【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、センター・オブ・イノベーション事業「共進化社会システム創成拠点」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記カソードとアノードの少なくとも一方として、請求項1から7のいずれかに記載の電極触媒層/ガス拡散層一体シートを用いてなることを特徴とする膜電極接合体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述のように、PEFCの構成部材には、金属材料(セパレータ)や炭素材料(ガス拡散層、電極触媒層)、酸化物材料(電極触媒層)が用いられているが、電子伝導率は一般に、金属材料>炭素材料>酸化物材料の関係にある。そして、セパレータや、ガス拡散層、電極触媒層は異なる材料が用いられているため、それぞれの構成部材間における接触抵抗も生じ、PEFCの性能を低下させる一因になっていた。
【0007】
伝統的に炭素材料が使用されてきた電極触媒層−ガス拡散層の導電パスを酸化物材料や炭素材料からより導電性の高い金属材料にすることで電気抵抗要因をさらに低減できる可能性がある。しかしながら、上述の通り、PEFCにおいて、膜電極接合体(MEA)に用いられるナフィオンは超強酸性であり、また、PEFCでは起動停止時等に高電位にさらされるため、炭素材料の腐食の問題がある。
また、担体として安定な電子伝導性の酸化物材料を使用した、特許文献3,4の電極触媒も導電補助材として炭素材料を使用するため、炭素材料の腐食の問題を完全には解決できない。また、電極触媒層において酸化物材料(電子伝導性酸化物担体)を使用すると、電極触媒層の電気抵抗が炭素系担体を使用した場合より高くなる傾向という課題があった。また、PEFCと同様の固体高分子膜を使用した水電解装置に使用される電極やその構成部材においても、上述のPEFCと同様の課題があった。
【0008】
かかる状況下、本発明の目的は、炭素材料を使用せず、電極触媒層の導電性に優れ、かつ、腐食劣化が生じない電極構造体、及び当該電極構造体を構成に含む電極触媒層/ガス拡散層一体シート、並びにこれらを使用した膜電解質接合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 金属チタンまたはチタン合金からなる多孔体基材シートと、前記多孔体基材シートに直接または前記多孔体基材の表面のTi酸化物層を介して担持された電極触媒と、を有する電極構造体。
<2> 前記電極触媒の少なくとも一部が、前記多孔体基材シートを構成する金属チタンまたはチタン合金に直接接触している前記<1>に記載の電極構造体。
<3> 前記電極触媒が、貴金属触媒である前記<1>または<2>に記載の電極構造体。
<4> 前記電極触媒の形状が、粒子状である前記<1>から<3>のいずれかに記載の電極構造体。
<5> 前記電極触媒の形状が、島状及び膜状のいずれか1種以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の電極構造体。
<6> 前記多孔体基材シートが、金属チタンまたはチタン合金からなる粒子の焼結体である前記<1>から<5>のいずれかに記載の電極構造体。
<7> 前記多孔体基材シートが、金属チタンまたはチタン合金からなる繊維の集合体である前記<1>から<5>のいずれかに記載の電極構造体。
【0011】
<8> 前記<7>に記載の電極構造体を含む電極構造体を含む、電極触媒層/ガス拡散層一体シートであって、前記多孔体基材シートを構成する繊維状の金属チタンまたはチタン合金の集合体の一方の面側から所定の厚みまで電極触媒を担持させて電極触媒層とし、当該多孔体基材シートにおける電極触媒層以外の部分をガス拡散層とする構成を有する電極触媒層/ガス拡散層一体シート。
<9> 前記電極触媒層の厚みが、10μm以上である前記<8>に記載の電極触媒層/ガス拡散層一体シート。
<10> 前記多孔体基材シートにおけるガス拡散層の表面及び内部に、導電補助材を固定化した前記<8>または<9>に記載の電極触媒層/ガス拡散層一体シート。
【0012】
<11> 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、
前記カソードとアノードの少なくとも一方として、前記<1>から<8>のいずれかに記載の電極構造体、または前記<9>または<10>に記載の電極触媒層/ガス拡散層一体シートを用いてなることを特徴とする膜電極接合体。
【0013】
<12> 前記<11>に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池。
<13> 前記<11>に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形水電解装置。
【0014】
<14> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の電極構造体の製造方法であって、金属チタンまたはチタン合金からなる多孔体基材シートに、電極触媒を担持する工程(A)を有することを特徴とする電極構造体の製造方法。
