特許第6852497号(P6852497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852497
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ガス検知材およびガス検知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/77 20060101AFI20210322BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20210322BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01N21/77 A
   G01N31/00 V
   G01N21/78 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-58319(P2017-58319)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-159681(P2018-159681A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴之
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−045189(JP,A)
【文献】 特開2016−223945(JP,A)
【文献】 特開2017−181058(JP,A)
【文献】 特開2009−244094(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00928966(EP,A1)
【文献】 Haj-Hussein,Spectrophotometric determination of cyanide by flow-injection analysis,Analytical Letters,1988年,Vol.21 No.7,Page.1285-1296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/77
G01N 21/78
G01N 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される金属錯体を用いたことを特徴とする、ピラジン類化合物を検出するためのガス検知材。
M1x [Ni1−yM2y(CN)4]・zH2O ・・・(1)
(M1= Fe、Co、0.9≦x≦1.1、M2=Pd、Pt、0≦y<0.15、2.2≦z<4.4)
【請求項2】
Cu−Kαを線源とする粉末X線回折測定によって得られる回折パターンにおいて、10°< 2 θ <45 °の範囲に少なくとも2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示す前記金属錯体を用いたことを特徴とする請求項1記載のガス検知材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス検知材を用いることを特徴とするガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易的に感度良くピラジン類化合物を検出することが可能なガス検知材およびガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
ピラジン類化合物は食品の加熱調理の際にメイラード反応により生成し、特に低級アルキルピラジンはローストのような香気に重要な寄与していることが知られている。また、メトキシピラジンなどはある種のワインに含まれていることが知られている。したがって、食品やワインなどの製造においては、その呈味性、香気性を的確に評価し、その結果に基づいて各工程を管理することが重要である。従来、製造工程における味やにおいに対する品質管理は、人間の感覚に頼る官能試験を中心にし、糖度や透視度等を測定するといった評価法で行われている。しかし、近年品質については厳しい要求がなされるようになっており、従来のような評価法では十分な品質管理を行うことが困難であるため、ピラジン類化合物などの香気成分を評価することにより、各工程の品質を管理することが試みられている。
【0003】
ピラジン類化合物の検出方法としては、特許文献1に記載されている半導体センサを用いる方法や特許文献2に記載されているガスクロマトグラフ質量分析法を用いる方法があるが、大型分析設備やガスの抽出・捕集作業などが必要となり、簡易的に測定することが出来ないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−34592号公報
【特許文献2】特開2016−198092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、従来よりも簡易的に感度良くピラジン類化合物を検出することが可能なガス検知材およびガス検知器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、一般式(1)で表される金属錯体を用いることにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明に至った。
M1 [Ni1−yM2(CN)]・zHO ・・・(1)
(M1= Fe、Co、0.9≦x≦1.1、M2=Pd、Pt、0≦y<0.15、2.2≦z<4.4)
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
(1)一般式(1)で表される金属錯体を用いたことを特徴とするガス検知材。
(2)Cu−Kαを線源とする粉末X線回折測定によって得られる回折パターンにおいて、10°< 2 θ <45 °の範囲に少なくとも2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示す金属錯体を用いたことを特徴とする請求項1記載のガス検知材。
(3)(1)または(2)に記載のガス検知材を用いることを特徴とするガス検知器。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来よりも簡易的に感度良くピラジン類化合物を検出することが可能なガス検知材およびガス検知器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターン図。
図2】実施例7で得た金属錯体の粉末X線回折パターン図。
図3】比較例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターン図。
図4】比較例2で得た金属錯体の粉末X線回折パターン図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。
【0011】
本実施形態の金属錯体は、式(1)で表される。
M1 [Ni1−yM2(CN)]・zHO ・・・(1)
(M1= Fe、Co、0.9≦x≦1.1、M2=Pd、Pt、0≦y<0.15、2.2≦z<4.4)
【0012】
