(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852849
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ガス発生器、及びデュアルタイプのガス発生器の組立方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/26 20110101AFI20210322BHJP
B60R 21/264 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
B60R21/26
B60R21/264
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-105942(P2017-105942)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-199463(P2018-199463A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100160945
【弁理士】
【氏名又は名称】菅家 博英
(72)【発明者】
【氏名】山本 紘士
(72)【発明者】
【氏名】藪田 幹夫
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−039837(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3009569(JP,U)
【文献】
国際公開第2002/051673(WO,A1)
【文献】
特開2013−075656(JP,A)
【文献】
特開2010−173559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火器と、
前記点火器を収容しガス排出口を形成した金属製のハウジングであって、該点火器の作動により、燃焼可能となる位置に充填された固形のガス発生剤の燃焼が行われる燃焼室を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部において前記燃焼室に配置された前記ガス発生剤と該燃焼室の底面及び側面との間に介在し、該ガス発生剤と接触して該ガス発生剤に対して所定の保持力を付与するように所定の樹脂材料で形成された隔離壁を有する隔離部材と、
を備え、
前記隔離壁は、外側周壁部と、該外側周壁部の内側に形成された内側周壁部と、底壁面を形成する底壁部と、を有し、
前記外側周壁部と前記内側周壁部との間の空間に前記ガス発生剤が充填されている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記隔離部材は、前記隔離壁で前記燃焼室の底面及び側面の全てを覆うように形成されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記隔離部材は、前記所定の樹脂材料で一体に形成されている、
請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記燃焼室の側面の一部は、前記ハウジングの所定の内壁面により画定され、
前記外側周壁部と前記ハウジングの前記所定の内壁面との間に間隙が形成されるように、前記隔離部材は、前記ハウジング内に配置される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記隔離壁は、前記隔離部材が前記ハウジング内に配置された状態で、前記燃焼室の内側に向かって延出した、樹脂製の複数の突起部を有し、
前記複数の突起部は、前記燃焼室に充填された前記ガス発生剤から受ける力で変形可能に形成される、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記燃焼室に、前記ガス発生剤に加えて、固形の伝火薬が充填され、
前記隔離部材は、前記点火器の作動により前記伝火薬が燃焼されるように該伝火薬を該点火器の周囲に配置するとともに、該点火器の作動前には該伝火薬と前記ガス発生剤とが混在しないように伝火薬充填室を画定する伝火薬用隔離壁を、更に有し、
少なくとも前記伝火薬用隔離壁は、前記伝火薬の燃焼に伴って変形、破壊、燃焼、又は溶融する材料で形成されている、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記ガス排出口を形成した金属製の第1ハウジングと、該第1ハウジングの下方に配置される、金属製の第2ハウジングとからなり、
前記ハウジングは、その内部に、前記燃焼室を上下に分割し、上側に位置する第1燃焼室と下側に位置する第2燃焼室を形成する分割壁を含み、
前記第2ハウジングの底面に、前記第1燃焼室に充填された第1ガス発生剤を燃焼する第1点火器と、前記第2燃焼室に充填された、前記ガス発生剤である第2ガス発生剤を燃焼する前記点火器であり該第1点火器とは異なる第2点火器とが配置され、
前記分割壁は、前記第1点火器を取り囲み前記第1燃焼室内に該第1点火器を収容するように前記第2ハウジング内に延出した第1点火器収容部を形成し、
前記第2燃焼室の側面は、前記第2ハウジングの内壁面及び該第2ハウジング内に位置する前記第1点火器収容部の所定の外周壁面により画定され、
前記隔離部材は、前記第2ハウジングの内部において、前記第2燃焼室の底面及び側面と該第2燃焼室に充填された前記第2ガス発生剤との間に前記隔離壁を介在させ、
前記第1点火器は、前記第1点火器収容部の所定の外周壁面に対応する環状の前記内側周壁部によって形成され、上方及び下方において開口された所定空間に配置されている、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のガス発生器。
【請求項8】