<15> 電極触媒を担持する方法が、アークプラズマ蒸着法である前記<14>に記載の電極構造体の製造方法。
<16> 工程(A)の前に金属チタンまたはチタン合金からなる多孔体基材シートを、アルカリエッチング処理したのちに酸洗浄し、さらに熱処理を施す前記<14>または<15>に記載の電極構造体の製造方法。
<17> 酸化雰囲気下で熱処理を行う前記<16>に記載の電極構造体の製造方法。
<18> 還元雰囲気下で熱処理を行う前記<16>に記載の電極構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電極構造体は、電極触媒層の導電パスが熱力学的に安定な金属チタンまたはチタン合金からなる多孔体基材シートによって形成されているため、電極触媒層の導電性に優れ、かつ、炭素材料を用いた場合に生じる腐食劣化が生じない。当該電極構造体又は当該電極構造体を構成に含む電極触媒層/ガス拡散層一体シートを用いた膜電極接合体を形成することにより、耐久性に優れ導電性・集電性が向上した膜電極接合体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0018】
<1.電極構造体>
本発明は、金属チタンまたはチタン合金からなる多孔体基材シートと、前記多孔体基材シートに直接または前記多孔体基材シートの表面に形成したTi酸化物層を介して担持された電極触媒と、を有する電極構造体(以下、「本発明の電極構造体」と称す場合がある。)に関する。
本明細書において「電極構造体」は、「電極触媒層」そのものである場合と、「電極触媒層とガス拡散層(GDL)とが一体化した電極触媒層/GDL一体シートである場合がある。
本発明において「電極構造体」が「電極触媒層」そのものである場合には他のGDLと組み合わせて用いられ、電極触媒層/GDL一体シートの場合には他のGDLを必要としない。
【0019】
本発明の電極構造体は、燃料電池、特には固体高分子形燃料電池(PEFC)の電極部材として好適に用いられる。以下、固体高分子形燃料電池の構成について説明するが、本発明の電極構造体は、燃料電池以外の電極部材(例えば、固体高分子形水電解装置の電極部材)としても使用することが可能である。
【0020】
図1は固体高分子形燃料電池の代表的な構成を示す概念図である。固体高分子形燃料電池においてアノードには水素が供給され、(反応1)2H
2 → 4H
++4e
-によって、生成したプロトン(H
+)は固体高分子電解質膜を介してカソードに供給され、また、生成した電子は外部回路(図示せず)を介してカソードへ供給され、(反応2)O
2+4H
++4e
-→2H
2Oによって、酸素と反応して水を生成する。このアノードとカソードの電気化学反応によって両電極間に電位差を発生させる。
【0021】
本発明に係る固体高分子形燃料電池において、アノード及びカソードの少なくとも一方に、本発明の電極構造体を用いていることに特徴がある。なお、本明細書においては、電極(アノード及びカソード)は、「電極触媒層」である場合と、「電極触媒層及びガス拡散層(GDL)」である場合とを含む概念とする。
【0022】
電極(アノード及びカソード)以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池と同様であるため、詳細な説明を省略する。実際には、本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)が発電性能に応じた基数だけ積層された燃料電池スタックが形成され、ガス供給装置、冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより使用される。
【0023】
以下、本発明の電極構造体の構成要素を詳細に説明する。なお、以下の説明において、「金属チタンまたはチタン合金からなる多孔体基材シート」を、「多孔体基材シート」と記載する。
【0024】
1−1.多孔体基材シート
本発明の電極構造体は、基材である多孔体基材シートが、金属チタンまたはチタン合金で構成されるため、電極触媒層における電気抵抗が大幅に低減され(酸化物担体に対する利点)、また、チタンまたはチタン合金は化学的安定性に優れ、PEFC運転条件の電位においても安定であるため、担持された電極触媒の脱落が生じない(炭素系担体に対する利点)。
なお、本発明において、「チタン合金」とは「Tiを40モル%以上含む合金」を意味する。Tiと合金化させる金属は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されない。
【0025】
本発明の電極構造体において、多孔体基材シートは、金属チタンまたはチタン合金で構成される。多孔体基材シートの構成要素の金属チタンまたはチタン合金はシート全体で導電性を有する程度に接触していればよくその形状は任意であるが、具体的には以下に説明するチタン粒子焼結体やチタン繊維集合体が挙げられる。
【0026】
