(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852796
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】超臨界流体装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20210322BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
G01N30/02 N
B01J3/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-541603(P2019-541603)
(86)(22)【出願日】2017年9月15日
(86)【国際出願番号】JP2017033496
(87)【国際公開番号】WO2019053887
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高良 智尋
【審査官】
倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/147379(WO,A1)
【文献】
特開2013−016797(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3211870(JP,U)
【文献】
特開2011−118880(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3209072(JP,U)
【文献】
国際公開第2016/088252(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/083639(WO,A1)
【文献】
特表2004−510126(JP,A)
【文献】
米国特許第05866004(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
B01D 11/00 − 11/04
B01J 3/00 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相が流れる分析流路と、
前記分析流路の下流端に設けられ、前記分析流路内の圧力を所定の圧力に調節する背圧制御弁と、
前記背圧制御弁の出口に接続され、内部の圧力が大気圧よりも高い圧力に維持される内径を有する小径配管と、
前記小径配管の下流端に接続され、前記小径配管よりも大きい内径をもち、内部の圧力が大気圧となる大径配管と、
前記大径配管を加熱するための大径配管加熱部と、を備えた超臨界流体装置。
【請求項2】
前記大径配管加熱部よりも小さい加熱量で前記小径配管を加熱するように構成された小径配管加熱部をさらに備えている、請求項1に記載の超臨界流体装置。
【請求項3】
前記大径配管加熱部と前記小径配管加熱部のそれぞれの加熱量を制御するように構成された制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記分析流路を流れる移動相の流量が所定流量以下であるときは前記小径配管を前記小径配管加熱部によって加熱し、前記分析流路を流れる移動相の流量が前記所定流量を超えているときは前記大径配管のみを前記大径配管加熱部によって加熱するように構成されている、請求項2に記載の超臨界流体装置。
【請求項4】
前記大径配管加熱部の温度を検出する温度センサと、
前記大径配管加熱部と前記小径配管加熱部のそれぞれの加熱量を制御するように構成された制御部と、さらに備え、
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記大径配管の温度が所定温度以上であるときは前記小径配管加熱部のみを駆動し、前記温度センサにより検出される前記大径配管の温度が所定温度未満であるときは前記大径配管加熱部を駆動するように構成されている、請求項2に記載の超臨界流体装置。
【請求項5】
前記大径配管加熱部は、前記大径配管に電流を流して前記大径配管を発熱させるように構成された電気回路を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の超臨界流体装置。
【請求項6】
前記小径配管の内径は前記背圧制御弁内に設けられた出口流路の内径と略同一である、請求項1から5のいずれか一項に記載の超臨界流体装置。
【請求項7】
