(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蛍光体層における全固形分に占める前記赤色蛍光体の割合は、20重量%以上、60重量%以下である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蛍光体シート。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る蛍光体シート、それを用いた発光体、光源ユニット、ディスプレイ、および発光体の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0034】
<蛍光体シート>
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、赤色蛍光体、β型サイアロン蛍光体および樹脂を含む蛍光体層を含有するものである。この蛍光体シートにおいて、赤色蛍光体は、一般式(1)で表されるMn賦活複フッ化物である。
A
2MF
6:Mn ・・・(1)
一般式(1)において、Aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)からなる群より選ばれ、かつNaおよびKの少なくとも1つを含む1種以上のアルカリ金属である。Mは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)およびスズ(Sn)からなる群より選ばれる1種以上の4価元素である。
【0035】
図1Aは、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの一例を示す側面図である。
図1Aに示すように、本発明の実施の形態に係る蛍光体シート4は、支持体3の上に、蛍光体1と樹脂14とを含有する蛍光体層2を備える。蛍光体層2は、樹脂14中に複数の蛍光体1を含有する層である。蛍光体層2は、蛍光体1として、一般式(1)で表される赤色蛍光体と、β型サイアロン蛍光体とを含有する。例えば、
図1Aに示すように、蛍光体層2は、支持体3の上に形成されて、蛍光体シート4を構成する。
【0036】
蛍光体層2は、蛍光体1としての赤色蛍光体およびβ型サイアロン蛍光体と、樹脂14とを含有する単一層からなるものであってもよい。または、蛍光体層2は、蛍光体1と樹脂14とを含有する複数層からなるものであってもよい。蛍光体層2が複数層からなる場合、蛍光体1としての赤色蛍光体と樹脂14とを含有する第1の蛍光体層と、蛍光体1としてのβ型サイアロン蛍光体と樹脂14とを含有する第2の蛍光体層とが、それぞれ1つ以上積層されて、蛍光体層2の複数層を構成してもよい。好ましくは、蛍光体層2を構成する単一層または複数層の各層において、蛍光体1としての赤色蛍光体およびβ型サイアロン蛍光体と樹脂14とは、同一層に含まれる。このことは、以下に示す理由による。
【0037】
蛍光体層2が、赤色蛍光体を含む層(第1の蛍光体層)とβ型サイアロン蛍光体を含む層(第2の蛍光体層)との積層体であっても、色再現性の向上と高光束との両立は可能であるが、この蛍光体層2では、各層の膜厚をそれぞれ別々に制御する必要がある。このため、結果として得られる蛍光体シート4の色度ばらつきが大きくなってしまう。これに対し、蛍光体層2において蛍光体1としての赤色蛍光体およびβ型サイアロン蛍光体と樹脂14とが同一層に含まれることにより、蛍光体シート4の色度ばらつきが改善する。
【0038】
図1Bは、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの別例を示す側面図である。
図1Bに示すように、蛍光体シート4は、支持体3の上に形成された蛍光体層2の上に、さらに、透明樹脂層5を備えてもよい。
図1Bに示す蛍光体シート4において、透明樹脂層5は、例えば、単一層または複数層からなる蛍光体層2の上面(支持体3とは反対側の面)に形成されている。このように透明樹脂層5があることにより、蛍光体シート4の耐久性が向上する。
【0039】
本実施の形態において、蛍光体シート4は、単一層または複数層の蛍光体層2を備えたもの、または、この蛍光体層2と透明樹脂層5とを備えたものであるが、そのシート形状の維持および取り扱い易さ等の観点から、通常、支持体3によって支持された状態にある。すなわち、本実施の形態では、蛍光体シート4と支持体3とを含めて「蛍光体シート」と称する場合がある。
【0040】
<蛍光体層>
蛍光体層2は、例えば
図1A、1Bに示すように、主として蛍光体1と樹脂14とを含む層である。蛍光体1としては、少なくとも、一般式(1)で表される赤色蛍光体と、β型サイアロン蛍光体とが挙げられる。
【0041】
(赤色蛍光体)
赤色蛍光体とは、波長590nm〜750nmに発光ピークを有する蛍光体のことである。本発明の実施の形態に係る蛍光体シート4は、その色再現性を向上させるために、蛍光体層2中に、上述した一般式(1)で表されるMn賦活複フッ化物(A
2MF
6:Mn)である赤色蛍光体を含む必要がある。このMn賦活複フッ化物である赤色蛍光体は、「Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体」と称される。以下、Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体は、「赤色蛍光体」と適宜略記される。
【0042】
Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体とは、マンガン(Mn)を賦活剤とし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物錯体塩を母体結晶とする蛍光体である。このMn賦活複フッ化物錯体蛍光体において、母体結晶を形成するフッ化物錯体の配位中心は、4価金属(Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn)であることが好ましく、その周りに配位するフッ素原子の数は、6であることが好ましい。好ましいMn賦活複フッ化物錯体蛍光体は、一般式(1)において、AがK(カリウム)であり、MがSi(ケイ素)であるもの、つまりK
2SiF
6:Mnである。これは、KSF蛍光体と呼ばれる。
【0043】
蛍光体層2における全固形分に占める赤色蛍光体(すなわちMn賦活複フッ化物錯体蛍光体)の割合は、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。また、この割合は、80重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。この割合が好ましい下限値以上であることによって、蛍光体シート4の色再現範囲がより改善される。一方、この割合が80重量%以下であることによって、蛍光体シート4の色度ばらつきが改善され、この割合が60重量%以下であることによって、蛍光体シート4の色度ばらつきがより改善される。
【0044】
蛍光体1(
図1A参照)としての赤色蛍光体のD50は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、この赤色蛍光体のD50は、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。この赤色蛍光体のD50が5μm以上であることによって、高光束な蛍光体シート4を得ることができる。この赤色蛍光体のD50が40μm以下であることによって、蛍光体シート4の色度ばらつきが改善される。
【0045】
また、蛍光体1としての赤色蛍光体のD10は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。これにより、蛍光体シート4の耐久性が改善される。この赤色蛍光体のD10の上限としては、特に制限はないが、15μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましい。
【0046】
さらに、蛍光体1としての赤色蛍光体において、下記の式(11)で表される値xは、0.5以上、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。さらには、この値xの上限値として、1.50以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.35以下であることがより一層好ましく、1以下であることがさらに好ましい。
x=(D90−D10)/D50 ・・・(11)
値xは、赤色蛍光体の粒度分布の指標である。値xが小さいということは、耐久性低下の原因となる小粒径の赤色蛍光体(例えばKSF蛍光体)が少なく、かつ、色度ばらつきの原因となる大粒径の赤色蛍光体(例えばKSF蛍光体)が少ないことを意味する。値xが1.5以下であることによって、蛍光体シート4の耐久性および色度ばらつきがさらに改善する。
【0047】
ただし、蛍光体層2における赤色蛍光体の粒度分布が狭すぎると、蛍光体シート4中で光が散乱しにくくなる。この場合、蛍光体シート4を用いて発光体を組み立てた際、イエローリングと呼ばれる不具合が発生する。イエローリングとは、発光体を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合とで色が異なって見える現象このことである。このイエローリングは、蛍光体層2中での光の散乱が少ない場合、顕著にみられる現象である。イエローリング抑制の観点から、値xは0.5以上であることが好ましい。
【0048】
ここでいうD10、D50、D90とは、以下の方法で測定される粒径のことである。例えば、蛍光体層2の断面をSEMで観察し、得られた2次元画像において、蛍光体1の粒子の外縁と2点で交わる直線の当該2つの交点間の距離のうち、最大になる距離を算出し、それを粒子の個別の粒径と定義する。観察された全粒子の個別の粒径から求められる粒度分布において、小粒径側からの通過分積算10%の粒径をD10とし、通過分積算50%の粒径(平均粒径)をD50とし、通過分積算90%の粒径をD90とする。
【0049】
蛍光体シート4を搭載したLED発光体を対象とする場合は、機械研磨法、ミクロトーム法、CP法(Cross-section Polisher)および集束イオンビーム(FIB)加工法のいずれかの方法で、この蛍光体シート4を、蛍光体層2の断面が観測されるよう研磨した後、得られた断面をSEMで観察して得られる2次元画像から上述の粒径を算出することができる。
【0050】
(β型サイアロン蛍光体)
β型サイアロン蛍光体とは、β型窒化ケイ素の固溶体であり、β型窒化ケイ素結晶のSi位置にアルミニウム(Al)が置換固溶し、窒素(N)位置に酸素(O)が置換固溶したものである。β型サイアロン蛍光体に用いられるβ型サイアロンの単位胞(単位格子)に2式量の原子があるので、β型サイアロンの一般式として、Si
6−zAl
zO
zN
8−zが用いられる。この一般式において、zは、0超、4.2未満の値である。本実施の形態におけるβ型サイアロン蛍光体において、β型サイアロンの固溶範囲は非常に広く、また、(Si、Al)/(N、O)のモル比は、3/4を維持する必要がある。β型サイアロンの一般的な製法は、窒化ケイ素の他に、酸化ケイ素と窒化アルミニウムとを、あるいは酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとを加えて加熱する方法である。
【0051】
β型サイアロンは、結晶構造内に希土類等の発光元素(Eu、Sr、Mn、Ce等)を取り込むことで、紫外から青色の光で励起して波長520nm〜560nmの緑色発光を示すβ型サイアロン蛍光体となる。これは、白色LED等の発光体の緑色発光成分として好ましく用いられる。特に、ユーロピウム(Eu
2+)を含有させたβ型サイアロン蛍光体であるEu
2+賦活β型サイアロン蛍光体は、発光スペクトルが非常にシャープであるため、青色、緑色、赤色の狭帯域発光が要求される画像処理表示装置または液晶ディスプレイパネルのバックライト光源に適した素材である。
【0052】
蛍光体1(
図1A参照)としてのβ型サイアロン蛍光体のD50は、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、このβ型サイアロン蛍光体のD50は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。β型サイアロン蛍光体の形状としては、特に制限はなく、球状、柱状等、様々なものを用いることができる。ここでいうD50は、上述した赤色蛍光体の場合と同様の方法で測定される粒径のことである。
【0053】
蛍光体層2における蛍光体1としてのβ型サイアロン蛍光体の含有量は、色再現範囲の拡大という観点から、蛍光体層2全体の3重量%以上であることが好ましく、蛍光体層2全体の5重量%以上であることがより好ましい。また、このβ型サイアロン蛍光体の含有量は、蛍光体層2全体の50重量%以下であることが好ましく、蛍光体層2全体の40重量%以下であることがより好ましい。
【0054】
また、蛍光体層2における全固形分に占める赤色蛍光体の割合とβ型サイアロン蛍光体の割合との合計は、50重量%以上、90重量%以下であることが好ましい。これら両割合の合計の下限としては、65重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。これら両割合の合計の上限としては、85重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましい。これら両割合の合計が50重量%以上であることにより、蛍光体層2の放熱性が向上するため、蛍光体層2に含有の蛍光体1の蓄熱を抑制することができる。この結果、蛍光体シート4の高光束を維持することができる。また、これら両割合の合計が90重量%以下であることにより、蛍光体シート4の色度ばらつきが改善する。