本実施形態の金属錯体は、鉄イオン又はコバルトイオンもしくはその両方に、テトラシアノニッケル酸イオンと水が規則的に並んだ構造であることにより、容易に水とピラジン類化合物が置換することが可能となり感度が良くなると考えられる。また、ニッケルの一部がパラジウムおよび白金の少なくとも1つで置換されていてもよい。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の金属錯体はCu−Kαを線源とする粉末X線回折測定によって得られる回折パターンにおいて、10°<2θ<45 °の範囲に少なくとも2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有している。2θ=19.3〜21°の回折ピークは、ピラジン類化合物の吸着に関して影響の大きい結晶面であると推察され、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示す場合、より容易に水とピラジン類化合物が置換することが可能となりより感度が良くなると考えられる。
【0014】
粉末X線回折測定については以下の通り行う。測定試料はサンプルホルダーの凹部に金属錯体粒子をふりかけ投入し、余分な試料を取り除くことでサンプルホルダー表面と試料測定面との高さを合わることにより作製する。測定試料を株式会社リガク社製「UltimaIV」X線回折装置に設置し、以下の測定条件にて、2θ=10°から45°の範囲を測定し、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°の回折ピークの有無と最も強い積分強度を示す回折ピークを求める。
測定条件
Filter: Ni
ターゲット:Cu Kα 1.54060Å
X線出力設定:45kV−40mA
スリット:発散1/2°、散乱1/2°、受光0.15mm
走査速度:4°/min
サンプリング幅:0.02°
【0015】
本実施形態の金属錯体の組成については、ICP発光分光分析、炭素硫黄分析および酸素窒素水素分析などを用いることにより確認することができる。
【0016】
本実施形態の金属錯体に含まれるHOの量については、昇温させた際に発生するガスの質量数をダブルショットパイロライザーを備えたガスクロマトグラフ質量分析計などを用いて確認し、さらに熱重量分析を用いて重量減少量を確認することにより、求めることができる。
【0017】
本実施形態の金属錯体の製造方法は、第一に二価の鉄塩やコバルト塩と、酸化防止剤と、テトラシアノニッケル酸塩、テトラシアノパラジウム酸塩およびテトラシアノ白金酸塩とを適当な溶媒中で反応させ、析出した沈殿物を濾過し、水やエタノールなどによる洗浄後、オーブン等により乾燥することで金属錯体を得ることができる。
【0018】
二価の鉄塩としては、硫酸第二鉄・七水和物、硫酸アンモニウム鉄・六水和物などを用いることができる。二価のコバルト塩としては、硫酸コバルト・七水和物、硫酸アンモニウムコバルト・六水和物などを用いることができる。酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸などを用いることができる。テトラシアノニッケル酸塩としては、テトラシアノニッケル酸カリウム・水和物などを用いることができる。テトラシアノパラジウム酸塩としては、テトラシアノパラジウム酸カリウム・水和物などを用いることができる。テトラシアノ白金酸塩としては、テトラシアノ白金酸カリウム・水和物などを用いることができる。
【0019】
溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールおよび水などや、またはこれらの混合溶媒などを使用することができる。
【0020】
溶媒中での反応時の温度は、オイルバス等を用いて反応容器を加熱することにより任意に調整することができる。
【0021】
本実施形態の金属錯体は、ピラジン類化合物の揮発成分を吸着して乳白色から橙色に変色する特徴を利用して、ピラジン類化合物の揮発成分に対するガス検知材として用いることができる。
【0022】
本実施形態のガス検知器は、バインダーなどを用いてガス検知材粉末を固めた成型体状、ガス検知材粉末を支持体に担持させたシート状、ガス検知材粉末をガラス管に封入した検知管状などが考えられるがこれらに限定されない。
【0023】
本実施形態のガス検知器は、ガス検知材のピラジン類化合物の揮発成分を吸着して乳白色から橙色に変色する特徴を利用して、ピラジン類化合物の揮発成分に対するガス検知器として用いることができる。
【0024】
ガス検知感度に関しては、ガス検知材粉末100mgもしくはガス検知器とピラジン類化合物100mgを一緒にシャーレに入れ、蓋をした後、25℃に設定した恒温層の中に設置し、乳白色の金属錯体粉末が色見本の橙色(マンセル表色系によるマンセル値5YR6.5/13)に変わるまでの時間を確認することで評価することができる。
【0025】
本実施形態のガス検知材およびガス検知器を用いることにより、簡易的に感度良くピラジン類化合物を検出することができる。
【実施例】
【0026】
以下本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
(金属錯体の製造)
硫酸アンモニウム鉄(II)・六水和物0.48g、L−アスコルビン酸0.2gおよびテトラシアノニッケル(II)酸カリウム・一水和物0.30gを三角フラスコに取り、蒸留水およびエタノールの混合溶媒480mLを加えて、25℃のオイルバス中で撹拌した。沈殿した粒子を濾過により回収し、水およびエタノールで洗浄した。ろ紙上の粒子を回収し、50℃のオーブンで1時間乾燥させることにより、乳白色の金属錯体が得られた。
【0028】
得られた金属錯体について、前述の方法により組成分析を行った。また、発生ガス分析により200℃まで昇温させた時のガス成分を確認したところ、ごくわずかにエタノールが検出された以外はHOが検出され、さらに熱重量分析による200℃までの重量減少量より、金属錯体に含まれるHO量を求めた。得られた金属錯体の組成はFe[Ni(CN)]・3.1HOであった。
【0029】
得られた金属錯体について、前述の方法により測定した粉末X線回折パターン(図1)を確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0030】
(ガス検知感度の評価)
実施例1の金属錯体について、前述の方法によりピラジンのガス検知感度の評価を行った結果、約7分後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例1の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
【0031】
(ガス検知器の作製)
実施例1の金属錯体粉末50mgを純水50mlに分散させた金属錯体分散液に、支持体としてロールペーパーを浸し、2分間静置後分散液から取り出し、50℃のオーブンで1時間乾燥させることにより、ガス検知器を作製した。
【0032】
(ガス検知感度の評価)
作製したガス検知器について、前述の方法によりピラジンのガス検知感度の評価を行った結果、約6分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、ピラジンを感度良く検知することが可能であることが分かった。
【0033】
(その他のピラジン類化合物の検知)
ピラジンの替わりに、メチルピラジン、エチルピラジン、フルオロピラジンおよびシアノピリジンについて前述の方法で色調変化を確認したところ、橙色に変化することを確認した。またピラジンの替わりに、シアノピラジンおよびビピリジルについて前述の方法で色調変化を確認したところ、赤色に変化することを確認した。さらに、ピラジンの替わりに、トリアジンについて前述の方法で色調変化を確認したところ、黄色に変化することを確認した。
