(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[熱硬化性エポキシ樹脂組成物]
以下、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物について具体的に説明する。
【0016】
<(A)25℃で液状である液状エポキシ樹脂>
本発明で(A)成分として用いられる25℃で液状である液状エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂として公知のものを使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
硬化物の耐熱性や接着性、組成物の流動性の観点から、グリシジルアミン型液状エポキシ樹脂やビスフェノール型液状エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。中でも、下記構造式(3)又は(4)で表されるグリシジルアミン型液状エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0019】
上記構造式(3)において、Rはハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、同じでも異なっていてもよい。xは0〜4の整数である。
【0021】
上記構造式(4)において、Rはハロゲン原子、炭素数1〜6の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、同じでも異なっていてもよい。y、zはそれぞれ0〜4の整数である。Aは単結合、エーテル基、チオエーテル基、SO
2基、又は炭素数1〜6の非置換もしくは置換の2価炭化水素基である。
【0022】
また、(A)成分の液状エポキシ樹脂として、上記に説明した液状エポキシ樹脂に固体状エポキシ樹脂を溶解させたものを用いてもよい。固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。本発明の(A)成分の液状エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物中、(A)成分の含有量は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
<(B)25℃で固体であり、50〜120℃の融点を有するポリアミン系硬化剤>
本発明の(B)成分である25℃で固体であり、50〜120℃の融点を有するポリアミン系硬化剤は、前記(A)成分の硬化剤として作用し、(A)成分と反応して架橋構造を形成し、(A)成分の液状エポキシ樹脂を硬化させる。(B)成分のポリアミン系硬化剤の融点は、50〜120℃であり、50〜100℃が好ましい。なお、本願明細書において、融点とは、JIS K 0064:1992に記載される方法で測定した値をいう。
【0025】
(B)成分のポリアミン系硬化剤は、25℃で固体であるため、良好な保存安定性を有するとともに、加熱することにより溶解し低温での硬化が可能となる。ただし、本発明で用いる、(B)成分の25℃で固体であり、50〜120℃の融点を有するポリアミン系硬化剤には、通常150℃以上の硬化温度を必要とする芳香族アミン(芳香族化合物の1つ以上の水素原子がアミンで置換されたもの)は含まない。
【0026】
本発明で用いられる(B)成分としては、25℃で固体であり、融点が50〜120℃、好ましくは50℃〜100℃のポリアミン系硬化剤であり、ポリアミン系硬化剤の融点が50℃より低いと潜在性が損なわれるおそれがあり、該融点が120℃より高いと低温硬化性が損なわれるおそれがある。本願明細書において、「硬化剤の潜在性」とは、硬化剤をエポキシ樹脂に配合した組成物が室温で安定に貯蔵でき、熱によって急速に組成物を硬化する能力をいう。
【0027】
(B)成分のポリアミン系硬化剤は、公知の方法で製造されたものを用いることができる。該ポリアミン系硬化剤としては、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に対する硬化性や(B)成分の融点の制御のため、エポキシ基等のアミンと反応性を有する基が結合する化合物で変性されたポリアミンも含む。変性ポリアミン系硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂等)とポリアミン化合物(エチレンジアミン等のアルキレンジアミン化合物、ポリアルキルポリアミン化合物、脂環式ポリアミン化合物等)とを反応させて得られるポリマー構造を有する変性ポリアミン化合物が挙げられる。ポリアミン系硬化物のより具体的な例については、特許第5876414号公報等を参照できる。また、該ポリアミン系硬化剤として、市販品(例えば、「EH−5015S」、「EH−5030S」、「EH−4357S」(以上、ADEKA社製商品名)等)も使用することができる。また、(B)成分の反応性や流動性の制御のため、シリカ等の無機物にポリアミンを担持させたものを用いてもよい。これらのポリアミン系硬化剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0028】
