特許第6852786号(P6852786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6852786機械学習装置、情報処理装置及び出力装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852786
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】機械学習装置、情報処理装置及び出力装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 29/14 20060101AFI20210322BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20210322BHJP
【FI】
   H04L13/00 313
   H04L12/70 100A
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-513170(P2019-513170)
(86)(22)【出願日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2017015924
(87)【国際公開番号】WO2018193590
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石原 健二
【審査官】 佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/133303(WO,A1)
【文献】 特開平09−325769(JP,A)
【文献】 特開平09−006339(JP,A)
【文献】 特開平03−273722(JP,A)
【文献】 特開2003−058350(JP,A)
【文献】 特表2013−534340(JP,A)
【文献】 特開平07−030540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 29/14
H04L 12/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信中継装置から当該通信中継装置の通信によって変化する第1情報を取得する取得部と、
前記取得された前記第1情報と、当該通信中継装置から置き換え可能な候補装置の特徴とを関連付けて機械学習する機械学習部と、
を備え、
前記第1情報は、前記通信中継装置の通信状況を示す第2情報及び前記通信中継装置の内部リソースに関する第3情報のうちの少なくとも一つを含む、
機械学習装置。
【請求項2】
前記機械学習装置に、前記第1情報を入力する入力部と、
前記入力部で入力された前記第1情報に基づき、当該通信中継装置と置き換え可能な候補装置に関連付けられた情報を出力する出力部と、
を備える請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記機械学習部は、前記機械学習により所定の演算を規定する情報を予め生成し、前記所定の演算を規定する情報に基づいて機械学習する、
請求項1または2に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記所定の演算を規定する情報は、入力層、中間層及び出力層を含むニューラルネットワークの演算の前記入力層と前記中間層との間の重み及び前記中間層と前記出力層との間の重みである、
請求項3に記載の機械学習装置。
【請求項5】
前記特徴は、前記候補装置のポート数、前記候補装置の通信速度及びVLANの有無のうちの少なくとも一つに関連する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項6】
前記特徴は、登録されている複数の種類の前記候補装置の中での相対的な特徴である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項7】
前記第2情報は、ネットワークのトラフィック、チャネル使用率、CRCエラー率、電波干渉の有無に関する情報、およびリンクダウンの有無に関する情報及びループの発生の有無に関する情報のうちの少なくとも一つを含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項8】
前記第2情報は、ネットワークのトラフィック、チャネル使用率、CRCエラー率、電波干渉の有無に関する情報、およびリンクダウンの有無に関する情報及びループの発生の有無に関する情報を含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項9】
前記候補装置を更新するための信号及び当該更新によって追加される候補装置を識別する情報を取得すると、前記候補装置の特徴に対応付けられる候補装置を更新する更新部をさらに備える、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項10】
通信中継装置から当該通信中継装置の通信によって変化する第1情報を取得する取得部と、
