(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第5ケース部35が「中間壁」に相当し、第1距離X1が「分岐部から第1回転電機までの軸方向の距離」に相当し、第2距離X2が「分岐部から第2回転電機までの軸方向の距離」に相当する。
【0012】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態や、2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれてもよい。但し、差動歯車装置又は差動歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車装置又は当該差動歯車機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
【0013】
また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。例えば、「径方向視で重複する」とは、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が、周方向の少なくとも一部の領域に存在することを指す。なお、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0014】
図1及び
図3に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11と、第2回転電機12と、第1車輪W1に駆動連結される第1連結部材51と、第2車輪W2に駆動連結される第2連結部材52と、伝達装置2と、を備えている。また、
図1に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11、第2回転電機12、第1連結部材51、第2連結部材52、及び伝達装置2を収容するケース3を備えている。ここで、「収容する」とは、収容対象物の少なくとも一部を収容することを意味する。例えば、
図1に示すように、本実施形態では、第1連結部材51の全体がケース3に収容される(すなわち、ケース3の内部に配置される)が、第1連結部材51の一部のみがケース3に収容される構成とすることもできる。
【0015】
伝達装置2は、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの少なくとも第1連結部材51に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの少なくとも第2連結部材52に伝達する装置である。第1連結部材51に伝達されたトルクにより第1車輪W1が回転駆動されると共に、第2連結部材52に伝達されたトルクにより第2車輪W2が回転駆動されることで、車両(車両用駆動装置1が搭載された車両、以下同様。)が走行する。
図3に示すように、本実施形態では、第1連結部材51は、第1ドライブシャフト53を介して第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52は、第2ドライブシャフト54を介して第2車輪W2と一体的に回転するように連結されている。第1車輪W1及び第2車輪W2は、互いに同軸(本実施形態では後述する第2軸A2上)に配置される左右一対の車輪である。
【0016】
このように、車両用駆動装置1は、左右一対の車輪を駆動するように車両に設けられる。例えば、車両が左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合には、車両用駆動装置1を、左右一対の前輪を駆動するように設け、或いは左右一対の後輪を駆動するように設けることができる。前者の場合、左右一対の前輪が第1車輪W1及び第2車輪W2となり、後者の場合、左右一対の後輪が第1車輪W1及び第2車輪W2となる。このように車両が左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合、左右一対の前輪及び左右一対の後輪のうちの車両用駆動装置1による駆動対象ではない左右一対の車輪が、別の駆動装置(車両用駆動装置1と同じ構成の駆動装置であっても良い。)により駆動される構成とすることもできる。
【0017】
図1及び
図3に示すように、第1回転電機11及び第2回転電機12は、第1軸A1上に配置され、第1連結部材51及び第2連結部材52は、第1軸A1に平行な第2軸A2上に配置されている。また、伝達装置2は、第1軸A1及び第2軸A2に平行な第3軸A3上に配置されている。これらの第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3は、互いに異なる軸(仮想軸)である。以下では、これらの各軸(第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3)に平行な方向(各軸の間で共通した軸方向)を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側(軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側)を「軸方向第2側L2」とする。第1軸A1上に、軸方向第1側L1から順に、第1回転電機11及び第2回転電機12が配置されている。また、以下では、特に明記している場合を除き、「径方向R」は、第1軸A1を基準とする径方向を表す(
図2参照)。
【0018】
第1回転電機11は、ケース3等の非回転部材に固定される第1ステータ11aと、第1ステータ11aに対して回転自在に支持される第1ロータ11bと、を備えている。第1ロータ11bは、第1ロータ軸11cと一体的に回転するように連結されている。第2回転電機12は、ケース3等の非回転部材に固定される第2ステータ12aと、第2ステータ12aに対して回転自在に支持される第2ロータ12bと、を備えている。第2ロータ12bは、第2ロータ軸12cと一体的に回転するように連結されている。第1回転電機11及び第2回転電機12のそれぞれは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置に電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0019】
本実施形態では、第1回転電機11はインナロータ型の回転電機であり、第1ロータ11bは、第1ステータ11aよりも径方向Rの内側であって径方向R視で第1ステータ11aと重複する位置に配置されている。また、本実施形態では、第2回転電機12はインナロータ型の回転電機であり、第2ロータ12bは、第2ステータ12aよりも径方向Rの内側であって径方向R視で第2ステータ12aと重複する位置に配置されている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11に駆動連結される第1駆動ギヤ21aと、第2回転電機12に駆動連結される第2駆動ギヤ22aとを備えている。第1駆動ギヤ21aは、第1回転電機11のトルクを出力するためのギヤであり、伝達装置2が備える入力ギヤ(第1入力ギヤ71a)に噛み合っている。第1回転電機11のトルクは、第1駆動ギヤ21aと第1入力ギヤ71aとの噛み合い部から伝達装置2に入力される。第2駆動ギヤ22aは、第2回転電機12のトルクを出力するためのギヤであり、伝達装置2が備える入力ギヤ(第2入力ギヤ72a)に噛み合っている。第2回転電機12のトルクは、第2駆動ギヤ22aと第2入力ギヤ72aとの噛み合い部から伝達装置2に入力される。なお、伝達装置2は、第1入力部材71及び第2入力部材72を備えており、第1入力部材71が、第1駆動ギヤ21aに噛み合う第1入力ギヤ71aを備え、第2入力部材72が、第2駆動ギヤ22aに噛み合う第2入力ギヤ72aを備えている。
【0021】
本実施形態では、第1駆動ギヤ21aは、第1回転電機11(第1ロータ11b)と一体的に回転するように連結されている。具体的には、車両用駆動装置1は、第1ロータ軸11cと一体的に回転するように連結される第1駆動部材21(ここでは、軸部材)を、第1回転電機11に対して軸方向第2側L2に備えており、第1駆動部材21の外周面に第1駆動ギヤ21aが形成されている。また、本実施形態では、第2駆動ギヤ22aは、第2回転電機12(第2ロータ12b)と一体的に回転するように連結されている。具体的には、車両用駆動装置1は、第2ロータ軸12cと一体的に回転するように連結される第2駆動部材22(ここでは、軸部材)を、第2回転電機12に対して軸方向第1側L1に備えており、第2駆動部材22の外周面に第2駆動ギヤ22aが形成されている。このように、第1軸A1上には、第1回転電機11と一体的に回転する第1駆動軸D1と、第2回転電機12と一体的に回転する第2駆動軸D2とが配置されている。そして、本実施形態では、第1駆動軸D1は、互いに連結された第1ロータ軸11cと第1駆動部材21とにより構成され、第2駆動軸D2は、互いに連結された第2ロータ軸12cと第2駆動部材22とにより構成されている。これらの第1駆動軸D1及び第2駆動軸D2は、ケース3に収容されている。
【0022】
図1及び
図3に示すように、第1連結部材51及び第2連結部材52のそれぞれは、伝達装置2が備える出力ギヤに噛み合う従動ギヤを備えている。具体的には、第1連結部材51は、伝達装置2が備える第1出力ギヤ81aに噛み合う第1従動ギヤ51aを備え、第2連結部材52は、伝達装置2が備える第2出力ギヤ82aに噛み合う第2従動ギヤ52aを備えている。第1車輪W1を回転駆動するためのトルクは、第1出力ギヤ81aと第1従動ギヤ51aとの噛み合い部から第1連結部材51に出力され、第2車輪W2を回転駆動するためのトルクは、第2出力ギヤ82aと第2従動ギヤ52aとの噛み合い部から第2連結部材52に出力される。なお、伝達装置2は、第1出力部材81及び第2出力部材82を備えており、第1出力部材81が、第1従動ギヤ51aに噛み合う第1出力ギヤ81aを備え、第2出力部材82が、第2従動ギヤ52aに噛み合う第2出力ギヤ82aを備えている。
