【文献】
Trends in Endocrinology and Metabolisn,2014年,Vol.25,p.303-311
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリコシル部分は、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基、ガラクトース(Gal)残基、シアル酸(Sia)残基、Sia残基の5−アミン類似体、マンノース(Man)残基、マンノサミン、グルコース(Glc)残基、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基、フコース残基、キシロース残基、又はそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項1の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート。
グリコシル部分は、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基、ガラクトース(Gal)残基、シアル酸(Sia)、又はそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項1の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート。
少なくとも1つのSia残基は、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌロピラノス−1−オン酸)(Neu5Ac)、 N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)、又は9−置換シアル酸である、請求項4の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート。
9−置換シアル酸は、9−0−ラクチル−Neu5Ac、9−O−アセチル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Ac、又は9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acである、請求項5の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート。
20kDaのPEG部分は、少なくとも1つのアミノ酸残基を含むリンカーへの共有結合によって、グリコシル部分に結合されている、請求項1の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート。
【発明を実施するための形態】
【0040】
開示される利益及び改善の中で、本発明の他の目的及び利点についても、添付の図面と共に以下の説明から明らかになるであろう。本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示する。しかしながら、開示される実施形態は、様々な形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることは理解されるべきである。さらに、本発明の様々な実施形態に関連して示される実施例は、各々が例示であり、限定するものでない。
【0041】
<定義>
明確性及び可読性のために、以下の定義を提供する。これらの定義について記載される技術的特徴は、本発明の全ての実施形態及び各実施形態において理解されることができる。追加の定義及び説明は、これらの実施形態の説明の中で具体的に提供され得る。別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。概して、細胞培養、分子遺伝学、有機化学、並びに核酸化学及びハイブリダイゼーションにおいて、本発明で用いられる専門用語及び実験手法は、当該技術分野で広く知られ、一般的に使用されているものである。核酸及びペプチドの合成には、標準的な技術が用いられる。前記技術及び前記手法は、当該技術分野における従来の方法及び様々な一般的参考文献(例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2d ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY)に従って実施され、これらは本明細書を通じて提供される。
【0042】
<酵素>
酵素は、触媒活性を有する生体分子であり、例えば、グリコシル部分又は修飾されたグリコシル部分が、それぞれのグリコシル供与体からFGF−21のアミノ酸又はペプチドに結合された別のグリコシル部分へ転移する等の生化学反応を実行する。
【0043】
<タンパク質>
タンパク質は、典型的には、1又は複数のペプチド又はポリペプチドを含む。タンパク質は、典型的には、タンパク質がその生物学的機能を発揮するために必要な三次元の形態に折り畳まれる。タンパク質又はペプチドの配列は、典型的には、そのアミノ酸の配列の順序であると理解される。
【0044】
<組換えタンパク質(recombinant protein)>
「組換えタンパク質」という用語は、異種系で産生されるタンパク質、すなわち、そのようなタンパク質又はそのようなタンパク質の変異体を自然に産生しない有機体の中で産生されるタンパク質のことを指す。すなわち、タンパク質又はペプチドは「組換えにより産生される」。典型的には、組換えタンパク質を産生するために当該技術分野で使用される異種系は、細菌(例えば、大腸菌)、酵母(例えば、サッカロミセスセレビシェ)又は特定の哺乳動物細胞培養系統である。
【0045】
<発現宿主(expression host)>
発現宿主とは、組換えタンパク質の産生に使用される有機体のことを言う。一般的な発現宿主は、大腸菌などの細菌、サッカロミセスセレビシエやピキアパストリスなどの酵母、又はヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0046】
<RNA、mRNA>
RNAはリボ核酸の一般的な略語である。それは核酸分子、すなわちヌクレオチドからなるポリマーである。これらのヌクレオチドは、通常、アデノシン−モノホスフェート、ウリジン−モノホスフェート、グアノシン−モノホスフェート、及びシチジン−モノホスフェートのモノマーであり、いわゆる骨格に沿って互いに結合されている。骨格は、第1の隣接するモノマーの糖、すなわちリボースと、第2の隣接するモノマーのリン酸塩部分と、の間のホスホジエステル結合によって形成される。特定の連続したモノマーが、RNA配列と呼ばれる。
【0047】
<DNA>
DNAは、デオキシリボ核酸の一般的な略語であり、核酸分子、すなわちヌクレオチドモノマーからなるポリマーである。これらのヌクレオチドは、通常、デオキシ−アデノシン−モノホスフェート、デオキシ−チミジン−モノホスフェート、デオキシ−グアノシン−モノホスフェート、及びデオキシ−シチジン−モノホスフェートのモノマーであり、それれ自体が、糖部分(デオキシリボース)、塩基部分、及びリン酸塩部分から構成され、特徴的な骨格構造によって重合される。骨格構造は、典型的には、第1の隣接するモノマーのヌクレオチド、すなわちデオキシリボースの糖部分と、第2の隣接するモノマーのリン酸塩部分と、の間のホスホジエステル結合によって形成される。モノマーの特定の順序、つまり糖/リン酸塩−骨格に結合されたた塩基の順序が、DNA配列と呼ばれる。DNAは一本鎖でも二重鎖でもよい。二重鎖の形態では、例えば、A/T−塩基−ペアリング及びG/C−塩基−ペアリングにより、第1鎖のヌクレオチドが第2鎖のヌクレオチドと雑種を生成する(hybridize)。
【0048】
<核酸分子の配列/核酸配列>
核酸分子の配列は、一般的には、特定かつ個別の順序、つまりそのヌクレオチドの連続であると理解されている。
【0049】
<アミノ酸分子の配列/アミノ酸配列>
タンパク質又はペプチドの配列は、一般的には、その順序、つまりそのアミノ酸の連続であると理解されている。
【0050】
<配列同一性(sequence identity)>
2以上の配列は、ヌクレオチド又はアミノ酸の長さと順序が同じであれば同一である。同一性の割合は、通常、2つの配列が同一である程度を表す。つまり、典型的には、天然又は野生型配列などの参照配列の同一のヌクレオチドに配列位置が一致するヌクレオチドの割合を表す。同一性の程度は、比較される配列が同じ長さ、すなわち比較される配列の最も長い配列の長さを示すことによって決定される。これは、8ヌクレオチド/アミノ酸からなる第1配列は、第1配列を含む10ヌクレオチド/アミノ酸からなる第2配列と80%同一であることを意味する。言い換えれば、本発明において配列の同一性は、具体的には、同じ長さを有する2つ以上の配列において同じ位置を有する配列のヌクレオチド/アミノ酸の割合と関係する。ギャップは、通常、並べ方(alignment)における実際の位置とは関係なく、同一でない位置と見なされる。
【0051】
<新たに導入されるアミノ酸(newly introduced amino acids)>
「新たに導入されるアミノ酸」とは、天然/野生型アミノ酸配列との比較において、アミノ酸配列の中に新たに導入されるアミノ酸を意味する。通常は、天然のアミノ酸配列が、突然変異により、アミノ酸配列内の所望の位置に特定のアミノ酸側鎖を有するように変更される。本発明では、特に、アミノ酸トレオニンが、プロリン残基に隣接するC末端側のアミノ酸配列に新たに導入される。
【0052】
<官能基>
この用語は、当業者の一般的な理解に従って理解されるものであり、分子、特にペプチド、又はペプチドのアミノ酸又はペプチドに結合されたグリコシル残基に存在する化学的部分を意味し、他の化学的分子への共有結合又は非共有結合に関与することができ、グリコシル残基又はPEGの結合を許容する。
【0053】
<天然アミノ酸配列(native amino acid sequence)>
この用語は、当業者の一般的な理解に従って理解されるものであり、人による変異又はアミノ酸修正が一切無く、自然に発生する形態でのアミノ酸配列を意味する。それは、「野生型シーケンス」とも呼ばれる。「天然FGF−21」又は「野生型FGF−21」は、SEQ ID NO:1で示されるヒトFGF−21の(変異していない)アミノ酸配列などのように、天然に存在するアミノ酸配列を有するFGF−21を表す。使用される発現宿主に依存するN末端メチオニンの有無により、その自然又は天然/野生型配列を有すると考えられるタンパク質の状態は、通常は変化しない。
【0054】
<変異(mutated>
この用語は、当業者の一般的な理解に従って理解されるべきである。アミノ酸配列は、その自然又は天然のアミノ酸配列との比較において、そのアミノ酸配列に少なくとも1つの追加、削除、又は交換されたアミノ酸を含む場合、すなわちアミノ酸変異を含む場合、「変異」と呼ばれる。変異タンパク質は変異体とも呼ばれる。本発明において、変異体FGF−21ペプチドは具体的には、プロリン残基のC末端側のプロリン残基に隣接するアミノ酸交換を有するペプチドである。それにより、変異体FGF−21ペプチドが新たに導入されたO結合型グリコシル化部位を含むように、O結合型グリコシル化のコンセンサス配列が、FGF−21に導入される。アミノ酸交換は、典型的には、S
172Tとして示され、これは、例えば、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列における172位置のアミノ酸セリンが、アミノ酸トレオニンによって交換されることを意味する。
【0055】
<薬学的有効量>
本発明における薬学的有効量は、典型的には、医薬的効果を誘導するのに十分な量であると理解される。
【0056】
<治療/処理>
「治療(therapy)」という用語は、疾患又は状態を「処理すること(treating)」又は疾患又は状態の「処理(treatment)」のことを言い、疾患を抑制し(その進行を遅延又は停止させる)、疾患の症状又は副作用を緩和し(苦痛緩和処理を含む)、及び疾患を軽減する(疾患の退行を生じさせる)。
【0057】
<治療有効量>
疾患又は状態を処理し、疾患又は状態を抑制し、疾患の症状又は副作用を緩和し、及び/又は疾患又は状態の退行を生じさせるのに十分な化合物の量である。
【0058】
<半減期(half-life)>
「半減期」という用語は、本明細書では、変異体FGF−21ペプチド及び/又はそのコンジュゲートの投与において使用され、薬物、すなわち変異体FGF−21ペプチド及び/又はコンジュゲートの血漿濃度が、被験体の中で半分に減少するのに必要な時間として定義される。
【0059】
<O−結合グリコシル化(O-linked glycosylation)>
「O−結合グリコシル化」は、セリン又はトレオニン残基で起こる(Tanner et al., Biochim. Biophys. Acta. 906:81-91(1987);及びHounsell et al, Glycoconj. J. 13: 19-26(1996))。本発明において、O結合グリコシル化部位は、ペプチドのアミノ酸配列の中で、グリコシルトランスフェラーゼによりグリコシル残基の結合点として認識されるアミノ酸モチーフであり、天然/野生型アミノ酸配列には存在しないアミノ酸モチーフのプロリン−トレオニン(PT)を含む。特に、トレオニン残基はプロリンに隣接して、プロリン残基のC末端側に新たに導入される。次に、グリコシル部分は、グリコシルトランスフェラーゼによりトレオニン残基の−OH基に結合される。
【0060】
<新しく導入されるO結合グリコシル化部位(newly introduced O-linked glycosylation side)>
「新しく導入されるO結合グリコシル化部位」は、本明細書に記載されたプロリン残基のC末端側にトレオニンを導入する前は、天然又は野生型FGF−21に存在しなかったO結合グリコシル化部位を表す。
【0061】
<隣接(adjacent)>
隣接とは、アミノ酸配列の中で別のアミノ酸のすぐ隣りにあるアミノ酸を意味し、それぞれのアミノ酸のN末端側又はC末端側のどちらかの末端側にある。本発明において、新しく導入されたトレオニン残基は、プロリン残基のC末端側のプロリン残基に隣接する。
【0062】
<グリコシル部分(glycosyl moiety)>
グリコシル部分は、変異体FGF-21ペプチドをポリエチレングリコール(PEG)に結合する1又は複数の同一又は異なるグリコシル残基からなる部分であり、これによって、ペプチド、グリコシル部分及びPEGを含むコンジュゲートを形成する。グリコシル部分は、モノ−、ジ−、トリ−、又はオリゴグリコシル部分であり得る。グリコシル部分は、1又は複数のシアル酸残基、1又は複数のN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基、1又は複数のガラクトース(Gal)残基及びその他を含み得る。グリコシル部分は、例えば、PEG又はメトキシ−PEG(m−PEG)、PEGのアルキル誘導体で修飾されることもできる。
【0063】
<グリココンジュゲーション(glycoconjugation)>
本明細書で使用される「グリココンジュゲーション」という用語は、アミノ酸又は(ポリ)ペプチドのグリコシル残基、例えば本発明の変異体FGF−21に対して、PEG修飾グリコシル部分が酵素を媒介として結合されたコンジュゲーションのことを指す。「グリココンジュゲーション」の分類上の亜属(subgenus)は、「グリコ−PEG化」であり、修飾されたグリコシル部分の修飾基がPEG又はm−PEGである。PEGは、直鎖型又は分岐型のどちらでもよい。典型的には、分岐型PEGは、中央に分岐コア部分と、前記分岐コア部分に連結された複数の線状ポリマー鎖と、を有する。PEGは、一般に、分岐型で使用され、エチレンオキシドを、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの種々のポリオールに添加することによって調製されることができる。中央の分岐部分は、リジンなどのいくつかのアミノ酸から得られることもできる。分岐型PEGは、一般式R(−PEG−OX)mの形態で表すことができ、ここで、Rはグリセロール又はペンタエリスリトールなどのコア部分を表し、Xはキャッピング基又は末端基を表し、mはアームの数を表す。「グリコシル−PEG」と「グリコシル−PEG」という用語は互いに交換可能に使用され、PEG又はメトキシ−PEG(mPEG又はm−PEG)と、1又は複数のグリコシル残基(又はグリコシル部分)と、任意選択的に、PEG/メトキシ−PEGとグリコシル部分との間のリンカー、例えばグリシンなどのアミノ酸と、からなる化学部分を表す。「グリコ−PEG」及び「グリコシル−PEG」と、グリコ−PEG部分に対する同様な用語である「PEG−シアル酸」及び「PEG−Sia」という用語は、PEGとグリコシル部分との間のリンカーを含んでも含まなくてもよいことに留意されるべきである。すなわち「PEG−シアル酸」は、例えば、PEG−シアル酸の他に、PEG−Gly−シアル酸、mPEG−Gly−シアル酸をも包含する。
【0064】
<配列モチーフ(sequence motif)>
配列モチーフは、ヒトFGF−21のアミノ酸配列などの長鎖アミノ酸配列における任意の位置に存在する短鎖アミノ酸配列(例えば、含まれるアミノ酸が2つのみ)を意味する。例えば P
172Tと表される配列モチーフは、172位置のプロリンのC末端の直ぐ後がトレオニン残基であることを意味する。
【0065】
<シアル酸(sialic acid)>
「シアル酸」又は「Sia」という用語は、炭素数9のカルボキシル化糖のファミリーの任意のメンバーを指す。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチルノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌロピラノス−1−オン酸(Neu5Ac、NeuAc、又はNANAと省略されることもある)。ファミリーの第2のメンバーはN−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc又はNeuGc)であり、NeuAcのN−アセチル基がヒドロキシル化されている。第3のシアル酸ファミリーメンバーは、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)である(Nadano et al. (1986) J. Biol. Chem. 261:11550-11557)。また、9−O−ラクチル−Neu5Ac又は9−O−アセチル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Ac及び9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acのような9−0−C
1−C
6アシル−Neu5Acなどの9−置換シアル酸も含まれる。このシアル酸ファミリーについては、例えば、文献(Varki, Glycobiology 2:25-40(1992)を参照することができる。
【0066】
<薬学的に許容される賦形剤>
「薬学的に許容される」賦形剤(excipient)は、本発明の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートと組み合わせたとき、コンジュゲートの活性を保持し、被験体の免疫系と非反応性のあらゆる材料を含む。例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水、水、塩、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び様々な種類の湿潤剤などの標準的な医薬用賦形剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0067】
<医薬品容器>
「医薬品容器」は、医薬組成物を運ぶのに適した容器であり、典型的には、不活性材料で作られ、滅菌されている。
【0068】
<投与>:
「投与する」という用語は、被験体に対して、経口投与、吸入、座薬としての投与、局所接触、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、鼻腔内投与又は皮下投与、又は徐放装置、例えばミニ浸透圧ポンプの埋込みを意味する。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、経口、経鼻、膣、直腸、又は経皮)を含む任意の経路によって行われる。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内及び頭蓋内の投与を含む。他の送達態様には、リポソーム製剤(liposomal formulations)の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
<糖尿病及び糖尿病関連疾患>
「糖尿病」は、しばしば真性糖尿病(diabetes mellitus)と称される疾患として広く知られ、特徴付けられている。この用語は、インスリン産生が不十分であるか、体の細胞がインスリンに対して適切に応答しないか、又はその両方のために、人のグルコース(血糖)値が高い一群の代謝疾患を表す。高血糖の患者は、一般的に、多尿症(頻尿)であり、喉の渇き(多飲症)、空腹(多食症)が増加する。「糖尿病関連疾患(diabetes related diseases)」とは、肥満、多尿、多飲、多食症などの同じ症状を特徴とする疾患である。
【0070】
<2型糖尿病>
「2型糖尿病」は、糖尿病/真性糖尿病の最も一般的な形態である。2型糖尿病は最も一般的には、成人に発症し、肥満で、あまり身体を動かさない人に発生する可能性がより高い。現在予防できない1型糖尿病とは異なり、2型糖尿病の危険因子の多くは修飾されることができる。国際糖尿病連合(International Diabetes Foundation)は、糖尿病検査の必要性を示す4つの症状として、a)頻尿、b)体重減少、c)エネルギー不足、d)過度の渇き、をリストアップしている。インスリン抵抗性は、通常、2型糖尿病の前兆であり、グルコースが細胞に入るために通常よりも多くのインスリンが必要とされる状態である。肝臓のインスリン抵抗性はより多くのグルコースを産生するのに対し、末梢組織の抵抗性はグルコースの取込みが損なわれることを意味する。
【0071】
<非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)>
これは、肝臓に脂肪が蓄積し、その後、肝臓の損傷と炎症が起こる状態である。
【0072】
<代謝症候群(メタボリックシンドローム)>
これは、2型糖尿病と心臓血管疾患の発症に関連する危険因子(生化学的及び生理学的変化)について定義されたクラスターである。
【0073】
<発明の詳細な説明>
