(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記冷却ジャケットの前記冷媒経路の断面積は、前記搬送経路の中心に設けられている前記冷却ジャケットから前記搬送経路の両端に設けられている前記冷却ジャケットに向かって小さくなっていくことを特徴とする請求項1または2に記載の連続焼鈍設備。
複数の前記冷却ジャケットの前記冷媒経路の断面積は、前記搬送経路の中心に設けられている前記冷却ジャケットから前記搬送経路の両端に設けられている前記冷却ジャケットに向かって大きくなっていくことを特徴とする請求項1または2に記載の連続焼鈍設備。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態では、電磁鋼板(方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板)の仕上げ焼鈍工程や平坦化焼鈍工程に適用される連続焼鈍設備を示す。以下の説明において、特に断らない限り、「搬送方向」とは電磁鋼板の搬送方向をいうものとし、「幅方向」とは搬送経路を搬送される電磁鋼板の幅方向をいうものとし、「法線方向」とは、搬送される電磁鋼板の表面に直角な方向(電磁鋼板の厚さ方向)をいうものとする。連続焼鈍設備が水平パスであれば、「搬送方向」は水平方向であり、「幅方向」は搬送方向に直角でかつ水平な方向であり、「法線方向」は上下方向である。各図においては、連続焼鈍設備の3次元の各方向をX,Y,Zの矢印で示す。X方向は搬送方向であり、Y方向は幅方向であり、Z方向は法線方向である。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る連続焼鈍設備1の構成例を模式的に示す図である。
図1に示すように、連続焼鈍設備1は、電磁鋼板Sを搬送経路Pに沿って搬送しながら連続焼鈍できる構成を有しており、搬送方向の上流側から順に、加熱部21と冷却部22とが直列的に設けられる。なお、加熱部21の構成は特に限定されるものではなく、公知の各種構成が適用できる。さらに、連続焼鈍設備1は、冷却部22の冷却機構5に流体の冷媒を供給する冷媒供給部3を有する。冷媒供給部3は、流体の冷媒を冷却部22の冷却機構5に供給できる構成であればよく、たとえば公知の各種ポンプなどが適用できる。冷媒の種類も特に限定されるものではなく、水や油などといった各種流体が適用できる。
【0032】
図1に示すように、冷却部22の内部には、搬送方向に並べて設けられる複数の搬送ローラ201が設けられる。そして、複数の搬送ローラ201によって、電磁鋼板Sの搬送経路Pが形成される。さらに、冷却部22の内部には、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sからの輻射熱を吸収することによって電磁鋼板Sを冷却する冷却機構5が設けられる。本発明の実施形態では、電磁鋼板Sの輻射熱を吸収する冷却機構5として、冷却ジャケット51−1〜51−9が適用される例を示す。冷却ジャケット51−1〜51−9の内部には、流体の冷媒が通過可能な冷媒経路52−1〜52−9が設けられている。冷却ジャケット51−1〜51−9と冷媒供給部3とは接続されている。そして、冷却ジャケット51−1〜51−9に設けられる冷媒経路52−1〜52−9に、冷媒供給部3から供給された冷媒を流すことができる。これにより、冷媒によって電磁鋼板Sからの輻射熱を吸収し、電磁鋼板Sを冷却することができる。
【0033】
冷却ジャケット51−1〜51−9の材質は、特に限定されない。ただし、冷却ジャケット51−1〜51−9には、高温での酸化腐食を防止するため、例えば、Moが添加された耐酸化性を有するステンレス鋼が適用できる。このように、高温での酸化腐食や、冷媒に対する耐腐食性を有する材料であることが好ましい。
【0034】
ところで、電磁鋼板Sの最終焼鈍工程や平坦化焼鈍工程において、電磁鋼板Sの温度分布が不均一となると残留ひずみが誘起される。残留ひずみは、方向性電磁鋼板については鉄損や磁歪の原因となり、無方向性電磁鋼板については鉄損の原因となる。このため、電磁鋼板Sの鉄損や磁歪を防止や抑制するためには、最終焼鈍工程や平坦化焼鈍工程において、電磁鋼板Sの温度分布の均一化(冷却速度の均一化)を図ることが好ましい。しかしながら、冷却部22の内部の炉壁202の影響によって、電磁鋼板Sの温度分布が不均一となることがある。具体的には、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの表面と冷却部22の炉壁202(本発明の実施形態では、冷却部22の内壁面のうちの幅方向両側の面をいうものとする。
図2〜
図9参照)との距離や角度は、電磁鋼板Sの幅方向位置によって相違する。このため、電磁鋼板Sの表面から輻射されて炉壁202により吸収される熱量や、電磁鋼板Sが炉壁202から受ける輻射熱の量も、電磁鋼板Sの幅方向位置によって相違することがある。その結果、電磁鋼板Sの温度分布(冷却速度)が幅方向について不均一となり、残留ひずみが誘起されることがある。
【0035】
そこで、本発明の実施形態では、冷却機構5の放射吸収率(すなわち、電磁鋼板Sからの輻射熱を吸収する量)を、幅方向で不均一にする。特に、幅方向の中心部と両端部とで、冷却機構5の放射吸収率を相違させる。これにより、炉壁202の影響を相殺し、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化(冷却速の度均一化)を図る。
【0036】
なお、炉壁202が電磁鋼板Sの幅方向の温度分布に与える影響は、炉壁202の構成に応じて相違する。本発明の実施形態では、この影響を、次の(A)(B)の2種類に分類する。(A)炉壁202の放射吸収率が高く、炉壁202による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量が、幅方向の両端部に向かうにしたがって多くなる。この場合、炉壁202の影響により、電磁鋼板Sの温度は幅方向の両端部に向かうにしたがって低くなる。(B)炉壁202の放射吸収率が低く、炉壁202による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量が、幅方向の両端部に向かうにしたがって少なくなる。この場合、炉壁202の影響により、電磁鋼板Sの温度は幅方向の両端部に向かうにしたがって高くなる。
