(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電力負荷の消費電力に基づいて模擬負荷の消費電力を増加させたり減少させたりすると、電力負荷の消費電力の変化に対する模擬負荷の消費電力の増加や減少の応答に時間を要する。この場合、応答に時間を要することによる制御の遅れに起因して、発電機の発電電力の余剰または不足の変動などの現象が生じ、発電電力が安定しない可能性がある。この問題は特に、発電機の駆動源である内燃機関の出力を定格出力にするように発電機を運転する場合に顕著に現れる。そのため、商用電力系統や常用電源からの受電の停止後に求められる、発電機の発電電圧の確立や電力負荷の投入を、短時間でより安定して実行できる技術が求められている。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、商用電力系統などからの受電の停止後に求められる、発電機の発電電圧の確立や、短時間での電力負荷の投入を、より安定して行うことができる発電システム、制御装置、制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る発電システムは、調速機を備える内燃機関の駆動によって発電する発電機と、前記内燃機関が駆動している状態で前記発電機の発電電力を電力負荷に供給する場合に、消費電力を変更可能に構成され、前記発電機の発電電力を前記電力負荷とともに消費する模擬負荷と、前記模擬負荷の消費電力を制御可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記模擬負荷の消費電力を増加または減少させる電力増減制御を実行し、前記電力増減制御を開始した後における所定の時間帯において所定時間、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持し、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持する間に、前記調速機の制御によって前記発電機の発電電力を制御する。
【0009】
本発明の一態様に係る発電システムは、上記の発明において、前記電力負荷は、外部の商用電力系統から電力を給電可能に構成され、前記制御部は、前記商用電力系統から前記電力負荷への給電が停止した場合に、前記電力負荷が前記発電機から解列した状態で前記発電機を起動させた後の第1時間帯において、前記模擬負荷の消費電力を減少させ、前記第1時間帯後の第2時間帯において、前記模擬負荷の消費電力の減少を所定時間停止させる、または前記模擬負荷の消費電力を所定時間一定に維持しつつ、前記調速機によって前記発電機の出力を制御し、前記第2時間帯後の第3時間帯において、前記模擬負荷の消費電力を増加させる。
【0010】
本発明の一態様に係る発電システムは、上記の発明において、前記第1時間帯の終了時点は、前記電力負荷の消費電力が略極大となる時点であり、前記第2時間帯の終了時点は、前記発電機の出力があらかじめ設定された規定値に到達した時点である。
【0011】
本発明の一態様に係る発電システムは、上記の発明において、前記第1時間帯と前記第2時間帯とが連続し、前記第2時間帯と前記第3時間帯とが連続している。
【0012】
本発明の一態様に係る発電システムは、上記の発明において、前記第2時間帯と第3時間帯との境界は、前記模擬負荷の消費電力と前記電力負荷の消費電力との合計が、前記発電機が運転を継続可能な発電電力以上の規定値に設定される。
【0013】
本発明の一態様に係る制御装置は、調速機を備える内燃機関の駆動によって発電する発電機の発電電力を電力負荷に供給する場合に、消費電力を変更可能に構成されて前記発電機の発電電力を前記電力負荷とともに消費する、前記電力負荷と異なる模擬負荷の消費電力を制御可能な制御部を備える制御装置であって、前記制御部は、前記模擬負荷の消費電力を増加または減少させる電力増減制御を実行し、前記電力増減制御の開始した後における所定の時間帯において所定時間、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持し、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持する間に、前記調速機の制御によって前記発電機の発電電力を制御する。
【0014】
本発明の一態様に係る制御方法は、上記の発明において、調速機を備える内燃機関の駆動によって発電する発電機の発電電力を電力負荷に供給する場合に、消費電力を変更可能に構成されて前記発電機の発電電力を前記電力負荷とともに消費する、前記電力負荷と異なる模擬負荷の消費電力を制御可能な制御部が実行する制御方法であって、前記制御部が、前記模擬負荷の消費電力を増加または減少させる電力増減制御を実行し、前記電力増減制御の開始した後における所定の時間帯において所定時間、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持し、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持する間に、前記調速機の制御によって前記発電機の発電電力を制御する。
【0015】