前記大径配管の内径は前記小径配管の内径の2倍以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の超臨界流体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体クロマトグラフ(SFC)や超臨界流体抽出(SFE)など、超臨界状態の流体を用いる超臨界流体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SFCやSFEなどの超臨界流体装置は、液体の二酸化炭素を含む移動相が流れる流路内の圧力を背圧制御弁によって所定の圧力にまで上昇させ、二酸化炭素を超臨界状態にする(特許文献1参照。)。
【0003】
超臨界流体装置では、一般的に、背圧制御弁の下流側の流路が大気解放されているため、背圧制御弁を経た移動相が高圧状態から大気圧状態へ急激に低下し、二酸化炭素が液体状態又は超臨界状態から気体状態へと相変化する。このとき、吸熱反応が起こり、背圧制御弁の出口部の温度が低下し、背圧制御弁の出口側の配管において結露が発生することがある。場合によっては、二酸化炭素が瞬時にドライアイスへと変化し、流路内の詰まりの原因となる。
【0004】
このような問題への対処方法として、背圧制御弁の出口側の配管をヒータによって加熱することで、二酸化炭素の気化熱による結露や凍結を抑制することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014−517323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背圧制御弁の出口側の配管に加える熱量が高いほど、背圧制御弁の下流側での結露や凍結を効果的に抑制することができる。しかし、背圧制御弁の出口部分を高温に加熱すると背圧制御弁に悪影響を与える虞があるため、背圧制御弁の出口側の配管の全体を高い熱量で加熱することはできない。また、二酸化炭素の気化が起こる位置を正確に予測できないため、背圧制御弁の出口側の配管の特定部分だけを加熱しても、二酸化炭素の気化熱による結露や凍結を効果的に抑制することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、背圧制御弁に悪影響を与えることなく、背圧制御弁の出口側の配管内での結露や凍結を効果的に抑制することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、背圧制御弁の出口に、その内部圧力が大気圧よりも高い圧力に維持されるような内径をもつ小径配管を接続し、その小径配管の下流側に小径配管よりも大きい内径をもつ大径配管を接続して流路内径が急激に拡大する「急拡大部」を設けると、移動相の流量域が一定以上の高流量域である場合には、その「急拡大部」又はそれよりも下流側の位置が二酸化炭素の気化する位置になるという知見を得た。すなわち、上記のような「急拡大部」を設ければ、二酸化炭素が気化する位置を所望の区間内に収めることができ、その区間を加熱すれば二酸化炭素の気化熱による結露や凍結を効率的に抑制することが可能となる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0009】
本発明に係る超臨界流体装置は、移動相が流れる分析流路と、前記分析流路の下流端に設けられ、前記分析流路内の圧力を所定の圧力に調節する背圧制御弁と、前記背圧制御弁の出口に接続され、内部の圧力が大気圧よりも高い圧力に維持される内径を有する小径配管と、前記小径配管の下流端に接続され、前記小径配管よりも大きい内径をもつ大径配管と、前記大径配管を加熱するための大径配管加熱部と、を備えている。これにより、前記小径配管と前記大径配管との繋ぎ目部分に、流路内径が急激に拡大する「急拡大部」が形成され、移動相の流量域が一定以上の高流量域である場合に、二酸化炭素の気化が起こる位置を、その「急拡大部」よりも下流側、すなわち前記大径配管内に限定することができる。そして、前記大径配管を加熱する大径配管加熱部を備えているので、移動相の流量域が高流量域である場合に、二酸化炭素の気化が発生する区間を確実に効率よく加熱することができる。前記大径配管と前記背圧制御弁との間には少なくとも前記小径配管が存在し、前記背圧制御弁の出口に前記大径配管が直接的に接続されていないため、前記大径配管加熱部によって前記大径配管に大きな熱量を加えても、前記背圧制御弁に悪影響を与える虞は小さい。
【0010】