チタン粒子焼結体は、金属チタンまたはチタン合金からなる粒子の焼結体(チタン粒子焼結体」と称す。)である。なお、本明細書において多孔体基材シートにチタン粒子焼結体を使用し、これに電極触媒を担持した電極構造体を、本願発明の電極構造体(第1の態様)と称す場合がある。
チタン粒子焼結体を構成するチタン粒子の大きさは、それぞれの粒子が接触して導電パスを形成し、連通孔を有しており、ガス透過可能な空隙率を有する限り任意であるが、通常、数μm〜数十μmの粒子が使用される。
チタン粒子焼結体の場合、機械的強度を保ち、ガス透過可能とする空隙率は40%程度である。具体的なチタン粒子焼結体の例は、実施例にて開示する。
【0027】
多孔体基材シートとしてチタン粒子焼結体を使用する場合には、
図2に示すように本発明の電極構造体(第1の態様)を電極触媒層とし、よりガス拡散性に優れるガス拡散層(GDL)と組み合わせて電極(アノード又はカソード)とすることが好ましい。
この場合、GDLには、金属系GDLを用いると、電極触媒層(本発明の電極構造体)を構成する多孔体基材シートとGDLの導電パスがすべて金属材料となるので、電極としての導電性に優れる。金属系GDLとしてはPEFC運転条件で熱力学的に安定なTiやTi合金のGDLが好ましく使用できる。後述するチタン繊維集合体をGDLに使用してもよい。
【0028】
なお、コスト等とのバランスから、カーボンペーパー等の公知の炭素系GDLを選択する場合もある。炭素系GDLとしては、例えば、基材層及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層を有するGDLが挙げられる。
【0029】
GDLと組み合わせる場合、本発明の電極構造体(多孔体基材シート)の厚みは、担持される電極触媒の種類や担持量にもよるが、通常、10〜100μm程度である。
【0030】
チタン繊維集合体は、多孔体基材シートが金属チタンまたはチタン合金からなる繊維の集合体である。なお、本明細書において多孔体基材シートにチタン繊維集合体を使用し、これに電極触媒を担持した電極構造体を、本願発明の電極構造体(第2の態様)と称す場合がある。チタン繊維集合体は、金属チタンまたはチタン合金からなる繊維が絡み合い、それぞれが電気的に接続している構造体であり、チタン繊維を焼結したり、圧着して形成することができる。チタン繊維集合体におけるチタン繊維の長さや太さは任意である。具体的なチタン繊維集合体の例は、実施例にて開示する。
【0031】
チタン繊維集合体に電極触媒を担持させることで、本願発明の電極構造体(第2の態様)とすることができるが、チタン繊維集合体は、上述したチタン粒子焼結体と比較して空隙率が大きいため(70%程度)、チタン繊維集合体そのものをGDLとして使用することができる。
そのため、
図3に示すようにチタン繊維集合体の一方の面側に電極触媒を担持させて、当該一方の面側を電極触媒層とし、反対の面側をガス拡散層とする構成とすることにより、電極触媒層/ガス拡散層が一体化したシート部材(電極触媒層/ガス拡散層一体シート)とすることができる。
すなわち、本発明の電極触媒層/ガス拡散層一体シートの好適な態様は、前記多孔体基材シートを構成する繊維状の金属チタンまたはチタン合金の集合体の一方の面側から所定の厚みまで電極触媒を担持させて電極触媒層とし、当該多孔体基材シートにおける電極触媒層以外の部分をガス拡散層とする構成を有することを特徴とする。
このような電極触媒層/ガス拡散層一体シートでは、電極触媒層及びガス拡散層の導電パスが、同一のチタン繊維集合体からなり、異なる部材の電極触媒層とガス拡散層を使用した場合に生じる電気抵抗が生じないため、電極に起因する電気抵抗を小さくすることができ、MEA内における導電性、集電性をさらに向上させることができる。
【0032】
電極触媒層/ガス拡散層が一体化したシート部材における電極触媒層の厚みは、チタン繊維集合体を構成する繊維状の金属チタンまたはチタン合金の径や長さ、チタン繊維集合体の空隙率、担持される電極触媒の種類や量等、さらには対象となる用途等を考慮して、電極として実質的に機能できる範囲で決定される。
前記電極触媒層の厚みは、例えば、10μm以上、30μm以上、50μm以上であり、また、これ以上の厚みであってもよい。但し、具体的には電極触媒層の厚みを厚くするほど、電極性能が向上するが内部に担持された電極触媒がうち、電極反応に寄与しない割合が増加するおそれがある。
【0033】
また、チタン繊維集合体において、電極触媒層を形成する面側の繊維密度を、反対面側より大きくしてもよい。このように構成することにより、電極触媒層を形成する面側に電極触媒をより多く担持することができ、電極触媒層の厚みを低減させ、電極反応に寄与しない割合を低減させることができる。
電極触媒層を形成する面側の繊維密度を向上させるためには、チタン繊維集合体を構成する繊維状の金属チタンまたはチタン合金から小径の繊維を成長させる方法が挙げられる。また、チタン繊維集合体に金属チタンまたはチタン合金をスパッタして、粒子状のTiを形成しチタン繊維集合体の表面積を増加させてもよい。
【0034】
