(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リブは、前記電波が透過する電波透過範囲を同電波の偏波面の延びる方向において拡大した仮想電波透過範囲と前記電波透過カバーの外縁とが重なる部分には、少なくとも設けられる
請求項1に記載の電波透過カバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電波透過カバーには、意匠面の意匠性能や電波透過性能の他にも、異物の衝突に対する耐衝撃性能など、種々の性能が求められる。電波透過カバーに高い意匠性能や高い耐衝撃性能を発揮させるためには、同電波透過カバーは厚いほど有利になる。その一方で、電波透過カバーに高い電波透過性能を発揮させるうえでは、電波透過カバーは薄いほど有利になる。特許文献1に記載の電波透過カバーは板状をなしており、種々の性能を得るために適した構造になっているとは云えない。
【0006】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高性能化を図ることのできる電波透過カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための電波透過カバーは、一面が車両の外表面をなす態様で電波レーダー装置の電波の経路内に配置される電波透過カバーであって、一方の面が前記一面をなす板状のカバー本体と、前記カバー本体の前記一方の面とは反対側の面における同カバー本体の外周端から間隔を置いた位置に立設されて、前記カバー本体の外縁に添って延びるリブと、を有する。
【0008】
上記構成では、カバー本体は、電波透過カバーにおいて意匠面をなす部分や、電波レーダー装置の電波が透過する部分を有している。上記構成によれば、そうしたカバー本体にリブが立設されているため、リブが設けられないものと比較して、カバー本体を含む電波透過カバーの強度を高くすることができる。そして、これにより電波透過カバーの耐衝撃性能を高くすることができるようになる。しかも、リブが設けられる分だけカバー本体に求められる強度が低くなるため、カバー本体の厚さを、電波の減衰量を適量に抑えるとともに意匠性能を確保することの可能な厚さ範囲内で薄くすることができる。
【0009】
また、電波透過カバーが車両に設けられる場合、電波(反射波)の一部が電波透過カバーの外縁において回折して電波レーダー装置に不要に測定されてしまうことがある。
上記構成によれば、カバー本体の外周端から間隔を置いた位置に上記リブが立設されているため、電波透過カバーの外縁を二段の段差形状にすることができる。そのため、仮に電波の一部が電波透過カバーの外縁においてナイフエッジ効果によって回折する場合であっても、同電波透過カバーの外縁の各段差部において回折させることができる。ここで、電波が回折する場合には、回折の度に電波の強度が弱くなることが知られている。上記構成によれば、電波透過カバーの外縁において電波を複数回にわたって回折させることができるため、回折した後に電波レーダー装置に向かう電波の強度を弱めることができ、同電波による悪影響を緩和することができる。
【0010】
このように上記構成によれば、電波透過カバーを意匠性能、電波透過性能、耐衝撃性能、および対電波回折性能の全てを満足する構造にすることができ、同電波透過カバーの高性能化を図ることができる。
【0011】
上記電波透過カバーにおいて、前記リブは、前記電波が透過する電波透過範囲を同電波の偏波面の延びる方向において拡大した仮想電波透過範囲と前記電波透過カバーの外縁とが重なる部分には、少なくとも設けられることが好ましい。
【0012】
上記構成では、仮想電波透過範囲と電波透過カバーの外縁とが重なる部分、すなわち電波の回折が生じる可能性のある部分には、リブが配置されるようになる。そのため、このリブを利用して、回折した後に電波レーダー装置に向かう電波の強度を的確に弱めることができ、同電波による悪影響を好適に緩和することができる。
【0013】
上記電波透過カバーにおいて、前記リブは、前記カバー本体の外縁に添って環状で延びることが好ましい。
上記構成によれば、リブが筒状になるため、電波透過カバーの強度を好適に高くすることができる。しかも、電波レーダー装置の電波の偏波面がいかなる角度であっても、上記仮想電波透過範囲と電波透過カバーの外縁とが重なる部分にはリブが配置されるようになる。そのため、電波透過カバーを高い汎用性を有するものにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電波透過カバーの高性能化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、電波透過カバーの一実施形態について説明する。
まず、本実施形態の電波透過カバーが適用される車両の概略構成について説明する。
