特許第6852615号(P6852615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852615
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】回転電機のステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20210322BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   H02K11/25
   H02K3/34 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-149160(P2017-149160)
(22)【出願日】2017年8月1日
(65)【公開番号】特開2019-30156(P2019-30156A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 希幸
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和久
(72)【発明者】
【氏名】厚地 伸彦
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−186902(JP,A)
【文献】 特開2013−013191(JP,A)
【文献】 特開2010−259271(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/090363(WO,A1)
【文献】 特開2016−073083(JP,A)
【文献】 特開平08−080011(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0140614(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105471128(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/25
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延在する複数のティースを有する円筒状のステータコアと、
前記各ティースに巻線が集中巻きで巻回されてなるコイルと、
前記ステータコアの周方向で隣り合うティースの間に形成されたスロットに挿入され、前記各スロットを通過する前記コイルの一部と前記ステータコアとを絶縁するスロット絶縁シートと、
前記各スロットに挿入されるとともに前記各スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイル同士を絶縁する相間絶縁シートと、
前記コイルの温度を測定するサーミスタと、を備え、
前記各ティースにおける前記ヨークとは反対側の端部には、前記ステータコアの周方向の両側に突出する一対の鍔部が形成され、
前記スロット絶縁シートは、
前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部同士の隙間であるスロットオープンに対して前記ステータコアの径方向で重なる部分で前記スロット絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向の一端から他端にかけて延びる開口を形成し、前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部それぞれに沿って延びる一対の開口形成部を有し、
前記相間絶縁シートは、
前記スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイルの間で前記ステータコアの径方向に延びる相間絶縁部と、
前記相間絶縁部における前記ステータコアの径方向内側の端部に連続し、前記一対の開口形成部における前記鍔部とは反対側の面に接触する一対の接触部と、を有し、
前記サーミスタは、前記スロットに挿入されるとともに前記相間絶縁部、前記一対の接触部の一方、及び前記コイルに接触している回転電機のステータ。
【請求項2】
前記相間絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向に位置する端部それぞれは、前記ステータコアにおける前記軸線方向の両側に位置する端面それぞれから突出しており、
前記一対の接触部における前記相間絶縁部とは反対側の側縁それぞれにおいて、前記ステータコアの端面から突出している部分は、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁に向かうにつれて互いに近づくテーパ状の傾斜縁になっており、
前記サーミスタは、前記コイルの温度を測定する温度検出素子と、前記温度検出素子を収容する筒状のチューブと、前記温度検出素子に電気的に接続される配線と、を有し、
前記ステータコアの内周側から前記サーミスタを見たときに、前記チューブの一部が前記傾斜縁から突出している請求項1に記載の回転電機のステータ。