本発明の一態様に係るプログラムは、調速機を備える内燃機関の駆動によって発電する発電機の発電電力を電力負荷に供給する場合に、消費電力を変更可能に構成されて前記発電機の発電電力を前記電力負荷とともに消費する、前記電力負荷と異なる模擬負荷の消費電力を制御可能な制御部に、前記模擬負荷の消費電力を増加または減少させる電力増減制御を実行させ、前記電力増減制御の開始した後における所定の時間帯において所定時間、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持させ、前記電力増減制御を停止または前記模擬負荷の消費電力を一定に維持する間に、前記調速機の制御によって前記発電機の発電電力を制御させることを実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発電システム、制御装置、制御方法、およびプログラムによれば、商用電力系統などからの受電の停止後などに求められる、発電機の発電電圧の確立や、短時間での電力負荷の投入を、より安定して行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0019】
まず、本発明の一実施形態による発電システムについて説明する。以下に説明する一実施形態は、エンジン発電機、模擬負荷、および制御部を備える発電システムに関するが、その他の発電システムであってもよい。エンジン発電機20は、調速機(図示せず)が設けられた内燃機関の駆動によって発電する。エンジン発電機は、発電電力を電力負荷に供給する発電時において、所定のエンジン制御部によって、出力が定格出力になるように制御される。本発明の一実施形態による発電システムは、制御装置が、エンジン発電機の発電電力の変化を低減するように、模擬負荷の消費電力を増加させたり減少させたりするシステムである。
図1は、本実施形態による発電システムの構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、一実施形態による発電システム1は、制御装置10、エンジン発電機20、模擬負荷消費電力調整器31によって調整される模擬負荷30、商用電力系統40、および電力負荷50を備える。発電システム1において、エンジン発電機20の出力側には、出力する電力を計測可能な発電電力計測部61が設けられている。電力負荷50の入力側には、供給される電力を計測可能な電力負荷消費電力計測部62が設けられている。模擬負荷消費電力調整器31の入力側には、供給される電力を計測可能な模擬負荷消費電力計測部63が設けられている。なお、模擬負荷消費電力計測部63は、模擬負荷30の入力側に設けてもよい。
【0021】
発電機としてのエンジン発電機20は、内燃機関21および発電機22を有する。エンジン発電機20は、燃料を用いた内燃機関としてのエンジンによって回転運動を発生させて、発電機の回転子を回転させることによって発電可能に構成される。なお、内燃機関21は、発電機22によって発電可能な機関であれば、エンジンなどの内燃機関に限定されない。
【0022】
模擬負荷30は、所定の電力を消費する例えば負荷抵抗器などから構成される。模擬負荷30は、エンジン発電機20の発電電力の少なくとも一部を消費することによって、エンジン発電機20の発電電力の変動を抑制して、安定化させるための負荷であり、電力負荷50とは独立して設けられる。なお、模擬負荷30は、エンジン発電機20の発電電力を消費する負荷である点に関しては、電力負荷50と共通する。模擬負荷30は、模擬負荷消費電力調整器31によって、負荷の大きさを調整可能に構成される。模擬負荷消費電力調整器31は、制御装置10から入力される調整信号に基づいて、模擬負荷が消費する電力を調整する装置である。調整信号は、模擬負荷30の消費電力の増減を制御するための情報を含む。
【0023】
商用電力系統40は、例えば電力会社などからの電力系統である。なお、本明細書においては、常用電源なども含めて、商用電力系統40と称する。電力負荷50は、設備を稼働させるために必要な電力が供給される負荷であり、具体的に例えばポンプやモータなどの負荷である。なお、電力負荷50は、例えばポンプやモータに限定されず、従来公知の種々の負荷が用いられる。
【0024】
発電電力計測部61は、エンジン発電機20に接続された電力供給線に接続され、エンジン発電機20が出力した発電電力の計測値を制御装置10に出力する電力計である。電力負荷消費電力計測部62は、電力負荷50に接続された電力供給線に接続され、電力負荷50が消費した消費電力の計測値を制御装置10に出力する電力計である。模擬負荷消費電力計測部63は、模擬負荷30または模擬負荷消費電力調整器31に接続された電力供給線に接続され、模擬負荷30が消費した消費電力の計測値を制御装置10に出力する電力計である。なお、発電電力計測部61、電力負荷消費電力計測部62、および模擬負荷消費電力計測部63は、電力の増減を評価可能な計測器であれば、電力計に限定されず、例えば電流計などの種々の計測器を採用することが可能である。
【0025】
制御装置10は、エンジン発電機20の発電電力、電力負荷50の消費電力、および模擬負荷30の消費電力の計測値を取得して、模擬負荷消費電力調整器31によって模擬負荷30の消費電力の増減を制御する装置である。
