(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち1,4−シス構造の割合が17モル%以上である、請求項1又は2に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のコンベアベルト用ゴム組成物、上記コンベアベルト用ゴム組成物の製造方法、上記コンベアベルト用ゴム組成物を用いて形成されたコンベアベルト、及び、上記コンベアベルトを装着したベルトコンベアについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[I]コンベアベルト用ゴム組成物
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物(以下、本発明の組成物とも言う)は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を50質量%以上含むジエン系ゴムを含有する。
ここで、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、芳香族ビニルに由来する繰り返し単位の含有量が20質量%超であり、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうちビニル構造の割合が8モル%以下である。
本発明の組成物はこのような構成をとるため、耐カット性及び耐摩耗性に優れるものと考えられる。その理由は明らかではないが、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(以下、「特定共重合体」とも言う)は、ビニル構造の割合が極めて低いためにガラス転移温度が低く柔軟な構造を有するため、コンベアベルトにしたときに優れた耐カット性及び耐摩耗性を示すものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の組成物に含有されるジエン系ゴム及び本発明の組成物に含有され得る任意成分について説明する。
【0014】
[1]ジエン系ゴム
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、後述する特定の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(特定共重合体)を50質量%以上含む。
本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム中の特定共重合体の含有量は、60質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されず、100質量%であるが、本発明の効果がより優れる理由から、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
[特定共重合体]
特定共重合体は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(芳香族ビニルと共役ジエンとの共重合体)である。ここで、上記芳香族ビニルに由来する繰り返し単位の含有量は20質量%超である。また、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうちビニル構造の割合は8モル%以下である。
特定共重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、溶液重合型共重合体(特に、溶液重合型SBR)であることが好ましい。
【0016】
〔モノマー〕
特定共重合体は、芳香族ビニルと共役ジエンとの共重合体である。すなわち、特定共重合体は、芳香族ビニルと共役ジエンとを共重合した共重合体である。特定共重合体は、芳香族ビニル及び共役ジエンに加え、さらに別のモノマーを共重合した共重合体であってもよい。
【0017】
(1)芳香族ビニル
上記芳香族ビニルは特に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、およびジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらの中でも、本発明の効果がより優れる理由から、スチレン、α−メチルスチレン、および4−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。これらの芳香族ビニルは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
特定共重合体における、芳香族ビニルに由来する繰り返し単位の含有量(以下、「芳香族ビニル含有量」とも言う)は、20質量%超である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、21〜50質量%であることが好ましく、22〜40質量%であることがより好ましく、23〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
(2)共役ジエン
共役ジエンは特に制限されないが、例えば、ブタジエン(例えば、1,3−ブタジエン)、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1,3−ブタジエン、イソプレンであるのが好ましい。これらの共役ジエンは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
特定共重合体における、共役ジエンに由来する繰り返し単位の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、80質量%未満であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
(3)その他のモノマー
上述のとおり、特定共重合体は、芳香族ビニル及び共役ジエンに加え、さらに別のモノマーを共重合した共重合体であってもよい。そのようなモノマーとしては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−へプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンなどを挙げることができる。
【0022】
〔ミクロ構造〕
(1)ビニル構造
特定共重合体において、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造の割合(以下、単に「ビニル構造の割合」とも言う)は8モル%以下である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、7モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されず、0モル%である。
ここで、ビニル構造の割合とは、共役ジエンに由来する全繰り返し単位のうち、ビニル構造(例えば、共役ジエンが1,3−ブタジエンである場合は1,2−ビニル構造)を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0023】
(2)1,4−トランス構造