【請求項3】
前記相間絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向に位置する端部それぞれは、前記ステータコアにおける前記軸線方向の両側に位置する端面それぞれから突出しており、
前記一対の接触部における前記相間絶縁部とは反対側の側縁それぞれにおいて、前記ステータコアの端面から突出している部分は、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁に向かうにつれて互いに近づくテーパ状の傾斜縁になっており、
前記サーミスタは、前記コイルの温度を測定する温度検出素子と、前記温度検出素子を収容する筒状のチューブと、前記温度検出素子に電気的に接続される配線と、を有し、
前記ステータコアの内周側から前記サーミスタを見たときに、前記配線の一部が前記傾斜縁から突出している請求項1に記載の回転電機のステータ。
【請求項4】
記チューブにおける軸線方向に位置する端面と、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁とが、前記ステータコアの軸線方向において同じ位置にある請求項2に記載の回転電機のステータ。
【請求項5】
円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延在する複数のティースを有する円筒状のステータコアと、
前記各ティースに巻線が集中巻きで巻回されてなるコイルと、
前記ステータコアの周方向で隣り合うティースの間に形成されたスロットに挿入され、前記各スロットを通過する前記コイルの一部と前記ステータコアとを絶縁するスロット絶縁シートと、
前記各スロットに挿入されるとともに前記各スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイル同士を絶縁する相間絶縁シートと、
前記コイルの温度を測定するサーミスタと、を備え、
前記各ティースにおける前記ヨークとは反対側の端部には、前記ステータコアの周方向の両側に突出する一対の鍔部が形成され、
前記スロット絶縁シートは、
前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部同士の隙間であるスロットオープンに対して前記ステータコアの径方向で重なる部分で前記スロット絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向の一端から他端にかけて延びる開口を形成し、前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部それぞれに沿って延びる一対の開口形成部を有し、
前記相間絶縁シートは、
前記スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイルの間で前記ステータコアの径方向に延びる相間絶縁部と、
前記相間絶縁部における前記ステータコアの径方向内側の端部に連続し、前記一対の開口形成部における前記鍔部とは反対側の面に接触する一対の接触部と、を有し、
前記サーミスタは、前記スロットに挿入されるとともに前記相間絶縁部、前記一対の接触部の一方、及び前記コイルに接触しており、
前記サーミスタは、温度検出素子と、前記温度検出素子を収容する筒状のチューブと、を有し、
前記チューブにおける軸線方向に位置する端面と、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁とが、前記ステータコアの軸線方向において同じ位置にある回転電機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、永久磁石をロータに配設した永久磁石式回転電機が開示されている。このような回転電機は、電気自動車やハイブリッド自動車、さらには、燃料電池自動車などの様々な分野で駆動源として利用されている。
【0003】
回転電機のステータは、円筒状のヨーク、及びヨークの内周面から延在する複数のティースを有する円筒状のステータコアと、各ティースに巻線が集中巻きで巻回されてなるコイルと、を備えている。コイルの一部は、ステータコアの周方向で隣り合うティースの間に形成された空間であるスロットを通過している。各スロットにおいてステータコアの周方向で隣り合うコイル同士は互いに異なる相である。また、各ティースにおけるヨークとは反対側の端部には、ステータコアの周方向の両側に突出する一対の鍔部が形成されている。
【0004】
ステータは、各スロットに挿入されるとともに各スロットを通過するコイルの一部とステータコアとを絶縁するスロット絶縁シートを備えている。スロット絶縁シートは、スロットを形成するヨーク及びティースに沿って延びるとともに、ステータコアの周方向で隣り合うティースの鍔部同士の隙間であるスロットオープンに対してステータコアの径方向で重なる部分に開口を有する。スロット絶縁シートの開口は、スロット絶縁シートにおけるステータコアの軸線方向の一端から他端にかけて延びている。スロット絶縁シートは、ステータコアの周方向で隣り合うティースの鍔部それぞれに沿って延びて、スロット絶縁シートの開口を形成する一対の開口形成部を有している。