また、電極触媒層/ガス拡散層一体シートでは多孔体基材シートにおける電極触媒層を形成した反対面側(すなわち、GDL側)はセパレータと接触させて導通をとるが、GDLとセパレータ界面での抵抗を低減させるために、多孔体基材シートにおける電極触媒層を形成した反対面側(すなわち、GDLの表面側)に、導電補助材を固定化してもよい。
導電補助材は、GDLとセパレータ界面での抵抗を低減できる状態で多孔体基材シート(GDL)の表面に固定化されていればよく、多孔体基材シート(GDL)の表面に薄層として固定化されていてもよいし、多孔体基材シート(GDL)の表面及び内部に粒子状や島状の形態で固定化されていてもよい。
導電補助材の材質としては、金(Au)やカーボン等が挙げられる。また、Pt等の電極触媒として使用される貴金属も使用できる。
【0035】
多孔体基材シートの構成材料であるチタンやチタン合金は、表面処理を行ってもよい。
適切な表面処理を行うことにより、表面積が大きくなり、より電極触媒の担持量を増加させることが可能となる。なお、表面処理の有無は、後述する電極触媒の担持方法と併せて適切な方法を選択すればよい。
【0036】
表面処理の具体的の方法は、実施例にて開示するが、以下に簡単に説明する。
まず、金属チタンまたはチタン合金からなる多孔体基材シートを、NaOH等でアルカリエッチング処理して高表面積化した後、酸洗浄によってアルカリ成分を除去する。表面にはTi水酸化物が形成されているので、熱処理によりTi水酸化物からTi酸化物と変化させると共に結晶性を向上させる。
【0037】
この際、熱処理を酸化雰囲気下(例えば、空気雰囲気)で行うことにより、通常のTiO
2より導電率が高いブロンズ型の酸化チタンが形成される。また、より膜厚の薄いTi酸化物層が形成される点で、還元雰囲気下で熱処理を行ってもよい。
【0038】
熱処理の有無及び雰囲気は、後述する電極触媒の担持方法と併せて適切な方法を選択すればよい。
【0039】
また、形成されるチタン酸化物層にTiより価数が高い元素(Sb,Nb,Ta,W,In,V,Cr,Mn,Mo等)をドープして、酸化チタンの電子導電性を高めることもできる。
【0040】
1−2.電極触媒
電極触媒は、電極触媒構造体の使用時に化学的に安定であり、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性を有するものであれば、貴金属系触媒、非貴金属系触媒のいずれでもよい。
電極触媒として、好適には、Pt,Ru,Ir,Pd,Rh,Os,Au,Ag等の貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金が挙げられる。なお、「貴金属を含む合金」とは「上記の貴金属のみからなる合金」と、「上記の貴金属とそれ以外の金属からなる合金で上記の貴金属を10質量%以上含む合金」を含む。貴金属と合金化させる上記「それ以外の金属」は、特に限定されないが、Co,Ni,Ti,W,Ta,Nb,Snを好適な例として挙げることができ、これらを1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。また、分相した状態で2種類以上の上記貴金属及び貴金属を含む合金を使用してもよい。なお、上記貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金を以下、「電極触媒金属」と呼ぶ場合がある。
【0041】
非貴金属系触媒としては、例えば、Ta,Zr,Tiの酸化物(TaO
x、ZrO
x、TiO
x)、窒化物(TaN
x、ZrN
x、TiN
x)、酸窒化物(TaO
xN
y、ZrO
xN
y、TiO
xN
y)等が挙げられる(式中、x、yは任意の数)。
【0042】
本発明の電極構造体をPEFCの電極部材として使用する場合には電極触媒金属としてPt及びPtを含む合金は、80℃以上の温度域において、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性に優れるため特に好適である。
【0043】
また、本発明の電極構造体を固体高分子形水電解装置の電極部材として使用する場合には電極触媒金属として水の電解活性に優れるIrやIr合金、PtやPt合金が好適である。この場合、IrやIr合金、PtやPt合金は熱処理等によりIr酸化物やPt酸化物として用いてもよい。
【0044】
また、電極触媒は、結晶に限定されず、目的とする電気化学的触媒活性を有する限り、非晶質であってよく、結晶と非晶質の混合体であってもよい。
【0045】
本発明の電極構造体において、電極触媒の形状は、特に制限されない。
電極触媒の形状の好適な態様の一つは、電極触媒の形状が粒子状であり、具体的な形状として球形、楕円形、多面体等が挙げられる。
粒子状の電極触媒の大きさは、小さいほど電気化学反応が進行する有効表面積が増加するため、電気化学的触媒活性が高くなる傾向がある。しかし、その大きさが小さすぎると、電気化学的反応活性が低下する。粒子状の電極触媒の大きさは、平均粒子径として1.5〜10nm以下、好ましくは1.5〜5nmである。
