(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、蒸気のドレンを冷却するための熱交換器において、作動媒体の予熱が行われる。一方、たとえば定格運転中においては、バイナリー発電装置に供給された蒸気はある一定温度のドレン水として排出される。ドレン水は、後段の設備において利用されたり、あるいは蒸気発生ボイラへの給水として再利用されたりする。しかしながら、起動停止時の負荷変動や蒸気流量の変動等に起因して、排出されるドレン水に未凝縮の蒸気が混入する可能性がある。蒸気がドレン水に混入すると、配管における騒音の発生や、配管の減肉が加速するといった問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、バイナリー発電装置の運転状況に関わらず、安定的にドレン水を排出することができるバイナリー発電装置およびバイナリー発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、熱源により加熱され蒸発した作動媒体を用いて発電を行うバイナリー発電装置であって、作動媒体が通る作動媒体ラインと、作動媒体ラインに設けられ、作動媒体を蒸発させるための1つ又は複数の蒸発器と、蒸発器の下流側で作動媒体ラインに接続され、蒸発器で蒸発した作動媒体を用いて発電を行う膨張発電機と、蒸発器の上流側で作動媒体ラインに設けられ、作動媒体を予熱するための1つ又は複数の予熱器と、熱源である蒸気または蒸気が凝縮された凝縮水が通る熱源ラインであって、蒸発器の第1入口に接続される蒸気供給部と、蒸発器内に設けられた第1熱交換部と、蒸発器の第1出口と予熱器の第2入口とに接続される中間部と、予熱器内に設けられた第2熱交換部と、予熱器の第2出口に接続されるドレン水排出部と、を含む熱源ラインと、熱源ラインに設けられ、熱源ラインにおける蒸気または凝縮水の状態を取得する熱源状態取得部と、熱源ラインに設けられ、蒸気の流量を調整するように構成された蒸気流量調整機構と、熱源状態取得部が取得した状態に基づいて蒸気流量調整機構を制御し、熱源ラインを通る蒸気の流量を調整するコントローラと、
を備え、熱源状態取得部は、少なくとも中間部に設けられて中間部内の流体の温度、圧力または凝縮水の液位に関するパラメータを検出するセンサであり、コントローラは、センサが検出するパラメータに基づいて、中間部内のある位置において蒸気が存在すると判断した場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。
【0007】
このバイナリー発電装置によれば、熱源状態取得部によって、熱源ラインにおける蒸気または凝縮水の状態が取得される。蒸発器および予熱器で行われる熱交換に対して、熱源である蒸気の流量が多い場合には、蒸気の凝縮が不十分になり得る。その場合、蒸気が予熱器の第2熱交換部やドレン水排出部に存在していることとなり、配管における騒音の発生や、配管の減肉が加速するといった問題が生じ得る。上記のバイナリー発電装置によれば、コントローラによって、蒸気または凝縮水の状態に基づいて蒸気の流量が調整されるので、蒸気の凝縮が不十分である場合に蒸気の流量を減少させる制御が可能である。よって、バイナリー発電装置の運転状況に関わらず、安定的にドレン水を排出することができる。
蒸発器と予熱器との間に位置する中間部で蒸気または凝縮水に関するパラメータが検出されることにより、中間部内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。中間部内のある位置において蒸気が存在すると判断された場合に、蒸気の流量が減少させられる。これにより、予熱器の第2熱交換部やドレン水排出部ではドレン水のみが存在し蒸気は存在しない状態を安定的に作りだすことができる。
【0008】
いくつかの態様において、蒸気流量調整機構は、熱源ラインのドレン水排出部に設けられる。蒸気流量調整機構が、蒸気の存在する部分、たとえば蒸気供給部等に設けられた場合、蒸気の熱量を奪ってしまう可能性がある。これに対して、ドレン水排出部では熱量が低くなっているので、ドレン水排出部に蒸気流量調整機構が設けられていると、エネルギー効率の観点においてトータルで有利である。