ガス排出口を形成した金属製の第1ハウジングと、該第1ハウジングの下方に配置される、金属製の第2ハウジングとからなるハウジングを有し、該ハウジング内に第1点火器と該第1点火器と異なる第2点火器とを備え、それぞれに対応する第1ガス発生剤と第2ガス発生剤を燃焼させるデュアルタイプのガス発生器の組立方法であって、
前記ハウジングは、その内部に、前記燃焼室を上下に分割し、上側に位置し前記第1ガス発生剤が充填される第1燃焼室と下側に位置し前記第2ガス発生剤が充填される第2燃焼室を形成する分割壁を含み、
前記分割壁は、前記第1点火器を取り囲んで収容するように前記第2ハウジング内に延出した第1点火器収容部を形成し、
前記第2燃焼室の側面は、前記第2ハウジングの内壁面及び該第2ハウジング内に位置する前記第1点火器収容部の所定の外周壁面により画定され、
前記組立方法は、
前記第2ハウジングの底面に、前記第1点火器と前記第2点火器とを配置するステップと、
前記第2燃焼室の底面及び側面と前記第2ガス発生剤との接触を阻止し、且つ該第2ガス発生剤を充填する所定の充填空間を形成し該所定の充填空間に充填された該第2ガス発生剤に対して所定の保持力を付与するように、所定の樹脂材料で形成された隔離壁を有する隔離部材を、前記第2ハウジングの内部に配置するステップと、
前記隔離部材の前記所定の充填空間に前記第2ガス発生剤を充填し、該充填された第2ガス発生剤に前記所定の保持力が付与された状態を形成するステップと、
前記第2ハウジングに配置された前記隔離部材の前記隔離壁のうち、前記第1点火器収容部の所定の外周壁面に対応する、環状の第1点火器包囲壁によって形成される所定空間に、前記第1点火器収容部を挿入するように前記分割壁を該第2ハウジングに取り付けて、該分割壁の下方に前記第2燃焼室を形成するステップと、
前記第2ハウジングに取り付けられた前記分割壁の上方に前記第1点火器の作動により燃焼可能な位置に前記第1ガス発生剤を配置し、前記第1ハウジングで封止することで前記第1燃焼室を形成するステップと、
を含む、デュアルタイプのガス発生器の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火器の作動によりガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
点火器の作動により燃焼室内に充填されたガス発生剤を燃焼させ、燃焼ガスを発生させるガス発生器においては、当該充填されたガス発生剤が所望するように燃焼しなければ、燃焼ガスを設計通りに発生させることが困難となる。ここで、ガス発生器については、ガス発生剤の燃焼により生じた圧力に耐え得るように、一般にはそのハウジングは金属製とされる。しかし、金属製のハウジング内にガス発生剤が充填された場合、仮にハウジング内でガス発生剤が不要に移動してしまうと、ハウジングとの接触によりガス発生剤が粉化する可能性がある。粉化したガス発生剤では、粉化する前と比べてガス発生剤の表面積が増加するためガス発生剤の燃焼特性が変化してしまい、設計通りのガス発生剤の燃焼が得られない可能性がある。また、このような不要なガス発生剤の移動は、振動した際の音の発生要因ともなり得る。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に示す技術では、ハウジング内に充填されたガス発生剤に対して、ハウジングの上下方向から接触するようにディスク状のクッション部材が配置されている。このようなクッション部材の緩衝機能を利用することで、ハウジング内でのガス発生剤の移動阻止が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−59315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス発生器の使用時における出力特性を設計通りに実現するためには、ガス発生器の製造時からその作動時までの間、ガス発生器のハウジング内の燃焼室に充填されたガス発生剤の粉化は回避すべきでありその形状は可及的に維持されている必要がある。しかし、従来技術では、ガス発生剤の粉化を回避するために燃焼室内の上下方向においてクッション材を配置するのみである。この場合、ガス発生剤はクッション材により燃焼室の上下方向においてクッション部材以外の物体との接触は回避されているが、一方で、燃焼室の側方におけるガス発生剤と他の物体との接触が生じる。そのため、ガス発生器に対して振動が付与されるとその接触に起因してガス発生剤の粉化や振動音が生じ得ることから、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に鑑み、ガス発生器のハウジング内に充填されたガス発生剤の粉化と振動音の発生を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ガス発生器の燃焼室の側面及び底面と、該燃焼室に充填されるガス発生剤の間に樹脂製の隔離壁を介在させる構成を採用した。このような構成により、ガス発生剤に所定の保持力を作用させてガス発生剤の不要な移動を抑制することが可能となる。
【0008】
具体的には、本発明のガス発生器は、点火器と、前記点火器を収容しガス排出口を形成
した金属製のハウジングであって、該点火器の作動により、燃焼可能となる位置に充填された固形のガス発生剤の燃焼が行われる燃焼室を有するハウジングと、前記ハウジングの内部において前記燃焼室に配置された前記ガス発生剤と該燃焼室の底面及び側面との間に介在し、該ガス発生剤と接触して該ガス発生剤に対して所定の保持力を付与するように所定の樹脂材料で形成された隔離壁を有する隔離部材と、を備える。
【0009】
