(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー粒子が、コアと前記コアの少なくとも一部を覆うシェルとを有するコアシェル型のポリマー粒子である、請求項1に記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
前記樹脂系中空体が、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデンおよび熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
前記ポリマー粒子の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.20〜5.00質量部である、請求項1〜7のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本願明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
本発明の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(以下、「本発明の組成物」とも略す。)は、ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物(以下、「活性水素基含有化合物」とも略す。)を含有する硬化剤と、を有する。
また、上記硬化剤は、活性水素基含有化合物以外に、更に、可塑剤、溶剤、樹脂系中空体およびポリマー粒子を含有する。
また、上記樹脂系中空体の比重は、0.05より大きく0.35未満である。
また、上記ポリマー粒子は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを重合してなるポリマーを含有する。
【0014】
本発明においては、上述した通り、樹脂系中空体とともに、特定のポリマー材料を含有するポリマー粒子を配合することにより、長距離の輸送を行った場合でも樹脂系中空体の浮き及び他の材料の沈降を抑制することができ、かつ、作業時の塗布性も良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、およそ以下の通りと推測される。
すなわち、(メタ)アクリル酸エステルを重合してなるポリマーを含有するポリマー粒子を用いることにより、ポリマー粒子が可塑剤に対して膨潤しやすくなり、その結果、
図1の模式図に示すように、硬化剤10において、溶剤1と、溶剤以外の成分2(例えば、活性水素基含有化合物、可塑剤、樹脂系中空体、ポリマー粒子など)との相分離が促進されたため、硬化剤の粘性が低下しつつ流動性が増大したことに要因があると考えられる。
以下に、本発明の組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0015】
〔主剤〕
本発明の組成物の主剤は、ウレタンプレポリマーを含有する。
【0016】
<ウレタンプレポリマー>
本発明の組成物の主剤に含有するウレタンプレポリマーは、分子内に複数のイソシアネート基を分子末端に含有するポリマーである。
このようなウレタンプレポリマーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、ヒドロキシ基(OH基)に対してイソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
ウレタンプレポリマーは、0.5〜5質量%のNCO基を含有することができる。
【0017】
(ポリオール化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオールが挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレンエーテルジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリプロピレンエーテルトリオールのようなポリプロピレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0019】
このようなポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、このウレタンプレポリマーを含む主剤の取り扱いが容易となり、この主剤を用いて得られる本発明の組成物からなるウレタン塗膜防水材の引張物性が適当となるという観点から、ポリプロピレンエーテルポリオールが好ましく、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールがより好ましい。
【0020】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物に使用されるイソシアネートとしては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0021】
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、得られるウレタンプレポリマーが低粘度となり、このウレタンプレポリマーを含む主剤の取り扱いが容易となるという観点から、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0022】
本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との組み合わせとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種と、ポリプロピレンエーテルジオールおよび/またはポリプロピレンエーテルトリオールとの組み合わせが挙げられる。
【0023】
また、本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との量は、NCO基/OH基(当量比)が1.2〜2.5となる量であることが好ましく、1.5〜2.2となる量であることがより好ましい。当量比がこのような範囲である場合、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、また、このウレタンプレポリマーを含有する主剤の貯蔵安定性が良好となる。
【0024】
更に、本発明においては、ウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、上述した当量比のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50〜130℃で加熱し撹拌することによって製造することができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0025】
ウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
〔硬化剤〕