(B)成分のポリアミン系硬化剤の平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、組成物の微細領域への進入性の観点から10μm以下であることがさらに好ましい。平均粒径が20μmより大きいと、組成物の微細領域への進入性が損なわれるおそれがある。本願明細書において平均粒径とは、レーザー光回折法で測定した累積質量平均径(d50)のことをいう。
【0029】
(B)成分のポリアミン系硬化剤の配合量は、(A)成分および(C)成分中に含まれるエポキシ基1モルに対し、(B)成分中の反応基(アミノ基)のモル数が0.4〜2.0モルになる量が好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.2モルになる量である。該モル数が0.4モル未満ではガラス転移温度(Tg)が低下するおそれがあり、一方、2.0を超えると硬化不良になるおそれがある。
【0030】
<(C)シリコーン変性エポキシ樹脂>
本発明の(C)成分であるシリコーン変性エポキシ樹脂は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に柔軟性を付与するとともに、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の構造にシリコーン骨格を含ませる。これにより本発明は、泡ぬけが良好になり、耐クラック性が良好な硬化物を与える。
【0031】
本発明で用いられる(C)成分は、エポキシ樹脂をシリコーンで変性したシリコーン変性エポキシ樹脂である。中でも反応の簡便さから、炭素−炭素二重結合を含有するエポキシ樹脂と、ヒドロシリル基を含有するシリコーン樹脂とを、ヒドロシリル化反応させたものが用いられる。このヒドロシリル化反応におけるアルケニル基に対するヒドロシリル基のモル比としては、アルケニル基1モルに対し、ヒドロシリル基のモル数が0.0001〜2.0になる量が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.2モルになる量である。該モル数が0.0001モル未満では耐クラック性が不十分となるおそれがあり、一方、2.0を超えると未反応のヒドロシリル基が多量に残存するおそれがある。
【0032】
炭素−炭素二重結合を含有するエポキシ樹脂としては、ビニル基、アリル基などを有するエポキシ樹脂を例示できる。具体的には、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、下記構造式(1)、(2)、(5)、(6)で表される炭素−炭素二重結合を有するエポキシ樹脂が挙げられる。中でも組成物の流動性や硬化物の耐熱性の観点から、構造式(1)や(2)で表されるエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0034】
上記構造式(1)において、R
1はエポキシ基を有する炭化水素基であり、同じでも異なっていてもよい。R
2はメチル基または水素原子であり、同じでも異なっていてもよい。
【0036】
上記構造式(2)において、R
1はエポキシ基を有する炭化水素基であり、同じでも異なっていてもよい。Xは水素原子又は臭素原子であり、同じでも異なっていてもよい。nは0以上、好ましくは0〜50、より好ましくは1〜20の整数である。
【0038】
上記構造式(5)においてR
1はエポキシ基を有する炭化水素基であり、同じでも異なっていてもよい。Xは水素原子又は臭素原子であり、同じでも異なっていてもよい。n及びmは0以上、好ましくは0〜100、より好ましくは1〜50の整数である。
【0040】
上記構造式(6)においてR
1はエポキシ基を有する炭化水素基であり、同じでも異なっていてもよい。Xは水素原子又は臭素原子であり、同じでも異なっていてもよい。nは0以上、好ましくは0〜100、より好ましくは1〜50の整数である。
【0041】
上記構造式(1)、(2)、(5)及び(6)においてR
1で表されるエポキシ基を有する炭化水素基としては、下記構造式(7)で表されるオキシラン基が好ましい。
【0043】
上記炭素−炭素二重結合を有するエポキシ樹脂と反応させるシリコーン樹脂は平均組成式(8)で表されるものが好ましい。
(R
1)
a(R
2)
bSiO
(4−a−b)/2 (8)
【0044】
上記平均組成式(8)において、R
1は水素原子、又はアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基を含有する有機基、又は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基であり、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が好ましい。該シリコーン樹脂はR
1として少なくとも一つの水素原子を有する。R
2は置換、或いは非置換の炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5の1価炭化水素基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基、又は、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜10のアルケニルオキシ基であり、a、bは0.001≦a≦1、1≦b≦3、1≦a+b≦4を満足する数である。1分子中のケイ素原子数は1〜1,000である。