本発明のガス発生器では、ハウジング内に点火器が収容されるとともに、そこに形成された燃焼室にガス発生剤が充填されている。点火器の作動により、そのガス発生剤の燃焼が実現される。ここで、当該燃焼室がハウジングの一部、例えば、ハウジングの内壁面によって画定されたり、ハウジング以外の構成物であってハウジング内に配置される物体によって画定されたりすると、燃焼室に充填されたガス発生剤が、燃焼室を画定する物体に直接接触することになる。このような接触状態があるときに、外部からの加振によりガス発生器が振動してしまうと、ガス発生剤が粉化してしまう可能性がある。特に、燃焼室がハウジングの内壁面によって画定される場合には、ハウジングが金属製であるためガス発生剤の粉化が生じやすくなる。また、ガス発生剤による振動音が発生する原因にもなる。
【0010】
そこで、本発明のガス発生器では、隔離部材の隔離壁を、燃焼室の底面及び側面とそこに充填されるガス発生剤との間に介在させることで、ガス発生剤が燃焼室を画定する物体に直接接触する状態を回避しながら、隔離壁からガス発生剤に対して所定の保持力を付与する。なお、隔離壁は、隔離部材の構成の一部であり、上記の通りガス発生剤と燃焼室の底面及び側面との間に介在される物である。隔離部材は、隔離壁のみで形成されてもよく、隔離壁以外の構成を含んで形成されてもよい。この所定の保持力は、ガス発生剤の粉化を抑制するために、燃焼室内のガス発生剤がその燃焼室内で移動しないように樹脂製の隔離壁から付与されるものである。
【0011】
すなわち、隔離部材の隔離壁は、ガス発生剤が燃焼室の底面及び側面に接触するのを回避するとともに、燃焼室に充填された状態においてそのガス発生剤に対して上述した所定の保持力を付与するように構成されればよい。そのために、隔離壁は、ハウジングの硬度よりも低い硬度の材質で形成されてもよい。また、隔離壁は、ガス発生剤の硬度よりも低い硬度の材質で形成されてもよい。その一例として、隔離壁は樹脂製とすることができる。また、ガス発生剤が燃焼室に充填された際に隔離壁から所定の保持力が効果的に付与されるために、隔離壁は、充填されたガス発生剤に対して接触した際に変形が可能な材料であってもよい。この変形は、弾性変形でもよく塑性変形でもよい。このように変形することで、隔離壁とガス発生剤との接触を効果的に維持することができ、ガス発生剤の不要な移動による粉化と振動音の発生をその緩衝作用によって抑制することが可能となる。
【0012】
また、上記のガス発生器において、前記隔離部材は、前記隔離壁で前記燃焼室の底面及び側面の全てを覆うように形成されてもよい。このような構成により、ガス発生剤と燃焼室の底面及び側面との接触をより確実に回避させることができる。なお、上記の通り、ガス発生剤の粉化を抑制するためには、ガス発生剤と燃焼室の底面及び側面との接触が回避されればよい。したがって、当該接触の回避が可能である限りにおいては、隔離壁が燃焼室の底面及び側面を全て覆う必要はなく、底面や側面の一部が隔離壁に覆われている状態であっても構わない。
【0013】
また、上述までのガス発生器において、前記隔離部材は、前記所定の樹脂材料で一体に形成されてもよい。このように一体で隔離部材を形成することで、ガス発生器の組み立てに関し、ハウジング内での隔離部材の配置等に要する組立負荷を軽減することができる。なお、本発明のガス発生器において、隔離部材を、複数の部材で形成しても構わないことは言うまでもない。
【0014】
ここで、上述までのガス発生器において、前記燃焼室の側面の一部は、前記ハウジングの所定の内壁面により画定され、その場合、前記隔離壁と前記ハウジングの前記所定の内壁面との間に間隙が形成されるように、前記隔離部材は、前記ハウジング内に配置されてもよい。このように所定の内壁面によって画定される燃焼室の側面と隔離壁との間に間隙が形成されることで、ガス発生剤が燃焼室に充填されたときに隔離壁が所定の内壁面に向かって変位し又は変形することが可能となり、充填されたガス発生剤に対して安定して所定の保持力を付与し続けることができ、以てその粉化を回避することができる。
【0015】
また、上述までのガス発生器において、前記隔離壁は、前記隔離部材が前記ハウジング内に配置された状態で、前記燃焼室の内側に向かって延出した、樹脂製の複数の突起部を有し、前記複数の突起部は、前記燃焼室に充填された前記ガス発生剤から受ける力で変形可能に形成されてもよい。このように樹脂製の複数の突起部が隔離壁に設けられることで、燃焼室に充填されたガス発生剤との接触性が高められ、以て、充填されたガス発生剤に対して安定して所定の保持力を付与し続けることができ、以てその粉化を回避することができる。なお、当該突起部の大きさは、接触するガス発生剤の破損等を回避するために、当該ガス発生剤の大きさに対して十分に小さいのが好ましい。
【0016】
ここで、上述までのガス発生器において、前記燃焼室に、前記ガス発生剤に加えて、固形の伝火薬が充填され、前記隔離部材は、前記点火器の作動により前記伝火薬が燃焼されるように該伝火薬を該点火器の周囲に配置するとともに、該点火器の作動前には該伝火薬と前記ガス発生剤とが混在しないように伝火薬充填室を画定する伝火薬用隔離壁を、更に有し、少なくとも前記伝火薬用隔離壁は、前記伝火薬の燃焼に伴って変形、破壊、燃焼、又は溶融する材料で形成されてもよい。当該ガス発生器では、点火器の作動を起点として、伝火薬の燃焼を介して最終的にハウジング内のガス発生剤が燃焼されることになる。ここで、伝火薬としては、ハウジング内において上記ガス発生剤とは分離して収容されている別のガス発生剤でもよく、別法として、従来の黒色火薬等の火薬であってもよい。
【0017】
このように伝火薬の燃焼を介して最終的にガス発生剤を燃焼させる場合、点火器の作動前には伝火薬とガス発生剤とが好適に分離されてハウジング内に配置されている必要がある。両者が混在してしまうと、ガス発生剤の燃焼を設計通りに実現させることができなくなるからである。そこで、上記ガス発生器では、隔離部材に伝火薬用隔離壁を設けることで、伝火薬を点火薬の周りに、且つガス発生剤と混在しないように配置することが可能となる。そして、点火器が作動すると、この伝火薬用隔離壁は伝火薬の燃焼によって変形、破壊、燃焼、又は溶融するため、支障なく伝火薬の燃焼がガス発生剤の燃焼を引き起こすことができる。このように上記ガス発生器では、隔離部材により、ガス発生剤の粉化抑制とともに、ハウジング内での伝火薬とガス発生剤の混在防止が好適に図られることになる。