【0011】
いくつかの態様において、熱源状態取得部は、中間部に設けられて流体の温度を検出する第2温度センサであり、コントローラは、第2温度センサが検出する凝縮水の温度が第2温度閾値以上である場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。この場合、中間部における流体の温度に基づいて、中間部内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。
【0012】
いくつかの態様において、熱源状態取得部は、中間部およびドレン水排出部に接続されて予熱器の前後における圧力差を検出する圧力差センサであり、コントローラは、圧力差センサが検出する圧力差が圧力閾値以上である場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。この場合、中間部とドレン水排出部との間における圧力差に基づいて、中間部内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。
【0013】
いくつかの態様において、予熱器の第2入口は蒸発器の第1出口より低い位置に配置されており、熱源状態取得部は、中間部に設けられて中間部内における凝縮水の液位を検出する液位センサであり、コントローラは、液位センサが検出する凝縮水の液位が液位閾値より低い場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。この場合、中間部における凝縮水の液位に基づいて、中間部内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。
【0014】
本発明の別の態様は、熱源により加熱され蒸発した作動媒体を用いてバイナリー発電装置にて発電を行うバイナリー発電方法であって、バイナリー発電装置は、作動媒体が通る作動媒体ラインと、作動媒体ラインに設けられ、作動媒体を蒸発させるための1つ又は複数の蒸発器と、蒸発器の下流側で作動媒体ラインに接続され、蒸発器で蒸発した作動媒体を用いて発電を行う膨張発電機と、蒸発器の上流側で作動媒体ラインに設けられ、作動媒体を予熱するための1つ又は複数の予熱器と、熱源である蒸気または蒸気が凝縮された凝縮水が通り、蒸発器および予熱器において作動媒体を加熱する熱源ラインと、を備え、
熱源ラインは、蒸発器の出口と予熱器の入口とに接続される中間部を含み、熱源ラインにおける蒸気または凝縮水の状態を取得する熱源状態取得工程と、熱源ラインにおける蒸気または凝縮水の状態に基づいて熱源ラインを通る蒸気の流量を調整する蒸気流量調整工程と、
を含み、熱源状態取得工程では、少なくとも中間部に設けられたセンサによって中間部内の流体の温度、圧力または凝縮水の液位に関するパラメータを検出し、蒸気流量調整工程では、センサが検出するパラメータに基づいて、中間部内のある位置において蒸気が存在すると判断した場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。
【0015】
このバイナリー発電方法によれば、上記したバイナリー発電装置における作用と同様の作用により、バイナリー発電装置の運転状況に関わらず、安定的にドレン水を排出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のいくつかの態様によれば、バイナリー発電装置の運転状況に関わらず、安定的にドレン水を排出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1を参照して、本実施形態に係るバイナリー発電装置1について説明する。バイナリー発電装置1は、蒸気を熱源として利用して、発電を行うシステムである。バイナリー発電装置1は、たとえば工場等に設置されて、蒸気のエネルギーを利用して発電を行う。バイナリー発電装置1は、たとえばオーガニックランキンサイクル(Organic Rankine Cycle;ORC)が採用された装置である。バイナリー発電装置1では、蒸気とバイナリー発電装置1内の作動媒体との間で、熱交換が行われる。バイナリー発電装置1に用いられる作動媒体は、水よりも沸点の低い媒体であり、たとえば代替フロン等である。