【0055】
本発明における赤色蛍光体およびβ型サイアロン蛍光体を蛍光体1として蛍光体層2中に有する蛍光体シート4において、蛍光体層2中の空隙率は、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがより一層好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。何故ならば、蛍光体層2中の空隙率が小さいほど、蛍光体層2からの光の取り出し効率が向上するため、高光束な発光体を与える蛍光体シート4を得ることができるからである。また、この蛍光体層2中の空隙率は、特に下限に制限はないが、0.1%以上であることが好ましい。
【0056】
ここでいう空隙率とは、蛍光体層2における空隙の割合である。この空隙率は、以下の方法で測定することができる。例えば、機械研磨法、ミクロトーム法、CP法(Cross-section Polisher)および集束イオンビーム(FIB)加工法のいずれかの方法で、蛍光体シート4を、蛍光体層2の断面が観測されるよう研磨する。その後、得られた断面をSEMで観察して得られる2次元画像から、蛍光体層2の空隙に相当する面積を算出し、この算出した空隙の面積を、当該断面における蛍光体層2全体の面積で除する。これにより、蛍光体層2の空隙率が得られる。
【0057】
蛍光体層2に含有する赤色蛍光体のD10およびD50を上述の好ましい範囲とすることで、また、この赤色蛍光体の粒度分布の指標である上記の値x(式(11)参照)が小さくなるようにすることで、蛍光体層2の空隙率は、小さくなる傾向にある。
【0058】
(他の蛍光体)
蛍光体層2は、上記した蛍光体1以外の蛍光体をさらに含有していてもよい。上記した蛍光体1以外の蛍光体としては、例えば、他の赤色蛍光体、他の緑色蛍光体、黄色蛍光体、青色蛍光体等が挙げられる。本実施の形態において、緑色蛍光体とは、波長500nm〜560nmに発光ピークを有する蛍光体のことである。黄色蛍光体とは、波長560nm〜590nmに発光ピークを有する蛍光体のことである。青色蛍光体とは、波長430nm〜500nmに発光ピークを有する蛍光体のことである。
【0059】
他の赤色蛍光体は、一般式(1)で表される赤色蛍光体(Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体)以外のものである。このような他の赤色蛍光体として、例えば、Y
2O
2S:Eu、La
2O
2S:Eu、Y
2O
3:Eu、Gd
2O
2S:Eu等が挙げられる。
【0060】
他の緑色蛍光体は、β型サイアロン蛍光体以外のものである。このような他の緑色蛍光体として、例えば、SrAl
2O
4:Eu、Y
2SiO
5:Ce,Tb、MgAl
11O
19:Ce,Tb、Sr
7Al
12O
25:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1つ以上の元素)Ga
2S
4:Eu等が挙げられる。
【0061】
黄色蛍光体として、例えば、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦括されたイットリウム・ガドリニウム・アルミニウム酸化物蛍光体、および、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・ガリウム・アルミニウム酸化物蛍光体等が挙げられる。
【0062】
青色蛍光体として、例えば、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu、(SrCaBa)
5(PO
4)
3Cl:Eu、(BaCa)
5(PO
4)
3Cl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1つ以上の元素)
2B
5O
9Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1つ以上の元素)(PO
4)
6Cl
2:Eu,Mn等が挙げられる。
【0063】
また、現在主流の青色LEDに対応して発光する蛍光体としては、例えば、Y
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、Lu
3Al
5O
12:Ce、Y
3Al
5O
12:Ce等のYAG系蛍光体、Tb
3Al
5O
12:Ce等のTAG系蛍光体、(Ba,Sr)
2SiO
4:Eu系蛍光体やCa
3Sc
2Si
3O
12:Ce系蛍光体、(Sr,Ba,Mg)
2SiO
4:Eu等のシリケート系蛍光体、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu、CaSiAlN
3:Eu等のナイトライド系蛍光体、Ca
y(Si,Al)
12(O,N)
16:Eu等のオキシナイトライド系蛍光体、さらには(Ba,Sr,Ca)Si
2O
2N
2:Eu系蛍光体、Ca
8MgSi
4O
16Cl
2:Eu系蛍光体、SrAl
2O
4:Eu、Sr
4Al
14O
25:Eu等の蛍光体が挙げられる。
【0064】
(樹脂)
蛍光体層2に含まれる樹脂14の屈折率は、1.45以上、1.7以下である。この樹脂14の屈折率は、1.5以上であることがより好ましく、また、1.65以下であることがより好ましい。この樹脂14の屈折率が1.45以上であることで、平均的な屈折率が1.4前後であるMn賦活複フッ化物錯体蛍光体(蛍光体1としての赤色蛍光体)との屈折率差が大きくなり、蛍光体層2中で光が散乱しやすくなる。そのため、光が蛍光体層2に入ってから出るまでの光路長が長くなる。光路長が長くなることで、LEDチップから放射される青色光が蛍光体層2中の蛍光体1により色変換されやすくなるため、所望の色度を発現するための蛍光体量を少なくすることができる。
【0065】
一方で、この樹脂14の屈折率が1.7を超えると、蛍光体層2中での光の過剰な散乱により、必要以上に光路長が長くなる。そのため、蛍光体層2中の蛍光体1から放射された発光光が蛍光体1に吸収されやすくなり、この結果、発光体から放射される光の強度が低下してしまう。
【0066】
樹脂14の材質は、内部に蛍光体(
図1Aに示す蛍光体1等)を均質に分散させられるものであり、蛍光体層2を形成できるものであれば、特に制限はない。このような樹脂14としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、PET変性ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂およびアクリルニトリル・スチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらのうち、透明性の面から、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂が好ましい。さらに、耐熱性の面から、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0067】
本発明で用いられる樹脂14の一例であるシリコーン樹脂としては、硬化型シリコーン樹脂が好ましい。樹脂14として使用する硬化型シリコーン樹脂は、一液型、二液型(三液型)のいずれの液構成のものであってもよい。この硬化型シリコーン樹脂には、空気中の水分あるいは触媒によって縮合反応を起こすタイプとして、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱ヒドロキシルアミン型等がある。また、この硬化型シリコーン樹脂には、触媒によってヒドロシリル化反応を起こすタイプとして、付加反応型がある。樹脂14としては、これらのいずれのタイプの硬化型シリコーン樹脂が使用されてもよい。特に、付加反応型のシリコーン樹脂は、硬化反応に伴う副成物がなく、硬化収縮が小さい点と、加熱により硬化を早めることが容易な点とから、より好ましい。
【0068】
樹脂14の一例としての付加反応型のシリコーン樹脂は、例えば、ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有する化合物とのヒドロシリル化反応により、形成される。「ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する化合物」としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等が挙げられる。「ケイ素原子に結合した水素原子を有する化合物」としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン−CO−メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン−CO−メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。付加反応型のシリコーン樹脂としては、このような材料のヒドロシリル化反応によって形成されるものが挙げられる。また、樹脂14としては、他にも、例えば特開2010−159411号公報に記載されているような公知のものを利用することができる。
【0069】
このような樹脂14としては、市販されているもの、例えば、一般的なLED用途のシリコーン封止材を使用することも可能である。これの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製のOE−6630A/B、OE−6336A/Bや信越化学工業株式会社製のSCR−1012A/B、SCR−1016A/B等が挙げられる。
【0070】
また、樹脂14としてのシリコーン樹脂は、熱融着性を有するものであってもよい。何故ならば、蛍光体層2の樹脂14が熱融着性を有するシリコーン樹脂である場合、この蛍光体層2を備える蛍光体シート4が熱融着性を有することとなり、この熱融着性を有する蛍光体シート4を加熱してLEDチップに貼り付けることができるからである。ここでいう熱融着性とは、加熱により軟化する性質のことである。蛍光体シート4が熱融着性を有する場合、LEDチップへの蛍光体シート4の貼り付けに接着剤を使用する必要がないため、発光体等の製造工程を簡略化することができる。熱融着性を有する蛍光体シート4の蛍光体層2においては、25℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以上であり、かつ100℃における貯蔵弾性率が0.1MPa未満である。
【0071】
熱融着性を有するシリコーン樹脂の一例としては、以下に示す(A)成分〜(D)成分の組成を含む架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応してなる架橋物であることが特に好ましい。この架橋物は、60℃〜250℃で貯蔵弾性率が減少し、加熱によって高い接着力が得られるため、接着剤不要の蛍光体シート4用のマトリックス樹脂として好ましく用いることができる。
【0072】
(A)成分は、下記の平均単位式(21)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(R
12SiO
2/2)
a(R
1SiO
3/2)
b(R
2O
1/2)
c ・・・(21)
平均単位式(21)において、R
1は、フェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基である。ただし、R
1の65モル%〜75モル%はフェニル基であり、R
1の10モル%〜20モル%はアルケニル基である。R
2は、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。a、b、およびcは、0.5≦a≦0.6、0.4≦b≦0.5、0≦c≦0.1、かつa+b=1を満たす数である。
【0073】
(B)成分は、下記の一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンは、(A)成分の100重量部に対して5〜15重量部の範囲内となる含有量のものである。
R
33SiO(R
32SiO)
mSiR
33 ・・・(2)
一般式(2)において、R
3は、フェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基である。ただし、R
3の40モル%〜70モル%はフェニル基であり、R
3の少なくとも1個はアルケニル基である。mは、5〜50の範囲内の整数である。
【0074】
(C)成分は、下記の一般式(3)で表されるオルガノトリシロキサンである。このオルガノトリシロキサンは、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のアルケニル基との合計に対する(C)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜2の範囲内となる量のものである。
(HR
42SiO)
2SiR
42 ・・・(3)
一般式(3)において、R
4は、フェニル基、または炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基である。ただし、R
4の30モル%〜70モル%は、フェニル基である。
【0075】
(D)成分は、ヒドロシリル化反応用触媒である。このヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するに十分な量のものである。
【0076】