本発明の組成物の硬化剤は、1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物(活性水素基含有化合物)、可塑剤、溶剤、樹脂系中空体およびポリマー粒子を含有する。
【0027】
<活性水素基含有化合物>
本発明の組成物の硬化剤に含有する活性水素基含有化合物は、1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物であり、上述した主剤に含有する上記ウレタンプレポリマーを硬化させる成分(狭義の硬化剤成分)である。
このような活性水素基含有化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のヒドロキシ基(水酸基)を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物などが好適に挙げられる。
【0028】
(ポリオール化合物)
硬化剤に用いられるポリオール化合物は、ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物と同様、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
【0029】
本発明においては、硬化剤に用いられるポリオールは、2官能ポリオール(1分子中に水酸基を2個有する化合物)および/または3官能ポリオールで(1分子中に水酸基を3個有する化合物)あることが好ましく、2官能ポリオールおよび3官能ポリオールを併用することがより好ましい。
【0030】
2官能ポリオールは、ポリオキシアルキレンジオール、および/または、ひまし油系ジオールであることが好ましく、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレンジオール、および、ひまし油系ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0031】
3官能ポリオールは、ポリオキシアルキレントリオールであることが好ましく、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオールであることがより好ましい。
【0032】
2官能ポリオールの重量平均分子量は、5,000以下であることが好ましく、2,000〜4,000であることがより好ましい。
3官能ポリオールの重量平均分子量は、3,000以上が好ましく、粘度や強度、接着性に優れるという観点から、5,000〜10,000がより好ましい。
本発明において、ポリオールの重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
【0033】
(ポリアミン化合物)
硬化剤に用いられるポリアミン化合物としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD、デュポン・ジャパン社製)などの脂肪族ポリアミン;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミンなどの芳香族ポリアミン;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、芳香族ポリアミンであることが好ましく、MOCA、メチルチオトルエンジアミンであることがより好ましい。
【0034】
本発明においては、硬化剤中の活性水素基含有化合物の含有量は、主剤中のウレタンプレポリマーのイソシアネート基と硬化剤中の活性水素基含有化合物の活性水素基との当量(NCO/活性水素)が1.00〜1.20となる量であることが好ましく、1.05〜1.15となる量であることがより好ましい。
【0035】
<可塑剤>
本発明の組成物の硬化剤に含有する可塑剤は、特に限定されず、従来公知の可塑剤を用いることができる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリス(クロロエチル)フォスフェート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0036】
これらのうち、フタル酸系の可塑剤であることが好ましい。
また、比重が1.0未満の可塑剤であることが好ましく、比重が0.95以上1.00未満の可塑剤であることがより好ましい。
【0037】
本発明においては、硬化剤中の可塑剤の含有量は、主剤のウレタンプレポリマー100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、7.5〜15.0質量部であることがより好ましい。
【0038】
<溶剤>
本発明の組成物の硬化剤に含有する溶剤は、特に限定されず、従来公知の溶剤を用いることができる。
溶剤としては、例えば、アセテート系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、イソパラフィン系溶剤等が挙げられ、中でも、イソパラフィン系溶剤を用いることが好ましい。
ここで、イソパラフィン系溶剤とは、1分子内にイソパラフィンに由来する構造を含む溶媒であり、具体的には、例えば、IPソルベント(登録商標、出光興産社製)、シェルゾール(登録商標、シェル社製)、アイソパー(登録商標、エクソンモービル社製)が挙げられる。
【0039】
本発明においては、硬化剤中の溶剤の含有量は、主剤100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、27質量部以下であることがより好ましく、15.0〜20.0質量部であることが更に好ましい。
【0040】
<樹脂系中空体>
本発明の組成物の硬化剤に含有する樹脂系中空体は、中空球体の外殻が樹脂によって構成された、比重が0.05より大きく0.35未満のものである。
【0041】
樹脂系中空体の外殻の材料としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性樹脂などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン重合体などが挙げられ、中でも、アクリロニトリル共重合体が好ましく、より具体的には、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの共重合体、アクリロニトリルとビニル系モノマー(例えば、ブタジエン、スチレンなど)との共重合体などが挙げられる。
【0042】
樹脂系中空体の平均粒子径は、20μm以上であることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。
また、樹脂系中空体の比重は、0.09〜0.15であることが好ましい。
このような樹脂系中空体の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
【0043】
本発明においては、硬化剤中の樹脂系中空体の含有量は、ウレタン塗膜防水材の耐久性、軽量化に優れるという観点から、硬化剤の総質量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。
【0044】