特定共重合体において、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち、1,4−トランス構造の割合(以下、単に「1,4−トランス構造の割合」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、75モル%以下であることが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、70モル%以下であることが好ましく、70モル%未満であることがより好ましく、60モル%以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましい。
ここで、1,4−トランス構造の割合とは、共役ジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4−トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0024】
(3)1,4−シス構造
特定共重合体において、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち、1,4−シス構造の割合(以下、単に「1,4−シス構造の割合」とも言う)は特に制限されないが、10〜92モル%であることが好ましく、17〜90モル%であることがより好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、20〜88モル%であることが好ましく、25〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましく、40〜75モル%であることが特に好ましい。
ここで、1,4−シス構造の割合とは、共役ジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4−シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0025】
なお、以下、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち「ビニル構造の割合(モル%)、1,4−トランス構造の割合(モル%)、1,4−シス構造の割合(モル%)」を「ビニル/トランス/シス」とも表す。
また、共役ジエンに由来する繰り返し単位は、ビニル構造、1,4−トランス構造及び1,4−シス構造からなるため、各構造の割合(モル%)の合計は100モル%である。
【0026】
〔ガラス転移温度〕
特定共重合体のガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、−50℃以下であることが好ましく、−60℃以下であることがより好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、−70℃以下であることが好ましく、−80℃以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、−100℃以上であることが好ましく、−90℃以上であることがより好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
【0027】
〔分子量〕
特定共重合体の分子量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、重量平均分子量(Mw)で1,000〜10,000,000であることが好ましく、2,000〜5,000,000であることがより好ましく、3,000〜2,000,000であることがさらに好ましい。また、本発明の効果がより優れる理由から、数平均分子量(Mn)で500〜5,000,000であることが好ましく、1,000〜2,500,000であることがより好ましく、1,500〜1,000,000であることがさらに好ましく、200,000〜1,000,000であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0028】
〔好適な態様〕
特定共重合体の好適な態様としては、例えば、末端が、ハロゲン化チタン、ハロゲン化錫、環状シラザン、アルコキシシラン、エポキシド、アミン、ケトン及び後述する式(N)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の変性剤(以下、「特定変性剤」とも言う)で変性された態様が挙げられる。上記態様の場合、本発明の効果がより優れる。
なお、特定変性剤がハロゲン化チタン、ハロゲン化錫または後述する式(N)で表される化合物である場合、特定共重合体の末端はカーボンブラックと相互作用すると推測され、特定変性剤が環状シラザン、アルコキシシランまたはアミンである場合、特定共重合体の末端はシリカと相互作用すると推測され、特定変性剤がエポキシドまたはケトンである場合、特定共重合体の末端はシリカまたはカーボンブラックと相互作用すると推測される。
本発明の効果がより優れる理由から、特定変性剤は、環状シラザン、アルコキシシラン、又は、後述する式(N)で表される化合物であることが好ましく、後述する式(N)で表される化合物であることがより好ましい。
【0029】
<特定変性剤>
以下、各特定変性剤について説明する。
【0030】
(1)ハロゲン化チタン
ハロゲン化チタンは特に制限されないが、例えば、TiCl
3、TiBr
3、Ti(OC
2H
5)Cl
2、Ti(OC
4H
9)Cl
2、TiCl
4、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(OC
4H
9)Cl
3等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、TiCl
3(トリクロロチタン)、TiCl
4(テトラクロロチタン)が好ましく、テトラクロロチタンがより好ましい。
【0031】
(2)ハロゲン化錫
ハロゲン化錫は特に制限されないが、例えば、フッ化錫、塩化錫、臭化錫、ヨウ化錫、アスタチン化錫などが挙げられる。
【0032】
(3)環状シラザン
環状シラザンは環状のシラザンであれば特に制限されない。
ここで、シラザンとは、ケイ素原子と窒素原子とが直接結合した構造を有する化合物(Si−N結合を有する化合物)を意図する。
環状シラザンは、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(S)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
上記式(S)中、R
1〜R
3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の具体例は、後述する式(P)中のRと同じである。
R
1は、本発明の効果がより優れる理由から、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1〜10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜18)であることが好ましい。
R
2は、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10)であることが好ましい。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1〜8)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−SO
2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基(−C
mH
2mO−:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
