特許第6852579号(P6852579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852579
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20210322BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01L9/00 303A
   G01L9/00 303T
   H01L29/84 B
   H01L29/84 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-113976(P2017-113976)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-205257(P2018-205257A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】後藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修久
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−051642(JP,U)
【文献】 特開平04−047244(JP,A)
【文献】 特開2010−203784(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0043530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L 27/00−27/02
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた基準センサ部と、
前記半導体基板に設けられた参照センサ部と、
を有し、
前記基準センサ部は、複数のピエゾ抵抗素子と、前記複数のピエゾ抵抗素子を繋ぐ第1の配線回路とを有し、
前記参照センサ部は、前記基準センサ部において、前記複数のピエゾ抵抗素子を省略して、前記第1の配線回路のうち前記複数のピエゾ抵抗素子を省略した部分を繋いで構成された第2の配線回路を有する、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記基準センサ部のベース出力及び/又は出力変化量と前記参照センサ部のベース出力及び/又は出力変化量とに基づいて、前記圧力センサに印加された圧力が検出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記基準センサ部のベース出力及び/又は出力変化量から前記参照センサ部のベース出力及び/又は出力変化量を差し引くことで、前記圧力センサに印加された圧力が検出される、
ことを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体でできたセンサチップの所定位置にダイアフラムを形成し、このダイアフラムを含んだセンサチップ上に差圧又は圧力検出用のセンサゲージを設けた圧力センサが開示されている。センサゲージは協働してブリッジ回路を形成する複数のセンサゲージからなり、各センサゲージ間は半導体抵抗で接続され、かつ複数のセンサゲージと半導体抵抗は絶縁膜で覆われている。絶縁膜の一部には、半導体抵抗に電気的に接続されたコンタクトを形成するための電極取り出し用のコンタクト穴が貫通して形成されている。そして、電極取り出し用のコンタクト穴の個数は、センサゲージの数以下となっている。
【0003】
また、物質に応力を加えた時に電気抵抗が変化する現象であるピエゾ抵抗効果を利用したピエゾ型半導体圧力センサが知られている。ピエゾ型半導体圧力センサは、例えば、異方性エッチングにより形成したダイアフラム構造部を持つ単結晶シリコンからなる半導体基板をガラス等のベース基板と接続した基本構成を有している。半導体基板の表面には、イオン注入などによる不純物導入により複数のピエゾ抵抗素子が形成され、各ピエゾ抵抗素子が、イオン注入などにより形成された配線でブリッジ状に接続されている。圧力の印加によってダイアフラムが変形すると、各ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化に対応する出力電圧の差分に基づいて、圧力が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各ピエゾ抵抗素子の抵抗変化率には異方性があるため、この異方性を少しでも吸収して優れた圧力検出能力を発揮するための構造の工夫が考えられる。例えば、結晶面の方位が(100)面であるN型単結晶シリコン基板の場合、ピエゾ抵抗係数π44が最大となる<110>方向に直交する向きにピエゾ抵抗素子を配置してセンサ感度を高めることが有効である。逆に、ピエゾ抵抗素子以外の配線回路(配線部)は、ピエゾ抵抗係数π44がゼロとなるように<110>方向に対して45°傾斜で配線することが有効である。これは、配線回路での抵抗成分が感度を持ってしまうことを抑えるためである。また、ピエゾ抵抗素子以外の配線回路は、圧力印加時の変形量が大きいダイアフラム上を避けて配線することが有効である。
【0006】
