分類される。エネルギー分散法は、半導体検出器を用いて分解検出し、波長分散法は、ゴニオメータと計数管とを用いて分解検出する。本態様においては、いずれの方式も取ることができる。
【0115】
本態様において、蛍光X線分析法で測定されるものは、無電解めっき処理により、測定スポット上に形成されたニッケルめっき層におけるリン(P)の含有量、並びに、鉛(Pb)、硫黄(S)、炭素(C)及びビスマス(Bi)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の含有量である。
【0116】
ここで、ニッケルめっき層におけるリンの含有量は、例えば、3〜14質量%の範囲内にあり、比較的高濃度である。これに対して、ニッケルめっき層における鉛、硫黄、炭素又はビスマスの含有量は、例えば、0〜3000ppmの範囲内にあり、比較的低濃度である。すなわち、ニッケルめっき層において、リンと、その他の元素とでは大きな濃度差がある。
【0117】
したがって、これらの含有量の測定は同時に行ってもよいが、リンを分析するときの測定条件と、その他の元素を分析するときの測定条件とは、別にして行うことが好ましい。
【0118】
なお、ニッケルめっき層におけるリンの含有量の分析は、他の元素の含有量の分析に比べて容易である。また、ニッケルめっき層におけるリンの含有量は、基板のはんだ接合性と大きく関係する要素である。したがって、本態様に係る方法において、第2又は第4ニッケルめっき層におけるリンの含有量の分析は必須である。
【0119】
さらに、本態様に係る方法では、第2又は第4ニッケルめっき層における鉛、硫黄、炭素、ビスマスから選ばれる少なくとも1つの含有量を測定する。リンの濃度に加えて、これらの元素の濃度を勘案することで、はんだ接合性の把握の精度が向上できる。
【0120】
この分析では、第1乃至第4ニッケルめっき層上に、パラジウム層を形成した基板を用いたが、パラジウム層が形成されていないものを用いてもよい。すなわち、第1乃至第4ニッケル層上に、直接金めっき層を形成した基板を用いてもよい。
【0121】
また、パラジウム層に加えて、金めっき層も形成されていない基板を用いてもよい。このような基板を用いた場合、第2及び第4ニッケルめっき層の少なくとも一部を除去する工程は、省略してもよい。
【0122】
なお、分析終了後、第2領域20及び第4領域40は、基板1から切り取られる。第2領域20及び第4領域40は、基板1が製品として使用される場合、不要となる部分であるためである。基板1において、第2領域20と第4領域40とが正対する位置にあると、基板1からこれらの領域を切り取り易くなる。
【0123】
ただし、基板1に第2領域20及び第4領域40が残存することを許容されるのであれば、これらの領域を切り取らなくてもよい。
【0124】
次に、第2及び第4ニッケルめっき層の分析結果に基づいて、それぞれ、第1及び第3ニッケルめっき層の品質を把握する。
【0125】
この分析に基づいて把握される第1ニッケルめっき層の品質としては、第1ニッケルめっき層上ではんだを溶融させることによって得られるはんだ層の第1ニッケルめっき層に対する接合強度、すなわち、はんだ接合性を挙げることができる。
【0126】
第2及び第4ニッケルめっき層の分析結果に基づいて、はんだ接合性を評価するためには、先ず、以下の方法により、はんだ接合性を評価する。
【0127】
先ず、
図5(C)に示すはんだ層を備えた基板1を準備する。
図5は、本発明の一態様に係る管理方法に用いる基板の製造方法の一例を概略的に示す断面図である。
【0128】
図5(A)は、上述した電極パッド11及び31上に、それぞれ、表面処理層が形成された基板1の一方の主面の断面図である。第1電極パッド11上には、表面処理層として、第1ニッケルめっき層51と、パラジウム及び金の複層めっき層52が設けられている。
【0129】
次に、
図5(B)に示すように、この複層めっき層52上に、はんだボール53’を配置する。なお、はんだボール53’の代わりに、はんだペーストを使用してもよい。
【0130】
次いで、
図5(C)に示すように、加熱することによりはんだボール53’を溶融させて、第1ニッケルめっき層51を介して第1電極パッド11にはんだ層53を接合する。