以下では、背圧制御弁の下流側の小径配管と大径配管との繋ぎ目部分の「急拡大部」又はそれよりも下流側において二酸化炭素の気化が発生するような移動相の流量域を「高流量域」、「急拡大部」よりも上流側、すなわち小径配管内において二酸化炭素の気化が発生するような移動相の流量域を「低流量域」と称する。なお、二酸化炭素が気化する位置が「急拡大部」よりも下流側となるか上流側となるかの境界領域の流量は、移動相の組成、背圧制御弁から流出する際の移動相の温度、小径配管の長さや内径等の条件によって変化し得るものである。
【0011】
また、移動相の流量域が低流量域である場合には、前記小径配管内において二酸化炭素の気化が発生し、それによって前記小径配管の内外で結露や凍結が発生する虞がある。したがって、本発明の超臨界流体装置では、前記小径配管を加熱するように構成された小径配管加熱部をさらに備えていることが好ましい。ところで、二酸化炭素の気化による結露や凍結を防止するために必要な熱量は、移動相の流量域によって変わり、移動相の流量域が高いほど結露や凍結の防止のために大きな熱量が必要になる。小径配管で二酸化炭素の気化が発生する場合、移動相の流量域は低流量域であるため、前記大径配管加熱部に比べて加熱量は小さくてよい。このため、背圧制御弁の近傍の配管に大きな熱量を加えることにはならないので、背圧制御弁に悪影響を与えることなく、小径配管内での二酸化炭素の気化による結露や凍結を抑制することができる。
【0012】
上記のように、移動相の流量域が高流量域であれば、前記小径配管と前記大径配管との繋ぎ目部分よりも下流側で二酸化炭素の気化が発生する。そのため、移動相の流量域が高流量域である場合には前記小径配管を前記小径配管加熱部によって加熱する必要がない。そこで、本発明に係る超臨界流体装置では、前記大径配管加熱部と前記小径配管加熱部のそれぞれの加熱量を制御するように構成された制御部が、前記分析流路を流れる移動相の流量が所定流量以下、すなわち低流量域であるときは、前記小径配管を前記小径配管加熱部によって加熱する一方で、前記分析流路を流れる移動相の流量が前記所定流量を超える、すなわち高流量域であるときは、前記大径配管のみを前記大径配管加熱部によって加熱するように構成されていることが好ましい。そうすれば、移動相の流量域が高流量域である場合に、二酸化炭素の気化が発生しない前記小径配管を無駄に加熱することがなくなり、移動相の流量域に応じて二酸化炭素の気化が発生する箇所を効率的に加熱することができる。
【0013】
また、前記小径配管内において二酸化炭素の気化が起こるような流量域では、前記小径配管加熱部によって前記小径配管を加熱することで二酸化炭素の気化熱による結露や凍結を抑制することができる。一方で、前記大径配管内において二酸化炭素の気化が起こるような流量域になると、二酸化炭素の気化熱によって前記大径配管の温度が急激に低下する。したがって、前記大径配管の温度をモニタしておけば、前記大径配管加熱部による前記大径配管の加熱が必要か否かを判断することができる。
【0014】
そこで、本発明の超臨界流体装置においては、前記大径配管加熱部の温度を検出する温度センサと、前記大径配管加熱部と前記小径配管加熱部のそれぞれの加熱量を制御するように構成された制御部と、さらに備え、前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記大径配管の温度が所定温度以上であるときは前記小径配管加熱部のみを駆動し、前記温度センサにより検出される前記大径配管の温度が所定温度未満であるときは前記大径配管加熱部を駆動するように構成されていてもよい。そうすれば、必要に応じて前記小径配管加熱部と前記大径配管加熱部を使い分けることができ、二酸化炭素の気化が発生する箇所を効率的に加熱することができる。
【0015】
前記大径配管加熱部は、前記大径配管に電流を流して前記大径配管を発熱させるように構成された電気回路を含むものであってよい。前記大径配管内で二酸化炭素の気化が発生するような高流量域では、二酸化炭素の気化熱による結露や凍結を抑制するために大きな熱量を高効率に流体へ与える必要がある。前記大径配管の外周にヒータと取り付けて前記大径配管内を流れる流体に熱量を与えるようにしてもよいが、前記大径配管自身をヒータとして発熱させ、前記大径配管から流体へ直接的に熱を加えるほうが高効率である。
【0016】
また、前記小径配管の内径は前記背圧制御弁内に設けられた出口流路の内径と略同一であることが好ましい。そうすれば、前記背圧制御弁の出口部分に流路径が急激に拡大する急拡大部が形成されず、前記小径配管内の圧力が前記背圧制御弁の出口流路と同程度の圧力に維持されるので、前記背圧制御弁の出口付近で二酸化炭素の気化が発生することが抑制される。
