【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 イノベーションハブ構築支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すように、実施形態に係るスクリュー回転体を使用した掘削推進装置1は、掘削装置2と、推進装置3と、抽出装置4と、制御装置5とを備え、推進装置3で掘削装置2を推進させるとともに掘削装置2のスクリュー回転体20で掘削対象部としての例えば地盤Eを掘削する。
【0008】
掘削装置2は、いわゆるアースオーガであり、スクリュー回転体20と、スクリュー回転体20を駆動する駆動源としてのモーター51と、折曲自在に構成された筒状体(ケーシング)6と、筒状体6の先端に設けられたスカート部7とを備えて構成される。
【0009】
図2に示すようにスクリュー回転体20は、回転軸21と、回転軸21に沿った方向に螺旋状に延長するように回転軸21の周りに設けられた螺旋体としての螺旋羽根22と、回転軸21及び螺旋羽根22の先端側に設けられた掘削手段としての掘削ビット23とを備え、回転軸21が折曲可能に構成されている。
即ち、スクリュー回転体20は、回転軸21に沿った方向に螺旋状に延長するように回転軸21の周りに螺旋羽根22が取付けられた構成であるスクリュー24の先端に掘削ビット23を備えた構成である。
【0010】
スクリュー24は、回転軸に沿った方向に螺旋状に延長するように回転軸の周りに螺旋羽根が取付けられて構成された例えば1本のスクリュー(言い換えれば、回転軸が螺旋羽根の回転中心軸を形成する剛体により構成された1本のスクリュー)を、軸の長さが所定の長さとなるように複数に分割した複数の分割スクリュー24A,24B,24Cを用いて構成される。
【0011】
つまり、スクリュー24は、複数の分割スクリュー24A,24B,24Cの回転軸の端部同士が軸連結部26を介して連結され、先端側に位置する分割スクリュー24Aの先端に掘削ビット23を備え、軸連結部26が折曲自在に形成された構成である。
【0012】
スクリュー24は、スクリュー24の先端部を形成する分割スクリューとしての先端側スクリュー24Aと、スクリュー24の中間部を形成する分割スクリューとしての1つ以上の中間側スクリュー24Bと、スクリュー24の後端部を形成する分割スクリューとしての後端側スクリュー24Cとを備える。
【0013】
スクリュー24は、例えば
図2に示すように、先端側スクリュー24Aと、2つの中間側スクリュー24Bと、後端側スクリュー24Cと、先端側スクリュー24Aの後端と先端側に位置する中間側スクリュー24Bの前端とを連結する軸連結部26と、先端側に位置する中間側スクリュー24Bの後端と後端側に位置する中間側スクリュー24Bの前端とを連結する軸連結部26と、後端側に位置する中間側スクリュー24Bの後端と後端側スクリュー24Cの前端とを連結する軸連結部26とを備え、後端側スクリュー24Cの後端とモーター51の出力軸とがカップリング等の軸連結部材27により連結されて構成される。
【0014】
スクリュー24は、例えば合成樹脂等の非金属や金属等を素材とする剛体軸により形成された1本の回転軸を複数に分割した複数の分割回転軸(例えば
図2に示すように先端側分割回転軸21A、2つの中間側分割回転軸21B、後端側分割回転軸21C)の端部同士が軸連結部26を介して折曲可能、かつ回転力を伝達可能なように連結され、各分割回転軸の周りに分割回転軸に沿った方向に螺旋状に延長する例えば合成樹脂等の非金属や金属等を素材とする剛体により形成された螺旋羽根(例えば