【0131】
ここで、この接合部の構造について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、
図5(C)に示す基板の一例を拡大して概略的に示す断面図である。
図7は、
図5(C)に示す基板の一例について得られた走査電子顕微鏡写真である。
図6及び
図7は、それぞれ、第1ニッケルめっき層51とはんだ層53との界面を概略的に示す断面図及び顕微鏡写真である。
【0132】
図6及び
図7に示すように、第1ニッケルめっき層51とはんだ層53との間には、金属間化合物(IMC)層54が存在する。この金属間化合物層54は、第1ニッケルめっき層51とはんだ層53中のスズとが、反応することにより形成される。
【0133】
この金属間化合物層54には、多数のボイドVが存在する。これらボイドVは、金属間化合物層54の形成時に、スズ−ニッケル元素の移動度の相違によって生成した空隙である。
【0134】
また、この金属間化合物層54と第1ニッケルめっき層51との間には、リンリッチ層511が存在する。
【0135】
次に、このようなはんだ層を備えた基板1に対して、シェア試験を行うことにより、はんだ接合性を評価する。
図8は、
図5(C)に示す基板のシェア試験後における状態の一例を概略的に示す断面図である。
図8に示す基板では、第1ニッケルめっき層51とはんだ層53との間、すなわち、金属間化合物層54において接合が破壊されている。シェア試験を行うと、樹脂層と電極パッドとニッケルめっき層と金属間化合物層とはんだ層との積層構造の中で、最も接合が弱い界面、又は最も構造がもろい層内において破壊が生じる。通常、樹脂層と電極パッドとの間、又ははんだ層内で破壊が生じることが多い。金属間化合物層54で破壊が生じるということは、この金属間化合物層54が接合の信頼性に欠ける状態にあることを示しており、一例によると、不適合と判断される。
【0136】
はんだ接合性は、金属間化合物層54及び金属間化合物層54におけるボイドVの生成に支配される。金属間化合物層54にこのボイドVが多数存在すると、シェア試験時に、第1ニッケルめっき層51とはんだ層53との界面から破壊が起こる可能性が高まる。すなわち、金属間化合物層54にこのボイドVが多数存在すると、はんだ接合性が低下する。
【0137】
この金属間化合物層54の生成、すなわち、第1ニッケルめっき層51とはんだ層53との反応性に対しては、第1ニッケルめっき層51に含まれる共析物が影響を与える。
また、上述したように、この方法によると、第2ニッケルめっき層の共析物の含有率は、第1ニッケルめっき層51の共析物の含有率とほぼ等しいと推定することができる。したがって、第2ニッケルめっき層の共析物の含有率を分析することにより、第1ニッケルめっき層51の共析物の含有率を推定することができる。そして、推定された第1ニッケルめっき層51の共析物の含有率に基づいて、第1ニッケルめっき層51のはんだ接合性を把握することができる。
【0138】
第2ニッケルめっき層の共析物の含有量とはんだ接合性との関係をあらかじめ調べておけば、はんだ接合性が未知の分析対象物について、第2ニッケルめっき層の共析物の含有量を分析することにより、はんだ接合性を推定することができる。
【0139】
この方法によると、第2ニッケルめっき層の共析物の含有率から、第1ニッケルめっき層の共析物の含有率を、ほぼ正確に推定することができる。その理由は、以下のとおりである。
【0140】
先ず、本態様においては、測定スポットは、生産のためにめっきされる実基板に設けられる。そのため、測定スポットは、実基板と全く同様に無電解ニッケルめっき等の処理がなされる。
【0141】
上述したように、無電解めっき処理では、無電解ニッケルめっき液102の成分濃度や添加剤だけでなく、無電解ニッケルめっき液102の液温、液の流動、及び無電解ニッケルめっき液102に含まれる成分のめっき槽101内でのばらつきなども、得られるニッケルめっき層の特性に影響する。
【0142】
例えば、