【0023】
本実施形態では、伝達装置2は、差動歯車装置6を備えている。ここで、差動歯車装置は、差動回転可能な複数の回転要素を有する歯車装置である。すなわち、差動歯車装置は、差動回転可能な複数の回転要素を有する差動歯車機構を用いて構成される。差動歯車装置は、例えば、遊星歯車式の差動歯車装置(すなわち、遊星歯車装置)とされ、この場合、差動歯車装置は、遊星歯車式の差動歯車機構(すなわち、遊星歯車機構)を用いて構成される。また、差動歯車装置は、例えば、傘歯車式の差動歯車装置とされ、この場合、差動歯車装置は、傘歯車式の差動歯車機構を用いて構成される。なお、差動歯車装置6が備える複数の回転要素の中に、ケース3等の非回転部材に固定される非回転要素が含まれる場合があるが、本明細書では、非回転要素も含めて「回転要素」という。
【0024】
差動歯車装置6は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4を有している(
図4参照)。第1回転要素E1に上述した第1入力部材71が連結されることで、第1回転電機11が第1回転要素E1に駆動連結され、第2回転要素E2に上述した第1出力部材81が連結されることで、第1連結部材51が第2回転要素E2に駆動連結され、第3回転要素E3に上述した第2出力部材82が連結されることで、第2連結部材52が第3回転要素E3に駆動連結され、第4回転要素E4に上述した第2入力部材72が連結されることで、第2回転電機12が第4回転要素E4に駆動連結されている。本実施形態では、差動歯車装置6は遊星歯車装置60である。すなわち、伝達装置2は、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4を少なくとも有する遊星歯車装置60を備えている。本実施形態では、遊星歯車装置60は、回転要素として、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4のみを有している。
【0025】
図2及び
図3に示すように、遊星歯車装置60は、第1サンギヤS1、第1キャリヤC1、及び第1リングギヤR1を有する第1遊星歯車機構61と、第2サンギヤS2、第2キャリヤC2、及び第2リングギヤR2を有する第2遊星歯車機構62と、を備えている。第1キャリヤC1は、第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持し、第2キャリヤC2は、第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持している。そして、遊星歯車装置60は、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とを連結して構成されている。具体的には、本実施形態では、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。そして、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2とが一体的に回転するように連結されていると共に、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2とが一体的に回転するように連結されている。このように、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とは、それぞれが有する3つの回転要素のうちの2つずつが互いに連結されることで、全体として4つの回転要素を備えて一体的に差動動作を行うように構成されている。なお、第1遊星歯車機構61は、第2遊星歯車機構62に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、本実施形態では、第1遊星歯車機構61は、第1回転電機11に対して軸方向第2側L2に配置され、第2遊星歯車機構62は、第2回転電機12に対して軸方向第1側L1に配置されている。このように、伝達装置2は、第3軸A3上に配置される第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62を備えている。本実施形態では、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62のそれぞれが、「第3軸上に配置された遊星歯車機構」に相当する。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、第1回転電機11は第1リングギヤR1に駆動連結され、第2回転電機12は第2リングギヤR2に駆動連結され、第1連結部材51は第1キャリヤC1に駆動連結され、第2連結部材52は第2キャリヤC2に駆動連結されている。よって、本実施形態では、第1回転電機11が駆動連結される第1回転要素E1は、第1リングギヤR1であり、第1連結部材51が駆動連結される第2回転要素E2は、一体的に回転する第1キャリヤC1と第2サンギヤS2であり、第2連結部材52が駆動連結される第3回転要素E3は、一体的に回転する第1サンギヤS1と第2キャリヤC2であり、第2回転電機12が駆動連結される第4回転要素E4は、第2リングギヤR2である。そして、本実施形態では、回転速度の順が、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4の順となっている。
【0027】
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、差動歯車装置6(遊星歯車装置60)の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、「各回転要素の回転速度の順」は、各回転要素の速度線図(共線図、
図4参照)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸の配置方向は、速度線図の描き方によって異なるが、その配置順は差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、
図4において、縦軸の「0」は回転速度がゼロであることを示し、上側が正、下側が負となっている。
【0028】
図4において、「Ti1」は、第1回転要素E1に第1回転電機11の側から入力されるトルク(第1入力トルクTi1)を表し、「Ti2」は、第4回転要素E4に第2回転電機12の側から入力されるトルク(第2入力トルクTi2)を表している。第1入力トルクTi1の大きさは、第1回転電機11の出力トルクの大きさと、第1回転電機11から第1回転要素E1までの変速比(第1変速比)とに応じて定まり、第2入力トルクTi2の大きさは、第2回転電機12の出力トルクの大きさと、第2回転電機12から第4回転要素E4までの変速比(第2変速比)とに応じて定まる。本実施形態では、第1駆動ギヤ21aと第2駆動ギヤ22aとが互いに同径に形成されていると共に、第1入力ギヤ71aと第2入力ギヤ72aとが互いに同径に形成されており、第1変速比と第2変速比とは互いに等しい。ここでは、第1変速比及び第2変速比は1より大きく、第1回転電機11の回転は減速されて第1回転要素E1に伝達され、第2回転電機12の回転は減速されて第4回転要素E4に伝達される。
【0029】
また、
図4において、「To1」は、第2回転要素E2から第1車輪W1の側に出力されるトルク(第1出力トルクTo1)を表し、「To2」は、第3回転要素E3から第2車輪W2の側に出力されるトルク(第2出力トルクTo2)を表している。第1車輪W1の駆動力の大きさは、第1出力トルクTo1の大きさと、第2回転要素E2から第1車輪W1までの変速比(第3変速比)とに応じて定まり、第2車輪W2の駆動力の大きさは、第2出力トルクTo2の大きさと、第3回転要素E3から第2車輪W2までの変速比(第4変速比)とに応じて定まる。本実施形態では、第1出力ギヤ81aと第2出力ギヤ82aとが互いに同径に形成されていると共に、第1従動ギヤ51aと第2従動ギヤ52aとが互いに同径に形成されており、第3変速比と第4変速比とは互いに等しい。ここでは、第3変速比及び第4変速比は1より大きく、第2回転要素E2の回転は減速されて第1車輪W1に伝達され、第3回転要素E3の回転は減速されて第2車輪W2に伝達される。
【0030】
上記のように第3変速比と第4変速比とが互いに等しいため、車両の直進時には、第2回転要素E2の回転速度と第3回転要素E3の回転速度とが等しくなり、遊星歯車装置60の全ての回転要素が同速で回転する状態となる。一方、車両の旋回時には、第1車輪W1及び第2車輪W2のうちの外側の車輪(旋回中心から遠い方の車輪)が駆動連結された回転要素の回転速度が、第1車輪W1及び第2車輪W2のうちの内側の車輪(旋回中心に近い方の車輪)が駆動連結された回転要素の回転速度よりも高い状態となる。
図4は、第1車輪W1が外側の車輪となる方向に車両が旋回している状態での遊星歯車装置60の各回転要素の状態を表している。
【0031】
トルクの釣り合いから、第1出力トルクTo1及び第2出力トルクTo2のそれぞれは、以下の式(1),(2)に示すように、第1入力トルクTi1、第2入力トルクTi2、第1遊星歯車機構61のギヤ比(第1ギヤ比λ1)、及び第2遊星歯車機構62のギヤ比(第2ギヤ比λ2)に応じて定まる。ここで、第1ギヤ比λ1は、第1リングギヤR1の歯数に対する第1サンギヤS1の歯数の比であり、第2ギヤ比λ2は、第2リングギヤR2の歯数に対する第2サンギヤS2の歯数の比である。
To1=(1+λ1)・Ti1−λ2・Ti2 ・・・(1)
To2=(1+λ2)・Ti2−λ1・Ti1 ・・・(2)
【0032】
