【文献】
株式会社 昭和電業社,電気安全及び電源試験装置,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」[online],2016年 3月 3日,電線の短絡・過電流短絡装置の記載を参照。,[2021年1月28日検索]、インターネット,URL,https://web.archive.org/web/20160303163600/http://k-sd.co.jp/a-1.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の感電体験装置では、感電体験装置の利用者が感電を体験することができるが、電力量計の取替作業時に発生する可能性が高い低圧短絡災害を、臨場感をもって体験することができない。低圧短絡災害は、電力量計の電源側(一次側)端子もしくは、負荷側(二次側)端子が短絡することで発生する。
低圧短絡災害が発生した場合には、一般に、電力量計取替作業時の注意事項の確認が行われ、低圧短絡災害の再発防止について机上で検討が実施され、対策の水平展開が行われてきた。
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、電力量計の2つの負荷側端子の短絡を実際に体験することができる短絡体験装置、設備および短絡体験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、電源側第1端子と、電源側第2端子と、負荷側第1端子と、負荷側第2端子とを有する電力量計と、前記負荷側第1端子に接続された第1短絡素材と、前記負荷側第2端子に接続された第2短絡素材と、短絡体験開始操作に基づいて、前記第2短絡素材を前記第1短絡素材に当接する位置に移動させる短絡素材操作部と、前記電源側第1端子および前記電源側第2端子に供給される電力が入力される電力入力部と、前記電力量計と前記電力入力部との間に配置された遮断器と、前記電力量計と前記遮断器との間に配置された絶縁トランスとを備える短絡体験装置である。
このように構成することで、短絡素材操作部が第1短絡素材と第2短絡素材とを当接させることによって、第1短絡素材と第2短絡素材との間に短絡電流が流れるため、短絡体験装置の利用者(観察者)は、電力量計の負荷側第1端子と負荷側第2端子との短絡を実際に体験することができる。また、第1短絡素材と第2短絡素材との間に短絡電流が流れた場合に、遮断器が電力入力部から電力量計への電力供給を遮断するため、短絡電流を発生させることに伴う悪影響が電力入力部、および、電力入力部に電力を供給する部分におよぶおそれを抑制することができる。また、絶縁トランスが電力量計と遮断器との間に配置されるため、短絡発生時のノイズ(サージ電圧)を抑制することができる。
【0006】
本発明の一態様の短絡体験装置において、第1板ばね材料によって形成される前記第1短絡素材は、前記第1板ばね材料を筒状に変形させることによって形成され、前記負荷側第1端子に接続される第1筒状部を有する。
このように構成することで、第1短絡素材が切り欠かれる場合よりも、第1短絡素材が負荷側第1端子との接続位置で破損してしまうおそれ、短絡電流が流れにくくなるおそれ、および、短絡電流発生時に切り欠かれた部分が破損してしまうおそれを抑制することができる。
また、本発明の一態様の短絡体験装置において、第2板ばね材料によって形成される前記第2短絡素材は、前記第2板ばね材料を筒状に変形させることによって形成され、前記負荷側第2端子に接続される第2筒状部を有する。
このように構成することで、第2短絡素材が切り欠かれる場合よりも、第2短絡素材が負荷側第2端子との接続位置で破損してしまうおそれ、短絡電流が流れにくくなるおそれ、および、短絡電流発生時に切り欠かれた部分が破損してしまうおそれを抑制することができる。
【0007】
本発明の一態様の短絡体験装置において、前記第1短絡素材は、前記第2短絡素材の側に突出する稜線部によって構成される第1当接部を有し、前記第2短絡素材は、前記短絡素材操作部の牽引部材を係止するフック部と、前記第1短絡素材と前記第2短絡素材とが当接する場合に前記第1当接部と線接触する第2当接部とを有する。
このように構成することで、第1短絡素材の第1当接部と第2短絡素材の第2当接部とが、点接触によって当接するのではなく、線接触によって当接する。そのため、第1短絡素材の第1当接部と第2短絡素材の第2当接部とが点接触によって当接する場合よりも、第1短絡素材と第2短絡素材との当接位置における接触状態のばらつきを抑制することができ、短絡電流が流れることに伴って発生する強い光および音を安定化させることができる。すなわち、短絡電流が流れることに伴って発生する強い光および音のばらつきを抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様の短絡体験装置において、前記第1当接部は、前記第1板ばね材料を折り曲げることによって形成される。