【0020】
図1に示されるように、バイナリー発電装置1は、蒸発器2Aと、予熱器2Bと、膨張発電機3と、凝縮器4とを備える。バイナリー発電装置1は、これらの予熱器2B、蒸発器2A、膨張発電機3および凝縮器4を通って循環ラインを形成する第1循環ラインL2および第2循環ラインL3と、この循環ラインに設けられた作動媒体ポンプ10とを備える。本明細書において、「ライン」は、内部を流体が流れる配管もしくは管路、または、空間を意味する。また、本明細書において、「上流」または「下流」は、対象とする流体の流れの方向を基準とする。
【0021】
第1循環ラインL2および第2循環ラインL3は、作動媒体が通る作動媒体ラインである。第1循環ラインL2の上流端は作動媒体ポンプ10の吐出部に接続され、第1循環ラインL2の下流端は膨張発電機3の入口部に接続されている。第2循環ラインL3の上流端は膨張発電機3の出口部に接続され、第2循環ラインL3の下流端は作動媒体ポンプ10の吸込部に接続されている。
【0022】
蒸発器2Aおよび予熱器2Bは第1循環ラインL2に設けられている。蒸発器2Aは、蒸気と作動媒体との熱交換により、作動媒体を加熱して蒸発させる。蒸発器2Aを経た蒸気は、凝縮されて凝縮水となる。予熱器2Bは、作動媒体の流れを基準として、蒸発器2Aの上流側に設けられている。予熱器2Bは、凝縮水と作動媒体との熱交換により、凝縮水の顕熱で作動媒体を加熱(予熱)する。
【0023】
膨張発電機3は、たとえばタービン等のターボ型の膨張機と、膨張機に連結された発電機とを含んでいる。膨張発電機3は、蒸発器2Aで加熱されて蒸発した作動媒体を用いてタービンを回転させ、発電機で発電を行う。膨張発電機3には、電力変換器が接続されている。電力変換器は、たとえば、AC−DCコンバータ、系統連系コンバータ、および、絶縁トランス等の機器を含む。なお、膨張発電機3における膨張機は、ターボ型の膨張機に限られず、スクリュー式の容積型膨張機であってもよい。
【0024】
凝縮器4は、作動媒体と冷却水との熱交換により作動媒体を冷却および凝縮し、液化する。凝縮器4は第2循環ラインL3に設けられている。凝縮器4には、第2循環ラインL3と冷却水ラインL4とが通っている。冷却水ラインL4には、たとえば冷却塔等の冷却手段が設けられる。凝縮器4は、たとえば向流式の熱交換器である。凝縮器4は、並流式の熱交換器であってもよい。なお、冷却媒体は、水等の液体以外に、空気などのガスであってもよい。すなわち、凝縮器4は、空冷タイプであってもよい。
【0025】
以下、熱源である蒸気と作動媒体との熱交換に係る構成について詳細に説明する。バイナリー発電装置1は、熱源である蒸気またはその蒸気が凝縮された凝縮水が通る熱源ラインL1を備える。蒸発器2Aおよび予熱器2Bには、熱源ラインL1と第1循環ラインL2とが通っている。作動媒体を蒸発させるための蒸発器2Aは、相変換タイプの熱交換器である。蒸発器2Aは、たとえば、プレート式の熱交換器である。蒸発器2Aは、たとえば向流式の熱交換器である。蒸発器2Aは、並流式の熱交換器であってもよい。作動媒体を予熱するための予熱器2Bは、単相タイプの熱交換器である。予熱器2Bは、たとえば、プレート式の熱交換器である。予熱器2Bは、たとえば向流式の熱交換器である。予熱器2Bは、並流式の熱交換器であってもよい。
【0026】
なお、バイナリー発電装置1では、1つの蒸発器2Aと、1つの予熱器2Bが設けられているが、複数の蒸発器2Aが設けられてもよいし、複数の予熱器2Bが設けられてもよい。複数の蒸発器2Aが設けられる場合に、作動媒体の流れを基準として下流側の蒸発器2Aは、作動媒体を過熱(スーパーヒート)するための過熱器であってもよい。
【0027】