【0037】
そして、冷却機構5を影響の種類(A)(B)に応じた構成とすることにより、炉壁202の影響を相殺して電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図る。具体的には、前記(A)については、冷却機構5による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量を、幅方向の中心部において多くし、幅方向の両端部において少なくする。一方、前記(B)については、冷却機構5による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量を、幅方向の中心部において少なくし、幅方向の両端部において多くする。すなわち、冷却機構5の放射吸収率(冷却機構5による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量)を、炉壁202の影響に応じて、幅方向の中心部と両端部とで相違させる。このような構成によれば、炉壁202の影響を相殺して電磁鋼板Sの温度分布の均一化を図ることができる。
【0038】
次に、冷却機構5の各例について説明する。前述のとおり、冷却機構5は、炉壁202の影響の種類に応じた構成を有する。以下に示す第1の例、第3の例、第5の例、第7の例、第9の例、第11の例は、前記(A)に適した構成の例である。第2の例、第4の例、第6の例、第8の例、第10の例、第12の例は、前記(B)に適した構成の例である。
【0039】
なお、影響の種類が(A)であるか(B)であるかは、炉壁202の構成(材質や表面性状)や、電磁鋼板Sと炉壁202との距離や角度などに応じて決まる。したがって、いずれの例を適用するかは、適用対象である連続焼鈍設備1の構成に応じて(例えば、影響を実測するなどして)決定すればよい。
【0040】
(1)第1の例
(2)第2の例
第1の例と第2の例について、
図2と
図3を参照して説明する。
図2は、冷却機構5の構成の第1の例を模式的に示す図であり、
図3は、冷却機構5の構成の第2の例を模式的に示す図である。
図2と
図3は、いずれも搬送方向に直角な面で切断した断面を示す。
図2と
図3に示すように、冷却部22の内部には、搬送ローラ201から法線方向(上下方向)に離れた位置に、冷却機構5として冷却ジャケット51−1,51−2が設けられる。第1の例と第2の例は、冷却機構5における単位幅方向寸法あたりの冷媒経路の冷媒が通過可能な断面積が幅方向の位置によって異なる例である。
【0041】
第1の例と第2の例において、冷却機構5である冷却ジャケット51−1,51−2は、法線方向に薄い扁平な形状を有している。また、冷却ジャケット51−1,51−2は幅方向に所定の寸法を有しており、法線方向視(上下方向視)において、少なくとも一部が搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sに重なるように設けられる。例えば、
図2と
図3に示すように、冷却ジャケット51−1,51−2の幅方向寸法は、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの幅方向寸法(本発明の実施形態に係る連続焼鈍設備1により連続焼鈍可能な電磁鋼板Sの最大幅方向寸法)以上の寸法が適用できる。そして、法線方向視において、冷却ジャケット51−1は、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの幅方向の全体に重なるように設けられる。このような構成であると、搬送される電磁鋼板Sの幅方向の全体について、輻射熱を吸収して冷却することができる。ただし、冷却ジャケット51−1の幅方向寸法は、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの幅方向寸法よりも小さい寸法であってもよい。
【0042】
冷却ジャケット51−1,51−2の内部には冷媒経路52−1,52−2が設けられる。すなわち、冷却ジャケット51−1,51−2は、搬送方向に延伸する中空筒状の構成を有しており、内部の空間が冷媒経路52−1,52−2となる。そして、冷媒経路52−1,52−2は、幅方向の中心部の法線方向寸法(上下方向寸法)H
cと両端部の法線方向寸法H
eとが互いに相違する。
【0043】
具体的には、第1の例においては、
図2に示すように、冷媒経路52−1は、幅方向の中心部の法線方向寸法H
cが両端部の法線方向寸法H
eよりも大きい。そして、冷媒経路52−1の法線方向寸法は、中心部から両端部に向かうにしたがって小さくなっていく。すなわち、冷却ジャケット51−1の冷媒経路52−1の単位幅方向寸法あたりの断面積(冷媒が通過可能な領域の断面積)は、中心部から両端部に向かうにしたがって小さくなっていく。このような構成によれば、冷却ジャケット51−1の冷媒経路52−1を搬送方向に流れる冷媒の流量(ここでは、単位幅方向寸法あたりの流量をいう)は、幅方向の中心部において多くなり、両端部において少なくなる。このため、冷却機構5である冷却ジャケット51−1の放射吸収率(すなわち、電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量)は、幅方向の中心部において高くなり、両端部において低くなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(A)の場合には、このような構成とすることにより、炉壁202による幅方向の両端部の温度低下の影響を相殺し、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0044】
また、第1の例においては、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの表面と冷却ジャケット51−1の表面(電磁鋼板Sに対向する表面)との法線方向の距離Lは、幅方向の中心部において最も小さく、幅方向の両端部に向かうにしたがって大きくなる。電磁鋼板Sから輻射熱の吸収量は、この距離が小さいほど多くなり、大きいほど少なくなる。このため、このような構成によれば、電磁鋼板Sの幅方向の両端部における冷却量を、中心部に比較して少なくできる。したがって、炉壁202の影響を相殺する効果を高めることができる。ただし、この距離Lは、幅方向の中心部と両端部とで同じであってもよい。
