(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シャフトと、前記シャフトと連動するモータロータと、前記モータロータを回転させるステータコアを備えるモータステータと、3相毎に少なくとも2系統の第1コイルグループ及び第2コイルグループとに分けられ、かつ前記ステータコアを3相交流で励磁する複数のコイルグループと、を含む電動モータと、
前記電動モータを駆動制御するために、前記シャフトの反負荷側に設けられた電子制御装置と、を備え、
前記電子制御装置は、
前記シャフトの反負荷側の端部の磁石と、基板組立体と、を備え、
前記基板組立体は、
ヒートシンクと、
前記シャフトの反負荷側であって、前記シャフトの軸方向の延長線上に配置され、前記磁石の回転を検出する磁気センサを実装するセンサ基板と、
前記第1コイルグループへ電流を供給する複数の電子部品を、前記シャフトの径方向外側の第1実装面に実装する第1パワー基板と、
前記第2コイルグループへ電流を供給する複数の電子部品を、前記シャフトの径方向外側の第2実装面に実装する第2パワー基板と、
前記第1パワー基板及び前記第2パワー基板の少なくとも1つが供給する電流を制御する電子部品を、前記シャフトの径方向外側の第3実装面に実装する制御基板と、を備え、
前記第1パワー基板、前記第2パワー基板及び前記制御基板が前記シャフトの軸方向の延長線の周りに配置されるように、前記第1パワー基板、前記第2パワー基板及び前記制御基板が前記ヒートシンクに組み付けられ、かつ前記第1パワー基板、前記第2パワー基板及び前記制御基板と、前記電動モータとは軸方向において前記センサ基板を挟むように、前記センサ基板が前記ヒートシンクに組み付けられ、
前記基板組立体が前記電動モータの反負荷側に固定され、
前記第1パワー基板は、前記第2パワー基板と前記シャフトの軸方向の延長線を挟む位置に配置され、
前記ヒートシンクは、第1放熱アーム部と、第2放熱アーム部と、前記第1放熱アーム部と前記第2放熱アーム部とを連結する連結部とを備え、U字状であり、
前記第1実装面の裏面は、前記第1放熱アーム部の径方向外側に取り付けられ、
前記第2実装面の裏面は、前記第2放熱アーム部の径方向外側に取り付けられ、
前記第1放熱アーム部の径方向内側と、前記第2放熱アーム部の径方向内側との間には、空間がある
電動駆動装置。
前記シャフトの軸方向において、前記センサ基板寄りの部分に立設し、前記第1コイルグループ又は前記第2コイルグループのコイル配線と接続するモータ接続端子片を備え、前記コイル配線は、前記ヒートシンクよりも前記シャフトの径方向外側に配置されている請求項6または7に記載の電動駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
(電動パワーステアリング装置)
図1は、本実施形態の電動パワーステアリング装置を搭載した車両を模式的に示した斜視図である。
図2は、本実施形態の電動パワーステアリング装置の模式図である。
図1に示すように、車両101は、電動パワーステアリング装置100を搭載している。
図2を参照して電動パワーステアリング装置100の概要を説明する。
【0025】
電動パワーステアリング装置100は、運転者(操作者)から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール91と、ステアリングシャフト92と、ユニバーサルジョイント96と、インターミディエイトシャフト97と、ユニバーサルジョイント98と、第1ラックアンドピニオン機構99と、タイロッド72と、を備える。また、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングシャフト92の操舵トルクを検出するトルクセンサ94と、電動モータ30と、電動モータ30を制御する電子制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)という。)10と、減速装置75と、第2ラックアンドピニオン機構70と、を備える。車速センサ82、電源装置83(例えば車載のバッテリ)、及びイグニッションスイッチ84は、車体に備えられる。車速センサ82は、車両101の走行速度を検出する。車速センサ82は、検出した車速信号SVをCAN(Controller Area Network)通信によりECU10に出力する。ECU10には、イグニッションスイッチ84がオンの状態で電源装置83から電力が供給される。
【0026】
電動駆動装置1は、電動モータ30と電動モータ30のシャフト31の反負荷側に固定したECU10とを備える。
【0027】
図2に示すように、ステアリングシャフト92は、入力軸92Aと、出力軸92Bと、トーションバー92Cと、を備える。入力軸92Aは、一方の端部がステアリングホイール91に接続され、他方の端部がトーションバー92Cに接続される。出力軸92Bは、一方の端部がトーションバー92Cに接続され、他方の端部がユニバーサルジョイント96に接続される。なお、トルクセンサ94は、トーションバー92Cのねじれを検出することで、ステアリングシャフト92に加わる操舵トルクを検出する。トルクセンサ94は、検出した操舵トルクに応じた操舵トルク信号TをCAN通信によりECU10に出力する。ステアリングシャフト92は、ステアリングホイール91に付与された操舵力により回転する。
【0028】
インターミディエイトシャフト97は、アッパーシャフト97Aと、ロアシャフト97Bとを有し、出力軸92Bのトルクを伝達する。アッパーシャフト97Aは、ユニバーサルジョイント96を介して出力軸92Bに接続される。一方、ロアシャフト97Bは、ユニバーサルジョイント98を介して第1ラックアンドピニオン機構99の第1ピニオンシャフト99Aに接続される。アッパーシャフト97Aとロアシャフト97Bとは、例えば、スプライン結合されている。
【0029】