図2に示すように先端側螺旋羽根22A、2つの中間側螺旋羽根22B、後端側螺旋羽根22C)が取付けられている。先端側螺旋羽根22Aの後端側、2つの中間側螺旋羽根22Bの先端側及び後端側、後端側螺旋羽根22Cの先端側には、螺旋羽根28bを取り付けるための取付部が設けられる。
【0015】
軸連結部26は、上述した各分割回転軸の端部同士を折曲可能でかつ回転力を伝達可能に連結する例えば自在継手(ユニバーサルジョイント)により構成される。
【0016】
尚、スクリュー24は、各軸連結部26の周囲に何も設けない構成としても良い。しかしながら、このように各軸連結部26の周囲に何も設けずに、各軸連結部26の周囲において螺旋羽根が欠落した構成の場合、当該螺旋羽根が欠落した部分を掘削物としての例えば掘削土が通過する際に、スクリュー24を回転させるためのトルクが上昇し、モーター51の負荷が大きくなる可能性がある。
そこで、スクリュー24は、各軸連結部26の周囲に折曲可能な可撓性を有した螺旋部として、例えば板バネ製の螺旋羽根部28を設けることで、螺旋羽根が欠落せずに連続する構成とすることが好ましい。当該螺旋羽根部28は、例えば
図2に示すように、軸連結部26の軸の径とほぼ同径の円筒状に形成されて軸連結部26の外周面を覆うゴム製の円筒体28aと、当該ゴム製の円筒体28aの外周面に対して所定の隙間、換言すれば非固着の状態で設けられた板バネ製の螺旋羽根28bとを備える。
【0017】
図3(a)に示すように、螺旋羽根28bは、例えば、ばね鋼を素材とする薄肉の板材をC字状に切り抜いて形成される。螺旋羽根28bは、周方向の各端部t1;t2には、先端側螺旋羽根22A、2つの中間側螺旋羽根22B、後端側螺旋羽根22Cに取り付けるための取付部としての複数の貫通孔Hを備える。本実施形態における螺旋羽根28bは、スクリュー24の一ピッチ分に相当するように形成されている。即ち、螺旋羽根28bは、一方の端部t1を固定し、他方の端部t2を一ピッチ分垂直方向に離間させて螺旋羽根28bの内周を軸方向に平面視したときの直径が軸連結部26の直径よりも大きな寸法に設定される。
【0018】
図3(b)−1は、先端側スクリュー24Aを後端側から見た平面図、
図3(b)−2は、先端側スクリュー24Aに連結される中間側スクリュー24Bを先端側から見た平面図を示している。先端側スクリュー24Aにおける先端側螺旋羽根22Aの後端側には、螺旋羽根28bの一方の端部に設けられた貫通孔Hに対応する取付部としての貫通孔F、中間側先端側スクリュー24Bにおける先端側螺旋羽根22Aの先端側には、螺旋羽根28bの他方の端部に設けられた貫通孔Hに対応する取付部としての貫通孔Gが設けられている。螺旋羽根28bは、スクリュー24の一ピッチ分に相当するように形成されていることから、先端側スクリュー24Aと中間側スクリュー24Bは、先端側螺旋羽根22Aの貫通孔Fと中間側螺旋羽根22Bの貫通孔Gとが対向するように軸連結部26により連結される。そして、螺旋羽根28bは、軸連結部26を覆うように一方の端部t1の貫通孔Hを先端側螺旋羽根22Aの貫通孔Fに一致させてねじ止め固定した後に、他方の端部t2を中間側スクリュー24B方向に移動させて中間側螺旋羽根22Bの貫通孔Gに一致させてねじ止め固定することで取り付けられる。このように取り付けられた螺旋羽根28bは、一方の端部t1を固定し、他方の端部t2を一ピッチ分垂直方向に離間させて螺旋羽根28bの内周を軸方向に平面視したときの直径が軸連結部26の直径よりも大きな寸法に設定され、軸連結部26の外周との間に所定の隙間Sを有して取り付けられる。なお、他の軸連結部26においても同様に螺旋羽根28bが取り付けられる。
【0019】
