(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1演算部は、前記電力系統の複数のノードのいずれかのノードにおける電力パラメータが取得できない場合に、電力パラメータが取得できないノードにおける欠落データを補完する
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置100の構成例を示す図である。本実施形態の制御装置100は、電力系統2に事故が発生した場合を想定して、それぞれの分散電源10−1および10−2が出力すべき有効電力および無効電力を予め定められた周期で算出しておく。そして、実際に事故が起きた場合には、予め算出しておいた有効電力および無効電力を分散電源10−1および10−2に出力させるための指令信号を出力する。
【0016】
事故が起きた場合には、分散電源10−1および10−2は、有効電力出力を抑制する。制御装置100は、出力すべき有効電力の情報として、分散電源10−1および10−2における出力抑制量を予め算出しておいてよい。制御装置100は、実際に事故が起きた場合に、予め算出しておいた出力抑制量に応じた情報を含む指令信号を出力してよい。出力抑制量は、分散電源10−1および10−2のそれぞれにおいて、有効電量を抑制する量に関係する情報であればよい。出力抑制量は、有効電力の目標値、現在の有効電力からの減縮量、または減衰率であってよい。
【0017】
制御装置100は、1または複数のコンピュータで構成されてよい。コンピュータは、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータであってよい。
【0018】
電力系統2には、複数の分散電源10−1および10−2が電気的に接続されている。電力系統2には、少なくとも一つの従来電源20が接続されてよい。分散電源10−1および10−2の個数、ならびに従来電源20の個数は、
図1に示される場合に限られない。
【0019】
分散電源10−1および10−2(分散電源10と総称する場合がある)は、分散配置される小規模な発電設備である。分散電源10は、分散型電源と称される場合がある。分散電源10は、ソーラパネルによる太陽光発電装置、風力発電装置、および燃料電池発電装置等の電源であってよい。
【0020】
分散電源10−1は、分散電源本体11−1および電力変換装置12−1を備える。分散電源本体11−1は、電力を発生させる。電力変換装置12−1は、分散電源本体11−1で発生した電力を電力系統2に応じた電力に変換する。電力変換装置12−1は、PCS(Power Conditioning System)あるいはインバータと呼ばれる装置であってよい。分散電源10−2も、同様に、分散電源本体11−2および電力変換装置12−2を備える。
【0021】
従来電源20は、系統電源または非分散電源とも呼ばれる。従来電源20は、電力系統2を管理する電力業者により提供された電力を供給する設備であってよい。従来電源20は、一例として発電所でもよいし、変電所でもよいし、変圧器でもよい。電力系統2は、従来電源20の配下にある配電系統であってよい。分散電源10−1、10−2、および従来電源20は、それぞれ節点13−1、節点13−2、および節点23で電力系統2と接続されるノードを構成する。
【0022】
電力系統2には、事故検出部14−1および14−2が設けられてよい。事故検出部14−1および14−2(事故検出部14と総称する場合がある)は、電力系統2内の予め定められた複数の位置に設置されてよい。事故検出部14−1は、センサ部15−1と、開閉器16−1とを含んでよい。同様に、事故検出部14−2は、センサ部15−2と、開閉器16−2とを含んでよい。事故検出部14は、過負荷リレーとも呼ばれる。電力系統2における送電線に流れる電力あるいは電流をセンサ部15が計測する。事故検出部14は、センサ部15による計測値が上限値(配線容量)を超過している時間と超過している逸脱量とを積算した積算値を算出してよい。事故検出部14は、積算値が、予め定められた値を超えたときに、事故が発生したと判断してよい。開閉器16−1および16−2は、事故が発生したと判断された場合に電力供給を遮断する。
【0023】
図2は、電力系統2における事故時における応答例の一例を示す図である。縦軸は、送電線潮流、すなわち電力を示す。横軸は時間を示す。
図2に示される例では、事故が発生した後、電力の出力波形は、発電機の制御等により振動する。
図2においては、事故が発生してから1秒から2秒の間に開閉器16が電力系統2を遮断する。