前記第1情報を用いて所定の演算を行う演算部と、
前記演算の結果に基づいて、前記通信中継装置から置き換え可能な装置として登録されている複数の種類の候補装置から候補装置を選択する選択部と、
を備え、
前記第1情報は、前記通信中継装置の通信状況を示す第2情報及び前記通信中継装置の内部リソースに関する第3情報のうちの少なくとも一つを含み、
前記複数の種類の候補装置のそれぞれと当該候補装置の特徴とが対応付けられ、
前記演算の結果に応じて特徴を決定し、当該特徴に対応する種類の候補装置を選択する、
情報処理装置。
【請求項11】
前記選択された候補装置を識別する情報を出力する出力部をさらに備える、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記演算部は、入力層、中間層及び出力層を含むニューラルネットワークの演算を行い、
前記第1情報に応じたデータを前記入力層に入力する入力部をさらに備え、
前記演算の結果は、前記出力層において出力される、
請求項10または11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記入力層と前記中間層との間の重み及び前記中間層と前記出力層との間の重みは、予め機械学習によって定められている、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記複数の種類の候補装置の一つの種類の候補装置を更新するための信号及び当該更新によって追加される候補装置を識別する情報を取得すると、前記候補装置の特徴に対応付けられる前記複数の種類の候補装置のうちの一つの種類の候補装置を更新する更新部をさらに備える、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項15】
通信中継装置から当該通信中継装置の通信によって変化する第1情報を取得する取得部と、
前記第1情報を当該通信中継装置から置き換え可能な候補装置の特徴を推定するために機械学習を行った学習済の学習モデルに入力し、前記学習モデルを用いて、前記特徴を出力する出力部と、
を備え、
前記第1情報は、前記通信中継装置の通信状況を示す第2情報及び前記通信中継装置の内部リソースに関する第3情報のうちの少なくとも一つを含む、
情報処理装置。
【請求項16】
前記特徴は、前記候補装置のポート数、前記候補装置の通信速度及びVLANの有無のうち少なくとも一つに関連する、
請求項10乃至15のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記特徴は、前記登録されている複数の種類の候補装置の中での相対的な特徴である、
請求項10乃至14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記第2情報は、トラフィック、チャネル使用率、CRCエラー率、電波干渉の有無に関する情報、リンクダウンの有無に関する情報及びループの発生の有無に関する情報のうちの少なくとも一つを含む、
請求項10乃至17のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項19】
通信中継装置から当該通信中継装置の通信によって変化する第1情報と、置き換え可能な候補装置の特徴と、に基づいて機械学習が行われた学習結果に基づいて、入力された通信中継装置の通信によって変化する第1情報に対して、前記置き換え可能な候補装置の特徴に関する情報を出力する出力部と、
を備え、
前記第1情報は、前記通信中継装置の通信状況を示す第2情報及び前記通信中継装置の内部リソースに関する第3情報のうちの少なくとも一つを含む、
出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ルータ、スイッチ、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントなどのネットワーク機器(通信中継装置)の性能限界やスペック不足によって、ネットワークに障害が生じることがある。このようなネットワークの障害に対応するには、日々更新されるネットワーク機器の製品ラインナップを把握し、適切な製品を選択する必要がある。
【0003】
一方、ネットワーク機器とPCなどの端末との間の通信状態を示す情報(例えば、トラフィック)を当該ネットワーク機器から取得して、表示する装置がある(例えば、特許文献1)。