Lは、本発明の効果がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1〜10)であることが好ましい。
【0035】
上記式(S)で表される化合物としては、例えば、N−n−ブチル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−フェニル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−トリメチルシリル−1,1−ジエトキシ−2−アザシラシクロペンタンなどが挙げられる。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を示すと考えられる。
【0036】
(4)アルコキシシラン
アルコキシシランは、アルコキシシリル基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビストリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビストリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アルコキシシリル基中のアルコキシ基の数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、2個以上であることが好ましい。
なお、アルコキシシランのケイ素原子は求電子性を示すものと考えられる。
【0037】
(5)エポキシド
エポキシドは、オキサシクロプロパン(オキシラン)構造を有する化合物であれば特に制限されない。
エポキシドの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、1−フェニルプロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグルシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、1−メトキシ−2−メチルプロピレンオキシド、アリルグリシジルエーテル、2−エチルオキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、パルミチルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、カプリルグリシジルエーテルおよびカプロイルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
(6)アミン
アミンは、アミノ基(−NR
2:Rは水素原子又は炭化水素基を表す。2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)を有する化合物であれば特に制限されない。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アジリジンであることが好ましい。アジリジンとしては、例えば、N−メチルアジリジン、N−エチルアジリジン、N−イソプロピルアジリジン、N−フェニルアジリジン、N−(4−メチルフェニル)アジリジン、N−メチル−2−メチルアジリジンなどが挙げられる。
【0039】
(7)ケトン
ケトンは、ケトン基(−CO−)を有する化合物であれば特に制限されない。
ケトンの具体的としては、アセトン、ベンゾフェノン、および、これらの誘導体などが挙げられる。
ベンゾフェノンの誘導体としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラエチル(4,4’−ジアミノ)−ベンゾフェノン、N,N−ジメチル−1−アミノベンゾキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノベンゾキノン、N,N−ジメチル−1−アミノアントラキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノアントラキノン、4,4’−ジアセチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0040】
(8)式(N)で表される化合物
以下、下記式(N)で表される化合物について説明する。
【0042】
上記式(N)中、R
1は水素原子またはアルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)を表し、R
2はアルキレン基(好ましくは、炭素数2〜10)を表す。
【0043】
上記式(N)で表される化合物の具体例としては、N−メチルピロリドン(上記式(N)中、R
1がメチル基、R
2がプロピレン基)などが挙げられる。
【0044】
[特定共重合体の製造方法]
上述した特定共重合体を製造する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。芳香族ビニル含有量、ミクロ構造の割合、ガラス転移温度、及び、分子量を特定の範囲にする方法は特に制限されないが、例えば、重合するモノマーの種類、モノマーの量比、開始剤の種類、開始剤の量比、反応温度などを調整する方法などが挙げられる。
【0045】
〔好適な態様〕
特定共重合体を製造する方法の好適な態様としては、例えば、有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム及び金属アルコラートを用いて調製された開始剤(以下、「特定開始剤」とも言う)を用いて芳香族ビニル及びジエンを含むモノマーを共重合する方法(以下、「本発明の方法」とも言う)が挙げられる。上記方法を用いた場合、得られる特定共重合体を含有する本発明の組成物はより優れた耐カット性及び耐摩耗性を示す。
【0046】
<特定開始剤>
上述のとおり、本発明の方法では、有機リチウム化合物、アルキルアルミニウムおよび金属アルコラートを用いて調製された開始剤(特定開始剤)が使用される。本発明の方法では特定開始剤が使用されるため、得られる特定共重合体において、ジエンに由来する繰り返し単位のうちビニル構造が占める割合が抑えられる(例えば、8モル%以下)ものと考えられる。
【0047】
特定開始剤は、本発明の効果がより優れる理由から、さらに芳香族ジビニルを用いたものであることが好ましい。すなわち、有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム、金属アルコラートおよび芳香族ジビニルを用いて調製されたものであることが好ましい。芳香族ジビニルを用いることで、得られる共重合体が分岐状になり、分子量が上がり、耐カット性及び耐摩耗性がより向上する。
【0048】
(1)有機リチウム化合物
有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。特に、本発明の効果がより優れる理由から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0049】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、重合するモノマーに対して、0.001〜10モル%であることが好ましい。
【0050】
(2)アルキルアルミニウム
