特許第6852777号(P6852777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6852777端末装置、端末装置の動作方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852777
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】端末装置、端末装置の動作方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G11B 20/10 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   G11B20/10 H
   G11B20/10 321Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-216121(P2019-216121)
(22)【出願日】2019年11月29日
(62)【分割の表示】特願2019-2301(P2019-2301)の分割
【原出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2020-38748(P2020-38748A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】柘植 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 優樹
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−110490(JP,A)
【文献】 特開平02−190888(JP,A)
【文献】 特開2004−236166(JP,A)
【文献】 特開2006−004473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 20/10 − 20/16
H04N 5/76 − 5/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツの再生が許可される場所を指定する再生条件情報に応じてコンテンツの再生を制御する制御部を具備する端末装置であって
前記制御部は、受信装置が近距離無線通信により再生許可情報を受信した場合に前記再生条件情報を削除することで、当該受信以降は、前記再生許可情報の再度の受信を要件とせずに、当該端末装置が前記場所に所在するか否かに関わらず、前記コンテンツの再生を許可する
端末装置。
【請求項2】
前記場所は、当該端末装置が前記再生許可情報を受信可能な範囲である
請求項1の端末装置。
【請求項3】
端末装置が、
コンテンツの再生が許可される場所を指定する再生条件情報に応じてコンテンツの再生を制御し、
受信装置が近距離無線通信により再生許可情報を受信した場合に前記再生条件情報を削除することで、当該受信以降は、前記再生許可情報の再度の受信を要件とせずに、当該端末装置が前記場所に所在するか否かに関わらず、前記コンテンツの再生を許可する
端末装置の動作方法。
【請求項4】
コンテンツの再生が許可される場所を指定する再生条件情報に応じてコンテンツの再生を制御する制御部として端末装置のコンピュータを機能させ、
前記制御部は、受信装置が近距離無線通信により再生許可情報を受信した場合に前記再生条件情報を削除することで、当該受信以降は、前記再生許可情報の再度の受信を要件とせずに、当該端末装置が前記場所に所在するか否かに関わらず、前記コンテンツの再生を許可する
プログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像や音声等のコンテンツを端末装置において利用するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
美術館や博物館等の展示施設において利用者を案内する各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、利用者が携帯する案内専用の再生ユニットに事前に記憶された複数の解説音声のうち、各展示物の近傍の送信手段から送信されたコード情報に対応する解説音声を再生する個人案内システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−190888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された解説音声等の案内用のコンテンツを、利用者が自身で所有する携帯電話機やスマートフォン等の端末装置に配信できれば、案内専用の再生ユニットが不要となって便利である。しかし、例えば展示施設で端末装置に配信されたコンテンツをその展示施設の外部でも無制限に再生できるとすれば、コンテンツの著作権の保護の観点から種々の問題が発生する。以上の事情を考慮して、本開示は、コンテンツの再生を適切に制限することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の一例に係る端末装置は、コンテンツの再生が許可される場所を指定する再生条件情報に応じてコンテンツの再生を制御する制御部を具備し、前記制御部は、受信装置が近距離無線通信により再生許可情報を受信した以降は、前記再生許可情報の再度の受信を要件とせずに、当該端末装置が前記場所に所在するか否かに関わらず、前記コンテンツの再生を許可する。