【0005】
コイルは、例えば、巻線用ノズルをスロットオープン及びスロット絶縁シートの開口を介してスロットに挿入し、各ティースに巻線を集中巻きで巻回することにより形成される。また、巻線用ノズルを用いずに、予め巻線を環状に巻回したコイルをスロットオープン及びスロット絶縁シートの開口を介してスロットに挿入する場合もある。
【0006】
また、ステータは、各スロットに挿入されるとともに各スロットにおいてステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイル同士を絶縁する相間絶縁シートを備えている。相間絶縁シートは、スロットにおいてステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイルの間でステータコアの径方向に延びる相間絶縁部を有している。また、相間絶縁シートは、相間絶縁部におけるステータコアの径方向内側の端部に連続するとともに一対の開口形成部それぞれにおける鍔部とは反対側の面である内面に接触する一対の接触部を有している。一対の接触部と一対の開口形成部の内面との接触は、スロット絶縁シートの開口及びスロットオープンを介したコイルとステータコアとの絶縁に寄与する。
【0007】
また、特許文献1では、スロットにおいてステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイルの間にサーミスタを配置することにより、サーミスタによってコイルの温度を測定している。サーミスタは、ステータコアの周方向で隣り合うコイルの間においてステータコアの径方向の中央部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−186902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のように、サーミスタが、ステータコアの周方向で隣り合うコイルの間においてステータコアの径方向の中央部に配置されていると、サーミスタが、スロットにおいてステータコアの径方向に移動してしまう虞がある。スロットにおいてサーミスタが移動してしまうと、サーミスタによってコイルの温度を正確に測定することができなくなってしまう。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、サーミスタによってコイルの温度を正確に測定することができる回転電機のステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する回転電機のステータは、円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延在する複数のティースを有する円筒状のステータコアと、前記各ティースに巻線が集中巻きで巻回されてなるコイルと、前記ステータコアの周方向で隣り合うティースの間に形成されたスロットに挿入され、前記各スロットを通過する前記コイルの一部と前記ステータコアとを絶縁するスロット絶縁シートと、前記各スロットに挿入されるとともに前記各スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイル同士を絶縁する相間絶縁シートと、前記コイルの温度を測定するサーミスタと、を備え、前記各ティースにおける前記ヨークとは反対側の端部には、前記ステータコアの周方向の両側に突出する一対の鍔部が形成され、前記スロット絶縁シートは、前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部同士の隙間であるスロットオープンに対して前記ステータコアの径方向で重なる部分で前記スロット絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向の一端から他端にかけて延びる開口を形成し、前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部それぞれに沿って延びる一対の開口形成部を有し、前記相間絶縁シートは、前記スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイルの間で前記ステータコアの径方向に延びる相間絶縁部と、前記相間絶縁部における前記ステータコアの径方向内側の端部に連続し、前記一対の開口形成部における前記鍔部とは反対側の面に接触する一対の接触部と、を有し、前記サーミスタは、前記スロットに挿入されるとともに前記相間絶縁部、前記一対の接触部の一方、及び前記コイルに接触している。
【0012】
これによれば、サーミスタが、相間絶縁シートの相間絶縁部及び一対の接触部の一方と、コイルとに接触しているため、サーミスタがスロットにおいて移動してしまうことを規制することができ、サーミスタをスロットにおいて正確に位置決めすることができる。その結果、サーミスタによってコイルの温度を正確に測定することができる。