アルキルアルミニウムは、アルミニウム原子(Al)にアルキル基(鎖状、分岐状、環状)が結合した化合物であれば特に制限されない。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。アルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ペンチルジエチルアルミニウム、2−メチルペンチル−ジエチルアルミニウム、ジシクロヘキシルエチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ(2,2,4−トリメチルペンチル)アルミニウム、トリドデシルアルミニウム、トリ(2−メチルペンチル)アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライドなどが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、トリオクチルアルミニウムが好ましい。
【0051】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対するアルキルアルミニウムの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.1〜50モル当量であることが好ましく、0.5〜10モル当量であることがより好ましい。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、アルキルアルミニウムを1モル添加するときの量を示している。つまり、特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対するアルキルアルミニウムの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10〜5000モル%であることが好ましく、50〜1000モル%であることがより好ましい。
【0052】
(3)金属アルコラート
金属アルコラート(金属アルコキシド)は、アルコールのヒドロキシ基の水素を金属で置換した化合物であれば特に制限されない。
上記金属としては特に制限されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属(3〜11族の金属)、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモンなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルカリ土類金属が好ましく、バリウムであることがより好ましい。
上記アルコールは、鎖状、分岐状または環状の炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置換した化合物であれば特に制限されない。アルコールの炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
【0053】
金属アルコラートは、本発明の効果がより優れる理由から、バリウムアルコラート(バリウムアルコキシド)であることが好ましい。バリウムアルコキシドとしては、例えば、バリウムジメトキシド、バリウムジエトキシド、バリウムジプロポキシド、バリウムジブトキシド、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)などが挙げられる。
【0054】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する金属アルコラートの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.01〜5モル当量であることが好ましく、0.1〜3モル当量であることがより好ましい。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、金属アルコラートを1モル添加するときの量を示している。つまり、特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する金属アルコラートの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1〜500モル%であることが好ましく、10〜300モル%であることがより好ましい。
【0055】
(4)芳香族ジビニル
芳香族ジビニルは、ビニル基を2つ有する芳香族化合物であれば特に制限されない。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0056】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する芳香族ジビニルの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.1〜5モル当量であることが好ましく、0.3〜3モル当量であることがより好ましい。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、芳香族ジビニルを1モル添加するときの量を示している。つまり、特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する芳香族ジビニルの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10〜500モル%であることが好ましく、30〜300モル%であることがより好ましい。
【0057】
(特定開始剤の調製方法)
特定開始剤の調製方法は特に制限されないが、上述した有機リチウム化合物、アルキルアルミニウムおよび金属アルコラート等を、溶媒に溶解させる方法などが挙げられる。
溶媒の種類は特に制限されず、例えば、有機溶剤などを使用することができるが、本発明の効果がより優れる理由から、アルコール以外であることが好ましい。
【0058】
<モノマー>
モノマー(混合物)は芳香族ビニル及びジエンを含む。芳香族ビニル及びジエンの具体例及び好適な態様は上述のとおりである。
モノマー中の芳香族ビニルの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、20質量%超であることが好ましく、21〜50質量%であることが好ましく、22〜40質量%であることがより好ましく、23〜30質量%であることがさらに好ましい。
また、モノマー中のジエンの割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、80質量%未満であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
モノマーは、芳香族ビニル及びジエンに加え、さらに別のモノマーを含んでいてもよい。そのようなモノマーの具体例は、上述した「その他のモノマー」と同じである。
【0059】
<モノマーの共重合>
上述のとおり、本発明の方法では、特定開始剤を用いて芳香族ビニル及びジエンを含むモノマーを共重合する。特定開始剤およびモノマーについては上述のとおりである。
【0060】
モノマーの共重合方法は特定に制限されないが、上述した特定開始剤を含有する有機溶媒溶液に上述したモノマーを加え、0〜120℃(好ましくは30〜100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
【0061】
モノマーに対する特定開始剤中の有機リチウム化合物の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.001〜10モル%であることが好ましい。
【0062】