このように、螺旋羽根が欠落せずに連続するように構成されたスクリュー24であれば、軸連結部26の外側で板バネ製の螺旋羽根28bが張力をもって変形可能であることにより掘削土が破砕され、回転軸21に沿って連続して設けられた螺旋羽根により掘削土が連続してスムーズに後方に搬送されるようになるため、スクリュー24を回転させるためのトルクの上昇を抑制でき、モーター51の負荷を軽減できるようになる。
【0020】
また、螺旋羽根28bが軸連結部26と所定の隙間Sを有して非固着の状態で設けられているため、スクリュー24が屈曲しても軸連結部26に接触することなく、モーター51の負荷を軽減することができる。また、軸連結部26の外周面を覆うゴム製の円筒体28aを備えていることにより、軸連結部26の折れ曲がりに追従できて、かつ、軸連結部26への防塵効果も得られる。なお、螺旋羽根28bは、軸連結部26と接触しても良いが、軸と独立的に動作可能となっていれば良く、より好ましくは、非接触であることが好ましい。
【0021】
このように、スクリュー24は、軸連結部26を備えたことにより、モーター51の回転力を後端側から先端側に伝達できるとともに、折れ曲がり可能に構成されている。即ち、スクリュー回転体20は、地盤Eを掘削ビット23により掘削しながら折れ曲がって進行可能であり、掘削ビット23で掘削された掘削土が螺旋羽根22の螺旋回転により後方に搬送されるように構成されている。
【0022】
上記スクリュー24が内部に配置される筒状体6は、例えば合成樹脂等の非金属や金属等を素材とする剛体により形成された1つの円筒を複数に分割した複数の分割円筒を用いて構成される。即ち、筒状体6は、複数の分割円筒62A,62B,62Cの端部同士が、折曲自在に形成された筒連結部61を介して連結され、当該筒連結部61で折曲可能に構成された円筒体62と、制御装置5によって制御されて各筒連結部61を折曲させる折曲装置63とを備えた構成である。
【0023】
円筒体62は、円筒体62の先端部を形成する分割円筒としての先端側円筒62Aと、円筒体62の中間部を形成する分割円筒としての1つ以上の中間側円筒62Bと、円筒体62の後端部を形成する分割円筒としての後端側円筒62Cとを備える。なお、先端側円筒62A、中間側円筒62B、後端側円筒62Cの構成の詳細については後述する。
【0024】
図4に示すように、筒状体6は、先端側円筒62Aと、中間側円筒62Bと、後端側円筒62Cと、先端側円筒62Aの後端と中間側円筒62Bの前端とを連結する筒連結部61と、中間側円筒62Bの後端と後端側円筒62Cの前端とを連結する筒連結部61とを備え、先端側円筒62Aの前端が筒連結部61を介してスカート部7の後端と連結された構成である。
図1に示すように、各筒連結部61の外周側には、後述の折曲装置63が配設されており、折曲装置63の駆動により、筒連結部61が独立して折曲することにより、全体を自在に折曲可能とされている。
尚、図示しないが、中間側円筒62Bを2つ以上備える場合は、先端側に近い中間側円筒62Bの後端と後端側に近い中間側円筒62Bの前端とを筒連結部61を介して連結し、かつ、当該筒連結部61と対応する位置に折曲装置63を配設すればよい。
【0025】
筒連結部61の構成としては例えば可撓性を有する蛇腹状部材(例えばゴム製の蛇腹)等を用いるのが好適である。
【0026】
以下、折曲装置63の一例を示す。
本例における折曲装置63は、例えば
図5に示す伸縮ユニット63Aにより構成される。伸縮ユニット63Aは、先端側円筒62A、中間側円筒62B、後端側円筒62Cにそれぞれ対応して設けられる後述の推進装置3を構成する推進ユニット8(
図6等参照)が備えるフランジ65;65間に連結された伸縮体である。伸縮ユニット63A内には、空気等の流体を導入可能となっており、制御装置5が伸縮ユニット63Aに対する流体の給排量を制御することで、伸縮ユニット63Aが軸方向に伸縮し、筒連結部61を自在に曲げることが可能となる(