【0013】
上記回転電機のステータにおいて、前記相間絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向に位置する端部それぞれは、前記ステータコアにおける前記軸線方向の両側に位置する端面それぞれから突出しており、前記一対の接触部における前記相間絶縁部とは反対側の側縁それぞれにおいて、前記ステータコアの端面から突出している部分は、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁に向かうにつれて互いに近づくテーパ状の傾斜縁になっており、前記サーミスタは、前記コイルの温度を測定する温度検出素子と、前記温度検出素子を収容する筒状のチューブと、前記温度検出素子に電気的に接続される配線と、を有し、前記ステータコアの内周側から前記サーミスタを見たときに、前記チューブの一部が前記傾斜縁から突出しているとよい。
【0014】
これによれば、例えば、一対の接触部の側縁それぞれにおいてステータコアの端面から突出している部分がステータコアの軸線方向に延びている場合に比べると、サーミスタがステータコアの内周側から視認し易くなり、サーミスタの配置位置を容易に確認することができる。
【0015】
また、例えば、一対の接触部の側縁それぞれにおいてステータコアの端面から突出している部分がステータコアの軸線方向に延びている場合に比べると、一対の接触部におけるステータコアの端面から突出している部分がステータコアの径方向内側に倒れてしまうことを抑制することができる。その結果、サーミスタがステータコアの径方向内側に倒れてしまうことを抑制することができ、サーミスタをスロットにおいて正確に位置決めし易くすることができる。
上記回転電機のステータにおいて、前記相間絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向に位置する端部それぞれは、前記ステータコアにおける前記軸線方向の両側に位置する端面それぞれから突出しており、前記一対の接触部における前記相間絶縁部とは反対側の側縁それぞれにおいて、前記ステータコアの端面から突出している部分は、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁に向かうにつれて互いに近づくテーパ状の傾斜縁になっており、前記サーミスタは、前記コイルの温度を測定する温度検出素子と、前記温度検出素子を収容する筒状のチューブと、前記温度検出素子に電気的に接続される配線と、を有し、前記ステータコアの内周側から前記サーミスタを見たときに、前記配線の一部が前記傾斜縁から突出しているとよい。
【0016】
上記回転電機のステータにおいて、前記チューブにおける軸線方向に位置する端面と、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁とが、前記ステータコアの軸線方向において同じ位置にあるとよい。
【0017】
これによれば、一対の接触部におけるステータコアの軸線方向に位置する端縁を、サーミスタにおける予め定められた配置位置の基準として利用することができ、サーミスタを予め定められた配置位置に位置合わせし易くすることができる。
また、上記課題を解決する回転電機のステータは、円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延在する複数のティースを有する円筒状のステータコアと、前記各ティースに巻線が集中巻きで巻回されてなるコイルと、前記ステータコアの周方向で隣り合うティースの間に形成されたスロットに挿入され、前記各スロットを通過する前記コイルの一部と前記ステータコアとを絶縁するスロット絶縁シートと、前記各スロットに挿入されるとともに前記各スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイル同士を絶縁する相間絶縁シートと、前記コイルの温度を測定するサーミスタと、を備え、前記各ティースにおける前記ヨークとは反対側の端部には、前記ステータコアの周方向の両側に突出する一対の鍔部が形成され、前記スロット絶縁シートは、前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部同士の隙間であるスロットオープンに対して前記ステータコアの径方向で重なる部分で前記スロット絶縁シートにおける前記ステータコアの軸線方向の一端から他端にかけて延びる開口を形成し、前記ステータコアの周方向で隣り合う前記鍔部それぞれに沿って延びる一対の開口形成部を有し、前記相間絶縁シートは、前記スロットにおいて前記ステータコアの周方向で隣り合う異なる相であるコイルの間で前記ステータコアの径方向に延びる相間絶縁部と、前記相間絶縁部における前記ステータコアの径方向内側の端部に連続し、前記一対の開口形成部における前記鍔部とは反対側の面に接触する一対の接触部と、を有し、前記サーミスタは、前記スロットに挿入されるとともに前記相間絶縁部、前記一対の接触部の一方、及び前記コイルに接触しており、前記サーミスタは、温度検出素子と、前記温度検出素子を収容する筒状のチューブと、を有し、前記チューブにおける軸線方向に位置する端面と、前記一対の接触部における前記軸線方向に位置する端縁とが、前記ステータコアの軸線方向において同じ位置にある。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、サーミスタによってコイルの温度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態における回転電機の一部を示す断面図。