図2は、本実施形態による発電システム1の制御装置10を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、制御装置10は、判定制御部11、加算部12、差分演算部13、制御感度演算部14、制御出力演算部15、および記憶部16を備える。制御装置10には、それぞれの発電電力計測部61、電力負荷消費電力計測部62、および模擬負荷消費電力計測部63から計測値が入力される。制御装置10は、模擬負荷消費電力調整器31に、制御信号を出力する。
【0027】
判定制御部11、加算部12、差分演算部13、制御感度演算部14、および制御出力演算部15は、具体的に、ハードウェアを有する、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。
【0028】
記憶部16は、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、もしくはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部16を構成してもよい。記憶部16には、制御装置10の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による模擬負荷30の消費電力の増減制御を実現する電力増減制御プログラムも含まれる。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD−ROM、DVD−ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0029】
制御装置10においては、記憶部16に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することによって、所定の目的に合致した機能を実現できる。本実施形態においては、制御装置10によるプログラムの実行によって、判定制御部11、加算部12、差分演算部13、制御感度演算部14、および制御出力演算部15の処理が実行される。
【0030】
判定制御部11は、発電電力計測部61から取得する発電電力の計測値と、電力負荷消費電力計測部62および模擬負荷消費電力計測部63の少なくとも一方から取得する消費電力の計測値とに基づいて、制御モードを判定して選択する。判定制御部11は、選択した制御モードに基づいて、模擬負荷消費電力調整器31に制御信号を出力して制御する。
【0031】
本実施形態による発電システム1における判定制御部11は、例えば以下の3つの電力制御モード部を有する。本実施形態による発電システム1が備える制御装置10の判定制御部11が、以下の電力制御モードによる制御の中核的な役割を果たす。具体的にまず、判定制御部11は例えば、第1の電力制御モード部111、第2の電力制御モード部112、および第3の電力制御モード部113から、1つの制御モード部を選択する。続いて判定制御部11は、選択した電力制御モード部が実行する電力制御モードに基づいて模擬負荷消費電力調整器31を制御することによって、模擬負荷30の消費電力を制御する。なお、第1の電力制御モード部111、第2の電力制御モード部112、および第3の電力制御モード部113のそれぞれが実行する、それぞれの電力制御モードの詳細については後述する。
【0032】
加算部12は、電力負荷消費電力計測部62の計測値と、模擬負荷消費電力計測部63の計測値とを取得して加算し、差分演算部13に出力する。すなわち、加算部12は、模擬負荷30の消費電力と電力負荷50の消費電力との合計の消費電力を、差分演算部13に出力する。
【0033】
差分演算部13は、模擬負荷30と電力負荷50との合計の消費電力と、エンジン発電機20の発電電力との差分を演算して、制御出力演算部15に出力する。換言すると、差分演算部13は、発電電力に対する消費電力の差分を演算する演算部である。差分演算部13が発電電力と消費電力との差分を算出することによって、エンジン発電機20による発電電力を略一定にするために必要な模擬負荷30に対する消費電力の制御値を算出できる。
【0034】
制御感度演算部14は、差分演算部13によって求められた、発電電力を略一定にするために必要な模擬負荷30の消費電力の制御値を、模擬負荷消費電力調整器31に出力する感度を演算する。すなわち、制御感度演算部14は、模擬負荷30の消費電力の制御値をどの程度の感度で出力するかを演算する。制御感度演算部14は、演算によって得られた感度の情報を制御出力演算部15に出力する。
【0035】
制御出力演算部15は、差分演算部13によって得られた、発電電力を略一定にするために必要な模擬負荷30の消費電力の制御値と、制御感度演算部14によって得られた感度の情報とを含む制御情報を生成する。制御出力演算部15は、生成した制御情報を判定制御部11に出力する。判定制御部11においては、制御出力演算部15において得られた模擬負荷消費電力調整器31に出力する制御情報を適切な制御信号に変換して、模擬負荷消費電力調整器31に出力する。
【0036】
次に、以上のように構成された制御装置10によって実行される制御方法としての模擬負荷30の消費電力(以下、廃棄電力という)の増減制御について説明する。
図3は、本実施形態による制御装置10による制御方法を説明するためのフローチャートである。
図4は、本実施形態による制御装置10による制御の一例を示すグラフである。
【0037】
図3および
