特許第6852866号(P6852866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6852866-取付補助具及び伸縮装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852866
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】取付補助具及び伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20210322BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   E01C11/02 C
   E01D19/06
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-153990(P2016-153990)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-21399(P2018-21399A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(74)【代理人】
【識別番号】100148079
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100158241
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 安子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】宮城 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】辻本 博文
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−052610(JP,A)
【文献】 特開2014−181492(JP,A)
【文献】 実開昭61−040407(JP,U)
【文献】 特開2005−090007(JP,A)
【文献】 実開昭55−168502(JP,U)
【文献】 実公昭50−030111(JP,Y2)
【文献】 実開昭54−027518(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/02
E01D 1/00−24/00
B25B 11/00−11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の桁端部に設けられ、橋桁の幅方向に延びる表面部と、前記橋桁の幅方向と直交する橋軸方向における前記表面部の基端に一体に形成された腹板部とを有する第1継手及び第2継手を備える伸縮装置用の取付補助具であって、
前記第1継手に固定される第1本体と
記第2継手に固定される第2本体と
を備え、
前記第1本体は、前記表面部を前記橋軸方向に横断するように配置される横板部と、前記横板部から前記腹板部に沿うように前記橋軸方向における前記横板部の両端に一体に形成された第1脚部及び第2脚部を有し、前記第1脚部において、前記橋軸方向における前記第1継手の側部に固定されており、
前記第2本体は、前記表面部を前記橋軸方向に横断するように配置される横板部と、前記横板部から前記腹板部に沿うように前記橋軸方向における前記横板部の一端に一体に形成された脚部を有し、前記脚部において、前記橋軸方向における前記第2継手の側部に固定されており、
前記第1本体と前記第2本体は、前記橋桁の幅方向に前記横板部同士を重ねた状態で連結され、
前記橋桁の幅方向における前記第1脚部一側表面及び前記第2脚部他側表面に、それぞれナットが前記橋軸方向に溶接によって固定されており、前記第1脚部の一側表面の前記ナットには第1ボルトが前記橋軸方向にねじ込まれ、前記第2脚部の他側表面の前記ナットには第2ボルトが前記橋軸方向にねじ込まれており、
前記第1ボルトの先端は前記橋軸方向における前記第2本体の前記横板部の他端に接触し、前記第2ボルトの先端は前記橋軸方向における前記第2継手の側部に接触する
ことを特徴とする取付補助具。
【請求項2】
前記第2本体は、前記横板部の上端に設けられ前記第1本体へ向かって突出した上側返し部を有することを特徴とする請求項1記載の取付補助具。
【請求項3】
橋桁の幅方向に延びる表面部と、前記橋桁の幅方向と直交する橋軸方向における前記表面部の基端に一体に形成された腹板部とを有する第1継手及び第2継手と、
前記腹板部の表面から前記橋軸方向に平行に突出するように設けられている複数のアンカー部と、
請求項記載の取付補助具
を備え、
前記第1本体の前記横板部の上端が前記上側返し部に支持され、前記第1本体と前記第2本体とが固定されていることによって、橋梁の桁端部へ設置される際、前記第1本体及び前記第2本体の前記横板部に曲げ応力が生じて前記第1継手と前記第2継手の相対的な位置がずれることが防止されることを特徴とする伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付補助具及び伸縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮装置は、橋梁の種々の変位、主に環境における温度変化によって生じる橋桁の長さの変位を吸収するため、桁端部に設けられる。この伸縮装置は、桁端部間の平坦性を保つと共に、雨水などの浸透を防止する機能が求められている。
【0003】
このような伸縮装置として、一対の継手と、継手間に設けられたシール層とを備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1)。継手は、橋桁に露出する表面部と、当該表面部と一体に形成された腹板部とを有する。
【0004】
伸縮装置は、一対の継手間の距離がずれることがないように、桁端部に取り付ける必要がある。一対の継手に仮固定される一対のガイド部材と、継手の伸縮方向における相対位置を調節する伸縮手段とを備えた取付補助具が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−100150号公報