蒸発器2Aは、蒸気の入口である第1入口11と、蒸気の出口である第1出口12とを有する。蒸発器2Aは、作動媒体の入口である第2入口23と、作動媒体の出口である第2出口24とを有する。一方、予熱器2Bは、凝縮水の入口である第2入口13と、凝縮水の出口である第2出口14とを有する。予熱器2Bは、作動媒体の入口である第1入口21と、作動媒体の出口である第1出口22とを有する。
【0028】
熱源ラインL1は、蒸発器2Aの第1入口11に接続される蒸気供給部L1aと、蒸発器2A内であって第1入口11と第1出口12との間に設けられた第1熱交換部L1bとを含む。熱源ラインL1は、蒸発器2Aおよび予熱器2Bの外部に配置されて、蒸発器2Aの第1出口12と予熱器2Bの第2入口13とに接続される中間部L1cを含む。熱源ラインL1は、予熱器2B内であって第2入口13と第2出口14との間に設けられた第2熱交換部L1dと、予熱器2Bの第2出口14に接続されるドレン水排出部L1eとを含む。本明細書において、「ドレン水」は、「凝縮水」の一種である。中間部L1cおよび予熱器2B(第2熱交換部L1d)で生じる凝縮水は、予熱器2Bの下流側すなわちドレン水排出部L1eにおいてドレン水と呼ばれる。
【0029】
一方、第1循環ラインL2は、予熱器2Bの第1入口21に接続される液体供給部L2aと、予熱器2B内であって第1入口21と第1出口22との間に設けられた第1熱交換部L2bとを含む。第1循環ラインL2は、予熱器2Bおよび蒸発器2Aの外部に配置されて、予熱器2Bの第1出口22と蒸発器2Aの第2入口23とに接続される中間部L2cを含む。第1循環ラインL2は、蒸発器2A内であって第2入口23と第2出口24との間に設けられた第2熱交換部L2dと、蒸発器2Aの第2出口24に接続される気体供給部L2eとを含む。液体供給部L2aの上流端は作動媒体ポンプ10の吐出部に接続され、気体供給部L2eの下流端は膨張発電機3の入口部に接続されている。
【0030】
蒸発器2Aがプレート式の熱交換器である場合、熱源ラインL1の第1熱交換部L1bおよび第1循環ラインL2の第2熱交換部L2dは、多数の伝熱プレートで仕切られた流路であり得る。予熱器2Bがプレート式の熱交換器である場合、熱源ラインL1の第2熱交換部L1dおよび第1循環ラインL2の第1熱交換部L2bは、多数の伝熱プレートで仕切られた流路であり得る。
【0031】
蒸発器2Aが相変換タイプの熱交換であり、予熱器2Bが単相タイプの熱交換器であるので、これらには異なる設計が適用され得る。たとえば、蒸発器2A内における流路の断面積は、予熱器2B内における流路の断面積より大きくてもよい。
【0032】
また、予熱器2Bには凝縮水が流れるため、予熱器2Bは、蒸発器2Aよりも低い位置に設置され得る。たとえば、予熱器2Bの第2入口13は、蒸発器2Aの第1出口12より低い位置に配置されている。この場合、熱源ラインL1の中間部L1cは、上下方向に延びる部分を含む。なお、バイナリー発電装置1においては、予熱器2Bが蒸発器2Aとほぼ同じ高さに設けられてもよい。
【0033】
バイナリー発電装置1は、ドレン水排出部L1eに設けられた第1温度センサ(熱源状態取得部)31および第1圧力センサ32を備える。第1温度センサ31は、ドレン水の状態として、ドレン水の温度を検出する。第1圧力センサ32は、ドレン水の状態として、ドレン水の圧力を検出する。なお、第1圧力センサ32が省略されてもよい。
【0034】
バイナリー発電装置1は、熱源ラインL1を流れる上記の流量を調整するための制御弁(蒸気流量調整機構)26とコントローラ30とを備えている。制御弁26は、ドレン水排出部L1eに設けられており、その開度を調整自在な自動弁である。制御弁26は、その開度を調整することにより、熱源ラインL1を流れる蒸気の流量を調整するように構成されている。制御弁26のバルブとしての型式は特に限定されない。制御弁26は、コントローラ30によって制御されて、ドレン水の流量を変更可能なものであれば、どのようなバルブであってもよい。
【0035】