組換えFGF−21が、血漿グルコース値及びインスリン値に影響を与えて、肝臓及び循環トリグリセリド値及びコレステロール値を低下させること、並びに、インスリン抵抗性動物モデルの範囲内で、インスリン感受性、エネルギー消費、脂肪肝及び肥満を改善することが示される。このため、FGF−21は、ヒト2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び関連のある代謝疾患の治療に対する標的として興味深い。
【0074】
天然FGF−21はインビトロでの半減期が比較的短く、報告されている循環半減期は、げっ歯類及びヒト以外の霊長類で0.5〜4時間の範囲であり、臨床適用性が制限される。組換えヒトFGF−21の半減期は1〜2時間である。FGF−21の薬物動態特性を改善するために、様々な半減期延長戦略が開発されてきた。
【0075】
本明細書で使用される略語には、PEG、ポリ(エチレングリコール);PPG、ポリ(プロピレングリコール);Ara、アラビノシル;Fru、フルクトシル;Fuc、フコシル;Gal、ガラクトシル;GalNAc、N−アセチルガラクトサミニル;Glc、グルコシル;GlcNAc、N−アセチルグルコサミニル;Man、マンノシル;ManAc、マンノサミニルアセテート;Xyl、キシロシル;NeuAc、シアリル又はN−アセチルノイラミニル;Sia、シアリル又はN−アセチルノイラミニル;及びそれらの誘導体及び類似体、がある。
【0076】
<ペグ化(PEGylation)>
タンパク質の半減期を長くする1つの方法は、1又は複数のPEG部分をタンパク質に結合することであり、この結合によって、概して、タンパク質の生物物理学的溶解度及び安定性が向上する。この手法は、治療を必要とする被験体の治療に適した特性を有するタンパク質の治療的半減期を長くすることに関して特に有用であることが立証された。しかしながら、天然FGF−21は特定のタンパク質PEG化部位を有しない。特定のタンパク質PEG化部位を欠いた化学的PEGは、部位特異的(site-specific)ではなく、典型的には、不均質な製品集団が生成され、薬剤組成物として市場の承認を得るのに必須条件である均質で高純度の製品を達成するのに広範な精製を必要とする。それゆえ、向上した半減期と良好な生物学的活性を有する部位特異的PEG化FGF−21ペプチドを生成するために、FGF−21の部位特異的PEG化が望ましい。
【0077】
酵素ベースの合成は、位置選択性(regioselectivity)と立体選択性(stereoselectivity)という利点を有する。さらに、酵素合成は、保護されていない基質を用いて行うことができることである。PEG残基をタンパク質に部位特異的に結合する1つの可能な方法は、グリコペグ化である。グリコペグ化では、PEG部分が、グリコシルトランスフェラーゼを使用して、タンパク質又はペプチドのアミノ酸に結合したアミノ酸又はグリコシル残基に移される。一般的な最終構造は、タンパク質−グリコシル部分−任意選択的なリンカー−PEGである。より詳細な最終構造は、タンパク質−タンパク質の(N−、C−又は内部)アミノ酸−1又は複数のグリコシル残基−任意選択的なリンカー(例えば、アミノ酸リンカー)−様々な長さの直鎖又は分岐PEG部分であり、グリコシル部分は、1又は複数のグリコシル残基を含み得る。構造の少なくとも一部を構成する1又は複数のグリコシル残基は、タンパク質をPEG部分に連結することができるあらゆるグリコシル残基であってよい。当該技術分野において、タンパク質をグリコPEG化するための多様な方法が知られており、以下に詳細に説明する。
【0078】
タンパク質のPEG化では、コンジュゲートされたPEG部分が大きいほど、PEGがコンジュゲートされたタンパク質の予想半減期は長くなる。この理由は、コンジュゲートされたタンパク質を、血流中に存在するプロテアーゼから保護するためのPEG部分が大きくなると、相対的にその保護能力が向上することによる。PEG部分が大きいと、PEG部分が小さい場合よりも、PEGがコンジュゲートされたタンパク質に対する有効半径が大きくなる。また、大きなタンパク質は、小さなタンパク質と比べて、血流の中に分解されるのが遅く、また、除去されるのが遅い。これは、大きなタンパク質は、腎臓に入るのが遅いか、腎臓に入るのを完全に妨げられるためである。それゆえ、当業者であれば、PEG化プロセスで、高分子量の長いPEG残基(例えば、30kDa以上のPEG)、合計数の多いPEG残基、及び/又は、分岐の多いPEG残基をタンパク質に結合することにより、短い/小さいPEG部分にコンジュゲートされた同じタンパク質よりも優れた特性を有するPEG化タンパク質を作ることができるであろう。
【0079】
しかしながら、ペグ化は、それに関連して、立体障害可能性という重大な不都合がある。これは、コンジュゲートされたPEG部分がタンパク質活性に重要又は必須であるタンパク質の活性部位を物理的にブロックする。例えば、PEG部分は、その受容体のためのタンパク質の受容体結合部位を特異的にブロックする可能性があり、タンパク質活性に重大かつ有害な損失を引き起こす。ペグ化におけるそのような阻害効果を回避するために、当業者は、受容体結合に関与するアミノ酸の近くでPEGを結合させないようにする。
【0080】
FGF−21に関しては、C末端はβ−クロトー結合に重要であり、N末端はFGFR活性化に重要である。さらに、他のFGF−21ファミリータンパク質の結晶構造及びインビトロ効力アッセイに基づくFGF−21のインシリコモデリングでは、推定受容体結合ドメインに位置するアミノ酸残基のPEG化は不活性であったが、遠位部位でのPEG化は最も活性な類似体を産生した。さらに、PEG部分がFGF−21の位置180に配置されたとき、細胞ベースの効力アッセイでは、効力の100倍を超える損失が観察された。FGF−21について、抗体のFc部分への融合を試験したところ、FGF−21のC末端での融合は、N末端での融合よりもはるかに弱い類似体を産生した。これに対して、N末端でPEG化されたFGF−21は、生物学的に活性であることが示された。それゆえ、当業者であれば、当該分野の知識に基づき、タンパク質のこの領域が結合及びシグナル伝達において果たす役割に照らして、FGF−21のC末端近傍でPEG化を回避するであろう。
【0081】
本発明者らは、この背景に反して、複数の変異体線維芽細胞成長因子−21(FGF−21)ペプチドコンジュゲートを生成することを試みた。変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、各々が、i)変異体FGF−21ペプチドと、ii)20kDaのポリエチレングリコール(PEG)とを含み、
前記i)の変異体FGF−21ペプチドは、少なくとも1つのプロリン(P)残基のC末端側にて、少なくとも1つのプロリン残基に隣接して少なくとも1つのトレオニン(T)残基を含み、これにより、対応する天然FGF−21に存在しない少なくとも1つのO結合型グリコシル化部位を形成し、前記天然FGF−21は、アミノ酸配列は、少なくとも95%がSEQ ID NO:1と同一であり、
前記ii)の20kDaのPEGは、少なくとも1つのトレオニン残基で、少なくとも1つのグリコシル部分を介して、前記変異体FGF−21ペプチドに共有結合されている。
【0082】
特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、アミノ酸配列PTを含む変異体FGF−21ペプチドを含む。その詳細な実施形態において、変異体FGF−21ペプチドは、P172T、P156T、P5T、P3T、P9T、P50T、P61T、P79T、P91T、P116T、P129T、P131T、P134T、P139T、P141T、P144T、P145T、P148T、P150T、P151T、P158T、P159T、P166T、P178T、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、前記プロリン及びトレオニンの位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。より詳細な実施形態において、変異体FGF−21ペプチドは、P172T、P156T、P5T及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、特にP172T、P156T及びそれらの組合せからなり、プロリン及びトレオニンの位置はSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。さらに詳細実施形態では、プロリン残基は、アミノ酸145と変異体FGF−21ペプチドのC末端との間に位置し、ここで、アミノ酸145の位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。
【0083】
別の特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチドはアミノ酸配列P172Tを含み、プロリン及びトレオニンの位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。
【0084】
別の特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは変異S173T及び変異R176Aを含み、アミノ酸S及びRの位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいており、特に、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0085】
別の特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは変異Q157Tを含み、アミノ酸Qの位置はSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいており、特に、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0086】
別の特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは変異D6Tを含み、アミノ酸Dの位置はSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいており、特に、変異体FGF−21ペプチドはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む。
【0087】
他の特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:2〜28からなる群から選択されるアミノ酸配列、特にSEQ ID NO:2〜5からなる群から選択されるアミノ酸配列、より詳細には、SEQ ID NO:2〜4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、最も詳細には、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0088】
他の特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、ガラクトース(Gal)及び/又はシアル酸(Sia)を含む少なくとも1つのグリコシル部分を含む。その特定の実施形態では、少なくとも1つのグリコシル部分は、構造−GalNAc−Sia−を含む。
【0089】
他の特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、20kDaのPEG部分を含み、前記PEG部分は、アミノ酸残基、特にグリシン(Gly)を介して少なくとも1つのグリコシル部分に結合されている。さらに特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、構造−GalNAc−Sia−Gly−PEG(20kDa)を含む。より詳細には、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、次の構造を含み、式中、nは450〜460から選択される整数である。
【化3】
【0090】
他の特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、20kDaのPEGを含み、前記PEGは、直鎖PEG又は分岐PEGである。より詳細な実施形態では、20kDaのPEGは直鎖PEGである。さらに詳細な実施形態では、20kDaのPEGは20kDaのメトキシ−PEGである。
【0091】
また、本発明は、明細書に記載した少なくとも1つの変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、0.1mg/mL〜50mg/mLの範囲の濃度で存在し、特に、1mg/mL〜45mg/mLの範囲、より詳細には10mg/mL〜40mg/mLの範囲、最も詳細には26±4mg/mLの範囲の濃度で存在する。緩衝液は、トリス緩衝液であってよい。緩衝液は、1mM〜100mMの濃度、特に2mM〜75mMの濃度、より詳細には5mM〜50mMの濃度、さらに詳細には10mM〜25mMの濃度、最も詳細には16±2mMの濃度で存在してもよい。pHは6.0〜8.5の範囲、特に6.5〜8.0の範囲、より詳細には6.75〜8.0の範囲、最も詳細には7.5±0.3の範囲である。医薬組成物は、塩、特に無機塩、より詳細にはNaClをさらに含む。医薬組成物に含まれる塩は、30mM〜200mMの濃度、特に40mM〜150mMの濃度、より詳細には50mM〜100mMの濃度、最も詳細には56±2mMの濃度で存在することができる。医薬組成物は、さらに張度調整剤を含むことができる。適当な張度調整剤には、グリセロール、アミノ酸、塩化ナトリウム、タンパク質、糖及び糖アルコールが含まれる。特に、張度調整剤は糖であり、より詳細には張度調整剤はスクロースである。張度調整剤は、50mM〜200mMの濃度で存在し、より詳細には100mM〜175mMの濃度で、さらに詳細には135mM〜160mMの濃度で、最も詳細には150±2mMの濃度で存在する。医薬組成物は、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤又は非イオン性界面活性剤は、ポリソルベートベースの非イオン性界面活性剤であって、特にポリソルベート20又はポリソルベート80であり、より詳細にはポリソルベート20である。界面活性剤又は非イオン性界面活性剤は、0.01mg/mL〜1mg/mLの濃度で存在し、特に0.05〜0.5mg/mLの濃度、より詳細には0.2±0.02mg/mLの濃度で存在する。
【0092】
特定の実施形態において、医薬組成物は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを0.1mg/mL〜50mg/mL、緩衝剤、特にトリス緩衝液を1mM〜100mM、塩、特にNaClを30mM〜200mM、張度調整剤、特にスクロースを50mM〜200mM、及び、界面活性剤又は非イオン性界面活性剤、特にポリソルベート20を0.01mg/mL〜1mg/mLの濃度で含み、pHは6.0〜8.5である。
【0093】
本明細書に記載の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート、及び/又は、前記変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを含む医薬組成物を含む医薬品容器もまた、本発明に含まれる。適当な医薬品容器として、例えば、シリンジ、バイアル、輸液用ボトル、アンプル、カープル、針保護システムを備えたシリンジ、又はペン型注射器内のカープルを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0094】
また、本発明は、実施例1〜17の何れかに記載の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを作製する方法を提供するもので、該方法は、
(1)発現宿主の中で変異体FGF−21ペプチドを組換え的に産生するステップ、及び
(2)前記ステップ(1)の変異体FGF−21ペプチドに、20kDaのPEGグリコシル部分を酵素的に結合するステップ、を含み、これによって、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを形成する。特定の実施形態では、発現宿主は大腸菌である。
より詳細な実施形態において、ステップ(2)は、GalNAcを、GalNAc供与体から変異体FGF−21ペプチドの少なくとも1つのトレニオン残基に転移させるのに適した条件下で、変異体FGF−21ペプチドを、GalNAc供与体及びGalNAcトランスフェラーゼと接触させるステップ(2a)を含む。さらにより詳細な実施形態では、GalNAc供与体はUDP−GalNAcである。さらに別の詳細な実施形態では、GalNAcトランスフェラーゼはMBP−GalNAcT2である。本方法の別の詳細な実施形態では、ステップ(2)は、20kDaのPEG−Siaを、20kDaのPEG−Sia供与体から、変異体FGF−21ペプチドの少なくとも1つのトレオニン残基、又はステップ(2a)が存在する場合は変異体FGF−21ペプチドのGalNAcに転移させるのに適した条件下で、ステップ(1)の生成物、又はステップ(2a)が存在する場合にステップ(2a)の生成物を、20kDaのPEG−Sia供与体及びシアリルトランスフェラーゼと接触させるステップ(2b)をさらに含む。さらに詳細な実施形態では、20kDaのPEG−Sia供与体は、20kDaのPEG−Sia−CMPである。さらに詳細な実施形態では、シアリルトランスフェラーゼはST6GalNAclである。さらに詳細な実施形態において、20kDaのPEG−Sia供与体は、次の構造を含み、式中、nは450〜460から選択される整数である。
【化4】
【0095】
別の特定の実施形態において、方法は、ステップ(1)の後でステップ(2)の前に、組換え産生後、変異体FGF−21ペプチドを精製するステップ(3)をさらに含む。より詳細な実施形態において、方法は、ステップ(2)の後、ステップ(2)で形成された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを精製するステップ(4)をさらに含む。方法の他の特定の実施形態において、ステップ(3)は、変異体FGF−21ペプチドを、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、濾過及びそれらの組合せからなる群から選択される方法に適用することを含み、及び/又は、ステップ(4)は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、濾過及びそれらの組合せからなる群から選択される方法に適用することを含む。精製するステップは、1又は複数工程のイオン交換クロマトグラフィーを含み、特に2工程のイオン交換クロマトグラフィーを含む。他の特定の実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーは、アニオン交換クロマトグラフィーであり、より詳細には、強アニオン交換クロマトグラフィーである。より詳細には、アニオン交換クロマトグラフィーは、親水性ポリビニルエーテルベースマトリックス、ポリスチレン/ジビニルベンゼンポリマーマトリックス、トリメチルアンモニウムエチル(TEAE)、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、アガロース、四級アンモニウム(Q)強アニオン交換クロマトグラフィー及びその組合せである。他の特定の実施形態において、ステップ(3)は、親水性ポリビニルエーテルベースマトリックスを使用する2工程のアニオン交換クロマトグラフィーを含む。他の特定の実施形態において、ステップ(4)は、2工程の第四級アンモニウム(Q)強アニオン交換クロマトグラフィーを含む。特定の実施形態において、アルギニンは、ステップ(2)に添加され、及び/又は、ステップ(3)が存在する場合、ステップ(3)において、具体的には少なくとも400mMのアルギニンが添加される。他の特定の実施形態において、方法は、ステップ(3)の後でステップ(2)の前に、エンドトキシンを除去するステップ(5)をさらに含み、ステップ(3)の生成物はエンドトキシン除去フィルターを使用して濾過される。
【0096】
本発明のさらなる態様において、上記記載の方法によって得られる変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートが含まれ、前記組成物は、薬学的に許容される賦形剤又は担体をさらに含む。
【0097】
別の態様において、本発明は、糖尿病又は糖尿病関連疾患、特に、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、又は代謝症候群を治療する方法を提供するもので、該方法は、本明細書に記載された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート、又は本発明に記載された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを少なくとも1種含む医薬組成物を、治療を必要とする被験体に対して、治療上有効な量を投与することを含む。特定の実施形態において、被験体は、ヒト被験体である。
【0098】
<FGF−21ペプチドのグリコシル化及びグリココンジュゲーション>
ペプチド及びタンパク質の発現後のインビトロ修飾は、一般的に、グリコペプチド及びグリコタンパク質を生成するために使用される。サッカリド供与体部分を転移する酵素の多様な配列が利用可能であり、それにより、グリココンジュゲートは、カスタム設計されたグリコシル化パターン及びグリコシル構造とのインビトロ酵素合成が可能になる。例えば、米国特許第5,876,980号、第6,030,815号、第5,728,554号、第5,922,577号、特許出願公開WO98/31826、WO01/88117、WO03/031464、WO03/046150、WO03/045980、WO03/093448、WO04/009838、WO05/089102、WO06/050247、WO12/016984、US2002/142370、US2003/040037、US2003/180835、US2004/063911、US2003/207406、及びUS2003/124645は、各々が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