【0024】
電力系統2において事故が発生した場合に、送電線の適正な管理のためには、分散電源10を電力系統2から解列する、または分散電源10の出力を抑制する必要がある。一般に、電力系統2は、分散電源10から無効電力を調達することによって、電圧を適切な値に維持している。したがって、分散電源10のすべてが解列されてしまうと、無効電力が提供されなくなるため、電圧を適切な値に維持することが困難となる。
【0025】
また、電力系統2に接続される分散電源10の数が多い場合には、送電線に流れる潮流の大部分を分散電源からの電力が占める。したがって、電力系統2において事故が発生した場合に、送電線の潮流管理および分散電源の出力抑制が重要になる。必要以上に、分散電源を出力抑制すると、発電システムにおいて連鎖的な影響を与えるおそれがある。
【0026】
1つの送電線事故をきっかけとして、無効電力低下に伴う電圧低下、および必要以上の出力抑制が生じると、場合によっては、発電システムの連鎖的な脱落につながる可能性もある。したがって、制御装置100は、それぞれの分散電源10における適切な出力抑制量、および電力系統2における電圧維持に必要な適切な無効電力を算出することが望ましい。
【0027】
制御装置100が、各分散電源10における適切な出力抑制量および適切な無効電力を算出するためには、制御装置100は、最適潮流計算を実行することが好ましい。一方で、送電線の過電流耐量時間を考慮すれば、事故が発生したときの適切な出力抑制量および無効電力について、事故が発生してから2秒以下、より好ましくは1秒以下の時間内に取得することが望ましい。しかしながら、最適潮流計算を含む計算を開始してから完了するまで、2秒以上かかってしまう場合がある。
【0028】
制御装置100は、定周期で、仮想的な事故の種類に対応して最適潮流計算を含む計算を予め実行しておく。実際に事故が発生した場合には、制御装置100は、予め計算しておいた最適化問題の解の中から、事故の種類に合う解を選択する。そして、制御装置100は、選択した解を指令値として出力する。最適化問題の解は、出力抑制量ΔPおよび無効電力Qを含んでいてよい。上記の手順により本来であれば、時間がかかる最適化問題の解を指令値として指令することができる。
【0029】
制御装置100は、
図1に示されるとおり、第1演算部110および指令出力部120を備える。制御装置100は、さらに、第2演算部130を備えてよい。第1演算部110は、電力系統2に事故が発生した場合の、それぞれの分散電源10が出力すべき無効電力を予め算出する。第1演算部110は、電力系統2に事故が発生した場合の、それぞれの分散電源10が有効電力を抑制すべき出力抑制量を予め算出する。
【0030】
指令出力部120は、電力系統2に事故が発生したことを検出した場合に、それぞれの分散電源10に、第1演算部110が予め算出した無効電力を出力させるための指令信号を出力する。本例では、指令信号は、さらに、有効電力の出力抑制量に応じた情報を含んでよい。
【0031】
第2演算部130は、電力系統2の複数のノードにおける電力パラメータを含む系統データを第1演算部110に入力する。一例において、第2演算部130は、データ取得部132およびデータ処理部134を備える。データ取得部132は、評価対象の電力系統2についての系統データを周期的に取得する。系統データは、電力系統2の複数のノード、すなわち分散電源10および従来電源20についての電力パラメータを含む。電力パラメータは、電圧、電流、有効電力、および無効電力の少なくとも一つを含む。例えば、電力パラメータは、電圧、有効電力、および無効電力を含む。
【0032】
データ取得部132は、それぞれの分散電源10の電力変換装置12から電力パラメータを取得してもよく、その他のセンサから電力パラメータを取得してもよい。系統データは、事故情報を含んでよい。事故情報は、センサ部15−1およびセンサ部15−2によって測定された電流等の特性値に関する情報であってよい。データ取得部132は、事故情報を検出した場合に事故検出トリガを発生してよい。事故検出トリガは、事故が発生した旨と、事故の種類についての情報とを含んでよい。
【0033】
第2演算部130は、サンプリング周期と呼ばれる一定周期ごとに系統データを取得する。サンプリング周期は、例えば、2秒以下であり、より好ましくは1秒以下である。また、系統データのうち電力パラメータのサンプリング周期と、事故情報のサンプリング周期とが異なっていてもよい。
【0034】