図2】ステータを拡大して示す断面図。
図3】ステータコア、スロット絶縁シート及び相間絶縁シートを示す分解斜視図。
図4】ステータの一部を示す斜視図。
図5】ステータコアを内周側から見た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、回転電機のステータを具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、回転電機10は、筒状のステータ11と、ステータ11の内側に配置されるロータ12と、を備えている。ステータ11は、ロータ12を取り囲んでいる。ロータ12は、回転軸13が挿通された状態で回転軸13に固定されるとともに回転軸13と一体的に回転する。ロータ12は、回転軸13に止着された円筒状のロータコア12aと、ロータコア12aに設けられた複数の永久磁石12bと、を有している。本実施形態の回転電機10は、永久磁石式回転電機である。回転電機10は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車、さらには、燃料電池自動車などの駆動源として利用される。
【0021】
図2に示すように、ステータ11は、円筒状のステータコア21を備えている。ステータコア21は、円筒状のヨーク22と、ヨーク22の内周面22aから延在する複数のティース23と、を有している。複数のティース23は、ステータコア21の周方向に間隔をあけて配置されるとともにヨーク22の内周面22aからステータコア21の軸線に向けて延びている。各ティース23におけるヨーク22の内周面22aとは反対側の端面は、ロータコア12aの外周面に沿って延びている。また、各ティース23におけるヨーク22とは反対側の端部には、ステータコア21の周方向の両側に突出する一対の鍔部23aが形成されている。
【0022】
また、ステータ11は、各ティース23に巻線24aが集中巻きで巻回されてなるコイル24を備えている。コイル24の一部は、ステータコア21の周方向で隣り合うティース23の間に形成された空間であるスロット25を通過している。各スロット25においてステータコア21の周方向で隣り合うコイル24同士は互いに異なる相(U相、V相及びW相)である。
【0023】
各コイル24は、巻線24aの巻き始め端部に一方の引出線を有し、各相のコイル24の一方の引出線は、相毎にまとめられて、対応する相の図示しない給電端子に電気的に接続されている。また、各コイル24は、巻線24aの巻き終わり端部に他方の引出線を有し、各相のコイル24の他方の引出線は、図示しない中性点連結部において相互に電気的に接続されている。そして、コイル24に電流が流れることによって、ロータ12と回転軸13とが一体的に回転する。
【0024】
ステータ11は、各スロット25に挿入されるスロット絶縁シート30(インシュレータ)を備えている。スロット絶縁シート30は、各スロット25を通過するコイル24の一部とステータコア21とを絶縁する。
【0025】
図3に示すように、スロット絶縁シート30は、細長帯状のシートを短手方向に沿って略U字状に湾曲させた形状である。スロット絶縁シート30は、その長手方向がステータコア21の軸線方向に一致した状態でスロット25に挿入されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、スロット絶縁シート30は、スロット25を形成するヨーク22及びティース23に沿って延びている。スロット絶縁シート30は、ステータコア21の周方向で隣り合うティース23の鍔部23a同士の隙間であるステータコア21のスロットオープン25aに対してステータコア21の径方向で重なる部分に開口30aを有する。開口30aは、スロット絶縁シート30の長手方向の一端から他端にかけて延びている。
【0027】
なお、コイル24は、例えば、巻線用ノズルをスロットオープン25a及びスロット絶縁シート30の開口30aを介してスロット25に挿入し、各ティース23に巻線24aを集中巻きで巻回することにより形成される。また、巻線用ノズルを用いずに、予め巻線24aを環状に巻回したコイル24をスロットオープン25a及びスロット絶縁シート30の開口30aを介してスロット25に挿入する場合もある。コイル24は、巻線24aにワニスが滴下されてワニスで固められることにより形成されている。
【0028】