ペプチドのグリコシル残基を追加及び/又は修飾するために利用可能な酵素及び方法の汎用性により、グリコシル連結基は実質的に任意の構造を有することができる。それゆえ、グリコシル連結基は、実質的にあらゆるモノサッカリド又はオリゴサッカリドを含むことができる。グリコシル連結基は、側鎖又はペプチド骨格のどちらかを通してアミノ酸に結合されることができる。或いは、グリコシル連結基は、サッカリル部分を介してペプチドに結合されることができ、前記サッカリル部分はペプチド上のO結合又はN結合グリカン構造の一部であり得る。
【0100】
上記に従って、本発明者らは、グリコシル化変異体FGF−21のコンジュゲートを作製したもので、前記コンジュゲートには、対応する野生型FGF−21配列には存在しないグリコシル化部位を有する。そのようなコンジュゲートは、修飾された糖が、グリコシル化されたFGF−21ペプチドに対して酵素的連に結合することによって形成された。修飾糖が、ペプチドと糖の修飾基の間に存在するとき、本明細書では「グリコシル連結基」と称されることがある。本発明者らは、例えば、グリコシルトランスフェラーゼなどのような絶妙な酵素を選択することにより、1又は複数の特定の位置に所望の基を有する変異体FGF−21ペプチドを産生した。より具体的には、本発明者らは、グリコシルトランスフェラーゼを使用して、修飾糖類を、変異体FGF−21グリコペプチド上の炭水化物部分に連結した。
【0101】
<FGF−21コンジュゲート>
別の態様において、修飾糖と変異体FGF−21ペプチドのコンジュゲートを例示的に提供する。例えば、本明細書の以下の実施例1−7に示す。より具体的には、作製された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、変異体FGFペプチドと少なくとも1つの修飾糖類とを含み、前記少なくとも1つの修飾糖類の第1の修飾糖が、グリコシル連結基を介してペプチドのアミノ酸に連結されている。本明細書に記載されるように、グリコシル連結基が結合されたアミノ酸は、グリコシルトランスフェラーゼによって認識される部位を生成するために変異される。
【0102】
別の例示的な実施形態において、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、変異体FGF−21ペプチドと、変異体FGF−21ペプチドの変異アミノ酸残基に連結されたグリコシル基とを含むことができる。
【0103】
例示的な実施形態では、グリコシル基は無傷のグリコシル連結基である。別の例示的な実施形態では、グリコシル基は修飾基をさらに含む。別の例示的な実施形態では、修飾基は非グリコシド修飾基である。別の例示的な実施形態では、修飾基は天然に存在するサッカリド部分を含まない。
【0104】
<修飾糖類(modified sugars)>
例示的な実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは修飾糖と反応し、ペプチドコンジュゲートを形成する。修飾糖は、「糖供与体部分(sugar donor moiety)」及び「糖転移部分(sugar transfer moiety)」を含む。糖供与体部分は、本明細書に記載のコンジュゲートとして、グリコシル部分又はアミノ酸部分のどちらかを介してペプチドに結合される修飾糖の任意の部分である。糖供与体部分は、修飾された糖から変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートのグリコシル連結基への転換中に化学的に変化される原子を含む。糖転移部分は、本明細書に記載のコンジュゲートとしてペプチドに結合されない修飾糖の任意の部分である。
【0105】
本明細書に記載の修飾された糖類について、サッカリル部分は、サッカリド、デオキシサッカリド、アミノサッカリド、又はN−アシルサッカリドであってよい。「サッカリド」及びその同等語である「サッカリルSaccharyl)」、「糖」、及び「グリコシル」は、モノマー、ダイマー、オリゴマー、及びポリマーのことを言う。糖部分も修飾基で官能化されている。修飾基は、典型的には、糖のアミン、スルフヒドリル又はヒドロキシル、例えば一級ヒドロキシルの部分とのコンジュゲーションを介してサッカリル部分にコンジュゲートされる。例示の実施形態において、修飾基は、糖のアミン部分を介して、結合される。例えば、アミンと修飾基の反応性誘導体との反応を介して形成されるアミド、ウレタン又は尿素を介して結合される。
【0106】
どんなサッカリル部分についても、修飾糖の糖供与体部分として利用されることができる。サッカリル部分は、マンノース、ガラクトース又はグルコースなどの既知の糖、又は既知の糖の立体化学(stereochemistry)を有する種であり得る。これらの修飾糖類の一般式は次の式に示される。
【化5】
【0107】
本明細書に記載の方法に有用な他のサッカリル部分には、フコース及びシアル酸、並びに、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミンなどのアミノ糖、シアル酸等の5−アミン類似体などのアミノ糖が含まれるが、これらに限定されない。サッカリル部分は、天然に存在する構造であってもよいし、修飾基を結合するための部位を得るために修飾されることができる。例えば、一実施形態では、修飾糖は、9−ヒドロキシ部分がアミンで置換されたシアル酸誘導体を提供する。アミンは、選択された修飾基の活性化された類似体で容易に誘導体化される。本明細書に記載の方法に有用な修飾糖類の例は、PCT特許出願第PCT/US05/002522に記載されており、この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
さらなる例示的実施形態において、本発明は修飾糖類を利用するもので、前記修飾糖類は、6−ヒドロキシル位置が、対応するアミン部分に転換され、前記部分が、上記した修飾基等のリンカー修飾基カセットを有する。これら修飾糖のコアとして使用されることができるグリコシル基の例として、Gal、GalNAc、Glc、GlcNAc、Fuc、Xyl、Manなどが挙げられる。この実施形態による代表的な修飾糖は、次の構造を有し、式中、R
11−R
14は、H、OH、C(O)CH
3、NH、及びNHC(O)CH
3から独立して選択されるメンバーであり、R
10は、例えば、他のグリコシル残基(−O−グリコシル)に連結され、R
14はOR
1、NHR
1又はNH−L−R
1であり、R
1及びNH−L−R
1は本明細書に記載の通りである。
【化6】
【0109】
さらに例示的実施形態において、6−ヒドロキシル位置が、対応するアミン部分に転換される修飾糖のコアとして使用されるグリコシル基は、Gal及び/又はGalNAcを含む。
【0110】
<グリコシル連結基(glycosyl linking groups>
例示的な実施形態において、本明細書に記載の修飾糖及び変異体FGFペプチドを含む変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートが提供される。この実施形態では、修飾糖の糖供与体部分(サッカリル部分及び修飾基など)が「グリコシル連結基」になる。なお、「グリコシル連結基」は、ペプチドと修飾基の間に存在するグリコシル部分を指すこともある。
【0111】
以下の例示的な実施形態では、フラノース及びピラノースの選択された誘導体の使用を参照して本発明を説明する。当業者であれば、記載された構造及び組成物が、一般に、グリコシル連結基及び修飾糖類が含まれる属の全体に適用可能であることは理解し得るであろう。それゆえ、グリコシル連結基は、実質的にあらゆるモノサッカリド又はオリゴサッカリドを含むことができる。
【0112】
例示的な実施形態において、本明細書に記載の方法は、次の式を有するグリコシル連結基を利用することができ、式中、Jはグリコシル部分であり、Lは化学結合又はリンカーであり、R
1は修飾基、例えばポリマー修飾基である。
【化7】
化学結合は、例えば、グリコシル部分のNH
2部分と修飾基の相補的反応性の化学基との間に形成される。例えば、R
1がカルボン酸部分を含む場合、この部分は活性化され、グリコシル残基のNH
2部分と結合され、構造NHC(O)R
1を有する結合が得られる。Jは、好ましくは、「無傷(intact)」であって、ピラノース又はフラノース構造を切断する条件、例えば、 酸化条件、例えば過ヨウ素酸ナトリウムの条件に曝露されても分解されなかったグリコシル部分である。
【0113】
リンカーの例として、アルキル部分及びヘテロアルキル部分が挙げられる。リンカーは、例えばアシルベースの連結基、例えば、−C(O)NH−、−OC(O)NH−などの連結基を含む。連結基は、コンジュゲートの成分と成分との間、例えば、グリコシル部分とリンカー(L)との間、又はリンカーと修飾基との間(R
1)に形成される結合である。 他の連結基の例は、エーテル、チオエーテル及びアミンである。例えば、一実施形態では、リンカーはグリシン残基などのアミノ酸残基である。グリシンのカルボン酸部分は、グリコシル残基のアミンとの反応により、対応するアミドに転換され、グリシンのアミンは、修飾基の活性化カルボン酸又は炭酸塩との反応により、対応するアミド又はウレタンに転換される。
【0114】
NH−L−R
1の典型的な種は、式:−NH{C(O)(CH
2)
aNH}s{C(O)(CH
2)
b(OCH
2CH
2)
cO(CH
2)
dNH}
tR
1を有し、指数(indices)s及びtは独立して0又は1である。指数a、b及びdは独立して0〜20の整数であり、cは1〜2500の整数である。他の同様なリンカーは、−NH部分が 他の化学基、例えば、−S、−O又は−CH
2と置換される種に基づいている。当該技術分野で理解されているように、指数s及びtに対応する括弧部分の1又は複数の部分は、置換又は非置換アルキル又はヘテロアルキル部分で置き換えられることができる。
【0115】
より具体的には、本明細書に記載の化合物は、NH−L−R’から構成され、NH−L−R’は、NHC(O)(CH
2)
aNHC(O)(CH
2)
b(OCH
2CH
2)
cO(CH
2)
dNHR
1、NHC(O)(CH
2)
b(OCH
2CH
2)
cO(CH
2)
dNHR
1、NHC(O)O(CH
2)
b(OCH
2CH
2)
cO(CH
2)
dNHR
1、NH(CH
2)
aNHC(O)(CH
2)
b(OCH
2CH
2)
cO(CH
2)
dNHR
1、NHC(O)(CH
2)
aNHR
1、NH(CH
2)
aNHR
1、及びNHR
1である。これらの式において、指数a、b及びdは、0〜20、好ましくは1〜5の整数から独立して選択される。指数cは1〜約2500の整数である。
【0116】
例示的な実施形態では、cの選択は、PEG部分が約1kD、5kD、10kD、15kD、20kD、25kD、30kD、35kD、40kD、45kD、50kD、55kD、60kD又は65kDとなるように行われる。
【0117】
より詳細な実施形態では、cの選択は、PEG部分が15〜25kD、16〜25kD、17〜25kD、18〜25kD、19〜25kD、20〜25kD、21〜25kD、22〜25kD、23〜25kD、24〜25kD、15〜20kD、16〜20kD、17〜20kD、18〜20kD、19〜20kD、20〜30kD、21〜30kD、22〜30kD、23〜30kD、24〜30kD、25〜30kD、26〜30kD、27〜30kD、28〜30kD、29〜30kDの範囲となるように行われる。さらに詳細な実施形態では、cの選択は、PEG部分が20kD、22kD、23kD、24kD、25kD、26kD、27kD、28kD、29kD、又は30kDとなるように行われる。
【0118】
明確にするために記載すると、このセクションの残りのグリコシル連結基は、シアリル部分に基づいています。しかしながら、当業者であれば、シアリル部分に代えて、マンノシル、ガラクトシル、グルコシル、又はフコシルなどの他のグリコシル部分を使用できることは認識し得るであろう。
【0119】
例示的な実施形態において、グリコシル連結基は、無傷のグリコシル連結基であり、前記連結基を形成する1又は複数のグリコシル部分は、化学的プロセス(例えば、メタ過ヨウ素酸ナトリウム)又は酵素的プロセス(例えば、オキシダーゼ)によって分解されない。本発明の選択されたコンジュゲートは、アミノサッカリドのアミン部分、例えば、マンノサミン、グルコサミン、ガラクトサミン、シアル酸などに結合される修飾基を含む。例示的な実施形態において、本発明は、次の式から選択される式を有する無傷のグリコシル結合基を含むペプチドコンジュゲートを提供する。
【化8】
【0120】
式Iにおいて、R
2はH、CH
2OR
7、COOR
7又はOR
7であり、ここでR
7はH、置換若しくは非置換アルキル又は置換若しくは非置換ヘテロアルキルを表す。COOR
7がカルボン酸又はカルボン酸塩である場合、両方の形態は単一構造COO
−又はCOOHの表示によって表される。式I及びIIにおいて、記号R
3、R
4、R
5、R
6及びR
6’は、独立して、H、置換又は非置換アルキル、OR
8、NHC(O)R
9を表す。指数dは0又は1である。R
8及びR
9は、H、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、シアル酸又はポリシアル酸から独立して選択される。R
3、R
4、R
5、R
6又はR
6’の少なくとも1つは修飾基を含む。この修飾基は、結合又は連結基を介して連結されるポリマー修飾部分、例えばPEGであり得る。例示的な実施形態では、R
6及びR
6’は、それらが結合している炭素と共に、シアル酸のピルビル側鎖の成分である。さらなる例示的な実施形態において、ピルビル側鎖は、ポリマー修飾基で官能化される。別の例示的な実施形態では、R
6及びR
6’は、それらが結合している炭素と共に、シアル酸の側鎖の成分であり、ポリマー修飾基はR
5の成分である。
【0121】
このモチーフによる修飾基−無傷グリコシル連結基カセットの例は、シアル酸構造に基づいており、例えば、次の式を有するカセットがある。
【化9】
【0122】
上記式において、R
1及びLは上記のとおりである。例示的なR
1基の構造に関するさらなる詳細については以下にて説明する。
【0123】
さらなる例示的な実施形態において、コンジュゲートは、ペプチドと修飾糖との間で形成され、修飾糖の6炭素位置で、修飾基がリンカーを介して結合されている。それゆえ、この実施形態による例示的なグリコシル連結基は、次の式を有する。
【化10】
なお、上記式において、ラジカルは既に説明したとおりである。グリコシル連結基には、グルコース、グルコサミン、N−アセチル−グルコサミン、ガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、マンノース、マンノサミン、N−アセチル−マンノサミンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
一実施形態において、本発明は、次のグリコシル連結基を含む変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを提供する:
【化11】
式中、Dは−OH及びR
1−L−HN−から選択されるメンバーである。Gは、H及びR
1−L−及び−C(O)(C
1−C
6)アルキルから選択されるメンバーである。R
1は、直鎖又は分岐ポリ(エチレングリコール)残基を含む部分である。Lはリンカー、例えば化学結合(「ゼロ次(zero order)」)、置換若しくは非置換アルキル、及び置換若しくは非置換ヘテロアルキルである。 例示的な実施形態において、DがOHである場合、Gは○であり、Gが−C(O)(C
1−C
6)アルキルである場合、DはR
1−L−NH−である。
【0125】
本発明は、次の式を有するグリコシル連結基を含むペプチドコンジュゲートを提供する。
【化12】
【0126】
他の実施形態において、グリコシル連結基は次の式を有し、式中、指数tは0又は1である。
【化13】
【0127】
さらに他の実施形態において、グリコシル連結基は次の式を有し、式中、指数tは0又は1である。
【化14】
【0128】
さらに別の実施形態では、グリコシル連結基は次の式を有し、式中、pは1〜10の整数を表し、aは0又は1のいずれかである。
【化15】
【0129】
例示的な実施形態において、グリコPEG化ペプチドコンジュゲートは、次に記載の式から選択される。
【化16】
【0130】
上記式の中で、指数tは0〜1の整数であり、指数pは1〜10の整数である。記号R
15’は、H、OH(例えば、Gal−
OH)、シアリル部分、シアリル連結基(すなわち、シアリル連結基−ポリマー修飾基(Sia−L−R
1)、又はポリマー修飾シアリル部分(例えば、Sia−Sia−L−R
1)(“Sia−Sia
p”))が結合されたシアリル部分を表す。例示的なポリマー修飾糖部分は、式I及びIIによる構造を有する。本発明の例示的なペプチドコンジュゲートは、式I又はIIによる構造を含むR
15’を有する少なくとも1つのグリカンを含む。式I及びIIの空原子価を有する酸素は、グリコシド結合を介してGal又はGalNAc部分の炭素に結合されることが好ましい。さらなる例示的な実施形態では、酸素は、ガラクトース残基の3位置で炭素に結合される。例示的な実施形態において、修飾シアル酸は、ガラクトース残基とのα2,3−結合である。別の例示的な実施形態では、シアル酸は、ガラクトース残基とのα2,6−結合である。
【0131】
例示的な実施形態において、シアリル連結基は、ポリマーシアリル部分(例えば、Sia−Sia−L−R
1)(“Sia−Sia
p”)が結合されたシアリル部分を表す。ここで、グリコシル連結基は、シアリル部分を介してガラクトシル部分に連結される。
【化17】
【0132】
このモチーフによる例示的な種は、Sia−Sia結合、例えばCST−11、ST8Sia−II、ST8Sia−III及びST8Sia−IVを形成する酵素を使用して、Sia−L−R
1をグリカンの末端シアル酸にコンジュゲートすることによって調製される。
【0133】
別の例示的な実施形態では、ペプチドコンジュゲートのグリカンは、次の群から選択される式及びそれらの組合せを有する。
【化18】
【0134】
上記の各式において、R
15’は既に説明したとおりである。さらに、本明細書に記載される例示的な変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、式I又はIIによる構造を有するR
15部分を有する少なくとも1つのグリカンを含む。
【0135】
別の例示的な実施形態では、グリコシル連結基は、次の式を有する少なくとも1つのグリコシル連結基を含み、式中、R
15は前記シアリル結合基であり、指数pは1〜10から選択される整数である。
【化19】
【0136】
例示的な実施形態では、グリコシル連結部分は、次の式を有し、式中、bは0〜1の整数であり、指数sは1〜10の整数、指数fは1〜2500の整数を表す。
【化20】
【0137】
例示的な実施形態において、ポリマー修飾基はPEGである。別の例示的な実施形態では、PEG部分は20〜30kDaの分子量を有する。例示的な実施形態では、PEG部分は、17kDa、18kDa、19kDa、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、31kDa、32kDa、又は33kDaの分子量を有する。
別の例示的な実施形態では、PEG部分は20kDaの分子量を有する。別の例示的な実施形態では、PEG部分は30kDaの分子量を有する。別の例示的な実施形態では、PEG部分は約5kDaの分子量を有する。別の例示的な実施形態では、PEG部分は約10kDaの分子量を有する。別の例示的な実施形態では、PEG部分は約40kDaの分子量を有する。
【0138】
例示的な実施形態では、グリコシル連結基は直鎖10kDa−PEG−シアリルであり、これらのグリコシル連結基の1つ又は2つはペプチドに共有結合されている。例示的な実施形態では、グリコシル連結基は直鎖20kDa−PEG−シアリルであり、これらのグリコシル連結基の1つ又は2つはペプチドに共有結合されている。例示的な実施形態では、グリコシル連結基は直鎖30kDa−PEG−シアリルであり、これらのグリコシル連結基の1つ又は2つはペプチドに共有結合されている。例示的な実施形態では、グリコシル連結基は直鎖5kDa−PEG−シアリルであり、これらのグリコシル連結基の1つ、2つ又は3つはペプチドに共有結合されている。例示的な実施形態では、グリコシル連結基は直鎖40kDa−PEG−シアリルであり、これらのグリコシル連結基の1つ又は2つはペプチドに共有結合されている。
【0139】
さらなる例示的な実施形態において、変異体FGF−21ペプチドは、本明細書に記載の方法に従ってペグ化される。特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは、変異S
172T及びR
176Aを含み、アミノ酸S及びRの位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。より具体的には、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。本明細書において詳細に説明したように、トレオニン残基に結合され、新たに導入されるトレオニン残基をPEG部分に連結する少なくとも1つのグリコシル部分は、実質的に、あらゆる可能なグリコシル部分であったよい。唯一の制限は、トレオニンに結合できるはずであることと、より具体的にはリンカー、例えばアミノ酸残基、特にグリシンを介して、PEG又はm−PEGに結合されることができるはずであることである。特定の実施形態において、少なくとも1つのグリコシル部分は、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、ガラクトース(Gal)及び/又はシアル酸(Sia)を含む。より詳細な実施形態において、少なくとも1つのグリコシル部分は、構造−GalNAc−Sia−、すなわち、GalNAc及びSiaの2つのグリコシル部分を含み、PEG残基は、GalNAc又はSia、特にSiaに結合されることができる。PEG部分に結合されていないグリコシル部分は、新たに導入されるトレオニン残基に結合されることができる。
【0140】
別の特定の実施形態では、20kDaのPEG部分は、リンカー、例えば、アミノ酸残基、特にアラニン又はグリシンなどの小さなアミノ酸、より具体的にはグリシン(Gly)を介して、少なくとも1つのグリコシルリンカーに結合されている。それゆえ、PEG又はm−PEG部分はアミノ酸に結合され、アミノ酸はSiaなどのグリコシル部分に結合される。グリコシル部分は、アミノ酸リンカー(存在する場合)、及び変異体FGF−21アミノ酸配列に新しく導入されたトレオニン残基に結合される。アミノ酸残基は、参照により本明細書に組み込まれるWO03/031464に記載された方法を介して、PEG及びグリコシル残基に結合される。
【0141】
