(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力系統の周波数が変動したとき前記同期発電機のガバナフリー運転に相当する周波数調整量を算出し前記電力制御部の前記有効電力の目標値に加算するガバナフリー制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の交直変換器制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る交直変換器制御装置の構成図である。
図1では、電力系統11に、同期発電機を有した発電システム12及び蓄電池から有効電力及び無効電力を充放電する交直変換器蓄電池システム13が接続されたものを示しており、太陽光発電設備などの再エネルギー電源の図示は省略している。
【0014】
発電システム12は、同期発電機14を原動機15で駆動して電力系統11の負荷16に電力を供給するものであり、制御装置17は、電圧検出器18aで検出された同期発電機14の出力電圧及び電流検出器19aで検出された同期発電機14の出力電流を入力し、原動機15及び同期発電機14を制御して出力電力が目標値になるように制御する。
【0015】
交直変換器蓄電池システム13は、蓄電池20の交直変換器21を制御して電力系統11に有効電力及び無効電力を充放電するものであり、交直変換器21はリアクトル22及び変圧器23を介して電力系統11に接続されている。
【0016】
また、交直変換器21は、本発明の第1実施形態に係る交直変換器制御装置24で制御される。交直変換器制御装置24は、電圧検出器18bで検出された変圧器23の出力電圧(系統電圧)、電流検出器19b1で検出された変圧器23の出力電流及び電流検出器19b2で検出された交直変換器21の出力電流を入力し、電力系統11に充放電する有効電力及び無効電力が目標値になるように制御する。その際に、蓄電池20から同期発電機14の慣性力に相当する電力を出力するようにし周波数維持効果を高める。
【0017】
交直変換器制御装置24は、電力制御部25と位相同期部26と発電機慣性力発生部27とから構成される。電力制御部25は蓄電池20から電力系統11に充放電する有効電力及び無効電力が目標値になるように交直変換器21に制御指令を出力するものであり、位相同期部26は交直変換器21の出力電圧の位相が電力系統11の系統電圧の位相となるように電力制御部25に系統電圧の位相に同期した信号を出力するものである。また、発電機慣性力発生部27は、位相同期部26の応答を遅延させた回路を有しその回路で得られた系統電圧との位相差に基づいて、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し電力制御部25の有効電力の目標値に加算するものである。
【0018】
電力制御部25の電力演算部28は、電圧検出器18bで検出された変圧器23の出力電圧、電流検出器19b1で検出された変圧器23の出力電流を入力し、交直変換器制御装置24から出力される有効電力及び無効電力を演算し、三相二相変換して二相変換された有効電力P及び無効電力Qを出力する。電力演算部28で演算された有効電力Pは加算器29a1に入力され、電力演算部28で演算された無効電力Qは加算器29b1に入力される。電力制御部25の三相/dq変換部30aは、電流検出器19b2で検出された交直変換器21の出力電流(三相電流)を入力して三相二相変換し、二相変換された交直変換器21の出力電流を加算器29a2、29b2に出力する。
【0019】
加算器29a1では、有効電力目標値P1に後述の発電機慣性力発生部27から出力される同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piを加算器29d1で加算した加算値(P1+Pi)と、交直変換器制御装置24から出力される有効電力Pとの差分ΔPを演算し有効電力調整器31に出力する。同様に、加算器29b1では、無効電力目標値Q1と、交直変換器制御装置24から出力される無効電力Qとの差分ΔQを演算し無効電力調整器32に出力する。
【0020】
加算器29a2では、有効電力調整器31の出力と三相/dq変換部30aで二相変換されたd軸電流との差分を演算しd軸電流調整器33に出力する。d軸電流調整器33の出力は加算器29a3にて後述の位相同期部26からの位相角信号が加算され充放電する有効電力指令値が演算される。同様に、加算器29b2では、無効電力調整器32の出力と三相/dq変換部30aで二相変換されたq軸電流との差分を演算しq軸電流調整器34に出力する。q軸電流調整器34の出力は加算器29b3にて後述の位相同期部26からの位相角信号が加算され充放電する無効電力指令値が演算される。
【0021】