【0017】
また、前記大径配管の内径は前記小径配管の内径の2倍以上であることが好ましい。そうすれば、前記小径配管と前記大径配管との繋ぎ目部分で流体圧力が急激に低下するため、この部分において二酸化炭素の気化を誘発しやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る超臨界流体装置では、背圧制御弁の出口に内部の圧力が大気圧よりも高い圧力に維持される内径を有する小径配管を接続し、さらに前記小径配管の下流端に前記小径配管よりも大きい内径をもつ大径配管を接続して、前記小径配管と前記大径配管との繋ぎ目部分に流路内径が急激に拡大する急拡大部を形成したので、移動相の流量域が高流量域である場合に、二酸化炭素の気化が起こる位置を前記大径配管内に限定することができる。そして、前記大径配管を加熱する大径配管加熱部を備えているので、移動相の流量域が高流量域である場合に、二酸化炭素の気化が発生する区間を確実に効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】超臨界流体装置の一実施例を概略的に示す構成図である。
【
図2】同実施例の背圧制御弁の出口側の配管構成を概略的に示す図である。
【
図3】超臨界流体装置の他の実施例を概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る超臨界流体装置の一実施例である超臨界流体クロマトグラフについて、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示されているように、この実施例の超臨界流体クロマトグラフは、二酸化炭素ボンベ6に収容された液体状態の二酸化炭素を送液ポンプ4aによって、モディファイア容器8に収容されたモディファイアを送液ポンプ4bによって共通のミキサ10へ送液し、その混合液を移動相として分析流路2中において送液するように構成されている。分析流路2上には、上流側から、試料注入部12、分析カラム14、及び検出器16が設けられており、分析流路2の下流端は背圧制御弁18に接続されている。
【0022】
試料注入部12は、分析対象の試料を分析流路2中に注入するものである。分析カラム14は試料注入部12により分析流路2中に注入された試料を分離するためのものである。検出器16は分析カラム14で分離した試料成分を検出するためのものである。
【0023】
背圧制御弁18は、分析流路2内の圧力を所定の圧力に制御するためのものである。背圧制御弁18により所定の圧力に制御された分析流路2内では、移動相中の二酸化炭素が超臨界状態となって分析カラム14を流れる。
【0024】
背圧制御弁18の出口に小径配管20が接続され、小径配管20の下流端にカップリング22を介して大径配管24が接続されている。小径配管20の内径は背圧制御弁18の出口流路と略同一であり、小径配管20内の圧力が大気圧よりも高い圧力に維持されるような大きさに設計されている。大径配管24の内径は小径配管20の内径よりも大きく、好ましくは小径配管20の内径の2倍以上である。小径配管20の内径は例えば約0.5mmであり、大径配管24の内径は例えば約1.0mmである。
【0025】
図示は省略されているが、大径配管24の下流端は大気解放されており、大径配管24内は大気圧となる。一方で、小径配管20の内径は大径配管24に比べて大幅に小さく、小径配管20内の圧力が大気圧よりも高い圧力に維持される。すなわち、背圧制御弁18の出口側の小径配管20と大径配管24との繋ぎ目部分には、流路径が急激に拡大する急拡大部が存在し、背圧制御弁18から流出した流体の圧力は小径配管20と大径配管24との繋ぎ目部分を通過するときに急激に低下する。
【0026】
このような構成により、移動相の流量域が、小径配管20内において二酸化炭素の気化が起こらないような高流量域であるときは、小径配管20と大径配管24との繋ぎ目部分よりも下流側の区間、すなわち大径配管24の一定の区間内において二酸化炭素の気化が誘発される。そのため、大径配管24の一定の区間を大きな熱量で加熱することができる大径配管加熱部28が設けられている。
【0027】
一方で、移動相の流量域が、小径配管20内において二酸化炭素の気化が起こるような低流量域であるときには、小径配管20内での二酸化炭素の気化による結露や凍結が起こる虞がある。そのため、そのような小径配管20での結露や凍結を防止するために、小径配管20を加熱する小径配管加熱部26も設けられている。小径配管加熱部26は、背圧制御弁18に悪影響を与えない程度の大径配管加熱部28よりも小さい熱量で小径配管20を加熱する。
