特許第6852906号(P6852906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6852906TMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852906
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】TMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20210322BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20210322BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01R33/09
   G01R33/02 V
   H01L43/08 U
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-522777(P2018-522777)
(86)(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公表番号】特表2018-534571(P2018-534571A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】CN2016104000
(87)【国際公開番号】WO2017076252
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年7月9日
(31)【優先権主張番号】201510736394.1
(32)【優先日】2015年11月3日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲーザ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、チーミン
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104880682(CN,A)
【文献】 国際公開第2015/144073(WO,A1)
【文献】 特開2014−070911(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0177337(US,A1)
【文献】 米国特許第7046002(US,B1)
【文献】 中国特許出願公開第103412269(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
G01R 33/02
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に位置する2つの櫛形軟強磁性磁束集束器とを備えるTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサであって、一方の櫛形軟強磁性磁束集束器は、櫛シートと、長さ×幅がLx×LyであるN個の長方形櫛歯とを備え、他方の櫛形軟強磁性磁束集束器は、櫛シートと、長さ×幅がLx×LyであるN−1個の長方形櫛歯とを備え、Nは1よりも大きい整数であり、該2つの櫛形軟強磁性磁束集束器の該櫛歯は、インターディジタル構造を形成するように互いにかみ合わされ、間隙が、一方の櫛形軟強磁性磁束集束器の該櫛歯と他方の櫛形軟強磁性磁束集束器の該櫛シートとの間でX方向に形成され、該間隙の長さはLgxであり、隣接した櫛歯は空間間隙を形成し、この空間間隙は+Y方向にそれぞれ形成された奇数の空間間隙(2m−1)と偶数の空間間隙(2m)とに分割され、該空間間隙の長さはLsxであり、該空間間隙の幅はLsyであり、mはゼロよりも大きくかつNよりも小さい整数であり、
該TMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサは、プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングと、プル磁気抵抗検出素子ストリングとをさらに備え、該プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよび該プル磁気抵抗検出素子ストリングは、該奇数の空間間隙内および該偶数の空間間隙内にそれぞれ位置し、該X方向に平行であり、該プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングはプッシュ・アームの中に電気的に相互接続され、該プル磁気抵抗検出素子ストリングはプル・アームの中に電気的に相互接続され、該プッシュ・アームおよび該プル・アームはプッシュプル磁気抵抗センサ・ブリッジの中に電気的に相互接続され、該プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングは複数のプッシュ磁気抵抗検出素子を備え、該プル磁気抵抗検出素子ストリングは複数のプル磁気抵抗検出素子を備え、該プッシュ磁気抵抗検出素子およびプル磁気抵抗検出素子の強磁性ピン止め層の磁化配列方向は、+Y方向または−Y方向であり、該X方向または−X方向の外部磁場B(x−ext)と該Y方向または−Y方向の該間隙内のB磁場成分との間の磁場利得係数ANSは、B/B(x−ext)で求められ、それは1よりも大き
前記櫛シートは長方形および台形を含むボトル栓の形状であり、該台形の短基部は前記櫛歯に接続され、該台形の長基部は該台形および該長方形の共通縁部であり、前記長方形は、長さLexおよび幅Leyを有する、TMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項2】