(A)成分の平均単位式(21)においてa、b、およびcの値が上記条件を満たす場合、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られ、かつこの架橋物の高温での軟化が得られる。(B)成分の一般式(2)において、フェニル基の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分である。一方、フェニル基の含有量が上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の透明性が失われ、その機械的強度も低下する。また、一般式(2)において、R
3の少なくとも1個はアルケニル基である。これは、(B)成分がアルケニル基を有さないと、(B)成分が架橋反応に取り込まれず、得られる架橋物から(B)成分がブリードアウトするおそれがあるからである。また、一般式(2)において、mは5〜50の範囲内の整数である。このmの数値範囲は、得られる架橋物の機械的強度を維持しつつ取扱作業性を保持し得る範囲である。
【0077】
(B)成分の含有量は、(A)成分の100重量部に対して5〜15重量部の範囲内となる量である。この含有量の範囲は、得られる架橋物の高温での十分な軟化を得るための範囲である。
【0078】
(C)成分の一般式(3)において、R
4は、フェニル基、または炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基である。R
4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基が例示される。R
4のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘプチル基が例示される。なお、R
4の内、フェニル基の含有量は30モル%〜70モル%の範囲内である。この含有量の範囲は、得られる架橋物の高温での十分な軟化が得られ、かつこの架橋物の透明性と機械的強度とを保つことができる範囲である。
【0079】
(C)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のアルケニル基との合計に対して、(C)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜2の範囲内となる量である。この含有量の範囲は、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られる範囲である。
【0080】
(D)成分は、(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。(D)成分としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示される。これらのうち、シリコーン組成物の硬化を著しく促進できることから、白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体が例示される。特に、この白金系触媒は、白金−アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−トテラメチルジシロキサンが好ましい。
【0081】
また、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に対して、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましい。特に、この錯体に対してアルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0082】
(D)成分の含有量は、(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するに十分な量であれば特に限定されない。好ましくは、(D)成分の含有量は、シリコーン組成物に対して、(D)成分中の金属原子が質量単位で0.01ppm〜500ppmの範囲内となる量である。さらには、(D)成分の含有量は、この金属原子が0.01ppm〜100ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特には、この金属原子が0.01ppm〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。この含有量の範囲は、得られるシリコーン組成物が十分に架橋し、かつ着色等の問題が生じないようにする範囲である。
【0083】
一方、蛍光体層2中の全固形分に占める樹脂14の割合は、10重量%以上、60重量%以下であることが好ましい。何故ならば、この樹脂14の割合を上記の範囲にすることによって、蛍光体シート4の色再現性の向上と高耐久性とを両立することができるからである。
【0084】
樹脂14の屈折率は、屈折率・膜厚測定装置“プリズムカプラMODEL2010/M”(メトリコン社製)を使用して、屈折率測定サンプルの屈折率を測定することにより測定することができる。屈折率測定サンプルは、樹脂14を、遊星式攪拌脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ社製)を用いて1000rpmで10分間攪拌、脱泡して、樹脂14の分散液を作製し、この分散液を、PETフィルム上に5cc滴下した後、オーブンにて150℃で1時間加熱することにより、得ることができる。
【0085】
(微粒子)
本発明の実施の形態に係る蛍光体シート4は、蛍光体層2中の蛍光体1の樹脂14への分散安定性を向上させることを目的として、蛍光体層2中に微粒子を含有してもよい。この微粒子の例としては、チタニア、シリカ、アルミナ、シリコーン、ジルコニア、セリア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム等で構成される微粒子が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種類以上併用されてもよい。蛍光体層2中に含有する微粒子としては、入手しやすいという観点から、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリコーン微粒子が好ましく、硬度が低いという観点から、シリコーン微粒子が特に好ましい。この微粒子の硬度が低いことにより、蛍光体1の分散工程にて赤色蛍光体の破砕を抑制する効果があり、この結果、より発光強度の高い蛍光体シート4を得ることが可能である。
【0086】
シリコーン微粒子の例としては、特に、オルガノトリアルコキシシランやオルガノジアルコキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、オルガノジアセトキシシラン、オルガノトリオキシムシラン、オルガノジオキシムシラン等のオルガノシランを加水分解し、次いで縮合させる方法により得られるシリコーン微粒子が挙げられる。
【0087】
オルガノトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロキシシラン、メチルトリ−i−プロキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−i−ブトキシシラン、メチルトリ−s−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリブトキシシラン、i−ブチルトリブトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリブトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0088】
オルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0089】
オルガノトリアセトキシシランとしては、例えば、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。オルガノジアセトキシシランとしては、例えば、ジメチルジアセトキシシラン、メチルエチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルエチルジアセトキシシラン等が挙げられる。オルガノトリオキシムシランとしては、例えば、メチルトリスメチルエチルケトオキシムシラン、ビニルトリスメチルエチルケトオキシムシラン等が挙げられる。オルガノジオキシムシランとしては、例えば、メチルエチルビスメチルエチルケトオキシムシラン等が挙げられる。
【0090】
このような微粒子(蛍光体層2中に含有する微粒子)は、具体的には、特開昭63−77940号公報で報告されている方法、特開平6−248081号公報で報告されている方法、特開2003−342370号公報で報告されている方法、特開平4−88022号公報で報告されている方法等により、得ることができる。また、オルガノトリアルコキシシランやオルガノジアルコキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、オルガノジアセトキシシラン、オルガノトリオキシムシラン、オルガノジオキシムシラン等のオルガノシランおよびその部分加水分解物の少なくとも1つをアルカリ水溶液に添加し、加水分解・縮合させて微粒子を得る方法や、水あるいは酸性溶液にオルガノシランおよびその部分加水分解物の少なくとも1つを添加し、該オルガノシランおよびその部分加水分解物の少なくとも1つの加水分解部分縮合物を得た後、アルカリを添加し縮合反応を進行させて微粒子を得る方法、オルガノシランおよびその加水分解物の少なくとも1つを上層にし、アルカリまたはアルカリと有機溶媒との混合液を下層にして、これらの界面で該オルガノシランおよびその加水分解物の少なくとも1つを加水分解・重縮合させて微粒子を得る方法等も知られている。これらいずれの方法においても、本発明で蛍光体層2中に含有する微粒子を得ることができる。
【0091】
これらの中で、オルガノシランおよびその部分加水分解物の少なくとも1つを加水分解・縮合させ、球状オルガノポリシルセスキオキサン微粒子を製造するにあたり、特開2003−342370号公報で報告されているような反応溶液内に高分子分散剤を添加する方法により得られたシリコーン微粒子を用いることが好ましい。
【0092】
本発明において、シリコーン微粒子の平均粒径は、D50で表される。この平均粒径の下限としては、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。また、この平均粒径の上限としては、2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。このようなシリコーン微粒子を用いることで、スリットダイコーターを用いた場合の吐出性に優れ、膜厚均一性に優れた蛍光体層2を得ることができる。また、単分散で真球状のシリコーン微粒子を用いることが好ましい。シリコーン微粒子の平均粒径(D50)は、上述した蛍光体1としての赤色蛍光体の平均粒径と同様の方法で求めることができる。
【0093】
蛍光体層2中の全固形分に占める微粒子の割合は、0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。この微粒子の割合が上記の範囲内であることによって、蛍光体層2中(樹脂14中)での蛍光体1の分散安定性を向上でき、この結果、蛍光体シート4の色再現性の向上と高光束および高耐久性とを両立することができる。
【0094】
本発明における蛍光体層2中の蛍光体1、樹脂14、およびシリコーン微粒子の各含有量は、作製済みの蛍光体層2や、それを搭載したLED発光体からも求めることが可能である。例えば、蛍光体層2を所定の樹脂で包埋して切断し、断面を研磨した試料を作製し、その露出した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測することにより、蛍光体層2中における蛍光体1の粒子部分、シリコーン微粒子の部分、および樹脂14の部分を明確に判別することが可能である。その断面像の面積比から、蛍光体層2全体に占める蛍光体1(蛍光体粒子)、シリコーン微粒子、および樹脂14の各体積比率を正確に測定することが可能である。蛍光体層2を形成する各成分の比重が明らかな場合は、これらの各体積比率をそれぞれの比重で除することにより、蛍光体1が蛍光体層2に占める重量比率を計算することができる。蛍光体層2を形成する各成分の組成が明らかでない場合は、蛍光体層2の断面を高分解能の顕微赤外分光やIPC発光分析で分析することで、これらの各成分の組成を判別できる。これらの各成分の組成が明らかになれば、樹脂14や蛍光体1の物質固有の比重は相当程度の正確さで推定できるので、これを用いて上記の重量比率を求めることができる。
【0095】
(その他の成分)
蛍光体層2には、その他の成分として、常温での硬化を抑制してポットライフを長くするために、ヒドロシリル化反応遅延剤を配合することが好ましい。ヒドロシリル化反応遅延剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等の炭素−炭素三重結合を有するアルコール誘導体、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン、メチル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、ビニル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン等のアルキン含有シラン等が挙げられる。
【0096】
また、蛍光体層2には、本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じてフュームドシリカ、ガラス粉末、石英粉末等の微粒子、酸化亜鉛等の無機充填剤や顔料、難燃剤、耐熱剤、酸化防止剤、分散剤、溶剤、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等の接着性付与剤等を配合してもよい。
