特許第6852597号(P6852597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852597
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/08 20090101AFI20210322BHJP
   H04W 36/30 20090101ALI20210322BHJP
【FI】
   H04W72/08
   H04W36/30
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-129098(P2017-129098)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-12950(P2019-12950A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】下島野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 一郎
【審査官】 米倉 明日香
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−233624(JP,A)
【文献】 特開平1−273442(JP,A)
【文献】 特開2014−135560(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0044870(US,A1)
【文献】 特開2010−34908(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0002275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出する検出部と、
前記検出部で信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから前記第1チャネルに変更し、前記第2基地局装置の送信チャネルを変更しない設定部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
制御装置に用いられる制御方法であって、
第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの
信号の品質を検出するステップと、
信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから
前記第1チャネルに変更するステップと、
を含み、
前記変更するステップは、前記第2基地局装置の送信チャネルを変更しないことを特徴とする制御方法。
【請求項3】
第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出するステップと、
信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから前記第1チャネルに変更するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記変更するステップは、前記第2基地局装置の送信チャネルを変更しないことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特にチャネルを制御する制御装置、制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と移動局の2種類の設備で構成されるデジタル無線システムには上り下りペアの無線周波数が割り当てられる。デジタル無線システムでは、上り下りのペアの無線周波数を用いて、基地局−移動局間あるいは基地局を経由した移動局間の通信を行う。移動局がプレストークにより送信状態にあり、移動局から送信された情報が基地局を介して基地局ゾーン内にいる受信状態の他の移動局に伝達される。
【0003】
しかしながら、基地局が送信状態であっても、受信電界強度が復調できるレベルになく、基地局からの通信を受信できない移動局がある。このような移動局に対しても情報を送るために、基地局は、基地局からの情報を受信できない第1の移動局と該第1の移動局に近い第2の移動局とを判定する。基地局は、第2の移動局に対して一定期間自局の送信周波数を基地局の送信周波数に代えて予め決めた情報を第1の移動局に送信するよう指示する。第2の移動局は、指示を受けると、該情報を第1の移動局に送信する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−86923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第2の移動局に対して、一定期間自局の送信周波数を基地局の送信周波数に代えて予め決めた情報を第1の移動局に送信させる場合、第2の移動局、つまり移動局の処理が複雑になる。また、このような複雑な処理を実行可能な移動局と、実行不可能な移動局が存在する場合、実行不可能な移動局を第2の移動局に設定できないので、処理を実行できない場合もある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、端末装置の処理の複雑化を回避しながら、端末装置が通信できない状況の発生を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御装置は、第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出する検出部と、検出部で信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更し、第2基地局装置の送信チャネルを変更しない設定部と、を備える。