【0006】
本開示の一例に係る端末装置の動作方法は、コンテンツの再生が許可される場所を指定する再生条件情報に応じてコンテンツの再生を制御し、受信装置が近距離無線通信により再生許可情報を受信した以降は、前記再生許可情報の再度の受信を要件とせずに、当該端末装置が前記場所に所在するか否かに関わらず、前記コンテンツの再生を許可する。
【0007】
本開示の一例に係るプログラムは、コンテンツの再生が許可される場所を指定する再生条件情報に応じてコンテンツの再生を制御する制御部としてコンピュータを機能させ、前記制御部は、受信装置が近距離無線通信により再生許可情報を受信した以降は、前記再生許可情報の再度の受信を要件とせずに、当該端末装置が前記場所に所在するか否かに関わらず、前記コンテンツの再生を許可する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の好適な形態に係る通信システムの構成図である。
図2】情報送信装置の構成図である。
図3】端末装置の構成図である。
図4】端末装置の動作のフローチャートである。
図5】第3実施形態におけるコンテンツの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係る通信システム100の構成図である。第1実施形態の通信システム100は、美術品や資料等の複数の展示物が展示された美術館や博物館等の展示施設Mに関連するコンテンツCを利用者に提供するためのコンピュータシステムであり、配信装置12と情報送信装置14と複数の端末装置16とを具備する。各端末装置16は、利用者が携帯する可搬型の情報処理装置(例えば携帯電話機やスマートフォン)であり、移動体通信網やインターネット等を含む通信網18を介して配信装置12と通信可能である。
【0010】
配信装置12は、展示施設Mに関連する各種のコンテンツCを各端末装置16に配信するサーバ装置(典型的にはウェブサーバ)であり、複数のコンテンツCを記憶する記憶装置や各コンテンツCを端末装置16に配信する通信装置を具備する(図示略)。各コンテンツCは、展示施設Mの案内(例えば施設名および経路案内等)や各展示物の解説を表す音声または画像(例えば静止画,動画像,文字や記号等の文字列)で構成され、端末装置16からの要求に応じてその端末装置16に配信される。
【0011】
図1に例示される通り、第1実施形態のコンテンツCには再生条件情報Qが付加され得る。再生条件情報Qは、コンテンツCの再生を許可する条件を指定する。第1実施形態では、展示施設Mに関するコンテンツCの再生をその展示施設Mの内部においてのみ限定的に許可する場合を想定する。したがって、再生条件情報Qは、コンテンツCの再生が許可される展示施設Mの識別情報Dを包含する。ただし、再生条件情報Qを含まないコンテンツC(すなわち再生が制限されないコンテンツC)も配信装置12から端末装置16に配信され得る。
【0012】
情報送信装置14は、展示施設Mの内部に設置され、コンテンツCの再生を許可するための再生許可情報Pを展示施設Mの内部の各端末装置16に送信する。第1実施形態の情報送信装置14は、近距離無線通信で再生許可情報Pを送信する。近距離無線通信の具体的な通信方式は任意であるが、空気振動たる音響を伝送媒体として再生許可情報Pを各端末装置16に送信する音響通信を第1実施形態では例示する。
【0013】
図2は、情報送信装置14の構成図である。図2に例示される通り、第1実施形態の情報送信装置14は、制御装置22と記憶装置24と放音装置26とを具備する。記憶装置24は、例えば半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の記録媒体で構成され、情報送信装置14が設置された展示施設Mの識別情報Dを記憶する。制御装置22は、記憶装置24に記憶された識別情報Dを再生許可情報Pとして含有する音響信号SAを生成して放音装置26に供給する。放音装置26は、制御装置22から供給される音響信号SAに応じた音響を放射する音響機器(スピーカ)である。すなわち、第1実施形態の放音装置26は、展示施設Mの識別情報Dを含む再生許可情報Pを音響通信により周囲に送信する送信機器として機能する。
【0014】