【特許文献2】特開2006−52610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の取付補助具は、伸縮手段がガイド部材の厚さ方向の一方に配置されているので、伸縮手段によって生じる力が継手に対し、アンバランスとなる。このため上記取付補助具は、継手部間の隙間を調節する精度が低下してしまうという懸念がある。
【0007】
本発明は、継手間の隙間の長さを精度よく調節することができる取付補助具及び伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る取付補助具は、橋梁の桁端部に設けられ、表面部と、当該表面部と一体に形成された腹板部とを有する第1継手及び第2継手を備える伸縮装置用の取付補助具であって、前記第1継手に固定される第1本体と、前記第1本体と厚さ方向に重ねて、前記第2継手に固定される第2本体とを備え、前記第1本体は、前記表面部を横断するように配置される横板部と、前記横板部から前記腹板部に沿うように前記横板部の両端に一体に形成された第1脚部及び第2脚部を有し、前記第1脚部は一側表面に、前記第2脚部は他側表面に、それぞれナットと、当該ナットにねじ込まれたボルトとを有し、前記第1脚部のボルトの先端は前記第2本体の端部に接触し、前記第2脚部のボルトの先端は前記第2継手の側部に接触することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る伸縮装置は、上記取付補助具が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1継手に固定された第1本体の一側表面と他側表面とにおいて、第2継手に対し力が加わるので、第2継手に加わる力が一方に偏らないため、第1継手と第2継手間の隙間の長さを精度よく調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る取付補助具が設けられた伸縮装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る取付補助具が設けられた伸縮装置の縦断面図である。
図3】本実施形態に係る取付補助具が設けられた伸縮装置の全体構成を示す平面図である。
図4】本実施形態に係る取付補助具が設けられた伸縮装置の使用状態を示す縦断面図であり、隙間を小さくした状態を示す図である。
図5】本実施形態に係る取付補助具が設けられた伸縮装置の使用状態を示す縦断面図であり、隙間を大きくした状態を示す図である。
図6】変形例に係る取付補助具が設けられた伸縮装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1に示す伸縮装置10は、鋼製であって、橋桁の幅と同じ長さを有する第1継手11及び第2継手12と、第1継手11及び第2継手12の長手方向にそれぞれ複数設けられたアンカー部13とを備える。
【0013】
第1継手11及び第2継手12は、橋桁表面側に配置される表面部14と、表面部14と一体に形成された腹板部16とを有する。表面部14は、橋桁の幅方向(図中Y方向)長さと同じ長さを有する略矩形状の板部材からなり、長手方向の一側面(以下、「先端」という)が相手側の表面部14の先端と対向するように配置されている。
【0014】
表面部14の先端は、相手側へ向かって櫛歯状の凹凸が繰り返し形成されている。表面部14の先端間には、隙間18が形成されている。表面部14の先端間に形成された隙間18は、表面部14の凹凸を組み合わせて形成されている。すなわち第1継手11の表面部14に形成された凹が、第2継手12の表面部14に形成された凸と対となっており、第1継手11の表面部14に形成された凸が、第2継手12の表面部14に形成された凹と対になっている。このように表面部14に形成された凹凸を組み合わせることによって、表面部14の先端間の隙間18はジグザグ状に形成されている。
【0015】
腹板部16は、表面部14の基端に一体形成されており、表面部14に対し直角に設けられた板部材からなる。腹板部16の外側表面には、アンカー部13が設けられている。アンカー部13は、略矩形状の板部材からなり、腹板部16の表面から橋軸方向(図中X方向)に平行に突出するように設けられている。
【0016】
第1継手11と第2継手12間には、図示しないが、防塵層と、シール層と、バックアップ層などが配置されている。防塵層は、EPDMフォームなど弾性を有する発泡体からなる。発泡体としては、連続気泡で構成されているだけでなく、独立気泡と連続気泡が混在していてもよい。
【0017】
伸縮装置10は、少なくとも1つ以上の取付補助具20を備えている。取付補助具20は、第1本体22及び第2本体24を有する。第1本体22及び第2本体24は、鋼製の板部材である。第1本体22は、横板部26と、前記横板部26の両端に一体に形成された第1脚部28及び第2脚部30とを有する。横板部26は、前記表面部14上を橋軸方向に横断するように配置される。
【0018】
図2に示すように、第1脚部28及び第2脚部30は、前記横板部26から前記腹板部16に沿うように横板部26に対し直角に形成されている。第1脚部28は、内面29において、溶接によって第1継手11の側部31に固定されている。第2脚部30の内面33と、第2継手12の側部35の間には、隙間37が形成されている。
【0019】
図3に示すように、第1脚部28の一側表面、及び第2脚部30の他側表面に、それぞれナット32,36が溶接によって固定されている。当該ナット32,36には、ボルトがそれぞれねじ込まれている。第1脚部28の一側表面のナット32にねじ込まれるボルトを第1ボルト34、第2脚部30の他側表面のナット36にねじ込まれるボルトを第2ボルト38と呼ぶ。
【0020】