【0018】
ここで、上述までのガス発生器において、前記ハウジングは、前記ガス排出口を形成した金属製の第1ハウジングと、該第1ハウジングの下方に配置される、金属製の第2ハウジングとからなり、前記ハウジングは、その内部に、前記燃焼室を上下に分割し、上側に位置する第1燃焼室と下側に位置する第2燃焼室を形成する分割壁を含み、前記第2ハウジングの底面に、前記第1燃焼室に充填された第1ガス発生剤を燃焼する第1点火器と、前記第2燃焼室に充填された、前記ガス発生剤である第2ガス発生剤を燃焼する前記点火器であり該第1点火器とは異なる第2点火器とが配置され、前記分割壁は、前記第1点火器を取り囲み前記第1燃焼室内に該第1点火器を収容するように前記第2ハウジング内に延出した第1点火器収容部を形成し、前記第2燃焼室の側面は、前記第2ハウジングの内壁面及び該第2ハウジング内に位置する前記第1点火器収容部の所定の外周壁面により画定され、前記隔離部材は、前記第2ハウジングの内部において、前記第2燃焼室の底面及び側面と該第2燃焼室に充填された前記第2ガス発生剤との間に前記隔離壁を介在させて
もよい。
【0019】
上記ガス発生器は、2つの点火器が搭載される、いわゆるデュアルタイプのガス発生器であり、燃焼室がハウジングの上下方向に重ねて形成されることで、ガス発生器の横幅を大きくすることなくそのガス出力の増強を図ることができる。ここで、第2ハウジング側に第1点火器と第2点火器が配置されるため、ハウジング内を上方に位置する第1燃焼室と下方に位置する第2燃焼室に分割する分割壁は、第2ハウジングに配置された第1点火器を第1燃焼室に含めて該第1点火器を取り囲むように収容する第1点火器収容部を形成することになる。そのため、下方に位置する第2燃焼室は、概ね、第2ハウジングの内部空間のうち第1点火器収容部を除いた空間となり、その側面は、第2ハウジングの内壁面、及び第1点火器収容部の所定の外周壁面となる。そこで、上記のデュアルタイプのガス発生器では、このような形状を有する第2燃焼室に対応するように隔離部材の隔離壁が形成される。
【0020】
ここで、本願発明をデュアルタイプのガス発生器の組立方法の側面から捉えることができる。すなわち、本願発明は、ガス排出口を形成した金属製の第1ハウジングと、該第1ハウジングの下方に配置される、金属製の第2ハウジングとからなるハウジングを有し、該ハウジング内に第1点火器と該第1点火器と異なる第2点火器とを備え、それぞれに対応する第1ガス発生剤と第2ガス発生剤を燃焼させるデュアルタイプのガス発生器の組立方法である。そして、前記ハウジングは、その内部に、前記燃焼室を上下に分割し、上側に位置し前記第1ガス発生剤が充填される第1燃焼室と下側に位置し前記第2ガス発生剤が充填される第2燃焼室を形成する分割壁を含み、前記分割壁は、前記第1点火器を取り囲んで収容するように前記第2ハウジング内に延出した第1点火器収容部を形成し、前記第2燃焼室の側面は、前記第2ハウジングの内壁面及び該第2ハウジング内に位置する前記第1点火器収容部の所定の外周壁面により画定される。この場合、前記組立方法は、前記第2ハウジングの底面に、前記第1点火器と前記第2点火器とを配置するステップと、前記第2燃焼室の底面及び側面と前記第2ガス発生剤との接触を阻止し、且つ該第2ガス発生剤を充填する所定の充填空間を形成し該所定の充填空間に充填された該第2ガス発生剤に対して所定の保持力を付与するように、所定の樹脂材料で形成された隔離壁を有する隔離部材を、前記第2ハウジングの内部に配置するステップと、前記隔離部材の前記所定の充填空間に前記第2ガス発生剤を充填し、該充填された第2ガス発生剤に前記所定の保持力が付与された状態を形成するステップと、前記第2ハウジングに配置された前記隔離部材の前記隔離壁のうち、前記第1点火器収容部の所定の外周壁面に対応する、環状の第1点火器包囲壁によって形成される所定空間に、前記第1点火器収容部を挿入するように該隔離部材を該第2ハウジングに取り付けて、該隔離部材の下方に前記第2燃焼室を形成するステップと、前記第2ハウジングに取り付けられた前記隔離部材の上方に前記第1点火器の作動により燃焼可能な位置に前記第1ガス発生剤を配置し、前記第1ハウジングで封止することで前記第1燃焼室を形成するステップと、を含む。
【0021】
上記ガス発生器は、ハウジング内に2つの燃焼室を上下に配置するデュアルタイプのガス発生器である。このようなガス発生器を組み立てるには、ガス発生器を構成する各部品を順次重ねていく必要がある。特に、ハウジング内の空間が分割壁によって上下に2つの燃焼室に分割される構成となっているため、第2ハウジング、分割壁、第1ハウジングの順に重ねてガス発生器を組み立てる必要がある。ここで、上記のように、隔離部材の所定の充填空間に第2ガス発生剤を保持するように構成することで、隔離部材を第2ガス発生剤のリテーナとして機能させ、ガス発生剤の配置が崩れることを抑止できる。つまり、上記組立方法では、隔離部材の所定の充填空間に第2ガス発生剤が充填された状態で、隔離部材の第1点火器包囲壁によって形成される所定の空間に、分割壁の第1点火器収容部を挿入するように第2ハウジングに対して分割壁を組み付けることで、その組み付けより先に配置した第2ガス発生剤に分割壁の第1点火器収容部が不用意に接触し破砕、粉化して