ネットワーク管理者は、この表示内容を確認することによって、ネットワーク機器とPCとの間の通信状態を把握することが可能となり、ネットワークに障害が生じているかどうかを判断する基礎となる情報に接することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−261871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ネットワーク機器とPCなどの端末との間のトラフィックなどの通信状態を把握することが可能であったとしても、これらの情報は専門的な情報であるため、専門的な知識のない一般ユーザにとっては、ネットワーク機器の性能限界やスペック不足によるネットワーク障害に対応するために、どのような製品を選択すればよいかわからないことがある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に伴う課題を解決しようとするものであって、その目的とするところは、専門的な知識のない一般ユーザでも、どのような製品を選択すればよいかわかるような情報を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、通信中継装置から当該通信中継装置の通信によって変化する状況を示す情報を取得する取得部と、前記通信中継装置の通信によって変化する状況を示す情報を用いて所定の演算を行う演算部と、前記演算の結果に基づいて、前記通信中継装置から置き換え可能な装置として登録されている複数の種類の候補装置から少なくとも1つの候補装置を選択する選択部と、前記選択された候補装置を識別する情報を出力する出力部と、を備える情報処理装置が提供される。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、通信中継装置から当該通信中継装置の通信によって変化する情報を取得し、前記通信中継装置の通信によって変化する情報を用いて所定の演算を行い、前記演算の結果に基づいて、前記通信中継装置から置き換え可能な装置として登録されている複数の種類の候補装置から少なくとも1つの候補装置を選択し、前記選択された候補装置を識別する情報を出力することを含む、情報処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、専門的な知識のない一般ユーザでも、どのような製品を選択すればよいかわかるような情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の制御部によって実現される機能構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の演算部を示す概念図である。
図5】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の所定の特徴と候補装置の関係とを説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の動作フローを示す図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る情報処理装置の記憶部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にa、bなどを付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
[通信システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。通信システム1は、情報処理装置2、端末3a及び3b(以下、特に区別の必要がない場合は「端末3」という。)、通信中継装置5a〜5e(以下、特に区別の必要がない場合は「通信中継装置5」という。)を備える。これらの各構成は、インターネット等のネットワークを介して接続されている。
【0013】
端末3は、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等の通信可能な装置である。端末3aと端末3bとの間には、複数の通信中継装置5が存在する。例えば、通信中継装置5は、ルータ、L2スイッチ、L3スイッチ、アプリケーションスイッチ、無線LANアクセスポイント、UTM(Unified Threat Management;統合脅威管理)などである。情報処理装置2は、後述のとおり、通信中継装置5から当該通信中継装置の通信によって変化する情報を取得する。もっとも、情報処理装置2が取得する情報は、これに限定されるものではなく、通信中継装置5に関する情報(例えば、通信中継装置5を識別する情報)などを取得してもよい。
【0014】
[情報処理装置のハードウェア構成]
次に、図2を用いて情報処理装置2について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。情報処理装置2は、制御部11、記憶部13、操作部15、表示部17、接続部18及び通信部19を備える。これらの各構成はバスを介して接続されている。
【0015】
制御部11は、CPUなどの演算処理回路を含む。制御部11は、記憶部13に記憶されたプログラムをCPU(コンピュータ)により実行して、後述する出力処理等を行うための機能を実現する。この機能を実現する構成の一部または全部は、プログラムの実行によってソフトウェアによって実現される場合に限られず、ハードウェアによって実現されてもよい。
【0016】