このように、第1出力トルクTo1及び第2出力トルクTo2のそれぞれは、第1入力トルクTi1及び第2入力トルクTi2の双方に応じて定まる。すなわち、本実施形態では、伝達装置2は、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達するように構成されている。言い換えれば、伝達装置2は、第1回転電機11及び第2回転電機12のトルクを、第1連結部材51及び第2連結部材52に分配して伝達するように構成されている。車両用駆動装置1をこのように構成することで、第1回転電機11と第1連結部材51との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部材52との間の動力伝達経路とが分離されている場合に比べて、第1車輪W1と第2車輪W2との間で駆動力に差を設ける際に、第1車輪W1と第2車輪W2との合計駆動力を大きく確保して、車両の旋回時の走行性能の向上を図ることが可能となっている。
【0033】
補足説明すると、一例として、第1入力トルクTi1の大きさが200[N・m]である状況において、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とする場合を想定する。この場合、本実施形態に係る車両用駆動装置1とは異なりTo1=Ti1,To2=Ti2となる比較例の構成では、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とするための第2入力トルクTi2の大きさは40[N・m]となる。よって、この比較例の場合には、第1入力トルクTi1と第2入力トルクTi2との和(第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との和に等しい)は、240[N・m]となる。これに対して、本実施形態に係る車両用駆動装置1では、第1入力トルクTi1の大きさが200[N・m]である状況において、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とするための第2入力トルクTi2の大きさは、第1ギヤ比λ1及び第2ギヤ比λ2の双方が“0.4”である場合には、上記の式(1),(2)より111[N・m]となる。よって、この場合には、第1入力トルクTi1と第2入力トルクTi2との和(第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との和)は311[N・m]となり、上記の比較例の場合に比べて、71[N・m](=311[N・m]−240[N・m])のトルク差に相当する分、第1車輪W1と第2車輪W2との合計駆動力を大きく確保することができる。
【0034】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1におけるケース3の構成について説明する。本実施形態では、ケース3は、後述する第1ケース部31や第2ケース部32等の複数のケース部を接合して構成される。ケース3を構成するケース部のそれぞれは、ケース3の外面に露出する部分を有する。すなわち、ケース3を構成するケース部同士の接合部は、ケース3の外面に露出するように形成される。なお、ケース部同士は、例えばボルトを用いて接合される。
【0035】
図1に示すように、ケース3は、第1ケース部31と第2ケース部32とを備えている。第1ケース部31は、第2ケース部32に対して軸方向第1側L1から接合されている。第1ケース部31は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第1周壁部31cを備えており、軸方向L視で第1周壁部31cにより囲まれた空間(第1収容空間H1)に、第1回転電機11、第1駆動部材21、第1連結部材51、及び伝達装置2の一部(具体的には、第1入力部材71、第1出力部材81、及び第1遊星歯車機構61)が配置されている。また、第2ケース部32は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第2周壁部32cを備えており、軸方向L視で第2周壁部32cにより囲まれた空間(第2収容空間H2)に、第2回転電機12、第2駆動部材22、第2連結部材52、及び伝達装置2の一部(具体的には、第2入力部材72、第2出力部材82、及び第2遊星歯車機構62)が配置されている。本実施形態では、第1収容空間H1と第2収容空間H2とは、後述する第5ケース部35によって軸方向Lに区画されている。
【0036】
ケース3は、更に、第3ケース部33と第4ケース部34とを備えている。第1収容空間H1における第1回転電機11が配置される部分は、第1ケース部31によって軸方向第1側L1を区画されずに開口部が形成されており、当該開口部を閉じるように第3ケース部33が第1ケース部31に対して軸方向第1側L1から接合されている。また、第2収容空間H2における第2回転電機12が配置される部分は、第2ケース部32によって軸方向第2側L2を区画されずに開口部が形成されており、当該開口部を閉じるように第4ケース部34が第2ケース部32に対して軸方向第2側L2から接合されている。
【0037】
ケース3は、更に、第5ケース部35を備えている。第5ケース部35は、軸方向Lにおける第1回転電機11と第2回転電機12との間を、径方向Rに延びるように配置されている。なお、本明細書において、ある方向に「延びる」とは、当該方向に平行に延びる場合に限らず、当該方向に対して所定角度未満(例えば、45度未満)で傾斜した方向に延びる場合も含む概念として用いている。
図1に示すように、本実施形態では、第5ケース部35は、径方向Rに平行に延びる部分を有するように配置されている。具体的には、第5ケース部35は、後述する第1支持部35aや第2支持部35b等を除く部分が、軸方向Lに直交する面に沿う板状に形成されている。第5ケース部35は、ケース3の内部空間(第1回転電機11、第2回転電機12、第1連結部材51、第2連結部材52、及び伝達装置2を収容するための収容空間H)を軸方向Lに区画する壁部を構成している。本実施形態では、第5ケース部35は、第1ケース部31と第2ケース部32との接合部36が形成される軸方向Lの位置に配置されており、第5ケース部35によって、第1収容空間H1と第2収容空間H2とが軸方向Lに区画されている。
【0038】
上記のように第5ケース部35が配置されるため、第5ケース部35は、第1ケース部31(第1周壁部31c)と第2ケース部32(第2周壁部32c)とにより軸方向Lの両側から挟まれた状態で、第1ケース部31及び第2ケース部32のそれぞれに接合されている。すなわち、本実施形態では、第1ケース部31と第2ケース部32とは、接合部36において、第5ケース部35を介して接合されている。詳細は省略するが、第1ケース部31と第5ケース部35との接合面(第1接合面36a)や第2ケース部32と第5ケース部35との接合面(第2接合面36b)等の異なるケース部同士の接合面には、ケース3内の油のケース3外への漏れを防止するためのシール部材(液状ガスケット等)が設けられている。なお、
図1では、シール部材を簡略化して太線で示している。
【0039】
図1に示すように、車両用駆動装置1は、ケース3に固定される支持部材40を備えている。支持部材40は、ケース3の内部に配置される。そのため、支持部材40とケース3との固定部は、異なるケース部同士の接合部とは異なり、ケース3の外面には露出しない。本実施形態では、車両用駆動装置1は、ケース3の内部にそれぞれ配置された支持部材40である第1支持部材41及び第2支持部材42を備えている。第1支持部材41は、第5ケース部35に対して軸方向第1側L1に配置されて(すなわち、第1収容空間H1に配置されて)第1ケース部31に固定されており、第1収容空間H1に配置される部材を支持するために用いられる。また、第2支持部材42は、第5ケース部35に対して軸方向第2側L2に配置されて(すなわち、第2収容空間H2に配置されて)第2ケース部32に固定されており、第2収容空間H2に配置される部材を支持するために用いられる。第1支持部材41や第2支持部材42は、例えばボルトを用いてケース3に固定される。
【0040】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における、第1回転電機11及び第2回転電機12に対する油の供給構成について説明する。
【0041】
図1及び
図2に示すように、第1駆動軸D1の内部には、軸方向Lに沿って、第1回転電機11に油を供給するための第1油路91が形成されている。ここでは、第1油路91は、軸方向Lに平行に延びるように形成されている。第1駆動軸D1は、軸方向Lに延びる筒状(ここでは、円筒状)の内周面を有し、当該内周面に囲まれる空間によって第1油路91が形成されている。上述したように、本実施形態では、第1駆動軸D1は、互いに連結された第1ロータ軸11cと第1駆動部材21とにより構成されている。具体的には、第1ロータ軸11cと第1駆動部材21との相対回転が規制され、軸方向Lの相対移動が許容されるように、第1ロータ軸11cにおける軸方向第2側L2の端部の内周面に形成された係合部と、第1駆動部材21における軸方向第1側L1の端部の外周面に形成された係合部とが係合(本実施形態では、スプライン係合)している。そのため、本実施形態では、第1油路91における軸方向第1側L1の部分は、第1ロータ軸11cの内部に形成され、第1油路91における軸方向第2側L2の部分は、第1駆動部材21の内部に形成されている。具体的には、第1油路91における軸方向第1側L1の部分は、第1ロータ軸11cの筒状(ここでは、円筒状)の内周面(第1内周面13)に囲まれる空間によって形成され、第1油路91における軸方向第2側L2の部分は、第1駆動部材21の筒状(ここでは、円筒状)の内周面(第3内周面23)に囲まれる空間によって形成されている。
【0042】