特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)コンジュゲートは、構造−GalNAc−Sia−Gly−PEG(20kDa)を含み、ここで、GalNAcは、例えば、新たに導入されたトレオニン残基及びSiaに結合されている。Siaは、グリシン残基を介して、17kDa、18kDa、19kDa、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、31kDa、32kDa、又は33kDaのPEGにさらに結合される。
【0142】
より詳細な実施形態において、変異体FGF−21ペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)コンジュゲートは、構造−GalNAc−Sia−Gly−PEG(20kDa)を含み、ここで、GalNAcは、例えば、新たに導入されたトレオニン残基及びSiaに結合されている。Siaは、グリシン残基を介して、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、又は30kDaのPEGにさらに結合される。
【0143】
さらにより詳細な実施形態では、変異体FGF−21ペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)コンジュゲートは、構造−GalNAc−Sia−Gly−PEG(20kDa)を含み、ここで、GalNAcは、例えば、新たに導入されたトレオニン残基及びSiaに結合されている。Siaは、グリシン残基を介して、20kDa、25kDa、又は30kDaのPEGにさらに結合される。
【0144】
さらにより詳細な実施形態では、変異体FGF−21ペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)コンジュゲートは、構造−GalNAc−Sia−Gly−PEG(20kDa)を含み、ここで、GalNAcは、例えば、新たに導入されたトレオニン残基及びSiaに結合されている。Siaは、グリシン残基を介して、20kDa又は30kDaのPEGにさらに結合される。
【0145】
さらにより詳細な実施形態では、変異体FGF−21ペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)コンジュゲートは、構造−GalNAc−Sia−Gly−PEG(20kDa)を含み、ここで、GalNAcは、例えば、新たに導入されたトレオニン残基及びSiaに結合されている。Siaは、グリシン残基を介して、20kDaのPEGにさらに結合される。
【0146】
特に具体的な実施形態では、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは次の構造を含み、式中、nは、
図1にも示されているように、450〜460から選択される整数である。
【化21】
【0147】
20kDaのPEGは、直鎖又は分岐であってよく、より具体的には、20kDaのPEGは、直鎖の20kDaPEGである。さらに、20kDaのPEGは、特に、20kDaのメトキシ−PEG(mPEG、m−PEG)である。異なる分子量のPEG及びmPEGは、例えば、米国テキサス州プラノのJenKem Technology USA、又はドイツ国ウルムのMerckle Biotecなどの様々なサプライヤーから入手することができる。PEG20kDaは、PEG残基のサイズが平均で20kDaであることを意味し、PEG残基の大部分が20kDaのサイズであることは当該技術分野で理解されている。
【0148】
<変異体FGF−21ペプチド及びそのコンジュゲート>
本発明者らは、非常に長い半減期を有する変異体を含む驚くべき特性を有する線維芽細胞成長因子−21(FGF−21)の変異体を作製した。この変異体は、
i)少なくとも1つのプロリン(P)残基のC末端側に隣接する少なくとも1つのトレオニン(T)残基を含む変異体FGF−21ペプチドであって、アミノ酸配列の少なくとも95%がSEQ ID NO:1と同一の対応する天然FGF−21には存在しない少なくとも1つのO結合型グリコシル化を形成することができる、変異体FGF−21ペプチドと、
ii)少なくとも1つのグリコシル部分を介して、前記変異体FGF−21ペプチドの少なくとも1つのトレオニン残基で共有結合された20−30kDaのポリエチレングリコール(PEG)と、を含む。
【0149】
20−30kDaのPEG残基を結合するために、トレオニン残基が、天然FGF−21FGFのアミノ酸配列に既に存在するプロリン残基、すなわち天然プロリン残基のC末端側に隣接する位置にある天然FGF−21のアミノ酸配列に導入される。この目的のために、(i)追加のトレオニンが天然プロリン残基のすぐ隣りに導入されるか、又は(ii)天然プロリン残基の末端側に隣接するFGF−21の天然アミノ酸配列に存在する天然アミノ酸がトレオニン残基に転換される。本発明において、前記選択肢(ii)は例示的な実施形態である。本明細書に記載されるように、複数のトレオニン残基が、既に存在するプロリン残基のC末端に隣接する位置に導入され得る。したがって、本発明の変異体FGF−21は、追加に導入されたトレニオン残基と、天然アミノ酸の代わりに導入されたトレオニン残基の両方を含むことができる。
【0150】
プロリン残基のC末端側にてプロリン残基に隣接する新しいトレオニン残基を導入することにより、O−グリコシル化酵素のコンセンサス配列が形成される。プロリン残基は通常、タンパク質の表面(例えば、ターン、キンク、ループなどの中)に存在するため、プロリン残基に近接するPEG−グリコシル部分を使用してO−グリコシル化及びPEG化を要求する設計は、グリコシル又はグリコール−PEG部分を転移するグリコシルトランスフェラーゼへの標的結合部位の相対的アクセス可能性がもたらす利点を有し、コンジュゲートされたグリコシル及び/又はPEG構造を、タンパク質構造を破壊することなく収容する能力を有する。
【0151】
トレオニン残基をFGF−21の天然アミノ酸配列へ導入するために、組換え遺伝学の分野における通常の技術が用いられる。本発明において使用する一般的な方法を開示した基本的な文献として、文献(Sambrook and Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(3rd ed.2001);Kriegler, Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);及び Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology(1994))がある。
【0152】
特定の実施形態において、天然FGF−21アミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示されるヒトFGF−21の天然アミノ酸配列に対応する。
【0153】
特定の実施形態において、変異体FGF−21ペプチドは、アミノ酸配列PT、すなわちプロリン残基にC末端で隣接するトレオニン残基を含む。前記配列PTは、天然FGF−21アミノ酸配列には存在しない。
【0154】
変異体FGF−21ペプチドは、任意選択的に、P
172T(例えば、SEQ ID NO:2又は3)、P
156T(例えば、SEQ ID NO:4)、P
5T(例えば、SEQ ID NO:5)、P
3T(例えば、SEQ ID NO:6)、P
9T(例えば、SEQ ID NO:7)、P
50T(例えば、SEQ ID NO:8)、P
61T(例えば、SEQ ID NO:9)、P
79T(例えば、SEQ ID NO:10)、P
91T(例えば、SEQ ID NO:11)、P
116T(例えば、SEQ ID NO:12)、P
120T(例えば、SEQ ID NO:13)、P
125T(例えば、SEQ ID NO:14)、P
129T(例えば、SEQ ID NO:15)、P
131T(例えば、SEQ ID NO:16)、P
134T(例えば、SEQ ID NO:17)、P
139T(例えば、SEQ ID NO:18)、P
141T(例えば、SEQ ID NO:19)、P
144T(例えば、SEQ ID NO:20)、P
145T(例えば、SEQ ID NO:21)、P
148T(例えば、SEQ ID NO:22)、P
150T(例えば、SEQ ID NO:23)、P
151T(例えば、SEQ ID NO:24)、P
158T(例えば、SEQ ID NO:25)、P
159T(例えば、SEQ ID NO:26)、P
166T(例えば、SEQ ID NO:27)、P
178T(例えば、SEQ ID NO:28)、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、プロリン及びトレニオンの位置は、SEQ ID NO:1に示されるFGF−21の天然アミノ酸配列に基づいている。具体的には、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいて、P
172T、P
156T、P
5T及びそれらの組合せからなる群、特に、P
172T、P
156T及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む。さらに具体的には、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づく配列モチーフP
172Tを含み、プロリン及びトレニオンの位置はSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。
【0155】
特定の実施形態では、プロリン残基は、アミノ酸145と変異体FGF−21ペプチドのC末端との間に位置し、アミノ酸145の位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。本明細書に示される結果によって実証されるように、FGF−21のC末端は、驚くべきことに、PEGの結合、特にグリコシル−PEG部分の結合を許容する。文献では、FGF−21のβ−クロトー結合には無傷のC末端を必要とすることが報告されているため、これは予期せぬことであった。
【0156】
特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは、変異S
172T及びR
176Aを含み、アミノ酸S及びRの位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。特に、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。変異R
176Aは、トレニオン173のO結合型グリコシル化部位を導入した後、タンパク質の全体的な安定性に有益であることがわかった。この変異によって、比較的大きなアルギニン側鎖は除去され、アラニンの小さな側鎖に置換された。アラニンの小さい側鎖は、シンジケエ変異されたFGF−21ペプチドに結合される多量のグリコシル−PEG部分との干渉が少ないと考えられる。
【0157】
別の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは変異Q
157Tを含み、アミノ酸Qの位置はSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。特に、変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:4に示すアミノ酸、すなわちD
6Tを含み、アミノ酸Dの位置は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に基づいている。特に,変異体FGF−21ペプチドは、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む。
【0158】
特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、SEQ ID NO:2〜28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、より具体的にはSEQ ID NO:2〜5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、さらに具体的には、SEQ ID NO:2〜4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、最も具体的には、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0159】
さらに本発明は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。担体は、水又は生理学的に適合性のある緩衝液などである。医薬組成物は、典型的には、活性剤として、治療上有効な量又は薬学的に活性な量の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを含む。
【0160】
本発明の医薬組成物は、様々な薬物送達システムでの使用に適している。本発明で使用するのに適した製剤(formulations)は、文献(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985))に記載されている。薬物送達の方法の簡単な説明については、文献(Langer、Science 249:1527-1533(1990))を参照することができる。医薬組成物は、皮下注射、エアロゾル吸入、又は経皮吸着などにより、非経口投与、鼻腔内投与、局所投与、経口投与、又は局所投与することより、予防処置及び/又は治療のために用いられる。一般に、医薬組成物は、非経口的に、例えば皮下投与又は静脈内投与される。それゆえ、本発明は、非経口投与用の組成物を提供するもので、該組成物は、許容される担体、特に水性担体(例えば水、緩衝水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))などに溶解又は懸濁された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを含む。組成物はまた、Tween20及びTween80などの洗剤;マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロースなどの安定剤;及びEDTAやm−クレゾールなどの防腐剤を含むことができる。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される補助物質、例えばpH調整剤、緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、洗剤などを含むことができる。
【0161】
本発明の医薬組成物は、従来の滅菌技術により滅菌されてもよく、又は滅菌濾過されてもよい。得られた水溶液は、そのまま使用するためにパッケージに入れてもよいし、凍結乾燥してもよい。凍結乾燥製剤は投与前に滅菌水性担体と混合される。FGFペプチドコンジュゲートを含む組成物は、予防処置及び/又は治療のために、特に糖尿病又は糖尿病関連疾患の処置、特に2型糖尿病、NASH及びメタボリックシンドロームの処置のために投与されることができる。治療用途では、組成物は、既に糖尿病又は糖尿病に関連する状態にある被験体に対して、疾患及びその合併症の症状を治癒又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量が投与される。これを達成するのに十分な量は「治療上有効な量」として定義され、通常は患者の健康状態と体重に依存する。NASH及び2型糖尿病の様々な動物モデルで試験した場合、有効用量は0.1mg/kg乃至6mg/kgの範囲である。
【0162】
本発明は、疾患及び/又は該疾患の障害若しくは症状を治療する方法を提供するもので、治療上有効な量の化合物(本明細書に記載された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート)又は前記化合物を含む医薬組成物を、被験体(例えば、人間などの哺乳類)に投与することを含む。それゆえ、一実施形態は、糖尿病又は糖尿病関連疾患(例えば、2型糖尿病、NASH又はメタボリックシンドローム)又はその症候を患っている被験体を治療する方法である。この方法は、疾患又は障害が治療される条件下で、本発明に記載された化合物又は該化合物を含む組成物を、疾患又は障害又はその症状を治療するのに十分な量を哺乳動物に投与するステップを含む。
【0163】
組成物の1回投与又は複数回投与は、治療医師によって選択される用量レベル及びパターンで行われることができる。いずれにしても、医薬組成物は、そのような治療を必要とする被験体を効果的に治療するのに十分な量の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを供給すべきである。
【0164】
医薬組成物において、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、典型的には0.1 mg/mL乃至50mg/mLの範囲の濃度、特に1mg/mL乃至45mg/mLの範囲の濃度、より詳細には10mg/mL乃至40mg/mLの範囲の濃度、最も詳細には、26±4mg/mLの濃度で存在する。より詳細な実施形態では、医薬組成物中の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの濃度は33±7mg/mLであるか、より詳細には26±4mg/mLである。
【0165】
医薬組成物の全ての成分及び該成分の特定の濃度は、非常に多くの異なる条件、化合物及びそれらの濃度を試験した後に慎重に選択された。それゆえ、本明細書に開示される医薬組成物は、化合物及び化合物濃度は任意に選択されたものでなく、本発明に係る変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート又は変異体FGF−21が含まれる水性医薬組成物が薬剤として最も最適であることが見出された条件を具体的かつ合理的に選択したものである。
【0166】
さらに、医薬組成物は、特に緩衝剤を含み、具体的にはリン酸塩又はトリス緩衝液、より具体的にはトリス緩衝液、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)を含む。任意選択的に、緩衝剤は、1mM〜100mMの濃度、特に2mM〜75mMの濃度、より具体的には5mM〜50mMの濃度、さらに具体的には10mM〜25mMの濃度、最も具体的には16±2の濃度で存在する。トリス緩衝液が選択されるのは、タンパク質の溶解性が他の緩衝系よりも優れていることがわかり、pHをpH7.5に維持するのに適しているためである。このpHは、PEG化された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの長期保存に最適なものと考えられる。さらに、低温でのトリス結晶化の可能性は、リン酸塩ベースの緩衝剤の可能性よりも低い。
【0167】
本発明者は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは6.0未満のpHでは沈殿する可能性があることを見出した。任意選択的に、医薬組成物のpHは、6.0〜8.5の範囲、特に6.5〜8.0の範囲、より詳細には6.75〜8.0の範囲、さらに詳細には7.0〜8.0の範囲であり、最も詳細には7.5±0.3である。pHが7〜8の範囲にある場合、SDS−PAGEの断片化が最も少なく、SECの凝集が最も少ないことが観察されたためである。このpHは、粘度に関する選択の場合も同じであることが確認されている。溶液のpHは溶液の温度に依存する場合があるため、pHは25±2℃で測定されたものが適用されるべきである。pHはHClで調整される。医薬組成物は、塩、特に無機塩、より具体的にはNaClをさらに含むことができる。任意選択的に、塩は、30mM〜200mMの濃度、特に40mM〜150mMの濃度、より詳細には50mM〜100mMの濃度、最も詳細には56±2mMの濃度で存在する。塩、特にNaClの存在は、PEG含有試料の中で増加する粘度を下げるのに有益である。同じ理由で、ソルビトール及び/又はグリシンを含めることも有利である。
【0168】
医薬組成物は、張度調整剤をさらに含むことができる。張度調整剤は、グリセロール、アミノ酸、塩化ナトリウム、タンパク質、糖及び糖アルコールからなる群から選択され得る。特定の実施形態では、張度調整剤は糖であり、より具体的には、張度調整剤はスクロースである。張度調整剤、特にスクロースは、活性剤、すなわち変異体FGF−21ペプチド(コンジュゲート)の凝集を低減するために、医薬組成物に有利な効果があることがわかった。
【0169】
張度調整剤、特にスクロースは、50mM〜200mMの濃度、より具体的には100mM〜175mMの濃度、さらに具体的には135mM〜160mMの濃度、最も具体的には150±2mMの濃度で存在することができる。
【0170】
医薬組成物は、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤又は非イオン性界面活性剤は、ポリソルベートベースの非イオン性界面活性剤であって、特にポリソルベート20又はポリソルベート80であり、より詳細にはポリソルベート20である。界面活性材は、特にポリソルベート20の場合、10μmより小さな肉眼では見えない粒子を低減し、医薬組成物に対して安定化効果を有すると思われる。
【0171】
界面活性剤又は非イオン性界面活性剤、特にポリソルベート20又はポリソルベート80、より詳細にはポリソルベート20は、任意選択的に、0.01mg/mL〜1mg/mLの濃度、特に0.05〜0.5mg/mLの濃度、より詳細には0.2±0.02mg/mLの濃度で存在する。ポリソルベート20又は80、特にポリソルベート20は、製剤を凝集に対して安定化させることがわかった。
【0172】
特定の実施形態において、医薬組成物は、0.1〜50mg/mL、特に33±7mg/mLの変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートと、1mM〜100mM、特に20±2mMの緩衝剤、特にトリス緩衝液と、30mM〜200mM、特に70±2mMの塩、特にNaClと、を含み、pHは7.5±0.3(具体的には25±2℃で測定されたpH)である。
【0173】
より具体的には、医薬組成物は、0.1〜50mg/mL、特に26±4mg/mLの変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートと、1mM〜100mM、特に16±2mMの緩衝剤、特にトリス緩衝液と、30mM〜200mM、特に56±2mMの塩、特にNaClと、50mM〜200mMの張度調整剤、特にスクロースと、0.01〜1mg/mL、特に0.2±0.02mg/mLの界面活性剤又は非イオン性界面活性剤、特にポリソルベート20と、を含み、pHは7.5±0.3(具体的には25±2℃で測定されたpH)である。