しまうことを回避することができる。したがって、第1点火器包囲壁は、第1点火器収容部を挿入するための空間を維持する。そして、組立後におけるガス発生器では、第2燃焼室の底面及び側面と第2ガス発生剤との間に隔離部材が介在することになるため、第2ガス発生剤の第2燃焼室への直接の接触を抑制しつつ第2ガス発生剤の不要な移動を抑制することができ、以てその粉化を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガス発生器のハウジング内に充填されたガス発生剤の粉化と振動音の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のガス発生器の概略構成を示す第1の図である。
【
図2】
図1に示すガス発生器に組み込まれる下部シェルの上面図である。
【
図3】
図1に示すガス発生器に組み込まれる隔離部材の概略構成を示す図である。
【
図5】
図3に示す隔離部材とガス発生器のハウジングとが接近する部位の拡大図である。
【
図6】
図1に示すガス発生器の組み立ての手順を示す図である。
【
図7】変形例における、隔離部材とガス発生器のハウジングとが接触する部位の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るガス発生器、及びその組立方法について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
図1は、ガス発生器1の高さ方向の断面図であり、
図2は、そのガス発生器1に含まれる下部シェル3(第2ハウジング)の上面図である。ガス発生器1は、上部シェル2(第1ハウジング)及び下部シェル3で形成されるハウジング4内に充填されたガス発生剤を燃焼させて、燃焼ガスを放出するように構成されている。なお、ガス発生器1は、後述するように2つの燃焼室が上下に配置され、各燃焼室に、対応する点火器及びガス発生剤を配置した、いわゆるデュアルタイプのガス発生器である。ここで、上部シェル2は周壁部2cと頂面部2dを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。頂面部2dは、後述の下部シェル3の底面部3bとともに、上面視で概ね円形状を有しており、周壁部2c及び後述の下部シェル3の周壁部3aは、それぞれ頂面部2d、底面部3bの周囲を囲み、各面部から概ね垂直に延在した環状の壁面を形成している。上部シェル2の内部空間は、後述するように第1伝火薬24及び第1ガス発生剤22が充填される第1燃焼室21となる。周壁部2cの一端側に頂面部2dが接続し、その他端側は上部シェル2の開口部となる。そして、周壁部2cの当該他端側には、当該開口部から順に、嵌合壁部2a、突き当て部2bが設けられている。嵌合壁部2aによる内部空間の半径は、頂面部2d寄りの周壁部2cによる内部空間の半径より大きく形成され、嵌合壁部2aは、突き当て部2bを介して周壁部2cへと繋がっている。
【0026】
また、下部シェル3は周壁部3aと底面部3bを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。当該内部空間は、後述するように第2伝火薬26及び第2ガス発生剤29が充填される第2燃焼室28となる。周壁部3aの一端側に底面部3bが接続し、その他端側は下部シェル3の開口部となる。そして、周壁部3aによる内部空間の半径は、上部シェル2の周壁部2cによる内部空間の半径と概ね同じである。
図2に示すように、下部シェル3の底面部3bには、後述するように第1点火器23と第2点火器27がそれぞれ固定
される嵌合孔3c及び嵌合孔3dが設けられている。
【0027】
更に、ハウジング4内には、上部シェル2と下部シェル3との間に分割壁10が配置されている。分割壁10は、終端部15と、その終端部15から下部シェル3の周壁部3aに沿って延在する嵌合壁部14と、嵌合壁部14に繋がりハウジング4内を概ね上下の空間に分割する分割壁部13と、分割壁部13に繋がり下部シェル3の底面部3bまで延在する周壁部12と、周壁部12に繋がり第1点火器23側に向かって延びる取付縁部11とを有する。
図1に示すように終端部15が下部シェル3の周壁部3aの終端面上に置かれて分割壁10がハウジング4に取り付けられたときに、分割壁部13は、上部シェル2の頂面部2dや下部シェル3の底面部3bに概ね平行となる壁面を形成し、周壁部12は、その分割壁部13の壁面から下部シェル3側に窪んだ空間(後述する収容空間20)を形成するように分割壁部13と繋がっている。また、周壁部12には貫通孔である貫通孔10aが設けられており、貫通孔10aは、分割壁10により分割されて形成される2つの空間(後述する第1燃焼室21と第2燃焼室28)を連通する。なお、この窪んだ空間20は、その上方の空間側に開口し、後述するように第1点火器23が収容されるため、当該窪んだ空間20を、単に「収容空間20」と称する。なお、貫通孔10aは収容空間20側から閉塞部材35で閉じられている。このような構成により、閉塞部材35の破裂圧に差が生じ、後述する第2燃焼室28での第2点火器27の作動時のみ閉塞部材35が開裂する。また、取付縁部11は、下部シェル3の嵌合孔3cに固定された第1点火器23を挿通する貫通孔を形成している。なお、分割壁10が下部シェル3に取り付けられ状態では、取付縁部11が底面部3bの嵌合孔3c近くの底面上に接触し、更に、分割壁10の嵌合壁部14は、下部シェル3の周壁部3aに嵌合された状態となる。
【0028】
そして、このように下部シェル3上に分割壁10が取り付けられた状態で、上方より上部シェル2が更に取り付けられる。上記の通り、上部シェル2の嵌合壁部2aによる内部空間の半径は、周壁部2cによる内部空間の半径より大きく形成されているため、上部シェル2は、その突き当て部2bが分割壁10の終端部15に突き当てられまで、下部シェル3に対して嵌め込まれる。上部シェル2の突き当て部2bが終端部15に突き当たった状態において、嵌合壁部14は下部シェル3の周壁部3aに嵌合された状態となる。なお、ハウジング4において、上部シェル2と下部シェル3の嵌合部位や接触部位は、内部に充填されるガス発生剤の防湿等のために好適な接合方法(例えば、溶接等)により接合される。