第2駆動軸D2の内部には、軸方向Lに沿って、第2回転電機12に油を供給するための第2油路92が形成されている。ここでは、第2油路92は、軸方向Lに平行に延びるように形成されている。第2駆動軸D2は、軸方向Lに延びる筒状(ここでは、円筒状)の内周面を有し、当該内周面に囲まれる空間によって第2油路92が形成されている。上述したように、本実施形態では、第2駆動軸D2は、互いに連結された第2ロータ軸12cと第2駆動部材22とにより構成されている。具体的には、第2ロータ軸12cと第2駆動部材22との相対回転が規制され、軸方向Lの相対移動が許容されるように、第2ロータ軸12cにおける軸方向第1側L1の端部の内周面に形成された係合部と、第2駆動部材22における軸方向第2側L2の端部の外周面に形成された係合部とが係合(本実施形態では、スプライン係合)している。そのため、本実施形態では、第2油路92における軸方向第2側L2の部分は、第2ロータ軸12cの内部に形成され、第2油路92における軸方向第1側L1の部分は、第2駆動部材22の内部に形成されている。具体的には、第2油路92における軸方向第2側L2の部分は、第2ロータ軸12cの筒状(ここでは、円筒状)の内周面(第2内周面14)に囲まれる空間によって形成され、第2油路92における軸方向第1側L1の部分は、第2駆動部材22の筒状(ここでは、円筒状)の内周面(第4内周面24)に囲まれる空間によって形成されている。
【0043】
図1に示すように、第1駆動軸D1は第1収容空間H1に配置されている。そして、
図2に示すように、第1駆動軸D1における軸方向第2側L2の端部は、第5ケース部35に回転自在に支持されている。具体的には、第5ケース部35には、第5ケース部35における径方向Rに延びる部分(板状に形成された部分)に対して軸方向第1側L1に突出する第1支持部35aが形成されている。第1支持部35aは、第1軸A1と同軸の筒状(ここでは、円筒状)に形成されており、第1支持部35aの内周面と第1駆動軸D1(本実施形態では、第1駆動部材21)の軸方向第2側L2の端部の外周面との間に、第1軸受B1(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されている。これにより、第1駆動軸D1(第1駆動部材21)は、第5ケース部35により径方向Rの外側から回転自在に支持されている。
【0044】
第1駆動部材21は、第1支持部35aよりも軸方向第1側L1に配置された第3支持部41aにより、径方向Rの外側から第3軸受B3(ここでは、ラジアル型の玉軸受)を介して回転自在に支持されている。すなわち、第1駆動部材21は、第1支持部35aと第3支持部41aとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第3支持部41aは、第1支持部材41に形成されている。第1駆動ギヤ21aは、第1駆動部材21における軸方向Lで第1支持部35aと第3支持部41aとの間に配置される部分の外周面に形成されている。また、第1駆動部材21に連結される第1ロータ軸11cは、第1ケース部31と第3ケース部33とにより、軸方向Lの2ヶ所(第1ロータ11bに対して軸方向Lの互いに反対側に配置される2ヶ所)で回転自在に支持されている。
【0045】
詳細な説明は省略するが、本実施形態では、第1支持部材41には、第1駆動部材21を支持するための第3支持部41aに加えて、第1入力部材71を支持するための支持部、第1出力部材81を支持するための支持部、及び、第1連結部材51を支持するための支持部が形成されている。また、第5ケース部35には、第1駆動部材21を支持するための第1支持部35aに加えて、第1入力部材71を支持するための支持部が形成されている。
【0046】
図1に示すように、第2駆動軸D2は第2収容空間H2に配置されている。そして、
図2に示すように、第2駆動軸D2における軸方向第1側L1の端部は、第5ケース部35に回転自在に支持されている。具体的には、第5ケース部35には、第5ケース部35における径方向Rに延びる部分(板状に形成された部分)に対して軸方向第2側L2に突出する第2支持部35bが形成されている。第2支持部35bは、第1軸A1と同軸の筒状(ここでは、円筒状)に形成されており、第2支持部35bの内周面と第2駆動軸D2(本実施形態では、第2駆動部材22)の軸方向第1側L1の端部の外周面との間に、第2軸受B2(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されている。これにより、第2駆動軸D2(第2駆動部材22)は、第5ケース部35により径方向Rの外側から回転自在に支持されている。
【0047】
第2駆動部材22は、第2支持部35bよりも軸方向第2側L2に配置された第4支持部42aにより、径方向Rの外側から第4軸受B4(ここでは、ラジアル型の玉軸受)を介して回転自在に支持されている。すなわち、第2駆動部材22は、第2支持部35bと第4支持部42aとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第4支持部42aは、第2支持部材42に形成されている。第2駆動ギヤ22aは、第2駆動部材22における軸方向Lで第2支持部35bと第4支持部42aとの間に配置される部分の外周面に形成されている。また、第2駆動部材22に連結される第2ロータ軸12cは、第2ケース部32と第4ケース部34とにより、軸方向Lの2ヶ所(第2ロータ12bに対して軸方向Lの互いに反対側に配置される2ヶ所)で回転自在に支持されている。
【0048】
詳細な説明は省略するが、本実施形態では、第2支持部材42には、第2駆動部材22を支持するための第4支持部42aに加えて、第2入力部材72を支持するための支持部、第2出力部材82を支持するための支持部、及び、第2連結部材52を支持するための支持部が形成されている。また、第5ケース部35には、第2駆動部材22を支持するための第2支持部35bに加えて、第2入力部材72を支持するための支持部が形成されている。
【0049】
図2に簡略化して示すように、車両用駆動装置1は油圧源5を備えている。なお、油圧源5は、例えば、電動モータで駆動される電動オイルポンプ、又は、回転電機(11,12)と車輪(W1,W2)との間の動力伝達経路を伝わる動力によって駆動される機械式オイルポンプとすることができる。そして、油圧源5から吐出された油が、第1油路91及び第2油路92のそれぞれに供給されるように構成されている。具体的には、第5ケース部35に、油圧源5から油が供給される供給油路93が形成されている。そして、供給油路93に、第1油路91の軸方向第2側L2の端部と、第2油路92の軸方向第1側L1の端部とが接続されている。これにより、第1油路91及び第2油路92の双方に対して、第5ケース部35に形成された供給油路93から油を供給することが可能となっている。
【0050】
このように第5ケース部35に形成された供給油路93から第1油路91及び第2油路92の双方に対して油を供給することができるため、第1油路91に油を供給するための油路と第2油路92に油を供給するための油路とが、ケース3等(ケース3を構成する部材又はケース3に固定された部材)に各別に形成される場合に比べて、ケース3等の加工工数の低減を図ることが可能となっている。また、第1油路91に油を供給するための油路と第2油路92に油を供給するための油路とを1つの供給油路93に集約することができるため、第1油路91に油を供給するための油路と第2油路92に油を供給するための油路とが軸方向Lの2つの位置に分かれてケース3等に形成される場合に比べて、車両用駆動装置1の軸方向Lの長さを短く抑えることも可能となっている。
【0051】
更には、第1油路91に油を供給するための油路(第1供給油路)と第2油路92に油を供給するための油路(第2供給油路)とが、ケース3等に各別に形成される場合には、油圧源5と第1供給油路とを接続する油路の長さを短く抑えようとすると、油圧源5と第2供給油路とを接続する油路の長さが長くなること等によって、油圧源5から第1油路91までの油路の長さと油圧源5から第2油路92までの油路の長さとの双方を短く抑えるのが困難となる場合がある。これに対し、この車両用駆動装置1では、上記のように供給油路93から第1油路91及び第2油路92の双方に対して油を供給することができる。そのため、油圧源5と供給油路93とを接続する油路の長さを短く抑えることで、油圧源5から第1油路91までの油路の長さと油圧源5から第2油路92までの油路の長さとの双方を短く抑えることができ、これにより、油圧源5から供給される油の圧力損失の低減を図ることができる。そして、後述するように、本実施形態では、供給油路93(分岐部9)から第1回転電機11までの軸方向Lの距離と、供給油路93(分岐部9)から第2回転電機12までの軸方向Lの距離とが同一であるため、第1回転電機11に供給される油及び第2回転電機12に供給される油の双方について、圧力損失の低減を同程度に図りやすくなっている。
【0052】
以下、供給油路93の構成について具体的に説明する。
図2に示すように、供給油路93は、分岐部9において、第1油路91に接続される第1分岐油路93aと、第2油路92に接続される第2分岐油路93bとに分岐するように形成されている。そして、本実施形態では、分岐部9、第1分岐油路93a、及び第2分岐油路93bが、軸方向L視で、第1油路91及び第2油路92と重複する位置に形成されている。具体的には、分岐部9は、軸方向L視で第1油路91及び第2油路92と重複する位置に(すなわち、径方向Rの中心部に)形成されている。よって、供給油路93における分岐部9に対して油の流れ方向の上流側の部分は、分岐部9に向かって径方向Rの内側に延びるように形成されている。そして、第1分岐油路93aは、分岐部9から軸方向第1側L1に向かって軸方向Lに延びるように形成され、第2分岐油路93bは、分岐部9から軸方向第2側L2に向かって軸方向Lに延びるように形成されている。本実施形態では、第1分岐油路93a及び第2分岐油路93bの双方が、軸方向Lに平行に延びるように形成されている。すなわち、本実施形態では、第1油路91、第2油路92、第1分岐油路93a、及び第2分岐油路93bが、第1軸A1上において互いに同軸に延びるように形成されている。