コントローラ30は、第1温度センサ31および第1圧力センサ32から出力される検出値に基づいて、制御弁26を制御し、蒸気の流量を調整する。コントローラ30は、上記した各センサと通信可能である。コントローラ30は、各センサからの出力信号を入力し、所定の処理を行い、制御弁26を制御する。コントローラ30は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアと、から構成されたコンピュータである。
【0036】
コントローラ30は、蒸気の流量調整に必要となる温度閾値を記憶している。コントローラ30は、高温側の温度閾値(第1温度閾値)T1と、低温側の温度閾値T2とを記憶していてもよい。温度閾値T1は、たとえば、ドレン水の圧力に応じた飽和温度よりも低い温度である。ドレン水排出部L1e内におけるドレン水の圧力が大気圧(1atm)である場合、温度閾値T1は100℃であってもよく、90℃であってもよい。温度閾値T2は、温度閾値T1よりも低い温度である。温度閾値T2は、温度閾値T1と等しくてもよい。ドレン水排出部L1e内におけるドレン水の圧力が大気圧以上(1atm以上)である場合、温度閾値T1は100℃より大きくてよい。
【0037】
バイナリー発電装置1は、膨張発電機3や作動媒体ポンプ10を制御する別のコントローラを備えてもよい。各ラインには、バルブ類やオリフィス等が設けられ得る。各ラインや機器類には、流量計、温度計、圧力計などの計器類が設けられ得る。別のコントローラは、計器類からの出力信号を入力し、所定の処理を行い、膨張発電機3、作動媒体ポンプ10、およびバルブ類等を制御してもよい。上記したコントローラ30がそのような機能を兼ね備えてもよい。
【0038】
以下、
図2を参照して、コントローラ30によって実行される制御処理(バイナリー発電方法)について説明する。以下に説明される処理は、バイナリー発電装置1の起動中、所定の周期をもってコントローラ30により繰り返し実行される。
【0039】
図2に示されるように、コントローラ30は、第1温度センサ31および第1圧力センサ32から出力される検出値(ドレン水の温度および圧力)を取得する(ステップS01)。このステップS1において、コントローラ30は、ドレン水の温度を含む熱源の状態を取得する(熱源状態取得工程)。取得される熱源状態としては、ドレン水の温度以外に、たとえばドレン水の圧力が挙げられる。
【0040】
続いて、コントローラ30は、ドレン水の温度が温度閾値T1より小さいか否かを判断する(ステップS02)。たとえば、温度閾値T1が100℃であって、検出されたドレン水の温度が85℃である場合、コントローラ30はドレン水の温度が温度閾値T1より小さいと判断する(ステップS02:YES)。続いて、コントローラ30は、ドレン水の温度が温度閾値T2より大きいか否かを判断する(ステップS03)。たとえば、温度閾値T2が75℃であって、検出されたドレン水の温度が85℃である場合、コントローラ30はドレン水の温度が温度閾値T2より大きいと判断し(ステップS03:YES)、処理を終了する。なお、ステップS02,S03において、コントローラ30は、第1圧力センサ32からの圧力の検出値を用いて温度の補正等を行ってもよい。
【0041】
ステップS02において、温度閾値T1が100℃であって、検出されたドレン水の温度が105℃である場合、コントローラ30はドレン水の温度が温度閾値T1以上であると判断する(ステップS02:NO)。そして、コントローラ30は、制御弁26を制御して開度を小さくし、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う(ステップS04、蒸気流量調整工程)。その後、コントローラ30は、ステップS02の判断処理に戻る。
【0042】
ステップS03において、温度閾値T2が75℃であって、検出されたドレン水の温度が70℃である場合、コントローラ30はドレン水の温度が温度閾値T2以下であると判断する(ステップS03:NO)。そして、コントローラ30は、制御弁26を制御して開度を大きくし、蒸気の流量を増大させる蒸気量増大制御を行う(ステップS05、蒸気流量調整工程)。その後、コントローラ30は、ステップS02の判断処理に戻る。
【0043】