【0097】
<透明樹脂層>
透明樹脂層5(
図1B参照)は、波長450nmにおける全光線透過率が90%以上であり、蛍光体1を含まない樹脂層である。透明樹脂層5は、例えば
図1Bに示すように、蛍光体層2の上に積層される。また、透明樹脂層5の波長400nm〜800nmにおける最小透過率は、80%以上であることが好ましい。ここでいう最小透過率とは、波長400nm〜800nmにおける光透過率のうち最も小さい値のことである。この最小透過率が80%以上であることによって、蛍光体シート4は、高光束化と高耐久性とを両立しやすくなる。蛍光体層2の上に透明樹脂層5があることにより、蛍光体層2中の蛍光体1(例えば赤色蛍光体等)の耐久性が向上し、この結果、蛍光体シート4としての耐久性が向上する。
【0098】
また、透明樹脂層5は、さらに微粒子を含有していてもよい。透明樹脂層5が微粒子を含有することにより、透明樹脂層5の膜厚均一性が向上するため、後述する蛍光体シート4のピックアップ工程において蛍光体シート4を精度よくピックアップすることが可能である。透明樹脂層5の膜厚が不均一となる原因の一つに、透明樹脂層5の形成時の乾燥工程における樹脂の流動がある。この乾燥工程において、透明樹脂層5に含まれる樹脂は、加熱されることにより粘度が低下するため、流動しやすくなる。特に、透明樹脂層5に含まれる樹脂が熱融着性を有するシリコーン樹脂である場合、この樹脂の粘度低下が顕著であるため、透明樹脂層5の膜厚が不均一となりやすい。熱融着性を有するシリコーン樹脂を透明樹脂層5に用いる場合、透明樹脂層5の膜厚の均一性を保つため、透明樹脂層5が微粒子を含有することは、特に重要である。
【0099】
透明樹脂層5の膜厚の均一性が向上することは、透明樹脂層5の保護層としての機能を高める効果もある。局所的に透明樹脂層5の膜厚が薄い部分がある場合、この薄い部分は保護層として十分機能しないため、得られる発光体の耐久性が劣る。本発明によれば、そのような事態を抑制することができる。
【0100】
(樹脂)
透明樹脂層5に用いられる樹脂としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、PET変性ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂およびアクリルニトリル・スチレン共重合体樹脂から選択される1種類以上の樹脂であることが好ましい。中でも、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂から選択される1種類以上の樹脂がより好ましく、耐熱性の面から、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0101】
透明樹脂層5に用いられる樹脂がシリコーン樹脂である場合、このシリコーン樹脂は、熱融着性を有するものであってもよい。このシリコーン樹脂が熱融着性を有することにより、後述の透明樹脂シート法により透明樹脂層5を形成する場合、蛍光体層2と透明樹脂層5とを強固に接着することができる。
【0102】
(微粒子)
透明樹脂層5に用いられる微粒子は、可視光における吸収や発光が小さいものが好ましい。この微粒子としては、例えば、チタニア、シリカ、アルミナ、シリコーン、ジルコニア、セリア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム等の微粒子が挙げられる。これらのうち、入手しやすいという観点から、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリコーン微粒子から選択される1種類以上の微粒子がより好ましく、屈折率や粒径を制御しやすいという観点から、シリコーン微粒子が特に好ましい。
【0103】
透明樹脂層5中の微粒子の粒径を小さくし、かつ、透明樹脂層5中の樹脂と微粒子との屈折率差を小さくすることによって、透明樹脂層5の波長400nm〜800nmにおける最小透過率を80%以上にすることができる。
【0104】
透明樹脂層5に含まれる微粒子の平均粒径は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。また、この微粒子の平均粒径は、1000nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。この微粒子の平均粒径が好ましい下限値以上であることで、透明樹脂層5中に安定して微粒子を分散することができる。この微粒子の平均粒径が1000nm以下であることで、透明樹脂層5中での光の散乱を抑制できるため、透明樹脂層5の高い光透過率を維持することができる。
【0105】
ここでいう微粒子(透明樹脂層5に含まれる微粒子)の平均粒径とは、メジアン径(D50)のことである。この微粒子の平均粒径は、上述した蛍光体1としての赤色蛍光体の平均粒径と同様の方法で求めることができる。
【0106】
透明樹脂層5における全固形分に占める微粒子の割合は、0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。また、この微粒子の割合は、30重量%以下であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。この微粒子の割合が好ましい下限値以上であることで、透明樹脂層5の膜厚のばらつきを抑制することができる。この微粒子の割合が好ましい上限値以下であることで、透明樹脂層5の高い光透過率を維持することができる。
【0107】
(その他の特徴)
微粒子を含有する透明樹脂層5の光透過率は、分光光度計を用いて測定することができる。例えば、日立製作所製:U−4100 Spectrophotomaterを用いる場合は、この測定装置に付属の積分球を用いた基本構成で透明樹脂層5のサンプルの光透過率を測定することができる。この光透過率の測定条件については、スリットは2nmとし、走査速度は600nm/分とする。
【0108】
透明樹脂層5の光透過率測定用のサンプル(以下、「透過率測定サンプル」という)は、下記の方法によって作製することができる。例えば、透明樹脂層5に用いる樹脂および微粒子を攪拌、脱泡して分散液を作製し、この分散液を、石英ガラス上にブレードコーターによって塗布した後、オーブンによって150℃で1時間加熱する。このようにして、透過率測定サンプルを作製することができる。
【0109】
透過率測定サンプルの膜厚は、下記の方法によって測定することができる。例えば、石英ガラスの所定位置の厚さを予めマイクロメーターで測定し、この測定した位置をマーキングしておく。ついで、この石英ガラス上に上述の方法で透明樹脂層5の透過率測定サンプルを形成した後、マーキング部分の厚さを再びマイクロメーターで測定する。得られた厚さから、先に測定しておいた石英ガラスの厚さを差し引くことで、この透過率測定サンプルの膜厚を得ることができる。
【0110】
透明樹脂層5に含まれる樹脂と微粒子との屈折率差は、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.1以下であることが特に好ましい。透明樹脂層5に含まれる樹脂の屈折率は、1.3以上であることが好ましく、1.6以下であることが好ましい。この樹脂の屈折率が1.3以上であることで、透明樹脂層5と蛍光体層2との屈折率差が比較的小さくなるため、蛍光体層2から透明樹脂層5への光取り出し効率を向上させることができる。また、この樹脂の屈折率が1.6以下であることにより、透明樹脂層5と空気層との屈折率差が比較的小さくなるため、透明樹脂層5から空気層への光取り出し効率を向上させることができる。また、光取り出し効率をより向上させるという観点から、透明樹脂層5に含まれる樹脂の屈折率は、蛍光体層2に含まれる樹脂の屈折率以下であることが好ましい。
【0111】
透明樹脂層5に含まれる樹脂の屈折率は、屈折率・膜厚測定装置“プリズムカプラMODEL2010/M”(メトリコン社製)を使用して、屈折率測定サンプルの屈折率を測定することにより測定することができる。屈折率測定サンプルは、この樹脂を、クラボウ社製遊星式攪拌脱泡装置“マゼルスターKK−400”を用いて1000rpmで10分間攪拌、脱泡して分散液を作製し、この分散液を、PETフィルム上に5cc滴下した後、オーブンによって150℃で1時間加熱することにより、得ることができる。
【0112】
<その他の層>
本発明の実施の形態に係る蛍光体シート4は、蛍光体層2の上および下の少なくとも一方に、蛍光体層2とは異なる別の蛍光体層や拡散層を備えていてもよい。この場合、蛍光体層2または別の蛍光体層の下(例えば、いずれかの蛍光体層とLEDチップ表面との間)に形成される透明樹脂層は、LEDチップに接着剤を使用せずに貼り付けできるように、熱融着性を備えることが好ましい。屈折率の高いGaNやサファイア等のLEDチップ表面に上記の透明樹脂層が貼り付けられた場合、このLEDチップ表面の屈折率と、いずれかの蛍光体層の下に位置する透明樹脂層との屈折率差が小さいほど、このLEDチップ表面からこの透明樹脂層への光取り出し効率を向上させることができる。それ故、この場合は、この透明樹脂層の屈折率が1.56以上であることが好ましい。
【0113】
拡散層とは、所定の樹脂と、シリカ、チタニア、ジルコニア等の拡散材とを含む層である。拡散層の形成により、発光光の指向性を弱め、より等方的な発光光を得ることができる。そのため、拡散層は、蛍光体層2の上層に形成されることが好ましい。
【0114】
<蛍光体シートの作製方法>
つぎに、本発明の実施の形態に係る蛍光体シート4の作製方法について、詳細に説明する。なお、以下に説明する作製方法は一例であり、蛍光体シート4の作製方法は、これに限定されない。
【0115】
蛍光体シート4を作製する一つの方法としては、蛍光体層2を支持体3上に直接塗布する方法がある。この方法では、まず、蛍光体層2の形成用の塗布液として、蛍光体1を樹脂14に分散した溶液(以下、「蛍光体層作製用樹脂液」という)を作製する。蛍光体層作製用樹脂液は、蛍光体1と樹脂14とを溶媒中で混合することによって得られる。
【0116】
粘度を調整するために溶媒を添加する必要がある場合には、流動状態の樹脂14の粘度を調整できるものであれば、溶媒の種類は特に限定されない。この溶媒としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、グライム、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0117】
蛍光体層2を構成するのに必要な成分と、必要に応じ添加される溶媒等の成分とを所定の組成になるよう調合した後、これらの成分の調合物を、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミル等の撹拌・混練機で均質に混合分散することで、蛍光体層作製用樹脂液が得られる。この混合分散後、もしくは、この混合分散の過程において、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。
【0118】
ただし、蛍光体1としてのMn賦活複フッ化物錯体蛍光体は、β型サイアロン蛍光体等の高温で焼成して製造する蛍光体と比較して、硬度が低く、脆いという性質を持っている。そのため、Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体を撹拌・混練機等で分散させるときは、Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体に加わる衝撃ができるだけ小さくなるように分散条件を設定することにより、Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体の破砕を抑制することが好ましい。Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体の破砕を抑制することにより、発光強度の強い蛍光体シート4を得ることができる。
【0119】
つぎに、上述したように作製した蛍光体層作製用樹脂液を、支持体3上に塗布し、乾燥させる。これによって支持体3上に得られる蛍光体層2を、加熱硬化して作製する。支持体3上への蛍光体層作製用樹脂液の塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、キスコーター、スクリーン印刷、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーター等により、行うことができる。蛍光体層2の膜厚の均一性を得るためには、スリットダイコーターで塗布することが好ましい。また、蛍光体層2は、スクリーン印刷やグラビア印刷、平版印刷等の印刷法を用いても作製することもできる。特に、スクリーン印刷が好ましく用いられる。
【0120】
蛍光体層作製用樹脂液の乾燥は、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。蛍光体層2の加熱硬化には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置が用いられる。この場合、加熱硬化条件は、通常、40℃〜250℃で1分〜5時間、好ましくは100℃〜200℃で2分〜3時間である。
【0121】
上述した方法により、少なくとも蛍光体層2を備える蛍光体シート4を作製することができる。この蛍光体シート4は、
図1Aに例示されるように、シート単体では支持体3によって支持された状態にある。
【0122】