このように構成することで、第1短絡素材と第2短絡素材との間に短絡電流が流れた場合に、第1短絡素材は、第1当接部の位置で破断し、第2短絡素材は、第2当接部の位置で破断する。そのため、第1短絡素材と第2短絡素材とが面接触して溶着することに伴って、短絡電流が第1短絡素材と第2短絡素材との間に必要以上の長時間にわたって流れ続けてしまうおそれを抑制することができる。
【0009】
本発明の一態様の短絡体験装置は、前記電力量計と、前記第1短絡素材と、前記第2短絡素材とを収容する概略三角柱形状のハウジングをさらに備え、前記ハウジングは、前記電力量計が取り付けられる後壁部と、透光性の右窓部を有する右前壁部と、透光性の左窓部を有する左前壁部とを備える。
このように構成することで、前窓部のみを有する概略四角柱形状のハウジングに電力量計と第1短絡素材と第2短絡素材とが収容されている場合よりも、短絡電流に伴う強い光を、ハウジングの外部から見やすくすることができる。
【0010】
本発明の一態様の短絡体験装置において、前記電力量計は、前記電源側第1端子および前記電源側第2端子と、前記負荷側第1端子および前記負荷側第2端子との間に配置され、前記電源側第1端子に接続された第1配線および前記電源側第2端子に接続された第2配線を保護する第1保護部材を備える。
このように構成することで、短絡電流が流れる時に発生する熱による第1配線および第2配線の破損を抑制することができる。
また、本発明の一態様の短絡体験装置において、前記ハウジングは、換気扇を有する天井部と、前記右窓部を保護する透光性の第2保護部材とを備える。
このように構成することで、短絡電流が流れる時に発生する熱による右窓部の破損を抑制することができる。
また、本発明の一態様の短絡体験装置において、前記ハウジングは、前記左窓部を保護する透光性の第3保護部材を備える。
このように構成することで、短絡電流が流れる時に発生する熱による左窓部の破損を抑制することができる。
また、本発明の一態様の短絡体験装置において、前記ハウジングは、前記第1短絡素材および前記第2短絡素材と、前記後壁部との間に配置される難燃性部材を備える。
このように構成することで、短絡電流が流れる時に発生する熱による後壁部の破損を抑制することができる。
【0011】
本発明の一態様は、前記電力入力部と前記絶縁トランスとの間に配置された他の遮断器をさらに備え、前記遮断器は、第1定格電流を有し、前記他の遮断器は、前記第1定格電流よりも大きい第2定格電流を有する短絡体験装置を備える設備であって、前記電力入力部に電力を供給する設備用電源部と、前記電力入力部と前記設備用電源部との間に配置された設備用遮断器とを備え、前記設備用遮断器は、第3定格電流を有し、前記第3定格電流は、前記第2定格電流と等しい、設備である。
このように構成することで、設備用遮断器が電力供給を遮断することに伴って、設備用電源部から短絡体験装置以外の他の負荷に電力が供給されなくなってしまうおそれを抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様は、電源側第1端子と、電源側第2端子と、負荷側第1端子と、負荷側第2端子とを有する電力量計と、前記負荷側第1端子に接続された第1短絡素材と、前記負荷側第2端子に接続された第2短絡素材と、短絡体験開始操作に基づいて、前記第2短絡素材を前記第1短絡素材に当接する位置に移動させる短絡素材操作部と、前記電源側第1端子および前記電源側第2端子に供給される電力が入力される電力入力部と、前記電力量計と前記電力入力部との間に配置された遮断器と、前記電力量計と前記遮断器との間に配置された絶縁トランスとを備える短絡体験装置を用いた短絡体験方法であって、前記短絡素材操作部が前記第1短絡素材と前記第2短絡素材とを当接させることによって、前記第1短絡素材と前記第2短絡素材との間に短絡電流を流すステップと、前記遮断器が、前記電力入力部から前記電力量計への電力供給を遮断するステップと、前記絶縁トランスが短絡発生時のノイズを抑制するステップとを含む短絡体験方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力量計の2つの負荷側端子の短絡を実際に体験することができる短絡体験装置、設備および短絡体験方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の短絡体験装置1の一例を概略的に示す構成図である。
図1に示す例では、短絡体験装置1が、電力量計11と、第1短絡素材12aと、第2短絡素材12bと、短絡素材操作部13と、電力入力部14と、遮断器15と、遮断器16と、絶縁トランス17と、リレー部Rとを備えている。
電力量計11は、電源側第1端子11aと、電源側第2端子11bと、負荷側第1端子11cと、負荷側第2端子11dと、電力量計本体部11eとを有する。電力量計本体部11eは、負荷(図示せず)において使用される電力量を計測する。第1短絡素材12aは、負荷側第1端子11cに接続されている。第2短絡素材12bは、負荷側第2端子11dに接続されている。