データ処理部134は、データ取得部132によって取得されたデータを加工する。例えば、データ処理部134は、データ形式の変更、ノイズ除去、および補完等の処理を実行する。データ処理部134によって処理されたデータは、系統データとして、第1演算部110に受け渡される。系統データは、有効電力P、無効電力Q、電圧V、または電流I等の特性値を含んでよい。
【0035】
第1演算部110は、一例において、データ補完部111、最適潮流計算部112、記憶部113、および指令値格納部114を備える。データ補完部111は、複数のノードのいずれかのノードにおける電力パラメータが取得できない場合に、他のノードまたは他の時刻における系統データに基づいて、系統データの欠落データを補完する。具体的には、いずれかのノードにおける電力パラメータが取得できない場合には、当該ノードにおける系統データに欠落データが生じる。この場合、広域データ処理が実行されてよい。広域データ処理は、当該ノードにおける特定の時刻における欠落データを空間または時間的に隣接する他の系統データに基づいて算出する処理であってよい。一例において、空間的に隣接する一又は複数のノードにおける系統データから、当該ノードにおける欠落データを状態推定してよい。
【0036】
最適潮流計算部112は、最適潮流計算(OPF:Optimal Power Flow)を実行する。電力系統2の運用には、各ノードの電圧値や各送電線の潮流値、および各電源の出力を適正な範囲内におさめなければならない等の複数の運用上の制約が存在する。このような複数の制約をすべて満足させつつ、目的を最適化するように電力系統2が運用されることが理想的である。最適潮流計算(OPF:Optimal Power Flow)は、種々の制約条件を満足させながら、所定の目的を最適化する運用状態(潮流断面)を決定する。
【0037】
本例では、最適潮流計算部112は、電力系統2における2種類以上の事故A、事故Bのそれぞれに対して、各分散電源10が出力すべき有効電力、無効電力、および電圧を予め算出する。一例において、最適潮流計算部112は、電力系統2における2種類以上の事故A、事故Bを考慮したそれぞれの運用状態(潮流断面)において、各分散電源10が有効電力を出力抑制すべき量である出力抑制量、および無効電力出力を算出してよい。
【0038】
最適潮流計算部112は、想定される事故別に、各分散電源10が出力すべき無効電力の情報と、抑制するべき出力抑制量に応じた情報とを含む指令値セットを算出してよい。事故の種類には、切れた送電線の場所の違い、および本数の違い等が含まれてよい。第1演算部110は、事故が生じていない通常時における各分散電源10の有効電力の出力抑制量および無効電力を算出してよい。
【0039】
記憶部113は、最適潮流計算部112が最適潮流計算するために必要な情報を予め格納する。記憶部113は、必要に応じて、電力系統における電力系統2の複数のノード、すなわち分散電源10および従来電源20の接続箇所の情報を予め記憶してよい。
【0040】
指令値格納部114は、互いに種類の異なる事故Aおよび事故Bのそれぞれに対する各分散電源10における有効電力の出力抑制量および無効電力等の指令値セット115−1および115−2を格納するデータベースであってよい。指令値格納部114は、事故が生じていない通常時での各分散電源10における有効電力の出力抑制量および無効電力出力等の指令値セット116を格納してもよい。
【0041】
第1演算部110は、系統データに基づいて、系統データのデータ周期より長い周期で、分散電源10に出力させるべき無効電力および出力抑制量等の指令値を更新する。系統データのデータ周期とは、データのサンプリング周期であってよく、より具体的には、第2演算部130が、系統データを取得するサンプリング周期であってよい。したがって、第1演算部110による指令値の更新周期は、第2演算部130によるデータのサンプリング周期より長い。したがって、第1演算部110は長周期演算部として機能し、第2演算部130は短周期演算部として機能する。
【0042】
第2演算部130による短周期演算におけるサンプリング周期は1から2秒であってよい。第1演算部110による長周期演算周期としての更新周期は、2秒以上である。長周期演算周期は、例えば、10秒、1分、10分、または30分であってよい。長周期演算周期は、対象とする電力系統2の負荷変動または出力変動の度合いによって予め定めてよい。
【0043】