<ポリマー粒子>
本発明の組成物の硬化剤に含有するポリマー粒子は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを重合してなるポリマーを含有するポリマー粒子である。
ここで、本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」のいずれかを表す表現であり、また、「重合してなる」とは、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合だけでなく、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合も含む表現である。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステル;が挙げられる。
一方、他のモノマーとしては、具体的には、例えば、イソプレン、ブタジエンなどの脂肪族ビニル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;等のビニル重合性モノマーが挙げられる。
【0046】
本発明においては、レベリング性が向上し、塗布性がより良好となる理由から、上記ポリマー粒子が、コアとコアの少なくとも一部を覆うシェルとを有するコアシェル型のポリマー粒子であることが好ましい。
【0047】
コアシェル型のポリマー粒子としては、コア部分として重合性モノマーを重合させることにより製造し、その表面に異種ポリマーをグラフト重合したシェル層を有するものが挙げられる。
【0048】
グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
【0049】
コアシェル型ポリマー粒子のシェルを構成する重合体が、極性基を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。
ここで、極性基としては、具体的には、例えば、ハロゲン類、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシ基、エステル基、ニトリル基等が挙げられる。
【0050】
シェルを構成する重合体の単量体(モノマー)成分としては、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸化合物;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等);などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、本発明においては、シェルが、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを重合してなるポリマー、すなわち、ポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有していることが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸メチルを含有していることがより好ましい。
【0051】
コアを構成する重合体の単量体成分としては、具体的には、例えば、上述したシェルを構成する重合体の単量体(モノマー)と同様の成分の他、イソプレン、ブタジエンなどの脂肪族ビニル;エチレン;ブテン、オクテンなどのα−オレフィン;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、本発明においては、シェルが、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含有していることが好ましく、スチレンおよびブタジエンを重合してなるポリマー、すなわち、スチレン−ブタジエン共重合体を含有していることがより好ましい。
【0052】
コアシェル型のポリマー粒子としては、市販品を用いることができる。
市販品としては、具体的には、例えば、チェイルインダストリーズ社製の「CHT」;UMGABS社製の「B602」;ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイドEXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」;三菱レイヨン社製の「メタブレンC−223A」、「メタブレンE−901」;アイカ工業社製の「スタフィロイドIM−601」「ゼフィアックF351」;カネカ社製の「カネエースM−511」、「カネエースM−600」;等が挙げられる。
【0053】
本発明においては、上記ポリマー粒子の1次粒子の平均粒径が50〜600nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、100〜500nmであることが更に好ましい。
ここで、ポリマー粒子の1次粒子の平均粒径は、ゼータ電位粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社)を用いて測定して得た値を意味するものとする。
【0054】
また、本発明においては、硬化剤中のポリマー粒子の含有量は、硬化剤の0.2〜5質量%であることが好ましく、0.50〜2.00質量%であることがより好ましい。
また、硬化剤中のポリマー粒子の含有量は、樹脂系中空体の浮き及び他の材料の沈降をより抑制し、塗布性(特に、セルフレベリング性)がより良好となる理由から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.20〜5.00質量部であることが好ましく、0.50〜2.00質量部であることがより好ましい。
【0055】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、補強剤、触媒(硬化触媒)、分散剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料などの添加剤を含有することができる。
添加剤は、主剤および/または硬化剤に添加することができる。
添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0056】
補強剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、生石灰、カオリン、ゼオライト、けいそう土、微粉末シリカ、疎水性シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。
補強剤の量は、ウレタン塗膜防水材の破断伸びに優れ、破断強度を補うという観点から、主剤100質量部に対して、40〜160質量部であるのが好ましく、50〜150質量部であるのがより好ましい。
【0057】
硬化触媒としては、例えば、有機金属系触媒が挙げられる。有機金属系触媒としては、例えば、オクテン酸鉛、オクチル酸鉛のような鉛系触媒;オクチル酸亜鉛のような有機亜鉛化合物;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレートのような有機スズ化合物;オクチル酸カルシウム、ネオデカン酸カルシウムのような有機カルシウム化合物;有機バリウム化合物;有機ビスマス化合物等が挙げられる。