第1ラックアンドピニオン機構99は、第1ピニオンシャフト99Aと、第1ピニオンギヤ99Bと、ラックシャフト99Cと、第1ラック99Dと、を有する。第1ピニオンシャフト99Aは、一方の端部がユニバーサルジョイント98を介してロアシャフト97Bに接続され、他方の端部が第1ピニオンギヤ99Bに接続される。ラックシャフト99Cに形成された第1ラック99Dは、第1ピニオンギヤ99Bと噛み合う。ステアリングシャフト92の回転運動は、インターミディエイトシャフト97を介して第1ラックアンドピニオン機構99に伝達される。この回転運動は、第1ラックアンドピニオン機構99によりラックシャフト99Cの直線運動に変換される。タイロッド72は、ラックシャフト99Cの両端にそれぞれ接続される。
【0030】
電動モータ30は、運転者の操舵をアシストするための補助操舵トルクを発生させるモータである。電動モータ30は、ブラシレスモータでもよいし、ブラシ及びコンミテータを有するブラシモータでもよい。
【0031】
ECU10は、回転角度センサ23aを備える。回転角度センサ23aは、電動モータ30の回転位相を検出する。ECU10は、回転角度センサ23aから電動モータ30の回転位相信号を取得し、トルクセンサ94から操舵トルク信号Tを取得し、車速センサ82から車両101の車速信号SVを取得する。ECU10は、回転位相信号と操舵トルク信号Tと車速信号SVとに基づいて、アシスト指令の補助操舵指令値を算出する。ECU10は、算出された補助操舵指令値に基づいて、電流を電動モータ30に供給する。
【0032】
減速装置75は、電動モータ30のシャフト31と一体に回転するウォームシャフト75Aと、ウォームシャフト75Aと噛み合うウォームホイール75Bと、を備える。したがって、シャフト31の回転運動は、ウォームシャフト75Aを介してウォームホイール75Bに伝達される。なお、本実施形態において、シャフト31の減速装置75側を負荷側端部といい、シャフト31の減速装置75とは反対側を反負荷側端部という。
【0033】
第2ラックアンドピニオン機構70は、第2ピニオンシャフト71Aと、第2ピニオンギヤ71Bと、第2ラック71Cと、を有する。第2ピニオンシャフト71Aは、一方の端部がウォームホイール75Bと同軸、かつ一体に回転するように固定される。第2ピニオンシャフト71Aは、他方の端部が第2ピニオンギヤ71Bに接続される。ラックシャフト99Cに形成された第2ラック71Cは、第2ピニオンギヤ71Bと噛み合う。電動モータ30の回転運動は、減速装置75を介して第2ラックアンドピニオン機構70に伝達される。この回転運動は、第2ラックアンドピニオン機構70によりラックシャフト99Cの直線運動に変換される。
【0034】
ステアリングホイール91に入力された運転者の操舵力は、ステアリングシャフト92、及びインターミディエイトシャフト97を介して、第1ラックアンドピニオン機構99に伝達される。第1ラックアンドピニオン機構99は、伝達された操舵力をラックシャフト99Cの軸方向に加わる力としてラックシャフト99Cに伝達する。この際、ECU10は、ステアリングシャフト92に入力された操舵トルク信号Tをトルクセンサ94から取得する。ECU10は、車速信号SVを車速センサ82から取得する。ECU10は、電動モータ30の回転位相信号を回転角度センサ23aから取得する。そして、ECU10は、制御信号を出力して電動モータ30の動作を制御する。電動モータ30が作り出した補助操舵トルクは、減速装置75を介して第2ラックアンドピニオン機構70に伝達される。第2ラックアンドピニオン機構70は、補助操舵トルクをラックシャフト99Cの軸方向に加わる力としてラックシャフト99Cに伝達する。このようにして、運転者のステアリングホイール91の操舵が電動パワーステアリング装置100によりアシストされる。
【0035】
図3は、本実施形態のECUの配置例を示す模式図である。
図3に示すように、ECU10及び電動モータ30を備える電動駆動装置1は、第1ラックアンドピニオン機構99及び第2ラックアンドピニオン機構70近傍に配置されている。このように、電動パワーステアリング装置100は、第2ラックアンドピニオン機構70にアシスト力が付与されるラックアシスト方式であるがこれに限定されない。電動パワーステアリング装置100は、例えば、ステアリングシャフト92にアシスト力が付与されるコラムアシスト方式、及び第1ピニオンギヤ99Bにアシスト力が付与されるピニオンアシスト方式でもよい。
【0036】
図4は、本実施形態の電動モータの断面を模式的に示す断面図である。
図5は、本実施形態の電動モータの配線を示す模式図である。電動モータ30は、
図4に示すように、ハウジング930と、ステータコア931を有するステータと、ロータ932と、を備える。ステータは、円筒状であるステータコア931と、複数の第1コイル37と、複数の第2コイル38を含む。ステータコア931は、環状のバックヨーク931aと、バックヨーク931aの内周面から突出する複数のティース931bと、を備える。ティース931bは、周方向に12個配置されている。ロータ932は、ロータヨーク932aと、マグネット932bとを含む。マグネット932bは、ロータヨーク932aの外周面に設けられている。マグネット932bの数は、例えば8つである。
【0037】
図4に示すように、第1コイル37は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第1コイル37は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。全ての第1コイル37は、第1コイル系統に含まれる。本実施形態の第1コイル系統は、第1パワー基板25Aのインバータ回路251(
図6参照)によって、電流が供給され、励磁される。第1コイル系統は、例えば第1コイル37を6つ含む。6つの第1コイル37は、2つの第1コイル37が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第1コイル37を1つのグループとした第1コイルグループGr1が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第1コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第1コイルグループGr1を備えている。なお、第1コイルグループGr1は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。