【0028】
小径配管加熱部26及び大径配管加熱部28の駆動は制御部30によって制御される。制御部30は、専用のコンピュータ又は汎用のコンピュータに設けられているマイクロコンピュータなどの演算素子が所定のプログラムを実行することにより得られる機能である。
【0029】
制御部30は、移動相の流量域が所定の流量以上であるときは、大径配管加熱部28によって大径配管24のみを加熱し、移動相の流量域が所定の流量未満であるときに小径配管加熱部26によって小径配管20を加熱するように構成されている。
【0030】
なお、小径配管加熱部26を駆動するか否かのしきい値となる流量値は、移動相の組成(移動相中における二酸化炭素の割合)や分析流路2内の圧力などによって変わるものである。したがって、制御部30は、移動相の組成等としきい値となる流量値との関係性を示すデータテーブルを保持していることが好ましい。その場合、制御部30は、そのデータテーブルを用いてしきい値を設定し、移動相の流量がそのしきい値以上か否かによって小径配管加熱部26を駆動するか否かを決定するように構成されていることが好ましい。また、移動相の組成を時間的に変化させるグラジエント分析が実行されている場合には、時間的に変化する移動相の組成に応じて流量のしきい値を変化させるようにしてもよい。
【0031】
図2に示されているように、小径配管加熱部26として、小径配管20の外周面に直接的に取り付けられたリボンヒータなどを用いることができる。
【0032】
また、大径配管加熱部28は、
図2に示されているように、電源28によって大径配管24の一定区間に電圧を印加する電気回路によって構成することが好ましい。電圧28によって大径配管24の一定区間に電圧を印加すると、大径配管24を電流が流れ、大径配管24自体の抵抗によって大径配管24が発熱する。これにより、大径配管24に発生したジュール熱によって大径配管24を流れる流体を効率よく加熱することができる。この構成により、大径配管24を流れる流体に大きな熱量を加えることができるため、移動相の流量域が高流量域であっても、二酸化炭素の気化熱による結露や凍結を効果的に抑制することが可能になる。
【0033】
上記の場合、大径配管24の電流が背圧制御弁18側へ流れることを防止するため、カップリング22として絶縁性のものを用いる。そのようなカップリング22の素材としては、ポリエーテルエーテルケトンを用いることができる。このほか、120度までの耐熱性を有し、かつ絶縁性の素材であればいかなるものもカップリング22の素材として用いることができる。そのような素材としては、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0034】
また、
図3に示されているように、大径配管24に温度センサ32を取り付け、制御部30が温度センサ32により検出される大径配管24の温度に基づいて大径配管24の駆動を制御するように構成してもよい。例えば、大径配管24の温度が所定温度以上、例えば室温以上である場合には小径配管加熱部26のみを駆動し、大径配管24の温度が所定温度未満である場合には大径配管加熱部28も駆動するように、制御部30を構成してもよい。
【0035】
小径配管20内において二酸化炭素の気化が起こるような流量域では、小径配管加熱部26によって小径配管20を加熱することで二酸化炭素の気化熱による結露や凍結を抑制することができる。一方で、大径配管20内において二酸化炭素の気化が起こるような流量域になると、二酸化炭素の気化熱によって大径配管20の温度が急激に低下する。したがって、大径配管24の温度をモニタしておけば、大径配管加熱部28による大径配管24の加熱が必要か否かを判断することができる。
【0036】
上記実施形態では、小径配管加熱部26と大径配管加熱部28とのどちらか一方を加熱駆動する例を記載したが、小径配管加熱部26と大径配管加熱部28との両方を加熱駆動してもよい。
【符号の説明】
【0037】
2 分析流路
4a,4b 送液ポンプ
6 二酸化炭素ボンベ
8 モディファイア容器
10 ミキサ
12 試料注入部
14 分析カラム
16 検出器
18 背圧制御弁
20 小径流路
22 カップリング
24 大径流路
26 小径配管加熱部
28 大径配管加熱部
30 制御部
32 温度センサ