指令出力部120は、選択部122および送信部124を備える。指令出力部120は、割り込み処理を実行する割込演算部であってよい。指令出力部120は、割り込み情報として事故検出トリガを受信する。選択部122は、発生した事故の種類に応じて、指令値格納部114の中に格納されている指令値セットを選択する。選択部122は、事故Aが発生した場合には、事故Aに応じて各分散電源10に対する指令値セット115−1を選択する。同様に、選択部122は、事故Bが発生した場合には、事故Bに応じて各分散電源10に対する指令値セット115−2を選択する。
【0044】
送信部124は、事故の内容に応じて選択部122によって選択された指令値セット115に含まれる指令値に基づいて指令信号を出力する。送信部124は、それぞれの分散電源10が出力すべき無効電力値および抑制すべき出力抑制量を含む指令信号を出力してよい。送信部124は、さらに、事故が生じていない通常時での各分散電源10における有効電力および出力抑制量を含む指令信号を出力してよい。
【0045】
図3は、本発明の実施形態に係る制御方法の一例を示すフローチャートである。まず、第2演算部130による第2演算段階を説明する。第2演算段階は、短周期演算処理と称される。第2演算部130は、評価対象の電力系統2についての系統データを周期的に取得する(ステップS101)。第2演算部130は、系統データ中の事故情報の有無に基づいて、電力系統2の事故を検出する(ステップS102)。電力系統2の事故が発生した場合には(ステップS102:YES)、第2演算部130は、事故検出トリガを生成する(ステップS103)。事故検出トリガは、事故が発生した旨と、事故の種類についての情報とを含んでよい。
【0046】
電力系統2において事故が発生していない場合(ステップS102:NO)、第2演算部130は、必要に応じて、データ取得部132によって取得されたデータを加工する(ステップS104)。第2演算部130は、電力系統2の複数のノードにおける電力パラメータを含む系統データを第1演算部110に入力する(ステップS104)。ノードには、複数の分散電源10および少なくとも一つの従来電源20が含まれてよい。第2演算部130は、ステップS101からステップS104の処理は、周期的に繰り返される。周期は、2秒以下であり、より好ましくは1秒以下である。
【0047】
次に、第1演算部110による第1演算段階である長周期演算処理について説明する。第1演算部110は、第2処理部130から系統データを取得する。第1演算部110は、複数のノードのいずれかのノードにおける電力パラメータが取得できないことに起因して系統データに欠落がある場合には(ステップS201:YES)、時間または空間的に隣接する系統データを用いて、系統データの欠落データを補完してよい(ステップS202)。
【0048】
補完が正常に完了できなかった場合には(ステップS203:NO)、処理がステップS201に戻る。第1演算部110は、第2処理部130から新たに系統データを取得する。なお、ステップS201からステップS203の処理は、省略されてもよい。系統データに一時的な欠落がある場合には、補完処理(ステップS202)をすることなく、処理がステップS201に戻ってよい。この場合、第1演算部110は、時系列的に欠落のない新たな系統データを取得するのを待って処理を開始するように構成してもよい。
【0049】
第1演算部110の最適潮流計算部112は、最適潮流計算を実行する(ステップS204)。本例では、最適潮流計算部112は、平常時の送電損失、平常時の出力抑制量、事故時の出力抑制量、平常時の電力逸脱量、および事故時の電力逸脱量の合計を評価関数とする。最適潮流計算部112は、制約条件を満たしつつ評価関数を最小化できる解を算出する。
【0050】
本例においては、評価関数は、以下の式(1)のように定式化される。本例では、評価関数としては、平常時および事故時において同じ関数を用いる。制約条件は、平常時と事故時とで異なる条件を用いる。なお、ダッシュがついた変数は、事故時の変数であることを意味する。
【数1】
【0051】
本例において、平常時における等式制約として、需給バランスを考慮するための需給バランス関係式と、潮流方程式とが考慮される。需給バランス関係式は、以下のように式(2−1)および式(2−2)で示される。
【0053】
なお、式(2−1)および式(2−2)において、ブランチ集合εは、節点cに直接的に接続される2つの分岐(i、j)の集合(c、i、j)を意味する。また、Vi、Vjは、節点cに直接的に接続されている分岐のうちノードi、ノードjの電圧である。シャントコンダクタンスおよびサセプタンスは、ノードに接続された調整可能なRL要素(抵抗、インダクタンス成分)を意味する。たとえば、RL要素は、変電所等にある調相設備を意味してよい。