図4に示すように、まず、ステップST1において、電力負荷50がエンジン発電機20から解列した状態で、所定のエンジン制御部(図示せず)によってエンジン発電機20を起動させて自立運転を開始させる。ここで、エンジン発電機20の起動方法としては、電力負荷50を有する施設や、商用電力系統40などにおける停電を検知したときに、エンジン発電機20が電力負荷50から解列した状態で無負荷運転に至ることができる方法が該当し、種々の方法を採用できる。例えば、エンジン発電機20が起動前の停止状態である場合において、電力負荷50を有する施設や、商用電力系統40などにおける停電を検知したときに、所定のエンジン制御部(図示せず)によって自動でエンジン発電機を起動させて、無負荷運転に至る方法である。他の方法としては、エンジン発電機20が系統連系下において連続運転している場合において、電力負荷50を有する施設や、商用電力系統40などにおける停電を検知したときに、所定のエンジン制御部(図示せず)によって電力負荷50を遮断して無負荷運転を維持する方法である。エンジン発電機20の起動した時点(T=0)から起動時間だけ経過すると(T=T
0)、エンジン発電機20が整定して発電電力が安定する。すなわち、起動時点T
0において、エンジン発電機20の発電電力の全ての出力を模擬負荷30に消費可能な条件が成立する。
【0038】
次に、ステップST2に移行して制御装置10は、所定の開始時点(T=T
1)においてエンジン発電機20の発電電力を電力負荷50に投入する。これにより、電力負荷50が消費する消費電力(以下、負荷電力という)が増加する。制御装置10の判定制御部11は、エンジン発電機20の電力を電力負荷50に投入した時点を、第1時間帯の開始時点(T=T
1)とする。
【0039】
ステップST3に移行して判定制御部11は、電力負荷50への電力の投入の開始に伴って第1の電力制御モード部111を選択して、電力制御モードを第1の電力制御モードとする。第1の電力制御モードは、開始時点T
1から廃棄電力の減少を開始する電力制御モードである。すなわち、電力負荷50において負荷電力は、投入の開始時点から過渡的に増加する。そのため、判定制御部11の第1の電力制御モード部111は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷30の消費電力(廃棄電力)を、電力負荷50の負荷電力の増加分だけ低下させるように変更する。これにより、電力負荷50が消費する負荷電力に合わせて、廃棄電力が減少される。
【0040】
次に、ステップST4に移行して判定制御部11は、電力負荷50が消費する負荷電力の変動を監視して、電力負荷50の負荷電力が極大点(以下、ピーク電力という)に近い電力まで到達したか否か、すなわち消費電力が略極大となる略ピーク電力であるか否かを判定する。略ピーク電力とは、検出されたピーク電力に対して設定された所定範囲内の電力であり、ピーク電力を含む所定範囲内の電力を意味する。ステップST4は、判定制御部11が、電力負荷50の負荷電力は略ピーク電力に到達したと判定する(ステップST4:Yes)まで、繰り返し実行される。なお、略ピーク電力の代わりに、負荷電力のピーク電力を検出するようにしてもよい。
【0041】
すなわち、ステップST3,ST4を実行する第1時間帯においては、電力負荷50の投入に伴って、エンジン発電機20の出力を一定に維持するために、投入負荷の電力変動の挙動に合わせて、模擬負荷30の廃棄電力を速やかに減少させる。エンジン発電機20は、模擬負荷30の廃棄電力と、電力負荷50の負荷電力との合計の電力になるように発電電力を出力するため、エンジン発電機20の発電電力を略一定に維持することができる。
【0042】
ステップST4において判定制御部11が、電力負荷50の負荷電力が略ピーク電力に到達したと判定した場合(ステップST4:Yes、T=T
2)、第1時間帯(T=T
1〜T
2)が終了して、ステップST5に移行する。
【0043】
ステップST5において判定制御部11は、第2の電力制御モード部112を選択して、第2の電力制御モードに移行する。本実施形態において判定制御部11は、第2の電力制御モードの開始時点(T=T
2)、すなわち電力負荷50の負荷電力が略ピーク電力に到達したと判定された時点を、第2時間帯の開始時点(T=T
2)とする。第2の電力制御モードは、模擬負荷30の廃棄電力の減少を所定時間停止させる電力制御モードである。または、第2の電力制御モードは、模擬負荷30の負荷を所定時間一定に維持する電力制御モードである。すなわち、第2の電力制御モード部112は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷30の廃棄電力が減少しない状態または一定になるように維持する。一方、電力負荷50において負荷電力は、ピーク電力に到達した後に漸近的に減少していく。この場合、廃棄電力が一定であることから、調速機によってエンジン発電機20が制御され、電力負荷50の負荷電力の低下に追従して、エンジン発電機20の発電電力も低下する。
【0044】
次に、
図3に示すステップST6に移行して判定制御部11は、発電電力計測部61から入力される発電電力の計測値に基づいて、エンジン発電機20の発電電力が、あらかじめ設定されている発電電力の規定値まで低下したか否かを判定する。ステップST6は、判定制御部11が、エンジン発電機20の発電電力は規定値まで低下したと判定する(ステップST6:Yes)まで、繰り返し実行される。