加算器29a3からの有効電力指令値及び加算器29b3からの無効電力指令値は、dq/三相変換部35に入力され二相三相変換されてゲートパルス発生部36を介して交直変換器21に入力される。これにより、交直変換器21は、有効電力及び無効電力が目標値になるように制御され、蓄電池20から同期発電機14の慣性力に相当する電力が加算された有効電力になるように制御される。
【0022】
次に、位相同期部26は交直変換器21の出力電圧の位相が電力系統11の系統電圧の位相となるように電力制御部25に系統電圧の位相に同期した信号を出力するものであり、位相同期回路PLL(Phase Locked Loop)で構成される。
【0023】
位相同期部26の三相/dq変換部30bは、電圧検出器18bで検出された変圧器23の出力電圧(系統電圧)を入力し、三相の系統電圧を二相に変換するとともに、二相成分演算部37aで求めた内部信号(交直変換器21の出力電圧)の二相成分の位相角(cosθH、sinθH)を入力し、系統電圧の位相と内部信号の位相とを比較する。そして、その比較結果を位相角信号として電力制御部25の加算器29a3、29b3に出力するとともに位相差検出部38aに出力する。
【0024】
位相差検出部38aは、系統電圧の位相と内部信号の位相との位相差ΦHを演算し位相差調整部39aに出力する。位相差調整部39aは位相差ΦHが零となるような調整量を演算し加算器29cに出力する。加算器29cは、位相差調整部39aからの調整量と基準周波数(系統電圧の周波数)とを加算して内部信号の角周波数ωHを求める。内部信号の角周波数ωHは積分要素40aに入力され、積分要素40aにて位相角θHが求められる。積分要素40aにて求められた位相角θHは二相成分演算部37aに入力され、二相成分演算部37aにて内部信号(交直変換器21の出力電圧)の二相成分の位相角(cosθH、sinθH)が求められる。
【0025】
このように、位相同期部26は、内部信号(交直変換器21の出力電圧)の位相が電力系統11の系統電圧の位相となるように、電力制御部25の加算器29a3、29b3に位相角信号として出力するものである。これにより、交直変換器21の出力電圧の位相は電力系統11の系統電圧の位相に一致するように調整される。
【0026】
次に、発電機慣性力発生部27は、位相同期部26の応答を遅延させた回路を有し、その回路で得られた系統電圧との位相差に基づいて、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し、電力制御部25の有効電力の目標値に加算するものである。
【0027】
発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLは、三相/dq変換部30c、二相成分演算部37b、位相差検出部38b、位相差調整部39b、加算器29c2、積分要素40bで構成され、位相同期部26の位相同期回路PLL(位相同期部26の三相/dq変換部30b、二相成分演算部37a、位相差検出部38a、位相差調整部39a、加算器29c1、積分要素40a)と同様な回路構成である。発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLは、位相同期部26の位相同期回路PLLの応答を遅延させた回路である。
【0028】
交直変換器21は、系統電圧に対して、いかなる電圧を発生するのかを瞬時に演算して蓄電池20の出力電力を所望の電力になるように制御する必要がある。すなわち、系統電圧が実際のものと違っていれば蓄電池20の出力電力を所望電力にすることは困難であるため、できる限り系統電圧は実際のものに近づけておく必要がある。そこで、位相同期部26の位相同期回路PLLは応答速度が早くなるように位相同期部26の位相差調整部39aの制御定数は定められている。一方、発電機慣性力発生部27の位相差調整部39bの制御定数は、位相同期部26の位相差調整部39aの制御定数より応答が遅くなるように設定されている。これは、電力系統11の負荷16の急変により電力系統11の周波数が変動した場合に、同期発電機14の特性と同様に電力系統11の周波数変動が抑制される応答とするためである。
【0029】
位相同期部26の位相同期回路PLLが発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLより応答が早いことから、
図1では、位相同期部26の位相同期回路PLLの諸量には添え字Hを付し、発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLの諸量には添え字Lを付している。
【0030】