本発明で用いられる支持体3としては、特に制限なく、例えば、公知の金属、樹脂フィルム、ガラス、セラミック、紙、セルロースアセテートが挙げられる。これらのうち、蛍光体シート4の作製のし易さや蛍光体シート4の個片化のし易さから、ガラスや樹脂フィルムが好ましく用いられる。特に、蛍光体シート4をLEDチップに貼り付ける際の密着性から、支持体3は、柔軟なフィルム状であることが好ましい。また、フィルム状の支持体3を取り扱う際に破断等の恐れがないように、強度が高いフィルムが、支持体3として好ましい。これらの要求特性や経済性の面から、樹脂フィルムが、支持体3として好ましい。支持体3として用いられる樹脂フィルムの中でも、経済性や取り扱い性の面から、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリイミドからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、蛍光体層作製用樹脂液を乾燥させる際や蛍光体シート4をLEDチップに貼り付ける際に200℃以上の高温を必要とする場合は、耐熱性の面から、ポリイミドフィルムが好ましい。支持体3からの蛍光体シート4の剥離のし易さから、支持体3は、予め表面が離型処理されていてもよい。
【0123】
また、蛍光体シート4の作製方法において、透明樹脂層5を蛍光体層2上に形成する場合、透明樹脂層5の形成方法としては、直接塗布法と、透明樹脂シート法とがある。直接塗布法とは、例えば、透明樹脂層5の作製用として透明樹脂溶媒により粘度調整した樹脂溶液(以下、「透明樹脂層作製用樹脂液」という)を、蛍光体層2上に直接塗布した後、乾燥、加熱硬化処理を行う方法である。
【0124】
直接塗布法において、透明樹脂層作製用樹脂液の塗布は、蛍光体層2の作製(蛍光体層作製用樹脂液の塗布)と同様の方法を用いることができるが、透明樹脂層5の膜厚の均一性を得るために、スリットダイコーターで透明樹脂層作製用樹脂液を塗布することが好ましい。透明樹脂層作製用樹脂液の乾燥は、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。この乾燥によって形成される透明樹脂層5の加熱硬化には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置が用いられる。この場合、加熱硬化条件は、通常、40℃〜250℃で1分〜5時間、好ましくは100℃〜200℃で2分〜3時間である。
【0125】
透明樹脂シート法とは、透明樹脂シートを作製し、蛍光体シート4の蛍光体層2側と、作製した透明樹脂シートの透明樹脂層5側とを貼り合わせることにより、蛍光体層2上に透明樹脂層5を形成する方法である。透明樹脂シートは、上述した蛍光体層2を備える蛍光体シート4と同様の方法によって、作製することができる。すなわち、「蛍光体層作製用樹脂液」の代わりに「透明樹脂層作製用樹脂液」を用いて、上述した蛍光体シート4の作製方法と同様の方法を行い、所定の支持体(例えば支持体3と同様のもの)上に透明樹脂層5を形成することにより、透明樹脂シートを作製することができる。
【0126】
透明樹脂シート法により蛍光体層2上に透明樹脂層5を形成する場合、蛍光体層2および透明樹脂層5のうち少なくとも一方の層の樹脂は、半硬化の状態である必要がある。少なくとも一方の層の樹脂が半硬化の状態であることにより、蛍光体層2と透明樹脂層5とを接着することができる。この透明樹脂シート法においては、少なくとも透明樹脂層5の樹脂が半硬化であることがより好ましく、蛍光体層2の樹脂14および透明樹脂層5の樹脂の両方が半硬化の状態であることが特に好ましい。
【0127】
蛍光体層2と透明樹脂層5との貼り合わせは、加熱して貼り合わせることが好ましい。加熱することにより、蛍光体層2および透明樹脂層5の各樹脂の粘度が下がるため、蛍光体層2と透明樹脂層5とを強固に貼り合わせることができる。この貼り合わせ時の各樹脂の粘度を十分下げるために、加熱条件としては、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。また、貼り合わせ時の各樹脂の温度が高すぎると、蛍光体層2と透明樹脂層5とが接着する前に、半硬化状態の樹脂(例えば透明樹脂層5の樹脂)が硬化してしまうため、蛍光体層2と透明樹脂層5とが接着しにくくなってしまう。この貼り合わせ時の熱硬化を抑制するという観点から、加熱条件としては、200℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。
【0128】
また、蛍光体層2と透明樹脂層5とが貼り合わせ時に気泡を噛み込んだ場合、気泡と蛍光体層2との界面と、気泡と透明樹脂層5との界面とにおいて、光が乱反射する。これにより、蛍光体シート4からの光取り出し効率が低下し、結果として、この蛍光体シート4を用いて製造された発光体の輝度が低下してしまう。このような気泡の噛み込みを防ぐという観点から、蛍光体層2と透明樹脂層5との貼り合わせは、真空雰囲気下において行うことが好ましい。真空雰囲気下とは、圧力が所定値以下の雰囲気である。この真空雰囲気下での圧力は、100hPa以下であり、10hPa以下であることがより好ましく、5hPa以下であることがさらに好ましく、1hPa以下であることが特に好ましい。
【0129】
(蛍光体シートを用いた発光体の製造方法)
本発明の実施の形態に係る発光体の製造方法(蛍光体シート4を用いた発光体の製造方法)について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いた発光体の製造方法の一例を示す工程図である。なお、以下の説明は一例であり、本発明の実施の形態に係る発光体の製造方法は、以下に説明するものに限定されない。
【0130】
蛍光体シート4を用いた発光体の製造方法は、大きく分けて3つの工程を含む。第1の工程は、蛍光体シート4を個片化する個片化工程である。第2の工程は、個片化された蛍光体シート4をピックアップするピックアップ工程である。第3の工程は、ピックアップした蛍光体シート4(個片化工程によって個片化されたもの)を光源に貼り付ける貼付工程である。また、この発光体の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を含んでいてもよい。
【0131】
以下、蛍光体シート4は、支持体3上に形成された蛍光体層2からなるものとし、この蛍光体シート4としての蛍光体層2を、個片化して、光源の一例であるLEDチップに貼り付ける場合を例に挙げて、
図2を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る発光体の製造方法を説明する。
【0132】
(個片化工程)
個片化工程において、蛍光体シート4の個片化は、金型によるパンチング、レーザーによる加工、ダイシングやカッティング等の方法により、行うことができる。このとき、蛍光体シート4としての蛍光体層2は、半硬化状態でもよいし、予め硬化されていてもよい。レーザーによる加工は、蛍光体層2に高エネルギーが付与されるので、蛍光体層2の樹脂(例えば
図1Aに示す樹脂14)の焼け焦げや蛍光体(例えば
図1Aに示す蛍光体1)の劣化を回避することが非常に難しい。したがって、蛍光体シート4の個片化の方法としては、刃物による切削または切断が望ましい。
【0133】
例えば、
図2に示すように、蛍光体シート4としての蛍光体層2は、支持体3によって支持された状態にある。個片化工程において、支持体3上の蛍光体層2は、刃物6によって切断される(状態S1)。これにより、この蛍光体層2は、複数に個片化されて、個片化蛍光体層7に加工される(状態S2)。このとき、個片化蛍光体層7は、支持体3に貼り付けられたままである。
【0134】
刃物6は、例えば、回転刃である。蛍光体層2を回転刃によって切断する装置としては、ダイサーと呼ばれる、半導体基板を個別のチップに切断(ダイシング)するのに用いる装置が、好適に利用できる。ダイサーを用いれば、回転刃の厚みや条件設定により、蛍光体層2の分割ラインの幅を精密に制御できるため、単純な刃物の押し込みによる蛍光体層2の切断よりも高い加工精度が得られる。これら何れの切断方法の場合も、蛍光体層2は支持体3ごと個片化してもよい。あるいは、蛍光体層2は個片化しつつ、支持体3は切断しなくてもよい。この際、支持体3に対しては、貫通しない切り込みラインが入る所謂ハーフカットを行うことが好ましい。
【0135】
個片化工程において、蛍光体層2の切断は、ドライカットによる切断であることが好ましい。ドライカットとは、切断時に水等の液体を使用しない切断方法のことである。個片化工程での蛍光体層2の切断は、これに限られるのもではないが、例えば、トムソン刃による切断等が挙げられる。蛍光体層2が、K
2SiF
6:Mn等のように、水と反応することで発光効率が低下する蛍光体を含む場合、ドライカットが特に有効である。
【0136】
蛍光体シート4は、個片化工程の前後において、または個片化工程と同時に、蛍光体層2の孔開け加工が施されてもよい。この孔開け加工としては、レーザー加工、金型によるパンチング等の公知の方法が好適に使用できるが、レーザー加工は蛍光体層2の樹脂の焼け焦げや蛍光体の劣化を引き起こすので、金型によるパンチング加工がより望ましい。
【0137】
(ピックアップ工程)
上述した個片化工程によって個片化された蛍光体シート4は、個片化工程の次工程であるピックアップ工程によってピックアップされる。例えば、
図2に示すように、個片化蛍光体層7は、支持体3上に貼り付けられた状態にある。ピックアップ工程において、個片化蛍光体層7は、コレット8等の吸引装置を備えたピックアップ装置(図示せず)により、支持体3から剥離されてピックアップされる(状態S3)。
【0138】
(貼付工程)
上述したピックアップ工程によってピックアップされた個片化蛍光体層7(個片化された蛍光体シート4の一例)は、ピックアップ工程の次工程である貼付工程によって光源に貼り付けられる。例えば、
図2に示すように、個片化蛍光体層7は、コレット8によってピックアップされた状態にある。コレット8は、基板11に実装されたLEDチップ9(光源の一例)の位置へ個片化蛍光体層7とともに搬送され、これにより、LEDチップ9の光取り出し面と個片化蛍光体層7の接着面(例えば下面)とを対向させる。ついで、コレット8は、LEDチップ9の光取り出し面に、個片化蛍光体層7の接着面を押し付けて貼り付ける(状態S4)。このとき、基板11上のLEDチップ9の周囲には、リフレクター10が形成されていてもよい。
【0139】
貼付工程での個片化蛍光体層7とLEDチップ9との貼り付けには、接着剤(図示せず)を使用することが好ましい。この接着剤としては、公知のダイボンド剤や接着剤を使用することができる。例えば、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、変性シリコーン樹脂系、フェノール樹脂系、ポリイミド系、ポリビニルアルコール系、ポリメタクリレート樹脂系、メラミン樹脂系、ユリア樹脂系の接着剤を使用することができる。蛍光体層2が粘着性を有する場合は、この粘着性を利用して、個片化蛍光体層7とLEDチップ9とを貼り付けてもよい。
【0140】
また、貼付工程が個片蛍光体層7を加熱してLEDチップ9に貼り付ける工程である場合、この貼付工程を大気中で行うと、LEDチップ9と個片化蛍光体層7との間に気泡を噛み込むことがある。気泡を噛み込んだ場合、気泡とLEDチップ9との界面と、気泡と個片化蛍光体層7との界面とにおいて、光が乱反射する。これにより、LEDチップ9からの光取り出し効率が低下し、結果として、蛍光体シート4を用いて製造された発光体(例えば
図2に示す発光体13)の輝度が低下してしまう。このような気泡の噛み込みを防ぐという観点から、この貼付工程は、真空雰囲気下において行うことが好ましい。
【0141】
(その他の工程)
上述した発光体の製造方法には、その他の工程として、LEDチップ9と回路基板の一例である基板11とを電気的に接続する接続工程がさらに含まれてもよい。この接続工程において、LEDチップ9の電極と基板11の配線とが、公知の方法で電気的に接続される。これにより、発光体13を得ることができる。LEDチップ9が光取り出し面側に電極を有する場合には、LEDチップ9の上面の電極と基板11の配線とが、ワイヤーボンディングによって接続される。また、LEDチップ9が発光面の反対面に電極パッドを有するフリップチップタイプである場合には、LEDチップ9の電極面を基板11の配線と対向させ、これらが一括接合によって接続される。この場合、基板11とLEDチップ9との接続は、個片化された蛍光体シート4(例えば個片化蛍光体層7)の貼り付け前に行ってもよい。
【0142】
個片蛍光体層7が半硬化状態でLEDチップ9と貼り付けられていた場合は、上述した接続工程の前もしくは後の好適なタイミングに、個片蛍光体層7を硬化させることができる。例えば、フリップチップタイプのLEDチップ9を基板11に一括接合すべく熱圧着の接合を行う場合には、その加熱によって同時に個片化蛍光体層7を硬化させてもよい。また、LEDチップ9と基板11とを接続したパッケージを、より大きな回路基板上に表面実装する場合には、半田リフローでハンダ付けを行うと同時に個片化蛍光体層7を硬化させてもよい。
【0143】
個片化蛍光体層7が硬化された状態でLEDチップ9と貼り付けられる場合には、個片化蛍光体層7とLEDチップ9とを貼り付けた後に、個片化蛍光体層7の硬化過程を設ける必要はない。個片化蛍光体層7が硬化された状態でLEDチップ9に貼り付けられる場合とは、例えば、硬化した個片化蛍光体層7に別途接着層が形成される場合や、個片化蛍光体層7が硬化後に熱融着性を有する場合等である。
【0144】
また、上述した発光体の製造方法には、その他の工程として、貼付工程が行われた後のLEDチップ9を封止する封止工程がさらに含まれてもよい。例えば、
図2に示すように、封止工程において、透明封止材12は、個片化蛍光体層7が貼り付けられた後のLEDチップ9を覆うように基板11上(詳細にはリフレクター10の内側)に注入される。これにより、このLEDチップ9は、透明封止材12によって封止される(状態S5)。このようにして、