【0054】
潮流方程式は、以下のように式(3−1)、式(3−2)、式(3−3)、および式(3−4)で示される。
【0056】
なお、各ノードiにおいて、自ノードiから他ノードjへ電力が出ていく場合を式(3−1)および式(3−3)が示し、他ノードjから自ノードiに電力が入ってくる場合を式(3−2)および式(3−4)が示している。なお、ブランチijcにおけるコンダクタンスおよびサセプタンスは、送電線に存在するRL要素であり、例えば、送電線の抵抗、インダクタンス成分を数値で表せたものである。ブランチijcにおけるブランチチャージングサセプタンスは、送電線に存在するコンデンサ(C)要素である。
【0057】
平常時における不等式制約としては、各変数の上下限、発電機出力の上下限、運用上の制約条件が設定されてよい。本例では、送電線容量制約、電圧制約、分散電源の有効電力制約、出力抑制量の有効電力制約、分散電源の無効電力制約、および分散電源の皮相電力制約が考慮される。送電線容量制約は、以下の式(4)で示される。電圧制約は、以下の式(5)で示される。分散電源の有効電力制約は、以下の式(6)で示される。出力抑制量の有効電力制約は、以下の式(7)で示される。分散電源の無効電力制約は、以下の式(8)で示される。分散電源の皮相電力制約は、以下の式(9)で示される。
【0059】
一方、それぞれの事故時における等式制約としては、以下のとおり、需給バランスを考慮するための需給バランス関係式と、潮流方程式とが考慮される。需給バランスを考慮するための需給バランス関係式は、以下のように、数(10−1)および数(10−2)として示される。
【0061】
事故時における潮流方程式は、以下のように式(11−1)、式(11−2)、式(11−3)、および式(11−4)で示される。
【0063】
事故時における不等式制約としては、各変数の上下限、発電機出力の上下限、運用上の制約条件が設定されてよい。本例では、送電線容量制約である式(12)、電圧制約である式(13)、分散電源の出力抑制量の制約である式(14)、分散電源の無効電力制約である式(15)、および分散電源の皮相電力制約である式(16)が考慮されてよい。なお、ノードiが解列される場合は、各不等式の上限および下限が0になる。したがって、解列される分散電源10から出力される有効電力および無効電力も0となる。
【0065】
以上のような式(1)、および式(10−1)から式(16)による最適潮流計算は、想定される事故ごとに予め実行される。想定される事故として、送電線の断線(L通り)および電源脱落(M通り)が想定される場合は、N通り(=L+M)の事故ごとに予め最適潮流計算を実行しておくことができる。
【0066】
図3において、第1演算部110は、最適潮流計算を実行する。第1演算部110は、最適潮流計算によって、それぞれの想定事故別に指令値として、無効電力および出力抑制量を予め生成して、周期的に更新する(ステップS205)。また、本例において、第1演算部110は、式(1)から式(9)を用いて、平常時における最適潮流計算を実行する。第1演算部110は、平常時における指令値として、無効電力および出力抑制量を生成する。第1演算部110は、平常時における指令値を生成したことを示すための平常時トリガを生成する(ステップS206)。
【0067】
なお、第1演算部110は、想定される事故ごとに最適潮流計算(OPF)を用いて出力抑制量および無効電力を周期的に予め計算しておくものであればよく、評価関数、等式制約、および不等式制約は、式(1)から式(16)に示される式に限られない。
【0068】
次に、指令出力部120による指令出力段階について説明する。指令出力部120は、事故検出トリガを受信することによって、電力系統2に事故が発生したことを検出する。指令出力部120が事故検出トリガを受信した場合には(ステップS301:YES)、選択部122は、第1演算部110が事故毎に予め算出しておいた指令値である無効電力および出力抑制量の中から、検出された事故内容に対応する無効電力および出力抑制量等を選択する(ステップS302)。
【0069】
送信部124は、指令信号をそれぞれの分散電源10に対して送信する。指令出力部120から送信される指令信号は、それぞれの分散電源10に対して、予め算出した無効電力を出力させるための情報と、予め算出した出力抑制量に応じた情報とをともに含んでよい。
【0070】