【0045】
上記平均組成式(8)中において、R
2で表される置換或いは非置換の1価炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子などで置換した置換1価炭化水素基などが挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、アルケニルオキシ基の例としては、ビニルオキシ基、アリルオキシ基等が挙げられる。
【0046】
式(8)で表されるシリコーン樹脂の中でも、流動性や反応性の観点から下記構造式(9)で表されるシリコーン樹脂が好ましい。
【0048】
上記構造式(9)においてR
2は置換、或いは非置換の1価炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、或いはアルケニルオキシ基であり、好ましくは置換、もしくは非置換の1価炭化水素基であり、より好ましくはメチル基およびフェニル基である。pは0〜1,000、好ましくは3〜400の整数であり、qは0〜20、好ましくは0〜5の整数である。
【0049】
式(9)中において、R
2で表される置換或いは非置換の1価炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子などで置換した置換1価炭化水素基などが挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、アルケニルオキシ基の例としては、ビニルオキシ基、アリルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
(C)成分のシリコーン変性エポキシ樹脂の配合量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対し、1〜40質量部とすることが好ましく、3〜20質量部とすることがさらに好ましい。1質量部より少ないと、得られる硬化物の耐クラック性が不十分になるおそれがある。一方、40質量部より多いと、硬化物の耐熱性の低下や熱硬化性エポキシ樹脂組成物が増粘して取り扱いが悪くなるおそれがある。
【0051】
<(D)無機充填材>
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物に配合する(D)成分である無機充填材としては、通常、エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。該無機充填材の例としては、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ系微粉末や中空シリカというケイ素系充填材;アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどのアルミニウム系充填材;窒化珪素、窒化ホウ素などの金属窒化物系充填材;更にガラス繊維、ウォラステナイトなどの繊維状充填材;三酸化アンチモン、銀フィラー、銅フィラー、アルミフィラー等が挙げられる。これらの中でもケイ素系充填材が好ましく、溶融シリカを用いるのが特に好ましい。これらの無機充填材は1種類を単独で使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。また、充填材の平均粒径や形状は特に限定されないが、流動性の観点から、球状のものを用いるのが好ましい。
【0052】
上記無機充填材は、(A)成分の液状エポキシ樹脂と(B)成分のポリアミン系硬化剤と(C)成分のシリコーン変性エポキシ樹脂との混合物と無機充填材との結合強度を強くするため、シランカップリング剤(接着助剤)で予め表面処理したものでもよい。シランカップリング剤としては、例えば、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基等の官能性基で置換された1価炭化水素基を含有するアルコキシシラン及び/又はこれらの部分加水分解縮合物などが挙げられる。
【0053】
具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いるのが好ましい。これらカップリング剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0054】
なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については、本発明の作用効果を得られる範囲内であれば、特に制限されるものではない。(D)成分の無機充填材の配合量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対し、10〜1,000質量部とすることが好ましく、20〜150質量部とすることがさらに好ましい。
【0055】
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物には、更に、必要により下記の成分を添加してもよい。
<(E)その他の成分>
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の性質を改善する目的で種々の希釈剤、ポリシロキサン、低応力剤、離型剤、ハロゲントラップ剤、接着助剤、消泡剤、硬化促進剤等の添加剤を配合することができる。