【0017】
図1に示す例では、短絡素材操作部13が、第2短絡素材12bを第1短絡素材12aの側(
図1の左側)に付勢する。短絡素材操作部13は、モータ13aと、牽引部材13bと、モータ駆動部13cと、モータ給電部13dと、モータ制御スイッチ13eとを備えている。モータ13aは、例えばひもなどのような牽引部材13bを介して第2短絡素材12bに接続されている。また、モータ13aは、モータ駆動部13cに接続されている。モータ駆動部13cは、モータ給電部13dと、モータ制御スイッチ13eとに接続されている。
図1に示す例では、モータ13aが牽引部材13bを介して第2短絡素材12bを牽引することによって、短絡素材操作部13が第2短絡素材12bを第1短絡素材12aの側(
図1の左側)に付勢する。他の例では、短絡素材操作部13が、第2短絡素材12bを押動することによって、第2短絡素材12bを第1短絡素材12aの側に付勢してもよい。
また、
図1に示す例では、短絡素材操作部13が、モータ13aによって、第2短絡素材12bを第1短絡素材12aの側に付勢するが、他の例では、短絡素材操作部13が、例えばソレノイドなどのようなモータ以外の任意の手段によって、第2短絡素材12bを第1短絡素材12aの側に付勢してもよい。
【0018】
図1に示す例では、絶縁トランス17が、端子17a、17b、17c、17dを備えている。端子17cは、配線18e1を介して電力量計11の電源側第1端子11aに接続されている。端子17dは、配線18e2を介して電力量計11の電源側第2端子11bに接続されている。
遮断器15は、遮断器本体15eと、ランプ15fと、端子15a、15b、15c、15dとを備えている。遮断器本体15eは、端子15aと端子15cとの間の電力供給経路、および、端子15bと端子15dとの間の電力供給経路を遮断することができる。ランプ15fは、端子15aと端子15cとの間の電力供給経路が遮断されておらず、端子15bと端子15dとの間の電力供給経路が遮断されていない場合に点灯する。端子15cは、配線18d1を介して絶縁トランス17の端子17aに接続されている。端子15dは、配線18d2を介して絶縁トランス17の端子17bに接続されている。遮断器15の定格電流は、例えば30Aに設定されている。
【0019】
図1に示す例では、遮断器16は、遮断器本体16eと、ランプ16fと、メインスイッチ16gと、(通常、オンしている)非常停止用スイッチ16hと、端子16a、16b、16c、16dとを備えている。遮断器本体16eは、端子16aと端子16cとの間の電力供給経路、および、端子16bと端子16dの間の電力供給経路を遮断することができる。ランプ16fは、端子16aと端子16cとの間の電力供給経路が遮断されておらず、端子16bと端子16dとの間の電力供給経路が遮断されていない場合に点灯する。遮断器16の定格電流は、遮断器15の定格電流よりも大きい、例えば50Aに設定されている。
端子16cは、メインスイッチ16gの一端に接続されている。メインスイッチ16gの他端は、通常オンしている非常停止用スイッチ16hの一端に接続されている。非常停止用スイッチ16hの他端は、リレー部Rの電磁コイル部RCの一端に接続されている。電磁コイル部RCの他端は、端子16dに接続されている。
また、端子16aは、配線18a1を介して電力入力部14の端子14aに接続されている。端子16bは、配線18a2を介して電力入力部14の端子14bに接続されている。
【0020】
図1に示す例では、リレー部Rのスイッチ部RSが、端子RS1、RS2、RS3、RS4を備えている。スイッチ部RSは、端子RS1と端子RS3との間の電力供給経路、および、端子RS2と端子RS4の間の電力供給経路を遮断することができる。
端子RS1は、配線18b1を介して遮断器16の端子16cに接続されている。端子RS2は、配線18b2を介して遮断器16の端子16dに接続されている。端子RS3は、配線18c1を介して遮断器15の端子15aに接続されている。端子RS4は、配線18c2を介して遮断器15の端子15bに接続されている。
【0021】
図1に示す例では、遮断器16の遮断器本体16eが、端子16aと端子16cとの間の電力供給経路を遮断せず、端子16bと端子16dの間の電力供給経路を遮断しない場合であって、メインスイッチ16gおよび非常停止用スイッチ16hがオンしている場合に、電力入力部14からリレー部Rの電磁コイル部RCへの通電が行われる。その結果、リレー部Rのスイッチ部RSが、端子RS1と端子RS3との間の電力供給経路を遮断せず、端子RS2と端子RS4の間の電力供給経路を遮断しない状態になる。さらに、遮断器15の遮断器本体15eが、端子15aと端子15cとの間の電力供給経路を遮断せず、端子15bと端子15dの間の電力供給経路を遮断しない場合に、電力入力部14から絶縁トランス17を介して電力量計11の電源側第1端子11aおよび電源側第2端子11bに電力が供給される。