【0053】
第1分岐油路93aは、第1油路91の軸方向第2側L2の端部に接続されている。具体的には、第5ケース部35には、第5ケース部35における径方向Rに延びる部分(板状に形成された部分)に対して軸方向第1側L1に突出する第1突出部37aが設けられている。本実施形態では、第1突出部37aは、第5ケース部35と一体的に形成されている。第1突出部37aは、第1軸A1と同軸の筒状(ここでは、円筒状)に形成されており、第1突出部37aの内周面に囲まれる空間によって第1分岐油路93aが形成されている。すなわち、第1分岐油路93aは、第1突出部37aの軸方向第1側L1の端面に開口するように形成されている。そして、第1突出部37aの外周面の径は、第1駆動軸D1の内周面(本実施形態では、第3内周面23)の径よりも小径に形成されており、第1突出部37aの軸方向第1側L1の端部は、第1駆動軸D1の内周面(第3内周面23)に囲まれる空間の内部に配置されている。すなわち、第1突出部37aの軸方向第1側L1の端面は、第1駆動軸D1(本実施形態では、第1駆動部材21)の軸方向第2側L2の端面よりも、軸方向第1側L1に配置されている。第1突出部37aをこのように配置することで、第1分岐油路93aの開口部は第1油路91内に配置され、この結果、第1分岐油路93aから第1油路91に対して油を効率良く供給することが可能となっている。
【0054】
図2に示すように、本実施形態では、第1駆動軸D1の内周面(本実施形態では、第3内周面23)には、軸方向第1側L1を向く段差面(外方を向かう法線ベクトルが軸方向第1側L1の成分を有する面)を有する第3段差部23aが形成されており、第1駆動軸D1の内周面(第3内周面23)は、第3段差部23aよりも軸方向第2側L2の部分が第3段差部23aよりも軸方向第1側L1の部分よりも小径に形成されている。これにより、第1分岐油路93aから第1油路91に対して供給された油が、第1駆動軸D1と第1突出部37aとの間の径方向Rの隙間を軸方向第2側L2に向かって流動することを抑制して、第1分岐油路93aから第1油路91への油の供給効率の向上を図ることが可能となっている。
【0055】
第2分岐油路93bは、第2油路92の軸方向第1側L1の端部に接続されている。具体的には、第5ケース部35には、第5ケース部35における径方向Rに延びる部分(板状に形成された部分)に対して軸方向第2側L2に突出する第2突出部37bが設けられている。本実施形態では、第2突出部37bは、第5ケース部35と一体的に形成されている。第2突出部37bは、第1軸A1と同軸の筒状(ここでは、円筒状)に形成されており、第2突出部37bの内周面に囲まれる空間によって第2分岐油路93bが形成されている。すなわち、第2分岐油路93bは、第2突出部37bの軸方向第2側L2の端面に開口するように形成されている。そして、第2突出部37bの外周面の径は、第2駆動軸D2の内周面(本実施形態では、第4内周面24)の径よりも小径に形成されており、第2突出部37bの軸方向第2側L2の端部は、第2駆動軸D2の内周面(第4内周面24)に囲まれる空間の内部に配置されている。すなわち、第2突出部37bの軸方向第2側L2の端面は、第2駆動軸D2(本実施形態では、第2駆動部材22)の軸方向第1側L1の端面よりも、軸方向第2側L2に配置されている。第2突出部37bをこのように配置することで、第2分岐油路93bの開口部は第2油路92内に配置され、この結果、第2分岐油路93bから第2油路92に対して油を効率良く供給することが可能となっている。
【0056】
図2に示すように、本実施形態では、第2駆動軸D2の内周面(本実施形態では、第4内周面24)には、軸方向第2側L2を向く段差面(外方を向かう法線ベクトルが軸方向第2側L2の成分を有する面)を有する第4段差部24aが形成されており、第2駆動軸D2の内周面(第4内周面24)は、第4段差部24aよりも軸方向第1側L1の部分が第4段差部24aよりも軸方向第2側L2の部分よりも小径に形成されている。これにより、第2分岐油路93bから第2油路92に対して供給された油が、第2駆動軸D2と第2突出部37bとの間の径方向Rの隙間を軸方向第1側L1に向かって流動することを抑制して、第2分岐油路93bから第2油路92への油の供給効率の向上を図ることが可能となっている。
【0057】
供給油路93から第1油路91を経由して第1回転電機11に供給された油によって、第1回転電機11が冷却され、供給油路93から第2油路92を経由して第2回転電機12に供給された油によって、第2回転電機12が冷却される。第1回転電機11や第2回転電機12の冷却構成は種々の構成を採用することができるが、本実施形態では一例として、以下のような構成を採用している。
【0058】
図1に示すように、第1ロータ軸11cには、第1ロータ軸11cの内周面(第1内周面13)と外周面とを連通する第1油孔94a及び第2油孔94bが形成されている。供給油路93から第1油路91に流入した油は、第1駆動軸D1の回転に伴う遠心力により第1油路91の内周面側に寄せられた状態で、軸方向第1側L1に向かって流動する。そして、第1油路91における第1内周面13に囲まれる空間によって形成される部分に到達した油と、第1ロータ軸11cとの間の熱交換により、第1ロータ軸11cに固定された第1ロータ11bが径方向Rの内側から冷却される。また、第1油路91における第1内周面13に囲まれる空間によって形成される部分に到達した油は、第1駆動軸D1の回転に伴う遠心力により、第1油孔94aや第2油孔94bから第1ロータ軸11cに対して径方向Rの外側の空間に排出される。そして、第1油孔94aや第2油孔94bから排出された油が、第1ステータ11aに巻装されたコイルのコイルエンド部に供給されることで、コイルエンド部が冷却される。
【0059】
本実施形態では、第1油路91において軸方向第1側L1に向かう油の円滑な流れ(すなわち、第1回転電機11に向かう油の円滑な流れ)が形成されることを促進するために、第1油路91が、軸方向第1側L1に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成される構成としている。
図1に示すように、第1ロータ軸11cと第1駆動部材21との連結部(本実施形態では、スプライン係合部)において、第1駆動部材21は第1ロータ軸11cの内部に挿入されており、第1駆動部材21の軸方向第1側L1の端面が配置される軸方向Lの位置において、第1駆動部材21の内周面(第3内周面23)と第1ロータ軸11cの内周面(第1内周面13)との径の差の分、第1油路91の内径が当該位置よりも軸方向第2側L2の部分に比べて大きくなっている。また、
図1に示すように、第1内周面13には、軸方向第1側L1を向く段差面を有する第1段差部13aが形成されており、第1内周面13は、第1段差部13aの高さ分、第1段差部13aよりも軸方向第1側L1の部分が第1段差部13aよりも軸方向第2側L2の部分よりも大径に形成されている。よって、第1段差部13aが形成された軸方向Lの位置において、第1段差部13aの高さ分、第1油路91の内径が当該位置よりも軸方向第2側L2の部分に比べて大きくなっている。なお、第1内周面13における第1段差部13aよりも軸方向第1側L1の部分は、第1駆動部材21における第1ロータ軸11cの内部に挿入されている部分の外周面よりも大径に形成されている。このように、第1油路91を、軸方向第1側L1に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成することで、第1駆動軸D1の回転に伴う遠心力により第1油路91の内周面側に寄せられた状態の油が、軸方向第2側L2に向かって流れることを抑制することができ、第1油路91において軸方向第1側L1に向かう油の円滑な流れを形成しやすくなっている。なお、ここでは、第1油路91の内径が、軸方向Lの2ヶ所で段階的に大きくなる場合を例示したが、第1油路91の内径が段階的に大きくなる軸方向Lの位置は、1ヶ所であっても、3ヶ所以上であってもよい。例えば、第1内周面13に第1段差部13aが形成されず、第1油路91の内径が、軸方向Lの1ヶ所でのみ段階的に大きくなる構成とすることができる。
【0060】
また、
図1に示すように、第2ロータ軸12cには、第2ロータ軸12cの内周面(第2内周面14)と外周面とを連通する第3油孔94c及び第4油孔94dが形成されている。供給油路93から第2油路92に流入した油は、第2駆動軸D2の回転に伴う遠心力により第2油路92の内周面側に寄せられた状態で、軸方向第2側L2に向かって流動する。そして、第2油路92における第2内周面14に囲まれる空間によって形成される部分に到達した油と、第2ロータ軸12cとの間の熱交換により、第2ロータ軸12cに固定された第2ロータ12bが径方向Rの内側から冷却される。また、第2油路92における第2内周面14に囲まれる空間によって形成される部分に到達した油は、第2駆動軸D2の回転に伴う遠心力により、第3油孔94cや第4油孔94dから第2ロータ軸12cに対して径方向Rの外側の空間に排出される。そして、第3油孔94cや第4油孔94dから排出された油が、第2ステータ12aに巻装されたコイルのコイルエンド部に供給されることで、コイルエンド部が冷却される。
【0061】
本実施形態では、第2油路92において軸方向第2側L2に向かう油の円滑な流れ(すなわち、第2回転電機12に向かう油の円滑な流れ)が形成されることを促進するために、第2油路92が、軸方向第2側L2に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成される構成としている。