【0045】
第2の例においては、
図3に示すように、冷媒経路52−2は、中心部における法線方向寸法H
cが両端部における法線方向寸法H
eよりも小さい。そして、冷媒経路52−2の法線方向寸法は、幅方向の中心部から両端部に向かうにしたがって大きくなっていく。すなわち、冷却ジャケット51−1の冷媒経路52−1の単位幅方向寸法あたりの断面積は、幅方向の中心部から両端部に向かうにしたがって大きくなっていく。このような構成によれば、冷却ジャケット51−2の冷媒経路52−2を搬送方向に流れる冷媒の単位時間当たりかつ単位幅方向寸法当たりの流量を、幅方向の中心部において少なくし、両端部において多くできる。このため、冷却機構5による放射吸収率(すなわち、電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量)は、幅方向の中心部において低くなり、両端部において高くなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(B)の場合には、炉壁202の影響により電磁鋼板Sの幅方向の両端部の冷却量が少なくなる。そこで、この場合には、第2の例に示す構成とすることにより、冷却機構5による幅方向の両端部の冷却量を増加させ、炉壁202の影響を相殺する。これにより、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0046】
また、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの表面と冷却ジャケット51−2の表面(電磁鋼板Sに対向する表面)との法線方向の距離Lは、幅方向の中心部において最も大きく、幅方向の両端部に向かうにしたがって小さくなる。このような構成によれば、電磁鋼板Sの幅方向の両端部における冷却量を、中心部に比較して多くできる。したがって、炉壁202の影響を相殺する効果を高めることができる。ただし、この距離Lは、幅方向の中心部と両端部とで同じであってもよい。
【0047】
このほか、第1の例と第2の例において、連続焼鈍設備1が冷却機構5の冷却ジャケット51−1,51−2と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離を変更する図略の移動機構部を有していてもよい。例えば、移動機構部として冷却部の22の内部に法線方向に伸縮可能な支柱が設けられ、冷却機構5の冷却ジャケット51−1,51−2がこの支柱に支持される構成が適用できる。この場合、支柱を伸縮させることによって、冷却機構5の冷却ジャケット51−1,51−2の法線方向位置、すなわち、冷却機構5の冷却ジャケット51−1,51−2と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの法線方向の距離を変更する。このほか、冷却機構5の冷却ジャケット51−1,51−2を冷却部22の内部にワイヤーなどによって吊り下げ、ワイヤーの巻取りや繰り出しによって、冷却機構5の冷却ジャケット51−1,51−2と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの法線方向の距離を変更する構成であってもよい。この場合、ワイヤーおよびワイヤーの巻取り/繰出機構が移動機構部となる。このような構成によれば、幅や厚さが異なる電磁鋼板を製造する場合や、異なる温度条件で電磁鋼板を製造する場合などにおいて、製造する電磁鋼板の仕様や製造条件に応じて最適な冷却の制御が可能になる。また、移動機構部は、連続焼鈍設備1が冷却機構5の冷却ジャケット51−1,51−2と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離を変更できる構成であればよく、伸縮可能な支柱やワイヤーの巻取り/繰り出し機構に限定されるものではない。具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0048】
(3)第3の例
(4)第4の例
次に、第3の例と第4の例について、
図4と
図5を参照して説明する。
図4は、冷却機構5の構成の第3の例を模式的に示す図であり、
図5は、冷却機構5の構成の第4の例を模式的に示す図である。
図4と
図5は、いずれも搬送方向に直角な面で切断した断面を示す。
図4と
図5に示すように、第3の例と第4の例においては、冷却部22の内部には、搬送ローラ201から法線方向(上下方向)に離れた位置に、冷却機構5として複数の冷却ジャケット51−3,51−4が設けられる。第3の例と第4の例も、冷却機構5における単位幅方向寸法あたりの冷媒経路の冷媒が通過可能な断面積が幅方向の位置によって異なる例である。
【0049】
第3と第4の例において、冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−3,51−4は、それぞれ内部に冷媒経路52−3,52−4が設けられる管状の構成を有する。そして、複数の冷却ジャケット51−3,51−4は、それらの長尺方向が搬送方向に平行となる向きで、幅方向に並べて設けられる。なお、
図4と
図5においては、冷却ジャケット51−3,51−4の断面形状が円形である例を示すが、断面形状は円形に限定されない。例えば、断面形状は、四角形などの多角形であってもよい。そして、第3の例と第4の例においては、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−3c,51−4cと、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−3e,51−4eとで、冷媒経路52−3,52−4の断面積(円形であれば内径)が相違する。
【0050】
具体的には、第3の例においては、