つまり、
図1に示す例では、遮断器15が、電力量計11と電力入力部14との間に配置されている。また、絶縁トランス17は、電力量計11と遮断器15との間に配置されている。
【0022】
図1に示す例では、例えば短絡体験装置1のオペレータが、遮断器16のメインスイッチ16gをオンすることによって、電力入力部14が、電力量計11の電源側第1端子11aおよび電源側第2端子11bに電力を供給する。この結果、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間には、電力量計11に供給されている電力による電位差が生じる。また、例えば短絡体験装置1のオペレータが、短絡素材操作部13のモータ制御スイッチ13eをオンすることによって、モータ13aが作動し、牽引部材13bを介して第2短絡素材12bを牽引する。それにより、第2短絡素材12bが、第1短絡素材12aの側(
図1の左側)に移動し、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとが当接する。その結果、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れ、強い光(アーク)および音が発生する。従って、短絡体験装置1の利用者(観察者)は、電力量計11の負荷側第1端子11cと負荷側第2端子11dとの短絡を実際に体験することができる。
また、
図1に示す例では、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れた場合に、遮断器15は、端子15aと端子15cとの間の電力供給経路、および、端子15bと端子15dとの間の電力供給経路を遮断することによって、電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断する。そのため、短絡体験装置1は、短絡電流を発生させることに伴う悪影響が電力入力部14(および、電力入力部14に電力を供給する部分)におよぶおそれを抑制することができる。
【0023】
また、
図1に示す例では、遮断器15が電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断するため、悪影響が電力入力部14(および、電力入力部14に電力を供給する部分(例えば設備P内の他の負荷))におよぶおそれを抑制することができる。さらに、絶縁トランス17が配置されているため、短絡体験装置1は、絶縁トランス17が配置されていない場合よりも短絡発生時のノイズ(サージ電圧)を抑制することができる。
短絡体験装置1の利用者は、低圧短絡発生時のアーク(光)、音などを視聴覚によって実際に体験することができ、低圧短絡の怖さを考えることができる。また、短絡体験装置1の利用者は、低圧短絡対策用の保護具(安全帽、低圧手袋、防アーク面等)の重要性を認識することができ、日常作業における安全に対する意識、能力を高めることができる。
【0024】
図1に示す例では、短絡体験装置1が、遮断器15の他に、電力入力部14と絶縁トランス17との間に配置された遮断器16をさらに備えている。遮断器16の定格電流は、遮断器15の定格電流(30A)とは異なる、例えば50Aに設定されている。
第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間の短絡電流の流れ方によっては、定格電流(30A)が小さい遮断器15が、定格電流(50A)が大きい遮断器16よりも先に電力供給経路を遮断するとは限らない。
そこで、
図1に示す例では、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れた場合に、仮に遮断器15が電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断しなくても、遮断器15の代わりに、遮断器16が電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断する。そのため、
図1に示す例では、遮断器16が設けられない場合よりも、短絡電流を発生させることに伴う悪影響が電力入力部14(および、電力入力部14に電力を供給する部分)におよぶおそれを抑制することができる。
他の例では、遮断器16を省略してもよい。
【0025】
図2は、第1短絡素材12a、第2短絡素材12bなどの一例の概略的な斜視図である。
図1を参照して説明した第1短絡素材12aおよび第2短絡素材12bは、一例として、
図2に示すように構成可能である。
図2に示す例では、第1短絡素材12aが、板ばね材料によって形成されている。第1短絡素材12aは、筒状部12a1と、当接部12a2とを有する。
筒状部12a1は、板ばね材料を筒状に変形させることによって形成されている。筒状部12a1は、例えば特許第5840817号公報の