記憶部13は、不揮発性メモリ、ハードディスク等の記憶装置である。記憶部13は、上述したプログラムなど、様々な機能を実現するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶領域を含む。プログラムは、コンピュータにより実行可能であればよく、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよい。この場合には、情報処理装置2は、記録媒体を読み取る装置を備えていてもよい。また、プログラムは、ネットワーク経由でダウンロードされてもよい。
【0017】
操作部15は、操作ボタン、キーボード、マウスなどの装置であり、ユーザによって入力された操作に応じた信号を制御部11に出力する。表示部17は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置であり、制御部11による制御に基づいた画面を表示する。なお、操作部15と表示部17とは一体としてタッチパネルを構成してもよい。通信部18は、制御部11の制御に基づいてネットワークに接続された外部の装置と通信をし、情報の送受信を行う。
【0018】
接続部19は、外部装置と接続して情報の送受信を行うためのインターフェイスである。接続部19と外部装置との接続は有線であっても無線であってもよい。外部装置と有線で接続される場合には、接続部19は、ケーブル等が接続されるコネクタである。外部装置と無線で接続される場合には、接続部19は、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等を用いた通信が可能な通信モジュールである。以上が、情報処理装置2のハードウェア構成についての説明である。
【0019】
[情報処理装置のソフトウェア構成]
次に、図3を用いて情報処理装置2のソフトウェア構成について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の制御部によって実現される機能構成を示すブロック図である。ここでは、上述したプログラムが制御部11によって実行されることにより出力処理を行うための機能(出力機能100)として実現された構成について説明する。出力機能100は、取得部101、入力部103、演算部105、選択部107、出力部109及び更新部111を含む。
【0020】
取得部101は、通信中継装置5から当該通信中継装置5の通信によって変化する情報を取得する。ここで、通信中継装置5の通信によって変化する情報は、少なくとも通信中継装置5の通信状況を示す情報及び通信中継装置5の内部リソースに関する情報のうち一つを含む。通信中継装置5の通信状況を示す情報は、例えば、ネットワークのトラフィック、無線LANのチャネル使用率、CRC(Cyclic Redundancy Check)エラー率、電波干渉の有無、LANポートのリンクダウンやループの発生などの情報である。他方、通信中継装置5の内部リソースに関する情報は、CPU使用率、メモリの使用率、通信中継装置5の内部のバッファーオーバーフローの有無などの情報である。ここで、LANポートのリンクダウンやループの発生等の情報は、通信中継装置5のログとして、通信中継装置5の記憶装置に保存されている。他方、ネットワークのトラフィック、無線LANのチャネル使用率、CRCエラー率、電波干渉の有無、CPU使用率、メモリの使用率、通信中継装置5の内部のバッファーオーバーフローの有無などの情報は、基本的には、現在値(リアルタイムデータ)である。この現在値は、各情報の特定の時点における瞬間的な値である。もっとも、これらの情報は、現在値に限定されるものではなく、ある期間の値の平均値であってもよい。なお、CPU使用率、メモリの使用率、通信中継装置5の内部のバッファーオーバーフローの有無などの情報であっても、ログとして記憶装置に記憶することも可能である。そこで、この場合には、CPU使用率、メモリの使用率、通信中継装置5の内部のバッファーオーバーフローの有無などの情報は、現在値ではない。
【0021】
演算部105は、通信中継装置5の通信によって変化する情報を用いて所定の演算を行う。この例では、演算部105は、入力層、1以上の中間層及び出力層を含むニューラルネットワークの演算を行う。入力層には、入力部103から、通信中継装置5の通信によって変化する情報に応じたデータが入力される。ここで、図4を用いて、入力部103及び演算部105について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の演算部を示す概念図である。この例では、ネットワークのトラフィック及びチャネル使用率について、レベル分けしており、各レベルに入力層の素子を割り当て、検出値に該当する素子を「1」、非該当の素子には「0」を入力する。言い換えれば、通信中継装置5の通信によって変化する情報ごとにレベル分けをする。レベル分けされた入力層の素子は、通信中継装置5の通信によって変化する情報が当該素子に対応する情報に該当するかどうかを判断し、該当する場合には、入力層の値は「1」となり、該当しない場合には、「0」とする。
【0022】