本発明の別の態様もまた、制御装置である。この装置は、第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出する検出部と、
検出部で信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更する設定部と、を備える。設定部は、第2基地局装置が受信チャネルを変更してから所定時間が経過した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第1チャネルから第2チャネルに戻す。
本発明のさらに別の態様もまた、制御装置である。この装置は、第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出する検出部と、検出部で信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更する設定部と、を備える。設定部は、第2基地局装置において過去の所定時間以内に受信した端末装置の優先度の合算値または平均値を算出し、算出した値よりも検出部における検出対象の端末装置の優先度が高い場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、制御方法である。この方法は、制御装置に用いられる制御方法であって、第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出するステップと、信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更するステップと、を含む。変更するステップは、第2基地局装置の送信チャネルを変更しない
本発明のさらに別の態様もまた、制御方法である。この方法は、制御装置に用いられる制御方法であって、第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出する検出ステップと、検出ステップで信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更する変更ステップと、を含む。変更ステップは、第2基地局装置が受信チャネルを変更してから所定時間が経過した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第1チャネルから第2チャネルに戻す。
本発明のさらに別の態様もまた、制御方法である。この方法は、制御装置に用いられる制御方法であって、第1基地局装置が受信した信号であって、かつ第1チャネルを使用した端末装置からの信号の品質を検出する検出ステップと、検出ステップで信号の品質低下を検出した場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更する変更ステップと、を含む。変更ステップは、第2基地局装置において過去の所定時間以内に受信した端末装置の優先度の合算値または平均値を算出し、算出した値よりも検出ステップにおける検出対象の端末装置の優先度が高い場合に、第2基地局装置の受信チャネルを第2チャネルから第1チャネルに変更する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、端末装置の処理の複雑化を回避しながら、端末装置が通信できない状況の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図1の通信システムにおいて使用されるチャネルの配置を示す図である。
図3図2のチャネル配置を使用した場合の処理の概要を示す図である。
図4図1の基地局装置の構成を示す図である。
図5図1の制御装置の構成を示す図である。
図6図5の記憶部に記憶されるCHのテーブルを示す図である。
図7図5の記憶部に記憶される基地局装置詳細情報テーブルを示す図である。
図8図5の記憶部に記憶される端末受信履歴テーブルを示す図である。
図9図5の制御装置による処理の概要を示す図である。
図10図5の制御装置による続きの処理の概要を示す図である。
図11図5の制御装置によるさらに続きの処理の概要を示す図である。
図12図5の制御装置による処理手順を示すフローチャートである。
図13】実施例2に係る記憶部に記憶される優先度テーブルを示す図である。
図14】実施例2に係る制御装置による処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例1は、基地局装置を介して互いに通信する複数の端末装置が含まれる通信システムに関する。本通信システムは、例えば、業務用無線システムに対応し、グループ通信を実行する。また、端末装置から基地局装置に向かう上りリンクの周波数(以下、「上り周波数」という)と、基地局装置から端末装置に向かう下りリンクの周波数(以下、「下り周波数」という)とは異なる。なお、上り周波数は、基地局装置における受信周波数に相当し、下り周波数は、基地局装置における送信周波数に相当する。複数の上り周波数と複数の下り周波数とが規定されているが、1つの上り周波数と1つの下り周波数との組合せが基地局装置に設定される。以下、この組合せを「チャネル」ということもあるが、上り周波数または下り周波数の一方を「チャネル」ということもある。なお、「チャネル」を「CH」と表記することもある。また、グループ毎にCHが異なる。複数の基地局装置は制御装置に接続されており、制御装置は、各基地局装置を制御するとともに、基地局装置が端末装置からの発呼情報(送信情報)を受信した場合に、当該基地局装置と同一のCHを使用している他の基地局装置に、受信した発呼情報を転送する。これは、複数の基地局装置をまたいで、グループ通信が実行されることに相当する。
【0014】