図2に示すような発光体13が作製される。透明封止材12としては、透明性や耐熱性の観点から、シリコーン樹脂が好適に用いられる。
【0145】
上述したように
図2を参照しつつ説明した発光体の製造方法では、蛍光体シート4が支持体3上の蛍光体層2からなる場合を例示したが、この発光体の製造方法は、これに限定されるものではない。すなわち、この発光体の製造方法に用いられる蛍光体シート4は、蛍光体層2からなるものであってもよいし、
図1Bに例示されるような蛍光体層2と透明樹脂層5との積層体からなるものであってもよいし、上述した拡散層等のその他の層をさらに備えるものであってもよい。例えば、蛍光体シート4が蛍光体層2および透明樹脂層5を備えるものである場合、個片化工程では、支持体3上の蛍光体層2および透明樹脂層5がともに個片化される。ピックアップ工程では、蛍光体層2および透明樹脂層5の個片化された積層体が支持体3からピックアップされる。貼付工程では、このピックアップされた積層体(個片化されたもの)がLEDチップ9の光取り出し面に貼り付けられる。
【0146】
<発光体、光源ユニット、ディスプレイ>
本発明の実施の形態に係る発光体は、上述した蛍光体シート4を備える。例えば、
図2に示される発光体13は、蛍光体シート4としての個片化蛍光体層7をLEDチップ9の光取り出し面上に備える。このような発光体は、車載のヘッドライト、テレビやスマートフォンのバックライト、照明等に幅広く適用することができる。本発明において、蛍光体シート4およびこれを用いた発光体は、色再現性の向上に優れ、高光束、高耐久性を有するため、バックライト等の光源ユニットに適用することが好ましい。
【0147】
本発明の実施の形態に係る光源ユニットは、上述した蛍光体シート4を備える。この光源ユニットには、蛍光体シート4を有する発光体を備えたものも含まれる。このような光源ユニットは、テレビ用、スマートフォン用、タブレット型コンピュータ用、ゲーム機器用のディスプレイに適用することができる。
【0148】
本発明の実施の形態に係るディスプレイは、上述した蛍光体シート4を有する光源ユニットを備える。このディスプレイには、本発明における発光体(蛍光体シート4を用いて作製された発光体)を有する光源ユニットを備えたものも含まれる。このようなディスプレイとしては、例えば、液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0149】
<色再現範囲測定>
蛍光体シート4を用いて作製した発光体を液晶ディスプレイのバックライトとして使用したときの液晶ディプレイの色再現範囲は、DCI比で評価することができる。DCI比とは、DCI(Digital Cinema Initiative)規格に係るDCI色度領域の面積を基準(100%)としたときの、色度領域における面積比のことである。DCI比は、下記の手順で測定することができる。
【0150】
まず、作製した発光体上に、公知の方法で作製した赤色光を透過するカラーフィルターを載せ、この発光体に1Wの電力を投入して、この発光体を点灯させ、全光束測定システム(HM−3000、大塚電子社製)を用いて発光光の色度を測定する。同様に、この発光体上に緑色光を透過するカラーフィルターを載せた場合と青色光を透過するカラーフィルターを載せた場合とのそれぞれについて、発光光の色度を測定する。得られた3つの色度を頂点とした三角形の面積をDCI色度領域の面積で除することにより、DCI比を算出することができる。
【実施例】
【0151】
以下に、本発明を実施例により、具体的に説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0152】
<シリコーン樹脂>
シリコーン樹脂T11は、OE−6351A/B(東レ・ダウコーニング社製)である。シリコーン樹脂T11の屈折率は、1.41である。シリコーン樹脂T12は、KER6075LV A/B(信越化学工業社製)である。シリコーン樹脂T12の屈折率は、1.45である。シリコーン樹脂T13は、XE14−C2860(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製)である。シリコーン樹脂T13の屈折率は、1.50である。シリコーン樹脂T14は、OE6630 A/B(東レ・ダウコーニング株式会社製)である。シリコーン樹脂T14の屈折率は、1.53である。
【0153】
シリコーン樹脂T15は、下記の(E)成分を75重量部、(F)成分を10重量部、(G)成分を25重量部、反応抑制剤を0.025重量部、白金触媒を0.01重量部混合することで得た。シリコーン樹脂T15を用いて作製した透明樹脂シートは、25℃における貯蔵弾性率が1Mpaであり、100℃における貯蔵弾性率が0.01MPaであり、良好な熱融着性を示した。シリコーン樹脂T15の屈折率は、1.56である。
【0154】
シリコーン樹脂T15において、(E)成分は、(MeViSiO
2/2)
0.25(Ph
2SiO
2/2)
0.3(PhSiO
3/2)
0.45(HO
1/2)
0.03である。(F)成分は、ViMe
2SiO(MePhSiO)
17.5SiMe
2Viである。(G)成分は、(HMe
2SiO)
2SiPh
2である。ただし、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、Phはフェニル基である。また、反応抑制剤は、1−エチニルヘキサノールである。白金触媒は、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液である。この溶液の白金含有量は、5重量%である。
【0155】
シリコーン樹脂T16は、下記の調製法によって得た。シリコーン樹脂T16の屈折率は、1.60である。
【0156】
シリコーン樹脂T16の調製法では、反応容器に、1−ナフチルトリメトキシシラン(892.8g)および1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン(372.0g)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸(6.15g)を投入し、撹拌下、水(213.84g)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。ついで、トルエン(435.6g)、水酸化カリウム(3.28g)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸(3.524g)を投入し、中和した。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧留去して、平均単位式:(MePhViSiO
1/2)
0.40(NaphSiO
3/2)
0.60で表されるオルガノポリシロキサンレジンP1を957.4g得た。
【0157】
また、反応容器に、1−ナフチルトリメトキシシラン(50g)を投入し、加熱溶融させた後、トリフルオロメタンスルホン酸(0.06g)を添加した。ついで、45℃〜50℃に加熱しながら、酢酸(9.3g)を滴下した。滴下終了後、50℃で30分間加熱撹拌した。反応温度が80℃になるまで低沸点物を加熱常圧留去した。その後、室温まで冷却し、1,3,3−テトラメチルジシロキサン(4.4g)を滴下し、反応温度が45℃になるまで加熱した。ついで、酢酸(18g)を45℃〜50℃で滴下した。滴下終了後、50℃で30分間加熱撹拌した。空冷または水冷によって温度を60℃以下に保ちながら、無水酢酸(15.5g)を滴下し、滴下終了後、50℃で30分間加熱撹拌を行った。つぎに、トルエンと水を投入し、撹拌、静置および下層抜き出しを繰り返し、水洗を行った。下層のpHが7であることを確認した後、上層であるトルエン層から低沸点物を加熱減圧留去して、平均単位式:(HMe
2SiO
1/2)
0.60(NaphSiO
3/2)
0.40で表される、無色透明液状のオルガノポリシロキサンP2を43g得た。
【0158】
オルガノポリシロキサンレジンP1を52.0質量部、オルガノポリシロキサンP2を30.0質量部、式:HMe
2SiOPh
2SiOSiMe
2Hで表されるオルガノトリシロキサンを14.0質量部、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンの溶液(白金として0.1質量%含有する溶液)を0.25質量部混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0159】
シリコーン樹脂T17は、下記の調製法によって得た。シリコーン樹脂T17の屈折率は、1.65である。
【0160】
シリコーン樹脂T17の調製法では、メチルトリメトキシシラン(16.6g)、フェニルトリメトキシシラン(56.2g)、数平均粒径15nmの”オプトレイクTR−527”(商品名、触媒化成工業(株)製 組成:酸化チタン粒子20重量%、メタノール80重量%)(194g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(126.9g)を反応容器に入れ、この溶液に、水(21.9g)およびリン酸(0.36g)を、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、フラスコに蒸留装置を取り付け、得られた溶液をバス温105℃で2.5時間加熱撹拌して、加水分解により生成したメタノールを留去しつつ反応させた。その後、この溶液をバス温115℃でさらに2時間加熱撹拌した後、室温まで冷却し、ポリシロキサンでグラフト化された酸化チタン粒子を得た。
【0161】
つぎに、この得られた酸化チタン粒子(50.00g)にシリコーン樹脂T14(8.00g)を混合し、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ社製)を用い、1000rpmで20分間撹拌・脱泡し、これにより、シリコーン樹脂T17を作製した。屈折率測定を行った結果、シリコーン樹脂T17の平均屈折率は、1.65であった。
【0162】
シリコーン樹脂T18は、下記の調製法によって得た。シリコーン樹脂T18の屈折率は、1.70である。
【0163】
シリコーン樹脂T18の調製法では、上述したシリコーン樹脂T17の調製法と同様にポリシロキサンでグラフト化された酸化チタン粒子(60.0g)に、シリコーン樹脂T14(3.0g)を混合し、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ製)を用い、1000rpmで20分間撹拌・脱泡した。これにより、シリコーン樹脂T18を作製した。屈折率測定を行った結果、シリコーン樹脂T18の屈折率は、1.70であった。
【0164】
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂T21は、AF2400S(三井・デュポンフロロケミカル社製)である。フッ素樹脂T21の屈折率は、1.30である。フッ素樹脂T22は、CTX−800(CT−solv180溶液)(旭硝子社製)である。フッ素樹脂T22の屈折率は、1.35である。
【0165】
<蛍光体>
緑色蛍光体は、GR−MW540K(デンカ株式会社製)というβ型サイアロン蛍光体である。黄色蛍光体は、NYAG−02(Intematix社製)というCeドープYAG蛍光体である。赤色蛍光体T1は、KSF蛍光体サンプルA(株式会社ネモト・ルミマテリアル製)である。赤色蛍光体T2は、KSF蛍光体サンプルB(株式会社ネモト・ルミマテリアル製)である。赤色蛍光体T3は、KSF蛍光体サンプルC(株式会社ネモト・ルミマテリアル製)である。赤色蛍光体T4は、KSF蛍光体サンプルD(株式会社ネモト・ルミマテリアル製)である。赤色蛍光体T5は、KSF蛍光体サンプルE(株式会社ネモト・ルミマテリアル製)である。赤色蛍光体T6は、KSF蛍光体サンプルF(株式会社ネモト・ルミマテリアル製)である。
【0166】
本実施例で使用した赤色蛍光体T1〜T6のD10、D50およびD90は、以下の方法で測定した。この測定結果は、表1に示す。表1には、測定したD10、D50およびD90をもとに上述の式(11)に基づいて算出される値xも示す。
【0167】
赤色蛍光体T1〜T6のD10、D50およびD90の測定方法では、後述のように蛍光体シート(例えば
図1A、1Bに示される蛍光体シート4)を作製し、その蛍光体層の断面をSEMで観察し、得られた2次元画像において、粒子の外縁と2点で交わる直線の当該2つの交点間の距離のうち、最大になる距離を算出し、それを粒子の個別の粒径と定義した。観察された全粒子の個別の粒径から求められる粒度分布において、小粒径側からの通過分積算10%の粒径をD10とし、通過分積算50%の粒径をD50とし、通過分積算90%の粒径をD90とした。
【0168】
【表1】
【0169】
<基材フィルム>
基材フィルムは、本発明における蛍光体シートの支持体(例えば
図1A、1Bに示す支持体3)の一例である。本実施例において、基材フィルムは、PETフィルムとした。このPETフィルムは、“セラピール”BX9(東レフィルム加工(株)製)であり、その膜厚は、50μmである。
【0170】
<シリコーン微粒子>
シリコーン微粒子は、以下の製造方法によって得た。
【0171】