図4に示すように、冷媒経路52−3の断面積は、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−3cの方が、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−3eよりも大きい。そして、中心部の冷却ジャケット51−3cから両端部の冷却ジャケット51−3eに向かうにしたがって、冷媒経路52−3の断面積が小さくなっていく。このため、冷却機構5の全体では、冷却ジャケット51−3の冷媒経路52−3の単位幅方向寸法あたりの断面積が、幅方向の中心部から両端部に向かうにしたがって小さくなっていく。このような構成によれば、冷媒経路52−3を流れる冷媒の単位時間当たりの流量は、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−3cの方が、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−3eよりも多くなる。このため、複数の冷却ジャケット51−3による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量は、幅方向の中心部において多くなり、両端部において少なくなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(A)の場合には、このような構成とすることにより、炉壁202による幅方向の端部の温度低下の影響を相殺し、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0051】
なお、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの表面と複数の冷却ジャケット51−3のそれぞれの表面(電磁鋼板Sに対向する表面)との法線方向の距離Lは、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−3cおいて最も小さく、幅方向の両端部の冷却ジャケット51−3eに向かうにしたがって大きくなる。それぞれの冷却ジャケット51−3による電磁鋼板Sから輻射熱の吸収量は、電磁鋼板Sからの距離Lが小さいほど多くなり、大きいほど少なくなる。このため、このような構成によれば、電磁鋼板Sの幅方向の両端部における冷却量を、中心部に比較して少なくできる。したがって、炉壁202の影響を相殺する効果を高めることができる。ただし、この距離Lは、全ての冷却ジャケット51−3について同じであってもよい。
【0052】
第4の例においては、
図5に示すように、冷媒経路52−4の断面積(円形であれば内径)は、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−4cの方が、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−4eよりも小さい。そして、冷却ジャケット51−4の冷媒経路52−4の断面積は、中心部に設けられる冷却ジャケット51−4cから両端部の冷却ジャケット51−4eに向かうにしたがって大きくなっていく。このため、冷却機構5の全体では、冷却ジャケット51−4の冷媒経路52−4の単位幅方向寸法あたりの断面積が、幅方向の中心部から両端部に向かうにしたがって大きくなっていく。このような構成によれば、冷媒経路52−4を流れる冷媒の単位時間当たりの流量は、幅方向の中心に設けられる冷却ジャケット51−4cの方が、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−4eよりも少なくなる。このため、複数の冷却ジャケット51−4による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量は、幅方向の中心部において少なくなり、両端部において多くなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(B)の場合には、このような構成によれば、幅方向の両端部において、冷却機構5による輻射熱の吸収量を増加させることにより、炉壁202の影響を相殺できる。したがって、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0053】
なお、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの表面と複数の冷却ジャケット51−4のそれぞれの表面(電磁鋼板Sに対向する表面)との法線方向の距離Lは、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−4cにおいて最も大きく、幅方向の両端部の冷却ジャケット51−4eに向かうにしたがって小さく。このような構成によれば、電磁鋼板Sの幅方向の両端部における冷却量を、中心部に比較して多くできる。したがって、炉壁202の影響を相殺する効果を高めることができる。ただし、この距離Lは、全ての冷却ジャケット51−4について同じであってもよい。
【0054】
このほか、第3の例と第4の例において、連続焼鈍設備1が冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−3,51−4と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離と、互いの間隔を変更する図略の移動機構部を有していてもよい。冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−3,51−4と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離を変更するための機構としては、第1の例と同様の構成が適用できる。互いに間隔を変更するための機構としては、例えば、冷却部22の内部に幅方向に延伸するレールなどが設けられるとともに、冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−3,51−4が、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離を変更するための機構(例えば、伸縮可能な支柱やワイヤーの巻取/繰り出し機構)とともにレール上にレールの延伸方向(幅方向)に移動可能に設けられる構成が適用できる。このような構成によれば、幅や厚さが異なる電磁鋼板を製造する場合や、異なる温度条件で電磁鋼板を製造する場合などにおいて、製造する電磁鋼板の仕様や製造条件に応じて最適な冷却の制御が可能になる。なお、移動機構部は、連続焼鈍設備1が冷却機構5の冷却ジャケット51−3,51−4と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離を変更できる構成であればよく、具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、移動機構部としてリニアアクチュエータが設けられ、このリニアアクチュエータによって冷却ジャケット51−3,51−4を法線方向と幅方向に移動可能に支持する構成が適用できる。この場合、移動機構部は、複数の冷却ジャケット51−3,51−4をそれぞれ個別に移動させることができる構成であることが好ましい。個別に移動可能な構成であれば、緻密な温度制御が可能になる。