バイナリー発電装置1およびバイナリー発電方法によれば、第1温度センサ31によって、熱源ラインL1におけるドレン水の状態が取得される。蒸発器2Aおよび予熱器2Bで行われる熱交換に対して、熱源である蒸気の流量が多い場合には、蒸気の凝縮が不十分になり得る。その場合、蒸気が予熱器2Bの第2熱交換部L1dやドレン水排出部L1eに存在していることとなり、配管における騒音の発生や、配管の減肉が加速するといった問題が生じ得る。バイナリー発電装置1によれば、コントローラ30によって、ドレン水の状態に基づいて蒸気の流量が調整されるので、蒸気の凝縮が不十分である場合に蒸気の流量を減少させる制御が行われる。よって、バイナリー発電装置1の運転状況に関わらず、予熱器2Bより下流側において蒸気とドレン水(凝縮水)の混相流となることが防止されており、安定的にドレン水を排出することができる。このように、バイナリー発電装置1では、蒸気の流量がアクティブにコントロールされる。蒸気の流量を制御することで、バイナリー発電装置1の起動停止時や、設計時の定格点と異なる運転を行う場合や、負荷変動が起こった場合等においても、ドレン水排出部L1eへの蒸気混入が防止される。さらには、不要な蒸気の消費を防止することができる。
【0044】
制御弁26はドレン水排出部L1eに設けられる。制御弁26が、蒸気の存在する部分、たとえば蒸気供給部L1a等に設けられた場合、蒸気の熱量を奪ってしまい、蒸気の温度が低下する可能性がある。これに対して、ドレン水排出部L1eでは熱量が低くなっているので、ドレン水排出部L1eに制御弁26が設けられていると、エネルギー効率の観点においてトータルで有利である。
【0045】
コントローラ30は、第1温度センサ31が検出するドレン水の温度が温度閾値T1以上である場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。この場合、第1温度センサ31が検出するドレン水の温度が高すぎる場合に、蒸気の流量が減少させられる。これにより、予熱器2Bの第2熱交換部L1dやドレン水排出部L1eではドレン水のみが存在し蒸気は存在しない状態を安定的に作りだすことができる。
【0046】
以下、第1実施形態とは異なる実施形態について説明する。ドレン水の温度を直接検出する方法以外にも、第2〜第4実施形態が提供されてもよい。第2〜第4実施形態は、いずれも、少なくとも熱源ラインL1の中間部L1cに設けられて中間部L1c内の流体の温度、圧力または凝縮水の液位に関するパラメータを検出するセンサを備える。
【0047】
図3に示される第2実施形態に係るバイナリー発電装置1Aは、第1実施形態の第1温度センサ31および第1圧力センサ32に代えて、熱源ラインL1の中間部L1cに設けられた第2温度センサ(熱源状態取得部)31Aおよび第2圧力センサ32Aを備える。第2温度センサ31Aおよび第2圧力センサ32Aは、中間部L1cにおける凝縮水の温度および圧力を検出する。
【0048】
バイナリー発電装置1Aにおいて、コントローラ30は、第2温度センサ31Aが検出する凝縮水の温度が第2温度閾値以上である場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。ここでの第2温度閾値は、蒸気飽和温度よりも多少低い温度であってよい。たとえば、第2温度閾値は、蒸気が凝縮して所定のサブクール度(過冷却度)をもった状態に相当する温度であってよい。コントローラ30は、中間部L1cにおける流体の温度に基づいて、中間部L1c内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。コントローラ30によって実行される制御処理(バイナリー発電方法)は、
図2に示される方法と同様である。
【0049】