再生許可情報Pを含有する音響信号SAの生成には公知の方法が任意に採用され得るが、例えば国際公開第2010/016589号に開示された方法が好適である。具体的には、制御装置22は、拡散符号を利用した再生許可情報Pの拡散変調と所定の周波数の搬送波を利用した周波数変換とを順次に実行することで、再生許可情報Pを所定の周波数帯域の音響成分として含有する音響信号SAを生成する。再生許可情報Pの音響成分の周波数帯域は、放音装置26による放音と端末装置16による収音とが可能な帯域であり、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音声や楽音等の音響の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)を上回る周波数帯域(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)の範囲内に包含される。したがって、展示施設Mの利用者に殆ど知覚されることなく再生許可情報Pを情報送信装置14から周囲に送信することが可能である。もっとも、再生許可情報Pを可聴域内の音響成分として放音装置26から放射する構成や、再生許可情報Pの音響成分と展示施設の案内音声の音響成分とを混合した音響信号SAの音響を放音装置26から放射する構成も採用され得る。
【0015】
情報送信装置14の放音装置26から放射された音響は、展示施設Mの内部には有意な音量で到達するが、展示施設Mの外部には到達しない。すなわち、情報送信装置14から送信された再生許可情報Pを適切に受信できる範囲(以下「受信可能範囲」という)は展示施設Mの内部に制限される。再生許可情報Pの送信に音響通信を採用した第1実施形態によれば、放音装置26の再生音量の調整や遮音壁の設置により再生許可情報Pの受信可能範囲を容易かつ詳細に制御できるという利点がある。
【0016】
図3は、任意の1個の端末装置16の構成図である。図3に例示される通り、第1実施形態の端末装置16は、制御装置42と記憶装置44と通信装置46と操作装置52と再生装置54と収音装置56とを具備する。制御装置42は、記憶装置44に記憶されたプログラムを実行することで各種の演算処理および制御処理を実行する。操作装置52は、端末装置16に対する各種の指示のために利用者が操作する入力機器である。例えば利用者が押圧する複数の操作子や利用者による接触を検知するタッチパネルが操作装置52として好適に利用される。
【0017】
通信装置46は、通信網18を介して配信装置12や他の端末装置16と通信する通信機器である。具体的には、通信装置46は、操作装置52に対する操作で利用者から指示されたコンテンツCを配信装置12に要求するとともに、端末装置16からの要求に応じて配信装置12から送信されたコンテンツCを受信する。記憶装置44は、制御装置42が実行するプログラムや制御装置42が使用する各種のデータを記憶する。具体的には、通信装置46が配信装置12から受信したコンテンツCや、コンテンツCの再生を制御するためのプログラム(以下「再生制御プログラム」という)が記憶装置44に格納される。半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の記録媒体または複数種の記録媒体の組合せが記憶装置44として任意に採用される。
【0018】
再生装置54は、記憶装置44に記憶されたコンテンツCを再生するための手段(再生手段)である。第1実施形態の再生装置54は、表示装置542と放音装置544とを包含する。表示装置542(例えば液晶表示パネル)は、制御装置42からの指示に応じてコンテンツCの画像を表示し、放音装置544(例えばスピーカやヘッドホン)は、制御装置42からの指示に応じてコンテンツCの音響を放射する。なお、表示装置542および放音装置544の一方のみをコンテンツCの再生に利用する構成も採用され得る。例えば、展示物を解説する文字列のコンテンツCの再生には表示装置542のみが利用され、展示物を解説する音声のコンテンツCの再生には放音装置544のみが利用される。
【0019】
収音装置56は、周囲の音響を収音して音響信号SBを生成する音響機器(マイクロホン)である。第1実施形態の収音装置56は、端末装置16の相互間の音声通話や動画撮影時の音声収録に利用されるほか情報送信装置14との間で実行される音響通信に利用される。
【0020】
具体的には、展示施設Mの内部(受信可能範囲内)に位置する端末装置16の収音装置56は、情報送信装置14の放音装置26から放射された音響(再生許可情報Pを含有する音響)を収音して音響信号SBを生成する。制御装置42は、収音装置56が生成した音響信号SBの復調で再生許可情報Pを抽出する。具体的には、制御装置42は、音響信号SBのうち再生許可情報Pを含有する高域側の周波数帯域(18kHz以上かつ20kHz以下)の音響成分を例えば高域通過フィルタで抽出し、再生許可情報Pの拡散変調に利用された拡散符号を係数とする整合フィルタを通過させることで再生許可情報Pを抽出する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の収音装置56は、音響通信により情報送信装置14から再生許可情報Pを受信可能な受信手段として機能する。
【0021】
図4は、記憶装置44に記憶された再生制御プログラムを実行する制御装置42の動作のフローチャートである。配信装置12から配信されて記憶装置44に記憶されたコンテンツCや記憶装置44に事前に記憶されたコンテンツC(例えば可搬型の記録媒体から記憶装置44に転送されたコンテンツC)を含む複数のコンテンツCのうち特定のコンテンツC(以下「対象コンテンツC」という)の再生が操作装置52に対する操作で利用者から指示されるたびに図4の処理が開始される。