2つの長方形軟強磁性磁束集束器をさらに備え、該長方形軟強磁性磁束集束器は、前記X方向および前記Y方向にそれぞれ平行な長さおよび幅を有し、前記インターディジタル構造の+Y端部および−Y端部から同一の距離にある2つの位置にそれぞれ配置される、請求項2記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項3】
前記プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよび前記プル磁気抵抗検出素子ストリングが位置する前記奇数の空間間隙および前記偶数の空間間隙の総和は、2N+1であって、
任意のプッシュ磁気抵抗検出素子ストリングの奇数の空間間隙(2m−1)と、プル磁気抵抗検出素子ストリングの偶数の空間間隙(2(N−m+1))との符号の和が、2N+1であり、または、
任意のプル磁気抵抗検出素子ストリングの偶数の空間間隙(2m)と、プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングの奇数の空間間隙(2(N−m)+1))との符号の和が、2N+1である、
請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項4】
前記磁場利得係数ANSは、前記櫛歯の前記幅Lyを増大させることによって、または前記空間間隙の前記幅Lsyを減少させることによって増加する、または、
前記磁場利得係数ANSは、前記空間間隙の前記長さLsxを減少させることによって、または前記間隙の前記長さLgxを増大させることによって増加する、または、
前記磁場利得係数ANSは、前記櫛シートの前記長さと幅の比を増加させることによって、Lexを増大させることによって、Leyを減少させることによって、または前記櫛歯の番号Nを減少させることによって増加する、請求項記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項5】
前記櫛歯の前記幅Lyは、20μmから200μmまでの範囲であり、前記空間間隙の前記幅Lsyは、6μmから200μmまでの範囲である、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項6】
前記空間間隙の前記長さLsxは、10μmから200μmまでの範囲であり、前記間隙の前記長さLgxは、20μmから500μmまでの範囲である、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項7】
前記櫛シートの前記長さLexは、20μmから2000μmまでの範囲であり、前記櫛歯の前記番号Nの範囲は、2≦N≦10である、請求項2記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項8】
前記プッシュ磁気抵抗検出素子および前記プル磁気抵抗検出素子はTMR検出素子であり、ピン止め層の方向は前記Y方向に平行であり、自由層の方向は前記X方向に平行である、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項9】
外部磁場が無い場合、前記プッシュ磁気抵抗検出素子および前記プル磁気抵抗検出素子は、強磁性自由層の前記磁化配列方向が、永久磁石のバイアス、二重交換、形状異方性、または任意のそれらの組合せによって強磁性ピン止め層の該磁化配列方向に直交することを可能にする、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項10】
前記プッシュプル磁気抵抗センサ・ブリッジは、ハーフ・ブリッジ、フル・ブリッジ、または準ブリッジである、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項11】
前記プッシュ・アーム上の前記プッシュ磁気抵抗検出素子の個数と、前記プル・アーム上の前記プル磁気抵抗検出素子の個数とは、同じである、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項12】
前記櫛形軟強磁性磁束集束器の材料は、元素Fe、Ni、およびCoのうち1つまたは複数を含有する軟磁性合金である、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項13】
前記基板の材料は、ガラスまたはシリコン・ウェハであり、ASIC集積回路は、該基板上に設けられ
前記ASIC集積回路は、CMOS、BiCMOS、バイポーラ、BCDMOS、またはSOIである、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項14】
前記基板の材料は、ガラスまたはシリコン・ウェハであり、該基板は、ASICチップに接続され
前記ASICチップは、以下の応用回路、すなわち、オフセット回路、利得回路、較正回路、温度補償回路、および論理回路のうち1つまたは複数を含む、請求項1記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【請求項15】
前記論理回路は、デジタル・スイッチング回路、または回転角計算回路である、請求項14記載のTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサの分野に関し、詳細には、TMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサに関する。
【背景技術】
【0002】
TMR高感度シングルチップ・リニア磁場センサの製造には2つの大きな難題があり、すなわち、第1には、プッシュプル・ブリッジ・リニア磁気抵抗センサは、反対方向を有するように、プッシュ・アーム内のプッシュ磁気抵抗検出素子のピン止め層と、プル・アーム内のプル磁気抵抗検出素子のピン止め層とを必要とし、第2に、基準ブリッジ・リニア磁気抵抗センサは、磁気遮蔽される基準アーム内の基準磁気抵抗検出素子を必要とすることである。以下の重要な問題が生じる。