【0038】
図4に示すように、第2コイル38は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第2コイル38は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。第2コイル38が集中巻きされるティース931bは、第1コイル37が集中巻きされるティース931bとは異なるティース931bである。全ての第2コイル38は、第2コイル系統に含まれる。第2コイル系統は、第2パワー基板25Bのインバータ回路251(
図6参照)によって電流が供給され、励磁される。第2コイル系統は、例えば第2コイル38を6つ含む。6つの第2コイル38は、2つの第2コイル38が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第2コイル38を1つのグループとした第2コイルグループGr2が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第2コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第2コイルグループGr2を備えている。なお、第2コイルグループGr2は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。
【0039】
図5に示すように、6つの第1コイル37は、第1U相電流I1uにより励磁される2つの第1U相コイル37Ua及び第1U相コイル37Ubと、第1V相電流I1vにより励磁される2つの第1V相コイル37Va及び第1V相コイル37Vbと、第1W相電流I1wにより励磁される2つの第1W相コイル37Wa及び第1W相コイル37Wbと、を含む。第1U相コイル37Ubは、第1U相コイル37Uaに対して直列に接続されている。第1V相コイル37Vbは、第1V相コイル37Vaに対して直列に接続されている。第1W相コイル37Wbは、第1W相コイル37Waに対して直列に接続されている。第1コイル37のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向である。また、第1U相コイル37Ub、第1V相コイル37Vb及び第1W相コイル37Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0040】
図5に示すように、6つの第2コイル38は、第2U相電流I2uにより励磁される2つの第2U相コイル38Ua及び第2U相コイル38Ubと、第2V相電流I2vにより励磁される2つの第2V相コイル38Va及び第2V相コイル38Vbと、第2W相電流I2wにより励磁される2つの第2W相コイル38Wa及び第2W相コイル38Wbと、を含む。第2U相コイル38Ubは、第2U相コイル38Uaに対して直列に接続されている。第2V相コイル38Vbは、第2V相コイル38Vaに対して直列に接続されている。第2W相コイル38Wbは、第2W相コイル38Waに対して直列に接続されている。第2コイル38のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向であり、第1コイル37の巻き方向と同じである。また、第2U相コイル38Ub、第2V相コイル38Vb及び第2W相コイル38Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0041】
図4に示すように、3つの第1コイルグループGr1は、第1UVコイルグループGr1UVと、第1VWコイルグループGr1VWと、第1UWコイルグループGr1UWと、からなる。第1UVコイルグループGr1UVは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Ub及び第1V相コイル37Vaを含む。第1VWコイルグループGr1VWは、周方向で互いに隣接する第1V相コイル37Vb及び第1W相コイル37Waを含む。第1UWコイルグループGr1UWは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Ua及び第1W相コイル37Wbを含む。
【0042】
図4に示すように、3つの第2コイルグループGr2は、第2UVコイルグループGr2UVと、第2VWコイルグループGr2VWと、第2UWコイルグループGr2UWと、からなる。第2UVコイルグループGr2UVは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Ub及び第2V相コイル38Vaを含む。第2VWコイルグループGr2VWは、周方向で互いに隣接する第2V相コイル38Vb及び第2W相コイル38Waを含む。第2UWコイルグループGr2UWは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Ua及び第2W相コイル38Wbを含む。
【0043】
第1U相電流I1uにより励磁される第1コイル37は、第2U相電流I2uにより励磁される第2コイル38に、ステータコア931の径方向で対向している。以下の説明において、ステータコア931の径方向は、単に径方向と記載される。例えば、
図4に示すように、径方向で第1U相コイル37Uaが第2U相コイル38Uaに対向し、第1U相コイル37Ubが第2U相コイル38Ubに対向している。
【0044】
第1V相電流I1vにより励磁される第1コイル37は、第2V相電流I2vにより励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、
図4に示すように、径方向で第1V相コイル37Vaが第2V相コイル38Vaに対向し、第1V相コイル37Vbが第2V相コイル38Vbに対向している。
【0045】
第1W相電流I1wにより励磁される第1コイル37は、第2W相電流I2wにより励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、
図4に示すように、径方向で第1W相コイル37Waが第2W相コイル38Waに対向し、第1W相コイル37Wbが第2W相コイル38Wbに対向している。