【0022】
図4の処理を開始すると、制御装置42は、記憶装置44に記憶された対象コンテンツCに再生条件情報Qが付加されているか否か(すなわち対象コンテンツCの再生に対する制限の有無)を判定する(SA1)。対象コンテンツCに再生条件情報Qが付加されていない場合(SA1:NO)、制御装置42は、対象コンテンツCを再生装置54に再生させる(SA2)。すなわち、再生条件情報Qが付加されていないコンテンツCは、展示施設Mの内部および外部の何れに端末装置16が位置する場合でも再生装置54により再生される。
【0023】
対象コンテンツCに再生条件情報Qが付加されている場合(SA1:YES)、制御装置42は、再生条件情報Qと共通の識別情報Dを含む再生許可情報Pを情報送信装置14から受信できるか否かを判定する(SA3)。具体的には、制御装置42は、対象コンテンツCの再生が指示された時点から所定の時間が経過するまでに再生許可情報Pを受信できたか否かを判定する。展示施設Mの内部に位置する端末装置16の収音装置56は、情報送信装置14の放音装置26から放射された音響を収音することで再生許可情報Pを受信することが可能である。情報送信装置14から再生許可情報Pを受信した場合(SA3:YES)、制御装置42は、対象コンテンツCを再生装置54に再生させる(SA2)。すなわち、再生装置54による対象コンテンツCの再生が許可される。
【0024】
他方、展示施設Mの外部(受信可能範囲外)に位置する端末装置16には、情報送信装置14の放音装置26から放射される音響が到達しないから、端末装置16は再生許可情報Pを受信できない。情報送信装置14から再生許可情報Pを受信できない場合(SA3:NO)、制御装置42は、例えば対象コンテンツCの再生が制限されていることを利用者に通知する画像や音声を再生装置54から再生したうえで、再生装置54による対象コンテンツCの再生を禁止する(SA4)。以上の説明から理解される通り、端末装置16が再生許可情報Pを受信できるか否か(すなわち再生許可情報Pの音響が到達する受信可能範囲内に端末装置16が位置するか否か)に応じてコンテンツCの再生の許否が決定される。したがって、例えば展示施設Mの内部でコンテンツCの再生が許可された端末装置16が展示施設Mの外部に移動した場合にはそのコンテンツCの再生が禁止され、端末装置16が再び展示施設Mの内部に移動した場合にはそのコンテンツCの再生が再び許可される。
【0025】
以上に例示した通り、第1実施形態では、収音装置56が再生許可情報Pを受信した場合にコンテンツCの再生が許可される。すなわち、再生許可情報Pの音響が到達する受信可能範囲内に端末装置16が位置する場合に限定してコンテンツCの再生が許可される。したがって、コンテンツCの著作権を適切に保護することが可能である。
【0026】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0027】
第1実施形態では、受信可能範囲内の端末装置16にコンテンツCの再生が許可された場合でも、端末装置16が受信可能範囲外に移動すればそのコンテンツCの再生は禁止される。第2実施形態では、受信可能範囲内での再生許可情報Pの受信以降は、再生許可情報Pの再度の受信を要件とせずに(すなわち受信可能範囲の内外を問わず)、再生装置54によるコンテンツCの再生が許可される。
【0028】
具体的には、図4の処理で再生許可情報Pを受信したと判定した場合(SA3:YES)、第2実施形態の制御装置42は、対象コンテンツCの再生を許可して再生装置54に再生させるとともに、対象コンテンツCに付加された再生条件情報Qを無効化する。具体的には、制御装置42は、再生条件情報Qを対象コンテンツCから削除する。したがって、端末装置16の利用者が展示施設Mに来場して再生許可情報Pを受信すれば、以降は、再生許可情報Pの受信の可否に関わらず(すなわち端末装置16が展示施設Mの内部および外部の何れに位置する場合でも)、対象コンテンツCの再生が許可される。
【0029】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、端末装置16による再生許可情報Pの受信以降は、再生許可情報Pの再度の受信を要件とせずに再生装置54によるコンテンツCの再生が許可される。したがって、再生許可情報Pの受信以降に端末装置16が受信可能範囲外に移動した場合にコンテンツCの再生が禁止される第1実施形態と比較して、利用者による展示施設Mへの来場やコンテンツCの利用を促進することが可能である。他方、第1実施形態では、端末装置16が再生許可情報Pを受信できない場合には再生装置54によるコンテンツCの再生が禁止されるから、コンテンツCを再生できる場所を受信可能範囲内に制限できる(コンテンツCの著作権の保護を第2実施形態と比較して強化できる)という利点がある。
【0030】
なお、以上の説明では、再生条件情報QをコンテンツCから削除したが、再生条件情報Qを無効化するための具体的な方法は以上の例示に限定されない。例えば、再生条件情報Qの無効化を意味する情報(例えばフラグ)をコンテンツCに付加することも可能である。