モノマーを共重合する際に、共重合系(例えば、上述した特定開始剤を含有する有機溶媒溶液)にフェノール化合物やアミン化合物を添加してもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、フェノール化合物が好ましい。フェノール化合物を添加すると、得られる芳香族ビニル−ジエン共重合体において、ジエンに由来する繰り返し単位のうち1,4−シス構造の割合が増える。
ここで、フェノール化合物とは、フェノール性水酸基またはその金属塩を有する化合物を意図する。また、アミン化合物とはアミノ基(−NH
2、−NHR、−NR
2)を有する化合物を意図する。ここで、Rは置換基を表す。置換基の具体例および好適な態様は、後述する式(P)中のRと同じである。−NR
2の2つのRは同一であっても、異なっていてもよい。
フェノール化合物としては、例えば、下記式(P)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
上記式(P)中、X
1は、水素原子または金属原子を表す。金属原子としては、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられる。
上記式(P)中、Rは、水素原子または置換基を表す。複数あるRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記置換基としては、1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6〜18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
上記式(P)中、Xは、水素原子、−OX
1基または置換基を表す。X
1については上述のとおりである。また、置換基の具体例は、上述した式(P)中のRと同じである。
【0065】
添加するフェノール化合物の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記有機リチウム化合物に対して0.01〜90モル%であることが好ましく、0.1〜80モル%であることがより好ましい。
【0066】
重合を停止する方法は特に制限されないが、重合溶液にアルコール(特にメタノール)を添加する方法などが挙げられる。
重合を停止する方法は、本発明の効果がより優れる理由から、ハロゲン化チタン、ハロゲン化錫、環状シラザン、アルコキシシラン、エポキシド、アミン、ケトンおよび下記式(N)で表される化合物から選ばれる求電子剤(以下、「特定求電子剤」とも言う)を用いて重合を停止する方法が好ましい。
すなわち、本発明の方法は、特定開始剤を用いて芳香族ビニル及びジエンを含むモノマーを共重合し、その後、特定求電子剤を用いて重合を停止する方法が好ましい。
特定求電子剤の定義、具体例及び好適な態様は、上述した特定変性剤と同じである。
特定求電子剤を用いて重合を停止することで、末端が特定求電子剤(特定変性剤)で変性された共重合体が得られる。
特定開始剤に対する特定求電子剤の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、有機リチウム化合物に対する求電子剤の割合(特定求電子剤/有機リチウム化合物)はモル比で、0.1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
本発明の効果がより優れる理由から、アルキルアルミニウム(アルキルAl)に対する特定求電子剤の割合(特定求電子剤/アルキルAl)はモル比で、0.1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
本発明の効果がより優れる理由から、金属アルコラートに対する求電子剤の割合(求電子剤/金属アルコラート)はモル比で、0.1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
【0067】
[その他のゴム成分]
上記ジエン系ゴムは特定共重合体以外のその他のゴム成分を含有していてもよい。そのようなその他のゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、特定共重合体以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、天然ゴム(NR)が好ましい。
ジエン系ゴム中のその他のゴム成分(例えば、天然ゴム)の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10質量%以上であることが好ましい。
【0068】
[2]任意成分
本発明の組成物は、上述した各成分以外に、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤、オイル、各種配合剤などのその他の成分(任意成分)を含有していてもよい。
【0069】
[カーボンブラック]
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)級等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ISAF級が好ましい。
【0070】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、40〜70質量部であることがより好ましい。カーボンブラックは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0071】
[シリカ]
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シリカを含有するのが好ましい。
シリカとしては特に制限されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、無水微粉ケイ酸、含水微粉ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明の組成物において、シリカの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、2〜20質量部であることがより好ましい。
【0073】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤としては特に制限されないが、ゴム用途に使用されるポリスルフィド系シランカップリング剤を用いるのが好ましい。
ポリスルフィド系シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0074】
[加硫剤]
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、加硫剤を含有するのが好ましい。
加硫剤としては特に制限されないが、例えば、硫黄、有機過酸化物系、金属酸化物系、ジスルフィド系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
硫黄としては、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイドなどが挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0075】
[加硫促進剤]
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、加硫促進剤を含有するのが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