【0046】
図6は、本実施形態の電動モータとECUとの関係を示す模式図である。
図6に示すように、ECU10は、制御演算部241と、モータ回転角検出回路23と、モータ回転数演算部22と、ゲート駆動回路242と、遮断駆動回路243と、インバータ回路251と、を備えている。
【0047】
制御演算部241は、モータ電流指令値を演算する。モータ回転数演算部22は、モータ電気角θmを演算し、制御演算部241に出力する。ゲート駆動回路242には、制御演算部241から出力されるモータ電流指令値が入力される。
【0048】
電動モータ30は、
図6に示すように、回転角度センサ23aを備えている。回転角度センサ23aは、例えば磁気センサである。回転角度センサ23aの検出値がモータ回転数演算部22に供給される。モータ回転数演算部22は、回転角度センサ23aの検出値に基づいてモータ電気角θmを演算し、制御演算部241に出力する。
【0049】
制御演算部241には、トルクセンサ94で検出された操舵トルク信号Tと、車速センサ82で検出された車速SVと、モータ回転数演算部22から出力されるモータ電気角θ
mと、が入力される。制御演算部241は、操舵トルク信号T、車速SV及びモータ電気角θmに基づいて電流指令値を算出し、ゲート駆動回路242に出力する。
【0050】
ゲート駆動回路242は、電流指令値に基づいて第1パルス幅変調信号を演算し、第1パワー基板25Aのインバータ回路251に出力する。インバータ回路251は、第1パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるようにスイッチング素子252をスイッチングして第1U相電流I1u、第1V相電流I1v及び第1W相電流I1wを含む3相交流を生成する。第1U相電流I1uが第1U相コイル37Ua及び第1U相コイル37Ubを励磁し、第1V相電流I1vが第1V相コイル37Va及び第1V相コイル37Vbを励磁し、第1W相電流I1wが第1W相コイル37Wa及び第1W相コイル37Wbを励磁する。
【0051】
ゲート駆動回路242は、電流指令値に基づいて第2パルス幅変調信号を演算し、第2パワー基板25Bのインバータ回路251に出力する。インバータ回路251は、第2パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるようにスイッチング素子252をスイッチングして第2U相電流I2u、第2V相電流I2v及び第2W相電流I2wを含む3相交流を生成する。第2U相電流I2uが第2U相コイル38Ua及び第2U相コイル38Ubを励磁し、第2V相電流I2vが第2V相コイル38Va及び第2V相コイル38Vbを励磁し、第2W相電流I2wが第2W相コイル38Wa及び第2W相コイル38Wbを励磁する。
【0052】
インバータ回路251には、例えば、スイッチング素子252と平滑用コンデンサ253とを有している。スイッチング素子252としては、例えば、電界効果トランジスタである。平滑用コンデンサ253としては、例えば、電解コンデンサが用いられている。
【0053】
図6に示すように、電動パワーステアリング装置100は、電動モータ30の各相の電流値を検出するための電流検出回路254を備える。例えば、電流検出回路254は、シャント抵抗を備える。電流検出回路254で検知した電流値は、制御演算部241に送出される。なお、電流検出回路254は、電動モータ30の各相の電流値を検出するように接続してもよい。
【0054】
電流遮断回路255は、インバータ回路251と、第1コイル37又は第2コイル38との間に配置されている。電流検出回路254で検知した電流値が異常と判断される場合は、制御演算部241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第1コイル37へ流れる電流を遮断できる。また、制御演算部241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第2コイル38へ流れる電流を遮断できる。このように、第1コイル37へ流れる電流と、第2コイル38へ流れる電流とは、制御演算部241にそれぞれ独立して制御される。
【0055】
制御演算部241には、操舵トルク信号T、車速信号SVといった制御基板24への入出力信号を伝送する信号伝送配線がコネクタCNTを介して入力される。第1パワー基板25A、第2パワー基板25Bの少なくとも1つには、コネクタCNTを介して電源装置83から電力を伝送する電力配線PWが接続される。本実施形態において、第1パワー基板25A及び第2パワー基板25Bには、コネクタCNTを介して電源装置83からの電力配線PWが接続される。
【0056】
図7は、本実施形態のECUの分解斜視図である。
図8Aは、本実施形態の基板組立体の正面図である。
図8Bは、本実施形態の基板組立体の左側面図である。
図8Cは、本実施形態の基板組立体の右側面図である。
図8Dは、本実施形態の基板組立体の平面図である。
図8Eは、本実施形態の基板組立体の底面図である。
図8Fは、本実施形態の基板組立体の背面図である。
図9は、本実施形態の基板組立体の分解斜視図である。
【0057】
図7に示すように、ECU10は、基板組立体200と、カバー210とを備える。カバー210は、金属製又は樹脂製である。
図9に示すように、基板組立体200は、ヒートシンク40の5面に対し、第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bと、制御基板24と、センサ基板21と、コネクタCNTとが取り付けられている。
【0058】
第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bと、制御基板24と、センサ基板21とは、樹脂等で形成されたプリント基板である。第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bとは、放熱性の高いアルミニウム、銅などの金属板の上に、樹脂層を積層し、樹脂層内に回路を形成した金属基板としてもよい。第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bとが金属基板である場合、ヒートシンク40への熱の伝導率が向上する。