【0031】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態におけるコンテンツCの再生の説明図である。図5に例示される通り、第3実施形態では、記憶装置44に記憶された1個のコンテンツCが複数の部分CP(CP1,CP2)を包含する。1個のコンテンツCの複数の部分CPは、再生条件情報Qが付加されていない部分(以下「許可部分」という)CP1と、再生条件情報Qが付加された部分(以下「制限部分」という)CP2とを包含する。許可部分CP1(第1部分)と制限部分CP2(第2部分)とは、共通の対象(例えば展示施設Mや展示物)に関連するけれども具体的な内容は相違する。例えば、許可部分CP1は、対象物の簡略的または概略的な解説のみで構成されるのに対し、制限部分CP2は、その対象物の詳細な解説を包含する。あるいは、許可部分CP1は、対象物の解説の文字列のみで構成されるのに対し、制限部分CP2は、その対象物を解説する音声や画像を包含する。
【0032】
端末装置16の制御装置42は、利用者が再生を指示した対象コンテンツCの複数の部分CPのうち、再生条件情報Qが付加されていない許可部分CP1については再生許可情報Pの受信を要件とせずに再生装置54による再生を許可し、再生条件情報Qが付加された制限部分CP2については再生許可情報Pの受信を要件として再生装置54による再生を許可する。したがって、端末装置16の利用者は、所望のコンテンツCのうち許可部分CP1を展示施設Mへの来場前に再生して展示施設Mや展示物の概略を事前に確認する一方、展示施設Mへの来場時に制限部分CP2を再生することで展示施設Mや展示物の詳細を確認することが可能である。
【0033】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、再生許可情報Pの受信を再生の要件とするか否かが1個のコンテンツCの部分CP毎に選定されるから、制限部分CP2については再生を適切に制限して著作権を保護する一方、許可部分CP1については再生許可情報Pの受信を要件とせずに再生を許可することで、制限部分CP2の再生(展示施設Mへの来場)を促進できるという利点がある。
【0034】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0035】
(1)第2実施形態では、再生許可情報Pをいったん受信するとコンテンツCの再生制限が解除される構成を例示したが、再生許可情報Pの受信以降に再生許可情報Pを受信できなくなった場合(例えば展示施設Mの内部から外部に端末装置16が移動した場合)に、再生許可情報Pの受信前とは異なる制限のもとでコンテンツCの再生を許可することも可能である。例えば、
・再生許可情報Pの受信前(展示施設Mへの来場前)にはコンテンツCの再生を禁止し、
・再生許可情報Pを受信可能な状態(展示施設Mへの来場中)ではその展示施設MのコンテンツCの全部(例えば第3実施形態で例示した許可部分CP1および制限部分CP2の双方)の再生を許可し、
・再生許可情報Pの受信後に再生許可情報Pを受信できなくなると(展示施設Mの外部に移動した場合)、来場済の展示施設MのコンテンツCのうち特定の部分(例えば第3実施形態で例示した許可部分CP1)の再生のみを許可する
といった構成が採用され得る。具体的には、各コンテンツCに付加される再生条件情報Qを変更することで当該コンテンツCの再生の条件を制御することが可能である。例えば、再生許可情報Pの受信前に再生禁止を指定していた再生条件情報Qを、再生許可情報Pの受信後(展示施設Mの外部に移動した場合)に、当該コンテンツCのうち許可部分CP1の再生を許可する内容に変更する構成が想定される。
【0036】
(2)前述の各形態では、再生許可情報Pの受信の可否に応じてコンテンツCの再生の許否(許可/禁止)を決定したが、再生許可情報Pの受信の回数(展示施設Mへの来場回数)に応じてコンテンツCの再生を段階的に許可することも可能である。例えば、再生許可情報Pの受信回数を記憶装置44に格納して受信毎(展示施設Mへの来場毎)に更新し、受信回数が増加するほど、コンテンツCのうち再生装置54による再生が許可される範囲を段階的に拡張する構成が採用される。以上の構成によれば、展示施設Mへの反復的な来場を促進することが可能である。具体的には、再生許可情報Pの受信毎に各コンテンツCの再生条件情報Qを順次に更新することで、当該コンテンツCの再生条件を段階的に変更する構成が実現される。例えば、再生許可情報Pの受信毎に、再生条件が緩和されるように当該コンテンツCの再生条件情報Qが段階的に更新される。また、再生条件情報QがコンテンツCの再生の間隔を指定する構成として、直前のコンテンツCの再生の終了時刻から当該間隔が経過するまではそのコンテンツCの再生を禁止することも可能である。
【0037】