業務用無線システムでは、グループ毎に使用するCHを定めておく運用が多い。そのため、基地局装置に設定されたCHを、他のグループで使用されているCHに安易に変更できない。そのため、端末装置が、所属するグループのCHを使用する基地局装置の通信エリア内において発呼情報を送信しながら当該通信エリア外に出た場合、当該CHを使用する他の通信エリア内でなければ、発呼情報が基地局装置に受信されなくなる。これにより通信が途切れてしまう。そのため、使用可能なCHが設定された基地局装置の通信エリアを一時的に外れても発呼情報が途切れさせないことが望まれる。つまり、通信エリアをまたぐように端末装置が移動する場合でも音切れすることなく発呼情報の通信がなされることが望まれる。
【0015】
本実施例に係る制御装置は、発呼情報を送信している端末装置が通信エリアから出ようとしていることを検出した場合に、当該通信エリアと連続した通信エリアを形成している1つ以上の他の基地局装置を探す。その際、端末装置の位置情報は使用されず、一旦設置されると容易に移動されない基地局装置の設置位置情報、通信エリアの半径が使用される。他の基地局装置が他の端末装置からの発呼情報を受信しておらず、かつ端末装置が使用しているCHとは別のCHを使用している場合、制御装置は、他の基地局装置が使用している上り周波数を、端末装置が使用しているCHの上り周波数に変更させる。つまり、現在または所定時間内に受信を行っていない他の基地局装置が一時的に利用される。一方、その他の基地局装置の下り周波数は切り替えられない。
【0016】
図1は、実施例1に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、IP(Internet Protocol)ネットワーク10、制御装置12、基地局装置14と総称される第1基地局装置14aから第12基地局装置14l、端末装置16と総称される第1端末装置16aから第12端末装置16lを含む。業務用無線システムにおいて、基地局装置14は、レピータとも称される。ここで、通信システム100に含まれる基地局装置14の数は「12」に限定されず、端末装置16の数は「12」に限定されず、それらより多くてもよく、それらよりも少なくてもよい。なお実施例1において、端末装置16にはGPS(Global Positioning System)等による測位機能が搭載されていないものとするが、端末装置16に測位機能が搭載されていてもよい。制御装置12は、IPネットワーク10を介して複数の基地局装置14のそれぞれに接続される。
【0017】
複数の端末装置16、複数の基地局装置14は、前述のごとく、業務用無線システムに対応しており、各端末装置16は、いずれかの基地局装置14を介して、音声通信を実行する。各端末装置16はPTT(Push To Talk)ボタンを備え、PTTボタンが押し下げられた端末装置16はユーザの音声を発呼情報として基地局装置14に送信する。基地局装置14は、端末装置16からの発呼情報を受信すると、IPネットワーク10を介して制御装置12に送信する。制御装置12は、IPネットワーク10を介して複数の基地局装置14に発呼情報を送信する。複数の基地局装置14は発呼情報を送信するので、発呼情報を送信した端末装置16以外の端末装置16は、基地局装置14からの発呼情報を受信する。通信システム100では、1つ以上の端末装置16によってグループが形成されており、グループ内での通信が可能である。このようなグループ通信では、例えば、1つの端末装置16から基地局装置14経由で複数の他の端末装置16に送信するような1対多の通信が実行される。
【0018】
図2は、通信システム100において使用されるチャネルの配置を示す。基地局装置14と端末装置16とに共通したCH1、CH2、CH3が規定される。本図において、チャネル番号と、基地局装置14の受信周波数および送信周波数との関係の一例が示されている。また、チャネル番号と端末装置16の受信周波数および送信周波数との関係の一例が示されている。以下の説明では、基地局装置14の受信周波数を上り周波数、基地局装置14の送信周波数を下り周波数と称する。なお、上り周波数は、端末装置16の送信周波数に該当し、下り周波数は、端末装置16の受信周波数に該当する。CH1、CH2、CH3では、それぞれ異なった上り周波数と下り周波数とが設定される。ここでは、CH1が第1上り周波数と第1下り周波数との組合せによって規定され、CH2が第2上り周波数と第2下り周波数との組合せによって規定され、CH3が第3上り周波数と第3下り周波数との組合せによって規定されるとする。このように複数の基地局装置14に設定可能な下り周波数と上り周波数は、複数種類規定されている。図1に戻る。
【0019】
上り周波数がCH1に設定されている端末装置16が発呼した場合、上り周波数がCH1に設定されている基地局装置14のみ送受信可能である。そのため、CH2、CH3に設定されている他の基地局装置14、端末装置16は、CH1が通信中であっても通信可能である。ここでは、各基地局装置14、各端末装置16において使用されるCHが「CH1」、「CH2」、「CH3」のように示される。以下では、説明を明瞭にするために、1つのグループがCH1を使用し、別の1つのグループがCH2を使用し、さらに別の1つのグループがCH3を使用するものとする。つまり、グループ毎に別のCHを使用するものとする。
【0020】
図3は、チャネル配置を使用した場合の処理の概要を示す。各基地局装置14は、通信可能なエリアとして通信エリア18を形成する。具体的に説明すると、第1基地局装置14aは第1通信エリア18aを形成し、第2基地局装置14bは第2通信エリア18bを形成し、第3基地局装置14cは第3通信エリア18cを形成する。また、第1基地局装置14aと第3基地局装置14cはCH1を使用し、第2基地局装置14bはCH2を使用し、端末装置16はCH1を使用する。そのため、端末装置16は、第1通信エリア18aと第3通信エリア18cにおいて通信可能であるが、第2通信エリア18bのみでカバーされるエリアにおいて通信不可能である。このような状況下において、端末装置16が移動する場合、第1通信エリア18aと第3通信エリア18c内であれば問題ない。しかしながら、端末装置16の設置状況や端末装置16の移動経路、障害物等の影響により端末装置16が第1通信エリア18aと第3通信エリア18cから一時的に外れてしまうことがある。