図1に示すように、第2ロータ軸12cと第2駆動部材22との連結部(本実施形態では、スプライン係合部)において、第2駆動部材22は第2ロータ軸12cの内部に挿入されており、第2駆動部材22の軸方向第2側L2の端面が配置される軸方向Lの位置において、第2駆動部材22の内周面(第4内周面24)と第2ロータ軸12cの内周面(第2内周面14)との径の差の分、第2油路92の内径が当該位置よりも軸方向第1側L1の部分に比べて大きくなっている。また、
図1に示すように、第2内周面14には、軸方向第2側L2を向く段差面を有する第2段差部14aが形成されており、第2内周面14は、第2段差部14aの高さ分、第2段差部14aよりも軸方向第2側L2の部分が第2段差部14aよりも軸方向第1側L1の部分よりも大径に形成されている。よって、第2段差部14aが形成された軸方向Lの位置において、第2段差部14aの高さ分、第2油路92の内径が当該位置よりも軸方向第1側L1の部分に比べて大きくなっている。なお、第2内周面14における第2段差部14aよりも軸方向第2側L2の部分は、第2駆動部材22における第2ロータ軸12cの内部に挿入されている部分の外周面よりも大径に形成されている。このように、第2油路92を、軸方向第2側L2に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成することで、第2駆動軸D2の回転に伴う遠心力により第2油路92の内周面側に寄せられた状態の油が、軸方向第1側L1に向かって流れることを抑制することができ、第2油路92において軸方向第2側L2に向かう油の円滑な流れを形成しやすくなっている。なお、ここでは、第2油路92の内径が、軸方向Lの2ヶ所で段階的に大きくなる場合を例示したが、第2油路92の内径が段階的に大きくなる軸方向Lの位置は、1ヶ所であっても、3ヶ所以上であってもよい。例えば、第2内周面14に第2段差部14aが形成されず、第2油路92の内径が、軸方向Lの1ヶ所でのみ段階的に大きくなる構成とすることができる。
【0062】
更には、本実施形態では、分岐部9から第1回転電機11までの軸方向Lの距離(第1距離X1)と、分岐部9から第2回転電機12までの軸方向Lの距離(第2距離X2)とが同一である構成としている。すなわち、分岐部9は、第1回転電機11と第2回転電機12との間の軸方向Lでの中心位置に配置されている。なお、
図1では、第1距離X1を、分岐部9(
図2参照)から第1ロータ11b(ロータコア)の軸方向第2側L2の端面までの軸方向Lの距離とし、第2距離X2を、分岐部9から第2ロータ12b(ロータコア)の軸方向第1側L1の端面までの軸方向Lの距離としている(以下、「第1の設定例」という。)が、第1距離X1や第2距離X2の定義はこれに限られない。例えば、第1距離X1を、分岐部9から第1ロータ11bの軸方向Lの中心位置までの軸方向Lの距離とし、第2距離X2を、分岐部9から第2ロータ12bの軸方向Lの中心位置までの軸方向Lの距離として(以下、「第2の設定例」という。)、第1距離X1と第2距離X2とが同一となるように第1回転電機11及び第2回転電機12が配置される構成とすることもできる。本実施形態では、第1ロータ11bの軸方向Lの幅と第2ロータ12bの軸方向Lの幅とが同一であるため、第1の設定例のように第1距離X1及び第2距離X2を設定して第1距離X1と第2距離X2とが同一となるように第1回転電機11及び第2回転電機12を配置すると、第2の設定例のように第1距離X1及び第2距離X2を設定した場合でも第1距離X1と第2距離X2とが同一となる。また、第1距離X1を、分岐部9から第1ロータ軸11cに形成される油孔(本実施形態のように軸方向Lの互いに異なる位置に複数の油孔(94a,94b)が形成される場合には、例えば、最も軸方向第2側L2に配置される油孔)までの軸方向Lの距離とし、第2距離X2を、分岐部9から第2ロータ軸12cに形成される油孔(本実施形態のように軸方向Lの互いに異なる位置に複数の油孔(94c,94d)が形成される場合には、例えば、最も軸方向第1側L1に配置される油孔)までの軸方向Lの距離として、第1距離X1と第2距離X2とが同一となるように第1回転電機11及び第2回転電機12が配置される構成とすることもできる。
【0063】
上記のように、本実施形態では、第1距離X1と第2距離X2とが同一となるように第1回転電機11及び第2回転電機12が配置されている。これにより、車両の直進時に、第1回転電機11に対する油の供給量と第2回転電機12に対する油の供給量とに偏りが生じるのを抑制して、第1回転電機11と第2回転電機12とを同程度に冷却することが可能となっている。本実施形態では、車両の直進時に第1回転電機11に対する油の供給量と第2回転電機12に対する油の供給量とに偏りが生じるのをより一層抑制するために、更に、第1分岐油路93aと第2分岐油路93bとを、油路断面積が互いに同一となると共に油路長さが互いに同一となるように形成し、第1油路91と第2油路92とを、油路断面積が互いに同一となると共に油路長さが互い同一となるように形成している。具体的には、第1突出部37aと第2突出部37bとが、分岐部9を通って軸方向Lに直交する面を対称面として、互いに鏡像対称となる形状に形成され、第1駆動軸D1と第2駆動軸D2とが、当該面を対称面として、互いに鏡像対称となる形状に形成されている。
【0064】
このように、車両の直進時に第1回転電機11と第2回転電機12とを同程度に冷却することが可能となることで、車両を安定的に直進させるために第1回転電機11の出力トルクと第2回転電機12の出力トルクとを合わせることが容易となる。すなわち、回転電機の出力トルクには一般に温度依存性があるため、例えば第1回転電機11及び第2回転電機12として互いに同じ特性を有する2つの回転電機を用いた場合であっても、第1回転電機11と第2回転電機12との間で温度に差が生じた場合には、第1回転電機11及び第2回転電機12に対して同じ電流指令を与えた場合であっても、第1回転電機11と第2回転電機12との間で出力トルクに差が生じる。これに対して、本実施形態の車両用駆動装置1では、上記のように車両の直進時に第1回転電機11と第2回転電機12とを同程度に冷却することが可能であるため、第1回転電機11と第2回転電機12との間の温度差を小さく抑えることができ、この結果、第1回転電機11の出力トルクと第2回転電機12の出力トルクとを合わせることが容易となる。
【0065】
ところで、第1車輪W1が外側の車輪となる向きに車両が旋回している場合には、第1回転電機11は第2回転電機12よりも大きなトルクを出力するように制御されるため、第2回転電機12の発熱量よりも第1回転電機11の発熱量が多くなりやすい。この点に関し、車両がこのような向きに旋回している状態では、車両の旋回に伴う遠心力により分岐部9の油に対して軸方向第1側L1に向かう力が作用する。そのため、分岐部9から第2分岐油路93bを介して第2油路92に供給される油量よりも、分岐部9から第1分岐油路93aを介して第1油路91に供給される油量を多くすることができ、この結果、第1回転電機11に対してより多くの油を供給して第1回転電機11を優先的に冷却することができる。また、第2車輪W2が外側の車輪となる向きに車両が旋回している場合には、第2回転電機12は第1回転電機11よりも大きなトルクを出力するように制御されるため、第1回転電機11の発熱量よりも第2回転電機12の発熱量が多くなりやすい。この点に関し、車両がこのような向きに旋回している状態では、車両の旋回に伴う遠心力により分岐部9の油に対して軸方向第2側L2に向かう力が作用する。そのため、分岐部9から第1分岐油路93aを介して第1油路91に供給される油量よりも、分岐部9から第2分岐油路93bを介して第2油路92に供給される油量を多くすることができ、この結果、第2回転電機12に対してより多くの油を供給して第2回転電機12を優先的に冷却することができる。
【0066】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62に対する油の供給構成について説明する。
図2に示すように、第3軸A3上に配置された軸部材63の内部に、第3軸A3上に配置された遊星歯車機構(ここでは、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62)に油を供給するための第3油路95が形成されている。第3油路95は、軸方向Lに沿って形成されており、ここでは、軸方向Lに平行に延びるように形成されている。軸部材63は、軸方向Lに延びる筒状(ここでは、円筒状)の内周面を有し、当該内周面に囲まれる空間によって第3油路95が形成されている。本実施形態では、軸部材63は、第1サンギヤS1及び第2キャリヤC2と一体的に回転するように連結されている。また、軸部材63は、第2出力部材82と一体的に回転するように連結されている。
【0067】
図2に簡略化して示すように、油圧源5から吐出された油が、第3油路95に供給されるように構成されている。本実施形態では、
図2に示すように、第3油路95の油を第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持する軸受に供給する第4油路96が、第1キャリヤC1に形成され、第3油路95の油を第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持する軸受に供給する第5油路97が、第2キャリヤC2に形成されている。これにより、第3油路95に供給された油によってこれらの軸受を潤滑することが可能となっている。
【0068】
詳細は省略するが、油圧源5から吐出された油は、供給油路93を介することなく第3油路95に供給されると共に、第3油路95を介することなく供給油路93に供給されるように構成されている。これにより、供給油路93に対する油の供給と、第3油路95に対する油の供給との独立性を高めること、すなわち、回転電機(11,12)に対する油の供給と、遊星歯車機構(61,62)に対する油の供給との独立性を高めることが可能となっている。