図5(b)参照)。尚、伸縮ユニット63Aは、筒連結部61の周囲に例えば等間隔に3箇所以上設けられ(好ましくは例えば筒連結部61の中心軸を中心として筒連結部61の周方向に90度間隔で伸縮ユニット63Aを4箇所に設ける)、制御装置5で各伸縮ユニット63Aを制御することにより、筒連結部61を全方位に曲げることが可能となる。
図5に示すように、伸縮ユニット63Aは、両端の開口がそれぞれ蓋部材63a,63aで閉塞された両端閉塞の筒状のゴム等の弾性体からなる伸縮体63bと、伸縮体63bの筒の中央側の外周を取り囲むように設けられて伸縮体63bの膨張を制限するリング63cとを備える。伸縮体63bを構成する弾性体の内部には、軸方向に沿って延長する複数のカーボンロービング繊維等により形成された繊維層63dが内挿されており、当該繊維層63dの両端部は、弾性体と共に蓋部材63a,63aによって拘束される。そして、このように構成された伸縮ユニット63Aの伸縮体63b内に、蓋部材63aに形成された図外の流体供給口及びゴムチューブ等の流路を介して流体が導入された場合、伸縮体63bの膨張が繊維層63dの拘束によって半径方向のみに規制される結果、その全体長が軸方向に収縮することとなる。一方、蓋部材63aに形成された図外の流体供給口及び流路を介して流体が排出された場合、伸縮体63bの弾性力によってその全体長が伸長し、自然長に復帰する。複数のリング63cは、伸縮体63bの長さ方向に等しい間隔を隔てて複数個設けられており、伸縮体63bの半径方向への膨張を抑制する。よって、その数は、使用環境に応じて適宜設定可能である。
なお、伸縮ユニット63Aの構成を、個別に形成された複数の伸縮体63bを軸方向に連結した構成としてもよい。当該構成を採用する場合、各伸縮体63bを上記蓋部材63a,63aによって個々に閉塞する。そして、個々に閉塞された各伸縮体63b同士を軸方向に連結するとともに、各伸縮体63bに個別に流体を給排可能なチューブ等を接続することにより、各伸縮体63bを独立して伸長させることができる。そして、制御装置5によって給排対象とする伸縮体63b及び流体の給排量を制御することにより、筒連結部61をより細かく全方位に曲げることが可能となる。なお、図示では省略しているが、フランジ65の径方向外側には、
図1に示すように折曲装置63の外周側を覆う可撓性を有する防塵カバー66が配置されている。
【0027】
スカート部7は、後端開口の直径が、円筒体62の先端開口の直径と対応するように形成され、先端開口の直径が、後端開口の直径よりも大きい寸法に形成されて、かつ、スクリュー24の螺旋羽根22の先端の回転径よりも小さい寸法に形成された筒体により構成される。即ち、スカート部7の筒孔の直径は、後端開口側から先端開口側に向かうに従って徐々に漸増するように形成される。つまり、スカート部7の筒孔の内周面は、円錐台の外周面と対応した面に形成されている。
【0028】
図1に示すように、筒状体6及びスカート部7の筒孔を貫通して筒状体6の後端開口6eより後方に突出するスクリュー24の後端に連結されたモーター51が、モーター固定部52に固定される。そして、当該モーター固定部52が支持部53を介して筒状体6の後端のフランジに連結されていることで、筒状体6の中心軸とスクリュー24の中心軸とが一致して、かつ、スクリュー24の先端側がスカート部7の先端開口7eよりも前方に位置するように、スクリュー24が配置される。また、スクリュー24の先端側がスカート部7の先端開口7eよりも前方に位置し、かつ、スクリュー24の螺旋羽根22の先端の回転径がスカート部7の先端開口7eの外周の直径よりも大きく形成されていることにより、既に掘削した掘削穴の内壁から掘削土が崩れて穴底側に落下した場合でも、当該崩れた掘削土がスクリュー24により後方に搬送されるので、効率よく掘削することができる。