【0045】
すなわち、ステップST5,ST6を実行する第2時間帯においては、投入した電力負荷50がピーク電力に到達した後、模擬負荷30の廃棄電力は設定が維持される。この際、電力負荷50の負荷電力への追従は、エンジン発電機20に対して回転数を一定に制御する制御(回転数一定制御)、いわゆるガバナ制御によって対応される。模擬負荷30の廃棄電力を一定に維持する制御は、エンジン発電機20が安定して稼働する発電電力以上で、エンジン発電機20の定格出力未満の規定出力である規定値に到達するまで継続される。
【0046】
ステップST6において判定制御部11が、エンジン発電機20の発電電力が、規定値まで低下したと判定した場合(ステップST6:Yes)、第2時間帯(T=T
2〜T
3)が終了して、ステップST7に移行する。
【0047】
ステップST7において判定制御部11は、第3の電力制御モード部113を選択して、第3の電力制御モードに移行する。本実施形態において判定制御部11は、第3の電力制御モードの開始時点(T=T
3)、すなわちエンジン発電機20の発電電力が、あらかじめ設定された発電電力の規定値まで低下したと判定された時点を、第3時間帯の開始時点(T=T
3)とする。第3の電力制御モードは、模擬負荷30の廃棄電力を増加させる電力制御モードである。すなわち、第3の電力制御モード部113は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷30の廃棄電力を増加させる。一方、電力負荷50における負荷電力は、継続して漸近的に減少していく。そこで、第3の電力制御モード部113は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷30における廃棄電力を、負荷電力の増加率の絶対値、すなわち減少率よりも大きい増加率で増加させる。換言すると、模擬負荷30の廃棄電力の増加率を、電力負荷50の負荷電力の減少率より大きくする。この場合、負荷電力の減少率よりも大きい増加率で廃棄電力を増加させていることにより、負荷電力と廃棄電力との合計は増加し、調速機によってエンジン発電機20の発電電力の出力が制御されて、負荷電力と廃棄電力との合計に倣って、エンジン発電機20の発電電力は増加する。なお、模擬負荷30の廃棄電力の増加率は、エンジン発電機20が許容可能な電力負荷投入率以下とする。許容可能な電力負荷投入率は、エンジン発電機20の特性によって異なる値となる。
【0048】
次に、ステップST8に移行して判定制御部11は、発電電力計測部61から入力される発電電力の計測値に基づいて、エンジン発電機20の発電電力が整定したか否かを判定する。ステップST8は、判定制御部11が、エンジン発電機20の発電電力は整定したと判定する(ステップST8:Yes)まで、繰り返し実行される。
【0049】
すなわち、ステップST7,ST8を実行する第3時間帯においては、エンジン発電機20の発電電力が増加するように、電力負荷50の負荷電力の低下よりも模擬負荷30の廃棄電力の増加が大きくなるようにする。換言すると、エンジン発電機20の発電電力が規定値に到達した時点(T=T
3)から、模擬負荷30の廃棄電力の設定を増加させることにより、エンジン発電機20を改めて略定格出力に戻す制御を行う。この時、電力負荷50の負荷電力は、エンジン発電機20の発電電力が整定に向かうのにしたがって減少する。そのため、第3の電力制御モード部113が、模擬負荷30における廃棄電力を、負荷電力の増加率の絶対値(減少率)よりも大きい増加率で増加させることによって、エンジン発電機20を略定格出力に戻すことができる。
【0050】
ステップST8において判定制御部11は、エンジン発電機20の発電電力が整定したと判定した場合(ステップST8:Yes)、判定した時点を第3時間帯の終了時点T
4とし、第3時間帯(T=T
3〜T
4)が終了する。以上により、本実施形態による電力制御処理が終了する。
【0051】
その後、エンジン発電機20に対して、他の電力負荷50が投入された場合には、第3時間帯の終了時点、すなわち第3の電力モードの終了時点T
4を、上述した第1時間帯より前の時点T0と同様に設定することができる。その後、上述した電力制御処理と同様にして、第1〜第3時間帯においてそれぞれ、第1〜第3の電力制御モードを繰り返し実行することができる。
【0052】
以上説明した、本発明の一実施形態によれば、制御装置10が、電力負荷50の負荷電力の変化がより小さくなるように模擬負荷30の廃棄電力を増減させる電力増減制御を実行する際に、実行の開始後の一定時間帯において一時的に、電力増減制御を停止または一定値に維持し、調速機によってエンジン発電機20の出力を制御するガバナ制御を行っている。これにより、電力負荷50の負荷電力の変化に対して、模擬負荷30の廃棄電力の増加または減少の制御が遅れることに起因した、エンジン発電機20の発電電力に関して余剰または不足の変動が生じるという現象の発生を抑制できる。そのため、エンジン発電機20の発電電力の変動が抑制されて、エンジン発電機20の駆動が安定化する。したがって、商用電力系統40などからの受電が停止した後に、エンジン発電機20の発電電圧を安定して確立でき、電力負荷50の投入をより安定して行うことができる。