【0029】
このようにハウジング4においては、分割壁10によってその内部空間が概ね上下に2つの空間に分割されることになる。ハウジング4の内部空間のうち上部シェル2と分割壁10によって画定される第1燃焼室21には、第1点火器23、第1伝火薬24、第1ガス発生剤22が配置され、下部シェル3と分割壁10によって画定される第2燃焼室28には、第2点火器27、第2伝火薬26、第2ガス発生剤29が配置されることで、ガス発生器1は2つの第1点火器23、第2点火器27を備えるデュアルタイプのガス発生器として構成されている。なお、第1点火器23と第2点火器27はともに下部シェル3の底面部3b上に固定されており、そのため、第1点火器23は、第1点火器23の側方が分割壁10の周壁部12に囲まれ、且つその頂部が周壁部12に繋がる分割壁部13から飛び出さないように、収容空間20内に収められた状態となっている。
【0030】
ここで、第1燃焼室21では、その一部である収容空間20には第1点火器23が収容されるとともに第1伝火薬24が充填される。第1伝火薬24としては、着火性が良く、第1ガス発生剤22より燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。第1伝火薬24の燃焼温度は、1700〜3000℃の範囲とすることができる。このような第1伝火薬24としては、例えばニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)からなる、ディスク状のものを用いることができる。そして、第1燃焼室21に
おいて、収容空間20の開口部はアルミニウムテープ36で塞がれ、収容空間20の上方の空間(概ね、分割壁部13より上方の空間)に充填された第1ガス発生剤22との混在が防止される。
【0031】
そして、第1燃焼室21において、収容空間20の開口部を塞いだアルミニウムテープ36の上方の空間には、第1ガス発生剤22が充填されることになるが、その第1ガス発生剤22を取り囲むように環状のフィルタ32が配置されている。このとき第1ガス発生剤22は、第1燃焼室21内で不要に振動しないようにクッション31の付勢力によりフィルタ32、分割壁部13等に抑えつけられた状態で充填されている。第1ガス発生剤22は、第1伝火薬24より燃焼温度の低いガス発生剤を使用している。第1ガス発生剤22の燃焼温度は、1000〜1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0032】
なお、フィルタ32は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されており、第1ガス発生剤22による燃焼ガスを冷却し、その燃焼残渣を捕集する。フィルタ32として、その他に針金を心棒に多層に巻いて形成された巻線タイプの構造のものを採用してもよい。なお、フィルタ32は、第2燃焼室28に充填された第2ガス発生剤29の燃焼残渣も捕集する。また、上部シェル2の周壁部2cとフィルタ32との間に形成された間隙33より、フィルタ32の周囲に半径方向断面に環状のガス通路が形成される。この間隙33により、燃焼ガスはフィルタ32の全領域を通過し、フィルタ32の有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。間隙33を流れる燃焼ガスは、周壁部2cに設けられたガス排出口5に至る。また、ハウジング4内に外部より湿気が侵入するのを阻止するために、ガス発生器1の作動前では、アルミニウムテープ34によりガス排出口5がハウジング4の内部から塞がれている。
【0033】
次に、第2燃焼室28では、下部シェル3の嵌合孔3dに固定された第2点火器27に対応して、第2伝火薬26及び第2ガス発生剤29が充填されている。この第2燃焼室28は、下部シェル3の周壁部3aの内壁面及び分割壁10の周壁部12の外周面を側面とし、下部シェル3の底面部3bを底面とし、分割壁10の分割壁部13を上面として画定される空間である。そして、第2伝火薬26としては、第1伝火薬24と同じように、例えばニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)からなる、ペレット状や円柱状等のものを用いることができる。また、第2ガス発生剤29としては、第1ガス発生剤22と同じように、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0034】
ここで、第2燃焼室28における第2伝火薬26及び第2ガス発生剤29(以下、「第2ガス発生剤29等」と称する場合もある。)の充填に関し、第2ガス発生剤29等が、金属製の下部シェル3や下部シェル3内に延在している分割壁10の周壁部12の外周面(収容空間20を画定する壁面とは裏側の壁面)に接触し粉化してしまうのを抑制するために、樹脂で形成された隔離部材40が、下部シェル3内に配置されている。
【0035】
図3及び
図4に基づいて、隔離部材40について説明する。
図3は隔離部材40の斜視図であり、
図4は隔離部材40の上面図である。なお、
図4におけるAA断面が、
図1に示す隔離部材40の状態になる。隔離部材40は、その全体が同一の樹脂材料で形成されており、当該樹脂材料は、第2燃焼室28に充填される第2伝火薬26及び第2ガス発生剤29の燃焼熱によって溶融する材料である。具体的には、隔離部材40は、環状の外側周壁部42と、環状の内側周壁部44と、両周壁部に対して垂直に繋がり隔離部材40の底壁面を形成する底壁部43とを有している。隔離部材40が下部シェル3内に配置され