【0056】
接着助剤、消泡剤、硬化促進剤、その他の各種の添加剤は、本発明の作用効果を損なわない範囲内で、好適量が配合される。接着助剤を添加する場合、その配合量の例として、(A)成分と(B)成分と(C)成分との総配合量100質量部に対し、0.5〜5質量部とする場合があり、さらに1〜3質量部とする場合がある。接着助剤としては、既述のとおり、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基等の官能性基で置換された1価炭化水素基を含有するアルコキシシラン及び/又はこれらの部分加水分解縮合物などが挙げられる。より具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いるのが好ましい。
また、消泡剤の例としては、ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、合成樹脂粒子、シリカ、またはこれらのうち2種以上の混合物等が挙げられる。
【0057】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂組成物の硬化促進剤として公知のものが使用でき、特に限定されないが、例えば有機リン、イミダゾール、3級アミン等の塩基性有機化合物が挙げられる。
【0058】
有機リンの例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−トルイル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート誘導体、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体等が挙げられる。
【0059】
イミダゾールの例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0060】
3級アミンの例としてはトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等が挙げられる。
【0061】
これらの中でも、イミダゾール誘導体が好ましく、硬化性の観点から2−エチル−4−メチルイミダゾールや2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0062】
硬化促進剤の添加量は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがさらに好ましい。硬化促進剤の添加量が0.05質量部未満である場合は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化促進効果が不十分になるおそれがあり、また5質量部より多い場合は熱硬化性エポキシ樹脂組成物の保存性に支障をきたすおそれがある。
【0063】
[熱硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法は特に制限されず、成分や目的に応じて任意に選択される。該熱硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法の例としては、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分とをミキサー、ロール等を用いて混合する混合工程を含む製造方法が挙げられる。該混合工程においては、必要に応じて(A)〜(D)成分だけでなく、(E)成分に例示する成分を配合してもよく、また混合順序、時間、温度、気圧等の条件を制御することができる。従って(A)〜(D)成分及びその他の成分を一度に混合してもよいし、段階的に混合してもよい。(B)成分以外の成分、すなわち(A)成分と(C)成分と(D)成分とその他の成分とが予め混合された混合物に(B)成分を添加して混合してもよい。後者の場合は、(B)成分の25℃で固体のポリアミン系硬化剤を予め粉砕するなどして、(B)成分が該混合物中に均一に分散しやすくする工程を加えてもよい。
【0064】
上記に説明する熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、泡ぬけが良好で、迅速に低温硬化する。また該熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物は、耐クラック性に優れる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に制限されない。
【0066】
[合成例1]シリコーン変性エポキシ樹脂c−1の合成
攪拌羽根、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと還流管を取り付けたフラスコに、下記式(10)で示されるエポキシ樹脂150gとトルエン300gを入れ、130℃、2時間で共沸脱水を行った後、100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)1gを滴下した後、直ちに下記式(11)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン63g(アルケニル基1モルに対し、ヒドロシリル基のモル数が0.03モル)とトルエン126gの混合物を30分間かけて滴下し、100℃で6時間熟成した。得られた反応混合物よりトルエンを減圧除去し、下記式(12)で示される構造を含むシリコーン変性エポキシ樹脂c−1を得た。