硬化触媒の使用量は、硬化剤全体の質量に対して0.2〜5質量%であることが好ましい。
なお、硬化触媒は硬化剤中に配合してもよく、主剤と硬化剤の混合時に添加してもよい。
【0058】
本発明においては、上記主剤と上記硬化剤との混合物の比重が、1.00〜1.20であることが好ましく、1.00〜1.04であることがより好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、主剤と硬化剤とを十分に混合して使用することができる。
本発明の組成物は、例えば、0〜80℃程度で硬化させることができる。
本発明の組成物は、例えば、コンクリート、モルタル、金属屋根、トップコートが塗布されたウレタン塗膜上等、建築物の新築、改修用途として使用することができる。
本発明の組成物を施工する前に、プライマーを使用することができる。
本発明の組成物をウレタン塗膜防水材の下地層及び/又はトップコート層用として使用することができる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0061】
〔ウレタンプレポリマーの調製〕
数平均分子量3000のポリプロピレンエーテルトリオール24g(T3000、旭硝子社製)と、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール35g(D2000、旭硝子社製)と数平均分子量1000のポリプロピレンエーテルジオール15g(D1000、旭硝子社製)を反応容器に入れて、粘度調節のために可塑剤としてフタル酸ジイソノニル12.5g(DINP、ジェイ・プラス社製)を加え、110℃に加熱し、6時間脱水処理した。次いで、ここにトリレンジイソシアネート(コスモネートT80、三井武田ケミカル社製)をNCO基/OH基の当量比が1.90となるように加え、これを80℃に加熱し、窒素雰囲気下で12時間混合、かくはんし、ウレタンプレポリマーを調製した。得られたウレタンプレポリマーのNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー全量中、3.3質量%であった。
【0062】
〔実施例1〜5および比較例1〜6〕
下記表1に示す成分を同表に示す量比(質量部)で使用し、これらを十分に混合して硬化剤を調製した。
次に、先に調製したウレタンプレポリマー100質量部と、調製した硬化剤(全量)と十分に混合して、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を調製した。
【0063】
〔振動試験〕
調製した硬化剤を缶に封入し、長距離の輸送を想定した振動試験を以下の条件で行った後、缶の中身(表層と缶底)を確認し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
<振動試験条件>
・40℃環境下
・55時間
・振動シェーカー:80rpm
<表層>
○:樹脂系中空体の浮きが見られない
△:樹脂系中空体の一部に浮きが見られる
×:樹脂系中空体の全部に浮きが見られる
<缶底>
○:ケーキングなし
△:缶底の一部にケーキングが確認できる
×:缶底の全面にケーキングが確認できる
【0064】
〔塗布性〕
(1)セルフレベリング性
スレート板に対して、調製した2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を10g滴下し、滴下後の広がり(直径:mm)を確認した。結果を下記表1に示す。
(2)ローラー塗布性
スレート板に対して、調製した2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を厚さが1.0mmとなるように塗布した後、ローラーを用いて塗膜の表面を平坦化した。
平坦化の際に、塗膜の表面に凹凸がなく、平らな状態となるものを「○」と評価し、塗膜の表面にローラーに起因した斑状の凹凸が見られるものを「×」と評価した。結果を下記表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示されている各成分は、以下のとおりである。
・ポリプロピレングリコール1:ポリプロピレンエーテルジオール(EXCENOL 4020、Mw:4000、旭硝子社製)
・ポリプロピレングリコール2:ポリプロピレンエーテルトリオール(サンニックスGA-500、Mw:5000、三洋化成工業社製)
・芳香族ポリアミン:3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA、イハラケミカル工業社製)
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(比重ρ:0.98)
・溶剤:イソパラフィン系溶剤(比重ρ:0.80)
【0067】
・パラロイド EXL−2655:コアシェル型ポリマー粒子(コア:スチレン−ブタジエン共重合体、シェル:ポリメタクリル酸メチル、1次粒子の平均粒径:200nm、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)
・ゼフィアック F−351:コアシェル型ポリマー粒子(アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体、1次粒子の平均粒径:300nm、アイカ工業社製)
・スタフィロイド IM−601:コアシェル型ポリマー粒子(コア:アクリロニトリル−スチレン共重合体、シェル:ポリメタクリル酸メチル、1次粒子の平均粒径:200〜300nm、アイカ工業社製)
【0068】
・高級脂肪酸アマイド:ターレンRCM−500(共栄社化学社製)
・水添ヒマシ油:A−S−A T−20SF(伊藤製油社製)
・酸基を含む共重合物(分散剤):DISPERBYK−111(ビックケミージャパン社製)
【0069】
・重質炭酸カルシウム(比重ρ:2.70):スーパーSS(丸尾カルシウム社製)
・チタンIV(比重ρ:4.05):R820(石原産業社製)
・樹脂系中空体:アクリロニトリル系(比重ρ:0.15、MFL−60CASK、松本油脂薬品工業社製)
【0070】
表1に示すように、ポリマー粒子を配合せず、従来公知の揺変剤を用いた場合には、長距離の輸送を想定した振動試験後の評価において、樹脂系中空体の浮き及び他の材料の沈降を抑制できる場合があることが分かったが、いずれも塗布性が劣ることが分かった(比較例1〜6)。
これに対し、ポリマー粒子を配合した場合は、長距離の輸送を想定した振動試験後の評価において、樹脂系中空体の浮き及び他の材料の沈降を抑制でき、さらに、塗布性も良好となることが分かった(実施例1〜5)。
特に、実施例2、4および5の対比から、ポリマー粒子として、コアにスチレン−ブタジエン共重合体を含有するコアシェル型のポリマー粒子を用いると、樹脂系中空体の浮き及び他の材料の沈降をより抑制できることが分かった。