【0021】
端末装置16は移動する際、第1通信エリア18aを一時的に外れる。一方、第1基地局装置14aの比較的近くに設置されている第2基地局装置14bは、CH1を使用していないので、端末装置16からの発呼情報を受信できない。この間、端末装置16からの発呼情報を受信可能な基地局装置14が存在しない状態となる。その結果、図1の制御装置12は、端末装置16からの発呼情報を受信できなくなり、各基地局装置14に発呼情報を送信できなくなる。これにより発呼情報を受信している各端末装置16において音切れが発生する。以下では、このような状況の発生を抑制するための制御装置12の構成を説明するが、その前に基地局装置14の構成を説明する。
【0022】
図4は、基地局装置14の構成を示す。基地局装置14は、無線通信部50、処理部52、通信部54、制御部56、記憶部58を含む。無線通信部50は、業務用無線システムに対応した処理を実行することによって、端末装置16と通信を実行する。無線通信部50は、1つの端末装置16からの発呼情報を受信すると、発呼情報を処理部52に出力する。処理部52は、発呼情報を通信部54に出力する。処理部52において発呼情報に対する所定の処理がなされてもよい。通信部54は、図1のIPネットワーク10に接続されており、IPネットワーク10経由で制御装置12に発呼情報を送信する。通信部54は、IPネットワーク10を介して制御装置12からの発呼情報を受信すると、発呼情報を処理部52に出力する。処理部52は、発呼情報を無線通信部50に出力する。無線通信部50は、処理部52からの発呼情報を端末装置16に送信する。
【0023】
また、通信部54は、IPネットワーク10を介して制御装置12から、無線通信部50において使用すべき上り周波数と下り周波数に関する情報を受信する。これは、無線通信部50において使用すべきCHに関する情報(以下、「CH情報」という)ともいえる。制御部56は、処理部52を介して通信部54からCH情報を記憶する。記憶部58は、図2に示したような上り周波数と下り周波数との組合せとCHとの対応関係をCHのテーブルとして記憶する。制御部56は、記憶部58に記憶したCHのテーブルをもとに、CH情報に対応した上り周波数と下り周波数とを取得する。制御部56は、取得した上り周波数と下り周波数とを無線通信部50に設定する。
【0024】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0025】
図5は、制御装置12の構成を示す。制御装置12は、通信部30、発呼情報バッファ32、記憶部34、検出部36、選択部38、設定部40を含む。通信部30は、図1のIPネットワーク10を介して複数の基地局装置14との通信を実行する。グループ内のいずれかの端末装置16がCH1で発呼情報を送信する。CH1に設定された1つ以上の基地局装置14は発呼情報を受信する。各基地局装置14は、発呼情報を受信したときの受信感度とともに発呼情報を制御装置12に送信する。通信部30は、各基地局装置14から発呼情報と受信感度とを受信する。通信部30は、受信感度が最大の基地局装置14を選択し、選択した基地局装置14から受信した発呼情報を、CH1に設定された複数の基地局装置14に送信する。その際、発呼情報バッファ32は、発呼情報を記憶する。
【0026】
また、通信部30は、基地局装置14に発呼情報を送信するだけでなく、設定部40から受けつけたCH情報を基地局装置14に送信する。CH情報は、設定部40において生成される。設定部40は、例えば、第1下り周波数と第1上り周波数との組合せであるCH1を所定の基地局装置14に設定する。また、設定部40は、第2下り周波数と第2上り周波数との組合せであるCH2を他の基地局装置14に設定し、第3下り周波数と第3上り周波数との組合せであるCH3をさらに他の基地局装置14に設定する。その際、設定部40は、記憶部34に記憶されたCHのテーブルを参照する。
【0027】
記憶部34は、各種の情報を記憶する。図6は、記憶部34に記憶されるCHのテーブルを示す。基地局装置14、端末装置16に対するCH1、CH2、CH3は図2と同一である。また、CH11が第2上り周波数と第1下り周波数との組合せによって規定され、CH12が第3上り周波数と第2下り周波数との組合せによって規定され、CH13が第1上り周波数と第3下り周波数との組合せによって規定されるとする。さらに、CH21が第3上り周波数と第1下り周波数との組合せによって規定され、CH22が第1上り周波数と第2下り周波数との組合せによって規定され、CH23が第2上り周波数と第3下り周波数との組合せによって規定されるとする。CH11からCH13、CH21からCH23の設定については後述する。このCHのテーブルは通信システム100の記憶部58にも記憶される。
【0028】
図7は、記憶部34に記憶される基地局装置詳細情報テーブルを示す。基地局装置詳細情報テーブルでは、各基地局装置14に設定されているCH番号、各基地局装置14が設置されている位置の座標情報、受信半径、各基地局装置14のIPアドレスが示される。この基地局装置詳細情報テーブルは、記憶部34に予め記憶されている。図8は、記憶部34に記憶される端末受信履歴テーブルを示す。端末受信履歴テーブルは、基地局装置14が端末装置16から受信した信号、例えば発呼情報を制御装置12に送信した時間、端末装置16からの信号を受信した基地局装置14の番号、信号を送信した端末装置16の番号、基地局装置14における信号の受信感度が示される。この端末受信履歴テーブルは、通信部30によって書き込まれる。本図に示すように、それぞれの端末装置16には、端末装置16を一意に識別できる端末番号(端末識別子)が付与されており、制御装置12および基地局装置14は、発呼情報に含まれる端末番号から、どの端末装置16が発呼しているかを判別できる。図5に戻る。