【0069】
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
【0070】
(1)上記の実施形態では、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2とが連結されると共に、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが連結されると共に第1リングギヤR1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成とすることもできる。この場合、第1回転電機11が第1サンギヤS1に駆動連結され、第1連結部材51が一体的に回転する第1キャリヤC1と第2リングギヤR2に駆動連結され、第2連結部材52が一体的に回転する第1リングギヤR1と第2キャリヤC2に駆動連結され、第2回転電機12が第2サンギヤS2に駆動連結される構成とすることで、上記の実施形態と同様に、回転速度の順が、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4の順となる構成を実現することができる。
【0071】
(2)上記の実施形態では、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、シングルピニオン型の遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である構成とすることもできる。この場合、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが連結されると共に第1リングギヤR1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成とすることができる。この場合、第1回転電機11が第1サンギヤS1に駆動連結され、第1連結部材51が一体的に回転する第1リングギヤR1と第2キャリヤC2に駆動連結され、第2連結部材52が一体的に回転する第1キャリヤC1と第2リングギヤR2に駆動連結され、第2回転電機12が第2サンギヤS2に駆動連結される構成とすることで、上記の実施形態と同様に、回転速度の順が、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4の順となる構成を実現することができる。
【0072】
(3)上記の実施形態では、伝達装置2が、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、伝達装置2が、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの第1連結部材51のみに伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの第2連結部材52のみに伝達する構成とすることもできる。すなわち、第1回転電機11と第1連結部材51との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部材52との間の動力伝達経路とが分離された構成とすることもできる。
【0073】
例えば、上記の実施形態のように第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とを連結せずに、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが互いに独立に差動動作を行う構成とすることで、第1回転電機11と第1連結部材51との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部材52との間の動力伝達経路とが分離された構成を実現することができる。この場合、第1遊星歯車機構61は、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1と、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2と、第5回転要素と、を備え、第2遊星歯車機構62は、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3と、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4と、第6回転要素と、を備える。すなわち、差動歯車装置6(遊星歯車装置60)は、全体として6つの回転要素を有する。この場合、例えば、第5回転要素が非回転部材に固定され、第6回転要素が非回転部材に固定される構成とすることができる。
【0074】
また、上記実施形態のように伝達装置2が差動歯車装置6を備える構成ではなく、伝達装置2が差動歯車装置6を備えない構成とすることで、第1回転電機11と第1連結部材51との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部材52との間の動力伝達経路とが分離された構成を実現してもよい。例えば、伝達装置2が、第1駆動ギヤ21aと第1従動ギヤ51aとを連結するギヤ又はギヤ機構(カウンタギヤ機構等の複数のギヤを有する機構、以下同様。)と、第2駆動ギヤ22aと第2従動ギヤ52aとを連結するギヤ又はギヤ機構と、を備える構成とすることができる。また、第1駆動ギヤ21aと第1従動ギヤ51aとが噛み合い、第2駆動ギヤ22aと第2従動ギヤ52aとが噛み合う構成とすることもできる。この場合、伝達装置2が、第1駆動軸D1の少なくとも一部(例えば、第1駆動部材21)と、第2駆動軸D2の少なくとも一部(例えば、第2駆動部材22)とを備える構成となる。
【0075】
(4)上記の実施形態では、分岐部9、第1分岐油路93a、及び第2分岐油路93bが、軸方向L視で、第1油路91及び第2油路92と重複する位置に形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、分岐部9が、軸方向L視で、第1油路91及び第2油路92と重複しない位置に形成される構成とすることもできる。すなわち、軸方向Lに直交する面内の位置に関して、分岐部9が、第1油路91及び第2油路92とは異なる位置に形成される構成とすることができる。この場合であっても、第1分岐油路93aにおける第1油路91との接続部と、第2分岐油路93bにおける第2油路92との接続部とを、軸方向L視で、第1油路91及び第2油路92と重複する位置に形成することで、上記の実施形態と同様に第1分岐油路93aの開口部が第1油路91内に配置されると共に第2分岐油路93bの開口部が第2油路92内に配置される構成とすることが可能となる。
【0076】
(5)上記の実施形態では、分岐部9から第1回転電機11までの軸方向Lの距離(第1距離X1)と、分岐部9から第2回転電機12までの軸方向Lの距離(第2距離X2)とが同一である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1距離X1と第2距離X2とが互いに異なる構成とすることもできる。
【0077】
(6)上記の実施形態では、第1油路91が軸方向第1側L1に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成され、第2油路92が軸方向第2側L2に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1油路91の内径が軸方向Lに沿って均一に形成され、第2油路92の内径が軸方向Lに沿って均一に形成される構成とすることもできる。また、第1油路91が、軸方向第1側L1に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成された部分と、軸方向第1側L1に向かうに従って内径が段階的に小さくなるように形成された部分との双方を有し、第2油路92が、軸方向第2側L2に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成された部分と、軸方向第2側L2に向かうに従って内径が段階的に小さくなるように形成された部分との双方を有する構成とすることもできる。
【0078】
(7)上記の実施形態では、中間壁がケース3を構成する部材(具体的には、第5ケース部35)である場合を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、中間壁がケース3に固定された部材(ケース3とは別部材)である構成とすることもできる。すなわち、上記実施形態での支持部材40のように、ケース3の内部に配置されてケース3に固定された部材を、中間壁として用いることができる。この場合、中間壁とケース3との接合部はケース3の外面には露出しないため、このような中間壁を、上記実施形態と同様に、第1ケース部31と第2ケース部32との接合部36が形成される軸方向Lの位置に配置した場合であっても、第1ケース部31(第1周壁部31c)と第2ケース部32(第2周壁部32c)とは中間壁を介さずに接合される。
【0079】
(8)上記の実施形態では、第1駆動軸D1が、互いに連結された2つの軸部材(具体的には、第1ロータ軸11c及び第1駆動部材21)により構成され、第2駆動軸D2が、互いに連結された2つの軸部材(具体的には、第2ロータ軸12c及び第2駆動部材22)により構成される場合を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動軸D1及び第2駆動軸D2の一方又は双方が、1つの軸部材により構成され、或いは、互いに連結された3つ以上の軸部材により構成されてもよい。例えば、第1駆動軸D1が第1ロータ軸11cにより構成され、第2駆動軸D2が第2ロータ軸12cにより構成されてもよい。