【0174】
また、本発明は、本明細書に記載された本発明の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート、又は本明細書に記載された本発明の医薬組成物を収容する医薬品容器を提供する。特定の実施形態では、医薬品容器は、シリンジ、バイアル、輸液ボトル(infusion bottle)、アンプル、カープル、針保護システムを備えたシリンジ、又はペン型注射器内のカープルである。
【0175】
本発明はさらに、本発明の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを作製する方法を提供するもので、該方法は、
(1)発現宿主の中で変異体FGF−21ペプチドを組換え的に産生するステップ、及び
(2)前記ステップ(1)の変異体FGF−21ペプチドに、20kDaのPEG又は30kDaのPEGのグリコシル部分を酵素的に結合するステップ、を含み、
前記ステップ(2)は、特にインビトロプロセスで無細胞であり、これによって、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを形成する。
【0176】
特定の実施形態において、方法は次のとおりである。最初の変異(mutation)は、プロリン残基のC末端側に隣接する位置にトレニオンを導入し、任意選択的に、1又は複数のさらなる変異体を導入することである。変異体は、天然又は変異体FGF−21、例えば、SEQ ID NO:1におけるヒトFGF−21をコードする核酸配列に導入される。変異体FGF−21ペプチドをコードする核酸配列は、発現宿主のタンパク質発現に適した発現ベクターに導入される。例えば、部位特異的変異誘発(site-directed mutagenesis)などのように変異体を核酸配列へ導入する方法、及び、変異した核酸配列を発現ベクターに組み込むことは、当業者に広く知られている(例えば “A Guide to Methods in the Biomedical Sciences" by R.B. Corley, Springer Science & Business Media, 2006 を参照)。
【0177】
タンパク質の発現、任意選択的な精製の後、PEG残基は、少なくとも1つのグリコシル部分を介して、そして、任意選択的に、PEGとグリコシル残基との間に存在する少なくとも1つのアミノ酸残基を介して、変異体FGF−21ペプチドの新たに導入されたトレニオン残基に結合される。
【0178】
本発明の変異体FGF−21をコードする核酸を高い収率で発現させるために、典型的には、変異体線維芽細胞成長因子をコードするポリヌクレオチドを、発現ベクターにサブクローニング(subclone)することが行われ、前記発現ベクターには、転写を指令する強力なプロモータ、転写/翻訳ターミネータ、及び翻訳開始のためのリボソーム結合部位が含まれる。適当な細菌プロモータは、当該技術分野で広く知られており、例えば、上記の文献(Sambrook and Russell、及びAusubel et al)に記載されている。天然又は変異体FGF−21を発現させるための細菌発現系は、例えば、大腸菌(Escherichia coli (E. coli))、バチルス種(Bacillus sp.)、サルモネラ(Salmonella)、及びカウロバクター(Caulobacter)の中で利用可能である。そのような発現系キットは商業的に入手可能である。哺乳動物細胞、酵母、及び昆虫細胞用の真核生物発現システムは、当該技術分野で広く知られており、商業的にも入手可能である。一実施形態において、真核生物発現ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ関連ベクター、又はレトロウイルスベクターである。特定の実施形態では、変異体FGF−21ペプチドは、大腸菌細胞の中で組換え的に産生され、発現宿主は大腸菌である。
【0179】
産生の例示的な方法は、この段落に記載される。変異体FGF−21ペプチドは、封入体(inclusion bodies)として大腸菌内で発現される。細胞は、遠心分離により、収穫物(harvest)から回収され、破壊される。封入体は、洗浄され、遠心分離により回収される。PEG化されていない変異体FGF−21ペプチドの精製は、封入体の変異体FGF−21ペプチドを可溶性にし、ペプチドをリフォールディングすることによって開始する。リフォールディングされた変異体FGF−21ペプチドは、濾過され、Eshmuno Qクロマトグラフィー樹脂を用いた2つのアニオン交換クロマトグラフィーの結合溶出モードで精製される。精製された変異体FGF−21ペプチドは、必要に応じて、Pellicon 2(5kD MWCO)メンブレンを使用した限外濾過(ultrafiltration)によって濃縮されることができる。精製された変異体FGF−21ペプチドは、滅菌PETGボトルの中に入れられ、70℃以下の温度で保存される。
【0180】
変異体FGF−21ペプチドのグリコPEG化は、2つの酵素反応により、連続又は同時に行われる。このステップの後、0.2μmの濾過と2回のアニオンクロマトグラフィー工程が行われる。クロマトグラフィーは、どちらもQ Sepharose Fast Flowクロマトグラフィー樹脂を使用し、結合溶出モードで行われる。最終の濃縮ステップは、Pellicon XL Biomax(10kDa MWCO)を使用し、限外濾過によって行われる。
図3〜
図5は、産生の例示的方法を示している。
【0181】
炭水化物の合成には、グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、シアリルトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)とグリコシダーゼとの2つの主要なクラス(類)の酵素が使用される。グリコシダーゼは、エキソグリコシダーゼ(例えば、β−マンノシダーゼ、β−グルコシダーゼ)及びエンドグリコシダーゼ(例えば、Endo−A、Endo−M)としてさらに分類される。これらクラスの酵素は、各酵素が、炭水化物を調製するための合成用として使用されている。その一般的な説明は、文献(Crout et al., Curr. Opin. Chem. Biol. 2: 98- 111 (1998))に記載されている。また、国際公開公報WO2003/031464、WO2005/089102、WO2006/050247、WO2012/016984を参照することもできる。これらの全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0182】
特定の実施形態では、ステップ(2)は、GalNAcを、GalNAc供与体から、変異体FGF−21ペプチドの少なくとも1つのトレニオン残基に転移させるのに適した条件下で、変異体FGF−21ペプチドを、GalNAc供与体及びGalNAcトランスフェラーゼと接触させるステップ(2a)を含む。この転移の条件については、実施例の項目で説明する。任意選択的に、GalNAc供与体はUDP−GalNAcであり、特に、GalNAcトランスフェラーゼはMBP−GalNAcT2である。
【0183】
特定の実施形態において、ステップ(2)は、ステップ(1)の生成物を、例えば、20kDaのPEG−Siaを20kDaのPEG−Sia供与体から変異ペプチドの少なくとも1つのトレニオン残基へ転移させるのに適した条件下で、又は、30kDaのPEG−Siaを30kDaのPEG−Sia供与体から変異ペプチドの少なくとも1つのトレニオン残基へ転移させるのに適した条件下で、20kDa又は30kDaのPEG−Sia供与体とシアリルトランスフェラーゼとに接触させるステップ(2b)を含む。また、前記段落のステップ2(a)を含む実施形態において、ステップ(2)は、ステップ(2a)の生成物を、例えば、20kDaのPEG−Siaを20kDaのPEG−Sia供与体から変異ペプチドの少なくとも1つのトレニオン残基へ転移させるのに適した条件下で、又は、30kDaのPEG−Siaを30kDaのPEG−Sia供与体から変異ペプチドの少なくとも1つのトレニオン残基へ転移させるのに適した条件下で、20kDa又は30kDaのPEG−Sia供与体とシアリルトランスフェラーゼとに接触させるステップ(2b)を含む。任意選択的に、20kDaのPEG−Sia供与体は20kDaのPEG−Sia−CMPであり、30kDaのPEG−Sia供与体は30kDaのPEG−Sia−CMPであり、及び/又は、シアリルトランスフェラーゼはST6GalNAc1である。また、既に説明したように、「20kDaのPEG−Sia」という用語は、「20kDaのPEG−リンカー−Sia」及び「20kDaのPEG−Gly−Sia」を含み、「30kDaのPEG−Sia」にとい用語は、「30kDaのPEG−リンカー−Sia」及び「30kDaのPEG−Gly−Sia」を「含む。
【0184】
より詳細な実施形態において、20kDaのPEG−Sia供与体は、次の構造を含み、式中、nは、20kDaの分子量となる整数であり、450〜460から選択される。
【化22】
この構造にはGlyリンカーが含まれる。当業者であれば、その製造方法は国際公開WO2003/031464に記載されていることは理解し得るものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0185】
発現後、グリコPEG化反応の前に、変異体FGF−21ペプチドを精製することが望ましい。それゆえ、任意選択的に、 方法は、ステップ(1)の後、ステップ(2)の前に、組換え産生後、変異体FGF−21ペプチドを精製するステップ(3)をさらに含む。方法は、ステップ(2)の後、ステップ(2)で形成された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを精製するステップ(4)をさらに含むことができる。
【0186】
精製するステップ(3)及び/又はステップ(4)は、変異体FGF−21ペプチドを、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、濾過及びそれらの組合せからなる群から選択される方法に供することを含むことができる。ステップ(3)及び/又はステップ(4)は、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、濾過又はそれらの組合せの1又は複数のステップを含むことができる。
【0187】
ステップ(3)及び/又はステップ(4)は、特に、変異体FGF−21ペプチドを1又は複数のイオン交換クロマトグラフィー、より具体的には少なくとも2つのイオン交換クロマトグラフィー、さらに具体的にはアニオンクロマトグラフィーに供することを含む。
より詳細な実施形態において、変異体FGF−21ペプチドは、2つのアニオンクロマトグラフィーステップ、より具体的には、ステップ(3)とステップ(4)において2つの強アニオンクロマトグラフィーステップに供される。
【0188】
アニオンクロマトグラフィーは、特に、親水性ポリビニルエーテルベースマトリックス、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、トリメチルアンモニウムエチル(TEAE)、アガロース、ポリスチレン/ジビニルベンゼンポリマーマトリックス、四級アンモニウム(Q)強アニオンクロマトグラフィー及びそれらの組合せから成る群から選択されたメンバーを使用する。より具体的には、ステップ(3)において、親水性ポリビニルエーテルベースマトリックスを用いる2つのカラムが使用される。さらに詳細には、ステップ(3)において、2つのEshmuno(登録商標)−Qカラムが使用される。Eshmuno−Q樹脂は、親水性ポリビニルエーテルベースマトリックスを有し、するEshmunoR−Q樹脂は、例えば、Merck Millipore,Merck KGaA,Darmstadt,Germanyから入手可能である。Source15Q樹脂も本発明において有用である(GE Health Care Life Sciences, Chalfont St Giles, UK)。アフィニティークロマトグラフィーは、アニオン性アントラキノン色素アフィニティークロマトグラフィーであってよく、濾過は、改質された親水性ポリエーテルスルホン(PES)メンブレンを使用することができる。別の実施形態では、2つの弱アニオン交換クロマトグラフィーステップ、又は、1つが強アニオンで1つが弱アニオンの交換クロマトグラフィーステップが行われる。
【0189】
代替の実施形態において、ステップ(3)の精製は、以下のように、任意選択的に与えられた順序で実行される。
1.イオン交換クロマトグラフィー、特にアニオンクロマトグラフィー、
2.任意選択的に、アフィニティークロマトグラフィー
3.任意選択的に、イオン交換クロマトグラフィー、特にアニオンクロマトグラフィー、及び
3.濾過。
【0190】
例示的な精製は、実施例の項目で説明する。一般的に、クロマトグラフィー精製ステップは、製造元のプロトコルに基づいて実施される。さらなる情報については、例えば 文献(“Protein Purification Protocols”, Paul Cutler, Springer Science & Business Media, 2004)を参照することができる。
【0191】
任意選択的な実施形態において、方法は、ステップ(2)の後、具体的にはイオン交換クロマトグラフィーにより、より具体的には強アニオンクロマトグラフィーにより、さらに具体的には、四級アンモニウム(Q)強アニオンクロマトグラフィーにより、ステップ(2)で形成された変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを、精製するステップ(4)をさらに含む。特定の実施形態において、2つのアニオンクロマトグラフィーステップは、ステップ(4)で行われる。Q−セファロースは、ステップ(4)で本発明の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを精製するのに適したより具体的なカラム材料である。Qセファロースは、例えば米国イリノイ州シカゴのGE Healthcare Life Sciencesから入手することができる。
【0192】
特定の実施形態では、ステップ(2)及び(3)において、アルギニン、特に少なくとも400mMのアルギニンが添加される。アルギニンは、タンパク質を分解するプロテアーゼを阻害するために、任意選択的に添加される。アルギニンはタンパク質の損失を防ぐのに有用である。
【0193】
最後に、ステップ(3)の後、ステップ(2)の前に、任意選択的なステップ(5)において、発現宿主に由来するエンドトキシンが除去される。このステップでは、ステップ(3)の生成物が、Mustang E、0.2ミクロンフィルターなどのエンドトキシン除去フィルターを用いて濾過される。
【0194】
さらに、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、滅菌濾過されることができる。
【0195】
また、本発明は、本発明の方法により得られることができる変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを提供する。
【0196】
本発明はまた、医薬として使用するために、また、糖尿病及びその関連疾患、特に2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び/又はメタボリックシンドロームの治療に使用するために、本発明の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート及び/又は本発明の医薬組成物を提供する。本発明はまた、糖尿病及びその関連疾患、特に2型糖尿病、NASH及び/又はメタボリックシンドロームを治療するために、本発明の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート及び/又は本発明の医薬組成物を使用することを提供する。
【0197】
さらに、糖尿病及びその関連疾患、特に2型糖尿病、NASH、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、及び/又はメタボリックシンドロームを治療する方法を提供するものであって、本発明に係る変異FGD−21ペプチドコンジュゲート又は本発明に係る医薬組成物を、その治療を必要とする被験体に対して、ある量を投与することを含む。特定の実施形態では、被験体はヒトである。
【0198】
NAFLDは西洋諸国で一般的な慢性肝疾患であり、肝硬変に進行する可能性があり、一般に死亡リスクの増加、特に心血管疾患の死亡リスクの増加に関連する。NAFLDの現在の薬理学的治療の有効性は限られているため、この一般的で生命を脅かす疾患に対してより効果的で安全な薬剤を開発することが差し迫って要請されている。ファルネソイドX受容体の選択的アゴニストであるオベチコール酸(OCA)は、NAFLDの管理のための治療薬として有望であると思われる。NASH患者のNASH治療(FLINT)試験におけるファルネソイドX受容体リガンドオベチコール酸により、OCA投与が、体重減少と血圧の低下だけでなく、肝臓組織の改善と関連していることが明らかになった。脂質プロファイル及びインスリン感受性に対して悪影響はあるが、OCAは、NAFLD/NASHを有する選択された患者、特に、グルコース値及び脂質値が適切に制御された患者には考慮される可能性がある。
【0199】
本明細書に記載の化合物及び組成物の臨床的有効性を示す指標(indicators)として、様々な指標が知られており、限定するものではないが、HbA1c、グルコース及びインスリン、体重、血清脂質(総コレステロール、LDL、トリグリセリド)、肝臓酵素(ALT、AST)、肝臓重量、肝臓の相対重量(%体重)、NAFLD活性スコア(NAS)、線維症スコア(例えば、肝線維症)、炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、MCP−1)、線維化バイオマーカー(αSMA、コラーゲン1アルファ)、肝臓コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝脂肪酸の低下が挙げられる。高分子量(HMW)のアディポネクチン又はHDLの少なくとも1つが増加することも、本明細書に記載の化合物及び組成物の臨床的有効性の指標である。例えば、
図8〜20及びその説明を参照することができる。それゆえ、前記指標の少なくとも1つの変化(上記したような)は、本明細書に記載の化合物又は組成物の臨床的有効性を反映する。
【0200】
特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物又は組成物の治療効果は、血清トリグリセリド値又は血清インスリン値の少なくとも1つの低下に基づいて決定される。例えば、表5を参照することができる。
【0201】
HOMA−IRは、例えば、被験体のインスリン抵抗性の存在と程度の指標である。これは、ベースライン(空腹時)血糖とそれに反応するインスリン値との間の動的で正確な指標です。それは、インスリン抵抗性計算機とも称される。人間の場合、健康範囲は1.0(0.5−1.4)である。1.0未満では、被験体がインスリン感受性であることを示し、これは理想的である。1.9を超えると、被験体は、初期のインスリン抵抗性を示していることを表し、2.9を超えると、被験体は有意のインスリン抵抗性を示していることを表す。HOMA−IR血液コードの計算は、インスリンuIU/mL(mU/L)Xグルコース(mg/dL)=HOMA−IRにより決定される。計算は米国標準単位を必要とする。国際SI単位から変換するために、インスリンでpmol/LからuIU/mLに変換する場合、6で割り算(÷)し、グルコースの場合でmmol/Lからmg/dL、二編案する場合、8を乗算(X)する。
【0202】
また、本発明は、治療レジメンについても提供する。このレジメンにより、治療上有効な量の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート、及び、治療上有効な量の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを含む医薬組成物の投与が、1日2回、1日1回、2日間毎、週に3回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は月に1回、行われる。本明細書に記載の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの長期有効性は、動物モデル系でこれらのコンジュゲートについて決定された驚くほど長い半減期によって証明される。例えば、実施例11、12、及び13を参照することができる。次に、本明細書に記載の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの長期有効性により、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの投与頻度を少なくすることが可能になる。それゆえ、特定の実施形態では、本明細書に記載の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート又は該コンジュゲートを含む組成物は、投与を必要とする被験体に対して、週に1回又はそれ以上の頻度で投与されることができる。例えば、本明細書に記載の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート又は該コンジュゲートを含む組成物は、7日に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、14日に1回、15日に1回、16日に1回、16日に1回、17日に1回、18日に1回、19日に1回、20日に1回、21日に1回、22日に1回、22日に1回、23日に1回、24日に1回、25日に1回、26日に1回、27日に1回、28日に1回、29日に1回、30日に1回に1回、又は31日に1回、投与されることができる。
【0203】
別の例示的な治療レジメンにおいて、本明細書に記載の化合物及びそれを含む組成物は、導入療法(induction therapy)を行い、次いで、維持療法(maintenance therapy)が行われる。導入療法の投与は、治療レジメンの開始時に週2回又は週1回のように頻度を多くし、維持療法の投与は、隔週又は月に1回の頻度で行われる。このようなレジメンは、初期治療が、被験体の状態を、疾患/状態の維持に許容され得る臨床状態を達成する上で、許容可能な管理可能なレベルまで改善するという点で効果的である。その後、維持療法は、健康レベルを維持レベルに保つために使用される。