【0067】
【化13】
【0068】
【化14】
【0069】
[合成例2]シリコーン変性エポキシ樹脂c−2の合成
攪拌羽根、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと還流管を取り付けたフラスコに、下記式(13)で示されるエポキシ樹脂150gとトルエン300gを入れ、130℃、2時間で共沸脱水を行った後、100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)1gを滴下した後、直ちに上記式(11)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン68g(アルケニル基1モルに対し、ヒドロシリル基のモル数が0.03モル)とトルエン136gの混合物を30分間かけて滴下し、100℃で6時間熟成した。得られた反応混合物よりトルエンを減圧除去し、シリコーン変性エポキシ樹脂c−2を得た。シリコーン変性エポキシ樹脂c−2は、式(14)、式(15)および式(16)で表される構造を含む組成物である。
【0070】
【化15】
(式(13)中、nは10(平均値)である。)
【0071】
【化16】
(式(14)中、mは6〜9であり、nは1〜4である。式(14)で表される構造は、*でシリコーンに単結合で架橋される。)
【0072】
【化17】
(式(15)中、kは6〜9であり、jは1〜4である。式(15)で表される構造は、*でシリコーンに単結合で架橋される。)
【0073】
【化18】
(式(16)で表される構造は、*でシリコーンに単結合で架橋される。)
【0074】
[合成例3]シリコーン変性エポキシ樹脂c−3の合成
攪拌羽根、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと還流管を取り付けたフラスコに、アリルグリシジルエーテルで変性されたフェノールノボラック樹脂(フェノール当量125、アリル当量1100)200g、クロロメチルオキシラン800g、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド0.6gをそれぞれ入れて加熱し、この中に水酸化ナトリウムの50%水溶液128gを3時間かけて滴下した。溶剤を留去し、次いでフラスコ内の中間生成物をメチルイソブチルケトン300gとアセトン300gの混合溶剤にて溶解させた後、水洗し、溶剤留去してアリル基含有のエポキシ樹脂(アリル当量1590、エポキシ当量190)を得た。このエポキシ樹脂とメチルイソブチルケトン170g、トルエン330g、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.07gを入れ、1時間の共沸脱水を行ない、還流温度にて下記式(17)で表されるオルガノポリシロキサン133gを滴下時間30分にて滴下し、同一温度で4時間撹拌して反応させた後、溶剤を留去し、式(17)で示される構造を含むシリコーン変性エポキシ樹脂c−3を得た。
【0075】
【化19】
【0076】
本発明の実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)25℃で液状である液状エポキシ樹脂
(a−1)グリシジルアミン型エポキシ樹脂(エポキシ当量100、三菱化学株式会社製jER−630LSD、25℃での粘度 500mPa・s)
(a―2)ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量165、新日鉄住金化学株式会社製ZX−1059、25℃での粘度 2,000mPa・s)
【0077】
(B)25℃で固体であり、50〜120℃の融点を有するポリアミン系硬化剤
(b−1)固形ポリアミン系硬化剤(融点85〜105℃、活性水素当量52、株式会社ADEKA製EH−5015S)
(b−2)固形ポリアミン系硬化剤(融点70〜80℃、活性水素当量105、株式会社ADEKA製EH−5030S)
上記(B)成分の条件を満たさない硬化剤
(b−3)液状芳香族アミン系硬化剤(融点−40〜−10℃、活性水素当量63、日本化薬株式会社製カヤハードAA)
(b−4)液状ポリアミン系硬化剤(融点−40〜−10℃、活性水素当量78、株式会社ADEKA製EH−451N)
【0078】
(C)シリコーン変性エポキシ樹脂
(c−1)上記合成例1のシリコーン変性エポキシ樹脂)
(c−2)上記合成例2のシリコーン変性エポキシ樹脂)
(c−3)上記合成例3のシリコーン変性エポキシ樹脂)
【0079】
(D)無機充填材
(d−1)球状溶融シリカ(平均粒径10μm、龍森社製RS−8225/53C)
【0080】
(E)その他の添加剤
接着助剤
(e−1)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製KBM−403)
【0081】
[実施例1〜9,比較例1〜4]