具体的には、X1,1の入力層は、入力部103に「0<ネットワークのトラフィック≦10Mbps」が入力される場合に、「1」となり、それ以外の値が入力されれば、「0」となる。以下同様に、X1,2の入力層は、入力部103に「10<ネットワークのトラフィック≦20Mbps」が入力される場合に、「1」となり、それ以外の値が入力されれば、「0」となる。この例では、入力部103にネットワークのトラフィック12Mbpsが入力されていることから、X1,2の入力層が「1」となり、他の入力層(X1,1、X1,3〜X1,L)は「0」となる。ネットワークのトラフィック以外の通信中継装置5の通信によって変化する情報についても、各情報に応じたレベル分けをする。
【0023】
もっとも、通信中継装置5の通信によって変化する情報のうち、現象を表現するのに2種類の情報で足りる場合には、1つの入力層であってもよい。例えば、ループの発生については、ループの発生の有無という2種類の情報で足りる。そこで、ループの発生に対応する入力層の素子は、1つとしてもよい。具体的には、入力部103に「ループの発生:有」の情報が入力されると、入力層は「1」となり、入力部103に「ループの発生:無」の情報が入力されると、入力層は「0」となるようにしてもよい。電波干渉の有無、LANポートのリンクダウンの有無、バッファーオーバーフローの有無についても、ループの発生と同様に、入力層の素子を1つとしてもよい。
【0024】
入力層と中間層との間の重みw1ij、中間層と出力層との間の重みwnjk及び中間層の数nは、予め機械学習によって定められている。ここで、機械学習は、誤差逆伝播法(Backpropagation)、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)などの公知の学習方法を意味する。
【0025】
再び図3に戻って説明する。選択部107は、演算部105の演算結果に基づいて、通信中継装置5から置き換え可能な装置として登録されている複数の種類の候補装置から少なくとも1つの候補装置を選択する。ここで、候補装置は、通信中継装置5から置き換えることが可能な装置であるため、通信中継装置5と同種の装置である。例えば、通信中継装置5がルータである場合、候補装置は、通信中継装置5とは異なるルータである。この例では、選択部107は、演算の結果に応じて、所定の特徴を決定し、当該特徴に対応する種類の候補装置を選択することによって、複数の種類の候補装置から少なくとも1つの候補装置を選択する。ここで、図5を用いて、所定の特徴とこれに対応する候補装置について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の所定の特徴と候補装置の関係とを説明するための図である。
【0026】
前述のとおり、選択部107は、図4に示すニューラルネットワークの演算を行った結果、所定の特徴を決定する。具体的には、ニューラルネットワークの演算を行った結果、出力層において、y〜yが出力される。これらのy〜yは、それぞれ図5に示す特徴203a〜203q(以下、特に区別の必要がない場合は「特徴203」と表記する。)に対応するので、所定の特徴が決定されていることがわかる。図5に示す例では、特徴203aは、「ポート数が多い」、「データの転送速度が速い」、「VLAN(Virtual LAN)機能が有」というものである。この例では、特徴は、候補装置のポート数、候補装置のデータの転送速度(通信速度)、VLAN機能の有無の3つに関連する特徴を含む。もっとも、特徴は、3つに限定されるものではなく、この3つのうち少なくとも一つを含んでもよいし、3つより多くてもよく、適宜変更が可能である。
【0027】
特徴203には、候補装置が対応付けられている。すなわち、特徴203aには、候補装置の識別情報及び価格情報207が対応づけられている。具体的には、特徴203aには、「Y−1」、「Y−2」及び「Y−3」という候補装置の識別情報205と、これらに対応する「70,000円」、「65,000円」及び「48,000円」という価格情報207が対応付けられている。候補装置の識別情報205は、候補装置のMACアドレス、シリアルナンバー等の候補装置を識別することができる情報である。他方、価格情報207は、候補装置に付随する情報である。ユーザからすると、候補装置の識別情報205だけでは、当該候補装置がどのような製品か認識することができない場合がある。そこで、候補装置がどのような製品であるかを表す参考情報として、価格情報207も特徴203に対応付けてもよい。この例では、参考情報として、価格情報207を挙げたが、これに限定されるものではなく、ユーザがどのような製品か認識することが可能な情報であればよい。
【0028】
ここで、特徴203に対応して、少なくとも1つの候補装置の識別情報205が一覧として掲載されていることから、全体を「分類リスト201」と呼んでもよい。また、候補装置の識別情報205が1つの分類リスト201に複数ある場合には、「製品群209」と呼んでもよい。
【0029】