スロット絶縁シート30は、ヨーク22の内周面22aに沿って延びる湾曲部31と、ステータコア21の周方向で隣り合うティース23に沿って延びる一対の直線部32と、ステータコア21の周方向で隣り合うティース23の鍔部23aそれぞれに沿って延びて、開口30aを形成する一対の開口形成部33と、を有している。
【0029】
湾曲部31におけるステータコア21の周方向の一方の端縁は、一対の直線部32の一方と連続している。湾曲部31におけるステータコア21の周方向の他方の端縁は、一対の直線部32の他方と連続している。一対の直線部32の一方における湾曲部31とは反対側の端部は、一対の開口形成部33の一方と連続している。一対の直線部32の他方における湾曲部31とは反対側の端部は、一対の開口形成部33の他方と連続している。
【0030】
ヨーク22の内周面22aは湾曲部31に接触している。ステータコア21の周方向で隣り合うティース23は一対の直線部32それぞれに接触している。ステータコア21の周方向で隣り合うティース23の鍔部23aそれぞれは一対の開口形成部33それぞれに接触している。
【0031】
図3に示すように、スロット絶縁シート30は、スロット絶縁シート30の長手方向の両端部それぞれにカフス部34を有している。カフス部34は、スロット絶縁シート30におけるステータコア21の端面21eから突出した端部をステータコア21の端面21eに向けて折り曲げることにより形成されている。スロット絶縁シート30は、ステータコア21の両端面21eから突出している両カフス部34の先端縁34eがステータコア21の端面21eにそれぞれ接触することにより、スロット25に対するステータコア21の軸線方向への移動が規制されている。
【0032】
図2に示すように、ステータ11は、各スロット25に挿入される相間絶縁シート40を備えている。相間絶縁シート40は、各スロット25においてステータコア21の周方向で隣り合う異なる相であるコイル24同士を絶縁する。
【0033】
図3に示すように、相間絶縁シート40は、細長帯状のシートを略V字状に折り曲げた形状である。相間絶縁シート40は、その長手方向がステータコア21の軸線方向に一致した状態でスロット25に挿入されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、相間絶縁シート40は、スロット25においてステータコア21の周方向で隣り合う異なる相であるコイル24の間でステータコア21の径方向に延びる相間絶縁部41を有している。相間絶縁部41は、スロット25においてステータコア21の周方向で隣り合うコイル24の間の相間隙間に挿入される。
【0035】
相間絶縁部41は、山折りに折り曲げ形成されている。相間絶縁部41は、スロット25においてステータコア21の周方向で隣り合うコイル24の一方とステータコア21の周方向で対向配置される細長シート状の第1対向部41aを有している。また、相間絶縁部41は、スロット25においてステータコア21の周方向で隣り合うコイル24の他方とステータコア21の周方向で対向配置される細長シート状の第2対向部41bを有している。第1対向部41aにおけるステータコア21の径方向外側の端部と、第2対向部41bにおけるステータコア21の径方向外側の端部とは繋がっている。
【0036】
また、相間絶縁シート40は、相間絶縁部41におけるステータコア21の径方向内側の端部に連続するとともに一対の開口形成部33それぞれにおける鍔部23aとは反対側の面である内面33aに接触する一対の接触部42を有している。一対の接触部42における相間絶縁部41とは反対側の端部は、一対の開口形成部33の内面33aとコイル24との間に配置されている。一対の接触部42における相間絶縁部41側の端部は、ステータコア21の周方向で隣り合うティース23の鍔部23aに接触している。
【0037】
一対の接触部42の一方は、第1対向部41aにおけるステータコア21の径方向内側の端部に連続する細長シート状である。一対の接触部42の他方は、第2対向部41bにおけるステータコア21の径方向内側の端部に連続する細長シート状である。一対の接触部42は互いに離間する方向へ延びている。
【0038】
一対の接触部42と一対の開口形成部33の内面33aとの接触は、スロット絶縁シート30の開口30a及びスロットオープン25aを介したコイル24とステータコア21との絶縁に寄与している。
【0039】
図4に示すように、相間絶縁シート40における長手方向に位置する端部それぞれは、ステータコア21の両端面21eそれぞれから突出している。一対の接触部42における相間絶縁部41とは反対側の側縁42aそれぞれにおいて、ステータコア21の端面21eから突出している部分は、一対の接触部42における相間絶縁シート40の長手方向に位置する端縁42eに向かうにつれて互いに近づくテーパ状の傾斜縁42bになっている。各接触部42の端縁42eと傾斜縁42bとは連続している。
【0040】