図2、
図7に記載された例と同様に、電力量計11の電力量計本体部11eに設けられている穴(図示せず)に挿入され、負荷側第1端子11cに接続される。
つまり、
図2に示す例では、第1短絡素材12aの一部を電力量計本体部11eの穴に挿入するために、第1短絡素材12aが切り欠かれるのではなく、筒状部12a1が形成されている。そのため、第1短絡素材12aが切り欠かれる場合よりも、第1短絡素材12aが負荷側第1端子11cとの接続位置で破損してしまうおそれ、短絡電流が流れにくくなるおそれ、および、短絡電流発生時に切り欠かれた部分が破損してしまうおそれを抑制することができる。
【0026】
図2に示す例では、当接部12a2が、第2短絡素材12bの側(
図2の右側)に突出する稜線部によって構成されている。当接部12a2は、板ばね材料を折り曲げることによって形成されている。
第2短絡素材12bは、第1短絡素材12aと同様に、板ばね材料によって形成されている。第2短絡素材12bは、筒状部12b1と、フック部12b2と、当接部12b3とを有する。
筒状部12b1は、筒状部12a1と同様に、板ばね材料を筒状に変形させることによって形成されている。筒状部12b1は、電力量計11の電力量計本体部11eに設けられている他の穴(図示せず)に挿入され、負荷側第2端子11dに接続される。
そのため、第2短絡素材12bが切り欠かれる場合よりも、第2短絡素材12bが負荷側第2端子11dとの接続位置で破損してしまうおそれ、短絡電流が流れにくくなるおそれ、および、短絡電流発生時に切り欠かれた部分が破損してしまうおそれを抑制することができる。
【0027】
図2に示す例では、フック部12b2が、板ばね材料の帯状部分を湾曲させることによって形成されている。フック部12b2には、短絡素材操作部13(
図1参照)の牽引部材13bが係止される。
フック部12b2が牽引部材13bによって第1短絡素材12aの側(
図2の左側)に牽引され、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとが当接する場合に、
図2に破線で示す当接部12b3は、当接部12a2と線接触する。
つまり、
図2に示す例では、第1短絡素材12aの当接部12a2と第2短絡素材12bの当接部12b3とが、点接触によって当接するのではなく、線接触によって当接する。そのため、第1短絡素材12aの当接部12a2と第2短絡素材12bの当接部12b3とが点接触によって当接する場合よりも、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの当接位置における接触状態のばらつきを抑制することができ、短絡電流が流れることに伴って発生する強い光および音を安定化させることができる。すなわち、短絡電流が流れることに伴って発生する強い光および音のばらつきを抑制することができる。
【0028】
図3は、電力量計11などの設置環境の一例を示す図である。詳細には、
図3(A)は電力量計11などを収容するハウジング19などを上側から見た図、
図3(B)は電力量計11などを収容するハウジング19などを下側から見た図である。
図4は、ハウジング19内における電力量計11などの正面図である。詳細には、
図4は、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れた後の状態を示す図である。
図3(A)、
図3(B)および
図4に示す例では、短絡体験装置1(
図1参照)が、電力量計11と、第1短絡素材12aと、第2短絡素材12bとを収容する概略三角柱形状のハウジング19をさらに備えている。
ハウジング19は、床部19aと、天井部19bと、後壁部19cと、右前壁部19dと、左前壁部19eとを備えている。天井部19bには、換気扇19b1が設けられている。電力量計11は、後壁部19cに取り付けられている。また、後壁部19cには、難燃性部材19fが取り付けられている。つまり、難燃性部材19fは、第1短絡素材12aの当接部12a2および第2短絡素材12bの当接部12b3と、後壁部19cとの間に配置されている。難燃性部材19fは、短絡電流が流れる時に発生する熱による後壁部19cの破損を抑制する。
右前壁部19dは、透光性の右窓部19d1を有する。右窓部19d1のうちの電力量計11に対向する面には、透光性の保護部材19d2が取り付けられている。保護部材19d2は、右窓部19d1を保護し、短絡電流が流れる時に発生する熱による右窓部19d1の破損を抑制する。
左前壁部19eは、透光性の左窓部19e1を有する。左窓部19e1のうちの電力量計11に対向する面には、保護部材19e2が取り付けられている。保護部材19e2は、左窓部19e1を保護し、短絡電流が流れる時に発生する熱による左窓部19e1の破損を抑制する。
【0029】
図3(A)および