【0003】
(1).プッシュプル・ブリッジ磁気抵抗センサについては、磁気抵抗検出素子のピン止め層の磁化配列方向を局所的に(ローカルで)プログラムおよび磁化することができる新しい技法が開発される必要がある。この技法の開発は費用がかかり、磁気抵抗検出素子のピン止め層の磁化配列方向を局所的にプログラムする技法の信頼性は未知数である。
【0004】
(2).基準ブリッジ磁場抵抗センサは、プッシュプル・ブリッジの半分の感度しか有さないため、基準ブリッジ磁場抵抗センサは劣るものであり、基準ブリッジ磁場抵抗センサの出力の線形性は乏しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題を克服するために、本発明は、外部磁場の高い磁界利得(field gain)をもたらすために、長いインターディジタル構造を備えた磁束集束器(flux concentrator)を開発し利用する。さらに、磁束集束器、および近くのTMR磁気抵抗検出素子は、磁気抵抗検出素子にプッシュプル磁場プロファイルを生成するように互い違いに配置される。本発明は、シングルチップ・リニア磁気抵抗デバイスが、高い磁場感度および良好な線形性を有することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、Y軸磁気抵抗センサの新しい設計ソリューションを提案する。インターディジタル型軟強磁性磁束集束器は、X磁場を、インターディジタル間隙内で同一の大きさおよび反対方向を有する−Y磁場および+Y磁場に変換することを実施するために使用され、一方、間隙内の磁気抵抗検出素子は、同一の磁気的多層膜構造、およびY軸感度方向を有し、したがって、プッシュプルY軸磁気抵抗センサの用意を実施する。また、インターディジタル型軟強磁性磁束集束器は、磁場の大きさをさらに増幅することができ、したがって高感度プッシュプル磁気抵抗センサを提供する。
【0007】
本発明において提案されるTMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサは、基板と、基板上に位置する2つの櫛形軟強磁性磁束集束器とを備える。一方の櫛形軟強磁性磁束集束器は、櫛シートと、長さ×幅がLx×LyであるN個の長方形櫛歯とを備え、他方の櫛形軟強磁性磁束集束器は、櫛シートと、長さ×幅がLx×LyであるN−1個の長方形櫛歯とを備え、ただし、Nは1よりも大きい整数である。2つの櫛形軟強磁性磁束集束器の櫛歯は、インターディジタル構造を形成するように互いにかみ合わされる。間隙が、一方の櫛形軟強磁性磁束集束器の櫛歯と他方の櫛形軟強磁性磁束集束器の櫛シートとの間でX方向に形成される。間隙の長さはLgxである。隣接した櫛歯は空間間隙を形成し、この空間間隙は+Y方向にそれぞれ形成された奇数の空間間隙(2m−1)と偶数の空間間隙(2m)とに分割される。空間間隙の長さはLsxであり、空間間隙の幅はLsyであり、mはゼロよりも大きくかつNよりも小さい整数である。
【0008】
TMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサは、プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングと、プル磁気抵抗検出素子ストリングとをさらに備える。プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングは、奇数の空間間隙内および偶数の空間間隙内にそれぞれ位置し、X方向に平行である。プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングは、奇数の空間間隙内および偶数の空間間隙内にそれぞれ位置し、X方向に平行である。プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングはプッシュ・アームの中に電気的に相互接続され、プル磁気抵抗検出素子ストリングはプル・アームの中に電気的に相互接続され、プッシュ・アームおよびプル・アームはプッシュプル磁気抵抗センサ・ブリッジの中に電気的に相互接続される。プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングは複数のプッシュ磁気抵抗検出素子を備え、プル磁気抵抗検出素子ストリングは複数のプル磁気抵抗検出素子を備える。プッシュ磁気抵抗検出素子およびプル磁気抵抗検出素子の強磁性ピン止め層の磁化配列方向は、+Y方向または−Y方向である。X方向または−X方向の外部磁場B(x−ext)とY方向または−Y方向の間隙内のB磁場成分との間の磁場利得係数ANSは、B/B(x−ext)で求められ、それは1よりも大きい。
【0009】
櫛シートは、長方形であり、長さLexおよび幅Leyを有する。
【0010】
TMR高感度シングルチップ・ブッシュプル・ブリッジ磁場センサは、2つの長方形軟強磁性磁束集束器をさらに備える。長方形軟強磁性磁束集束器は、X方向およびY方向にそれぞれ平行な長さおよび幅を有し、インターディジタル構造の+Y端部および−Y端部から同一の距離にある2つの位置にそれぞれ配置される。
【0011】
櫛シートは長方形および台形を含むボトル栓の形状であり、台形の短基部は櫛歯に接続され、台形の長基部は台形および長方形の共通縁部である。
【0012】
プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングが位置する奇数の空間間隙および偶数の空間間隙の総和は、2N+1であり、すなわち、任意のプッシュ磁気抵抗検出素子ストリングの奇数の空間間隙(2m−1)と、プル磁気抵抗検出素子ストリングの偶数の空間間隙(2(N−m+1))との符号の和が、2N+1であり、または、任意のプル磁気抵抗検出素子ストリングの偶数の空間間隙(2m)と、プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングの奇数の空間間隙(2(N−m)+1))との符号の和が、2N+1である。磁場利得係数ANSは、櫛歯の幅Lyを増大させることによって、または空間間隙の幅Lsyを減少させることによって増加する。
【0013】
磁場利得係数ANSは、空間間隙の長さLsxを減少させることによって、または間隙の長さLgxを増大させることによって増加する。
【0014】
磁場利得係数ANSは、櫛シートの長さと幅の比を増加させることによって、Lexを増大させることによって、Leyを減少させることによって、または櫛歯の番号Nを減少させることによって増加する。
【0015】
櫛歯の幅Lyは、20μmから200μmまでの範囲であり、空間間隙の幅Lsyは、6μmから200μmまでの範囲である。
【0016】
空間間隙の長さLsxは、10μmから200μmまでの範囲であり、間隙の長さLgxは、20μmから500μmまでの範囲である。
長さLexは、20μmから2000μmまでの範囲であり、櫛歯の番号Nの範囲は、2≦N≦10である。
【0017】
プッシュ磁気抵抗検出素子およびプル磁気抵抗検出素子はTMR検出素子であり、ピン止め層の方向はY軸方向に平行であり、自由層の方向はX軸方向に平行である。
【0018】
外部磁場が無い場合、プッシュ磁気抵抗検出素子およびプル磁気抵抗検出素子は、強磁性自由層の磁化配列方向が、永久磁石のバイアス、二重交換、形状異方性、または任意のそれらの組合せによって強磁性ピン止め層の磁化配列方向に直交することを可能にする。
【0019】
プッシュプル磁気抵抗センサ・ブリッジは、ハーフ・ブリッジ、フル・ブリッジ、または準ブリッジである。
【0020】
プッシュ・アーム上のプッシュ磁気抵抗検出素子の個数と、プル・アーム上のプル磁気抵抗検出素子の個数とは、同じである。
【0021】
櫛形軟強磁性磁束集束器の材料は、元素Fe、Ni、およびCoのうち1つまたは複数を含有する軟磁性合金である。
【0022】
基板の材料は、ガラスまたはシリコン・ウェハであり、ASIC集積回路は、基板上に設けられる。ASIC集積回路は、CMOS、BiCMOS、バイポーラ、BCDMOS、またはSOIである。
【0023】
基板の材料は、ガラスまたはシリコン・ウェハであり、基板は、ASICチップに接続される。ASICチップは、以下の応用回路、すなわち、オフセット回路、利得回路、較正回路、温度補償回路、および論理回路のうち1つまたは複数を含む。論理回路は、デジタル・スイッチング回路、または回転角計算回路である。
【0024】
上記技術的解決策に基づいて、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0025】
本発明は、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器を採用し、TMR磁気抵抗検出素子をインターディジタル構造の間隙内に交互配置しており、それによってTMRシングルチップ・プッシュプル・ブリッジ磁場センサは、高い磁場感度および良好な線形性を有する。さらに、本発明は、単純な構造および低消費電力の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第1の構造を示す図である。
図2】インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第2の構造を示す図である。
図3】インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第3の構造を示す図である。
図4】高感度プッシュプル磁気抵抗センサの構造図である。
図5】インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器内のプッシュおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングの分布図である。
図6】X外部磁場の影響下におけるインターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の間隙内のY磁場の分布図である。
図7】Y外部磁場の影響下におけるインターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の間隙内のY磁場の分布図である。
図8】軟強磁性磁束集束器の櫛シートがボトル栓形状であるときの、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の磁力線の分布図である。
図9】軟強磁性磁束集束器の櫛シートが長方形であるときの、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の磁力線の分布図である。
図10】磁場利得因子が、空間インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器内の間隙の長さLsxに関して変化することを示す図である。
図11】磁場利得因子が、空間インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器内の間隙の幅Lsxに関して変化することを示す図である。
図12】磁場利得因子が、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器内の間隙の幅Lgxに関して変化することを示す図である。