【0053】
また、上述した一実施形態によれば、第1時間帯(T=T
1〜T
2)における模擬負荷30の廃棄電力の減少を、第2時間帯(T=T
2〜T
3)において一時的に停止させたり、廃棄電力を一時的に一定に維持したりしていることにより、廃棄電力の過剰な減少を抑制できるので、エンジン発電機20の発電電力の変動を抑制でき、エンジン発電機20を安定して稼働させることができる。
【0054】
また、上述した一実施形態によれば、電力負荷50の負荷電力のピーク時、またはピーク時に近い時点である第2時間帯の開始時点T
2から、模擬負荷30の廃棄電力の減少を一時的に停止させたり、廃棄電力を一時的に一定に維持したりしていることにより、時点T
2以後において、模擬負荷30の廃棄電力の減少が進行せず、廃棄電力の過剰な減少を抑制できるので、エンジン発電機20の発電電力の変動を抑制でき、エンジン発電機20を安定して稼働させることができる。
【0055】
さらに、上述した一実施形態によれば、第1時間帯と第2時間帯との境界は、電力負荷50の負荷電力がピーク電力に到達する前後における制御装置10による模擬負荷30の廃棄電力の増減の切り替わりに伴うエンジン発電機20の発電電力の不安定化を抑制するように設定されている。また、第2時間帯と第3時間帯との境界は、エンジン発電機20が安定して運転を継続可能な発電電力、すなわち模擬負荷30および電力負荷50の消費電力の合計がエンジン発電機20を安定して運転可能な負荷以上になるように設定されている。そのため、調速機によってエンジン発電機20の発電電力を制御している第2時間帯において生じるエンジン発電機20の発電電力の減少または変動をより低減でき、エンジン発電機20の発電電力を、より安定化させることができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0057】
(記録媒体)
上述の一実施形態において、制御装置10が実行する処理方法を実行させるプログラムを、コンピュータその他の機械などの装置(以下、コンピュータなど、という)が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータなどに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、当該コンピュータなどが制御装置10として機能する。ここで、コンピュータなどが読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラムなどの情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータなどから読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちのコンピュータなどから取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、BD、DAT、磁気テープ、フラッシュメモリなどのメモリカードなどがある。また、コンピュータなどに固定された記録媒体としてハードディスク、ROMなどがある。さらに、SSDは、コンピュータなどから取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータなどに固定された記録媒体としても利用可能である。
【0058】
また、一実施形態による制御装置10に実行させるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0059】
(その他の実施形態)
上述した一実施形態においては、上述した「部」を「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御回路に読み替えることができる。
【0060】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「次に」、「その後」、「続いて」などの表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本実施の形態を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。すなわち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0061】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本開示のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【解決手段】発電システムは、調速機を備える内燃機関の駆動によって発電する発電機と、内燃機関が駆動している状態で発電機の発電電力を電力負荷に供給する場合に、消費電力を変更可能に構成され、発電機の発電電力を電力負荷とともに消費する模擬負荷と、模擬負荷の消費電力を制御可能な制御部と、を備え、制御部は、模擬負荷の消費電力を増加または減少させる電力増減制御を実行し、電力増減制御の開始した後における所定の時間帯において所定時間、電力増減制御を停止または模擬負荷の消費電力を一定に維持し、電力増減制御を停止または模擬負荷の消費電力を一定に維持する間に、調速機の制御によって発電機の発電電力を制御する。