【0055】
(5)第5の例
(6)第6の例
図6は、冷却機構5の構成の第5の例を模式的に示す図であり、
図7は、冷却機構5の構成の第6の例を模式的に示す図である。
図6と
図7は、いずれも搬送方向に直角な面で切断した断面を示す。第5の例と第6の例においては、
図6と
図7に示すように、冷却部22の内部には、搬送ローラ201から法線方向(上下方向)に離れた位置に、冷却機構5として複数の冷却ジャケット51−5,51−6が設けられる。第5の例と第6の例も、冷却機構5における単位幅方向寸法あたりの冷媒経路の冷媒が通過可能な断面積が幅方向の位置によって異なる例である。なお、第5の例と第6の例では、複数の冷却ジャケット51−5,51−6どうしの間隔(換言すると、単位幅方向寸法あたりの配置本数、あるは配置密度)を幅方向の位置によって異ならせることにより、冷却機構5における単位幅方向寸法あたりの冷媒経路の冷媒が通過可能な断面積を、中心部と両端部とで異ならせている。
【0056】
第5と第6の例において、冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−5,51−6は、それぞれ内部に冷媒経路52−5,52−6が設けられた管状の構成を有する。複数の冷却ジャケット51−5,51−6は、それらの長尺方向が搬送方向に平行となる向きで、幅方向に並べて設けられる。そして、第5の例と第6の例においては、幅方向の中心部と両端部とで、単位幅方向寸法あたりの冷却ジャケット51−5,51−6の数が相違する。すなわち、幅方向の中心部と両端部とで、隣り合う冷却ジャケット51−5,51−6どうしの間隔が相違する。なお、
図6と
図7においては、第3や第4の例と同様に、冷却ジャケット51−5,51−6の断面形状が円形である例を示すが、断面形状は円形に限定されない。
【0057】
第5の例においては、
図6に示すように、隣り合う冷却ジャケット51−5どうしの間隔M(幅方向距離)は、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−5cどうしの間隔が最も小さく、幅方向の両端部のそれぞれに設けられる冷却ジャケット51−5eとそれらに隣接する冷却ジャケット51−5の間隔が最も大きい。また、この間隔は、幅方向の中心部から両端部に向かうにしたがって大きくなる。すなわち、冷却ジャケット51−5の単位幅方向寸法あたりの配置本数(配置密度)は、幅方向の中心部において最も多く、幅方向の両端部において最も少ない。このため、冷却機構5の全体では、冷却ジャケット51−5の冷媒経路52−5の単位幅方向寸法あたりの断面積は、幅方向の中心部から両端部に向かうにしたがって小さくなっていく。このような構成によれば、冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−5による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量は、幅方向の中心部において多くなり、両端部において少なくなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(A)の場合には、このような構成とすることにより、炉壁202による幅方向の両端部の温度低下の影響を相殺することができる。したがって、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0058】
第6の例においては、
図6に示すように、隣り合う冷却ジャケット51−5どうしの間隔M(幅方向距離)は、幅方向の両端部のそれぞれに設けられる冷却ジャケット51−5eとそれらに隣接する冷却ジャケット51−5の間隔が最も小さく、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−5cどうしの間隔が最も大きい。また、この間隔は、幅方向の両端部から中心部に向かうにしたがって大きくなる。すなわち、冷却ジャケット51−6の単位幅方向寸法あたりの配置本数(配置密度)は、幅方向の中心部において最も少なく、幅方向の両端部において最も多い。このため、冷却機構5の全体では、冷却ジャケット51−6の冷媒経路52−6の単位幅方向寸法あたりの断面積は、幅方向の中心部から両端部に向かうにしたがって小さくなっていく。このような構成によれば、冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−5による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量は、幅方向の両端部において多くなり、中心部において少なくなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(B)の場合には、このような構成とすることにより、炉壁202による幅方向の両端部の温度低下の影響を相殺することができる。したがって、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0059】
第5の例と第6の例においても、第3の例と第4の例と同様に、連続焼鈍設備1が冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−5,51−6と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離と、互いの間隔を変更する図略の移動機構部を有していてもよい。このような構成によれば、前述の効果を奏することができる。なお、移動機構部には、第3の例と第4の例と同様の構成が適用できる。ただし、移動機構部の具体的な構成は限定されるものではない。