【0080】
(9)上記の実施形態では、第1駆動ギヤ21aが第1入力ギヤ71aに噛み合い、第2駆動ギヤ22aが第2入力ギヤ72aに噛み合う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動ギヤ21aと第1入力ギヤ71aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結され、第2駆動ギヤ22aと第2入力ギヤ72aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結される構成とすることもできる。
【0081】
(10)上記の実施形態では、第1出力ギヤ81aが第1従動ギヤ51aに噛み合い、第2出力ギヤ82aが第2従動ギヤ52aに噛み合う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1出力ギヤ81aと第1従動ギヤ51aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結され、第2出力ギヤ82aと第2従動ギヤ52aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結される構成とすることもできる。
【0082】
(11)上記の実施形態では、差動歯車装置6が遊星歯車装置60である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動歯車装置6が傘歯車式の差動歯車装置である構成とすることもできる。この場合、例えば、第1回転電機11のトルクと第2回転電機12のトルクとを合成した合成トルクが伝達装置2に入力され、伝達装置2が、この合成トルクを第1連結部材51及び第2連結部材52に分配する構成とすることができる。
【0083】
(12)上記の実施形態では、伝達装置2が、第1軸A1及び第2軸A2に平行な第3軸A3上に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、伝達装置2が、第1軸A1上に又は第2軸A2上に配置される構成とすることもできる。
【0084】
(13)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0085】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
【0086】
車両用駆動装置(1)は、第1回転電機(11)と、第2回転電機(12)と、第1車輪(W1)に駆動連結される第1連結部材(51)と、第2車輪(W2)に駆動連結される第2連結部材(52)と、前記第1回転電機(11)のトルクを前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)のうちの少なくとも前記第1連結部材(51)に伝達すると共に、前記第2回転電機(12)のトルクを前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)のうちの少なくとも前記第2連結部材(52)に伝達する伝達装置(2)と、前記第1回転電機(11)、前記第2回転電機(12)、前記第1連結部材(51)、前記第2連結部材(52)、及び前記伝達装置(2)を収容するケース(3)と、を備え、第1軸(A1)上に、軸方向(L)の一方側である軸方向第1側(L1)から順に、前記第1回転電機(11)及び前記第2回転電機(12)が配置され、前記第1軸(A1)に平行な第2軸(A2)上に、前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)が配置され、前記ケース(3)を構成する部材又は前記ケース(3)に固定された部材である中間壁(35)が、前記軸方向(L)における前記第1回転電機(11)と前記第2回転電機(12)との間を、前記第1軸(A1)を基準とする径方向(R)に延びるように配置され、前記第1軸(A1)上には更に、前記第1回転電機(11)と一体的に回転する第1駆動軸(D1)と、前記第2回転電機(12)と一体的に回転する第2駆動軸(D2)とが配置され、前記第1駆動軸(D1)における、前記軸方向(L)における前記軸方向第1側(L1)とは反対側である軸方向第2側(L2)の端部が、前記中間壁(35)に回転自在に支持され、前記第2駆動軸(D2)における、前記軸方向第1側(L1)の端部が、前記中間壁(35)に回転自在に支持され、前記第1駆動軸(D1)の内部に前記軸方向(L)に沿って、前記第1回転電機(11)に油を供給するための第1油路(91)が形成され、前記第2駆動軸(D2)の内部に前記軸方向(L)に沿って、前記第2回転電機(12)に油を供給するための第2油路(92)が形成され、前記中間壁(35)に、油圧源(5)から油が供給される供給油路(93)が形成され、前記供給油路(93)に、前記第1油路(91)の前記軸方向第2側(L2)の端部と、前記第2油路(92)の前記軸方向第1側(L1)の端部とが接続されている。
【0087】
この構成によれば、第1回転電機(11)に油を供給するための第1油路(91)と、第2回転電機(12)に油を供給するための第2油路(92)との双方に対して、中間壁(35)に形成された供給油路(93)から油を供給することができる。よって、第1油路(91)に油を供給するための油路と第2油路(92)に油を供給するための油路とが、ケース(3)等(ケース(3)を構成する部材又はケース(3)に固定された部材)に各別に形成される場合に比べて、ケース(3)等の加工工数の低減を図りつつ、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)の双方に対して油を適切に供給することが可能となる。
【0088】
ここで、前記供給油路(93)は、分岐部(9)において、前記第1油路(91)に接続される第1分岐油路(93a)と、前記第2油路(92)に接続される第2分岐油路(93b)とに分岐するように形成され、前記分岐部(9)、前記第1分岐油路(93a)、及び前記第2分岐油路(93b)が、前記軸方向(L)視で、前記第1油路(91)及び前記第2油路(92)と重複する位置に形成されていると好適である。
【0089】
この構成によれば、分岐部(9)が軸方向(L)視で第1油路(91)及び第2油路(92)と重複しないように配置される場合に比べて、中間壁(5)に形成される第1分岐油路(93a)及び第2分岐油路(93b)の形状を、軸方向(L)に延びる直線状等の比較的加工が容易な形状とすることができる。よって、車両用駆動装置(1)の製造コストの低減を図ることができる。
【0090】
上記のように前記供給油路(93)が前記分岐部(9)において前記第1分岐油路(93a)と前記第2分岐油路(93b)とに分岐するように形成される構成において、前記分岐部(9)から前記第1回転電機(11)までの前記軸方向(L)の距離(X1)と、前記分岐部(9)から前記第2回転電機(12)までの前記軸方向(L)の距離(X2)とが同一であると好適である。
【0091】
この構成によれば、車両の直進時に、第1回転電機(11)に対する油の供給量と第2回転電機(12)に対する油の供給量とに偏りが生じるのを抑制して、第1回転電機(11)と第2回転電機(12)とを同程度に冷却することが可能となる。よって、回転電機の出力トルクには一般に温度依存性があるが、このように車両の直進時に第1回転電機(11)と第2回転電機(12)とを同程度に冷却することが可能となることで、車両を安定的に直進させるために第1回転電機(11)の出力トルクと第2回転電機(12)の出力トルクとを合わせることが容易となる。
【0092】
上記の各構成の車両用駆動装置(1)において、前記第1油路(91)は、前記軸方向第1側(L1)に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成され、前記第2油路(92)は、前記軸方向第2側(L2)に向かうに従って内径が段階的に大きくなるように形成されていると好適である。
【0093】
この構成によれば、第1駆動軸(D1)の回転に伴う遠心力により第1油路(91)の内周面側に寄せられた状態の油が、軸方向第2側(L2)に向かって流れることを抑制することができるため、第1油路(91)において軸方向第1側(L1)に向かう油の円滑な流れ(すなわち、第1回転電機(11)に向かう油の円滑な流れ)を形成しやすい。同様に、第2駆動軸(D2)の回転に伴う遠心力により第2油路(92)の内周面側に寄せられた状態の油が、軸方向第1側(L1)に向かって流れることを抑制することができるため、第2油路(92)において軸方向第2側(L2)に向かう油の円滑な流れ(すなわち、第2回転電機(12)に向かう油の円滑な流れ)を形成しやすい。
【0094】
また、前記伝達装置(2)は、前記第1軸(A1)及び前記第2軸(A2)に平行な第3軸(A3)上に配置された遊星歯車機構(61,62)を備え、前記第3軸(A3)上に配置された軸部材(63)の内部に、前記遊星歯車機構(61,62)に油を供給するための第3油路(95)が形成されていると好適である。
【0095】
この構成によれば、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)に対する油の供給と、遊星歯車機構(61,62)に対する油の供給との独立性を高めることができる。よって、遊星歯車機構(61,62)に対する油の供給状態が、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)に対する油の供給状態に与える影響を小さく抑えることができ、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)に対して安定的に油を供給しやすくなる。
【0096】
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。