しかし、本発明者らの鋭意研究によると、上記構造は、ピエゾ抵抗素子以外の配線回路の抵抗変化という誤差要因を排除するために検討すべき制約となり得るものであり、この点で改良の余地があることが判明した。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ピエゾ抵抗素子以外の配線回路の抵抗変化の影響を低減することができる圧力センサを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の圧力センサは、その一態様では、半導体基板と、前記半導体基板に設けられた基準センサ部と、前記半導体基板に設けられた参照センサ部と、を有し、前記基準センサ部は、複数のピエゾ抵抗素子と、前記複数のピエゾ抵抗素子を繋ぐ第1の配線回路とを有し、前記参照センサ部は、前記基準センサ部において、前記複数のピエゾ抵抗素子を省略して、前記第1の配線回路のうち前記複数のピエゾ抵抗素子を省略した部分を繋いで構成された第2の配線回路を有する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピエゾ抵抗素子以外の配線回路の抵抗変化の影響を低減することができる圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態による圧力センサの構成を示す平面図である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図2を参照して、本実施形態による圧力センサ1について詳細に説明する。図1は本実施形態による圧力センサ1の構成を示す平面図であり、図2図1のII−II線に沿う断面図である。
【0012】
圧力センサ1は、半導体基板10とベース基板20とを有している。半導体基板10は、例えば、結晶面の方位が(100)面であるN型単結晶シリコン基板とすることができる。ベース基板20は、例えば、ガラス材料やセラミックス材料等から構成することができる。
【0013】
半導体基板10とベース基板20は、平面視したときに略同一の矩形形状をなしている。半導体基板10の下面とベース基板20の上面は、互いに接合(陽極接合)されている。
【0014】
半導体基板10とベース基板20(両基板の接合体)は、平面視したとき、図1中の左右方向の長さが図1中の上下方向の長さの2倍となっている。このため、図1中の左右方向の中間部で半導体基板10とベース基板20(両基板の接合体)を左右に区画したとき、左右一対の正方形の領域が画成される。以下では、左右一対の正方形の領域のうち、一方(図1中の左側)を基準センサ部形成領域Bと呼び、他方(図1中の右側)を参照センサ部形成領域Rと呼ぶ。
【0015】
半導体基板10は、基準センサ部形成領域Bにおいて、表面(上面)の中央部に形成された正方形のダイアフラム11Bと、このダイアフラム11Bを取り囲む厚肉部12Bとを有している。半導体基板10は、基準センサ部形成領域Bにおいて、裏面(下面)の中央部に形成された凹部13Bを有している。図示は省略しているが、ベース基板20は、基準センサ部形成領域Bにおいて、ダイアフラム11Bの裏側(凹部13B)に被測定媒体の圧力を導く導圧路を有していてもよい。
【0016】
半導体基板10は、参照センサ部形成領域Rにおいて、表面(上面)の中央部に形成された正方形のダイアフラム11Rと、このダイアフラム11Rを取り囲む厚肉部12Rとを有している。半導体基板10は、参照センサ部形成領域Rにおいて、裏面(下面)の中央部に形成された凹部13Rを有している。図示は省略しているが、ベース基板20は、参照センサ部形成領域Rにおいて、ダイアフラム11Rの裏側(凹部13R)に被測定媒体の圧力を導く導圧路を有していてもよい。
【0017】
半導体基板10は、基準センサ部形成領域Bにおいて、基準センサ部30Bを有している。基準センサ部30Bは、4つのピエゾ抵抗素子31Bと、この4つのピエゾ抵抗素子31Bを繋ぐ第1の配線回路32Bと、この第1の配線回路32Bに接続された4つのコンタクト33Bとを有している。
【0018】
4つのピエゾ抵抗素子31Bは、正方形のダイアフラム11Bの各辺の中央部の外側の領域に上下左右に配置されている。4つのピエゾ抵抗素子31Bは、それぞれ、ピエゾ領域として作用して圧力を検出することが可能である。
【0019】
第1の配線回路32Bは、上方と左方のピエゾ抵抗素子31Bを繋ぐとともに左上方向に延びる部分と、上方と右方のピエゾ抵抗素子31Bを繋ぐとともに右上方向に延びる部分と、下方と右方のピエゾ抵抗素子31Bを繋ぐとともに右下方向に延びる部分と、下方と左方のピエゾ抵抗素子31Bを繋ぐとともに左下方向に延びる部分とを含んだ所定の配線パターンを有している。
【0020】
4つのピエゾ抵抗素子31Bと第1の配線回路32Bは、例えば、半導体基板10の表面(上面)にイオン注入などによって不純物を導入することで形成される。4つのピエゾ抵抗素子31Bと第1の配線回路32Bは、協働して、圧力検出用のブリッジ回路を形成する。図示は省略しているが、4つのピエゾ抵抗素子31Bと第1の配線回路32Bは、その一部又は全部が酸化膜(絶縁膜)で覆われていてもよい。
【0021】
4つのコンタクト33Bは、正方形の基準センサ部形成領域Bの四隅に設けられており、第1の配線回路32Bの左上方向、右上方向、右下方向、左下方向に延びる部分とそれぞれ接続されている。4つのコンタクト33Bは、4つのピエゾ抵抗素子31Bと第1の配線回路32B(ブリッジ回路)に電圧を印加する機能と、4つのピエゾ抵抗素子31Bと第1の配線回路32B(ブリッジ回路)から電圧を取り出す機能とを有している。
【0022】
半導体基板10は、参照センサ部形成領域Rにおいて、参照センサ部30Rを有している。参照センサ部30Rは、第2の配線回路31Rと、この第2の配線回路31Rに接続された4つのコンタクト32Rとを有している。
【0023】
第2の配線回路31Rは、基準センサ部30Bにおいて、4つのピエゾ抵抗素子31Bを省略して、第1の配線回路32Bのうち4つのピエゾ抵抗素子31Bを省略した部分を繋いだ構成を有している。すなわち、基準センサ部30Bの第1の配線回路32Bは、中央部が4つのピエゾ抵抗素子31Bで分断されているが、参照センサ部30Rの第2の配線回路31Rは、4つのピエゾ抵抗素子31Bを省略して当該4つのピエゾ抵抗素子31Bによって分断されることなく一体成形されている。第2の配線回路31Rは、中央部から、左上方向に延びる部分と、右上方向に延びる部分と、右下方向に延びる部分と、左下方向に延びる部分とを含んだ所定の配線パターンを有している(この点については第1の配線回路32Bと共通している)。