【0076】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0077】
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
チオウレア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、エチレンチオウレア等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその亜鉛塩等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等が挙げられる。
なかでも、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
加硫促進剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、加硫促進剤を2種以上使用する場合、加硫促進剤の含有量は全ての加硫促進剤の合計の含有量である。
【0078】
[加硫助剤]
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、加硫助剤を含有するのが好ましい。
加硫助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらの亜鉛塩等が挙げられる。
【0079】
[加硫遅延剤]
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;サントガードPVI:等が挙げられる。
【0080】
[配合剤]
配合剤としては、例えば、上述したカーボンブラック及びシリカ以外の充填剤、樹脂、老化防止剤、オイル、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、加工助剤等が挙げられる。
これらの配合剤は、ゴム用組成物用の一般的なものを用いることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択できる。
【0081】
[3]コンベアベルト用ゴム組成物の製造方法
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。なかでも、加硫剤及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは40〜160℃)で混合し、冷却してから、加硫剤及び加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0082】
[II]コンベアベルト
次に、本発明のコンベアベルトについて説明する。
本発明のコンベアベルトは、上述した本発明のコンベアベルト用ゴム組成物を用いて形成されたコンベアベルトである。
本発明のコンベアベルトに使用されるゴム組成物は上述した本発明のコンベアベルト用ゴム組成物であれば特に制限されない。
【0083】
本発明のコンベアベルトは、上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層を有するコンベアベルトであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上面カバーゴム層を構成する層の数は、1以上であればよい。2以上とすることができる。例えば、運搬物搬送面となる外層と接着層としての内層を有する場合が挙げられる。下面カバーゴム層も同様である。
上面カバーゴム層を構成する層の数が複数である場合、上面カバーゴム層の各層を形成するゴム組成物は同じでも異なってもよい。下面カバーゴム層も同様である。
本発明のコンベアベルトは、上述した本発明のコンベアベルト用ゴム組成物を少なくとも上面カバーゴム層に用いて形成されたコンベアベルトであることが好ましい。
【0085】
[1]上面カバーゴム層
上述のとおり、上面カバーゴム層が、本発明のコンベアベルト用ゴム組成物によって形成されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。また上面カバーゴム層の少なくとも表面が本発明のコンベアベルト用ゴム組成物によって形成されるのが好ましい。本発明のコンベアベルトの上面カバーゴム層が本発明のコンベアベルト用ゴム組成物によって形成されている場合、本発明の効果がより優れる。
本発明のコンベアベルトにおいて、上面カバーゴム層の厚さが3〜20mmであるのが好ましく、6〜15mmであるのがより好ましい。ここで、上面カバーゴム層が複数の層で構成される場合、上面カバーゴム層の厚さはこれらの層の合計の厚さをいう。
【0086】
[2]補強層
補強層の芯体は特に限定されず、通常のコンベアベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができる。具体例としては、例えば、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL(Resorcin Formalin Latex)処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられる。補強層の形状は特に限定されず、例えば、シート状、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。補強層はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
[3]下面カバーゴム層
下面カバーゴム層は2層以上から構成されていることが好ましい態様の1つとして挙げられる。下面カバーゴム層を形成するために使用されるゴム組成物は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0088】
本発明のコンベアベルトを添付の図面を用いて以下に説明する。本発明のコンベアベルトは図面に限定されない。
【0089】
図1は、本発明のコンベアベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、コンベアベルト1は、補強層3を中心層とし、その両側に上面カバーゴム層2と下面カバーゴム層4が設けられており、上面カバーゴム層2は外層11と内層12の2層から構成され、下面カバーゴム層4は外層16と内層15の2層から構成されている。コンベアベルト1は運搬物搬送面5を有する。
外層11、内層12、内層15及び外層16からなる群から選ばれる少なくとも1種を本発明のコンベアベルト用ゴム組成物によって形成することができる。外層11及び内層12からなる群から選ばれる少なくとも1種を本発明のコンベアベルト用ゴム組成物によって形成することが好ましく、少なくとも外層11を本発明のコンベアベルト用ゴム組成物によって形成することがより好ましい。
【0090】
[4]コンベアベルトの製造方法
本発明のコンベアベルトの製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。具体的には、例えば、まず、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて各カバーゴム層用の原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を、補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、150〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が好適に例示される。