表1に示す配合(質量部)で、(A)〜(E)成分を混合して実施例1〜9および比較例1〜4の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。得られた熱硬化性エポキシ樹脂組成物につき、下記方法で諸特性を測定した。続いて、成形温度90℃、成形時間3時間の条件で各熱硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させながら、成形し、実施例1〜9、比較例1〜4の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。得られた硬化物につき、下記方法で諸特性を測定した。なお、反応率を求めるためのDSCに際し、硬化物は、温度条件90℃、反応時間1時間で硬化させたものを用いた。実施例1〜9および比較例1〜4とこれらの硬化物の測定結果を表1に示す。
【0082】
<粘度>
各実施例および比較例を製造後、48時間以内に、コーンプレート型粘度計(BROOK FIELD社製51CP)を用い、回転数を1.0rpmにして、25℃における組成物の粘度を測定し、製造後粘度とした。
【0083】
<25℃での保存安定性>
上記の方法で粘度を測定した各実施例および比較例を25℃で24時間保管した後の粘度を測定し24時間経過後粘度とした。下記計算式により、増粘率を算出した。
増粘率(%)=(24時間経過後粘度−製造後粘度)/(製造後粘度)×100
【0084】
上記計算式で算出された増粘率が30%未満の場合、25℃での保存安定性が良好であると評価し、表1中「○」と表記した。一方、増粘率が30%以上または25℃で24時間保管した後サンプルの熱硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化し、粘度を測定できなかった場合、25℃での保存安定性が不良であると評価し、表1中「×」と表記した。
【0085】
<90℃1時間反応率>
示差走査熱量測定装置(Differential Sccanning Calorimeter、DSC)を用いて、各実施例および比較例の硬化前の組成物のDSC発熱ピーク面積を測定した。測定には、METTLE社製UV−DSCを用いた。続いて、各実施例および比較例を90℃で1時間加熱した後、得られた硬化物のDSC発熱ピーク面積を測定した。DSC発熱ピーク面積値を用いて下記計算式により反応率を求めた。
反応率(%)=(硬化前のDSCピーク面積値)−(硬化後のDSCピーク面積値)/(硬化前のDSCピーク面積値)×100
【0086】
<耐クラック性>
PCB基板上に、各実施例および比較例を面積2cm×2cm、厚み2mmに塗布し、硬化させた試験片を各実施例および比較例ごとに15枚ずつ用意し、温度サイクル試験機に投入した。試験条件については、−55℃で30分間保持後、−55℃から125℃まで昇温して5分間保持した。続いて125℃で30分間保持し、さらに125℃から−55℃まで降温させた後5分間保持する操作を1サイクルとし、1,000サイクルを施した。その後、各試験片のクラックや剥離の不良の有無を目視で観測し、不良が見られない試験片数/総試験片数を数えた。
【0087】
<接着力>
ニッケルコート銅版に、各実施例および比較例のいずれかを4mm
2塗布し、塗布面に2mm×2mm×150μmのSiチップを付着させ、成形温度90℃、成形時間3時間の条件で硬化させて、各試験片を得た。各試験片の室温(25℃)における剪断接着力をボンドテスターDAGE−SERIES−4000PXY(DAGE JAPAN株式会社製)を用いて測定した。
【0088】
<ボイドの有無>
2cm×2cm×2mmの金型に各実施例および比較例の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を流し込み、該エポキシ樹脂を流し込んだ金型の底に、シリンジで、0.1mLの空気を5回導入した。その後、成形温度90℃、成形時間3時間の条件で該熱硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させた。得られた硬化物の表面や内部のボイドの有無を、C−SAM(SONIX,Inc.製)で観測した。硬化物の表面や内部にボイドを全く確認できなかった場合、表1では「無」と示し、ボイドを確認した場合、表1では「有り」と示した。
【0089】
<室温での曲げ弾性率>
曲げ弾性率は、JIS K 7171:2008に記載の方法で、室温(25℃)における硬化物の曲げ弾性率を測定した。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示されるように、(C)成分のシリコーン変性エポキシ樹脂が配合されない比較例1、4では、耐クラック性や接着力が不十分で、その硬化物にボイドが生じた。また、比較例2のように液状芳香族アミン系硬化剤を用いた場合は、90℃では硬化しなかった。また、比較例3のように液状ポリアミン系硬化剤を用いた場合は、反応性が高すぎて本発明に求められる保存安定性を満たさなかった。
一方で、(C)成分に該当するシリコーン変性エポキシ樹脂を配合させた実施例1〜9は泡ぬけが良好であった。また、硬化物は、低弾性かつ耐クラック性が高く、ボイドも生じにくかった。上記の実施例1〜9に示すように、本発明は、低温硬化ポッティング材用途に好適である。