そして、発電機慣性力発生部27は、発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLL(位相同期部26の三相/dq変換部30b、二相成分演算部37a、位相差検出部38a、位相差調整部39a、加算器29c1、積分要素40a)に加え、発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLで得られた系統電圧との位相差ΦLに基づいて、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piを演算する慣性力演算部41を有する。慣性力演算部41は、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piとして、負荷急変時に同期発電機14が出力する電気出力{Pi=(1/XT)*sinΦL}を演算する。XTは交直変換器21の交流側のリアクタンス(主に交流リアクトルまたは変圧器のリアクタンス)、ΦLは系統電圧の位相と内部信号(交直変換器21の出力電圧)の位相との位相差である。
【0031】
慣性力演算部41は演算した周波数変動抑制量Piを加算器29d1に出力する。加算器29d1は周波数変動抑制量Piを電力制御部25の有効電力の目標値P1に加算する。これにより、同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量Piを有効電力の目標値P1に加算するので、電力系統11の負荷16の急変時に電力系統11の周波数低下を大幅に改善できる。
【0032】
図2は電力系統の負荷急変時の本発明の第1実施形態に係る交直変換器制御装置の応答の波形図であり、
図2(a)は負荷変動に対する発電機出力及び蓄電池出力の波形図、
図2(b)は
図2(a)の場合の周波数変動の波形図である。
図2(b)では電力系統11の基準周波数が50Hzの場合を示している。
【0033】
図2(a)において、いま、時点t1で電力系統11の負荷が2000kWから2500kWに急増したとする。電力系統11に同期発電機14が連系されているので電力系統の負荷変動に応じて同期発電機14は出力を増加させる。また、本発明の第1実施形態に係る交直変換器制御装置は発電機慣性力発生機能を有しているので、電力系統11の負荷急変に伴い、蓄電池20からも負荷急変に対応して電力が電力系統11に出力される。従って、
図2(b)に示すように、電力系統11の周波数の変動は、負荷が急増した時点t1において、わずかに0.3Hz程度変動しただけである。
【0034】
図3は電力系統の負荷急変時の従来の交直変換器制御装置の応答の波形図であり、
図3(a)は負荷変動に対する発電機出力及び蓄電池出力の波形図、
図3(b)は
図2の場合の周波数変動の波形図である。
図3は
図2の比較例として示した。
【0035】
図3(a)において、いま、時点t1で電力系統11の負荷が2000kWから2500kWに急増したとする。電力系統11に同期発電機14が連系されているので電力系統の負荷変動に応じて同期発電機14は出力を増加させる。一方、従来の交直変換器制御装置は発電機慣性力発生機能を有していないので、電力系統11の負荷急変に伴い、蓄電池20から電力が追加して出力されることはない。従って、
図3(b)に示すように、電力系統11の周波数の変動は、負荷が急増した時点t1から負荷変動が収束するまでの時点t2において大きく変動する。
図2及び
図3から分かるように本発明の第1実施形態によれば、電力系統11の負荷16の急変時に電力系統11の周波数低下を大幅に改善できる。また、発電機慣性力発生機能は位相同期回路PLLで実現できるので、簡単な回路で実現が可能である。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図4は本発明の第2実施形態に係る交直変換器制御装置の構成図である。この第2実施形態は、
図1に示した第1実施形態に対し、電力系統の周波数が変動したとき同期発電機のガバナフリー運転に相当する周波数調整量を算出し電力制御部25の有効電力の目標値に加算するガバナフリー制御部42を追加して設けたものである。
図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0037】
ガバナフリー制御部42は、電力系統11の系統周波数が変動したとき、同期発電機14のガバナフリー運転に相当する周波数調整量ΔPfを算出するものである。ガバナフリー運転は、数秒〜数十秒(1〜2分くらいまで)の系統周波数の変動を吸収する周波数調整量ΔPfを出力するものである。なお、同期発電機14の慣性力による周波数変動の抑制は系統周波数の変動が0〜十数秒の系統周波数の変動を吸収する周波数変動抑制量Piを出力するものである。
【0038】
図4において、電力系統11の系統周波数fは周波数検出器43で検出され、周波数検出器43で検出された系統周波数fは加算器29eに入力される。加算器29eは系統周波数fと基準周波数f0との差分を演算し周波数偏差Δfとして関数発生器44に出力する。関数発生器44は周波数偏差Δfに基づいて、同期発電機14のガバナフリー運転に相当する周波数調整量ΔPfを発生する。関数発生器44は周波数偏差Δfが零を中心として所定幅では周波数調整量ΔPfが零となる不感帯を有し、また、周波数偏差Δfの絶対値が所定値を超えると周波数調整量ΔPfが一定値となる関数を有する。周波数偏差Δfが不感帯及び絶対値が所定値を超えない範囲では、周波数調整量ΔPfは、Pf=−K・Δfで示される。Kは同期発電機14でいう速度調停率の逆数(K=1/速度調定率)である。