【0059】
図8Aに示すように、制御基板24は、
図6に示す制御演算部241、ゲート駆動回路242及び遮断駆動回路243を構成する電子部品245と、リード挿入孔248を備える。
【0060】
図8Bに示すように、第1パワー基板25Aは、
図6に示すインバータ回路251、電流検出回路254及び電流遮断回路255を構成する電子部品256と、電源端子片271、272と、モータ接続端子片261、262、263と、リード端子257を備える。電源端子片271、272は、第1パワー基板25Aの実装面に対して立設している。モータ接続端子片261、262、263は、第1パワー基板25Aの実装面に対して立設している。
【0061】
図8Cに示すように、第2パワー基板25Bは、
図6に示すインバータ回路251、電流検出回路254及び電流遮断回路255を構成する電子部品256と、電源端子片271、272と、モータ接続端子片261、262、263と、リード端子257を備える。電源端子片271、272は、第2パワー基板25Bの実装面に対して立設している。モータ接続端子片261、262、263は、第2パワー基板25Bの実装面に対して立設している。
【0062】
電源端子片271、272は、銅又はアルミニウムなどの良導体の板材である。モータ接続端子片261、262、263は、銅又はアルミニウムなどの良導体の板材である。
図8B及び
図8Cに示すように、電源端子片271、272の板材の面は、モータ接続端子片261、262、263の板材の面とは、異なる向きを向いている。電源端子片271、272の板材の面と垂直な方向が、軸方向Axの方向に向くことが望ましく、モータ接続端子片261、262、263の板材の面と垂直な方向が、軸方向Axの方向と垂直な仮想面において1つの径方向の接線の向きに向くことが望ましい。
【0063】
図8Eに示すように、センサ基板21は、回転角度センサ23aを備えている。センサ基板21は、回転角度センサ23aの実装面の裏面に、リード端子257を備えている。
【0064】
図7に示すように、コネクタCNTは、電源端子Tdc、Tgndを有している。電源端子Tdcは、電源装置83の電源電圧Vdcを供給する金属製端子である。電源端子Tgndは、電源装置83の負電源電圧(例えば、グランドなどの基準電圧)を供給する金属製端子である。
【0065】
電源端子Tdcは、第1パワー基板25Aの電源端子片272(
図8B参照)に押し当てられ、抵抗溶接又はレーザ溶接されている。これにより、電源端子Tdcの1つの面と、第1パワー基板25Aの電源端子片272の1つの面とが面接触している。
【0066】
電源端子Tgndは、第1パワー基板25Aの電源端子片271(
図8B参照)に押し当てられ、抵抗溶接又はレーザ溶接されている。これにより、電源端子Tgndの1つの面と、第1パワー基板25Aの電源端子片271の1つの面とが面接触している。
【0067】
電源端子Tdc、Tgndは、コネクタCNTの第2パワー基板25B側にもある。第2パワー基板25B側の電源端子Tdcは、第2パワー基板25Bの電源端子片272(
図8C参照)に押し当てられ、抵抗溶接又はレーザ溶接されている。第2パワー基板25B側の電源端子Tgndは、第2パワー基板25Bの電源端子片271(
図8C参照)に押し当てられ、抵抗溶接又はレーザ溶接されている。
【0068】
図10Aは、本実施形態のヒートシンクの正面図である。
図10Bは、本実施形態のヒートシンクの左側面図である。
図10Cは、本実施形態のヒートシンクの右側面図である。
図10Dは、本実施形態のヒートシンクの平面図である。
図10Eは、本実施形態のヒートシンクの底面図である。
図10Fは、本実施形態のヒートシンクの背面図である。
【0069】
図9及び
図10Aから
図10Fに示すように、ヒートシンク40は、第1放熱アーム部41と、第2放熱アーム部42と、第1放熱アーム部41と第2放熱アーム部42とを連結する連結部43とを備え、U字状である。
図10Aに示すように、第1放熱アーム部41と、第2放熱アーム部42とは、連結部43により距離を開けて配置されている。このため、第1放熱アーム部41と、第2放熱アーム部42との間には、開口部44ができる。
【0070】
図8Fに示すように、コネクタCNTは、チョークコイル49を備えている。チョークコイル49は、上述した電源装置83からの電力配線PWの高周波成分を除去する。チョークコイル49は、開口部44の空間に配置される。チョークコイル49と、回転角度センサ23a(
図8E参照)との間には、連結部43がある。連結部43がチョークコイル49のノイズを回転角度センサ23aへ伝達しないように、連結部43がチョークコイル49のノイズを遮蔽できる。
【0071】
図10A及び
図10Bに示すように、第1放熱アーム部41は、
図7に示す軸方向Axの径方向外側に配置される第1面41aと、
図7に示す軸方向Axの径方向内側であって、開口部44に面している第2面41bと、第1面41aと第2面41bとをつなぐ側面となる第3面41c、第4面41d及び第5面41fと、第5面41fとは反対側の第6面41eとを備える。
【0072】
図9に示すように、第1パワー基板25Aの実装面の裏面は、ヒートシンク40の第1放熱アーム部41にネジなどで固定される。これにより、第1パワー基板25Aの実装面の裏面は、
図10Bに示す第1放熱アーム部41の第1面41aに、直接又は放熱材を介して接している。放熱材は、シリコーンポリマーに熱伝導性フィラーを混合した材料であり、TIM(Thermal Interface Material)と呼ばれる。
【0073】
図10A及び
図10Cに示すように、第2放熱アーム部42は、
図7に示す軸方向Axの径方向外側に配置される第1面42aと、
図7に示す軸方向Axの径方向内側であって、開口部44に面している第2面42bと、第1面42aと第2面42bとをつなぐ側面となる第3面42c、第4面42d及び第5面42fと、第5面42fとは反対側の第6面42eとを備える。
【0074】