【0091】
[III]ベルトコンベア
本発明のベルトコンベアは、上述した本発明のコンベアベルトを装着したベルトコンベアである。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
〔合成例〕
以下のとおり、比較特定共重合体及び特定共重合体1〜5を合成した。ここで、特定共重合体1〜5は上述した特定共重合体に該当する。一方、比較特定共重合体は芳香族ビニル含有量が20質量%以下であるため上述した特定共重合体に該当しない。
【0094】
<比較特定共重合体(未変性SBR)>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(931g,17,220mmol)とスチレン(関東化学製:155g,1,490mmol)と4−tert−butylpyrocatechol(2.47g,14.9mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.25kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(関東化学製:3.44g)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、スチレン−ブタジエン共重合体(未変性SBR)(989g,Mn=410,000,Mw=910,000,PDI=2.2)を91%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=7/31/62と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は14質量%、ガラス転移温度は−88℃であった。
【0095】
<特定共重合体1(未変性SBR)>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(768g,14,200mmol)とスチレン(関東化学製:299g,2,870mmol)と4−tert−butylpyrocatechol(4.79g,28.8mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.24kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(関東化学製:3.44g)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、スチレン−ブタジエン共重合体(未変性SBR)(979g,Mn=240,000,Mw=680,000,PDI=2.8)を92%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=5/51/44と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は29質量%、ガラス転移温度は−84℃であった。
【0096】
<特定共重合体2(NMP末端変性SBR)>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(874g,16,133mmol)とスチレン(関東化学製:249g,2,390mmol)と4−tert−butylpyrocatechol(3.99g,24.0mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.24kg)溶液に加えて、60℃で24時間攪拌した。室温に冷却後、N−メチルピロリドン(NMP)(5.00g)のシクロヘキサン(10mL)混合溶液を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、末端がN−メチルピロリドン(NMP)で変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(NMP末端変性SBR)(953g,Mn=310,000,Mw=810,000,PDI=2.6)を85%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=6/40/54と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は25質量%、ガラス転移温度は−89℃であった。
【0097】
<特定共重合体3(未変性SBR)>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(874g,16,133mmol)とスチレン(関東化学製:249g,2,390mmol)と4−tert−butylpyrocatechol(3.99g,24.0mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.50kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(関東化学製:3.44g)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(10L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、スチレン−ブタジエン共重合体(未変性SBR)(928g,Mn=170,000,Mw=510,000,PDI=3.0)を83%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=5/80/15と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は23質量%、ガラス転移温度は−78℃であった。
【0098】
<特定共重合体4(未変性SBR)>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(768g,14,200mmol)とスチレン(関東化学製:299g,2,870mmol)と4−tert−butylpyrocatechol(5.32g,32.0mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.24kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(関東化学製:3.44g)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、スチレン−ブタジエン共重合体(未変性SBR)(980g,Mn=230,000,Mw=670,000,PDI=2.9)を92%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=5/35/60と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は29質量%、ガラス転移温度は−84℃であった。
【0099】