出力部109は、選択部107が選択した候補装置の識別情報205を出力する。また、出力部109は、候補装置の識別情報205を、図5に示す分類リスト201に含まれる他の情報とともに出力してもよい。同様に、表示部17は、候補装置の識別情報205に加えて、分類リスト201に含まれる他の情報(価格情報207など)を表示してもよい。また、候補装置の識別情報205には、ハイパーリンクが設定されていてもよい。ユーザが候補装置の識別情報205をクリックすると、表示部17は、クリックされた候補装置の識別情報205に対応する候補装置の購入サイトを表示してもよい。なお、価格情報207などの参考情報は、ユーザが複数の候補装置の識別情報205の中からどの購入サイトを表示させるか選択するのに役に立つ情報といえる。
【0030】
更新部111は、図5に示す製品群209を更新するための信号及び当該後進によって追加される候補装置の識別情報205を取得すると、分類リスト201の製品群209を更新する。分類リスト201の候補装置の特徴は、抽象的に設定している。すなわち、ポート数については、「多い」、「普通」、「少ない」の3段階で、データの転送速度についても、「速い」、「普通」、「遅い」の3段階であり、具体的な数字では設定していない。言い換えれば、候補装置の特徴は、候補装置のカテゴリや性能をプロファイルしたものともいえる。
【0031】
ところで、候補装置の仕様は、日々進歩する。そのため、以前はポート数が多かった候補装置が、新たな候補装置の登場によって、ポート数が相対的に「普通」や「少ない」になることもある。そこで、新たな候補装置が登場した場合に、製品群209は更新されてもよい。更新は、手動又は自動のいずれで行ってもよい。自動で行う場合には、外部のデータベースに、特徴203及びこれに対応する製品群209、価格情報207を記憶する。そして、所定の条件を満たしたときに、これらの情報を当該データベースから取得して、分類リスト201を更新する。例えば、所定の条件は、所定の期間が経過したとき(例えば、最初に更新してから3か月後)である。
【0032】
一方、候補装置の特徴自体は、相対的なものであるため、更新する必要がない。つまり、候補装置の特徴は、登録される候補装置が変わっても、登録される候補装置の中での特徴であるため、更新する必要がない。例えば、「ポート数が多い」、「データの転送速度が速い」といった特徴は、登録される候補装置の中での相対的な評価であるため、特徴に対応付けられる候補装置の識別情報205を更新すれば足り、特徴まで更新する必要がないのである。なお、候補装置の特徴は、現在使用されている通信中継装置5と比較した場合の相対的な特徴ということもできる。そして、前述のとおり、ニューラルネットワークの演算を行った結果、所定の特徴が決定される。つまり、ニューラルネットワークの出力層である特徴は、更新する必要がないため、ニューラルネットワークにおける力層と中間層との間の重みw1ij、中間層と出力層との間の重みwnjk及び中間層の数nは、新たな通信中継装置5の登場によっても、更新する必要がない。以上で、情報処理装置のソフトウェア構成について説明した。
【0033】
なお、出力機能100のうち、図3の破線で囲まれた取得部101、演算部105、選択部107及び出力部109が最小構成であり、入力部103及び更新部111は適宜に追加が可能な構成である。
【0034】
[動作フロー]
次に、図6を用いて、情報処理装置2の動作フローについて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の動作フローを示す図である。
【0035】
取得部101が通信中継装置5から通信中継装置5の通信によって変化する情報を取得する(ステップS101)。次に、演算部105が、通信中継装置5の通信によって変化する情報を用いて、ニューラルネットワークの演算を行う(ステップS103)。続いて、選択部107が、演算の結果に応じて、所定の特徴203を決定し、当該特徴203に対応する種類の候補装置を選択する(ステップS105)。次に、出力部109は、選択部107が選択した候補装置の識別情報を出力する。以上で、情報処理装置2の動作フローの例について説明した。
【0036】
本実施形態によれば、通信中継装置5から通信中継装置5の通信によって変化する情報を取得して、ニューラルネットワークの演算を行うことによって、所定の特徴203を決定する。当該特徴203は、候補装置の識別情報205と対応付けられている。出力部109が候補装置の識別情報205を出力することによって、出力した候補装置の識別情報205を問題解決に最適な製品としてユーザに提供することができる。その結果、通信中継装置の性能限界やスペック不足によってネットワークに障害が生じた場合にも、当該障害に対応可能な適切な製品(候補装置)の情報を提供することが可能になる。ネットワーク障害の対応は、通常は、ログの解析や通信中継装置の設定を確認して、設定を変更することによって行うが、前述のとおり、通信中継装置の性能限界やスペック不足に起因するネットワーク障害に対応するには、日々更新される候補装置の製品ラインナップを把握して、適切な製品を選択することによって対応可能となるのである。
【0037】