【0039】
系統周波数fが基準周波数f0より低下し不感帯を逸脱しているときは、周波数偏差Δfは負であるので、蓄電池20の放電を増加させる周波数調整量ΔPfが関数発生器44より出力される。逆に、系統周波数fが基準周波数f0より上昇し不感帯を逸脱しているときは、周波数偏差Δfは正であるので、蓄電池20の放電を減少させる周波数調整量ΔPfが関数発生器44より出力される。
【0040】
ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfは加算器29d2に出力される。加算器29d2は、ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfと、発電機慣性力発生部27から出力される同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piとを加算し加算器29d2に出力する。加算器29d2は、周波数調整量ΔPfと周波数変動抑制量Piとを加算し加算値(ΔPf+Pi)を加算器29d1に出力する。加算器29d1は加算値(ΔPf+Pi)を電力制御部25の有効電力の目標値P1に加算する。これにより、ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPf及び同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量Piの加算値(ΔPf+Pi)を有効電力の目標値P1に加算するので、電力系統11の負荷16の急変時に電力系統11の周波数低下を大幅に改善できる。
【0041】
図5は電力系統の負荷急変時の本発明の第2実施形態に係る交直変換器制御装置の応答の波形図であり、
図5(a)は負荷変動に対する発電機出力及び蓄電池出力の波形図、
図5(b)は
図5(a)の場合の周波数変動の波形図である。
図5(b)では電力系統11の基準周波数が50Hzの場合を示している。
【0042】
図5(a)において、いま、時点t1で電力系統11の負荷が2000kWから2500kWに急増したとする。電力系統11に同期発電機14が連系されているので電力系統の負荷変動に応じて同期発電機14は出力を増加させる。また、本発明の第2実施形態に係る交直変換器制御装置は発電機慣性力発生機能及びガバナフリー機能を有しているので、電力系統11の負荷急変に伴い、蓄電池20からも負荷急変に対応して電力が電力系統11に出力される。従って、
図2(b)に示すように、電力系統11の周波数の変動は、負荷が急増した時点t1において、わずかに0.2Hz程度変動しただけである。
【0043】
図6はガバナフリー機能を有した従来の交直変換器制御装置の負荷急変時の応答の波形図であり、
図6(a)は負荷変動に対する発電機出力及び蓄電池出力の波形図、
図6(b)は
図6(a)の場合の周波数変動の波形図である。
図6は
図5の比較例として示した。
【0044】
図6(a)において、いま、時点t1で電力系統11の負荷が2000kWから2500kWに急増したとする。電力系統11に同期発電機14が連系されているので電力系統の負荷変動に応じて同期発電機14は出力を増加させる。一方、従来の交直変換器制御装置はガバナフリー機能は有しているが発電機慣性力発生機能を有していないので、電力系統11の負荷急変に伴い、蓄電池20から電力が追加して出力されるのはガバナフリー機能に基づくものだけである。従って、ガバナフリー機能は、前述したように、数秒〜数十秒(1〜2分くらいまで)の系統周波数の変動を吸収する周波数調整量ΔPfを出力するものであり、系統周波数の変動が0〜十数秒の系統周波数の変動を吸収する周波数変動抑制量Piは出力されない。このことから、
図3(b)に示すように、電力系統11の周波数の変動は、負荷が急増した時点t1から負荷変動が収束するまでの時点t2において大きく変動する。発電機慣性力発生機能を有している場合には、
図5から分かるように電力系統11の負荷16の急変時に電力系統11の周波数低下を大幅に改善できる。なお、本発明の第2実施形態の場合には、ガバナフリー機能を有しているので、数秒〜数十秒(1〜2分くらいまで)の系統周波数の変動を吸収できる。
【0045】
本発明の第2実施形態によれば、蓄電池システム13の交直変換器21にガバナフリー機能に加え慣性力発生機能を付加することで、周波数低下を大幅に改善できる。また、発電機慣性力発生機能は位相同期回路PLLで実現できるので、簡単な回路で実現が可能である。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。