(3)前述の各形態では、配信装置12から端末装置16に事前に配信および保持されたコンテンツCの再生を例示したが、コンテンツCを配信装置12からストリーミング方式で配信する場合にも本開示を適用することが可能である。例えば、配信装置12が保持するコンテンツCのストリーミング再生を、端末装置16による再生許可情報Pの受信を要件として許可する構成が採用される。また、端末装置16に保持されたコンテンツCの再生のみを想定すると、前述の各形態で例示した配信装置12は省略され得る。
【0038】
また、前述の各形態では、利用者が指示したコンテンツCを対象コンテンツCとして再生する構成を例示したが、再生対象のコンテンツCを選択する方法は以上の例示に限定されない。例えば、例えばGPS(Global Positioning System)等の位置検出手段を利用して検出された端末装置16の現在位置に応じて対象コンテンツCを自動的に選択することも可能である。例えば、端末装置16の現在位置を含む地域に関連するコンテンツCを対象コンテンツCとして選択する構成が好適である。
【0039】
(4)再生条件情報Qが指定する再生条件は前述の各形態での例示に限定されない。具体的には、コンテンツCの再生が許可される時間的な条件を再生条件情報Qで指定することも可能である。例えば、特定の企画展の開催期間中のみコンテンツCの再生を許可するという条件や、再生許可情報Pの受信から所定の時間のみコンテンツCの再生を許可するという条件が、各コンテンツCの再生条件情報Qで指定され得る。また、コンテンツCの再生を許可する端末装置16の条件(例えば種類や型式の条件)を再生条件情報Qで指定することも可能である。例えば、端末装置16がタブレット端末である場合には再生を許可するがスマートフォンである場合には再生を禁止するという条件が再生条件情報Qで指定される。また、事前に登録された暗証番号の入力をコンテンツCの再生の条件として再生条件情報Qで指定することも可能である。
【0040】
(5)前述の各形態では、コンテンツCの再生の許否を例示したが、前述の各形態で例示したコンテンツCの再生の許否に応じて端末装置16の動作を制限することも可能である。例えば、再生許可情報Pの受信を条件としてコンテンツCの再生が許可された状態(すなわち、端末装置16が展示施設Mの内部に位置する状態)では、端末装置16の撮像装置(例えばカメラ)を利用した静止画や動画像の撮影を禁止する構成が採用され得る。また、表示装置542に表示された画像(スクリーンショット)の保存や表示装置542に表示されたコンテンツCの文字列のコピーを禁止することも可能である。
【0041】
(6)前述の各形態では、音響を伝送媒体とする音響通信で再生許可情報Pを各端末装置16に送信したが、再生許可情報Pを送信するための通信方式は音響通信に限定されない。例えば、電波や赤外線等の電磁波を伝送媒体とした無線通信で情報送信装置14から周囲に再生許可情報Pを送信することも可能である。以上の例示から理解される通り、再生許可情報Pの送信には、通信網18が介在しない近距離無線通信が好適であり、音響を伝送媒体とする音響通信や電磁波を伝送媒体とする無線通信は近距離無線通信の例示である。
【0042】
なお、例えば無線通信に利用される赤外線等の電磁波は指向性ないし直進性が強いのに対し、音響通信に利用される音響は広範囲に伝播され得るから、展示施設Mの内部の多数の端末装置16に対して一括的に再生許可情報Pを送信することが可能である。しかも、音響通信で再生許可情報Pを送信する構成では、例えば展示施設Mの館内放送等に利用される既存の放音装置26を再生許可情報Pの送信に流用でき、音声通話や音声収録に利用される既存の収音装置56を再生許可情報Pの受信に流用できる。したがって、再生許可情報Pの送受信に専用される無線通信機器が不要であるという利点もある。
【0043】
(7)前述の各形態では、近距離無線通信により各端末装置16が再生許可情報Pを受信する構成を例示したが、コンテンツCの再生を展示施設Mの内部に制限するための方法は以上の例示に限定されない。例えば、再生許可情報Pを表現する光学的に読取可能なQRコード(登録商標)等の画像を展示施設Mの内部のみに展示し、その画像の読取を要件としてコンテンツCの再生を許可することも可能である。
【0044】
(8)以上の各態様に係る端末装置は、専用の電子回路で実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)等の汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本開示のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、例えば、本開示のプログラムは、通信網を介した配信の形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。
【符号の説明】
【0045】
100……通信システム、12……配信装置、14……情報送信装置、16……端末装置、18……通信網、22,42……制御装置、24,44……記憶装置、26……放音装置、46……通信装置、52……操作装置、54……再生装置(再生手段)、542……表示装置、544……放音装置、56……収音装置(受信手段)。
図1
図2
図3
図4
図5