【0204】
糖尿病及びその関連疾患、特に2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び/又はメタボリックシンドロームを治療するための化合物及び/又は組成物の治療効果は、当業者に知られている様々なパラメータ及びアッセイ、並びに本明細書に記載されたパラメータ及びアッセイを使用して評価されることができる。HbA1Cの測定は、長期間にわたって被験体の血糖インデックスを測定するための標準的なアッセイと考えられる。それゆえ、これは、血糖インデックスの安定した指標であり、約3〜4か月間のグルコース値を反映する。したがって、糖尿病(例えば、2型糖尿病)を有する被験体は、適切なアッセイで決定されたHbA1Cの割合によって定義され得る。
【0205】
糖尿病のない健康な人の場合、ヘモグロビンA1c値の正常範囲は4%〜5.6%である。ヘモグロビンA1c値が5.7%〜6.4%のとき、糖尿病を発症する可能性が高いことを示す。6.5%以上の値の人は糖尿病であることを示す。
【0206】
特定の実施形態において、HbA1Cは、HPLCにより、糖化ヘモグロビン試験システム(BIO−RAD,Hercules,CA,USA)を使用して測定される。血液試料(例えば、1回あたり1.0mL)が、橈側皮静脈又は伏在静脈からBDVacutainer(登録商標)K2−EDTAチューブの中に集められる。試料は直ちに4℃で保管されるか、又は濡れた氷の上で維持され、血液を採取したその日に分析される。血液中のHbA1c値は、糖化ヘモグロビン試験システム(BIO−RAD,Hercules,CA,USA)を使用し、HPLCを用いて当業者により測定されることができる。
【0207】
NASHに関しては、この状態は現在、生検によってのみ診断されている。しかしながら、肝臓脂肪(MRIで決定)等のNASHを予測可能と考えられる幾つかのセロゲートバイオマーカー(serogate biomarkers)、肝臓酵素(ALT及びALT/AST比)、及びpro−C3などの線維症バイオマーカーがある。
【実施例】
【0208】
<実施例1:FGF−21変異体の調製>
[1.1]FGF−21の発現ベクターとcDNA
このプロジェクトに使用される発現ベクターは、pCWM3を指定した。ベクターは、GT10翻訳エンハンサーで発現を駆動するための強力なTACプロモータを有する。cDNAを取り込むために選択された部位は、NdeI及びXhoIである。ヒトFGF21遺伝子の完全長成熟形態をコードするcDNAは、大腸菌発現のためにコドン最適化され、公開された配列(NCBIアクセッション番号NM_019113)に基づいたBlueHeronによって合成した。遺伝子は、発現ベクターを構築するために所望の変異体及び制限部位を組み込オリゴヌクレオチドを2セット使用してPCR増幅された。
【0209】
[1.2]変異体FGF−21構造を生成するためのPCR反応のオーバーラッピング
制限部位を有するオリゴヌクレオチド配列は下記のとおり(夫々、NdeI及びXhoI)。
5’オリゴ5’GAGGTCATATGCATCCAATTCCAGATTC3’(第2段階PCR、SEQ ID NO:29)。
3’オリゴ5’ATTCCTCGAGTTATTAAGAGGCGTAG3’(第2段階PCR、SEQ ID NO:30)。
【0210】
天然のヒトFGF−21遺伝子(5μg)は、BlueHeronより、200μLの水に入れて供給を受けた(75ng/μL)。
【0211】
【表B】
【0212】
混合物は、滅菌エアロゾル耐性ピペットチップを使用して、滅菌0.2mLの薄壁PCR96ウェルプレートの中に集めた。
【0213】
PCR反応物(20μL)を、アガロースゲルの装填前に、96ウェルプレートの中で6Xローディングダイ(loading dye)5μLと混合した。TAE緩衝液を使用し、1.5%アガロースゲルを100Vで電気泳動を行なった。インゲルPCR生成物のゲルスライスを分離し、Qiaquick Gel抽出キットを使用して製造元の説明書に従って処理し、50μLのH
2Oで溶出した。スペースを節約するために、完全長の変異体を生成するために第2段階のPCRで使用されるプライマリーPCR生成物の対応する各ペアのバンドを、キットの抽出ウェルの中で混合した。単一段階のPCR反応生成物である変異体も、第一段階PCR生成物に対して上記のとおり生成された。
【0214】
PCR反応の第2のステップは、次のとおり実施した。
【表C】
【0215】
PCR生成物はQiaquick PCR精製キットで精製し、製造元の説明書に従って50μLの水で溶出した。精製されたPCR生成物とpCWM3ベクターについて、以下のようにオートクレーブされた0.5mL遠心チューブの中で制限酵素消化を行なった。
【表D】
【0216】
反応物を37℃で2時間培養した。次に、1.5%アガロースゲルをSYBR Greenでローディングする前に、4μLの6x DNAローディング緩衝液を添加し、TAE緩衝液の中で100Vで60分間電気泳動を行なった。
【0217】
ゲルPCR生成物のスライスを分離し、Qiaquick Gel抽出キットで製造元の説明書に従って処理し、50μLのH
2Oで溶出した。
【0218】
[1.3]変異体FGF21遺伝子を発現ベクターpcMW3に挿入するためのライゲーション反応
オートクレーブされた0.5mLエッペンドルフチューブの中で、以下の試薬を混合して、ライゲーションを行なった。
0.2μLpCWM3(Nde1及びXho1で消化し、アガロースゲルを分離)
1μLPCR生成物(Nde1及びXho1で消化し、アガロースゲルを分離)
1μL10X NEBリガーゼ緩衝液
0.5μL NEB T4 DNAリガーゼ
7.3μLの水
室温で1時間培養する。
【0219】
[1.4]ライゲーション反応でコンピテントTOP10大腸菌を形質転換(transform)
オートクレーブされた1.5μL微量遠心チューブ(microfuge tube)の中で、融解したTop10化学コンピテント細胞25μLに、各ライゲーション反応液1μLを加えた。42℃で1分間培養することにより、細胞に熱ショックを与えた。細胞を氷入りバケツに移動させ、2分間保持した。次に、175μLの予熱されたSOCを加え、250rpmに設定された回転プラットフォームで、前記管を37℃で60分間培養した。形質転換物の選択は、50mcg/mLの硫酸カナマイシンが入れられたMartone寒天プレート上で形質転換反応を拡大することで行なった。プレートは37℃で一晩培養した。各FGF21変異体の3コロニーを、2つのMartone agar−Kan50プレートに再びストリークし、1つはコロニーの増幅とシークエンシングのためにGenewizに送られた。46個全ての変異体について正しい配列を同定した。
【0220】
<実施例2:グリセロールストックのミニプレップDNA調製と生成>
シーケンシングによって同定された正しいコロニーは、50mcg/mlの硫酸カナマイシンが補給された3mLのMartone Lブロスの中で、一晩培養した。製造者の説明書に基づいて、Qiagenミニプレップキットを使用して、1.5mLの培養液からDNAを分離した。ミニプレップDNAは、−20℃の1.5mLエッペンドルフチューブの中で保存した。120μLの培養液についても80μlの50%グリセロール溶液で凍結し、最終濃度が20%グリセロールを生成した。ストックは−80℃の96ウェルプレートの中で凍結した。
【0221】
化学的にコンピテントなOrigami2(25μL)を、上記のように、1μLのミニプレップDNAで構築物から形質転換し、形質転換体の選択についても、上記のように、Martone寒天Kan50プレート上で行なった。一晩培養物について、数個のコロニーを掻き取り、50μg/mL硫酸カナマイシンが補給されたMartone Lブロス2mLの中で培養し、その後、250rpmに設定された振とう台(shaking platform)で37℃にて一晩培養した。翌日、120μLの培養液を80μLの50%グリセロールと混合して、最終濃度20%グリセロールを生成した。グリセロールストックは、96ウェルプレートの中で−80℃で凍結した。
【0222】
<実施例3:FGF−21発現細胞株の生成>
FG−21(野生型、SEQ ID NO:1)及び各FGF−21変異体をコードするプラスミドDNAは、Teva(Petach Tikva, Israel)から入手した。pCWM3ベクターを使用したプラスミドDNAの調製は、実施例1に記載されている。全ての大腸菌細胞株は、以下の手順に従って調製した。化学的にコンピテントなOrigami−2細胞(Novagen)を氷の上で溶かして、10μLの細胞懸濁液を、オートクレーブされた4℃(氷)の1.7mL微量遠心チューブの中に入れた。プラスミドDNA(1μL)を滅菌水で1:10に希釈し、細胞に加えた後、チューブを軽くたたきながら穏やかに混合した。チューブを氷上で30分間培養した。次いで、微量遠心チューブを42℃に設定された水槽の中に入れ、45秒間培養した。次に、チューブを氷の上で2分間冷却した。次に、300マイクロリットルのSOC培地(TekNova, Hollister, CA, USA)をチューブに加え、チューブを37℃で1時間培養した。次に、この反応混合物(100μL)を、硫酸カナマイシン50μg/mLが入れられた予熱(37℃)寒天プレートの上に広げた。これらの寒天プレートを上下逆さまにして37℃のインキュベータの中に入れ、16〜24時間培養した。次に、プレートをパラフィルムで保護し、4℃で保存した。プレートは、この方法を使用して、数日間保管することができた。
【0223】
寒天プレートから3つの個々のコロニーをサイズと形状に基づいて選択し、25μg/mLの硫酸カナマイシンが含まれる2mLのLB−Broth(TekNova, Hollister, CA, USA)に接種(bacti-loops)した。接種されたチューブを、250rpm攪拌と37℃に設定されたシェーカーインキュベータの中で6〜8時間培養した。次に、培養液のアリコート(50μL)を遠心分離(10,000xg、2分間)することにより、細胞を採取した。細胞ペレット(非誘導細胞ペレットと特定)を冷凍し、SDS−PAGE分析により分析した。Nalgeneクリオバイアルとラベリングされた滅菌バイアルの中で、200 μLの50%グリセロール溶液と300μLの細胞培養液を混合することにより、層流フードの中でグリセロールストックを生成した。バイアルをボルテックスし、−80℃で保存した。
【0224】
残りの培養物を、20℃及び毎分250回転(rpm)に設定されたシェーカーインキュベータに移し、30分間培養した。IPTG(1M溶液)を培養液に加えて最終濃度を0.5mMにし、培養液はシェーカーインキュベータ(20℃及び250 rpm)でさらに12〜16時間培養した。次に、50μLのアリコートを、発酵チューブから取り出して、遠心分離(10,000xgで2分間)し、細胞ペレットは誘導細胞ペレットと特定した。製造業者(Thermo Scientific、Waltham、MA、USA)の説明書に従って、非誘導細胞ペレット及び誘導細胞ペレットは、DNAse及びリゾチームが添加されたB−PER細菌タンパク質抽出試薬50μLの中で、再懸濁した。細胞懸濁液は室温で1時間培養した。誘導培養物から細胞溶解物を20,000xgで2分間遠心分離した。上澄みを新しいチューブに移し、誘導細胞溶解物と特定した(ゲル上にS)。残りのペレットは誘導細胞ペレットと特定した(ゲル上にP)。非誘導の全細胞溶解物は、ゲル上にUIと特定した。これらの試料は、下記のようにSDS−PAGEで分析し、FGF−21発現レベルを決定した。最高レベルの可溶性FGF−21(野生型及び/又は突然変異体)の発現を生じたコロニーを選択して、この研究で目的のタンパク質を産生した。
【0225】
<実施例4:FGF−21(野生型)及びFGF−21変異体の発現>
FGF−21変異体発現の最高レベルをもたらすコロニーを、実施例3に記載の誘導2ミリリットル培養物からのFGF−21バンドの染色強度に基づいて選択した。培地が入れられたチューブ(動物質を含まない大豆に25μg/mL硫酸カナマイシンが添加された3mLのLBブロス)を、最高のプロデューサーに対応するグリセロールストックからの掻き取って接種した。培養物は37℃、250rpmの条件で一晩(12〜16時間)成長した。これらのスタータ培養物(1mL)を使用して、25μg/mL硫酸カナマイシンを含むLBブロス1Lを接種した。発酵培養物のOD
600が0.6〜0.8に達するまで、フラスコを培養した(250rpmで37℃)。この時点で、フラスコを、20℃、250rpmに設定された別のシェーカーインキュベータに移し、45〜60分間培養した。次に、OD
600を測定し、500μLの1M IPTG溶液を各フラスコに加え、20℃、250rpmで12〜16時間発酵を続けた。収穫の直前、各フラスコのOD
600を採取した。次に、フラスコを1Lの遠心ボトルに移し、4,657xgで30分間、4℃で回転することにより、Sorvall RC−3B−PLUSで細胞をペレット化した。上澄みを注意深く漂白剤に移し、廃棄した。細胞を30〜50mLの蒸留水の中で再懸濁し、事前に秤量した50mL円錐形遠心チューブに移した。3220xgで15分間、4℃で遠心分離して細胞をペレット化し、上澄みを除去(デカント)し、個々の湿細胞ペレットの重量を測定し、−80℃で凍結した。
【0226】
全てのFGF−21野生型及び変異体の発現により、精製及び製剤化後に計算された単離収率(isolated yields)に基づいて、発酵液1リットルあたり11〜70mgの十分な収量が得られた(
図2)。
【0227】
<実施例5:FGF−21(野生型)及びFGF−21変異体の溶解及び精製>
FGF−21及びFGF−21変異体は、IEXクロマトグラフィー(Source15Q)、アフィニティークロマトグラフィー(Blue sepharose)、及びMustang Qメンブレンによる濾過の組合せを用いて精製した(プロセス1)。開発された代替精製戦略として、Source15Qクロマトグラフィーを使用し、大腸プロテアーゼが除去されるまでFGF−21変異体を再び精製した(プロセス2)。後者のプロセスを使用すると、通常、2つのIEX精製ステップにより残留プロテアーゼが全て除去された。しかしながら、必要に応じて、3つ又は4つのIEXクロマトグラフィーステップを実行することもできる。
【0228】
両方のプロセスにおいて、残っているプロテアーゼが除去され、98%を超える純度の製品が得られた。
【0229】
[5.1:プロセス1]
{5.1.1:IEXクロマトグラフィー}
実施例4の細胞ペレット(5グラム)を解凍し、20mLの緩衝液(50mM トリス、pH7.5)を加えた。ペレットは回転させることによって再懸濁した。次に、細胞懸濁液は、アベスチン乳化剤(Ottawa, ON, Canada)の中を25,000psiの圧力で3回通過させて細胞を溶解し、懸濁液を25分間遠心分離(14,502xg)した。上澄みは別の容器に移すことによって除去し、0.2μmフィルター(TPP150mL 真空フィルタシステム)で濾過し、濾液(導電率≦5μS)を、緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.5)と平衡化されたイオン交換カラム(Source15Q;1.0cm x 30cm;24mL)に投入した。カラムを3カラム容量のローディング緩衝液で洗浄し、20カラム容量を超える緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.5、0〜200mM塩化ナトリウム)の直線勾配を2.0mL/分の流速で使用してFGF−21を溶出した。溶出された生成物はタンパク質分解を防ぐために直ちに凍結して−80℃で保存するか、又は、次のクロマトグラフィーステップで直ちに処理した。
【0230】
{5.1.2:Cibacron Blueクロマトグラフィー}
FGF−21を含む留分を混合し、緩衝液(50mM HEPES pH7.4)で10倍に希釈し、直ちにTosoGel Blueカラム(2cm x 12cm;25 mL)に投入した。次に、カラムを約100mLの緩衝液で(ベースラインが得られるまで)洗浄し、3.0mL/分の流速で未結合の物質を除去した。生成物の溶出は、3mL/分の流速で緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、200mM NaCl、400mMアルギニン)による溶出ステップを使用して行なった。次に、適切なカラム留分を混合し、緩衝液を新しい緩衝液(20mM HEPES、pH6.8、100mM NaCl)に交換し、Mustang Qメンブレンフィルター(Pall, Port Washington, NY, USA)を通して濾過した。次いで、濾液を調合し、−80℃で保存した。この工程ステップにより、大部分のFGF−21タンパク質のプロテアーゼを除去した。
【0231】
[5.2:プロセス2]
{5.2.1:IEXクロマトグラフィー−ステップ1}
実施例4の細胞ペレット(5グラム)を解凍し、20mLの緩衝液(50mM トリス、pH7.5)を加えた。ペレットは回転させることによって再懸濁した。次に、細胞懸濁液は、アベスチン乳化剤(Ottawa, ON, Canada)の中を25,000psiの圧力で3回通過させて細胞を溶解し、懸濁液を25分間遠心分離(14,502xg)した。上澄みは別の容器に移すことによって除去し、0.2μmフィルター(TPP150mL 真空フィルタシステム)で濾過し、濾液(導電率≦5μS)を、緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.5)と平衡化されたイオン交換カラム(Source15Q;1.0cm x 30cm;24mL)に投入した。カラムを3カラム容量のローディング緩衝液で洗浄し、20カラム容量を超える緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.5、0〜200mM塩化ナトリウム)の直線勾配を2.0mL/分の流速で使用してFGF−21を溶出した。溶出された生成物はタンパク質分解を防ぐために直ちに凍結して−80℃で保存するか、又は、次のクロマトグラフィーステップで直ちに処理した。
【0232】
{5.2.2:IEXクロマトグラフ−ステップ2}
FGF−21を含む留分を混合し、緩衝液(50mM HEPES pH7.5)で4倍に希釈し、緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.5)と平衡化されたIEXカラム(Source15Q;1.0cm x 30cm;25mL)に直ちに投入した。カラムを3カラム容量のローディング緩衝液で洗浄し、20カラム容量を超える緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.5、0〜200mM塩化ナトリウム)の直線勾配を2.0mL/分の流速で使用してFGF−21を溶出した。溶出した生成物を含む留分がいくらかでも残存して場合には、タンパク質分解を防ぐために、直ちに凍結して−80℃で保存する。次いで、各カラム留分の少量の試料を使用してプロテアーゼアッセイを行い、プロテアーゼがまだ残っているかどうかを決定する。プロテアーゼがまだ存在する場合、生成物は、上記したように、別のIEXクロマトグラフィーステップ(Source15Q)を使用して再度精製が行われる。次に、カラム留分を混合して配合する。
【0233】
[5.3:大規模生産]
図3、4及び5は、本発明の変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを大規模の生産及び精製を示している。
図3は、封入体の発酵、細胞収穫、及び取得をまとめたものである。
図4は、封入体の可溶化と、変異体FGF−21ペプチドの精製に有利に使用され得る精製ステップを示す。図示の精製方法は、2つのアニオン交換クロマトグラフィーステップを含み、例えば、DAE樹脂及びSPセファロース樹脂を使用する他の多くの精製プロトコルの中で特定され、大規模発現から変異体FGF−21ペプチドの最高の収率と最適な純度が得られた。
図5は、グリコPEG化手順と、2つのアニオン交換クロマトグラフィーステップを含むその後の精製プロトコルを示しており、最高の収率と最適な純度を有する変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートが得られた。
【0234】
<実施例6:プロテアーゼの除去、PEG化されていないFGF−21の製剤化及び更なる特徴付け(characterization)>
この大腸菌発現システムを使用して産生されたFGF−21は全て、精製プロセスの緩衝液又は調合緩衝液(formulation buffer)を使用して4℃の温度で保存すると、内因性プロテアーゼにより急速に分解した。そのため、処理中、部分的に精製された試料の全てを直ちに処理するか、又は中間留分がさらなる処理が可能になるまで凍結保存した(−80℃)。タンパク質の分解は、緩衝液に高濃度のアルギニン(≧400mM)を添加することによって阻止されることもできる。
【0235】
精製された全てのFGF−21は、30℃で3日間培養することにより、プロテアーゼの除去(安定性)を試験した。プロテアーゼが初期精製後もまだ含まれているFGF−21変異体については、第2、第3、又は第4のIEXクロマトグラフィーステップ(Source15Q)のいずれかのステップを使用して、残りのプロテアーゼを除去した。グリコPEG化反応では30℃で一晩培養する必要があるため、全てのFGF−21試料からプロテアーゼを完全に除去することが不可欠であった。塩濃度の高い(アルギニン、塩化ナトリウムなど)ものを使用すると、これらはグリコPEG化反応を阻害するため、グリコPEG化工程中のタンパク質分解を阻止することは不可能である。
【0236】
プロテアーゼが除去されたことの決定は、FGF−21及び潜在的なプロテアーゼが含まれる試料又はカラム留分(10〜50μL)を30℃で1〜3日間培養することによって行なった。FGF−21のタンパク質分解が3日間で起こらなかった場合、プロテアーゼは完全に除去されたとみなした。SDS−PAGEを使用して、タンパク質分解の程度を決定した。IEX留分の精製後、Cibacron Blueクロマトグラフィーを使用して、プロテアーゼが完全に除去されたことを観察した。
【0237】