相間絶縁部41におけるステータコア21の端面21eから突出している端部は、ステータコア21の周方向で隣り合う異なる相であるコイル24においてステータコア21の端面21eから突出している部分であるコイルエンド24e同士を絶縁する。一対の接触部42におけるステータコア21の端面21eから突出している端部は、コイルエンド24eにおけるステータコア21の径方向内側への移動を規制するとともに、コイルエンド24eとステータコア21の端面21eとを絶縁する。
【0041】
図2図4及び図5に示すように、ステータ11は、コイル24の温度を測定するサーミスタ50を備えている。図5に示すように、サーミスタ50は、温度検出素子51と、温度検出素子51を収容する樹脂製である円筒状のチューブ52と、温度検出素子51に電気的に接続される配線53と、を有している。温度検出素子51は、チューブ52内において、チューブ52の軸線方向の一端部寄りに配置されている。
【0042】
図4及び図5に示すように、サーミスタ50は、その一部分がスロット25に挿入されている。サーミスタ50は、チューブ52の軸線方向がステータコア21の軸線方向に一致した状態でスロット25に挿入されている。チューブ52の一端部はスロット25に挿入されるとともに、チューブ52の他端部は、ステータコア21の端面21eから突出している。温度検出素子51は、スロット25内に配置されている。
【0043】
図2に示すように、チューブ52の一端部は、スロット25における相間絶縁部41の第1対向部41a、一対の接触部42の一方、及びコイル24によって囲まれる空間25sに挿入されている。空間25sは、第1対向部41a、一対の接触部42の一方、及びスロット絶縁シート30によって囲まれる空間の角部に位置している。空間25sは、その一部が、ステータコア21の径方向においてスロットオープン25aと重なっている。
【0044】
チューブ52の外周面52aは、第1対向部41a、一対の接触部42の一方、及びコイル24に接触している。そして、チューブ52は、コイル24の弾性力によって一対の接触部42の一方を介してティース23の鍔部23aに押し付けられている。これにより、サーミスタ50におけるスロット25に対する位置決めがなされている。その結果、温度検出素子51は、スロット25において、ステータコア21の内周寄りに配置され、ロータ12に近い位置に配置されている。よって、温度検出素子51は、ロータ12に近い箇所のコイル24の温度を測定可能になっている。
【0045】
図4及び図5に示すように、ステータコア21の内周側からサーミスタ50を見たときに、チューブ52の他端部の一部は、一対の接触部42の一方の傾斜縁42bから突出している。また、チューブ52における軸線方向に位置する他端部側の端面52eと、一対の接触部42の一方の端縁42eとは、ステータコア21の軸線方向において同じ位置にある。よって、チューブ52は、チューブ52の端面52eと一対の接触部42の一方の端縁42eとがステータコア21の軸線方向において同じ位置になるように位置合わせされた状態で空間25sに挿入されている。つまり、一対の接触部42の一方の端縁42eは、サーミスタ50における予め定められた配置位置の基準として利用されている。
【0046】
図4に示すように、チューブ52におけるステータコア21の端面21eから突出している他端部の外周面52aは、第1対向部41a及び一対の接触部42の一方に接触している。チューブ52の他端部の外周面52aが一対の接触部42の一方に接触していることにより、チューブ52がステータコア21の径方向内側に倒れてしまうことが一対の接触部42の一方によって抑制されている。
【0047】
サーミスタ50は、巻線24aに滴下されるワニスがチューブ52と巻線24aとの間にも滴下されることにより、チューブ52と巻線24aとの間に介在されるワニスによって巻線24aに対して固定されている。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
チューブ52の外周面52aは、第1対向部41a、一対の接触部42の一方、及びコイル24に接触しているため、サーミスタ50がスロット25において移動してしまうことが規制されており、サーミスタ50がスロット25において正確に位置決めされる。そして、サーミスタ50の温度検出素子51は、スロット25において、ステータコア21の内周寄りに配置されており、ロータ12に近い位置に配置されている。よって、温度検出素子51は、コイル24におけるロータ12に近い箇所である発熱し易い部分の温度を測定する。
【0049】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)サーミスタ50は、スロット25に挿入されるとともに相間絶縁部41、一対の接触部42の一方、及びコイル24に接触しているため、サーミスタ50がスロット25において移動してしまうことを規制することができ、サーミスタ50をスロット25において正確に位置決めすることができる。その結果、サーミスタ50によってコイル24の温度を正確に測定することができる。
【0050】