<特定共重合体5(NMP末端変性SBR)>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(874g,16,133mmol)とスチレン(関東化学製:249g,2,390mmol)と4−tert−butylpyrocatechol(4.79g,28.8mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.24kg)溶液に加えて、60℃で24時間攪拌した。室温に冷却後、N−メチルピロリドン(NMP)(5.00g)のシクロヘキサン(10mL)混合溶液を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、末端がN−メチルピロリドン(NMP)で変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(NMP末端変性SBR)(960g,Mn=310,000,Mw=800,000,PDI=2.6)を87%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=5/35/60と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は25質量%、ガラス転移温度は−89℃であった。
【0100】
〔コンベアベルト用ゴム組成物の製造〕
下記表1に示される成分を同表に示される割合(質量部)で混合することで実施例及び比較例のコンベアベルト用ゴム組成物を製造した。具体的にはまず、下記表1に示される成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、バンバリーミキサーで5分間混合し、次に、得られた混合物に硫黄および加硫促進剤を加え、ロールを用いて混合することでして、コンベアベルト用ゴム組成物を製造した。
【0101】
〔評価用加硫ゴムシートの作製〕
得られたコンベアベルト用ゴム組成物をシート状に成形し、148℃、30分(耐カット性用の試験片では40分)加熱加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0102】
〔評価〕
得られた加硫ゴムシートについて下記のとおり評価を行った。
【0103】
<耐カット性>
室温にて、得られた加硫ゴムシートの25cm上から、刃(刃渡り100mm、刃先2mm部の先端角度20°、重さ8kg)を上記加硫ゴムシートへ自然落下させ、加硫ゴムシートに生じた亀裂の深さ(mm)を測定した。結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど耐カット性に優れることを意味する。
【0104】
<耐摩耗性>
得られた加硫ゴムシートについて、DIN53516に記載の方法に準拠し、DIN摩耗試験機を用いて室温の条件下でDIN摩耗試験を行い、摩耗体積(DIN摩耗)を測定した。そして、DIN摩耗試験に使用された加硫ゴムシートの体積に対する、測定された摩耗体積の比率(体積%)を算出した。結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
【0105】
<強靭性>
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で100%モジュラス及び切断時伸びを評価した。そして、下記式から、強靭性パラメータを求めた。
強靭性パラメータ=100%モジュラス×切断時伸び
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が大きいほど強靭性に優れることを意味する。
【0106】
【表1】
【0107】
上記表1に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:TSR20(天然ゴム)
・SBR−1:NIPOL 1502(SBR、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量):24.2質量%、ビニル構造の割合:15.7モル%、Tg:−54℃)、Mw:4.9×10
−5、日本ゼオン社製)
・SBR−2:NIPOL NS612(SBR、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量):15.1質量%、ビニル構造の割合:32.2モル%、Tg:−61℃、Mw:420,000、日本ゼオン社製)
・SBR−3:NIPOL NS616(SBR、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量):22.7質量%、ビニル構造の割合:69.7モル%、Tg:−22℃、Mw:1,100,000、日本ゼオン社製)
・SBR−4:タフデン2000R(SBR、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量):25質量%、ビニル/トランス/シス=9/55/36、Tg:−70℃、Mw:260,000、旭化成社製)
・比較特定共重合体:上述のとおり合成した比較特定共重合体(未変性SBR)
・特定共重合体1:上述のとおり合成した特定共重合体1(未変性SBR)
・特定共重合体2:上述のとおり合成した特定共重合体2(NMP末端変性SBR)
・特定共重合体3:上述のとおり合成した特定共重合体3(未変性SBR)
・特定共重合体4:上述のとおり合成した特定共重合体4未変性SBR)
・特定共重合体5:上述のとおり合成した特定共重合体5NMP末端変性SBR)
・CB(ISAF):ショウブラックN220(ISAF級カーボンブラック、キャボットジャパン社製)
・シリカ:ニップシールAQ(シリカ、東ソー・シリカ社製)
・樹脂:ハイレジン#120S(東邦化学工業社製)
・老化防止剤:サントフレックス6PPD(フレキシス社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸(NOF CORPORATION社製)
・オイル:A−OMIX(三共油化工業社製)
・加硫促進剤:ノクセラーNS−P(大内新興化学社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業社製)
【0108】
表1から分かるように、特定共重合体を含有する本願実施例は、優れた耐カット性及び耐摩耗性を示した。なかでも、特定共重合体が、末端が特定変性剤で変性された実施例2及び5は、より優れた耐カット性、耐摩耗性及び強靭性を示した。
実施例1と3と4との対比(特定共重合体が、末端が特定変性剤で変性されていない態様同士の対比)から、特定共重合体が、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち1,4−シス構造の割合が17モル%以上である実施例1及び4は、より優れた耐カット性、耐摩耗性及び強靭性を示した。なかでも、特定共重合体が、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち1,4−シス構造の割合が60モル%以上である実施例4は、さらに優れた耐カット性及び強靭性を示した。
また、実施例2と5との対比(特定共重合体が、末端が特定変性剤で変性された態様同士の対比)から、特定共重合体が、共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち1,4−シス構造の割合が60モル%以上であり、且つ、ビニル構造の割合が5モル%以下である実施例5は、より優れた耐カット性、耐摩耗性及び強靭性を示した。
【0109】
一方、特定共重合体を含有しない比較例1〜5、及び特定共重合体を含有するがジエン系ゴム中の特定共重合体の含有量が50質量%に満たない比較例6は、耐カット性及び耐摩耗性のうち少なくとも一方が不十分であった。