SDS PAGE分析では、12%又は4−12%のどちらかの濃度のBis−トリス NuPAGEが予め注入されたポリアクリルアミド勾配スラブゲルを使用した。試料は、特に明記しない限り、0.1M DTTを含むLDS試料緩衝液と1:1で混合し、95℃で3分間加熱した。ゲル(gels)は、MES緩衝液の中で40分間、200Vの定電圧で泳動した。タンパク質を可視化するために、電気泳動後、安全な菌株Simply Blue((Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)溶液を使用し、製造業者の説明書に基づいて、必要に応じて室温で50rpmで振とうしながら、タンパク質を2〜24時間染色して可視化した。標準タンパク質には、188、98、62、49、38、28、17、14、及び6kDa(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA,SeeBlue(登録商標)Plus−2標準、カタログ番号LC5925)の質量、又は220、150、120、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15及び10kDa(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA,Novex(登録商標)Sharp Prestained Protein標準)の質量が含まれていた。ゲルを水で脱色した後、タンパク質バンドを可視化し、Li−CorOdyssey(登録商標)赤外線イメージャでスキャンし、記録した(LI-COR Inc., Lincoln, NE, USA)。(
図6)
【0238】
各FGF−21(野生型)及び変異体(ペグ化されていない)を、緩衝液(HEPES、20mM、pH6.8;NaCl、100mM)の中で1mLあたり約1mgのタンパク質に調合し、凍結保存(−80℃)した。エンドトキシン除去と滅菌濾過は、エンドトキシン除去フィルターディスクユニット(Mustang E、0.2ミクロンフィルター)を使用して行なった。バイアルを密封し、−80℃で保管した。全ての試料を試験し、ID(SDS PAGE)、タンパク質濃度(BCA)、凝集(SEC)及びエンドトキシンを含む結果をリリースした。
【0239】
詳細には、IEXクロマトグラフィー後に収集されたFGF−21をプールし、タンパク質濃度を測定(BCA)し、スピンフィルター(Pall, NY, USA、Macrosep(登録商標)Advance Centrifugal Devices;3K MWCO、又はAmicon Ultracel−3Kスピンフィルター)を使用して濃縮し、3220xgで約45分間、又は残留(retentate)タンパク質濃度が1〜2mg/mLに達するまで遠心分離した。修飾されていないFGF−21タンパク質の調合緩衝液は、20mM HEPES、pH6.8、100mM NaClであった。 次いで、調合緩衝液を残留液に加え、試料は残留タンパク質濃度が1〜2mg/mLになるまで上記のように遠心分離した。このプロセスはさらに2回繰り返した。 次いで、調合緩衝液を残留液に加えて、タンパク質濃度を約1mg/mLにした。
【0240】
全てのFGF−21タンパク質の製剤化は、無菌環境を維持するLabconcoキャビネットの中で行われた。0.2μmのAcrodisc(登録商標)Mustang(登録商標)−Eシリンジフィルター(PALL Corporation, NY, USA)の前処理を、製造者の説明書に従って、エンドトキシンを含まない1mLの滅菌水を使用し、手操作で1〜4mL/分の流量に制御しながら濾過することによって行なった。その後、溶液の濾過を、シリンジを使用して、1〜4mL/分の流量でMustangEカートリッジの中を通過させることによって行なった。濾液を静かに混合し、その後、発熱物質を含まない1.2mLのクライオバイアルの中に分注して、所望の量にした。全ての生成物は、−80℃で冷凍保存した。
【0241】
Limulus Amebocyte Lysate(LAL)アッセイ(Genscript, Piscataway, NJ, USA、ToxinSensor(登録商標)Chromogenic LALエンドトキシンアッセイキット、カタログ番号L00350)を使用して、エンドトキシン汚染を測定した。LAL反応は、修飾LAL及び合成発色基質を使用して発色アッセイにおけるエンドトキシンを検出するインビトロの定量的エンドポイントアッセイである。試料中のエンドトキシンの濃度は、その吸光度(absorbance)を、既知の量の標準エンドトキシンを含む溶液の吸光度(405nm)と比較することによって算出した。
【0242】
タンパク質濃度は、Pierce Micro BCA(登録商標)のタンパク質アッセイ試薬キット、部品番号23235(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA, USA)を使用して決定した。BSAを使用して標準曲線を作成した。37℃で30分間培養した後、プレートは、マイクロプレートリーダの562nmで読み取った。試料のタンパク質濃度は、BSA標準曲線を参照して計算した。PEG化タンパク質は、このアッセイに干渉しない。
【0243】
Tosoh Biosciences(東京、日本)カラム(TSK Gel G3000SW XL、7.8mm x 30cm、カタログ番号7165−06R)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、タンパク質純度と凝集物の量を決定した。カラムを泳動緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、pH6.8)で平衡化し、20〜50μLの試料(15〜40μgのタンパク質)を注入した。この方法では、0.5mL/分の流量を使用し、A
280での吸光度を監視した。
【0244】
全てのFGF−21タンパク質を、Bio−Radタンパク質参照標準混合物(Bio−RAD、カタログ番号151−19010)と比較した。Bio−Radは、ウシサイログロブリン(670,000)、ウシγ−グロブリン(158,000)、オボアルブミン(44,000)、ウマミオグロビン(17,000)、ビタミンB12(1,350)を含む。参照標準(約25μL)を、希釈していない溶液(neat solution)又は泳動緩衝液で希釈した溶液として注入した。
【0245】
<実施例7:変異体FGF21−GalNAc−SA−PEG−20/30kDaの産生>
各変異体のグリコシル化については、MALDI質量分析で添加がモニターされたMBP−GalNAcT2及びUDP−GalNAc及びGalNAcで構成される酵素反応物を使用して評価した。
【0246】
変異体FGF−21のグリコPEG化は、MBP−GalNAcT2、ST6GalNAc1、UDP−GalNAc及びCMP−SA−PEG−20/30kDa(20kDaのPEG又は30kDaのPEGのいずれか)を使用して、単一ステップのワンポット反応で行われた。精製されたFGF−21変異体は、Microsep(登録商標)Advance Centrifugal Device(Pall, NY, USA、Concentrator、カタログ番号MAP003C37、20mL、3K MWCO)を使用し、反応緩衝液(20mM Bis−トリス、50mM NaCl、pH6.7)に緩衝液交換を行なった。緩衝液交換及び濃縮後、FGF−21変異体タンパク質濃度は3〜5mg/mL(BCA)であった。CMP−SA−PEG−20/30kDa(3mol当量)をFGF−21変異体(1mol当量)の溶液に溶解した。MBP−GalNAcT2(14−15mU/mg FGF−21)、UDP−GalNAc(1.1mol当量)、ST6GalNAc1(100mU/mg FGF−21)及びMnCl
2溶液(10mM最終濃度)を反応管に直接添加し、静かに混合した。FGF−21の最終タンパク質濃度は、反応混合物の2〜4mg/mLである必要がある。次に、反応混合物を32℃で一晩(約16時間)培養した。これらは、国際公開公報:WO2003/031464;WO2005/089102;WO2006/050247;及びWO2012/016984を参照することができ、各公報の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0247】
FGF−21−変異体−GalNAc−SA−PEG−20/30kDa生成物は、IEXクロマトグラフィー(Source15Q;1cm x 24cmカラム)を使用して精製し、生成物は、塩化ナトリウム勾配[50mM トリス緩衝液(pH7.5)、20カラム容量を超える0〜100mMの塩化ナトリウム勾配]を用いて、2mL/分の流速で溶出した。留分を、SDS−PAGE(4−12%)で分析し、プールし、濃縮し、製剤化した。全ての生成物について、内容(BCA)、純度(SDS−PAGE)、凝集(SEC)、及びエンドトキシンを分析した。
【0248】
このプロセスの変換収率をSDS PAGEで測定し、変換収率は25〜90%であった。ペグ化反応混合物は、IEXクロマトグラフィーを使用して精製した(Source15Q)。各ペグ化製品を製剤化し、リリース試験(release tests)を実施した。リリース試験には、ID(SDS PAGE)、タンパク質濃度(BCA)、凝集(SEC)及びエンドトキシンが含まれる。PEG化生成物の各々は、98%を超える純度であり、検出可能な凝集物は無かった。全体の単離収率は、スタート時のFGF21タンパク質に基づいて15〜44%(モノPEG)であった。
【0249】
グリコPEG化されたFGF−21変異体は全て、スピンフィルターを使用して試料を緩衝液で交換し、調合緩衝液の液量を調整して、所望される約1.0mg/mLのタンパク質濃度を得ることによって製剤化した。濃縮中、タンパク質の凝集を防止するために、タンパク質の濃度は5mg/mLを超えてはならなかった。この研究で使用した調合緩衝液は、リン酸ナトリウム(50mM、pH7.0)、100mM NaClであった。エンドトキシン除去フィルターディスクユニット(0.2ミクロンフィルター)を使用して、エンドトキシン除去(Mustan E)及び滅菌濾過を行なった。バイアルを密封し、−80℃で保管した。Mustang(登録商標)Eフィルターは、FGF21を結合することにより、生成物の全体的な単離収率を大幅に低下させることが観察された。
【0250】
<実施例8:肉眼で見えない粒子を分析するためのマイクロフローイメージング>
4種類の賦形剤(スクロース、ポリソルベート20、EDTA、及びL−メチオニン)が変異体FGF−21コンジュゲートの品質属性に及ぼす効果を評価するために、凍結融解と振動のストレスを繰り返し行なった後、コンジュゲート試料を、限外濾過(UF)により、約1.0mg/mLから36mg/mLに濃縮し、25mg/mLに希釈した。11のTEV−47948製剤を準備し(表1)、1.6mLの充填量で2ccのガラスバイアルに充填し、−20℃で凍結した。全ての製剤に対して、ストレス(室温で解凍すること、室温で6時間500rpmで振とうすること、−20℃で凍結すること)を与えるステップを4サイクル行なった。解凍後、製剤は、2μm以上、5μm以上、10μm以上、及び25μm以上の肉眼では見えない粒子をカウントするマイクロフローイメージング(MFI)による分析を行なった。100μmフローセルを備えたProteinSimple(San Jose, CA)のMFI5200システムを使用して、肉眼で見えない粒子を測定した。0.9mLの試料を96ウェルプレートに加えて、オートサンプラーBot1に移した。照明の最適化は、各試料の前に行なった。TEV−47948試料は、0.2mLのパージ量、0.6mLの撮像量、0.17ml/分の流量、標準的な5倍の倍率で、2回分析した。分析の前に、試料は、ピペットチップで原子混合することによってウェル内で均質化した。MFI View System Software(MVSS)に実装された画像フィルターを使用して、タンパク質粒子から気泡の画像を分離した。
【表1】
表1は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート製剤の組成である。
【0251】
MFIの結果は、ポリソルベート20を含まない製剤(F1、F2、F8、F9)には肉眼で見えない粒子が実質的に多いことを示している。つまり、ポリソルベート20は、肉眼で見えない粒子の濃度を低下させる(
図7)。その結果、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート薬剤生成物について、MFIによる肉眼で見えない粒子を最小限に抑えるために、推奨される製剤組成は、26mg/mLの変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート、16mMトリス、56mMのNaCl、0.15Mスクロース、及び0.2mg/mLのポリソルベート20であり、pH7.5である。
【0252】
<実施例9:インビトロでのFGF−21変異体及びグリコPEG化コンジュゲートの試験>
FGF−21変異体及びグリコPEG化FGF−21コンジュゲートを、マウス脂肪細胞のグルコース取込みを測定する細胞ベースアッセイでスクリーニングした。グルコース輸送体発現の増加を通じて、マウス脂肪細胞の中に取り込まれるグルコース量の増加が、FGF−21の機能によることが報告されている(Kharitonenkov et al., 2005, Journal of Clin Invest, 115(6):1627-1635)。このアッセイでは、試験した化合物の効力はEC
50値として表され、この値は、最大反応の半分をもたらす変異体又はコンジュゲートの濃度である。試験試料のEC
50の値が低いほど活性である。
【0253】
この目的のために、マウス3T3−L1の前駆脂肪細胞を、文献(Kharitonenkov et al., 2005, Journal of Clin Invest, 115(6):1627-1635)の記載と同様な試験を行う準備として、96ウェルプレートの中で21日間分化させた(differentiated)。FGF−21変異体及びグリコPEG化コンジュゲートの連続希釈液を調製し、脂肪細胞に加えて、72時間培養した。培養の最後の4時間は、細胞を、グルコース濃度が低下した培地に変更し、[
3H]−2−デオキシグルコース(Perkin Elmer, Waltham, MA, USA)で1時間標識した。細胞を洗浄して取込みを停止し、取り込まれていないグルコースを除去した。脂肪細胞を0.1N NaOH及びシンチレーションカクテル(Ultima Gold(登録商標) Perkin Elmer, Waltham, MA, USA)で溶解した。 [
3H]−2−デオキシグルコースの非特異的取込みは、50μMサイトカラシンの存在下で測定した。プレートの読取りは、Microbeta(登録商標)LSCカウンター(Perkin Elmer, Waltham, MA, USA)で行なった。
【0254】
グリコPEG化されていないFGF−21変異体の効力を表2にまとめており、変異体だけがFGF−21活性に影響したかどうかを判定するために評価した。効力値は0.4〜4.3nMの範囲であり、一方、野生型FGF−21の効力は2.0nMであった。これらのデータは、グリコシル化コンセンサス部位を作るために特定位置でのFGF−21配列を変異させることは十分許容されることを示している。約30nM以上の値は、不活性(inactive)と見なされる。
【表2】
表2は、マウス脂肪細胞におけるグルコース取込みによるFGF−21変異体の効力評価である。SEQ ID NO:1によるFGF−21アミノ酸配列におけるプロリン残基の位置が括弧内に示されている。“1”は、単一アッセイでのスクリーニングである。
【0255】
グリコPEG化FGF−21変異体コンジュゲートの効力は、9nM〜20nMの範囲であった(表3)。最も強力なグリコPEG化類似体(EC
50約10nM)は、野生型FGF21(2nM)よりも効力が低いことを示しており、バルクPEG部分の取込みに起因する何らかの障害を反映している可能性がある。一連の結合部位(N末端付近からプロリン172まで)は、グリコPEGが分子のどちらかの末端への追加は十分に許容されたことを示唆している。このデータは、マウス脂肪細胞のグルコース取込みの増加によって証明されるように、N末端でのペグ化への代替手段が許容されることを示す報告(Huang et al., 2011, PLoS One, 6(6):e20669)と一致する。しかしながら、グリコPEG部分のC末端領域付近の残基への結合も許容されるという見解は予期されなかった。幾つかの報告には、FGF−21のC末端はβ−クロトーへの結合に必要であり、C末端のアミノ酸残基の削除(deletion)は結合及び効力に対して十分に許容されてないことを示すものがある(Yie et al., 2008, FEBS Letters, 583:19-24; Goetz et al., 2012, Molecular and Cellular Biol, 32(10):1944-54)。
【表3】
表3は、マウス脂肪細胞にグルコースを取り込むことにより、30kDaのPEGでPEG化されたグリコPEG化FGF−21コンジュゲートの効力評価を示す。SEQ ID NO:1によるFGF−21アミノ酸配列におけるプロリン残基の位置は括弧内に示されている。“1”のデータは、2〜5の独立したアッセイの平均を表す。
【0256】
最初は、30kDaのPEG化された変異体コンジュゲートのみを試験した。これらは、さらなる開発をする上で最も有望な候補であると考えられたためである。しかしながら、本明細書の中で説明されるように、20kDaのPEGを有する変異体コンジュゲートが、利用可能な実験データに基づいて驚くべき特性を示した。
【0257】
<実施例10:マウスのグルコース取込みアッセイ及びヒト細胞の細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)リン酸化アッセイにおけるグリコPEG化FGF−21変異体コンジュゲートについて、20kDaと30kDaとの比較試験>
選択したFGF−21変異体を20kDaPEG部分又は30kDaのPEG部分のどちらかのPEG部分で調製し、マウス及びヒトの細胞株での効力を試験した(表4)。 マウス3T3−L1脂肪細胞を使用して、実施例9に記載されているグルコース取込みアッセイで効力を評価した。
【0258】
ヒト細胞株における変異体コンジュゲート活性を評価するために、ヒト胎児腎臓(HEK−293)細胞に、FGF−21の共受容体であるヒトβ−クロトーを一時的に導入した。受容体の活性化は、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)のリン酸化を検出するアッセイを使用して評価した。細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩培養し、FGF−21変異体コンジュゲートの連続希釈液を20分間適用した。細胞を溶解し、ホスホ−ERKのELISA(R&D Systemsカタログ番号DYC1018B;R&D Systems, Inc., Minneapolis, MN, USA)で測定した。結果として生じる蛍光は、Flexstation(登録商標)Microplate reader(Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USAM)で読み取った。
【0259】
驚くべきことに、20kDaのPEG部分を含むコンジュゲートは、30kDaのPEGコンジュゲートよりも活性が高かった。
【0260】
さらに、使用された2つのアッセイは、修飾に対して特異的に敏感であることが観察された。N末端近くでグリコPEG化されたコンジュゲートP(5)TSSPは、ヒトのリン酸化ERKアッセイでは許容可能な活性を示した。一方、マウスのグルコース取込みアッセイでは良好な活性を示した。しかしながら、C末端付近で修飾されたコンジュゲートは、ヒト及びマウスの両方の細胞株で非常に高い効力を維持した(表3のP(156)TP、及びP(172)TQGASのデータを参照)。
【表4】
表4は、20kDaPEG部分又は30kDaのPEG部分のどちらかのPEG部分を含むFGF−21変異体コンジュゲートの比較である。SEQ ID NO:1による天然FGF−21配列によるFGF−21アミノ酸配列におけるプロリン残基の位置は括弧内に示されている。“1”は、HEK−293細胞によるFGF−21に対するβ−クロトー共受容体の一時的な発現である。
【0261】
<実施例11:20kDa及び30kDaのPEG部分を有する実施例10のコンジュゲートのインビボ試験>
実施例10のコンジュゲートについて、20kDa又は30kDaのPEG部分を有する各コンジュゲートを、インビボでのより詳細な調査のために選択した(結果は表4に示されている)。選択されたコンジュゲートは、インビトロ細胞アッセイにおいて良好な活性を示し、インビボ試験に適当な量を発現した。
【0262】
正常なSprague Dawleyラットにおける薬物動態(PK)の半減期の延長及び暴露と、db/db糖尿病マウスモデルにおける有効性とを、最も強力なコンジュゲートを特定するための基準として使用した。
【0263】
Sprague DawleyラットのPK半減期延長を決定するために、FGF−21コンジュゲートを滅菌リン酸緩衝生理食塩水の中で希釈し、オスのSprague Dawley(約0.3kg)ラットに0.25mg/kgを皮下投与した。投与してから1、2、4、6、24、30、48、54、72、78、及び96時間後に外側尾静脈から採血した。血液試料を室温で20分間保持した後、遠心分離して血清を分離した。血清留分をクリーンチューブに移し、ドライアイスで凍結し、分析を行うまで−80℃で保存した。ELISAによる血清中のFGF−21コンジュゲートの検出を、各コンジュゲートを用いて標準曲線を作成したことを除いて、製造者の説明書(BioVendor, Brno, Czech Republic, ヒトFGF−21 ELISA、カタログ番号RD191108200R)に基づいて行なった。複合薬物動態パラメータは、WinNonlinソフトウェア(Professionalバージョン5.2、Pharsight Corporation, Palo Alto, CA, USA)を使用して、血清濃度対時間データの非コンパートメント分析により推定した。
【0264】
グリコPEG化コンジュゲートの循環半減期は、野生型FGF−21(2時間)と比べて長くなった(15〜30時間)。20kDa及び30kDaのPEG化は、両方とも、コンジュゲートの半減期と暴露に同様の影響を及ぼし、FGF−21の半減期延長に対するPEG化の価値を示した。
【表5】
表5は、インビボでのグリコPEG化されたFGF−21コンジュゲートの有効性を示す。SEQ ID NO:1によるFGF−21アミノ酸配列におけるプロリン残基の位置は括弧内に示されている。PK=薬物動態、WT=野生型、AUC=曲線下面積である。“1”は、Sprague Dawleyラットに、0.25mg/kgの各コンジュゲート又は野生型FGF−21を皮下投与した。“2”は、各パラメータに対して有意な改善を示した投与量範囲である。コンジュゲートは1日目と4日目に投与され、データは6日目に収集した。“3”は、3mg/kgのFGF−21を14日間毎日投与した。“4”は、データに傾向性があるが、ANOVAによる有意レベルには達しなかった。