<実施例2>
【0034】
回収したろ紙上の粒子を45℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0035】
(ガス検知感度の評価)
実施例2で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例2の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例3>
【0036】
回収したろ紙上の粒子を50℃のオーブンで3時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0037】
(ガス検知感度の評価)
実施例3で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例3の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例4>
【0038】
回収したろ紙上の粒子を55℃のオーブンで3時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0039】
(ガス検知感度の評価)
実施例4で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例4の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例5>
【0040】
硫酸アンモニウム鉄・六水和物0.45g投入したこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0041】
(ガス検知感度の評価)
実施例5で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例5の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例6>
【0042】
硫酸アンモニウム鉄・六水和物0.51g投入したこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0043】
(ガス検知感度の評価)
実施例6で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例6の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例7>
【0044】
回収したろ紙上の粒子を35℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ(図2)、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークは5番目に強い積分強度を示した。
【0045】
(ガス検知感度の評価)
実施例7で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約9分50秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例7の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<比較例1>
【0046】
三角フラスコに蒸留水およびエタノールの混合溶媒160mLを加えて、25℃のオイルバス中で撹拌し、回収したろ紙上の粒子を35℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めたところFe[Ni(CN)]・6HOであった。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ(図3)、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークは見られず、回折パターンのデータベースより(Fe(HO)(Ni(CN))・(HO)と一致することが分かった。
【0047】
(ガス検知感度の評価)
比較例1で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
<比較例2>
【0048】
75℃のオイルバス中で撹拌し、回収したろ紙上の粒子を35℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めたところFe0.667[Ni(CN)]・3HOであった。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ(図4)、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークは見られず、回折パターンのデータベースよりNi(Fe(CN)0.667 ・(HO)と一致することが分かった。
【0049】
(ガス検知感度の評価)
比較例2で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
<比較例3>
【0050】
回収したろ紙上の粒子を30℃のオーブンで10分間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。
【0051】
(ガス検知感度の評価)
比較例3で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
<比較例4>
【0052】
回収したろ紙上の粒子を80℃のオーブンで1時間間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。
【0053】
(ガス検知感度の評価)
比較例4で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
【0054】
【表1】
<実施例8〜13および比較例5〜7>
【0055】
表2記載の組成となるように硫酸アンモニウム鉄・六水和物、硫酸アンモニウムコバルト・六水和物、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム・一水和物、テトラシアノパラジウム酸カリウム・水和物およびテトラシアノ白金酸カリウム・水和物を秤量した以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。
【0056】
(ガス検知感度の評価)
実施例8〜13および比較例5〜7で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価を行ったところ、実施例8〜13の金属錯体では10分以内に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、ピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。比較例5〜7で作製した金属錯体では約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
【0057】
【表2】
【0058】
以上の結果から、実施例のガス検知材および実施例の金属錯体を用いて作製したガス検知器は簡易的に感度良くピラジン類化合物を検出することが可能であることが分かった。
図1
図2
図3
図4