(2)ステータコア21の内周側からサーミスタ50を見たときに、チューブ52の他端部の一部は、一対の接触部42の一方の傾斜縁42bから突出している。これによればため、例えば、一対の接触部42の側縁42aそれぞれにおいてステータコア21の端面21eから突出している部分がステータコア21の軸線方向に延びている場合に比べると、サーミスタ50がステータコア21の内周側から視認し易くなり、サーミスタ50の配置位置を容易に確認することができる。
【0051】
(3)例えば、一対の接触部42の側縁42aそれぞれにおいてステータコア21の端面21eから突出している部分がステータコア21の軸線方向に延びている場合に比べると、一対の接触部42におけるステータコア21の端面21eから突出している部分がステータコア21の径方向内側に倒れてしまうことを抑制することができる。その結果、サーミスタ50がステータコア21の径方向内側に倒れてしまうことを抑制することができ、サーミスタ50をスロット25において正確に位置決めし易くすることができる。
【0052】
(4)チューブ52における軸線方向に位置する他端部側の端面52eと、一対の接触部42の一方の端縁42eとが、ステータコア21の軸線方向において同じ位置にある。これによれば、一対の接触部42の一方の端縁42eを、サーミスタ50における予め定められた配置位置の基準として利用することができ、サーミスタ50を予め定められた配置位置に位置合わせし易くすることができる。
【0053】
(5)サーミスタ50の温度検出素子51は、スロット25において、ステータコア21の内周寄りに配置されており、ロータ12に近い位置に配置されている。よって、温度検出素子51は、コイル24におけるロータ12に近い箇所である発熱し易い部分の温度を測定することができる。
【0054】
(6)スロット25におけるチューブ52が挿入される空間25sは、第1対向部41a、一対の接触部42の一方、及びスロット絶縁シート30によって囲まれる空間の角部に位置しており、ステータコア21の径方向においてスロットオープン25aと重なる位置にある。よって、例えば、コイル24の発熱によって生じるコイル24の膨張などによってサーミスタ50に加わる応力を、一対の接触部42の一方を介してスロットオープン25aに逃がすことができ、サーミスタ50にかかる荷重を軽減することができる。
【0055】
(7)一対の接触部42における相間絶縁部41とは反対側の側縁42aそれぞれにおいて、ステータコア21の端面21eから突出している部分は、一対の接触部42における相間絶縁シート40の長手方向に位置する端縁42eに向かうにつれて互いに近づくテーパ状の傾斜縁42bになっている。これによれば、例えば、一対の接触部42の側縁42aそれぞれにおいて、ステータコア21の端面21eから突出している部分が相間絶縁シート40の長手方向に延びている場合に比べると、相間絶縁シート40をスロット25に挿入し易くすることができる。
【0056】
(8)一対の接触部42における相間絶縁部41とは反対側の側縁42aそれぞれにおいて、ステータコア21の端面21eから突出している部分が、一対の接触部42における相間絶縁シート40の長手方向に位置する端縁42eに向かうにつれて互いに近づくテーパ状の傾斜縁42bになっているため、サーミスタ50にワニスを滴下し易い。その結果、サーミスタ50と巻線24aとの間にワニスが滴下され易くなり、サーミスタ50と巻線24aとがワニスによって固定され易くなる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、一対の接触部42の側縁42aそれぞれのステータコア21の端面21eから突出している部分が、相間絶縁シート40の長手方向に延びていてもよい。
【0058】
○ 実施形態において、ステータコア21の内周側からサーミスタ50を見たときに、チューブ52が一対の接触部42の一方の傾斜縁42bから突出していなくてもよい。
○ 実施形態において、チューブ52の端面52eが、一対の接触部42の一方の端縁42eよりも、ステータコア21の軸線方向においてステータコア21の端面21eとは反対側へ突出していてもよい。
【0059】
○ 実施形態において、チューブ52の端面52eが、一対の接触部42の一方の端縁42eよりも、ステータコア21の軸線方向においてステータコア21の端面21e寄りに位置していてもよい。
【0060】
○ 実施形態において、スロット絶縁シート30の材質は特に限定されるものではなく、電気絶縁性に優れた材質であればよい。
○ 実施形態において、相間絶縁シート40の材質は特に限定されるものではなく、電気絶縁性に優れた材質であればよい。
【符号の説明】
【0061】
10…回転電機、11…ステータ、21…ステータコア、21e…端面、22…ヨーク、22a…内周面、23…ティース、23a…鍔部、24…コイル、24a…巻線、25…スロット、25a…スロットオープン、30…スロット絶縁シート、30a…開口、33…開口形成部、40…相間絶縁シート、41…相間絶縁部、42…接触部、42a…側縁、42b…傾斜縁、42e…端縁、50…サーミスタ、51…温度検出素子、52…チューブ、52e…端面。
図1
図2
図3
図4
図5