図13】磁場利得因子が、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器内の櫛歯の幅Lyに関して変化することを示す図である。
図14】磁場利得因子が、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器内の櫛シートの長さLexに関して変化することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を、添付図面を参照して実施形態によって詳細に説明する。
【0028】
実施形態1
図1は、2つの櫛形軟強磁性磁束集束器4および7を備えるインターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第1の構造1である。櫛形軟強磁性磁束集束器4は、櫛シート2と、N個の長方形櫛歯3(i)とを備え、ただし、iは1からNまでの整数である。櫛形軟強磁性磁束集束器7は、櫛シート5と、N−1個の長方形櫛歯6(j)とを備え、ただし、jは1からN−1までの整数である。長方形櫛歯3(i)および6(j)のそれぞれは、長さLxおよび幅Lyを有する。この構造1において、櫛シート2および5は両方長方形であり、それぞれは長さLexおよび幅Leyを有する。櫛形軟強磁性磁束集束器4および7の櫛歯は、インターディジタル構造を形成するように互いにかみ合わされ、長さLgxを有する間隙は、任意の長方形櫛歯3(i)と櫛シート5との間および任意の長方形櫛歯6(j)と櫛シート2との間でX方向に沿って形成される。隣接した櫛歯3(i)および6(j)は空間間隙を形成し、この空間間隙は2m−1で番号が付けられた奇数の空間間隙g(2m−1)と、2mで番号が付けられた偶数の空間間隙g(2m)とに分割され、これらは+Y方向に交互に形成される。奇数の空間間隙および偶数の空間間隙は、長さLsxおよび幅Lsyをそれぞれ有し、ただし、mはゼロよりも大きくかつNよりも小さい整数である。
【0029】
図2は、櫛シート13および18がボトル栓形状である点でインターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第1の構造1と異なるインターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第2の構造8である。櫛シート13は、長方形9および台形10を含む。台形10の短基部11は櫛歯に接続され、長基部12は長方形9に接続されている。櫛シート18は、長方形14および台形15を含む。台形15の短基部16は櫛歯に接続され、長基部17は長方形14に接続される。
【0030】
図3は、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第3の構造20である。相違は、細長い軟強磁性磁束集束器22および23がインターディジタル型軟強磁性磁束集束器構造21の+Y端部および−Y端部でそれぞれ加えられる点にある。軟強磁性磁束集束器22からインターディジタル型軟強磁性磁束集束器構造21の+Y端部までの距離は、軟強磁性磁束集束器23からインターディジタル型軟強磁性磁束集束器構造21の−Y端部までの距離と同一である。インターディジタル型軟強磁性磁束集束器構造21は、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第1の構造1、またはインターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の第2の構造8であり得る。
【0031】
図4は、基板31と、基板31上にインターディジタル構造が形成された状態の2つの櫛形軟強磁性磁束集束器36および37と、プッシュ磁気抵抗検出素子ストリング38と、プル磁気抵抗検出素子ストリング39とを備える高感度プッシュプル磁気抵抗センサの構造図30である。櫛形軟強磁性磁束集束器36および37の櫛歯は、互いにかみ合わされ、+Y方向に奇数の空間間隙g(2m−1)および偶数の空間間隙g(2m)を交互に形成する。プッシュ磁気抵抗検出素子ストリング38は、奇数の空間間隙g(2m−1)内に位置し、プル磁気抵抗検出素子ストリング39は、偶数の空間間隙g(2m)内に位置する。プッシュ磁気抵抗検出素子ストリング38はプッシュ・アームの中に電気的に相互接続され、プル磁気抵抗検出素子ストリング39はプル・アームの中に電気的に相互接続され、プッシュ・アームおよびプル・アームは電線40によって電気的に相互接続されてブリッジ構造を形成する。このブリッジ構造は、電源32、接地電極35、ならびに出力信号電極33および34に接続されている。
【0032】
図5は、実際には図4の楕円形領域に対応するインターディジタル構造の間隙内のプッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングの分布図である。外部磁場B(x−ext)が軟強磁性磁束集束器を通過した後、B磁場成分および−B磁場成分が、それぞれ間隙51および間隙52内に生成され、それぞれプッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングに適用される。対応する磁場利得因子はANS=B/B(x−ext)であり、プッシュ磁気抵抗検出素子およびプル磁気抵抗検出素子は、同じ磁場感度方向53、すなわち、+Y方向または−Y方向を有する。加えて、プッシュプル磁気抵抗センサがより高い磁場感度を有することを確実にするため、ANSは1よりも大きいことが要求され、すなわち、外部磁場は増幅され得る。
【0033】
櫛形軟強磁性磁束集束器の材料は、元素Fe、Ni、およびCoのうち1つまたは複数を含有する軟磁性合金である。
【0034】