【0029】
図9は、制御装置12による処理の概要を示す図である。本図に示す例では、まず端末装置16が、ポイントP1においてCH1を使用しながら、第1基地局装置14aに発呼情報を送信する。第1基地局装置14aは、受信した発呼情報を制御装置12に送信する。端末装置16がポイントP1からポイントP2へ移動すると、端末装置16は第1通信エリア18aの境界付近に近づく。その際、図5の検出部36は、第1基地局装置14aが受信した発呼情報であって、かつ第1上り周波数を使用した端末装置16からの発呼情報の受信感度を記憶部34から取得し、受信感度の低下を検出する。これにより、検出部36は、第1基地局装置14aで受信を行っている端末装置16が次第に第1通信エリア18aの外に向かっていることを検出する。これに続いて、検出部36は、受信感度がしきい値よりも小さくなったこと、つまり品質がしきい値よりも低下したことを検出する。このように、端末装置16の移動等に伴い、通信が困難となることが予想される端末装置16のことを「救済対象の端末装置16」と称することもある。
【0030】
図5の選択部38は、記憶部34に記憶した基地局装置詳細情報テーブル内の基地局装置設置座標、受信半径、設定されているCH番号を参照し、第1基地局装置14a付近に設置され、かつCH1以外に設定されている基地局装置14を探索する。その際、選択部38は、記憶部34に記憶した端末受信履歴テーブルを参照し、現在から一定期間前にさかのぼって信号を受信していない基地局装置14を探索する。その結果、現在設定されているCHで信号を受信しておらず、かつ第1上り周波数を設定可能な基地局装置14が探索される。
【0031】
ここでは、端末装置16が現在接続されている第1基地局装置14aを基地局装置Nと呼び、探索の対象であり、チャネル設定を変更する候補となる基地局装置14を基地局装置Mと呼ぶ。また、基地局装置Nの設置座標(緯度、経度)が(Xn,Yn)であり、受信半径がRnであり、基地局装置Mの設置座標が(緯度、経度)(Xm,Ym)であり、受信半径がRmであるとする。なお、RnおよびRmの単位はkmであるとする。選択部38は、例えば、基地局装置Nと基地局装置Mとの間の距離dを次のように導出する。
【数1】
【0032】
また、選択部38は、以下の近似値によって距離dを導出してもよい。
【数2】
ここで、αは緯度1度あたりの平均的な距離であり、例えばα=111kmであるとする。また、βは経度1度あたりの平均的な距離であり、例えばβ=91kmであるとする。基地局装置Nと基地局装置Mとの間の距離dをもとに、選択部38は、次のように指標Pを算出する。
【数3】
選択部38は、Pがしきい値、例えば「1.5」よりも大きい場合、その基地局装置14を選択する。これは、複数の基地局装置Mのうち、通信エリア18が基地局装置Nの通信エリア18と連続する基地局装置Mを選択することに相当する。ここでは、このような基地局装置Nと基地局装置Mとの関係を近接という。選択部38は選択結果を設定部40に出力する。
【0033】
例えば、図9においてCH2に設定された第2基地局装置14bが選択される。第2基地局装置14bが他の端末装置16からの発呼情報を受信していないので、第2基地局装置14bのCH設定がCH2からCH22に一時的に変更される。つまり、図5の設定部40は、選択部38において選択した第2基地局装置14bに対して、第2下り周波数を維持しながら、第2上り周波数を第1上り周波数に変更する。なお、選択部38において選択した他の基地局装置14がCH3に設定されている場合、設定部40は、当該他の基地局装置14に対して、第3下り周波数を維持しながら、第3上り周波数を第1上り周波数に変更する。これは、当該他の基地局装置14のCH設定がCH3からCH13に一時的に変更されることに相当する。このような基地局装置14が複数選択された場合もそれぞれに対して同様の処理がなされる。設定部40は、上り周波数の変更を反映させたCH情報を生成する。例えば、第2基地局装置14bに対して、第2下り周波数を維持しながら、第2上り周波数を第1上り周波数に変更させる場合、設定部40は、CH22が示されたCH情報を生成する。通信部30は、第2基地局装置14bにCH情報を送信する。
【0034】
ここでは、制御装置12から送信されたCH情報を受信した基地局装置14での処理を説明するために図4を使用する。図4の基地局装置14が第2基地局装置14bであるとする。なお、他の基地局装置14であっても同様の処理が実行されればよい。無線通信部50は、CH1を使用する端末装置16とは異なった他の端末装置16とCH2を使用して通信可能である。無線通信部50が受信処理を実行していない場合、通信部54は、IPネットワーク10を介して制御装置12からのCH情報を受信する。前述のごとく、CH情報ではCH22が示されているので、通信部54は、第2下り周波数を維持しながら、第2上り周波数を第1上り周波数に変更する指示を受けつけるといえる。通信部54は、処理部52を介して制御部56にCH情報を出力する。
【0035】
制御部56は、記憶部58に記憶したCHのテーブルをもとに、CH情報に対応した上り周波数と下り周波数とを取得する。ここでは、第1上り周波数と第2下り周波数とを取得する。制御部56は、取得した上り周波数と下り周波数とを無線通信部50に設定する。制御部56は、無線通信部50に対して、第2下り周波数を維持しながら、第2上り周波数を第1上り周波数に変更させる。
【0036】