なお、本発明における「粒子状の電極触媒の平均粒径」は、電子顕微鏡像より調べられる粒子状の電極触媒(20個)の粒子径の平均値により得ることができる。電子顕微鏡像による平均粒径算出時は、粒子の形状が、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。
【0046】
また、電極触媒の形状の他の好適な態様は、粒子状の電極触媒が結合した状態であり、島状や膜状の状態が挙げられる。ここで、「島状」とは数個の粒子状の電極触媒が固まりになり、それぞれが分離した状態であり、「膜状」とは連続してつながり薄膜を形成した状態を意味する。
島状の電極触媒の大きさや、膜状の電極触媒の大きさ(広さ)や厚みは、十分な導電性と触媒活性を有する限り制限はない。
【0047】
電極触媒の担持量は、使用用途、貴金属の種類、担体であるチタン多孔体シートの表面状態(酸化物の有無及び状態、比表面積等)等を考慮して適宜決定される。電極触媒の担持量が少なすぎると電極性能が不十分となり、多すぎると凝集して性能が低下する場合がある。例えば、燃料電池用電極材料の全重量に対して、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.5〜20質量%とすると、単位質量あたりの触媒活性に優れ、担持量に応じた所望の電極反応活性を得ることができる。なお、電極触媒の担持量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分析(ICP)によって調べることができる。
【0048】
本発明の電極触媒多孔体シートの好適な態様は、多孔体基材シートが、表面にTi酸化物層を有する場合において、電極触媒の少なくとも一部が、多孔体基材シートを構成する金属チタンまたはチタン合金に直接接触している態様である。
チタンまたはチタン合金からなる多孔体の最表面は酸素に触れると自然に酸化されるので、自己組織的にコアシェル構造(内部(コア)が金属Ti、表面(シェル)がTi酸化物層)になる。Ti酸化物層は導電率が低く薄膜であっても電気抵抗が高い。
図4に示す模式図のように、多孔体基材シートを構成する金属チタンまたはチタン合金において、表面にTi酸化物層を有する場合、電極触媒がTi酸化物層を介して担持されると(
図4左)、Ti酸化物層に起因する電気抵抗が生じるが、電極触媒の少なくとも一部が、多孔体基材シートを構成する金属チタンまたはチタン合金に直接接触して担持されていると(
図4右)、金属―金属接合のため電子移動がスムーズに行われ、ひいては電極触媒層自体の電気抵抗が小さくなる。
なお、
図4右では粒子状の電極触媒が多孔体基材シートを構成する金属チタンまたはチタン合金に直接接触している模式図を示したが、電極触媒の形状は島状や膜状であってもよい。
【0049】
電極触媒の少なくとも一部が、多孔体基材シートを構成する金属チタンまたはチタン合金に直接接触して担持する方法としては、アークプラズマ放電蒸着法が好ましく採用される。
【0050】
なお、電極触媒の担持方法は、アークプラズマ放電蒸着法に限定されず、公知の貴金属担持方法を採用することができる。例えば、蒸着(アークプラズマ放電蒸着以外も含む)やスパッタ等の乾式法のみならず、貴金属アセチルアセトナートを使用する貴金属アセチルアセトナート法や貴金属コロイドを使用するコロイド法等の湿式法も選択できる。
【0051】
<2.膜電極接合体(MEA)>
上述した本発明の電極構造体や電極触媒層/GDL一体シートは、膜電極接合体(MEA)の構成部材として使用できる。
なお、本明細書において、「膜電極接合体(MEA)」は、電解質膜、電極(アノード及びカソード)のみならず、GDL(アノードGDL、カソードGDL)を含み得る概念とする。
【0052】
本発明のMEAの第1の態様は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記カソードとアノードの少なくとも一方として、上述した本発明の電極構造体を用いてなることを特徴とする。
【0053】
本発明のMEAの第2の態様は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体と、ガス拡散層(GDL)とを有する膜電極接合体/ガス拡散層一体構造であって、前記カソードとアノードの少なくとも一方として、上述した電極触媒層/ガス拡散層一体シートを用いてなることを特徴とする。
【0054】
本発明のMEAにおいて、本発明の電極構造体(電極触媒層/ガス拡散層一体シート)以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0055】
また、本発明のMEAは、固体高分子形燃料電池のみならず、固体高分子形水電解装置の構成部材として使用可能である。
【0056】
<3.固体高分子形燃料電池>
本発明の固体高分子形燃料電池は、本発明の膜電極接合体を備えてなり、通常、膜電極接合体をガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。
【0057】