図1に示すように、車両10の前部には、電波レーダー装置11が搭載されている。この電波レーダー装置11は、車両10の前方(
図1の左側)に向けて電波(ミリ波)を放射するとともにその反射波を測定することによって車両10の周辺状況を検知する。電波レーダー装置11は、電波を、水平な面(詳しくは、路面と平行な面)からなる偏波面上において振動するように放射する。
【0017】
図1および
図2に示すように、車両10の前部には、電波透過カバー20が取り付けられている。電波透過カバー20は、電波レーダー装置11から遠い側の部分、すなわち車外側の部分(
図2の紙面における手前側)が車両10の外壁部分および意匠部分をなす外装部品(いわゆるエンブレム)である。この電波透過カバー20によって、電波レーダー装置11は車両10の外部から隠蔽された状態になっている。
【0018】
電波透過カバー20は、電波レーダー装置11の前方側(
図1の左側)に、同電波レーダー装置11の電波の伝搬経路(
図1中の白抜きの矢印)を遮るように配置されている。詳しくは、電波レーダー装置11から放射される電波および同装置11に測定される反射波が電波透過カバー20の中央部分(
図2中に一点鎖線で示す電波透過部21)を透過する態様で、電波透過カバー20は電波レーダー装置11の車外側に配置されている。
【0019】
次に、電波透過カバー20の構造について具体的に説明する。
電波透過カバー20は、正面視(
図1のA矢視)で略楕円形をなす板状(本実施形態では、厚さ6mm)のカバー本体22を有している。
【0020】
図3に示すように、カバー本体22は、車内側(
図3の下側)から順に、内面被覆板23、塗装層24、金属膜層25、外面被覆板26、およびハードコート層27を有する多層構造になっている。なお
図3では、理解を容易にするために、塗装層24の厚さや金属膜層25の厚さ、ハードコート層27の厚さを実際の厚さよりも誇張して示している。
【0021】
内面被覆板23はアクリロニトル−エチレン−スチレン樹脂(AES樹脂)によって形成されており、塗装層24は黒色のアクリル系の塗料によって形成されている。金属膜層25は、インジウムからなる島状膜である。外面被覆板26は透明のポリカーボネート(PC)によって形成されており、ハードコート層27は透明のアクリル樹脂によって形成されている。
【0022】
これらAES樹脂(内面被覆板23)、アクリル系の塗料(塗装層24)、PC(外面被覆板26)、アクリル樹脂(ハードコート層27)はいずれも電波を透過する電波透過性を有する材料である。また、インジウムからなる島状膜(金属膜層25)は電波を透過する電波透過性を有している。したがって、電波透過カバー20のカバー本体22は電波を透過する電波透過性を有している。
【0023】
またカバー本体22は、車外側から順に、透明な外面被覆板26、金属色の金属膜層25、黒色の塗装層24が積層された構造になっている。そのため
図2に示すように、カバー本体22は、車外側から見た場合に、黒地(塗装層24)に金属色(金属膜層25)の模様(本実施形態では、外枠と文字[A])が視認可能になっている。
【0024】
図3および
図4に示すように、カバー本体22における意匠面とは反対側の面(
図4の紙面における手前側の面)には、同カバー本体22の外縁に添って環状で延びるリブ28が立設されている。このリブ28は、カバー本体22の外周端から間隔(距離)を置いた位置において車両10の後方に向けて突出する態様(本実施形態では、突出量が8mm)で、同カバー本体22(詳しくは、内面被覆板23)と一体に形成されている。このリブ28は、内面被覆板23と同一の材料(AES樹脂)によって形成されている。
【0025】
図2中および
図4中に、電波レーダー装置11の電波が透過する電波透過範囲(電波透過部21)と、この電波透過部21を電波の偏波面の延びる方向(本実施形態では、水平方向)に拡大した仮想電波透過範囲ARとを示す。
図2および
図4から明らかなように、上記リブ28の配設部分は、電波透過カバー20(詳しくは、カバー本体22)の外縁のうちの上記仮想電波透過範囲ARと重なる部分(
図2および
図4に「B」で示す部分)の全てを含んでいる。
【0026】
図4に示すように、リブ28の外周面には、外方に向けて突出する複数(本実施形態では3つ)の凸部29が周方向に間隔を置いて設けられている。
次に、電波透過カバー20の取付構造について説明する。
【0027】
図3に示すように、車両10のフロントグリル12には、前後方向(
図3の上下方向)に延びる態様で、段付きの取付筒部13が設けられている。この取付筒部13は、前方側の部分が大径部14になっており、後方側の部分が小径部15になっており、それら大径部14および小径部15の境界が段差部16になっている。取付筒部13の大径部14には、複数(本実施形態では3つ)の係合孔(図示略)が周方向に間隔を置いて形成されている。なお、これら係合孔は、電波透過カバー20がフロントグリル12に取り付けられた状態(