このような基地局装置14の処理が終了した後における制御装置12の処理を説明する。図10は、制御装置12による続きの処理の概要を示す。第1基地局装置14aにおけるCH1と第2基地局装置14bにおけるCH22では、第1上り周波数が共通する。端末装置16(救済対象の端末装置16)がポイントP2からポイントP3に移動した場合であっても、端末装置16から送信された発呼情報は、第2基地局装置14bに受信される。第2基地局装置14bは発呼情報を制御装置12に送信する。一方、第2基地局装置14bは第2下り周波数を使用するので、第2通信エリア18bにおいて第2基地局装置14bからの発呼情報を受信していた他の端末装置16は、CH2を使用したまま第2基地局装置14bからの発呼情報を継続して受信する。
【0037】
図11は、制御装置12によるさらに続きの処理の概要を示す。これは、図10に続く処理を示す。端末装置16(救済対象の端末装置16)がポイントP3からポイントP4に移動すると、第3通信エリア18cに入る。第3通信エリア18cではCH1が使用されるので、端末装置16は、第3基地局装置14cに発呼情報を送信する。そのため、制御装置12の設定部40は、端末装置16がCH1の通信エリア18に再び入った場合、あるいは第2基地局装置14bへのCH情報を送信してから一定期間経過した場合、第2基地局装置14bにCH2に復帰させるためのCH情報を送信する。
【0038】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図12は、制御装置12による処理手順を示すフローチャートである。ステップS10において検出部36は、通信部30が基地局装置Nより発呼情報を受信中であるか否かを判定する。受信中である場合(S10のY)、ステップS12に進む。ステップS12において検出部36は、基地局装置Nからの受信感度がしきい値未満であるか否かを判定する。受信感度がしきい値未満でなければ(S12のN)、所定の時間だけ待機した後、ステップS12に戻り処理を繰り返す。検出部36において基地局装置Nからの受信感度がしきい値未満であると判定した場合(S12のY)、選択部38は、基地局装置詳細情報テーブルから基地局装置NのCH番号Xを特定する(S14)。なお、ステップS12においてYと判定された救済対象の端末装置16を端末装置Z(端末番号Z)とする。次に、選択部38は、基地局装置詳細情報テーブルから基地局装置N付近で受信可能な基地局装置14を探索する(S16)。受信可能な基地局装置14(基地局装置M)があり(S18のY)、その基地局装置M(設定変更候補の基地局装置)が現在受信を行っていなければ(S20のN)、ステップS22に進む。ステップS22において、設定部40は、記憶部34に記憶されるCHのテーブルを参照して、CH番号Xの上り周波数Xを特定し、受信可能基地局装置Mに対して、上り周波数(受信周波数)を周波数Xに設定する変更を指示する(S22)。なお、ステップS20における「現在受信を行っていない」は、「過去一定時間(例えば1時間)以内に端末装置16からの受信を行っていない」としてもよい。あるいは、現在受信しておらず、かつ、過去一定時間(例えば6時間)における単位時間(例えば1時間)あたりの平均受信時間が所定値(例えば3分)以下である場合に、「現在受信を行っていない」と判定してもよい。
【0039】
ステップS24において検出部36は、上り周波数が周波数Xである他の基地局装置14から端末装置Zの発呼情報を受信し、かつ、その受信感度がしきい値以上であるか否かを判定する。その条件が成立する場合(S24のY)、ステップS28に進み、成立しない場合(S24のN)、ステップS26に進む。ステップS26において検出部36は、基地局装置Mへの上り周波数変更から一定時間が経過したか否かを判定する。一定時間が経過していなければ(S26のN)、ステップS24に戻る。一定時間が経過していれば(S26のY)、ステップS28に進む。ステップS28において、設定部40は、基地局装置Mに対して上り周波数を元の状態に戻すように指示する。通信部30が基地局装置Nより発呼情報を受信中でない場合(S10のN)、あるいは受信可能な基地局装置14がない場合(S18のN)、あるいは、設定変更候補の基地局装置が現在受信を行っている場合(S20のY)、処理は終了される。
【0040】
本実施例によれば、第1上り周波数を使用した端末装置からの信号の品質がしきい値よりも低下した場合に、第2基地局装置において、第2下り周波数を維持しながら、第2上り周波数を第1上り周波数に変更するので、端末装置からの信号を第2基地局装置に受信させることができる。また、このような処理を制御装置で実行するので、端末装置の処理の複雑化を回避しながら、端末装置が通信できない状況の発生を抑制できる。また、第2基地局装置において、第2下り周波数を維持しながら、第2上り周波数を第1上り周波数に変更するので、第2基地局装置からの信号を受信している他の端末装置での処理を継続させることができる。また、第2基地局装置からの信号を受信している他の端末装置での処理が継続されるので、他の端末装置に与える影響を低減できる。
【0041】
また、複数の第2基地局装置のうち、通信エリアが第1基地局装置の通信エリアと連続する第2基地局装置を選択するので、端末装置からの発呼情報を途切れずに受信させることができる。また、複数の第2基地局装置に設定可能な第2下り周波数と第2上り周波数は、複数種類規定されているので、通信システムの構成の自由度を向上できる。また、第2上り周波数を使用した他の端末装置からの信号を非受信の第2基地局装置を処理の対象にするので、他の端末装置に対する影響を低減できる。また、端末装置が通信エリアの際で移動している場合や一旦通信エリアを出てしまった場合でも発呼情報を途切れることなく受信あるいは送信させることができる。また、使用していない上り周波数を効率的に利用できる。