【0060】
(7)第7の例
(8)第8の例
図8は、冷却機構5の構成の第7の例を模式的に示す図であり、
図9は、冷却機構5の構成の第8の例を模式的に示す図である。
図8と
図9は、いずれも搬送方向に直角な面で切断した断面を示す。第7の例と第8の例においては、
図8と
図9に示すように、冷却部22の内部には、搬送ローラ201から法線方向(上下方向)に離れた位置に、冷却機構5として複数の冷却ジャケット51−7,51−8が設けられる。
【0061】
第7と第8の例において、冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−7,51−8は、それぞれ内部に冷媒経路52−7,52−8が設けられた管状の構成を有する。複数の冷却ジャケット51−7,51−8は、それらの長尺方向が搬送方向に平行となる向きで、幅方向に並べて設けられる。そして、第7の例と第8の例においては、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−7c、51−8cと、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−7e,51−8eとで、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sからの法線方向の距離L(上下方向距離)が互いに相違する。なお、
図8と
図9においては、第3や第4の例と同様に、冷却ジャケット51−7,51−8の断面形状が円形である例を示すが、断面形状は円形に限定されない。
【0062】
第7の例においては、
図8に示すように、搬送される電磁鋼板Sの表面からの法線方向の距離Lは、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−7cにおいて最も小さく、両端部に設けられる冷却ジャケット51−7eにおいて最も大きい。そして、この距離Lは、中心部に設けられる冷却ジャケット51−7cから両端部に設けられる冷却ジャケット51−7eに向かうにしたがって大きくなる。このような構成によれば、複数の冷却ジャケット51−7による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量は、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−7cにおいて多くなり、両端部に設けられる冷却ジャケット51−7eにおいて少なくなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(A)の場合には、このような構成とすることにより、炉壁202による幅方向の両端部の温度低下の影響を相殺することができる。したがって、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0063】
第8の例においては、
図9に示すように、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sの表面からの法線方向の距離Lは、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−8cの方が、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−8eよりも大きい。そしてこの距離Lは、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−8eから中心部に設けられる冷却ジャケット51−8cに向かうにしたがって大きくなる。このような構成によれば、複数の冷却ジャケット51−8による電磁鋼板Sからの輻射熱の吸収量は、幅方向の中心部において少なくなり、両端部において多くなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(B)の場合には、このような構成とすることにより、冷却機構5による幅方向の両端部の冷却量を増加させることができ、炉壁202の影響を相殺して、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0064】
第7の例と第8の例においても、第3の例と第4の例と同様に、連続焼鈍設備1が冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−7,51−8と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離と、互いの間隔を変更する図略の移動機構部を有していてもよい。このような構成によれば、前述の効果を奏することができる。なお、移動機構部には、第3の例と第4の例と同様の構成が適用できる。ただし、移動機構部の具体的な構成は限定されるものではない。
【0065】
(9)第9の例
(10)第10の例
次に、第9の例と第10の例について、
図10を参照して説明する。
図10は、冷却機構5の第9の例と第10の例を模式的に示す図であり、搬送方向に直角な面で切断した断面を示す。なお、第9と第10の例においては、冷却ジャケット51−9に同じ構成が適用できることから、いずれも
図10を参照して説明する。
図10に示すように、第9と第10の例においては、搬送ローラ201により搬送される電磁鋼板Sから所定の距離を離れた位置に冷却機構5が設けられる。第9の例と第10の例の例に係る冷却機構5は、複数の冷却ジャケット51−9を有する。複数の冷却ジャケット51−9のそれぞれは、内部に冷媒経路52−9が設けられた管状の構成を有している。そして、複数の冷却ジャケット51−9は、それらの長尺方向が搬送方向に平行であり、搬送経路Pの幅方向に並べて設けられる。第9の例と第10の例においては、複数の冷却ジャケット51−9の冷媒経路52−9の断面積(円形であれば内径)が同じである。また、搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sからそれぞれの冷却ジャケット51−9までの上下方向距離Lも同じである。
【0066】