図4に示す無電解めっき装置100において、配管103bから基板1に向かう破線の矢印は、配管103bからめっき槽101に排出された無電解ニッケルめっき液102が、基板1に直接当たることを意味している。このように、めっき槽101に戻された無電解ニッケルめっき液102が基板1に直接当たると、その部分のニッケルの析出が、第1添加剤の影響で抑えられることがある。すなわち、そのような部分に「無めっき」が現れることや、めっき厚が低下することがある。このような無めっき又はめっき厚の低下は、基板の外観からはわからないことがある。
【0143】
しかしながら、本態様の方法によると、第2ニッケルめっき層の共析物の含有率を分析することにより、第1ニッケルめっき層の品質を把握することができる。したがって、第2ニッケルめっき層の外観にかかわらず、第2ニッケルめっき層の共析物の含有率と、正常なニッケルめっき層の共析物の含有率とを比較することにより、第1ニッケルめっき層の異常を発見できる。
【0144】
しかも、この無めっき現象は、無電解ニッケルめっき液102が基板1に直接当たる部位に局部的に現れることが多い。したがって、めっき槽101内の別の位置に置かれたサンプルで異常を見つけることは、困難である。
【0145】
しかしながら、本態様では、第1ニッケルめっき層と同じ基板1に設けられた第2ニッケルめっき層を分析することにより、第1ニッケルめっき層の品質を把握する。したがって、この方法を用いると、第1ニッケルめっき層の品質をほぼ正確に把握することができる。
【0146】
次に、無電解ニッケルめっきの管理について説明する。
【0147】
上述したように、無電解めっき法により形成されたニッケルめっき層の品質は、添加剤に含まれる成分の濃度や、無電解ニッケルめっき液102のpH及び液温、さらには、基板1の揺動、無電解ニッケルめっき液102の流動などにより変化し得る。さらに、無電解めっき処理は連続して行われるため、無電解めっき処理の進行と共に、無電解ニッケルめっき液102に含まれる成分は消耗する。それゆえ、無電解めっき処理では、消耗したその成分を補給することが行われている。
【0148】
例えば、ニッケルを析出させてニッケルめっき層を形成した場合、消耗されたニッケル分として硫酸ニッケルを、無電解ニッケルめっき液102に補給する。また、無電解ニッケルめっき液102には、pH調整のために水酸化ナトリウムが適宜補給される。
【0149】
しかしながら、このような補給を行うと、無電解ニッケルめっき液102中に、硫酸イオンと水酸化ナトリウムとが反応して生成された硫酸ナトリウムが残留、蓄積する。また、還元剤である次亜りん酸塩は、めっきの反応後は亜リン酸塩に変化して蓄積する。このような蓄積塩は、無電解ニッケルめっき液102の比重や粘度を増大させ、液の流動特性などにも影響する。
【0150】
このように、無電解ニッケルめっき液102の状態は、経時的に変化する。しかしながら、ニッケルめっき層として得られる製品の品質は、同等にする必要がある。したがって、一般的には、無電解ニッケルめっき液102の管理値を、経時的に若干変更させるなどして安定化させている。すなわち、無電解ニッケルめっき液102の管理は、予め決めた特定の値を維持するのではなく、一定の幅を持たせた管理値の範囲内で、品質を勘案しながら設定を行う方が好ましい。
【0151】
無電解ニッケルめっき液102に含まれる添加剤の管理も同様であり、特定の値を維持するよりも、はんだ接合性などの品質値を勘案して、一定の幅の範囲内で設定することが好ましい。すなわち、第2ニッケルめっき層のリン、鉛、硫黄、炭素、又はビスマス濃度を測定し、その値をもって無電解ニッケルめっき液102中に補給する添加剤量の管理を行う。特に、鉛又はビスマスは第1添加剤として、硫黄は第2添加剤として加えられたものであり、これらの無電解ニッケルめっき液102中の濃度の増減は、第2ニッケルめっき層の分析により得られた測定値から推定することが可能である。
【0152】
すなわち、第2ニッケルめっき層において、リン、鉛、硫黄、炭素及びビスマスなどの共析物の含有率が大きければ、無電解ニッケルめっき液102に対するこれらの補給量を減らし、あるいは、これらの含有率が小さければ、無電解ニッケルめっき液102に対するこれらの補給量を増やす。補給量の大小を決めるための基準値は、予めはんだ接合性などの評価で決定しておくことができる。