【0042】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、基地局装置を介して互いに通信する複数の端末装置が含まれる通信システムに関する。ここでも、端末装置(救済対象の端末装置)が接続している基地局装置に近接した他の基地局装置が、端末装置が使用するCHとは別のCHを使用している場合に、端末装置の上り周波数に、他の基地局装置の上り周波数を切り替えさせる。実施例1では、他の基地局装置が他の端末装置からの信号を受信していない場合に、このような切替を実行している。一方、実施例2では、他の端末装置あるいは他の端末装置が含まれるグループの優先度よりも、救済対象の端末装置あるいは救済対象の端末装置が含まれるグループの優先度の方が高い場合に、このような切替を実行する。実施例2に係る通信システム100、基地局装置14、制御装置12の構成は、図1図4図5と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0043】
図13は、実施例2に係る記憶部34に記憶される優先度テーブルを示す。図示のごとく、端末装置16毎の優先度が示される。例えば、優先度の値が小さいほど、優先度が高いといえる。なお、本実施例とは逆に、優先度の値が大きいほど、優先度が高くなるように設定してもよい。また、端末装置16毎の優先度ではなく、端末装置16が含まれるグループ毎の優先度が規定されてもよい。
【0044】
図5の選択部38は、記憶部34に記憶した基地局装置詳細情報テーブル内の基地局装置設置座標、受信半径、設定されているCH番号を参照し、第1基地局装置14a付近に設置され、かつCH1以外に設定されている基地局装置14を探索する。その際、選択部38は、記憶部34に記憶した優先度テーブルを参照し、現在受信していない基地局装置14に加えて、信号品質が低下した端末装置16の優先度よりも低い優先度を持つ他の端末装置16からの信号を受信している基地局装置14を探索する。その結果、受信周波数を第1上り周波数に設定可能な基地局装置14(受信周波数を変更しても大きな支障がない基地局装置14)が探索される。これに続く、設定部40の処理、端末装置16の処理はこれまでと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
なお、制御装置12の記憶部34に優先度テーブルが記憶されておらず、基地局装置14の記憶部58に優先度テーブルが記憶されていてもよい。すなわち、制御装置12が端末装置16の優先度に基づいて、CH設定を変更する基地局装置14を選定する代わりに、基地局装置14が優先度に基づいた処理を行ってもよい。その場合、図5の選択部38は、これまでと同様に、記憶部34に記憶した基地局装置詳細情報テーブル内の基地局装置設置座標、受信半径、設定されているCH番号を参照し、第1基地局装置14a付近に設置され、かつCH1以外に設定されている基地局装置14を探索する。この際に、選択部38は、基地局装置14が現在受信中であるか否かに関わらず、探索対象とする。その結果、現在設定されているCHで信号を受信しているため、受信周波数を第1上り周波数に設定できない基地局装置14も探索される。そして、通信部30は、探索した基地局装置14に対して、CH情報と救済対象の端末装置16(当該端末装置)の端末番号(端末識別子)とを送信する。基地局装置14の記憶部58には優先度テーブルが記憶されており、通信部54がCH情報を受けつけた場合、制御部56は、優先度テーブルを参照して、現在受信している端末装置16の優先度と、通信部54が受信した端末番号に対応する優先度とを特定する。そして、現在受信している他の端末装置16の優先度よりも、当該端末装置16の優先度が高ければ、受信周波数を救済対象の端末装置が使用している第1上り周波数に変更する。一方、制御部56は、他の端末装置16の優先度よりも当該端末装置16の優先度が低ければ、CHを変更しない。あるいは、制御装置12の記憶部34および基地局装置14の記憶部58の両方に、優先度テーブルを記憶させた上で、通信部30は、探索した基地局装置14に対して、救済対象の端末装置16の端末番号の代わりに、当該端末装置の優先度を送信してもよい。すなわち、チャネル設定変更指示を受けつけた基地局装置14は、受信中の端末装置16の優先度が所定の条件を満たす場合に、チャネル設定を変更する。ここで所定の条件とは、受信中の端末装置16の優先度が、チャネル設定変更に係る他の端末装置16(変更後のチャネルを使用予定の端末装置16)の優先度よりも低いという条件である。
【0046】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図14は、実施例2に係る制御装置12による処理手順を示すフローチャートである。ステップS50において検出部36は、通信部30が基地局装置Nより発呼情報を受信中であるか否かを判定する。受信中である場合(S50のY)、ステップS52に進む。ステップS52において検出部36は、基地局装置Nからの受信感度がしきい値未満であるか否かを判定する。受信感度がしきい値未満でなければ(S52のN)、所定の時間だけ待機した後、ステップS52に戻り処理を繰り返す。検出部36において基地局装置Nからの受信感度がしきい値未満であると判定した場合(S52のY)、選択部38は、基地局装置詳細情報テーブルから基地局装置NのCH番号Xを特定する(S54)。なお、ステップS52においてYと判定された救済対象の端末装置16を端末装置Z(端末番号Z)とする。次に、選択部38は、基地局装置詳細情報テーブルから基地局装置N付近で受信可能な基地局装置14を探索する(S56)。受信可能な基地局装置14(基地局装置M)があり(S58のY)、その基地局装置M(設定変更候補の基地局装置)が現在受信を行っていなければ(S60のN)、ステップS64に進む。