第2本体24は、横板部40と、横板部40の一端に一体に形成された脚部41とを有する。横板部40は、前記表面部14上を橋軸方向に横断するように配置される。横板部40は、上端に前記第1本体22へ向かって突出した上側返し部42が形成されている。上側返し部42は、横板部40の上端を曲げて形成されている。
【0021】
脚部41は、前記横板部40から前記腹板部16に沿うように横板部40に対し直角に形成されている。第2本体24は、脚部41の内面43において、溶接によって第2継手12の側部35に固定されている。
【0022】
第1本体22の横板部26は、ボルト穴(図示しない)を有する。第2本体24の横板部40は、ボルト穴に対応した位置に長穴45を有する。第1本体22と第2本体24は、横板部26,40同士を重ねた状態で、ボルト穴から長穴45へ挿入されたボルト44と、当該ボルト44に締め込むナット47とによって連結されている。
【0023】
第1ボルト34の先端は、第2本体24の横板部40の他端に接触している。第2ボルト38の先端は、第2継手12の側部35に接触している。
【0024】
第1継手11と第2継手12間の隙間18の長さを調節する手順について説明する。第1継手11と第2継手12間の隙間18を小さくする場合、まず第1ボルト34を緩める。次いで、第2ボルト38を締める。側部35に先端が接触している第2ボルト38によって、第2継手12が第1継手11に向かって押される。第1継手11が第1本体22の第1脚部28に固定されているので、第1継手11と第2継手12間の隙間18は小さくなる(図4)。
【0025】
第1継手11と第2継手12間の隙間18を長くする場合、まず第2ボルト38を緩める。次いで、第1ボルト34を締める。横板部40に先端が接触している第1ボルト34によって、第2本体24が第1継手11から離れる方向へ押される。第2本体24は第2継手12に固定されているので、第2本体24と共に第1継手11から離れる方向へ押される。第2継手12が第1継手11から離れることにより、第1継手11と第2継手12間の隙間18が長くなる(図5)。
【0026】
上記のように第1継手11と第2継手12間の隙間18の長さが調節された状態で、ボルト44をナット47に締め込み、第1本体22と第2本体24を固定する。第1本体22と第2本体24を固定することにより、第1継手11と第2継手12間の隙間18が調節された状態に保持される。
【0027】
上記のように取付補助具20によって第1継手11と第2継手12間の隙間18の長さが調節された伸縮装置10は、その長手方向を橋桁の幅方向に合わせ、橋桁の桁端部に固定される。設置現場において、取付補助具20が設けられた伸縮装置10は、アンカー部13にスリングベルト(図示しない)を掛け回して吊り上げて、桁端部へ設置される。
【0028】
アンカー部13にスリングを掛け回して吊り上げた際、取付補助具20には、第1本体22と第2本体24の連結箇所である横板部26,40に、曲げ応力が生じる。取付補助具20は、第2本体24の上側返し部42が第1本体22の横板部26上端を支持すると共に、第1本体22及び第2本体24が、ボルト穴から長穴45へ挿入されたボルト44をナット47に締め込むことで固定されている。このように構成された取付補助具20は、アンカー部13において吊り下げられ、曲げ応力が生じた場合でも、第1継手11と第2継手12の相対的な位置がずれることを防止することができる。
【0029】
取付補助具20は、伸縮装置10が桁端部に設置された後、溶接箇所において切断され、伸縮装置10から取り外される。取付補助具20を取り外した後、桁端部にコンクリートが打設される。
【0030】
本実施形態に係る取付補助具20は、第1継手11に固定された第1本体22の、一側表面に設けた第1ボルト34と、他側表面に設けた第2ボルト38により第2継手12に対し力が加わる。したがって第2継手12に加わる力が一方に偏らないため、第1継手11と第2継手12間の隙間18の長さを精度よく調節することができる。
【0031】
第1ボルト34、第2ボルト38、ボルト44及びナット47は、同じサイズとすることにより、1つの工具で、第1継手11と第2継手12間の隙間18の長さを調節し、第1本体22と第2本体24を固定できるので、作業効率を向上することができる。
【0032】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0033】
上記実施形態の場合、取付補助具20の横板部26,40は、第1継手11及び第2継手12の表面部14に接触している場合について説明したが、本発明は、これに限らない。例えば、図6に示す取付補助具49の第1本体46は、第1脚部50の先端に腹板部16へ向かって突出した突出部51を有し、当該突出部51の先端において、溶接によって腹板部16表面に固定されている。第2本体48は、脚部52の先端に腹板部16へ向かって突出した突出部53を有し、当該突出部53の先端において溶接によって腹板部16表面に固定されている。取付補助具49の横板部26,40と、第1継手11及び第2継手12の表面部14の間に、隙間54が形成されている。取付補助具49は、第1継手11及び第2継手12の表面部14の間に、隙間54を有することにより、第1継手11と第2継手12間の隙間18の長さを調節する際に、横板部26,40が表面部14を傷つけることを防止できる。上記実施形態の場合、上側返し部42は、横板部40の上端を曲げて形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限らず、横板部の上端に溶接により固定してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 伸縮装置
11 第1継手
12 第2継手
14 表面部
16 腹板部
20 取付補助具
22 第1本体
24 第2本体
26 横板部
28 第1脚部
29 内面
30 第2脚部
31 側部
32 ナット
34 第1ボルト(ボルト)
35 側部
36 ナット
38 第2ボルト(ボルト)
40 横板部
41 脚部
42 上側返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6