図3に示す状態)で、電波透過カバー20のリブ28の凸部29(
図4参照)に対向する位置に形成されている。
【0028】
そして、電波透過カバー20の取り付けに際しては、同電波透過カバー20のリブ28がフロントグリル12の取付筒部13に挿入されて、リブ28の各凸部29が取付筒部13の各係合孔に嵌められる。これにより、フロントグリル12の取付筒部13に電波透過カバー20のリブ28が係止されるようになる。このときフロントグリル12の取付筒部13の段差部16と電波透過カバー20のカバー本体22の後方面の外縁とが対向した状態になる。
【0029】
このように電波透過カバー20を取り付けることにより、電波透過カバー20とフロントグリル12の取付筒部13(大径部14)との間隙の後方には、同取付筒部13の段差部16が配置されるようになる。これにより、電波透過カバー20を前方から見た場合において上記隙間が目立ち難くなっている。
【0030】
以下、本実施形態の電波透過カバー20による作用効果について説明する。
本実施形態では、電波透過カバー20のカバー本体22が、同電波透過カバー20において意匠面をなす部分(車外側の部分)や、電波レーダー装置11の電波が透過する部分(電波透過部21)を有している。
【0031】
そして本実施形態では、そうしたカバー本体22の車内側の面にリブ28が立設されている。このリブ28は、電波透過カバー20(詳しくは、カバー本体22)を補強する補強部材として機能するため、リブが設けられないものと比較して、カバー本体22を含む電波透過カバー20の強度を高くすることができる。そして、これにより電波透過カバー20の耐衝撃性能を高くすることができる。
【0032】
しかも、リブ28が設けられる分だけカバー本体22に求められる強度が低くなる。そのため、カバー本体の厚さ(本実施形態では、6mm)を、電波の減衰量を適量に抑えるとともに意匠性能を確保することの可能な厚さ範囲内で薄くすることができる。
【0033】
また
図5に一例を示すように、電波透過カバー20が車両10に設けられた状態では、電波レーダー装置11の電波(反射波)の一部が電波透過カバー20の外縁において回折して、同電波レーダー装置11に不要に測定されてしまうことがある。
【0034】
本実施形態では、カバー本体22の外周端から間隔を置いた位置にリブ28が立設されているため、電波透過カバー20の外縁が二段の段差形状になっている。
そのため、仮に電波の一部が電波透過カバー20の外縁においてナイフエッジ効果によって回折する場合であっても、その電波を電波透過カバー20の外縁の各段差部31,32において回折させることができる。ここで、電波が回折する場合には、回折の度に電波の強度が弱くなることが知られている。本実施形態によれば、電波透過カバー20の外縁において電波を複数回(本実施形態では2回)にわたって回折させることができる。そのため、各段差部31,32において回折した後に電波レーダー装置11に向かう電波(
図5中の矢印S1)の強度を弱めることができ、同電波S1が電波レーダー装置11によって検出されることによる悪影響を緩和することができる。
【0035】
また、二段の段差形状における一段目の段差部31(カバー本体22の外縁端)において回折する電波の一部(
図5中の矢印S2)も電波レーダー装置11に向かうようになる。ただし、この電波S2の進行方向はリブ28によって遮られている。そのため、この電波S2の一部をリブ28の外面で反射させたり同リブ28を透過させて電波強度を弱めたりすることによって電波S2の強度を弱めることができ、同電波S2が電波レーダー装置11によって検出されることによる悪影響を緩和することができる。
【0036】
このように本実施形態によれば、電波透過カバー20を意匠性能、電波透過性能、耐衝撃性能、および対電波回折性能の全てを満足する構造にすることができ、同電波透過カバー20の高性能化を図ることができる。
【0037】
なお、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から、リブ28を有する本実施形態の電波透過カバー20を採用することにより、リブ28を有していない比較例の電波透過カバーが採用される場合と比較して、電波透過カバー20の透過に伴う電波(反射波)の減衰量が15%程度低減されるようになることが確認されている。リブ28の形状は、カバー本体22の外周端からの距離、言い換えれば前後方向に直交する方向(
図5に示す例では左右方向)におけるリブ28の外周端(段差部32)とカバー本体22の外周端(段差部31)との距離(
図5中の「W」)が「3mm〜70mm」の範囲になる形状であることが望ましい。またリブ28の形状は、カバー本体22からの突出量、言い換えれば前後方向におけるリブ28の外周後端(段差部32)とカバー本体22の外周後端(段差部31)との距離(