バイナリー発電装置1Aでは、コントローラ30は、第2温度センサ31Aが検出する温度に基づいて、中間部L1c内のある位置において蒸気が存在すると判断した場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。バイナリー発電装置1Aでは、蒸発器2Aと予熱器2Bとの間に位置する中間部L1cで蒸気または凝縮水に関するパラメータが検出されることにより、中間部L1c内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。中間部内のある位置において蒸気が存在すると判断された場合に、蒸気の流量が減少させられる。これにより、予熱器2Bの第2熱交換部L1dやドレン水排出部L1eではドレン水のみが存在し蒸気は存在しない状態を安定的に作りだすことができる。言い換えれば、蒸発器2Aでは蒸気の状態が維持され、予熱器2Bではドレン水(凝縮水)の状態が維持される。
【0050】
バイナリー発電装置1Aによれば、バイナリー発電装置1と同様、安定的にドレン水を排出することができる。バイナリー発電装置1Aでは、蒸気の流量がアクティブにコントロールされる。蒸気の流量を制御することで、バイナリー発電装置1Aの起動停止時や、設計時の定格点と異なる運転を行う場合や、負荷変動が起こった場合等においても、ドレン水排出部L1eへの蒸気混入が防止される。さらには、不要な蒸気の消費を防止することができる。ドレン水排出部L1eに制御弁26が設けられているので、エネルギー効率の観点においてトータルで有利である。
【0051】
図4に示される第3実施形態に係るバイナリー発電装置1Bは、中間部L1cおよびドレン水排出部L1eに接続されて予熱器2Bの前後における圧力差を検出する圧力差センサ(熱源状態取得部)33を備える。バイナリー発電装置1Bにおいて、コントローラ30は、圧力差センサ33が検出する圧力差が圧力閾値以上である場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。予熱器2Bに蒸気(ガス)が流れると、圧力が急激に上昇すると考えられる。ここでの圧力閾値は、予熱器2Bの蒸気側の圧力損失として望ましいとされる値の2〜3倍であってよい。たとえば、圧力閾値は、数十〜100kPa程度であってよい。コントローラ30によって実行される制御処理(バイナリー発電方法)は、
図2に示される方法と同様である。コントローラ30は、中間部L1cとドレン水排出部L1eとの間における圧力差に基づいて、中間部L1c内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。バイナリー発電装置1Bによっても、バイナリー発電装置1Aと同様の作用・効果が得られる。
【0052】
図5に示される第4実施形態に係るバイナリー発電装置1Cは、中間部L1cに設けられて中間部L1c内における凝縮水の液位を検出する液位センサ(熱源状態取得部)34を備える。この場合、予熱器2Bは、蒸発器2Aよりも低い位置に設置される。予熱器2Bの第2入口13は、蒸発器2Aの第1出口12より低い位置に配置される。バイナリー発電装置1Cにおいて、コントローラ30は、液位センサ34が検出する凝縮水の液位が液位閾値より低い場合に、蒸気の流量を減少させる蒸気量減少制御を行う。液位閾値は、予熱器2Bの第2入口13よりも上であって蒸発器2Aの第1出口12よりも下の任意の位置に設定されてよい。コントローラ30によって実行される制御処理(バイナリー発電方法)は、
図2に示される方法と同様である。コントローラ30は、中間部L1cにおける凝縮水の液位に基づいて、中間部L1c内のある位置において蒸気が存在するか否か(すなわち蒸気の凝縮が完了しているか否か)を判断することができる。バイナリー発電装置1Cによっても、バイナリー発電装置1Aと同様の作用・効果が得られる。
【0053】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。熱源ラインL1の中間部L1cにおいて凝縮水が所定のサブクール度をもつことを検出する他の手法が採用されてもよい。第1〜第4実施形態の熱源状態取得部が適宜組み合わされてもよい。蒸気流量調整機構としてバルブ機構以外の機構が採用されてもよい。コントローラ30は、蒸気の流量を増大させる蒸気量増大制御を行わなくてもよい。すなわち、バイナリー発電方法における蒸気流量調整工程は、蒸気量一定制御と蒸気量減少制御のみを含み、蒸気量増大制御を含まなくてもよい。