シリコーン微粒子の製造方法では、2L四つ口丸底フラスコに攪拌機、温度計、環流管、滴下ロートを取り付け、このフラスコに、界面活性剤としてポリエーテル変性シロキサン“BYK333”を10000ppm含む2.5%のアンモニア水(2L)を入れ、300rpmで攪拌しつつ、オイルバスによって昇温した。内温50℃に到達したところで、滴下ロートからメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとの混合物(22/78mol%)(200g)を30分かけて滴下した。そのままの温度で、さらに60分間撹拌を続けた後、酢酸(試薬特級)(約5g)を添加し、撹拌混合した後、濾過を行った。濾過器上の生成粒子に水(600mL)を2回、メタノール(200mL)を1回添加し、濾過、洗浄を行った。濾過器上のケークを取り出し、解砕後、10時間かけて凍結乾燥することにより、シリコーン微粒子として白色粉末(40g)を得た。
【0172】
得られたシリコーン微粒子は、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であることが確認できた。得られたSEM画像から、このシリコーン微粒子の平均粒径を算出した結果、50nmであった。このシリコーン微粒子の屈折率を液浸法により測定した結果、1.54であった。このシリコーン微粒子を断面TEMで観察した結果、粒子内が単一構造の微粒子であることが確認できた。
【0173】
<シリカ微粒子>
シリカ微粒子T31は、Aerosil200(日本アエロジル(株)製)である。シリカ微粒子T31の平均粒径は、12nmである。シリカ微粒子T31の屈折率は、1.46である。シリカ微粒子T32は、“アドマナノ”YA050C(アドマテックス(株)製)である。シリカ微粒子T32の平均粒径は、50nmである。シリカ微粒子T32の屈折率は、1.46である。シリカ微粒子T33は、“アドマナノ”YA100C(アドマテックス(株)製)である。シリカ微粒子T33の平均粒径は、100nmである。シリカ微粒子T33の屈折率は、1.46である。シリカ微粒子T34は、“アドマファイン”SO−E1(アドマテックス(株)製)である。シリカ微粒子T34の平均粒径は、250nmである。シリカ微粒子T34の屈折率は、1.46である。シリカ微粒子T35は、HPS−1000(東亜合成(株)製)である。シリカ微粒子T35の平均粒径は、1000nmである。シリカ微粒子T35の屈折率は、1.46である。シリカ微粒子T36は、“アドマファイン”SO−E5(アドマテックス(株)製)である。シリカ微粒子T36の平均粒径は、1500nmである。シリカ微粒子T36の屈折率は、1.46である。
【0174】
<アルミナ微粒子>
アルミナ微粒子は、Aeroxide AluC(日本アエロジル(株)製)である。このアルミナ微粒子の平均粒径は、12nmである。このアルミナ微粒子の屈折率は、1.77である。
【0175】
<チタニア微粒子>
チタニア微粒子は、MT−01(テイカ株式会社製)である。このチタニア微粒子の平均粒径は、10nmである。このチタニア微粒子の屈折率は、2.50である。
【0176】
<蛍光体シートの作製>
本実施例における蛍光体シートの作製では、容積300mLのポリエチレン製容器にシリコーン樹脂、シリコーン微粒子、赤色蛍光体、緑色蛍光体を所定の比率で混合した。さらに、溶媒としてトルエンを8wt%添加し、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ製)を用い、1000rpmで撹拌・脱泡して、蛍光体層作製用樹脂液を得た。その後、スリットダイコーターを用いて蛍光体層作製用樹脂液をPETフィルム上に塗布し、130℃で30分乾燥させることにより、蛍光体層を作製して、蛍光体シートを得た。
【0177】
<蛍光体層の膜厚測定>
本実施例における蛍光体層の膜厚測定では、蛍光体層を作製するPETフィルムの所定位置の厚さを予めマイクロメーターで測定し、マーキングした。ついで、蛍光体層をこのPETフィルム上に作製し、その後、マーキング部分の厚さを再びマイクロメーターで測定した。得られた厚さから、先に測定しておいたPETフィルムの厚さを差し引くことで、この蛍光体層の膜厚を得た。本実施例において、膜厚は10mm間隔で碁盤目状に25点測定し、これらの平均値を蛍光体層の膜厚とした。
【0178】
<直接塗布法による透明樹脂層の形成>
本実施例における直接塗布法による透明樹脂層の形成では、容積300mLのポリエチレン製容器にシリコーン樹脂またはフッ素樹脂、微粒子を所定の比率で混合した。さらに、溶媒としてトルエンを5wt%添加し、その後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ製)を用い、1000rpmで20分間撹拌・脱泡して、透明樹脂層作製用樹脂液を得た。ついで、スリットダイコーターを用いて透明樹脂層作製用樹脂液を蛍光体層上に塗布し、130℃で30分乾燥させることにより、この蛍光体層上に透明樹脂層を形成した。この結果、蛍光体層上に透明樹脂層を備える蛍光体シートを得た。以下、「蛍光体層上に透明樹脂層を備える蛍光体シート」は、「透明樹脂層付き蛍光体シート」と適宜称される。
【0179】
<透明樹脂シート法による透明樹脂層の形成>
本実施例における透明樹脂シート法による透明樹脂層の形成では、スリットダイコーターを用いて透明樹脂層作製用樹脂液をPETフィルム上に塗布し、130℃で30分乾燥させることにより、透明樹脂シートを得た。ついで、ニッコー・マテリアルズ株式会社製の真空ラミネーターV130を用いて、蛍光体シートの蛍光体層と透明樹脂シートの透明樹脂層とを、1hPaの真空雰囲気下において100℃で30秒加熱圧着することにより、貼り合わせた。その後、透明樹脂シート側のPETフィルムを剥離し、これにより、この蛍光体層上に透明樹脂層を形成した。この結果、透明樹脂層付き蛍光体シートを得た。
【0180】
<透明樹脂層の膜厚測定>
本実施例における透明樹脂層の膜厚測定では、透明樹脂層を作製する蛍光体シートの所定位置の厚さを予めマイクロメーターで測定し、マーキングした。ついで、透明樹脂層をこの蛍光体シート上に形成し、その後、マーキング部分の厚さを再びマイクロメーターで測定した。得られた厚さから、先に測定しておいた厚さを差し引くことで、この透明樹脂層の膜厚を得た。本実施例において、膜厚は10mm間隔で碁盤目状に25点測定した。この測定結果から、それぞれのサンプルの平均値および膜厚ばらつき(=最大膜厚−最小膜厚)を算出した。
【0181】
<空隙率測定>
本実施例における空隙率測定では、蛍光体シートを集束イオンビーム(FIB)加工法により切断し、蛍光体層の断面をSEMにより観察した。1つの蛍光体シートにつき20ヶ所の断面を観察し、得られた20枚の2次元画像の空隙に相当する断面積の合計を算出した。この空隙に相当する断面積の合計を、これら20枚の2次元画像の断面積の合計で除することにより、この蛍光体層の空隙率を得た。
【0182】
<発光体の製造方法>
本実施例における発光体の製造方法では、上述したように作製した蛍光体シートまたは透明樹脂層付き蛍光体シート(1cm角)をカッティング装置(UHT社製GCUT)によりカットし、これにより、1mm角の個片シートを100個、作製した。本実施例において、個片シートは、蛍光体シートまたは透明樹脂層付き蛍光体シートを個片化したものである。ついで、ダイボンディング装置(東レエンジニアリング製)を用いて、1mm角の個片シート(蛍光体層等)を、コレットで真空吸着して基材フィルムから剥離した。この個片シートの蛍光体層を、フリップチップ型の青色LEDチップが実装され、かつこの青色LEDチップの周囲にリフレクターが形成されたLEDパッケージの青色LEDチップ表面に、位置合わせして貼り付けた。このとき、この青色LEDチップ上に、予め接着剤を塗布し、この接着剤を介して蛍光体層を貼り付けた。この接着剤には、シリコーン樹脂T15を使用した。このようにして、蛍光体シートまたは透明樹脂層付き蛍光体シートを備えた発光体を作製した。
【0183】
<色度、全光束測定>
本実施例における色度および全光束の測定では、上述したように作製した発光体に1Wの電力を投入して、この発光体のLEDチップを点灯させ、全光束測定システム(HM−3000、大塚電子社製)を用いて、CIE1931 XYZ表色系の色度(Cx,Cy)および全光束(lm)を測定した。本実施例では、各蛍光体シートにつき、それぞれ10個の発光体(LEDチップを備えたもの)を作製し、これら10個の発光体の色度の平均値と、色度ばらつきの指標である色度Cxの標準偏差(σ)とを求めた。
【0184】
<全光束保持率測定>
本実施例における全光束保持率の測定では、各蛍光体シートを青色LEDチップに搭載した発光体に、1Wの電力を投入して、この青色LEDチップを点灯させ、この点灯状態の発光体(青色LEDチップ)を温度85℃、湿度85%の条件下で放置し、300時間経過後の全光束を測定した。下記の式に基づき全光束保持率を算出することによって、発光体およびその蛍光体シートの耐久性を評価した。全光束保持率が高いほど、耐久性に優れていることを示す。
全光束保持率(%)=(300時間経過後の全光束/試験開始直後の全光束)×100
【0185】
<色再現範囲測定>
本実施例における色再現範囲の測定では、上述したように作製した発光体上に、公知の方法で作製した赤色光を透過するカラーフィルターを載せて、発光光の色度を測定した。同様に、この発光体上に緑色光を透過するカラーフィルターを載せた場合と青色光を透過するカラーフィルターを載せた場合とのそれぞれについて、発光光の色度を測定した。得られた3つの色度を頂点とした三角形の面積をDCI色度領域の面積で除することにより、DCI比を算出した。DCI比が高いほど、色再現性が良好である。
【0186】
<屈折率測定>
本実施例における屈折率の測定では、屈折率・膜厚測定装置“プリズムカプラMODEL2010/M”(メトリコン社製)を使用して、屈折率測定サンプルの屈折率を測定し、これにより、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂硬化物の屈折率を測定した。
【0187】
<屈折率測定サンプル作製>
本実施例における屈折率測定サンプルの作製では、蛍光体シートに含有する樹脂を、遊星式攪拌脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ社製)を用い、1000rpmで10分間攪拌し、脱泡して、この樹脂の分散液を作製した。この分散液を、PETフィルム上に5cc滴下した後、オーブンによって150℃で1時間加熱し、これにより、屈折率測定サンプルとして平均屈折率測定サンプルを作製した。
【0188】
<透過率測定>
本実施例における透過率測定において、微粒子を含有する透明樹脂層の光透過率は、分光光度計(U−4100 Spectrophotomater(日立製作所製))に付属の積分球を用いた基本構成で、透過率測定サンプルの光透過率を測定することによって得た。透過率測定サンプルは、各実施例で作製したものを用いた。この光透過率の測定条件については、スリットは2nmとし、走査速度は600nm/分とした。また、得られた測定結果において、波長400nm〜800nmにおける光透過率のうち最も小さい値は、最小透過率とした。
【0189】
<透過率測定サンプルの作製>
本実施例における透過率測定サンプルの作製では、透明樹脂層に用いるシリコーン樹脂および微粒子を、容積300mLのポリエチレン製容器に混合し、遊星式攪拌脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ社製)を用い、1000rpmで10分間攪拌し、脱泡して、分散液を作製した。この分散液を、石英ガラス上にブレードコーターによって塗布した後、オーブンによって150℃で1時間加熱する。このようにして、透過率測定サンプルは、各実施例について作製した。
【0190】
<透過率測定サンプルの膜厚測定>
本実施例における透過率測定サンプルの膜厚測定では、石英ガラスの所定位置の厚さを予めマイクロメーターで測定し、この測定した位置をマーキングした。ついで、この石英ガラス上に透明樹脂層の透過率測定サンプルを形成した後、マーキング部分の厚さを再びマイクロメーターで測定した。得られた厚さから、先に測定しておいた石英ガラスの厚さを差し引くことで、この透過率測定サンプルの膜厚を得た。膜厚は10mm間隔で碁盤目状に25点測定し、これらの平均値を透過率測定サンプルの膜厚とした。
【0191】
(実施例1〜6)−蛍光体の粒径による影響−
実施例1〜6では、表2に示した組成の蛍光体層を備えた蛍光体シートを作製し、上述の方法により空隙率を測定した。また、実施例1〜6の各々で得られた蛍光体シートを用いて発光体(発光装置)を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。これらの測定結果は、表3に示す。表2、3を参照してわかるように、本発明に係る蛍光体シートを用いた場合、実施例1〜6のいずれも、色再現性に優れ、高光束な発光体を得ることができた。また、表1に示す赤色蛍光体T2〜T6のD50のように、赤色蛍光体のD50が10μm以上であれば、全光束がより向上し、表1に示す赤色蛍光体T3〜T6のD10のように、赤色蛍光体のD10が5μm以上であれば、全光束保持率がより向上することがわかった。また、表1に示す赤色蛍光体T1〜T6のD10およびD50のように、赤色蛍光体のD10およびD50が大きいほど、蛍光体シートの空隙率は小さくなる傾向が見られた。
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】
【0194】
(実施例7〜13)−蛍光体の濃度による影響−
実施例7〜13では、表4に示した組成の蛍光体層を備えた蛍光体シートを作製し、上述の方法により空隙率を測定した。また、実施例7〜13の各々で得られた蛍光体シートを用いて発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。これらの測定結果は、表5に示す。なお、表4は実施例6の組成を再掲し、表5は実施例6の結果を再掲する。表4、5から、赤色蛍光体T6および緑色蛍光体等の蛍光体の濃度が高いほど、全光束保持率がより向上することがわかった。