図3(B)に示す例では、右窓部19d1と左窓部19e1とを有する概略三角柱形状のハウジング19に、電力量計11と第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとが収容されている。そのため、前窓部のみを有する概略四角柱形状のハウジングに電力量計11と第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとが収容されている場合よりも、短絡電流に伴う強い光を、ハウジング19の外部から見やすくすることができる。
つまり、
図3(A)および
図3(B)に示す例では、前窓部のみを有する概略四角柱形状のハウジングに電力量計11と第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとが収容されている場合には死角に位置してしまう短絡体験装置1の利用者PS1、PS2が、短絡電流に伴う強い光を、ハウジング19の外部から観察することができる。
すなわち、
図3(A)および
図3(B)に示す例では、短絡電流の発生に伴うアークが飛ぶ空間の体積を確保しつつ、短絡体験装置1の利用者を第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの当接位置に近づけることができる。
【0030】
図4に示す例では、第1短絡素材12aの当接部12a2と、第2短絡素材12bの当接部12b3とが、線接触によって当接し、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れた場合に、第1短絡素材12aは、当接部12a2の位置で破断する。また、その場合に、第2短絡素材12bは、当接部12b3の位置で破断する。
そのため、
図4に示す例では、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとが面接触して溶着することに伴って、短絡電流が第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に必要以上の長時間にわたって流れ続けてしまうおそれを抑制することができる。
【0031】
図4に示す例では、電力量計11が、保護部材11fをさらに備えている。保護部材11fは、難燃性材料によって形成されている。また、保護部材11fは、電源側第1端子11aおよび電源側第2端子11bと、負荷側第1端子11cおよび負荷側第2端子11dとの間に配置されている。保護部材11fは、電源側第1端子11aに接続された配線18e1および電源側第2端子11bに接続された配線18e2を保護し、短絡電流が流れる時に発生する熱による配線18e1、18e2の破損を抑制する。
【0032】
図5は、短絡体験装置1の設置環境の一例を示す図である。
図5に示す例では、短絡体験装置1が、設備Pに設けられている。設備Pは、短絡体験装置1の他に、設備用電源部P1と、設備用遮断器P2とを備えている。設備用電源部P1は、短絡体験装置1の電力入力部14などに電力を供給する。設備用遮断器P2は、設備用電源部P1と短絡体験装置1の電力入力部14との間に配置されている。設備用遮断器P2は、配線P3aを介する設備用電源部P1から短絡体験装置1の電力入力部14への電力供給経路、および、配線P3bを介する設備用電源部P1から短絡体験装置1の電力入力部14への電力供給経路を遮断することができる。設備用遮断器P2の定格電流は、遮断器16の定格電流と等しい値(例えば50A)に設定されている。
【0033】
図1および
図5に示す例では、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れ、仮に設備用遮断器P2が電力供給を遮断するおそれがある状況になった場合であっても、設備用遮断器P2が電力供給を遮断する前に、遮断器16が電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断する。その結果、設備用遮断器P2が電力供給を遮断してしまうおそれを抑制することができる。
詳細には、
図1および
図5に示す例では、設備用遮断器P2の定格電流が遮断器16の定格電流と等しい値に設定されている。そのため、仮に短絡電流の発生に伴って設備用遮断器P2が電力供給を遮断するおそれがある状況になった場合であっても、設備用遮断器P2が電力供給を遮断する前に、設備用遮断器P2よりも短絡位置に近い遮断器16が、電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断する。
つまり、仮に短絡電流の発生に伴って設備用遮断器P2が電力供給を遮断するおそれがある状況になった場合であっても、設備用遮断器P2が電力供給を遮断する代わりに、遮断器16が電力供給を遮断する。
そのため、
図1および
図5に示す例では、設備用遮断器P2が電力供給を遮断することに伴って、設備用電源部P1から短絡体験装置1以外の他の負荷に電力が供給されなくなってしまうおそれを抑制することができる。