図9に示すように、第2パワー基板25Bの実装面の裏面は、ヒートシンク40の第2放熱アーム部42にネジなどで固定される。これにより、第2パワー基板25Bの実装面の裏面は、
図10Cに示す第2放熱アーム部42の第1面42aに、直接又は上述した放熱材を介して接している。
【0075】
図9に示すように、制御基板24は、第1放熱アーム部41及び第2放熱アーム部42に跨がるように、ヒートシンク40の正面にネジなどで固定される。これにより、制御基板24は、第1パワー基板25A及び第2パワー基板25Bが固定される面と交差する面に固定される。このように、制御基板24の実装面は、第1パワー基板25Aの実装面及び第2パワー基板25Bの実装面が配置される平面とは異なる。これにより、ECU10の容積を小さくすることができる。
【0076】
図9及び
図10Aに示すように、第1放熱アーム部41の第3面41cと、第2放熱アーム部42の第3面42cとには、段差が設けられ、凹部がある。これにより、
図10Aにおいて、制御基板24は、第1放熱アーム部41の第3面41cの一部と、第2放熱アーム部42の第3面42cの一部とに開口部44の空間が介在するように固定されている。また、ヒートシンク40は、U字状であるので、制御基板24の裏面は、ヒートシンク40の開口部44に露出する。これにより、制御基板24には、第1放熱アーム部41と第2放熱アーム部42の熱が伝達しにくくなっている。
【0077】
コネクタCNTは、第1放熱アーム部41及び第2放熱アーム部42に跨がるように、ヒートシンク40に固定される。コネクタCNTは、第1放熱アーム部41の第5面41fと、第2放熱アーム部42の第5面42fとに固定されている。ヒートシンク40は、U字状であるので、コネクタCNTは、連結部43と対向する。
【0078】
図10Eに示すように、ヒートシンク40は、支持部46及び支持部47を備える。支持部46には、軸方向Axに貫通する締結孔43H1を備える。支持部47には、軸方向Axに貫通する締結孔43H2を備える。
図7及び
図10Eを参照して説明すると、締結孔43H1と、電動モータ30の反負荷側の締結孔314とは重なり合い、ボルトが挿通されることで、ヒートシンク40と電動モータ30とが締結される。締結孔43H2と、電動モータ30の反負荷側の締結孔315とは重なり合い、ボルトが挿通されることで、ヒートシンク40と電動モータ30とが締結される。
【0079】
図10B、
図10C及び
図10Fに示すように、第1放熱アーム部41の第4面41d及び第2放熱アーム部42の第4面42dの位置には、軸方向Axに延びて、ざぐり加工により凹んだ凹部421(
図10D参照)が設けられている。
図10Dに示すように、凹部421を通してみると、締結孔43H1が露出する。これにより、ドライバーが凹部421に挿入可能になる。その結果、凹部421には、締結孔43H1に挿入されるボルトが配置される。カバー210の容積を最大限利用できるようにして放熱効率を向上させても、電動モータ30に固定できるようになる。
【0080】
図10Eに示すように、連結部43は、センサ基板21の取り付け面に、凹部43Hを備える。連結部43は、凹部43Hの周りにセンサ基板支持部45を備えている。
図8Eに示すように、センサ基板21は、センサ基板支持部45(
図10E参照)にネジなどで固定されている。センサ基板21は、ヒートシンク40の凹部43H内に格納されており、連結部43に囲われている。センサ基板21は、凹部43Hにより、連結部43との間に、空間が介在するように固定されている。これにより、センサ基板21には、第1放熱アーム部41と第2放熱アーム部42の熱が伝達しにくくなっている。
【0081】
図11は、本実施形態のシャフト、磁石、回転角度センサの位置関係を説明するための説明図である。
図11及び
図7に示すように、磁石32は、シャフト31の反負荷側端部に固定されている。磁石32は、周方向にみて交互に配置されたS極及びN極を外周面に有する。
【0082】
センサ基板21は、シャフト31の反負荷側であって、軸方向Axの延長線上に配置されている。センサ基板21は、軸方向Axと直交する平面を回転角度センサ23aの実装面としている。回転角度センサ23aは、磁石32の磁場の変化を感知できるように、センサ基板21に実装されている。磁石32と、回転角度センサ23aとは、軸方向Axにおいて、対向していることが望ましい。
【0083】
回転角度センサ23aは、例えば、スピンバルブセンサである。スピンバルブセンサは、反強磁性層等で磁化の向きが固定された強磁性体のピン層と、強磁性体のフリー層とで非磁性層を挟んだ素子で、磁束の向きの変化を検出できるセンサである。スピンバルブセンサには、GMR(Giant Magneto Resistance)センサ、TMR(Tunnel Magneto Resistance)センサがある。なお、回転角度センサ23aは、磁石32の回転を検出可能なセンサであればよい。回転角度センサ23aは、例えば、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)センサ、又はホールセンサでもよい。
【0084】
図12は、本実施形態のモータ接続端子とコイル配線との接続を説明するための説明図である。
図7に示すように、電動モータ30には、反負荷側に突出するコイル配線321、322、323がある。コイル配線321、322、323は、銅線又はアルミニウム線であって、いわゆる板状の平角線である。モータ接続端子片261、262、263の平面は、コイル配線321、322、323の平面と対向し、平面同士が接するように押し当てられ、抵抗溶接又はレーザ溶接されている。
【0085】
図13は、本実施形態の第1パワー基板と制御基板との接続を説明するための説明図である。
図13に示すように、制御基板24と第1パワー基板25Aとの電気的な接続部Qにおいて、リード端子257がリード挿入孔248に挿入され、半田などの金属ペーストで接合されている。接続部Qは、リード端子257の外周が弾性変形可能なように撓ませ、リード挿入孔248の内壁面の導体と接続できる、いわゆるプレスフィットと呼ばれる、ソルダーレスの電気的な接続であってもよい。制御基板24と第2パワー基板25Bとの電気的な接続部も上述した接続部Qと同じ構造(以下、接続部Qという。)である。また、制御基板24とセンサ基板21との電気的な接続部も上述した接続部Qと同じ構造(以下、接続部Qという。)である。