【0024】
第2の配線回路31Rは、例えば、半導体基板10の表面(上面)にイオン注入などによって不純物を導入することで形成される。第2の配線回路31Rは、単独で、圧力検出用のブリッジ回路を形成する。図示は省略しているが、第2の配線回路31Rは、その一部又は全部が酸化膜(絶縁膜)で覆われていてもよい。
【0025】
4つのコンタクト32Rは、正方形の参照センサ部形成領域Rの四隅に設けられており、第2の配線回路31Rの左上方向、右上方向、右下方向、左下方向に延びる部分とそれぞれ接続されている。4つのコンタクト32Rは、第2の配線回路31R(ブリッジ回路)に電圧を印加する機能と、第2の配線回路31R(ブリッジ回路)から電圧を取り出す機能とを有している。
【0026】
以上のように構成された圧力センサ1は、例えば、基準センサ部形成領域Bに設けられたダイアフラム11Bに加えられた絶対圧、ゲージ圧、差圧などを検出するために使用される。圧力の印加によりダイアフラム11Bが変形すると、4つのピエゾ抵抗素子31Bの抵抗値が変化し、この抵抗値の変化に対応する電圧の差分に基づいて、圧力が検出される。
【0027】
ここで、4つのピエゾ抵抗素子31Bと同様に、圧力を受けた際に第1の配線回路32Bの抵抗値も変動する。第1の配線回路32Bの抵抗値の変動は、4つのピエゾ抵抗素子31Bの抵抗値の変動よりも十分に小さいものではあるが、圧力センサ1による圧力検出の精度に悪影響を及ぼすノイズ(外乱)成分となり得る。
【0028】
そこで本実施形態では、4つのピエゾ抵抗素子31B以外の第1の配線回路32Bの抵抗変化の影響を低減するための工夫を施している。すなわち、本実施形態では、基準センサ部30Bのベース出力及び/又は出力変化量と参照センサ部30Rのベース出力及び/又は出力変化量とに基づいて、圧力センサ1に印加された圧力を検出する。より具体的に、本実施形態では、基準センサ部30Bのベース出力及び/又は出力変化量から参照センサ部30Rのベース出力及び/又は出力変化量を差し引くことで、圧力センサ1に印加された圧力を検出する。
【0029】
基準センサ部30Bの出力は、4つのピエゾ抵抗素子31Bの抵抗値と第1の配線回路32Bの抵抗値を合成した合成抵抗値に対する出力電圧を意味している。基準センサ部30Bのベース出力は、圧力センサ1に圧力を印加していない状態における基準センサ部30Bの出力電圧を意味している。基準センサ部30Bの出力変化量は、圧力センサ1に圧力を印加した状態における基準センサ部30Bの出力電圧の変化量を意味している。
【0030】
参照センサ部30Rの出力は、第2の配線回路31Rの抵抗値に対する出力電圧を意味している。参照センサ部30Rのベース出力は、圧力センサ1に圧力を印加していない状態における参照センサ部30Rの出力電圧を意味している。参照センサ部30Rの出力変化量は、圧力センサ1に圧力を印加した状態における参照センサ部30Rの出力電圧の変化量を意味している。
【0031】
基準センサ部30Bのベース出力及び/又は出力変化量から参照センサ部30Rのベース出力及び/又は出力変化量を差し引くことにより、第1の配線回路32Bの抵抗値の変動を除去(相殺)した高精度な圧力検出が可能になる。
【0032】
このように、本実施形態の圧力センサ1では、圧力センサパターン(基準センサ部30B、ピエゾ抵抗素子31B、第1の配線回路32B)と同一基板上に、ピエゾ抵抗素子31B以外の配線回路のみで構成したリファレンスセンサパターン(参照センサ部30R、第2の配線回路31R)を設けている。そして、リファレンスセンサパターンのベース出力と出力変化量を圧力センサパターンのベース出力と出力変化量から差し引くことで、配線回路における圧力印加時の抵抗変化の影響や温度変化時の特性変化の影響を除外(低減)することができる。
【0033】
また、ピエゾ抵抗素子31B以外の抵抗変化という誤差要因を排除するための検討要素の1つである配線引き回しの方向や位置等の制約にとらわれることなく、自由度の高い配線レイアウトが可能となる。さらに、従来の圧力センサで誤差要因となっていた影響を除去することが可能となり、精度の良い圧力センサ1を実現することが可能になる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成要素の大きさや形状、機能などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0035】
上記実施の形態では、基準センサ部30Bに4つのピエゾ抵抗素子31Bを設けた場合を例示して説明したが、ピエゾ抵抗素子31Bの数は4つに限定されず、例えば、2つ、3つ、5つ以上であってもよい(ピエゾ抵抗素子31Bは複数であればよい)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の圧力センサは、絶対圧、ゲージ圧、差圧などを検出するための圧力センサに適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 圧力センサ
10 半導体基板
11B 11R ダイアフラム
12B 12R 厚肉部
13B 13R 凹部
20 ベース基板
30B 基準センサ部
31B ピエゾ抵抗素子
32B 第1の配線回路
33B コンタクト
30R 参照センサ部
31R 第2の配線回路
32R コンタクト
B 基準センサ部形成領域
R 参照センサ部形成領域
図1
図2