【実施例】
【0026】
以下本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
(金属錯体の製造)
硫酸アンモニウム鉄(II)・六水和物0.48g、L−アスコルビン酸0.2gおよびテトラシアノニッケル(II)酸カリウム・一水和物0.30gを三角フラスコに取り、蒸留水およびエタノールの混合溶媒480mLを加えて、25℃のオイルバス中で撹拌した。沈殿した粒子を濾過により回収し、水およびエタノールで洗浄した。ろ紙上の粒子を回収し、50℃のオーブンで1時間乾燥させることにより、乳白色の金属錯体が得られた。
【0028】
得られた金属錯体について、前述の方法により組成分析を行った。また、発生ガス分析により200℃まで昇温させた時のガス成分を確認したところ、ごくわずかにエタノールが検出された以外はH
2Oが検出され、さらに熱重量分析による200℃までの重量減少量より、金属錯体に含まれるH
2O量を求めた。得られた金属錯体の組成はFe[Ni(CN)
4]・3.1H
2Oであった。
【0029】
得られた金属錯体について、前述の方法により測定した粉末X線回折パターン(
図1)を確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0030】
(ガス検知感度の評価)
実施例1の金属錯体について、前述の方法によりピラジンのガス検知感度の評価を行った結果、約7分後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例1の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
【0031】
(ガス検知器の作製)
実施例1の金属錯体粉末50mgを純水50mlに分散させた金属錯体分散液に、支持体としてロールペーパーを浸し、2分間静置後分散液から取り出し、50℃のオーブンで1時間乾燥させることにより、ガス検知器を作製した。
【0032】
(ガス検知感度の評価)
作製したガス検知器について、前述の方法によりピラジンのガス検知感度の評価を行った結果、約6分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、ピラジンを感度良く検知することが可能であることが分かった。
【0033】
(その他のピラジン類化合物の検知)
ピラジンの替わりに、メチルピラジン、エチルピラジン、フルオロピラジンおよびシアノピリジンについて前述の方法で色調変化を確認したところ、橙色に変化することを確認した。またピラジンの替わりに、シアノピラジンおよびビピリジルについて前述の方法で色調変化を確認したところ、赤色に変化することを確認した。さらに、ピラジンの替わりに、トリアジンについて前述の方法で色調変化を確認したところ、黄色に変化することを確認した。
<実施例2>
【0034】
回収したろ紙上の粒子を45℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0035】
(ガス検知感度の評価)
実施例2で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例2の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例3>
【0036】
回収したろ紙上の粒子を50℃のオーブンで3時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0037】
(ガス検知感度の評価)
実施例3で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例3の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例4>
【0038】
回収したろ紙上の粒子を55℃のオーブンで3時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0039】
(ガス検知感度の評価)
実施例4で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例4の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例5>
【0040】
硫酸アンモニウム鉄・六水和物0.45g投入したこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0041】
(ガス検知感度の評価)
実施例5で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例5の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例6>
【0042】
硫酸アンモニウム鉄・六水和物0.51g投入したこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークが最も強い積分強度を示した。
【0043】
(ガス検知感度の評価)
実施例6で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約7分30秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例6の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<実施例7>
【0044】
回収したろ紙上の粒子を35℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ(
図2)、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークを有し、2θ=19.3〜21°の回折ピークは5番目に強い積分強度を示した。
【0045】
(ガス検知感度の評価)
実施例7で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約9分50秒後に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、実施例7の金属錯体はピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。
<比較例1>
【0046】
三角フラスコに蒸留水およびエタノールの混合溶媒160mLを加えて、25℃のオイルバス中で撹拌し、回収したろ紙上の粒子を35℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めたところFe[Ni(CN)
4]・6H
2Oであった。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ(
図3)、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークは見られず、回折パターンのデータベースより(Fe(H
2O)
2(Ni(CN)
4)・(H
2O)
4と一致することが分かった。
【0047】
(ガス検知感度の評価)
比較例1で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
<比較例2>
【0048】
75℃のオイルバス中で撹拌し、回収したろ紙上の粒子を35℃のオーブンで1時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めたところFe
0.667[Ni(CN)
4]・3H
2Oであった。実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを確認したところ(
図4)、2θ=19.3〜21°および30.2〜31.2°に回折ピークは見られず、回折パターンのデータベースよりNi(Fe(CN)
6)
0.667 ・(H
2O)
3と一致することが分かった。
【0049】
(ガス検知感度の評価)
比較例2で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
<比較例3>
【0050】
回収したろ紙上の粒子を30℃のオーブンで10分間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。
【0051】
(ガス検知感度の評価)
比較例3で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
<比較例4>
【0052】
回収したろ紙上の粒子を80℃のオーブンで1時間間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。実施例1と同様にして金属錯体の組成を求めた結果を表1に示す。
【0053】
(ガス検知感度の評価)
比較例4で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価をおこなったところ、約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
【0054】
【表1】
<実施例8〜13および比較例5〜7>
【0055】
表2記載の組成となるように硫酸アンモニウム鉄・六水和物、硫酸アンモニウムコバルト・六水和物、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム・一水和物、テトラシアノパラジウム酸カリウム・水和物およびテトラシアノ白金酸カリウム・水和物を秤量した以外は、実施例1と同様にして金属錯体を作製した。
【0056】
(ガス検知感度の評価)
実施例8〜13および比較例5〜7で作製した金属錯体を用い、実施例1と同様にしてガス検知感度の評価を行ったところ、実施例8〜13の金属錯体では10分以内に橙色の色見本とほぼ同等の色となり、ピラジンを感度良く検知するガス検知材として利用することが可能であることが分かった。比較例5〜7で作製した金属錯体では約10分経過後に明瞭な色変化は確認できなかった。
【0057】
【表2】
【0058】
以上の結果から、実施例のガス検知材および実施例の金属錯体を用いて作製したガス検知器は簡易的に感度良くピラジン類化合物を検出することが可能であることが分かった。