本発明の固体高分子形燃料電池において、本発明の膜電極接合体以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0058】
以上、本発明の電極構造体及びこれを含む電極触媒層/GDL一体シート、並びにこれらを含む膜電解質接合体、固体高分子形燃料電池について説明したが、今回開示のすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、各種パラメータ、寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
1.電極触媒シートの作製
実施例の電極触媒シートは以下の手順で作製した。
図5に作製手順を示すフローチャートを示す。
1−1.Ti多孔体シート
チタンからなる多孔体基材シートであるTi多孔体シートとして、表1に仕様を示す金属チタン粒子焼結体シート(以下、「Ti多孔体シート(Ti(P))」又は単に「Ti(P)」と表記する。)及び金属チタン繊維集合体シート(以下、「Ti多孔体シート(Ti(F))」又は単に「Ti(F)」と表記する。)を使用した。
表1にTi多孔体シート(Ti(P)及びTi(F))の仕様を示す。また、
図6にTi(P)、
図7にTi(F)とのFE−SEM像を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1〜3にはTi多孔体シート(Ti(P))、実施例4にはTi多孔体シート(Ti(F))を用い、それぞれに
図5に示す処理を行った。以下、各処理を説明する。
【0063】
1−2.NaOH処理
実施例2,3はNaOH処理をおこなった。まず、10mm×10mmにカットしたTi多孔体シート(Ti(P))を、60℃に保持した5MのNaOH水溶液100mL中で1時間攪拌した。
図8にNaOH処理前後のTi多孔体シート(Ti(P))のFE−SEM像を示す。
【0064】
1−3.酸洗浄(酸洗い)
実施例2,3はNaOH処理後、0.5MのHNO
3水溶液中で15分超音波をかけ、Naを除去した。その後、純水で洗い流した
【0065】
1−4.熱処理
実施例2は、上記処理後のTi多孔体シート(Ti(P))を空気雰囲気で400℃、5時間の条件で熱処理を行った。実施例3は、上記処理後のTi多孔体シート(Ti(P))を5%H
2−N
2雰囲気で500℃、30分の条件で熱処理を行った。
【0066】
1−5.Ptの担持
Pt微粒子をTiシート上に蒸着するためアークプラズマ蒸着法を採用した。実験装置はアークプラズマ成膜装置(アルバック理工株式会社)を使用した。
上記Ti多孔体シート(未処理の実施例1、又は上記処理を行った実施例2,3のTi多孔体シート)に以下の条件でアークプラズマ蒸着(電圧:100V、圧力:10
-3Pa、充放電周波数:3Hz)を行い、目的とする実施例1〜3のPt担持Ti多孔体シート(Pt/Ti多孔体シート)を得た。
【0067】
2.物性評価
2−1.X線回折(XRD)による解析
Pt担持前の実施例1〜3のTi多孔質シートのXRD測定を行った結果を
図9に示す。表面処理を行っていない実施例1、空気雰囲気で熱処理を行った実施例2、還元雰囲気で熱処理を行った実施例3において、大きなピークのずれは見られず、金属Tiのピークが大きく検出された。
【0068】
2−2.透過型電子顕微鏡(TEM)観察
実施例2のTi多孔体シートについて、TEMによる微細構造観察を行った。
図10にTEM観察結果及び制限視野電子回析パターンを示す.TEM観察により、ブロンズ型TiO
2の110面の面間隔0.356nmとほぼ同等の面間隔0.36nmが確認されたことから、実施例2のTi多孔体シートにブロンズ型TiO
2が生成していると判断した。
【0069】
2−3.Pt担持状態の評価
未処理のTi多孔体シート(Ti(P)及びTi(F))へのPtの担持はアークプラズマ蒸着法で行った。使用した
図11にアークプラズマ蒸着法における充放電回数とPt担持量の関係を示す。Pt担持量は、ICP発光分析により求めた。
図11からからわかるように、充放電回数に比例してPt担持量は増加すること、同じ充放電回数の場合、Ti(P)及びTi(F)の単位面積当たりのPt担持量は、ほぼ同量あることが確認された。
【0070】
図12にPt担持後(充放電回数:10回、25回、50回)のTi多孔体シート(Ti(P)、未処理)のTEM像を示す。また、比較のため、Pt担持なし(充放電回数:0回)のTEM像も併せて示す。また、
図13にPt担持後(充放電回数:10回、25回)のTi多孔体シート(Ti(P))の高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)観察結果を示す。
図12のTEM像において、充放電回数10回ではPt粒子が明確に確認できなかったが、
図13に示す通り、HAADF-STEM観察では充放電回数10回においてPtが5nm以下の粒子で存在していることが確認された。SEM用画像解析ソフト(Scandium)により、平均粒子径を求めたところ2.42nmであった.