【0034】
図6は、短絡体験装置1の利用時に行われる処理の一例を説明するフローチャートである。
図6に示す例では、ステップS11において、短絡体験装置1のオペレータが、第1短絡素材12aを電力量計11の負荷側第1端子11cに接続し、第2短絡素材12bを電力量計11の負荷側第2端子11dに接続する。
次いで、ステップS12では、短絡体験装置1のオペレータが、短絡素材操作部13の牽引部材13bを第2短絡素材12bのフック部12b2に係止する。
次いで、ステップS13では、短絡体験装置1のオペレータが、ハウジング19の右窓部19d1および左窓部19e1を閉じる。
次いで、ステップS14では、短絡体験装置1のオペレータが、遮断器16のメインスイッチ16gおよび非常停止用スイッチ16hがオンし、短絡素材操作部13のモータ制御スイッチ13eをオンする。その結果、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとが当接し、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れ、強い光および音が発生する。
次いで、ステップS15では、遮断器15または遮断器16が、電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断するか、あるいは、第1短絡素材12aまたは第2短絡素材12bが当接部12a2、12b3の位置で破断することにより短絡電流が終了し、強い光および音が終了する。
次いで、ステップS16では、短絡体験装置1のオペレータが、ハウジング19の右窓部19d1および左窓部19e1を開ける。
次いで、ステップS17では、短絡体験装置1のオペレータが、保護部材19d2、19e2および難燃性部材19fの交換が必要か否かを判定する。保護部材19d2、19e2および難燃性部材19fの交換が必要な場合にはステップS18に進み、保護部材19d2、19e2および難燃性部材19fの交換が必要ではない場合にはステップS19に進む。
【0035】
ステップS18では、短絡体験装置1のオペレータが、保護部材19d2、19e2および難燃性部材19fの交換を行う。次いで、ステップS19に進む。
ステップS19では、短絡体験装置1のオペレータが、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流を流す次のデモンストレーションがあるか否かを判定する。次のデモンストレーションがある場合にはステップS20に進み、次のデモンストレーションがない場合には、
図6に示す処理を終了する。
ステップS20では、短絡体験装置1のオペレータが、当接部12a2の位置で破断した第1短絡素材12aを電力量計11の負荷側第1端子11cから取り外し、当接部12b3の位置で破断した第2短絡素材12bを電力量計11の負荷側第2端子11dから取り外す。次いで、ステップS11に戻る。
【0036】
[本実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の短絡体験装置1は、電源側第1端子11aと、電源側第2端子11bと、負荷側第1端子11cと、負荷側第2端子11dとを有する電力量計11と、負荷側第1端子11cに接続された第1短絡素材12aと、負荷側第2端子11dに接続された第2短絡素材12bと、短絡体験開始操作に基づいて、第2短絡素材12bを第1短絡素材12aに当接する位置に移動させる短絡素材操作部13と、電源側第1端子11aおよび電源側第2端子11bに供給される電力が入力される電力入力部14と、電力量計11と電力入力部14との間に配置された遮断器15と、電力量計11と遮断器15との間に配置された絶縁トランス17とを備える。
本実施形態の短絡体験装置1によれば、短絡素材操作部13が第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとを当接させることによって、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れるため、短絡体験装置1の利用者(観察者)は、電力量計11の負荷側第1端子11cと負荷側第2端子11dとの短絡を実際に体験することができる。また、第1短絡素材12aと第2短絡素材12bとの間に短絡電流が流れた場合に、遮断器15が電力入力部14から電力量計11への電力供給を遮断するため、短絡電流を発生させることに伴う悪影響が電力入力部14(および、電力入力部14に電力を供給する部分(例えば設備P内の他の負荷))におよぶおそれを抑制することができる。また、絶縁トランス17が配置されているため、絶縁トランスが配置されていない場合よりも短絡発生時のノイズを抑制し、短絡電流に伴う強い光および音を短絡体験装置1の利用者に体験させることができる。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。