本例においては、指令出力部120は、平常時トリガを受信したか否かを判断する(ステップS304:YES)。指令出力部120が平常時トリガを受信した場合には(ステップS304:YES)、指令出力部120は、平常時における指令値である無効電力および出力抑制量についての情報を含む指令信号を生成する(ステップS305)。そして、送信部124は、平常時における指令値を含む指令信号をそれぞれの分散電源10に送信する(ステップS306)。
【0071】
図4は、本発明の実施形態に係る制御方法の他の例を示すフローチャートである。ステップS401からステップS404は、
図3におけるステップS101からステップS104と同様である。本例では、第2演算部130は、第2演算段階において、複数のノードのいずれかのノードにおける電力パラメータが取得できない場合に、欠落データが存在することを示す欠落情報を作成する(ステップS406)。一例において、データ処理部134が、欠落データが存在することを示す欠落情報を作成してよい。第2演算部130は、欠落情報を第1演算部110に通知する(ステップ406)。
【0072】
第1演算部110は、第1演算段階において、欠落情報を受信したか否かを判断する(ステップS501)。第1演算部110は、欠落情報を受信した場合(ステップS501:YES)、系統データの欠落データを補完する(ステップS502)。以下、ステップS503からステップS506、およびステップS601からステップS606の処理は、
図3に示されるステップS203からステップS206、およびステップS301からステップS306の処理と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
【0073】
図3および
図4においては、制御装置100は、予め算出しておいた無効電力を分散電源10−1および10−2に出力させるための情報と、予め算出しておいて出力抑制量に応じた情報とを含む指令信号を出力する場合を説明した。本発明はこの場合に限られない。
【0074】
図5は、本発明の実施形態に係る制御方法の他の例を示すフローチャートである。ステップS701からステップS704、およびステップS801からステップS803の処理は、
図3におけるステップS101からステップS104、およびステップS201からステップ203の処理と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
【0075】
第1演算部110は、ステップS804において最適潮流計算を実行する。ただし、本実施例では、第1演算部110は、電力系統2に事故が発生した場合の、それぞれの分散電源10における出力抑制量を予め算出する(ステップS805)。出力抑制量は、それぞれの想定事故別に算出される。出力抑制量は、周期的に算出されて、更新される。
【0076】
指令出力部120が事故検出トリガを受信した場合には(ステップS901:YES)、選択部122は、第1演算部110が事故毎に予め算出しておいた出力抑制量の値の中から、検出された事故内容に対応する出力抑制量の値を選択する(ステップS902)。指令出力部120の送信部124は、各分散電源10における出力抑制量に応じた情報を含む指令信号をそれぞれの分散電源10に対して出力する(ステップS903)。
【0077】
図6は、本発明の実施形態に係る制御方法の他の例を示すフローチャートである。
図6の処理は、
図5のステップS804およびS805の処理がステップS1104およびS1105の処理に置き換わっており、ステップS902の処理がステップS1202の処理に置き換わっていることを除いて、
図5に示される処理と同様である。すなわち、
図6のステップS1001からステップS1004の処理、ステップS1101からステップS1103の処理、ステップS1201、およびステップS1203の処理は、
図5に示されるステップS701からステップS704の処理、ステップS801からステップS803の処理、ステップS901およびステップS903の処理と同様である。したがって、詳しい説明を省略する。
【0078】
第1演算部110は、ステップS1104において最適潮流計算を実行する。ただし、本実施例では、第1演算部110は、電力系統2に事故が発生した場合の、それぞれの分散電源10が出力すべき無効電力を予め算出する(ステップS1105)。無効電力の値は、それぞれの想定事故別に算出される。無効電力の値は、周期的に算出されて、更新される。
【0079】