また、
図12のTEM像において、充放電回数25回ではPt粒子と思われるもの (図中の黒い粒子)が確認され、
図13に示す通り、HAADF-STEM観察では充放電回数25回では、粒子が部分的につながった島状にPtは存在していた。
また、
図12のTEM像において、充放電回数50回では全体的なアモルファスな膜状のPt(全体的に写る黒い部分)中に、部分的に結晶化したPt(濃く黒く映る粒子)が存在していることが確認できた。また、SEM−EDSの評価(図示せず)により、Pt担持したTi多孔体シート(Ti(P))表面に存在する粒子がPtであることを確認した。
【0071】
以上の観察結果より、充放電回数によるPt担持状態の変化は以下であると判断した。
(I)充放電回数10回未満 :Ptは5nm以下の粒子で存在
(II)充放電回数10〜25回 : Ptは粒子もしくは島状で存在
(III)充放電回数25〜50回: Ptは島状もしくは膜状で存在
(IV)充放電回数50回以上 : Ptは膜状に存在
【0072】
3.電気化学的評価(ハーフセル)
3−1.Pt担持Ti多孔体シート(Ti(P))
(1)電気化学的表面積(ECSA)の評価
実施例1〜3のPt担持Ti多孔体シート(Ti(P))について、サイクリックボルタンメトリー(CV)を行い、電気化学的表面積(ECSA)の評価を行った。なお、ECSAは、担持されたPt触媒粒子の有効表面積に相当する。
【0073】
CVの測定条件は以下の通りである。電気化学的表面積(Pt有効表面積)は、表面のPt原子一つに水素原子が一つ吸着するとの仮定に基づき、CVから求めた水素吸着量から算出した。なお、1原子のPtに付き 1原子のHが吸着すると仮定すると210μC/cm
2の電気量となる。
測定:三電極式セル(作用極:燃料電池用電極材料/GC、対極:Pt、参照極:Ag/AgCl)
電解液:0.1M HClO
4(pH:約1)
測定電位範囲:0.05〜1.2V(可逆水素電極基準)
走査速度 :50 mV/s
水素吸着量:0.05〜0.4Vの水素吸着を示すピーク面積から算出
電気化学的表面積(ECSA):下記式より算出
ECSA=(水素吸着量)[μC] / 210[μC/cm
2]
【0074】
実施例1〜3のCVにおいて水素の吸脱着に由来するピークが観察された(図示せず)。CVから求めた実施例1〜3のPt担持Ti多孔体シート(Ti(P))の電気化学的表面積(ECSA)の評価結果を
図14に示す。
図14に示されるように電気化学的表面積(ECSA)は、30〜160m
2/gで、従来の炭素系担体を使用した電極触媒(ECSA60〜80m
2/g程度)と同等あるいは同等以上であった。
なお、充放電回数10回、25回ではECSAは100m
2/g以上と高い値を示しており、これはPtが粒子状に存在しているためと判断した。また、充放電回数が増えるとECSAが下がる傾向については、Ptの粒子径、もしくは膜厚が増大するためと判断した。また、未処理のTi多孔体シート(Ti(P))を使用した実施例1では、充放電回数10回のECSA 130 m
2/gから半球モデルで算出したPt粒子径は2.2nmあり、これは
図13に示したHAADF-STEM観察結果より求めたPt平均粒子径2.4nmとほぼ一致している。
【0075】
(2)リニアスイープボルタンメトリー(LSV)による評価
実施例1〜3のPt担持Ti多孔体シート(Ti(P))についてリニアスイープボルタンメトリー(LSV)による評価を行った。Pt担持のためのアークプラズマ蒸着法の充放電回数は150回とした。
まず、O
2を100mL/分で30分間バブリングした後、攪拌子で溶液を攪拌させながら、前処理として1.20V
RHEから卑な方向に向けて10mV/秒で0.2V
RHEまで電位を走査し、続けて0.2V
RHEから貴な方向に向けて10mV/秒で1.20V