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
(実施例14〜17)−シリコーン微粒子の効果−
実施例14〜17では、表6に示した組成の蛍光体層を備えた蛍光体シートを作製し、上述の方法により空隙率を測定した。また、実施例14〜17の各々で得られた蛍光体シートを用いて発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。これらの測定結果は、表7に示す。表6、7から、シリコーン微粒子を含有することにより、色度ばらつき(σ(Cx))はさらに改善することがわかった。
【0198】
【表6】
【0199】
【表7】
【0200】
(実施例18)−赤色蛍光体層と緑色蛍光体層の二層品−
実施例18では、シリコーン樹脂T15が50wt%であり、赤色蛍光体T6が50wt%である組成で、蛍光体シートを作製した。同様に、シリコーン樹脂T15が50wt%であり、緑色蛍光体が50wt%である組成で、蛍光体シートを作製した。これらの得られた2枚の蛍光体シートの蛍光体層側を、真空ラミネーターV130(ニッコー・マテリアルズ株式会社製)を用いて貼り合わせ、これにより、赤色蛍光体を含む蛍光体層と緑色蛍光体を含む層とが積層された蛍光体シートを作製し、上述の方法により空隙率を測定した。また、この得られた蛍光体シートを用いて発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。これらの測定結果は、表8に示す。表8から、実施例18では、色再現性の向上と高光束とを両立できるが、色度ばらつきは大きくなることがわかった。
【0201】
【表8】
【0202】
(実施例19〜25)−蛍光体層の樹脂の屈折率の影響−
実施例19〜25では、表9に示した組成の蛍光体層を備えた蛍光体シートを作製した。また、実施例19〜25の各々で作製した蛍光体シートの蛍光体層の膜厚は、上述の方法により測定した。また、実施例10の蛍光体シートについても、蛍光体層の膜厚を測定した。さらに、実施例19〜25の各々で作製した蛍光体シートを用いて発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、色再現範囲を測定した。これらの測定結果は、表10に示す。なお、表9は実施例10の組成を再掲し、表10は実施例10の測定結果を再掲する。
【0203】
表9、10を参照してわかるように、蛍光体層の樹脂の屈折率が高いほど、赤色蛍光体T6、緑色蛍光体の充填率が低くても同じ色度の発光体を得ることができた。また、この樹脂の屈折率が1.56である場合に、全光束が極大値となった。これは、蛍光体層の樹脂と空気層との屈折率差が大きくなることで、光の取り出し効率が低下したため、と考えられる。
【0204】
【表9】
【0205】
【表10】
【0206】
(実施例26〜36)−透明樹脂層の屈折率の影響について−
実施例26〜32および実施例34〜36では、実施例6で作製した蛍光体シート上に、スリットダイコーターを用いて透明樹脂層作製用樹脂液を塗布し、この透明樹脂層作製用樹脂液を130℃で30分乾燥させることで、蛍光体層上に透明樹脂層を有する蛍光体シートを作製した。実施例33では、シリコーン樹脂T15を用いて上述の方法により透明樹脂シートを作製し、蛍光体層と透明樹脂層とを貼り合わせることにより、蛍光体層上に透明樹脂層を有する蛍光体シートを作製した。実施例26〜36の各々で作製した蛍光体シートの透明樹脂層の膜厚を、上述の方法で測定した。また、実施例26〜36の各々で作製した透明樹脂層付き蛍光体シートの蛍光体層側をLEDチップ上に貼り付けることにより、発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。実施例26〜36の各々で透明樹脂層作製用樹脂液の作製に使用した樹脂の種類および実施例26〜36での測定結果は、表11に示す。
【0207】
表11から、透明樹脂層を設けることにより、全光束保持率は向上することがわかった。また、透明樹脂層に含まれる樹脂の屈折率が、蛍光体層に含まれる樹脂の屈折率以下である場合、全光束は向上することがわかった。
【0208】
【表11】
【0209】
(実施例37〜42)−微粒子の屈折率−
実施例37〜42では、表12に示した組成の透明樹脂層作製用樹脂液を作製した。つぎに、実施例10で作製した蛍光体シート上に、実施例37〜42の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を塗布し、この透明樹脂層作製用樹脂液を130℃で30分乾燥させることにより、蛍光体層上に透明樹脂層を有する蛍光体シートを作製した。
【0210】
実施例37〜42の各々で作製した蛍光体シートの透明樹脂層の膜厚は、上述の方法により測定した。つぎに、実施例37〜42の各々で作製した透明樹脂層付き蛍光体シートの蛍光体層側をLEDチップ上に貼り付けることにより、発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。また、実施例37〜42の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を用いて、厚さ100μmの透過率測定サンプルを作製し、上述の方法により、透明樹脂層の光透過率を測定した。実施例37〜42の各々における透明樹脂層の樹脂と微粒子との屈折率差、および、これらの測定結果は、表13に示す。
【0211】
表12、13を参照してわかるように、透明樹脂層における樹脂の屈折率と微粒子の屈折率との差が小さいほど、透明樹脂層の最小透過率が高く、全光束が高いという結果が得られた。また、透明樹脂層に微粒子を添加することにより、透明樹脂層の膜厚ばらつきが抑制されていることがわかった。さらに、実施例37および実施例38の結果から、良好な熱融着性を示すシリコーン樹脂T15を用いた場合、透明樹脂層の膜厚ばらつきは特に大きくなることがわかった。
【0212】
【表12】
【0213】
【表13】
【0214】
(実施例43〜47)−シリカ微粒子の添加量−
実施例43〜47では、表14に示した組成の透明樹脂層作製用樹脂液を作製した。つぎに、実施例10で作製した蛍光体シート上に、実施例43〜47の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を塗布し、この透明樹脂層作製用樹脂液を130℃で30分乾燥させることにより、蛍光体層上に透明樹脂層を有する蛍光体シートを作製した。
【0215】
実施例43〜47の各々で作製した蛍光体シートの透明樹脂層の膜厚は、上述の方法により測定した。つぎに、実施例43〜47の各々で作製した透明樹脂層付き蛍光体シートの蛍光体層側をLEDチップ上に貼り付けることにより、発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。また、実施例43〜47の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を用いて、厚さ100μmの透過率測定サンプルを作製し、上述の方法により、透明樹脂層の光透過率を測定した。実施例43〜47の各々における透明樹脂層の樹脂と微粒子との屈折率差、および、これらの測定結果は、表15に示す。なお、表14は実施例38、39の組成を再掲し、表15は実施例38、39の結果を再掲する。
【0216】
表14、15を参照して、最小透過率の観点から、シリカ微粒子T31の含有量は、30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましいことがわかった。また、透明樹脂層の膜厚ばらつきを抑制するという観点から、シリカ微粒子T31の含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましいことがわかった。
【0217】
【表14】
【0218】
【表15】
【0219】
(実施例48〜52)−アルミナ微粒子の添加量−
実施例48〜52では、表16に示した組成の透明樹脂層作製用樹脂液を作製した。つぎに、実施例10で作製した蛍光体シート上に、実施例48〜52の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を塗布し、この透明樹脂層作製用樹脂液を130℃で30分乾燥させることにより、蛍光体層上に透明樹脂層を有する蛍光体シートを作製した。
【0220】
実施例48〜52の各々で作製した蛍光体シートの透明樹脂層の膜厚は、上述の方法により測定した。つぎに、実施例48〜52の各々で作製した透明樹脂層付き蛍光体シートの蛍光体層側をLEDチップ上に貼り付けることにより、発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。また、実施例48〜52の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を用いて、厚さ100μmの透過率測定サンプルを作製し、上述の方法により、透明樹脂層の光透過率を測定した。実施例48〜52の各々における透明樹脂層の樹脂と微粒子との屈折率差、および、これらの測定結果は、表17に示す。なお、表16は実施例38、41の組成を再掲し、表17は実施例38、41の結果を再掲する。
【0221】
表16、17を参照して、最小透過率の観点から、アルミナ微粒子の含有量は、30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましいことがわかった。また、透明樹脂層の膜厚ばらつきを抑制するという観点から、アルミナ微粒子の含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましいことがわかった。
【0222】
【表16】
【0223】
【表17】
【0224】
(実施例53〜57)−シリコーン微粒子の添加量−
実施例53〜57では、表18に示した組成の透明樹脂層作製用樹脂液を作製した。つぎに、実施例10で作製した蛍光体シート上に、実施例53〜57の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を塗布し、この透明樹脂層作製用樹脂液を130℃で30分乾燥させることにより、蛍光体層上に透明樹脂層を有する蛍光体シートを作製した。
【0225】
実施例53〜57の各々で作製した蛍光体シートの透明樹脂層の膜厚は、上述の方法により測定した。つぎに、実施例53〜57の各々で作製した透明樹脂層付き蛍光体シートの蛍光体層側をLEDチップ上に貼り付けることにより、発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。また、実施例53〜57の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を用いて、厚さ100μmの透過率測定サンプルを作製し、上述の方法により、透明樹脂層の光透過率を測定した。実施例53〜57の各々における透明樹脂層の樹脂と微粒子との屈折率差、および、これらの測定結果は、表19に示す。なお、表18は実施例38、40の組成を再掲し、表19は実施例38、40の結果を再掲する。
【0226】
表18、19から、シリコーン微粒子の含有量が50重量%であっても、最小透過率は80%以上を維持できることがわかった。また、透明樹脂層の膜厚ばらつきを抑制するという観点から、シリコーン微粒子の含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましいことがわかった。
【0227】
【表18】
【0228】
【表19】
【0229】
(実施例58〜62)−微粒子の粒径−
実施例58〜62では、表20に示した組成の透明樹脂層作製用樹脂液を作製した。つぎに、実施例10で作製した蛍光体シート上に、実施例58〜62の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を塗布し、この透明樹脂層作製用樹脂液を130℃で30分乾燥させることにより、蛍光体層上に透明樹脂層を有する蛍光体シートを作製した。
【0230】
実施例58〜62の各々で作製した蛍光体シートの透明樹脂層の膜厚は、上述の方法により測定した。つぎに、実施例58〜62の各々で作製した透明樹脂層付き蛍光体シートの蛍光体層側をLEDチップ上に貼り付けることにより、発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。また、実施例58〜62の各々で作製した透明樹脂層作製用樹脂液を用いて、厚さ100μmの透過率測定サンプルを作製し、上述の方法により、透明樹脂層の光透過率を測定した。実施例58〜62の各々における透明樹脂層の樹脂と微粒子との屈折率差、および、これらの測定結果は、表21に示す。なお、表20は実施例38、39の組成を再掲し、表21は実施例38、39の結果を再掲する。表20、21から、微粒子の粒径が小さいほど、最小透過率が高く、透明樹脂層の膜厚ばらつきも抑制されることがわかった。
【0231】
【表20】
【0232】
【表21】
【0233】
(比較例)
実施例1〜62に対する比較例では、シリコーン樹脂T15が40wt%であり、黄色蛍光体(YAG系黄色蛍光体)が60wt%である組成で、蛍光体シートを作製し、上述の方法により空隙率を測定した。また、得られた蛍光体シートを用いて発光体を作製し、上述の方法により、色度、全光束、全光束保持率、色再現範囲を測定した。これらの測定結果は、表22に示す。表22から、YAG系黄色蛍光体を用いた場合、色再現範囲は70%であり、液晶ディスプレイ用バックライトとしては不向きなものであることがわかった。
【0234】
【表22】