【0029】
尚、筒状体6の筒連結部61及びスクリュー回転体20の軸連結部26は、筒状体6及びスクリュー回転体20の中心軸と直交する同一平面上、又は、当該同一平面近傍位置に設けられることが好ましい。このようにすることで、筒連結部61を曲げた場合に追従して曲がる軸連結部26の追従性が良好になり、掘削装置2の進行方向制御を正確に行うことができるようになる。
【0030】
即ち、実施形態1の掘削装置2は、スクリュー回転体20と、筒内にスクリュー回転体20が設置された状態で折曲可能に構成された筒状体6と、スクリュー回転体20の駆動源としてのモーター51と、制御装置5とを備え、筒状体6は、複数の分割円筒62A,62B,62Cの端部同士が折曲可能な筒連結部61を介して連結されるとともに、筒連結部61を折曲させる折曲装置63を備え、スクリュー回転体20は、回転軸21が筒状体6の中心軸に沿って延長するように筒状体6の内側に配置され、制御装置5が、モーター51を制御してスクリュー回転体20の回転軸21を回転させるとともに、折曲装置63を制御して筒連結部61を折曲させることにより、筒連結部61の折れ曲がりに追従してスクリュー回転体20の軸連結部26が折れ曲がるように構成されたことにより、曲進掘削が可能な掘削装置2となる。
【0031】
図1に戻り、推進装置3について説明する。
推進装置3は、筒状体6の周囲に設けられた複数の推進ユニット8を備えて構成される。各推進ユニット8は、先端側円筒62A、中間側円筒62B、後端側円筒62Cの筒の外周面に配設される。
【0032】
図6は、推進ユニット8の一例を示す概略断面図である。なお、各推進ユニット8の構成は同様であるので、中間側円筒62Bに配置された推進ユニット8を例として説明する。
図6に示すように、推進ユニット8は、内周面側に前述のスクリュー24を挿通可能な空間を有する略円筒状の中間側円筒62Bの外周面側に配設される。推進ユニット8は、中間側円筒62Bを取り囲むように軸方向に延長する円筒状の外郭筒81A;81Bと、当該外郭筒81A;81Bを互いに軸方向に連結すると共に外郭筒81A;81Bの伸縮動作を許容する伸縮部81Cと、外郭筒81A;81Bの軸方向に渡って延長し、外郭筒81A;81Bの周囲を取り囲む弾性膨張体82とを備える。外郭筒81A;81Bのそれぞれの一端側には、前述のフランジ65が設けられている。伸縮部81Cは、例えば、可撓性を有する部材により構成され、その軸方向に沿って伸縮可能な蛇腹状に形成される。伸縮部81Cの両端部の内周面は、外郭筒81A;81Bの両端部の外周面に液密かつ強固に固定される。弾性膨張体82は、前述の伸縮体63bと同様に内部に、軸方向に沿って延長する複数のカーボンロービング繊維等により形成された繊維層が内挿されており、当該繊維層の両端部は、弾性膨張体82と共に外郭筒81A;81Bの外周面に対して強固に固定される。当該構成により、推進ユニット8内には、外郭筒81A;81Bと弾性膨張体82との間に流体を導入可能な気室Sが形成される。気室S内には、制御装置5の制御によって、一方の外郭筒81Bにおいてフランジ65を貫通して気室Sに至る貫通孔として設けられた給排孔83aに図外のチューブ等の流路を接続することにより、油や空気等の流体が給排可能に構成される。気室S内に流体が導入されると、弾性膨張体82は、前述の伸縮体63bと同様に軸方向への伸長が規制されることによって、径方向に膨張(拡径)すると共に、伸縮部81Cが縮められて軸方向に収縮した状態で