RHEまで電位を走査し、測定を行なった。なお、測定中は常にO
2を100mL/分でパージした。なお、V
RHEは可逆水素電極(RHE)基準の電位である。
図15に実施例1〜3のPt担持Ti多孔体シート(Ti(P))のリニアスイープボルタモグラムを示す。なお、低電位側に見られるノイズは、酸素ガスの供給の変動によるもので、回転電極で測定を行うと観測されない。
撹拌の影響が少ない電圧0.9V
RHEの電流値をPt質量で除した値で比較すると、実施例1(未処理)47.0A/g、実施例2(酸化処理)28.7A/g、実施例3(還元処理)41.9A/gであり、撹拌回転数の影響を考慮すれば、表面処理を行っていない実施例1と、還元処理を行った実施例3はほぼ同じORR活性を示している。これの結果から、Pt担持前の実施例1,3のチタン多孔体シート(Ti(P))はチタン表面の酸化層が薄く、Pt担持のためのアークプラズマ蒸着法の際にプラズマにより酸化膜が除去され、金属Tiの上に直接Ptが担持されたためであると判断できる。
【0076】
3−2.Pt担持Ti多孔体シート(Ti(F))(電極触媒/GDL一体シート)
(1)電気化学的表面積(ECSA)の評価
実施例4のPt担持Ti多孔体シート(Ti(F))についても、実施例1〜3と同じ条件でCVを行い、電気化学的表面積(ECSA)を評価した。
実施例4のCVにおいて水素の吸脱着に由来するピークが観察された(図示せず)。CVから求めた実施例4のPt担持Ti多孔体シート(Ti(F))の電気化学的表面積(ECSA)の評価結果を
図16に示す。
CVより算出した電気化学的表面積(ECSA)は、45〜60m
2/gで、従来の炭素系担体を使用した電極触媒(ECSA60〜80m
2/g程度)と同等であった。
【0077】
(2)電気化学的評価(単セル、初期性能評価)
以下の通りにMEAを作製し、単セルによる発電実験(IV測定)を行った。固体電解質膜としてナフィオン膜(デュポン社製、ナフィオン212 厚さ51μm)を使用した。
まず、標準触媒である46wt%Pt/C(田中貴金属工業株式会社、TEC10E50E)を、ナフィオン溶液を含む所定の有機溶媒に分散させて、アノード形成用の分散溶液を調合した。得られた分散溶液をナフィオン膜上にスプレー印刷して、所定の厚みのアノード(電極触媒層)をナフィオン膜上に作製した。
アノード(電極触媒層)の上には、ガス拡散層として撥水性カーボンペーパー(東レ社製、型番:EC−TP1−060T)を配置した。なお、アノードの形成において、Pt量が0.3mg/cm
2になるように調整した。
カソードは、実施例4のPt担持Ti多孔体シート(未処理のTi(F)にアークプラズマ蒸着法でPt担持した電極触媒層/GDL一体シート)を使用した(充放電回数:300回(0.013mgPt/cm
2)又は500回(0.022mgPt/cm
2))。
実施例4のPt担持Ti多孔体シートの電極触媒層が形成された面に所定量のナフィオンを含む溶液を滴下して電極触媒層部分にナフィオンを含ませたのちに、アノードを形成したナフィオン膜の反対面に、圧着させて、カソード(電極触媒層/GDL)を形成し、目的とするMEAを得た。
【0078】
作製したMEAを組み込んだ単セル発電評価用治具(自作)を80℃に設定した恒温槽内に設置し、以下の条件で発電試験を行ったところ、所定の起電力を生じ、IV特性を評価することができた。
なお、燃料電池評価装置(東陽テクニカ社製、型番:PE−8900K)およびポテンショ/ガルバノスタット(Solatron社製、型番:SI1287)を用いた。
(アノード条件)
電極面積:1cm
2
供給ガス種 :100% H
2
ガス供給速度 :100mL/分
供給ガス加湿温度 :80℃(相対湿度:100%)
(カソード条件)
電極面積:1cm
2
供給ガス種 :Air
ガス供給速度 :100mL/分
供給ガス加湿温度 :80℃(相対湿度:100%)