ステップS64において、設定部40は、記憶部34に記憶されるCHのテーブルを参照して、CH番号Xの上り周波数Xを特定し、受信可能基地局装置Mに対して、上り周波数(受信周波数)を周波数Xに設定する変更を指示する(S64)。現在受信を行っている場合(S60のY)、ステップS62に進む。ステップS62では、基地局装置Mで受信中の端末装置16の優先度が、基地局装置Nで受信している端末装置16より低いか否かを判定する。優先度が低い場合(S62のY)、上述のステップS64に進む。なお、ステップS62における「基地局装置Mで受信中の端末装置16の優先度が、基地局装置Nで受信している端末装置16より低い」は、基地局装置Mにおいて「過去一定時間(例えば1時間)以内に受信を行った端末装置16毎の優先度を合算し、合算値が基地局装置Nで受信を行っている端末装置16の優先度より低い場合」としてもよい。なお、合算値の代わりに優先度の平均値を用いてもよい。
【0047】
ステップS66において検出部36は、上り周波数が周波数Xである他の基地局装置14から端末装置Zの発呼情報を受信し、かつ、その受信感度がしきい値以上であるか否かを判定する。その条件が成立する場合(S66のY)、ステップS70に進み、成立しない場合(S66のN)、ステップS68に進む。ステップS68において検出部36は、基地局装置Mへの上り周波数変更から一定時間が経過したか否かを判定する。一定時間が経過していなければ(S68のN)、ステップS66に戻る。一定時間が経過していれば(S68のY)、ステップS70に進む。ステップS70において、設定部40は、基地局装置Mに対して上り周波数を元の状態に戻すように指示する。通信部30が基地局装置Nより発呼情報を受信中でない場合(S50のN)、あるいは受信可能な基地局装置14がない場合(S58のN)、基地局装置Mで受信中の端末装置16の優先度が基地局装置Nで受信している端末装置16より低くない場合(S62のN)、処理は終了される。
【0048】
本実施例によれば、第2上り周波数を使用した他の端末装置からの信号を第2基地局装置が受信している場合、他の端末装置の優先度よりも端末装置の優先度が高ければ、第2上り周波数から第1上り周波数への変更を実行するので、変更の発生頻度を増加できる。また、変更の発生頻度が増加するので、端末装置が現在の通信エリアから出て行く場合でも、発呼情報の送信が継続する可能性を向上できる。また、基地局装置において、他の端末装置の優先度よりも端末装置の優先度が高ければ、第2下り周波数を維持しながら、第2上り周波数から第1上り周波数への変更を実行するので、基地局装置の通信状況を制御装置において管理することを不要にできる。また、基地局装置の通信状況を制御装置において管理することが不要になるので、制御装置の処理を簡易にできる。
【0049】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0050】
本実施例1、2によれば、通信システム100では、業務用無線システムが使用されている。しかしながらこれに限らず例えば、業務用無線システム以外の携帯電話等の無線通信システムが使用されてもよい。本変形例によれば、システムの自由度を向上できる。
【0051】
本実施例1、2によれば、制御装置12は、基地局装置14とは別に構成されており、IPネットワーク10を介して基地局装置14に接続される。しかしながらこれに限らず例えば、制御装置12は、いずれかの基地局装置14に含まれることによって、両者は一体的に構成されてもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【0052】
本実施例1、2によれば、上り周波数と下り周波数はそれぞれ3種類規定されており、端末装置16は第1上り周波数と第1下り周波数とを使用している。しかしながらこれに限らず例えば、上り周波数と下り周波数の種類は「3」に限定されておらず、端末装置16は別の上り周波数と下り周波数とを使用してもよい。その場合においても、制御装置12と基地局装置14の処理は同様に実行される。本変形例によれば、適用範囲を拡大できる。
【0053】
本実施例1、2においては、チャネル毎に周波数が異なる例を用いて説明したが、これ以外のチャネルを用いてもよい。例えば、時間領域を分割した複数のチャネルを用意し、制御装置12が救済対象の端末装置の使用するチャネルに応じて、基地局装置の使用するチャネルを変更してもよい。例えば、救済対象の端末装置のタイムスロットに合わせて、端末装置が移動する先の基地局装置のタイムスロットの設定を変更してもよい。また、周波数領域と時間領域の組合せを分割した複数のチャネルを用いて処理を行ってもよい。
【0054】
本実施例1においては、救済対象の端末装置が移動する先の基地局装置の上りチャネルが未使用である場合に、その基地局装置のチャネル設定を変更している。これは、無線通信システムの限られたリソースが有効に利用されていない場合に、そのリソースを必要とする機器に合わせて、リソースの設定を変更するという概念の1つの実施形態である。
【0055】
本実施例2においては、救済対象の端末装置の優先度と、救済対象の端末装置が移動する先の基地局装置を利用している端末装置の優先度とを比較し、その比較結果に応じて、基地局装置のチャネルを変更している。これは、無線通信システムの限られたリソースを優先度の高い機器に優先的に割り当てるという概念の1つの実施形態である。
【符号の説明】
【0056】
10 IPネットワーク、 12 制御装置、 14 基地局装置、 16 端末装置、 18 通信エリア、 30 通信部、 32 発呼情報バッファ、 34 記憶部、 36 検出部、 38 選択部、 40 設定部、 50 無線通信部、 52 処理部、 54 通信部、 56 制御部、 58 記憶部、 100 通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14