図1に示す後述のランチャ31や掘削孔の壁面と密に接することが可能となる。そして、拡径した状態から流体が排出されると、拡径した弾性膨張体82が縮径すると共に軸方向に伸長する。このような、拡径及び収縮、縮径と伸長の動作が可能な推進ユニット8を複数備え、制御装置5によって拡径動作及び縮径動作がそれぞれの推進ユニット8に対して所定の周期で繰り返し実行されることにより、いずれかの推進ユニット8が拡径して外周面に接した状態において掘削に必要な反力が得られると共に、拡径した推進ユニットが縮径して外周面から離れた状態において掘削方向(
図1では先端側)に伸長するため、蠕動運動による推進力を得ることができる。なお、スクリュー24は、軸方向の長さが、上記推進装置3の蠕動運動による軸線方向の長さの変化を考慮して設定されている。
【0033】
なお、推進ユニット8を備えない掘削装置を用い、スクリュー回転体の回転軸を回転させるだけで地盤Eを掘り下げていく場合、掘り進めるに従って土圧が重力に勝って掘削装置による掘削が進まなくなる可能性がある。しかしながら、推進ユニット8を備えた掘削推進装置1を用いれば、推進ユニット8と壁との摩擦を利用した蠕動運動により掘削推進装置1が掘進するため、土圧に関係なく、曲進掘削が可能となる。
【0034】
図1において、31は掘削装置の発進基地(ランチャ)であり、この発進基地(ランチャ31)は、例えば先端開口縁が鋭利に形成された円筒体により構成される。
【0035】
また、
図1に示すように、筒状体6の後端には、筒状体6の後端開口6eより後方に排出される掘削土を後方に導く排出路41が連結される。そして、モーター固定部52を筒状体6の後端に連結する支持部53には、筒状体6の後端開口6eと排出路41とを連通させる連通孔54が形成されている。
従って、モーター51を駆動してスクリュー24を回転させることにより、スクリュー24の先端の掘削ビット23により掘削された掘削土がスクリュー24の螺旋羽根22の螺旋運動によって筒状体6の筒孔内の後方に搬送され、後端開口6eより排出され、かつ、連通孔54を介して排出路41に排出されるように構成されている。
【0036】
排出路41の後方には図外の掘削土収容部が設けられる。即ち、抽出装置4は、少なくとも、連通孔54を通過して後方に搬送されてくる掘削土を収容する掘削土収容部と、連通孔54から当該掘削土収容部への掘削土の排出路41とを備えた構成である。尚、掘削土収容部の大きさは、例えば調査に必要となる掘削土の量に応じて変更可能に構成される。
即ち、抽出装置4は、スクリュー回転体20の掘削ビット23により掘削されて螺旋羽根22の螺旋回転により後方に搬送される掘削土を収容する掘削土収容部を備え、例えば当該掘削土収容部が排出路41の後方に着脱可能に構成されている。
従って、スクリュー回転体20の掘削ビット23により掘削されて螺旋羽根25の螺旋回転により後方に搬送される掘削土が掘削土収容部に収容され、掘削終了後、掘削土収容部を取り外して、掘削土を回収できるように構成されている。
【0037】
実施形態に係る掘削推進装置1は、例えば、海底下調査において使用される。この場合、実施形態1の掘削推進装置1を遠隔操縦して海底地盤を掘削する。また、本調査においては、土圧の関係から推進ユニット8に供給する流体を油とし、油圧によって拡径,縮径動作させることが好ましい。具体的には、まず、ランチャ31内に掘削装置2及び推進装置3を備えた掘削推進装置1を海底に沈め、ランチャ31の先端開口縁を海底地盤に突き刺す。そして、制御装置5により、モーター51及び推進ユニット8を制御して掘削推進装置1を掘進させる。この場合、最初は、スクリュー24の回転、及び、推進ユニット8とランチャ31の内壁との摩擦を利用した蠕動運動によって、掘削装置2及び推進装置3が海底地盤を掘進し始める。そして、推進ユニット8が海底地盤を掘削した掘削孔内に入った場合には、スクリュー24の回転、及び、推進ユニット8と掘削孔の内壁との摩擦を利用した蠕動運動によって掘削装置2、推進装置3及び抽出装置4が海底地盤をさらに掘進する。なお、蠕動運動を生じさせるには、