【0086】
図7に示すように、電源装置83の電源電圧は、電源端子Tdc、Tgndを介して、第1パワー基板25A及び第2パワー基板25Bに供給されている。
図6に示すように、第1パワー基板25A及び第2パワー基板25Bの少なくとも1つに供給された電源装置83の電源電圧が、上述した接続部Qを介して、制御基板24に供給されている。同様に、制御基板24に供給された電源装置83の電源電圧が、接続部Qを介して、センサ基板21に供給される。
【0087】
上述したように、
図3に示す電動駆動装置1は、第1ラックアンドピニオン機構99及び第2ラックアンドピニオン機構70近傍に配置されている。このため、ECU10と電動モータ30との内部に、水分、塵ができるだけ入らないように、ECU10と電動モータ30との接合部分は、封止部材を介して封止する。また、コネクタCNTと、カバー本体211との間も防水性及び防塵性を高めるため、密閉構造を有している。
【0088】
図14は、本実施形態のコネクタの固定について説明するための説明図である。
図15は、本実施形態のコネクタの密閉構造を説明するための説明図である。
図7及び
図14に示すように、カバー210は、円筒のカバー本体211の正面に、コネクタCNTを露出させる貫通孔212を有している。貫通孔212の内壁219は、
図15に示すように、カバー210の内側(軸方向Axの電動モータ30側)に突出する突起部221を備えている。コネクタCNTの外径側には、張り出し底部233と、張り出し底部233の径方向外側をカバー210の外側(軸方向Axの電動モータ30とは反対側)に屈曲させた堰部232を備える。張り出し底部233と、堰部232と、コネクタCNT本体との間には、凹状の貯留部231ができ、貯留部231に、突起部221の端部が挿入されている。
【0089】
貯留部231に封止材が充填されると、貯留部231と、突起部221との間が封止され、カバー本体211と、コネクタCNTとの間には、密閉構造ができあがる。封止材は、ガスケット、接着剤、ゴムなどの弾性部材のOリングであってもよい。
【0090】
図7に示すように、カバー210には、カバー本体211の取り付け部に設けられた締結孔213を有している。電動モータ30は、カバー210を固定する締結孔313を備えている。カバー210と、電動モータ30とは、締結孔213と締結孔313とに挿通するボルトで固定される。カバー本体211の外径は、電動モータ30の外径とほぼ直径が同じである。これにより、電動駆動装置1は、外側の他の部品との干渉が抑制された状態で、取り付けることができる(
図3参照)。締結孔213と締結孔313とは、周方向に3カ所、等分配置されているので、ボルトで固定されると振動などが加わっても緩みにくい。
【0091】
図16は、本実施形態の変形例に係るECUの分解斜視図である。
図16に示す電動駆動装置1において、
図7に示す電動駆動装置1と同じ構成は、上述した構成と同じ符号を付して詳細な省略する。
図16に示す電動駆動装置1は、
図7に示す電動駆動装置1の構成に加え、多孔質材料で通気を保ちつつ、防水性及び防塵性を高める内部圧力調整部218を備える。ところで、温度上昇など外部環境に起因して、カバー本体211が囲む内部空間の内部圧力が変化することがある。この場合でも、内部空間が内部圧力調整部218を介して外部との間に通気されているので、カバー本体211が囲む内部空間の内部圧力の変化が時間経過とともに抑制される。その結果、カバー本体211の破損、カバー本体211と、電動モータ30との接合部分の損傷が抑制され、電動駆動装置1の耐久性が向上する。
【0092】
以上説明したように、電動駆動装置1は、電動モータ30と、電動モータ30を駆動制御するために、シャフト31の反負荷側に設けられたECU10と、を備える。ECU10は、シャフト31の反負荷側の端部の磁石32と、回転角度センサ23aを実装するセンサ基板21と、第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bと、制御基板24とを備える。ここで、回転角度センサ23aは、磁石32の回転を検出する磁気センサである。
【0093】
第1パワー基板25Aは、第1コイルグループGr1へ電流を供給する複数の電子部品256を、シャフト31の径方向外側の実装面に実装する。第2パワー基板25Bは、第2コイルグループGr2へ電流を供給する複数の電子部品256を、シャフト31の径方向外側の実装面に実装する。制御基板24は、第1パワー基板25A及び第2パワー基板25Bの少なくとも1つが供給する電流を制御する電子部品245を、シャフト31の径方向外側の実装面に実装する。
【0094】
第1パワー基板25A、第2パワー基板25B及び制御基板24が、シャフト31の軸方向の延長線の周りに配置されている。そして、第1パワー基板25A、第2パワー基板25B及び制御基板24と、電動モータ30がセンサ基板21を挟むように配置されている。
【0095】
この構造によれば、センサ基板21が電動モータ30寄りに配置されるので、シャフト31を短くすることができる。これにより、シャフト31の振れ回りが抑制され、電動モータ30の振動が抑制される。また、シャフト31の振れ回りが抑制されることで、回転角度センサ23aの回転角度の検出精度が向上する。そして、シャフト31の保護を考慮することなく、作業手順を定めることができるので、作業効率が向上する。
【0096】
本実施形態の電動駆動装置1において、ECU10は、シャフト31の反負荷側の端部の磁石32と、基板組立体200とを備える。基板組立体200は、ヒートシンク40と、センサ基板21と、第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bと、制御基板24とを備える。
【0097】