図5中の「H」)が「1mm〜15mm」の範囲になる形状であることが望ましい。
【0038】
また本実施形態では、後方に向けて延びるリブ28がカバー本体22の外周端から間隔を置いた位置に設けられているため、そうしたリブがカバー本体の外周端に設けられるものと比較して、電波透過カバー20の外周端にあたる部分の前後方向の厚さを薄くすることができる。そのため、電波透過カバー20における車両10の外表面をなす部分(
図1の左面、上面および下面)のうち、カバー本体22の外縁において後方に向けて湾曲しつつ延びる部分(
図1の上面および下面)の奥行き(
図1の左右方向長さ)が短くなる。これにより、電波透過カバー20における車両10の外表面をなす部分へのハードコート層27の形成を容易に行うことが可能になっている。
【0039】
さらに本実施形態の電波透過カバー20では、リブ28がカバー本体22の外縁に添って環状(筒状)で延びている。そのため、周方向において一部が途切れる形状のリブが設けられたものと比較して、電波透過カバー20の強度を好適に高くすることができる。
【0040】
また、仮想電波透過範囲ARと電波透過カバー20の外縁とが重なる部分、すなわち電波の回折が生じる可能性のある部分(
図2中および
図4中に「B」で示す部分)を含むカバー本体22の外縁の全ての部分にリブ28が配置されるようになる。そのため、このリブ28を利用して、電波透過カバー20の外縁で回折した後に電波レーダー装置11に向かう電波の強度を的確に弱めることができ、同電波による悪影響を好適に緩和することができる。
【0041】
しかも、電波レーダー装置11の電波の偏波面がいかなる角度であっても、上記仮想電波透過範囲ARと電波透過カバー20の外縁とが重なる部分にはリブ28が配置されるようになる。そのため、水平面に対して45度傾いた面が電波の偏波面になる車両や鉛直面(詳しくは、路面と直交する面)が電波の偏波面になる車両に上記電波透過カバー20を流用することが可能になるなど、電波透過カバー20を高い汎用性を有するものにすることができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)電波透過カバー20を意匠性能、電波透過性能、耐衝撃性能、および対電波回折性能の全てを満足する構造にすることができ、同電波透過カバー20の高性能化を図ることができる。
【0043】
(2)仮想電波透過範囲ARと電波透過カバー20の外縁とが重なる部分に配置されたリブ28を利用して、電波透過カバー20の外縁で回折した後に電波レーダー装置11に向かう電波の強度を的確に弱めることができ、同電波による悪影響を好適に緩和することができる。
【0044】
(3)カバー本体22の外縁に添って環状で延びるリブ28を同カバー本体22に設けた。そのため、電波透過カバー20の強度を好適に高くすることができる。しかも、電波透過カバー20を高い汎用性を有するものにすることができる。
【0045】
<変形例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・電波透過カバー20の各層(内面被覆板23、塗装層24、金属膜層25、外面被覆板26、ハードコート層27)を形成する材料は、適度な強度の電波が透過するものであれば、任意に変更可能である。
【0046】
・カバー本体22の外縁に添って環状で延びるリブ28の一部を省略してもよい。
この場合には、少なくとも仮想電波透過範囲ARと電波透過カバー20の外縁とが重なる部分(
図2中および
図4中に「B」で示す部分)にはリブ28を配置することが望ましい。これにより、電波の回折が生じる可能性のある部分にはリブ28を配置することができるため、このリブ28を利用して、電波透過カバー20の外縁で回折した後に電波レーダー装置11に向かう電波の強度を的確に弱めることができる。
【0047】
また上記実施形態では、電波レーダー装置11から放射された電波の一部が、電波透過カバー20を透過せずに、同電波透過カバー20の背面(車内側の面)とリブ28の内面とによって反射して電波レーダー装置11に不要に戻るといった現象が発生することが考えられる。この点、上記構成のようにリブ28の一部を省略することにより、電波透過カバー20の背面で反射した電波をさらに反射するようになる壁(詳しくは、リブ28)の一部が省略されるようになるため、上記現象の発生を抑えることができるようになる。
【0048】
・上記実施形態の電波透過カバー20は、車両後方に向けて電波を放射する電波レーダー装置が車両後部に設けられた車両にも適用することができる。この場合には、電波透過カバー20を、電波レーダー装置の車両後方側における電波の伝搬経路内に配置すればよい。
【0049】
・マイクロ波を放射する電波レーダー装置が搭載された車両にも、上記実施形態の電波透過カバー20は適用することができる。