図1に示す状態から先端側円筒62A、中間側円筒62B、後端側円筒62Cに配設された推進ユニット8を所定の周期で順次拡径,縮径動作させれば良い。また、掘削装置2の掘進方向を変更は、制御装置5により複数の実施形態を用いて示した折曲装置63を制御して筒連結部61を曲げ、当該筒連結部61に追従させるように軸連結部26を曲げることにより行われる。
そして、海底に沿って海底地盤中を掘進する作業を行った後に、掘削装置2及び推進装置3を海底に向けて曲げるように制御して、掘削装置2及び推進装置3を海底に戻し、かつ、掘削装置2、推進装置3及び抽出装置4を海面に浮上させて回収する。そして、抽出装置4の掘削土収容部に収容されている掘削土を採取して所望の調査を行う。
【0038】
上記実施形態に係る掘削推進装置1によれば、スクリュー回転体20の周りに配置された筒状体6を曲げる構造として、制御装置5が筒状体6の折曲装置63を制御して筒連結部61を曲げることにより、スクリュー回転体20の軸連結部26も追従して曲がるように構成されているので、曲進掘削が可能となり、広い範囲の地盤調査等が可能となる。
【0039】
また、上記実施形態係るスクリュー回転体20によれば、回転軸21と、回転軸21に沿った方向に螺旋状に延長するように回転軸21の周りに設けられた螺旋体としての螺旋羽根22と、回転軸21及び螺旋羽根22の先端側に設けられた掘削手段としての掘削ビット23とを備え、回転軸21が折曲可能に構成されたので、曲進可能なスクリュー回転体を得ることができる。
【0040】
また、上記実施形態に係る筒状体6によれば、複数の分割円筒62A,62B,62Cの端部同士が、折曲可能な筒連結部61を介して連結されるとともに、制御装置5によって制御され、筒連結部61の少なくとも1つを折曲させる折曲装置63を備え、制御装置5が折曲装置63を制御することよって筒連結部61が折曲するように構成されたので、制御装置5による制御で折曲可能でかつ折曲角度を調整可能な筒状体6を得ることができる。
そして、回転軸21が筒状体6の中心軸に沿って延長するように当該筒状体の内側にスクリュー回転体20が配置されて掘削装置2が構成されていることにより、曲進掘削が可能な掘削装置2を得ることができる。
即ち、折曲可能に構成された筒状体6内にスクリュー回転体20を設置し、筒状体6の筒連結部61を折り曲げるように制御することによって、スクリュー回転体20の軸連結部26を折り曲げて、曲進掘削を行う掘削方法が実現可能となった。
なお、上記例では、筒状体6を金属等の剛体により形成された複数の分割円筒62A,62B,62Cを筒連結部61で連結することにより、折曲可能な構成としたが、筒状体6を例えば可撓性を有するゴムやコイルばね等により構成し、筒連結部61を省略した構成としてもよい。
【0041】
尚、上記実施形態では、筒状体6のすべての折曲装置63を制御装置で制御する、即ち、筒状体6のすべての筒連結部61をアクティブ構造にして制御により曲げる方式を例示したが、筒状体6の先頭側の筒連結部、即ち、先端側円筒62Aの前端とスカート部7の後端とを連結する先頭側の筒連結部61を折曲させる折曲装置63のみを制御装置5で制御して、先頭側の筒連結部61以外の筒連結部61は、先頭側の筒連結部61の曲がりに追従して曲がるように構成してもよい。