【0153】
ところが、このように基準値に合わせるべき無電解ニッケルめっき液102の管理を行ったとしても、前述のように、めっき槽101内の流動などのばらつき、さらには、基板1内の部位の影響を受けて、ニッケルめっき層の品質にばらつきが生じることがある。ばらつきの幅が大きく、特異値において品質不良が生じた場合でも、本態様の管理方法によれば、その特異点を発見することができる。したがって、本態様の管理方法によると、品質不良の部位を含む不良品が、見過ごされるのを防止することができる。
【実施例】
【0154】
以下に、本発明の例を示す。
【0155】
先ず、一方の主面にBGAパッドと測定スポットとを有する基板を準備した。
次いで、この基板のBGAパッド及び測定スポット上に、無電解めっき法により、それぞれ、第1及び第2ニッケルめっき層を形成した。次いで、これら第1及び第2ニッケルめっき層上に、金めっき層を形成した。あるいは、これら第1及び第2ニッケルめっき層上に、パラジウムめっきと金との複層めっき層を形成した。測定スポットの径及び位置と、めっき条件とを表1にまとめる。
【0156】
【表1】
【0157】
次いで、測定スポットの表面の少なくとも一部の領域を除去して、第2ニッケルめっき層を露出させた。次いで、この測定スポット上に設けられた第2ニッケルめっき層における無電解ニッケルめっき由来の共析物の量を測定した。
【0158】
次いで、金めっき層上にはんだ層を形成した。
このときに用いた無電解ニッケルめっき液の組成、無電解パラジウムめっき液の組成、無電解金めっき液の組成、各めっき層の膜厚、ニッケルめっき層の露出方法、BGAパッドの径、はんだの組成、リフロー温度及び測定スポットの分析方法を表2にまとめる。
【0159】
【表2】
【0160】
次いで、この基板を用いてシェア試験を行った。
以上の実施例、比較例の結果を表3にまとめた。
【0161】
【表3】
【0162】
表3に示すように、条件2でニッケルめっき層を形成した実施例2、比較例4及び比較例5と、条件3でニッケルめっき層を形成した実施例3、比較例6及び比較例と、条件5でニッケルめっき層を形成した実施例5、比較例10及び比較例11において、その他の場合に比べてはんだ接合性が劣る結果が得られた。
【0163】
これらの実施例の測定スポット上に設けられた第2ニッケルめっき層における共析物の分析結果を見ると、リンの含有が7.0〜8.0質量%の範囲外であり、さらに、鉛が含有の場合は、硫黄が200〜600ppmの範囲外であった。ただし、この範囲は、ビスマスが含有の場合にずれるようであった。
【0164】
すなわち、ビスマスを含有しない無電解ニッケルめっき液を用いた無電解めっき処理により得られたニッケルめっき層は、リンの含有率が7.0〜8.0質量%の範囲内にあり、かつ、鉛を含んでおり、硫黄の含有率が200〜600ppmの範囲内にある場合、はんだ接合性が良好であった。
【0165】
このように、共析物の含有量の数字は絶対的なものでなく、はんだ接合性と関連付けて、使用している無電解ニッケルめっき液、無電解めっき装置、無電解めっき装置の運転方法などの系によって、それぞれ管理範囲として設定されるべきものである。
【0166】
一方、表3には、比較例として測定スポットの位置と大きさを変えた結果も示される。表3から明らかなように、測定スポットの位置又は大きさが、第1ニッケルめっき層の位置又は大きさと大きく異なる場合、測定スポット上に設けられた第2ニッケルめっき層における共析物の含有率のばらつきが大きく、はんだ接合性との相関は明確には見られなかった。
【0167】
なお、比較例2において、測定スポットの径を0.02mmとした場合、測定スポットの周辺の物質(ソルダーレジストなど)の成分も検出され、正しい測定結果は得られなかった。以上のことから、本態様の方法を取ることの意義が明確となった。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
複数の電極パッドがアレイ状に設けられた第1領域と導電体からなる測定スポットが設けられた第2領域とを一方の主面が含んだ基板を準備することと、