基板組立体200は、第1パワー基板25A、第2パワー基板25B及び制御基板24がシャフト31の軸方向Axの延長線の周りに配置されるように、第1パワー基板25A、第2パワー基板25B及び制御基板24がヒートシンク40に組み付けられる。第1パワー基板25A、第2パワー基板25B及び制御基板24は、電動モータ30との間に、軸方向Axにおいてセンサ基板21を挟むように、センサ基板21がヒートシンク40に組み付けられる。そして、基板組立体200が電動モータ30の反負荷側に固定される。
【0098】
この構造によれば、予め組み立てられた基板組立体200を電動モータ30の反負荷側に固定することで、第1パワー基板25A、第2パワー基板25B、制御基板24及びセンサ基板21が電動モータ30に取り付けられる。このため、取り付け作業の効率が向上する。
【0099】
第1パワー基板25A、第2パワー基板25Bには、それぞれ、シャフト31の軸方向Axにおいて、コネクタCNT寄りの部分に立設する電源端子片271、272と、センサ基板21寄りの部分に立設するモータ接続端子片261、262、263とがある。基板組立体200に、コネクタCNTが取り付けられることで、電源端子片271、272は、電力配線PWと接続する。電動モータ30の反負荷側に、基板組立体200を固定することで、容易に、モータ接続端子片261、262、263が、コイル配線321、322、323と接続する。
【0100】
電源端子片271、272と、モータ接続端子片261、262、263とは、良導体の板材であって、電源端子片271、272の板材の1面が軸方向Axから視認でき、モータ接続端子片261、262、263の板材の1面が径方向の接線の向きから視認可能である。この構造により、コネクタCNTを軸方向に取り付けることで、電源端子片271、272が容易に電力配線PWと接続することができる。また、電動モータ30の反負荷側の、基板組立体200を軸方向Axに当接し、基板組立体200を軸方向Ax周りに少し回転することで、モータ接続端子片261、262、263が、コイル配線321、322、323と、面同士で容易に接触できる。これにより、組立作業の効率が向上する。
【0101】
図7に示すように、電動モータ30の反負荷側に、位置決め用の突起となる位置決めボス330がある。位置決めボス330は、基板組立体200の位置を規制する。
【0102】
図8E及び、
図10Eに示すように、ヒートシンク40の連結部43には、位置決めボス330に対応する位置に、凹部43H3を備える。位置決めボス330と、凹部43H3とが嵌め合い、電動モータ30に対する基板組立体200の位置が規制される。
【0103】
図7又は
図16に示すように、電動モータ30の反負荷側に、基板組立体200を固定した後、基板組立体200の全体を覆うカバー210を電動モータ30の反負荷側に固定する。これにより、貫通孔212をコネクタCNTの一部が貫通し、上述したように、カバー本体211と、コネクタCNTとの間には、容易に密閉構造ができあがる。
【0104】
図7及び
図16に示すように、コイル配線321、322、323は、ヒートシンク40よりも径方向外側に配置されている。これにより、コイル配線321、322、323がセンサ基板21よりも径方向外側に配置されるので、ヒートシンク40により、コイル配線321、322、323の磁界の影響が抑制される。
【0105】
第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bは、それぞれインバータ回路251が動作すると、発熱する。
図7に示すように、第1パワー基板25Aは、第2パワー基板25Bと、シャフト31の軸方向Axの延長線を挟む位置に配置されている。これにより、第1パワー基板25A及び第2パワー基板25Bの両方が動作している場合は、カバー210の内部空間において、発熱分布の偏りが緩和される。本実施形態では、第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bとは平行である。なお、第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bとがシャフト31の軸方向Axの延長線を挟み、非平行な平面に配置されてもよい。
【0106】
ヒートシンク40は、第1放熱アーム部41と、第2放熱アーム部42と、連結部43とを備え、U字状である。第1パワー基板25Aの第1実装面の裏面は、第1放熱アーム部41の径方向外側の第1面41aに取り付けられ、第2パワー基板25Bの実装面の裏面は、第2放熱アーム部42の径方向外側の第1面42aに取り付けられる。第1放熱アーム部41の径方向内側の第2面41bと、第2放熱アーム部42の径方向内側の第2面42bとの間には、開口部44の空間がある。この構造によれば、第1パワー基板25Aと、第2パワー基板25Bとの動作割合が異なる場合でも、第1放熱アーム部41に伝達される熱と、第2放熱アーム部42に伝達される熱とがそれぞれ開口部44で分けられ、放熱することができる。また、第1放熱アーム部41の径方向内側の第2面41bと、第2放熱アーム部42の径方向内側の第2面42bとがあることで、ヒートシンク40の放熱面積が大きくなり、放熱効率が高まる。
【0107】
例えば、第2パワー基板25Bにおいて、電流検出回路254で検知した電流値が異常と判断される場合、制御演算部241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第2コイル38へ流れる電流を遮断する。制御演算部241は、第1パワー基板25Aのインバータ回路251からのみ、電流を第1コイル37へ流す。これにより、第1パワー基板25Aの発熱が増加し、第2パワー基板25Bの発熱が低下する。この場合でも、第1パワー基板25Aから第1放熱アーム部41に伝達される熱は、効率よく放熱される。第2パワー基板25Bの発熱が増加し、第1パワー基板25Aの発熱が低下する場合でも、同様に、第1放熱アーム部41に伝達される熱と、第2放熱アーム部42に伝達される熱とがそれぞれ開口部44で分けられ、放熱することができる。
【0108】
また、電動パワーステアリング装置100は、電子制御装置(ECU10)と、電子制御装置(ECU10)に制御され補助操舵トルクを生じさせる電動モータ30と、を備える。これにより、電動パワーステアリング装置100は、組み立て作業の効率が向上する。