それぞれの冷却ジャケット51−9には、冷媒供給部3から冷媒が供給される。それぞれの冷却ジャケット51−9または冷媒供給部3とそれぞれの冷却ジャケット51−9との間には供給量調整部6が設けられる。冷媒供給部3からそれぞれの冷却ジャケット51−9に供給される冷媒の単位時間当たりの供給量(換言すると、それぞれの冷却ジャケット51−9におけ冷媒の単位時間当たりの流量)は、供給量調整部6によって個別に調整される。特に、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−9cと両端部に設けられる冷却ジャケット51−9eとで、単位時間当たりの供給量(流量)が互いに相違するように調整される。
【0067】
第9の例においては、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−9cへの単位時間当たりの供給量が最も多く、搬送経路Pの幅方向の端部に向かうにしたがって減少し、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−9eへの短時間当たりの供給量が最も少なくなるように調整される。それぞれの冷却ジャケット51−9による熱の吸収量(すなわち、幅方向の各位置における放射吸収率)は、冷却ジャケット51−9の寸法や電磁鋼板Sとの法線方向の距離Lが同じであれば、冷媒の単位時間当たりの流量が多くなるにしたがって多くなる。このため、このような構成によれば、それぞれの冷却ジャケット51−9における電磁鋼板Sの輻射熱の吸収量は、幅方向の中心部において最も多くなり、幅方向の両端に向かうにしたがって少なくなり、幅方向の両端部において最も少なくなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(A)の場合には、このような構成とすることにより、炉壁202による幅方向の両端部の温度低下の影響を相殺できる。したがって、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0068】
第10の例においては、幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−9cへの単位時間当たりの供給量(流量)が最も少なく、幅方向の両端部に向かうにしたがって増加していき、幅方向の両端部に設けられる冷却ジャケット51−9eへの単位時間当たりの供給量が最も多くなるように調整される。このため、このような構成によれば、それぞれの冷却ジャケット51−9における電磁鋼板Sの輻射熱の吸収量は、幅方向の中心部において最も少なくなり、幅方向の両端部に向かうにしたがって多くなっていき、幅方向の両端部において最も多くなる。炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(B)の場合には、このような構成とすることにより、炉壁202による幅方向の端部の冷却不足を補い、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0069】
さらに、第9の例と第10の例においては、供給量調整部6によって、冷媒の供給量を冷却ジャケット51−9ごとに個別に制御してもよい。このような構成であると、幅や厚さが異なる電磁鋼板を製造する場合や、異なる温度条件で電磁鋼板を製造する場合などにおいて、製造する電磁鋼板の仕様や製造条件に応じて最適な冷却の制御が可能になる。
【0070】
なお、冷却ジャケット51−9どうしの間隔は特に限定されるものではない。また、冷却ジャケット51−9どうしの間隔は、均等であってもよく互いに相違してもよい。例えば、冷却ジャケット51−9どうしの間隔は、第9の例においては、第5の例と同様に、幅方向の中心部に近いほど小さく、両端部に近いほど大きくなるように設定されてもよい。冷却ジャケット51−9どうしの間隔が小さいほど局所的な冷却量が多くなるから、このような構成によれば、幅方向の中央部における冷却量を多くし、幅方向の両端部における冷却量を少なくできる。したがって、炉壁202の影響を相殺する効果を高めることができる。一方、第10の例においては、第6の例と同様に、幅方向の中心部に近いほど大きく、両端部に近いほど小さくなるように設定されてもよい。このような構成によれば、幅方向の中央部における冷却量を少なくし、幅方向の両端部における冷却量を多くできる。したがって、炉壁202の影響を相殺する効果を高めることができる。
【0071】
また、供給量調整部6の構成は特に限定されるものではない。供給量調整部6は、オリフィスや各種の流量調整弁など、公知の各種構成が適用できる。また、供給量調整部6は、流量(供給量)が可変の構成であってもよく、流量が固定の構成であってもよい。要は、電磁鋼板Sの搬送経路Pの幅方向の中心部に設けられる冷却ジャケット51−9cと、両端部に設けられる冷却ジャケット51−9eとで、冷媒の供給量(流量)を互いに相違させることができる構成であればよい。
【0072】
第9の例と第10の例においても、第3の例と第4の例と同様に、連続焼鈍設備1が冷却機構5の複数の冷却ジャケット51−9と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離と、互いの間隔を変更する図略の移動機構部を有していてもよい。このような構成によれば、前述の効果を奏することができる。なお、移動機構部には、第3の例と第4の例と同様の構成が適用できる。ただし、移動機構部の具体的な構成は限定されるものではない。
【0073】
(11)第11の例
(12)第12の例
次に第11と第12の例について、
図11を参照して説明する。
図11は、冷却機構5の第11の例と第12の例を模式的に示す図であり、搬送方向に直角な面で切断した断面を示す。なお、第11と第12の例では、冷却ジャケット51−11に同じ構成が適用できることから、いずれも
図11を参照して説明する。
図11に示すように、搬送ローラ201により搬送される電磁鋼板Sから所定の距離を離れた位置に冷却ジャケット51−11が設けられる。冷却ジャケット51−11の内部には複数の冷媒経路52−11が設けられる。具体的には、