即ち、筒状体の先頭側の筒連結部61のみを折曲装置63を備えたアクティブ構造にして制御装置5の制御によって曲げるようにし、先頭側の筒連結部61以外の筒連結部61については、折曲装置63を備えないパッシブ構造にして追従させる方式としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、筒状体6の筒連結部61をアクティブ構造にして制御により曲げる方式とするとともに、スクリュー回転体20の軸連結部26をパッシブ構造にして筒状体6の曲げに追従させる方式とした構成の掘削推進装置1を例示したが、スクリュー回転体20の軸連結部26をアクティブ構造にして制御により曲げる方式とするとともに、筒状体6の筒連結部61をパッシブ構造にしてスクリュー回転体20の曲げに追従させる方式とした構成の掘削推進装置1としてもよい。スクリュー回転体20をアクティブ構造とする場合には、例えば
図5で例示した折曲装置63を中空状とした回転軸21の内部に収容する構成とすれば良い。このような構成とすれば、筒状体6に設けられた折曲装置63を省略でき、筒状体6をスクリュー回転体20の折曲に対して追従させることができる。また、筒状体6及びスクリュー回転体20の両方にいずれかの折曲装置63を配設することにより、両構成をアクティブ構造とすることも可能である。
【0043】
また、スクリュー回転体20は、軸連結部26が、可撓性を有した材料、例えば、ゴム、あるいは、コイルばねなどの弾性体により形成された構成であってもよい。
【0044】
また、スクリュー回転体20は、軸連結部26を備えずに、回転軸のすべてが可撓性を有した材料、例えば、ゴム、あるいは、コイルばねなどの弾性体により形成されて、当該ゴムにより形成された回転軸、あるいは、コイルばねにより形成された回転軸の周りに螺旋体が設けられた構成であってもよい。
【0045】
また、筒状体6を剛体として形成すると共に、予め折曲された構成としてもよい。本実施形態に係るスクリュー回転体20によれば、当該折曲された筒状体6に対しても配設できるため、スクリュー回転体20の回転によって、筒状体6の折曲形状に沿って掘削することが可能となる。なお、当該構成を採用した場合、掘削の進路が筒状体6によって規定される。
【0046】
また、上述した筒状体6と、制御装置5と、筒状体6の各筒部(分割円筒62A,62B,62C)の外周面に取付けられて筒部の中心軸に沿った方向に伸縮可能に構成された推進ユニット8(伸縮ユニット)とを備え、制御装置5が推進ユニット8の伸縮を制御することで、前記推進ユニット8が接触面との摩擦を利用した蠕動運動を行って移動するように構成された筒状移動体を得ることができる。例えば、本出願人による発明である特開2015−152169号公報に開示された管状移動体の代わりに上記構成からなる筒状移動体を用いれば、制御装置5により筒状体6の折曲装置63を制御して筒連結部61を折曲げることが可能となり、例えば、配管内検査等において管内の曲路をスムーズに移動させることが可能な筒状移動体を提供できる。即ち、制御装置5による制御で折曲可能でかつ折曲角度を調整可能な筒状体6を有して曲路をスムーズに移動させることが可能な筒状移動体を提供できる。
【0047】
また、筒部の数をさらに増大し、筒部の端部同士を連結する筒連結部61毎に折曲装置63を備えた構成とすることで、筒状体6の曲げ角度をより細かく調整可能な掘削装置、あるいは、管状移動体となり、曲進掘削、あるいは、曲進をスムーズに行える掘削装置、あるいは、管状移動体を提供できるようになる。
【0048】
また、上記実施形態おいては、直線状に延長するランチャ31によって、掘削推進装置1の初期の掘進方向を設定するものとして説明したが、地盤に対するランチャ31の傾斜角度を変更することや、ランチャ31の形状を予め折曲された形状とし、任意の深さまで突き刺すことにより、任意の方向に向けて掘削を開始させることができる。