た状態において、外側周壁部42の外壁面42bは、下部シェル3の周壁部3aの内壁面に対向し、内側周壁部44の内壁面44aは、分割壁10の周壁部12の外壁面と接触し、底壁部43は、下部シェル3の底面部3bに接触した状態となっている。なお、外側周壁部42の下部には、外側に微小高さだけ突出した下方縁部41が形成されている。そのため、外側周壁部42の外壁面42bと下部シェル3の周壁部3aの内壁面との間には、後述する
図5(a)に示すように下方縁部41の突出量に応じた間隙50が形成されている。
【0036】
また、内側周壁部44は、分割壁10の周壁部12の外壁面と対向して配置されるため、本願発明の第1点火器包囲壁に相当する。そして、この内側周壁部44に囲まれた所定空間47は、その上方及び下方において開口しており、当該下方の開口部は、隔離部材40が下部シェル3に配置された状態で、下部シェル3に設けられた嵌合孔3cに対応するように形成される。これにより、下部シェル3に配置された第1点火器23は、
図1に示すように分割壁10の収容空間20に収容された状態で、隔離部材40に挿通された状態となり得る。
【0037】
そして、隔離部材40において、外側周壁部42の内壁面42aと内側周壁部44の外壁面44bとの間の空間は、第2伝火薬26と第2ガス発生剤29が充填される空間であり、以下、所定の充填空間と称する場合もある。更に、隔離部材40には、底壁部43に対して垂直に立てられた一対の隔壁部45、46であって、内側周壁部44と外側周壁部42とを繋ぐことで、所定の充填空間の内部に、第2伝火薬26が第2ガス発生剤29と混在しないように分離して充填される伝火薬充填室25を画定する隔壁部45、46が設けられている。隔壁部45、46は、本願発明の伝火薬用隔離壁に相当する。なお、所定の充填空間のうち伝火薬充填室25以外の空間には、第2ガス発生剤29が充填される。所定の充填空間における、伝火薬充填室25の容積と第2ガス発生剤29が充填される空間の容積との比率は、ガス発生器1で発生すべき出力特性に応じて適宜決定すればよい。そして、伝火薬充填室25の下方には、下部シェル3に設けられた嵌合孔3dに対応するように貫通孔48が設けられている。これにより、下部シェル3に配置された第2点火器27は、
図1に示すように隔離部材40に挿通された状態となり得る。
【0038】
このように構成される隔離部材40は、
図1に示すように下部シェル3に配置されてハウジング4内に組み込まれた状態では、第2燃焼室28の側面である、下部シェル3の周壁部3aの内壁面及び分割壁10の周壁部12の外周面を覆うとともに、第2燃焼室28の底面である、下部シェル3の底面部3bを覆う形状、寸法を有している。なお、この状態で、内側周壁部44の内壁面44aは、分割壁10の周壁部12に設けられた貫通孔10aを塞いだ状態となっている。しかし、上記の通り、隔離部材40は第2ガス発生剤29等の燃焼熱により溶融可能な樹脂材料で形成されているため、第2ガス発生剤29等による燃焼ガスの流通に支障は生じない。別法として、貫通孔10aに対向する内側周壁部44の部位には、貫通孔10aを塞がないように貫通孔を設けてもよい。更に、隔離部材40は、一対の隔壁部45、46を有することで、第2伝火薬26が第2ガス発生剤29に混在しないように、両者を区分して第2燃焼室28に充填することができる。
【0039】
このように下部シェル3に隔離部材40が配置されることで、第2燃焼室28に充填された第2伝火薬26と第2ガス発生剤29は、第2燃焼室28の側面及び底面との直接の接触が回避される。更に、隔離部材40が樹脂材料で形成され、その硬度は金属製の下部シェル3の硬度よりも低くい。また、隔離部材40が第2伝火薬26や第2ガス発生剤29よりも硬度が低いため、隔離部材40内の所定の充填空間に充填された第2ガス発生剤29等に対して、緩衝作用により好適な保持力を付与することが可能となる。当該保持力は、第2ガス発生剤29等に付与されることで、第2ガス発生剤29等の不要な移動を抑制し得る力である。
【0040】
図5(a)に示すように、隔離部材40の下部に設けられた下方縁部41によって、外側周壁部42の外壁面42bと下部シェル3との間には、間隙50が形成されている。間隙50は、隔離部材40の所定の充填空間に第2ガス発生剤29等が充填されたときに、外側周壁部42の下部シェル3側への変形や変位を可能とする。そのため、当該充填によって、第2ガス発生剤29等に対して必要とされる保持力を発生させやすくなる。別法として、第2ガス発生剤等の充填に際して上記保持力を発生させることが可能であれば、上記間隙50は必ずしも必要ではなく、以て隔離部材40に下方縁部41を設ける必要もない。
【0041】
更に、別法として、
図5(b)に示すように、隔離部材40の外側周壁部42において、下方縁部41に加えてその上部にも外側に下方縁部41と同程度突出した上方縁部42cが設けられてもよい。このような場合も外壁面42bと下部シェル3との間に間隙50が形成され、外側周壁部42は、その中腹部の近傍で大きく変位し得、以て、上記保持力を好適に発生させることができる。また、このように下部シェル3との接触部位を、外側周壁部42の下方と上方に分散させることで、第2ガス発生剤29等の充填の際に、外側周壁部42を過度に変形等しないようにすることができる。
【0042】
このように隔離部材40が、第2ガス発生剤29等と第2燃焼室28の側面及び底面との間に介在することで、第2燃焼室28において第2ガス発生剤29等の粉化と第2ガス発生剤29等による振動音の発生を好適に抑制することができる。そして、隔離部材40を含んで構成されたガス発生器1では、先ず第1点火器23が作動すると、第1伝火薬24が着火し、その後第1ガス発生剤22が燃焼する。第1燃焼室21では、アルミニウムテープ36によって、第1伝火薬24と第1ガス発生剤22との混在が防止されている。そして、第1ガス発生剤22による燃焼ガスは、フィルタ32を経てガス排出口5から外部に放出される。そして、第1点火器23に次いで第2点火器27が作動することで、第2伝火薬26が着火し、その後第2ガス発生剤29が燃焼する。第2燃焼室28では、隔離部材40によって、第2伝火薬26と第2ガス発生剤29との混在が防止されるとともに、第2ガス発生剤29等の粉化が抑制されているため、第2ガス発生剤29による燃焼ガスを設計通り生成することができる。その燃焼ガスは、貫通孔10aを通り第1燃焼室21を経てガス排出口5から外部に放出される。