前記電極パッド及び前記測定スポット上へ、無電解めっき法によりニッケルを同時に堆積させて、第1及び第2ニッケルめっき層をそれぞれ形成することと、
前記第2ニッケルめっき層における、リンの含有量と、鉛、硫黄、炭素及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の含有量とを分析して、前記第1ニッケルめっき層の品質を把握することと
を含んだ無電解ニッケルめっき管理方法。
[2]
前記基板上において、前記測定スポットのうち、前記電極パッドに最も近い点を通る水平線と、前記電極パッドのうち、前記測定スポットに最も近い点を通る水平線との距離は、20mm以内である項1に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
[3]
前記測定スポットの面積は、前記複数の電極パッドのうち、最も小さい電極パッドの面積の5000倍以下の大きさであり、かつ、前記測定スポットの形状は、直径が0.04mm以上の円形、短径が0.04mm以上の楕円形、または直径0.03mm以上の円が内包され0.002mm2以上の面積を有する多角形である項1又は2に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
[4]
前記分析は、蛍光X線分析装置を用いて行われる項1乃至3の何れか1項に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
[5]
前記無電解めっき法は、無電解ニッケルめっき液に前記基板を浸漬することにより行われ、
前記無電解ニッケルめっき液には、ニッケル(II)塩と、次亜りん酸塩と、ニッケル(II)塩の錯体となる有機化合物と、鉛(II)塩又はビスマス(III)塩のいずれか一つと、硫黄化合物とを含む項1乃至4の何れか1項に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
[6]
複数の電極パッドは、ボールグリッドアレイパッド、又はフリップチップパッドである項1乃至5の何れか1項に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
[7]
前記分析により把握した前記第1ニッケルめっき層の品質から、前記第1ニッケルめっき層上ではんだを溶融させることによって得られるはんだ層の前記第1ニッケルめっき層に対する接合強度を推定することを更に含む項1乃至6の何れか1項に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
[8]
前記第1ニッケルめっき層上へ、金めっき層、又は、パラジウム層とその上に設けられた金層とを含んだ複層めっき層を形成することと、
前記分析により把握した前記第1ニッケルめっき層の品質から、前記金めっき層又は前記複層めっき層上ではんだを溶融させることによって得られるはんだ層の前記第1ニッケルめっき層に対する接合強度を推定することを更に含んだ項1乃至6の何れか1項に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
[9]
前記分析に先立って、前記第2ニッケルめっき層の表面の少なくとも一部の領域を除去することを更に含み、
前記分析は、前記第2ニッケルめっき層のうち、前記除去された表面に対応した部分に対して行う項1乃至8の何れか1項に記載の無電解ニッケルめっき管理方法。
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複数の電極パッドがアレイ状に設けられた第1領域と導電体からなる測定スポットが設けられた第2領域とを一方の主面が含んだ基板を準備することと、
前記電極パッド及び前記測定スポット上へ、無電解めっき法によりニッケルを同時に堆積させて、第1及び第2ニッケルめっき層をそれぞれ形成することと、
前記第2ニッケルめっき層における、リンの含有量と、鉛、硫黄、炭素及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の含有量とを分析して、前記第1ニッケルめっき層の品質を把握することと
を含む配線基板の製造方法。