図11に示すように、冷却ジャケット51−11の内部には、電磁鋼板Sの搬送経路Pに平行な方向に延伸し、幅方向に並ぶ複数の冷媒経路52−11が設けられている。なお、複数の冷媒経路52−11は、幅方向の中心部に位置する1本または2本の冷媒経路52−11cと、搬送幅方向の両端部に位置する2本の冷媒経路52−11eとの、少なくとも3本または4本の冷媒経路52−11が含まれる。そして、それぞれの冷媒経路52−11は冷媒供給部3に接続されており、冷媒供給部3から供給される冷媒が流れるように構成される。
【0074】
それぞれの冷媒経路52−11または冷媒供給部3とそれぞれの冷媒経路52−11との間には供給量調整部6が設けられる。そして、それぞれの冷媒経路52−11に供給される冷媒の単位時間当たりの供給量(すなわち、単位時間当たりの流量)は、供給量調整部6によって個別に調整される。特に、幅方向の中心部に設けられる冷媒経路52−11cと両端部に設けられる冷媒経路52−11eとで、単位時間当たりの供給量(流量)が互いに相違するように調整される。
【0075】
第11の例においては、冷媒経路52−11への冷媒の単位時間当たりの供給量(流量)は、幅方向の中心に位置する冷媒経路52−11cが最も多く、幅方向の両端部に向かうにしたがって減少し、両端部に位置している冷媒経路52−11eが最も少なくなるように調整される。複数の冷媒経路52−11に供給される冷媒の単位時間当たりの供給量(流量)が相違すれば、冷却ジャケット51−11による熱の吸収量は、冷媒経路52−11が設けられる位置ごとに冷媒経路52−11を流れる冷媒の単位時間当たりの流量に応じて相違する。すなわち、冷却ジャケット51−11の放射吸収率は、幅方向の位置に応じて相違する。このため、それぞれの冷媒経路52−11への冷媒の単位時間当たりの供給量(流量)を前述のとおりとすれば、冷却ジャケット51−11による熱の吸収量は、幅方向の中心部において最も多くなり、幅方向の両端に向かうにしたがって少なくなっていき、幅方向の両端部において最も少なくなる。したがって、炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(A)の場合には、炉壁202による幅方向の端部の温度低下の影響を相殺し、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0076】
さらに、第11の例と第12の例においては、供給量調整部6によって、冷媒の供給量を冷却ジャケット51−11ごとに個別に制御してもよい。このような構成であると、幅や厚さが異なる電磁鋼板を製造する場合や、異なる温度条件で電磁鋼板を製造する場合などにおいて、製造する電磁鋼板の仕様や製造条件に応じて最適な冷却の制御が可能になる。
【0077】
第12の例においては、それぞれの冷媒経路52−11への冷媒の単位時間当たりの供給量は、幅方向の中心部に設けられる冷媒経路52−11cが最も少なく、搬送経路Pの幅方向の両端部に向かうにしたがって増加し、両端部に設けられる冷媒経路52−11eが最も多くなるように調整される。このため、それぞれの冷媒経路52−11への冷媒の単位時間当たりの供給量(単位時間当たりの流量)を前述のとおりとすれば、冷却ジャケット51−11による熱の吸収量は、幅方向の中心部において最も少なくなり、幅方向の両端に向かうにしたがって増加していき、幅方向の両端部において最も多くなる。このため、電磁鋼板Sの冷却量を、幅方向の中心において最も小さくし、幅方向の両端において最も大きくできる。したがって、炉壁202が電磁鋼板Sの温度に与える影響が前記(B)の場合には、炉壁202による幅方向の両端部の冷却不足の影響を相殺し、電磁鋼板Sの幅方向の温度分布の均一化を図ることができる。
【0078】
なお、供給量調整部6の構成は特に限定されるものではない。供給量調整部6は、オリフィスや各種の流量調整弁など、公知の各種構成が適用できる。また、供給量調整部6は、流量(供給量)を変更できる構成であってもよく、流量を変更できない構成であってもよい。要は、電磁鋼板Sの搬送経路Pの幅方向の中心に位置する冷媒経路52−11cと、両端部に位置する冷媒経路52−11eとで、冷媒の単位時間当たりの供給量(流量)を互いに異ならせることができる構成であればよい。
【0079】
第11の例と第12の例においても、第1の例と第2の例と同様に、連続焼鈍設備1が冷却機構5の冷却ジャケット51−11と搬送経路Pを搬送される電磁鋼板Sとの距離を変更する図略の移動機構部を有していてもよい。このような構成によれば、前述の効果を奏することができる。なお、移動機構部には、第1の例と第2の例と同様の構成が適用できる。ただし、移動機構部の具体的な構成は限定されるものではない。
【0080】
(他の例(その1))
なお、前記実施形態では、連続焼鈍設備1が、冷却機構5として、電磁鋼板Sの輻射熱を吸収することにより冷却する冷却ジャケット51−1〜51−11のみを有する構成を示したが、他の方式の冷却機構との組み合わせであってもよい。例えば、冷却機構5が、冷却ジャケット51−1〜51−11のほかに、ガス冷却機構を有していもよい。
【0081】
(他の例(その2))
次に、搬送経路Pに平行な方向(搬送方向)の位置に応じて異ならせる構成の例について説明する。前記第1の例〜第12の例では、冷却機構5による電磁鋼板Sの冷却量を幅方向の中心部と両端部とで相違させる例を示したが、搬送方向の位置よって相違させる構成であってもよい。また、幅方向の中心部と両端部とで冷却量を相違させる構成と、搬送方向の位置よって相違させる構成とを組み合わせてもよい。この場合、幅方向の中心部と両端部との冷却量の相違態様が互いに異なる複数の冷却機構5を搬送方向に並べて設ける構成が適用できる。例えば、幅方向の中心部の放射吸収率と両端部の放射吸収率の差(数値)が互いに異なる複数の冷却機構5を、搬送方向に直列的に並べて設ける構成であってもよい。また、前記影響(A)に適した冷却機構5(第1の例、第3の例、第5の例、第7の例、第9の例、第11の例)と、前記影響(B)に適した冷却機構5(第2の例、第4の例、第6の例、第8の例、第10の例、第12の例)を、搬送方向に直列的に並べる構成であってもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
例えば、前記実施形態では、冷却機構が搬送経路Pの上側にのみ設けられる構成を示したが、下側に設けられる構成であってもよく、上下両側に設けられる構成であってもよい。