指令出力部120が事故検出トリガを受信した場合には(ステップS1201:YES)、選択部122は、第1演算部110が事故毎に予め算出しておいた無効電力の値の中から、検出された事故内容に対応する無効電力の値を選択する(ステップS1202)。指令出力部120の送信部124は、各分散電源10に、予め算出しておいた無効電力を出力させるための指令信号をそれぞれの分散電源10に対して出力する(ステップS1203)。
【0080】
図5または
図6に示されるように、各分散電源10における無効電力と出力抑制量のいずれか一方を予め最適潮流計算を用いて周期的に更新しておき、事故が発生した場合は、この周期的に更新されている無効電力と出力抑制量のいずれか一方の情報を含む指令信号を各分散電源10に出力してよい。
【0081】
以上のとおり、本実施形態の制御装置100によれば、想定される事故に応じて、最適潮流計算を実行して、各分散電源10における適切な無効電力の値を予め算出しておくことができる。したがって、無効電力低下に伴う電圧低下を予め防止することができる。
【0082】
また、本実施形態の制御装置100によれば、想定される事故に応じて、最適潮流計算を実行して、各分散電源10における適切な有効電力または有効電力の出力抑制量を予め算出しておくことができる。したがって、必要以上に、分散電源を出力抑制されて発電システムにおいて連鎖的な影響が生じることを防止することができる。
【0083】
本実施形態の制御装置100によれば、事故が生じてから、時間のかかる最適潮流計算を開始するのではなく、予め周期的に最適潮流計算を実行しておく。したがって、事故が発生したときの適切な出力抑制量および無効電力について、事故が発生してから2秒以下の時間内に取得することができる。それゆえ、実施形態の制御装置100によれば、事故が起こったときに、各分散電源に対して早期に適切な指令信号を送信することができる。したがって、送電線の過電流耐量時間を超えることなく、適切な制御が開始できる。
【0084】
本実施形態の制御装置100によれば、サンプリング周期を長くすることなく事故を早期に検知することを可能としつつ、最適潮流計算による無効電力および出力抑制量の事前計算による更新周期を長くすることができる。
【0085】
図7は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る方法または当該方法の段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0086】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0087】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0088】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD−ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD−ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0089】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0090】
プログラムが、DVD−ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0091】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0092】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226(DVD−ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0093】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0094】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0095】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0096】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【解決手段】電力系統に接続された複数の分散電源を制御する制御装置であって、電力系統に事故が発生した場合の、それぞれの分散電源が出力すべき無効電力を予め算出する第1演算部と、電力系統に事故が発生したことを検出した場合に、それぞれの分散電源に第1演算部が予め算出した無効電力を出力させるための指令信号を出力する指令出力部とを備える制御装置。