【0043】
<組立方法>
ここで、ガス発生器1の組立方法について、
図6に基づいて説明する。当該組立方法では、隔離部材40を、第2伝火薬26及び第2ガス発生剤29を第2燃焼室28内に好適に配置するために、その配置位置を保持するリテーナとしても機能させ、ステップ1〜ステップ9によってガス発生器1が組み立てられる。以下に、各ステップの詳細を説明する。先ず、ステップ1では、下部シェル3の嵌合孔3c、3dにそれぞれ第1点火器23、第2点火器27を取り付けて、両点火器を下部シェル3の底面に配置する。次に、ステップ2では、隔離部材40を下部シェル3に配置する。このとき、隔離部材40の所定空間47の開口を介して第1点火器23が所定空間47に挿入されるとともに、貫通孔48を介して第2点火器27が伝火薬充填室25に挿入される。
【0044】
次に、ステップ3では、第2伝火薬26を伝火薬充填室25に充填するとともに、隔離部材40の所定の充填空間の残部に第2ガス発生剤29が充填される。この充填により、第2ガス発生剤29等は、樹脂製の隔離部材40から上述した保持力が付与された状態となり、その状態は隔離部材40の外側周壁部42や内側周壁部44によって維持される。そのため、次のステップ4で下部シェル3に分割壁10が取り付けられる際に、分割壁10と第2ガス発生剤29等との不用意な接触を好適に回避することができる。そこで、ステップ4では、下部シェル3に配置された隔離部材40の所定空間47内に、分割壁10
の周壁部12を挿入するように、分割壁10を下部シェル3に取り付ける。この結果、分割壁10と下部シェル3によって第2燃焼室28が形成されるとともに、第2燃焼室28には、第2ガス発生剤29等が隔離部材40に充填された状態で収容される。
【0045】
次に、ステップ5では、所定空間47内に挿入された分割壁10の周壁部12に囲まれた空間、すなわち収容空間20に第1伝火薬24が充填され、その後、ステップ6では、その収容空間20をアルミニウムテープ36で塞がれる。更に、ステップ7では、分割壁10の分割壁部13上にフィルタ32が配置され、ステップ8では、フィルタ32の中央部分に第1ガス発生剤22が充填される。そして、ステップ9では、クッション31とともに上部シェル2が下部シェル3に取り付けられる。この結果、上部シェル2と分割壁10によって第1燃焼室21が形成され、ガス発生器1の組み立てが完了する。
【0046】
デュアルタイプのガス発生器1では燃焼室を上下方向に形成するために分割壁10を取り付ける必要があるが、このように隔離部材40は、第2燃焼室28で燃焼される第2ガス発生剤29等を保持する機能を有しているため、換言すると、分割壁10の周壁部12を第2燃焼室28に対して挿入するときの挿入空間を確保する機能を有しているため、分割壁10を下部シェル3に容易に取り付けることができ、組立時に第2ガス発生剤29等の破砕を回避することができる。また、隔離部材40は、樹脂材料で一体に形成されているため、特にステップ2〜ステップ4の作業が容易となる。
【0047】
<変形例>
ガス発生器1に適用できる隔離部材40の変形例について、
図7に基づいて説明する。
図7は、下部シェル3に配置された隔離部材40に関し、外側周壁部42と下部シェル3とが接触する部位の拡大図である。本変形例の隔離部材40が上記実施例の隔離部材40と異なる点は、外側周壁部42の下方に下方縁部41が設けられていない点と、外側周壁部42の内壁面側に、第2ガス発生剤29等が充填される所定の充填空間側に延出した、樹脂製の突起部42dが複数設けられている点である。この突起部42dは、充填されたガス発生剤29等から力を受けることで変形可能に、隔離部材40の本体の樹脂材料と同一の樹脂材料で形成されている。この結果、複数の突起部42dが適度に変形するように第2ガス発生剤29等を隔離部材40に充填することで、その第2ガス発生剤29等に上記の保持力が掛かった状態を好適に形成することができる。また、
図7に示す隔離部材40において、
図5に示す下方縁部41を設け、外側周壁部42と下部シェル3との間に間隙50を形成しても構わない。
【0048】
また、上述の実施例のガス発生器1は、デュアルタイプのガス発生器であるが、1台の点火器を備えるシングルタイプのガス発生器においても、当該ガス発生器内に形成される燃焼室の側面及び底面と、そこに充填されるガス発生剤との直接の接触を回避するように、樹脂製の隔離部材を介在させてもよい。この場合も、当該隔離部材は、ガス発生剤の燃焼熱によって溶融する材料であるのが好ましい。
【0049】
また、上述の実施例のガス発生器1では、隔離部材40が一つの部品として形成されていたが、複数の部品により隔離部材40が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 :ガス発生器
2 :上部シェル
3 :下部シェル
4 :ハウジング
5 :ガス排出口
10 :分割壁
12 :周壁部
13 :分割壁部
14 :嵌合壁部
20 :収容空間
21 :第1燃焼室
22 :第1ガス発生剤
23 :第1点火器
24 :第1伝火薬
25 :伝火薬充填室
26 :第2伝火薬
27 :第2点火器
28 :第2燃焼室
29 :第2ガス発生剤
40 :隔離部材
41 :下方縁部
42 :外側周壁部
42c :上方縁部
42d :突起部
43 :底壁部
44 :内側周壁部
47 :所定空間
50 :間隙