また、本実施形態では、ニューラルネットワークの演算の出力結果として、特徴203が決定される。そして、前述のとおり、新たな候補装置の登場によっても、当該特徴203は、相対的なものであるため、更新する必要がない。したがって、ニューラルネットワークにおける入力層と中間層との間の重みw1ij、中間層と出力層との間の重みwnjk及び中間層の数nは、新たな通信中継装置5の登場によっても、更新する必要がない。通常、ニューラルネットワークにおける入力層と中間層との間の重みw1ij、中間層と出力層との間の重みwnjk及び中間層の数nを機械学習によって求めるには、時間がかかる。新たな候補装置の登場する度に、これらの値を再度求めることになると計算コストが大きくなる。しかし、本実施形態では、これらの値を更新する必要がないため、通常はかかる計算コストがかかわらないというメリットがある。
【0038】
また、本実施形態では、表示部17に、候補装置の識別情報205を含む分類リスト201を表示させることができる。そして、候補装置の識別情報205にハイパーリンクを設定してもよい。この場合において、ユーザが候補装置の識別情報205をクリックすると、表示部17に、クリックされた候補装置の識別情報205に対応する候補装置の購入サイトが表示される。そのため、ユーザにお勧めの候補装置の詳細情報を提供することも可能になる。
【0039】
<第2実施形態>
第2実施形態の情報処理装置について説明する。ここでは、第1実施形態の情報処理装置2との区別のために、「情報処理装置2A」と呼ぶ。情報処理装置2Aは、情報処理装置2と概ね同じである。そのため、重複する点についての詳細な説明は省略し、異なる点について詳細に説明する。
【0040】
情報処理装置2Aは、情報処理装置2と演算方法が異なる。情報処理装置2Aの演算部を「演算部105A」と呼ぶ。ここで、図7を用いて、演算方法の違いについて説明する。図7は、本発明の他の実施形態に係る情報処理装置の記憶部の構成を示す図である。なお、それぞれ区別の必要がない場合には、「特徴情報131」、「候補装置の識別情報133」、「価格情報135」と表記する。
【0041】
図7に示すように、情報処理装置2Aの記憶部13には、特徴情報131と候補装置の識別情報133、価格情報135とが対応づけられて記憶されている。具体的には、特徴情報131aは、「10<ネットワークのトラフィック≦20Mbps」、「70<チャネル使用率≦80%」、「ループの発生:有」という情報を含む。この特徴情報131aに、候補装置の識別情報133aとして、「Y−1」、「Y−2」及び「Y−3」が対応付けられている。そして、「Y−1」、「Y−2」及び「Y−3」には、価格情報135aとしてそれぞれ「70,000円」、「65,000円」及び「48,000円」が対応付けられている。
【0042】
取得部101が通信中継装置5の通信によって変化する情報を取得すると、演算部105Aは、記憶部13に記憶されている特徴情報131のうち、いずれに該当するか演算する。例えば、取得部101が通信中継装置5の通信によって変化する情報として、「トラフィック=12Mbps」、「チャネル使用率=73%」、「ループの発生:有」という情報を取得すると、演算部105Aは、演算の結果、特徴情報131aが該当するものと判断する。そして、出力部109は、当該特徴情報131aに対応付けられている候補装置の識別情報133aを出力する。
【0043】
本実施形態では、通信中継装置5から通信中継装置5の通信によって変化する情報を取得して、演算を行うことによって、特徴情報131を決定することができる。そして、出力部109が候補装置の識別情報133を出力することによって、出力した候補装置の識別情報133を最適な製品としてユーザに提供することができる。
【0044】
なお、特徴情報131、候補装置の識別情報133、価格情報135は、情報処理装置2Aの記憶部13に記憶されていることを前提に説明したが、情報処理装置2Aの外部の記憶装置に、これらの情報を記憶させてもよい。この場合には、情報処理装置2Aは、演算部105Aが演算を行う際に、外部の記憶装置を参照することになる。
【0045】
なお、以上の説明では、ルータ、スイッチ、無線LANのアクセスポイントなどの通信中継装置を例としたネットワークについて説明したが、これに限定されるものではない。対象となるネットワーク機器に性能限界やスペック不足が起こり得て、これらが原因でネットワークの障害が生じるものであれば、本発明の対象となる(例えば、「Dante(登録商標)」などのオーディオネットワークの通信中継装置)。また、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:通信システム 2:情報処理装置 3:端末 5:通信中継装置
11:制御部 13:記憶部 15:操作部 17:表示部 18:通信部
19:接続部 101:取得部 103::入力部 105:演算部
107:選択部 109:出力部 111:更新部 201:分類リスト
203:特徴 205:候補装置の識別情報 207:価格情報
209:製品群

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7