基板の材料は、ガラスまたはシリコン・ウェハであり、ASIC集積回路は、基板上に設けられる。ASIC集積回路は、CMOS、BiCMOS、バイポーラ、BCDMOS、またはSOIである。あるいは、基板は、ASICチップに接続される。ASICチップは、以下の応用回路、すなわち、オフセット回路、利得回路、較正回路、温度補償回路、および論理回路のうち1つまたは複数を含む。論理回路は、デジタル・スイッチング回路、または回転角計算回路である。
【0035】
図6は、X磁場の影響下における、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の奇数の空間間隙および偶数の空間間隙内のY磁場成分の変化の図である。見ることができるように、奇数の空間間隙内および偶数の空間間隙内のY磁場成分は、反対の磁場方向および同一の振幅を有する。
【0036】
図7は、Y磁場の影響下における、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の奇数の空間間隙内および偶数の空間間隙内のY磁場成分の変化の図である。見ることができるように、奇数の空間間隙内および偶数の空間間隙内のY磁場成分は、一貫性のない振幅を有する。1からNまで番号が付けられた空間間隙内のY磁場成分は、中心対称であり、すなわち、番号が合計すると1+Nになる空間間隙の2つは、同一のY磁場成分を有する。したがって、プッシュプル磁気抵抗センサ内に含まれるプッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングが構成されるとき、プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングがY磁場の影響下におけるときに0信号出力を生成するようにプッシュ・アームおよびプル・アームが同一の抵抗を有することを確実にするため、プッシュ磁気抵抗検出素子ストリングおよびプル磁気抵抗検出素子ストリングは、奇数の空間間隙内と偶数の空間間隙内に交互に位置することが必要であり、さらに磁気抵抗検出素子ストリングの分布は、以下の条件を満たすべきであり、すなわち、2m−1で番号が付けられた任意のプッシュ磁気抵抗検出素子ストリングについては、2(N−m+1)で番号が付けられたプル磁気抵抗検出素子ストリングが存在すべきであり、2mで番号が付けられた任意のプル磁気抵抗検出素子ストリングについては、2(N−m)+1で番号が付けられたプッシュ磁気抵抗検出素子ストリングが存在すべきであり、ただし、mは、ゼロよりも大きくかつNよりも小さい整数である。
【0037】
図8は、軟強磁性磁束集束器の櫛シートがボトル栓形状であるときの、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の磁力線の分布図である。図9は、軟強磁性磁束集束器の櫛シートが長方形であるときの、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の磁力線の分布図である。比較によって理解できるように、ボトル栓形状の櫛シート構造は、長方形の櫛シート構造よりも効率的に空間間隙内に磁力線を集めることでき、したがってより高い磁場利得を有する。
【0038】
図10から図14は、それぞれ、高い磁場利得因子が得られ得ることを確実にするために、プッシュプル磁気抵抗センサの利得因子が、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束集束器の幾何学的な設計パラメータに関して変化することを示す。図において、スケールの前の「−」は、反対方向を示す。
【0039】
図10は、空間間隙の長さと共に磁場利得因子が変化することを表す。見ることができるように、空間間隙の長さLsxが減少するときに、磁場利得因子は増大する。
【0040】
図11は、空間間隙の幅と共に磁場利得因子は変化することを表す。見ることができるように、空間間隙の幅Lsyが減少するときに、磁場利得因子は増大する。
【0041】
図12は、間隙の長さと共に磁場利得因子が変化することを表す。見ることができるように、間隙の長さLgxが増加するときに、磁場利得因子は増加する。しかしながら、間隙の長さLgxが60μmよりも大きくなった後は、効果の増加はわずかである。
【0042】
図13は、櫛歯の幅Lyと共に磁場利得因子が変化することを表す。見ることができるように、櫛歯の幅Lyが増加するとき、磁場利得因子は大きく増加する。
【0043】
図14は、櫛シートの長さLexと共に磁場利得因子が変化することを表す。見ることができるように、櫛歯の長さLexが増加するとき、磁場利得因子は増大する。
【0044】
計算結果によれば、高感度プッシュプル磁気抵抗センサを得るために、インターディジタル構造を有する軟強磁性磁束ガイダは、以下の設計要件を満たすものであり、すなわち、櫛歯の幅Lyは20μmから200μmの範囲であり、空間間隙の幅Lsyは6μmから200μmの範囲であり、空間間隙の長さLsxは10μmから200μmの範囲であり、間隙の長さLgxは20μmから500μmの範囲であり、櫛シートの長さLexは、20μmから2000μmの範囲であり、櫛歯の個数Nは2≦N≦10の範囲である。
【0045】
上記説明は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するものではない。当業者について、本発明は、様々な修正例および変更例を有し得る。また、本発明の実施は、様々な方法で組み合わされたり、変更されたりしてもよく、本発明の精神および原理内の任意の修正、均等物置換、改善などは、本発明の保護範囲に包含されるものとする。
図1
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