【0265】
db/db糖尿病マウスは、レプチン受容体に変異があり、高血糖と異脂肪血症を引き起こす遺伝子モデルである。db/dbマウスモデルにおける薬力学的効果の決定は、HD Biosciences(Shanghai, China)で行なった。雄のdb/dbマウス(BKS.Cg−Dock7
m+/+Lepr
db/J)及び同齢の同腹仔(非糖尿病対照)は、中国南京大学のモデル動物研究センターから購入した。動物は、到着後1週間、室温21〜23oC、相対湿度30〜70%、明暗サイクル12時間:12時間の標準条件下で順応させた。食事と水は自由に利用可能であった。全ての実験手順は、HD Biosciencesの施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認されたものである。コンジュゲートのスクリーニングのために、1日目と4日目に、0、0.125、0.25、1、2.5mg/kgをマウスに投与した。試験中は、血糖計を使用して血糖を測定した。6日目に動物を犠牲にし、血清トリグリセリド(EnzyChrom(登録商標)アッセイ、カタログ番号ETGA−200、Bioassay Systems, Hayward, CA, USA)及びインスリン値(Mouse Insulin Kit,MesoScale Discovery, Rockville, MD, USA)を評価した。
【0266】
グリコPEG化コンジュゲートについて、db/dbマウスにおける血糖、血清トリグリセリド及びインスリン値に対する効果を調べた(表5)。これらのパラメータを大幅に改善した投与量を表5に示す。20kDa及び30kDaのグリコPEG化コンジュゲートは両方とも、血糖値の低下には同様に有効であったが、20kDaのPEG化コンジュゲートは、トリグリセリドの改善が、一般に、少ない投与量でかつ、広い投与量範囲で得られた点において、30kDaのコンジュゲートよりも優れていた。
【0267】
次の表6は、各データセットを、その値が100%とみなされるビヒクル(vehicle)対照グループと比較した場合、各変異体の20kDaコンジュゲートが、30kDaコンジュゲートよりもトリグリセリド値が大幅に低下したことを示している(結果の数値が低いほど、性能が良好である)。
【表6】
表6は、トリグリセリドの減少(対照ビヒクルの%)を示す。1日目及び4日目に0.125mg/kgを投与し、6日目にトリグリセリドを測定した。
【0268】
グリコペグ化FGF−21コンジュゲートの投与により、血清インスリン値が広範囲にわたって変化した(表7)。インスリン抵抗性がFGF−21コンジュゲートによって改善されたので、血清高インスリン血症が解消されることが予想された。全てのdb/dbマウスは、糖尿病でない同腹児対照と比較して、顕著な高インスリン血症を示した。P(172)−20の投与したときが、インスリンの減少は最大であり、2.5mg/kgでは73%減少した。さらに、P(172)−20は、0.25〜1.0mg/kgの投与で血清インスリンが減少する傾向を示した。
【表7】
表7は、db/dbマウスモデルにおけるグリコPEG化コンジュゲートの血清インスリン値の低下を示す。 *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)により決定した。
【0269】
要するに、全ての変異体及び変異体コンジュゲートは適切な量で発現し、生物学的に活性である。20kDa−PEGコンジュゲートは、インビトロでのグルコース取込み及びERKリン酸化アッセイ、並びにインビボでの実験において優れた性能を示した。また、半減期については、20kDa−PEG及び30kDa−PEGの変異体コンジュゲート種において、同様に改善された。このように、突然変異体FGF−21に、小さな20kDaのPEG残基とは対照的に大きな30kDaのPEG残基を結合した場合、半減期のさらなる増加が達成されないことは明らかであるため、小さな20kDaのPEGを結合することが有益である。その理由は、小さなPEG残留物は、受容体が、自然の生物学的相互作用に必要なFGF−21変異体タンパク質の一部を結合又はシールドするのを妨げる可能性が低いと考えられるからである(生物学的活性の低下につながることが予想される)。さらに、20kDaのPEG化コンジュゲートは、一般に、トリグリセリドを少ない投与量で広い投与量範囲で改善するので、30kDaコンジュゲートよりも優れている。
【0270】
<実施例12:20kDaのPEG−FGF−21 P(172)TQGAS(この実施例12では「変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート」と称する)を糖尿病のカニクイザルに複数回投与したときの効果>
カニクイザル(年齢6〜28歳)を、実験の開始時、内在性FGF21レベルに基づいて、グループ(n=6)に無作為に選び分けた。FGF−21のグループ間の平均血清値は229±58pg/mL乃至312±88pg/mLの範囲であった。順化段階及び2週間のベースライン収集段階の後、サルのグループに、ビヒクルと0.1mg/kg、0.3mg/kg、又は1mg/kgの変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを、8週間にわたり、1週間に1回皮下投与した。サルは、試験のウォッシュアウト段階でさらに10週間評価が行なった。試験のエンドポイント(endpoints)は、体重、摂食量、空腹時血糖、HbA1c値、ALT、及び血清脂質を含む。
【0271】
[12.1:変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの体重及び摂食量への影響]
糖尿病のカニクイザルは、全ての投与量レベルで食物摂取量の減少を示した(表8)。しかしながら、最も多く投与した変異体FGF−21ペプチドコンジュゲート(1.0mg/kg)で処理された動物のみが、体重で顕著な減少率を示し、処理段階の終わりに最大約10%であった(表8)。処理が終了する前、効果はプラトーにはならず、動物の体重は最後の処理の約4週間後にベースライン値まで回復した(データは示していない)。
【表8】
表8は、糖尿病カニクイザルにおける体重及び摂食量に対する変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの効果を示す。“a”は、p <0.05;kg=キログラム;SEM=平均の標準誤差である。
【0272】
[12.2:糖尿病のカニクイザルの血糖コントロールに対する変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの効果]
変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの有効性について、空腹時血糖、グリコシル化ヘモグロビンA1c(HbA1c)、血清インスリン値、経口耐糖能試験(OGTT)における耐性を含む血糖コントロールに関する幾つかのパラメータで評価した。これまでの報告では、FGF−21類似体は、NHP又はヒトの血糖コントロールに影響を与えないことが示唆されてきた(Talakdar et al., 2016, Gaich et al., 2014)。短時間作用型FGF−21類似体LY2405319を、肥満2型糖尿病患者へ投与すると、体重、インスリン、及びトリグリセリドは減少したが、血糖値の有意な減少はなかった(Gaich et al., 2014)。同様に、長時間作用型FGF−21類似体PF−05231023は、体重とトリグリセリドを減少させたが、肥満のカニクイザルにおけるグルコース耐性には影響を及ぼさなかった(Talakdar et al., 2016)。2型糖尿病患者の空腹時血糖値及びインスリン値に変化は観察されなかった(Talakdar et al., 2016)。研究者は、2型糖尿病患者120人を対象に、BMS−986036(Bristol-Myers Squibb)を12週間投与し、その有効性を評価した。BMS−986036を投与された患者は、N末端III型コラーゲンプロペプチドの改善を示したが、HbA1c又は体重の改善は示さなかった(Charles ED, et al. Abstract 33. Presented at: The Liver Meeting; Nov. 11-15, 2016; Boston;Charles ED, et al. Abstract 1082. Presented at: The Liver Meeting; Nov. 11-15, 2016; Boston)。
【0273】
試験した変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを糖尿病サルに週1回投与すると、用量依存的に空腹時血糖値が改善された(表9)。インスリン値は、試験開始時にはグループ間で変動したが、最高投与量ではベースラインと比較して有意な減少が観察された(表9)。
【0274】
空腹時血糖値の変化と一致するのは、HbA1c値の改善である(
図8)。これは、経時的な血中グルコース値を評価するための信頼できる指標である。注目すべきは、HbA1cの改善が、これまで、当該技術分野の他のFGF−21類似体又は変異体について報告されていないことである。特に、FGF−21に基づく製品候補、すなわちBMSのBMS−986036又はPfizerのPF−05231023又はLillyのLY2405319では、HbA1cの改善は報告されていない。
【表9】
表9は、糖尿病カニクイザルの空腹時血糖に対する変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの効果を示す。“a”はp<0.05、“b”はp<0.01;kg=キログラム;mIU=ミリ国際単位;SEM=平均の標準誤差。
【0275】
血液試料(1.0mL/回)を、示された時点で、頭静脈または伏在静脈からBD Vacutainer(登録商標)K2−EDTAチューブに採取した。試料は、直ちに4℃の冷蔵庫又は濡れた氷の中に保存した。試料は、血液を採取し日と同じ日に分析した。
【0276】
HbA1cは、糖化されたヘモグロビン試験システム(BIO−RAD、Hercules, CA, USA)を使用してHPLCで測定した。
【0277】
OGTTは、投与後、11日目(ベースライン)、31日目及び52日目に実施した(
図9)。変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、31日目と52日目の両方で、試験した全ての用量で経口耐糖能を改善した。31日目と52日目の各処理グループ内の耐糖能の差が同様であったことから、耐糖能に対する変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの最大効果は、驚くべきことに、31日目までに最も低い用量で到達したようである。NHPにおけるOGTTに対するFGF21類似体の発散的な効果が観察され、この効果はFGF21類似体の薬理学の変動を反映している可能性がある。OGTTの改善は、肥満カニクイザルの長時間作用型FGF21では観察されなかった。OGTTの改善は、肥満のカニクイザルにおける長時間作用型FGF21では観察されなかったが(Talakdarら、2016)、肥満アカゲザルにおける長時間作用型FGF21類似体では報告されている(Murielle M. Veniant, Renee Komorowski, Ping Chen, Shanaka Stanislaus,Katherine Winters, Todd Hager, Lei Zhou, Russell Wada, Randy Hecht, and Jing Xu (2012) Endocrinology 153:4192-4203)。
【0278】
グルコースの動物への投与は、真ん中にグルコースを埋め込んだバナナを動物の食事として置いておくことにより行なった。投与量は、グルコース1.0g/kg+バナナ10g/kgである。グルコメータ(ACCU−CHEK(登録商標)Performa, Roche)による血糖測定のために、血液採取は、尾静脈を穿刺することによって行なった。データは、各処理の曲線下面積(AUC)として示されている。*p<0.05、**p<0.01である(
図9)。
【0279】
[12.3:変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートで処理した糖尿病カニクイザルの血清ALT値]
血清ALT値は、試験中、毎週測定した。ALT値は、0.3mg/kgの投与グループは7日目に、1.0mg/kgの投与グループは14日目に減少した。ALT値の低下傾向は、0.3mg/kg投与グループでは14日目(p=0.056)に観察され、1.0mg/kg投与グループでは28日目(p=0.073)に観察された。対照的に、ビヒクルグループのALT濃度は、処理期間の終了までに僅かに上昇した(
図10)。
【0280】
血清化学パラメータ(TG、TC、HDL、LDL、ALT、グルコース)は、ADVIA(登録商標)R2400(SIEMENS)システムを使用して測定した。
【0281】
[12.4:変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートで処理した糖尿病カニクイザルの血清脂質濃度]
血清脂質値(トリグリセリド(TG)、総コレステロール(TC)、高密度コレステロール(HDL)及び低密度コレステロール(LDL)は、試験中、毎週測定した。動物を、FGF−21ペプチドコンジュゲートで4日間処理すると、試験した全ての投与量で血清TG値が劇的に減少し、処理段階の期間中、安定したままであった。血清TG値はウォッシュアウト期間中、ベースライン値に回復した(
図11)。対照的に、ビヒクルで処理した動物では、TG値は、ほんの僅かな増加しか観察されなかった。
【0282】
TG値を、各個人のベースライン値に正規化した(
図11)。血清化学パラメータ(TG、TC、HDL、LDL、ALT、グルコース)を、ADVIA(登録商標)R2400(SIEMENS)システムを使用して測定した。
【0283】
総コレステロール値及びLDLコレステロール値は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの最も多い投与量で、それぞれ29パーセント及び39パーセントのやや少ない低下を示した。HDLコレステロール値は、変異体FGF−21ペプチドの処理で有意に上昇し、ウォッシュアウトフェーズ中にベースラインに戻った(
図12)。
【0284】
血清化学パラメータ(TC、HDL、LDL)は、ADVIAR4200(登録商標)(SIEMENS)システムを使用して測定した。HDLコレステロール値は、各個人のベースライン値に正規化した。
【0285】
[12.5:変異体ペプチドFGF−21ペプチドコンジュゲートで処理した糖尿病カニクイザルにおけるアディポネクチンバイオマーカーの評価]
高分子量(HMW)アディポネクチン値の上昇は、0.1mg/kgグループ及び0.3mg/kgグループで傾向があり、21日目には1.0mg/kgの投与で有意に上昇した(
図13)。
【0286】
サル血清中のアディポネクチンの検出は、ヒトHMWアディポネクチン/Acrp30イムノアッセイ用の市販キット、カタログ番号DHWAD0(R&D Systems)を使用して行なった。
【0287】
<実施例13:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のマウスモデルにおける20kDaのPEG−FGF−21 P(172)TQGAS(この実施例13では「TEV−47948」と称する)の投与の有効性>
[13.1:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のマウスモデルにおける有効性]
ステリック動物モデル(STAM)マウスは、NASH、線維症、最終的に肝細胞癌を発症する。このモデルは、人間の疾患と非常によく似た病理学的進行を示す。特に、STAMマウスは、8週でNASHを発現し、12週で線維症に進行し、最終的に肝細胞癌を発症する(Saito et al.,2015)。変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートをSTAMマウスで評価し、体重、肝臓対体重比、肝臓脂肪症、炎症、線維症、及び複合NAFLD活性スコア(NAS)に対する影響を評価した。
【0288】
40匹のC57BL/6雄マウスを対象に、生後2日後に200μgのストレプトゾトシン(STZ、Sigma-Aldrich, USA)を単回皮下注射し、4週齢後に高脂肪食(HFD、57 kcal%脂肪、カタログ番号:HFD32、CLEA Japan、Japan)を与えてNASHを誘導した。6週齢時に8匹のマウスを5つのグループに無作為に割り付けた。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)をビヒクルとして使用した。通常の食事を与えてSTZ処理を行わない8匹の雄マウスを正常グループとして使用した。変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、6〜9週齢から、0.1、0.5、2.0及び6.0mg/kgの用量で、72時間毎に1回皮下投与した。
【0289】
変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、試験期間中、肝臓重量と、肝臓対体重比が有意に改善した(表10)。変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの犠牲日における平均体重、肝臓重量、及び肝臓対体重比は、0.5mg/kg、2.0mg/kg及び6.0mg/kgグループでは、ビヒクルグループに比べて有意に減少した。
【表10】
表10は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを処理した後のSTAMモデルの体重と肝臓重量を示す。示されたデータは、試験終了時の各グループ(各グループn=8匹)の平均±標準偏差である。ビヒクルグループと比較して1=p<0.001、ビヒクルグループと比較して2=p<0.05、ビヒクルグループと比較して3=p<0.01である。
【0290】
変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートは、STAMモデルの生化学パラメータを改善した(表11)。7日目と16日目の非空腹時血糖値は、ビヒクルグループでは、正常グループと比較して有意に上昇した。16日目の非空腹時血糖値は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの6.0mg/kgグループでは、ビヒクルグループと比較して有意に低下した。22日目の空腹時血糖値は、ビヒクルグル−プと比較して、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの6.0mg/kgグループでは有意に低下し、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの0.1mg/kg及び2.0mg/kgグループでは、低下する傾向が認められた。4時間空腹時血糖値については、ビヒクルグループと変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの0.5mg/kgグループとの間に有意差は認められなかった。
【0291】
血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)値は、肝障害のマーカーとなるものであり、STAMモデルでは、ビヒクルグループが、正常グループと比較して有意に上昇した。血清ALT値は、ビヒクルグループと比較して、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの2.0mg/kg及び6.0mg/kgグループでは有意に低下し、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの0.5mg/kgグループでは低下する傾向にあった。血清ALT値については、ビヒクルグループと変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートの0.1mg/kgグループとの間で有意差は認められなかった。
【表11】
表11は、変異体FGF−21ペプチドコンジュゲートを処理した後のSTAMモデルの生化学的パラメータを示す。示されたデータは、試験終了時の各グループ(各グループn=8匹)の平均±標準偏差である。ALT=血清アラニントランスアミナーゼ。AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ。ビヒクルグループと比較して1=p<0.05、ビヒクルグループと比較して2=p<0.01。
【0292】
NAFLD活性スコア(NAS)は、脂肪変性(オイルレッドO染色)、アポトーシス肝細胞のバルーニング(HE染色)、及び炎症(F4/80免疫染色)の指標であり、治療試験中のNAFLDの変化を測定するツールとして開発された。現在の研究におけるビヒクルグループの肝臓切片は、重度のミクロ及びマクロ小胞脂肪沈着、肝細胞バルーニング及び炎症性細胞浸潤を示した。これらの観察結果と一致するように、ビヒクルグループは、正常グループと比較して、NASが大幅に増加した。TEV−47948グループは、全ての投与量において、脂肪変性、肝細胞バルーニング、炎症性細胞浸潤の顕著な改善が認められ、ビヒクルグループと比較してNASが大幅に減少した(
図14)。
【0293】
[13.2:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のDIN(食事誘発性NASH)の有効性]
代替の動物モデルでは、DINモデルは、当該技術分野で理解され、以下に記載されるように、食事への変更を用いてNASHを誘発する。DINナッシュモデルは、II型糖尿病の動物モデルとして認められている。従って、これは、ストレプトゾトシンの注射とそれに続く高脂肪食(STAM NASH)によってマウスにNASHを誘導した上記のSTAM NASHモデルとは異なる。STAM NASHは、I型糖尿病の動物として認められている。
【0294】
本実施例に記載のDINモデルでは、順応段階は、標準食(RM1(E)801492、SDS)と通常の飲料水とで構成され、これらは自由摂取で提供された。次いで、マウスには、60%高脂肪/2%コレステロールの食事(Research Diets Inc., NJ, USA)を与え、飲料水に10%フルクトース(DINダイエット)を添加した。食事の脂肪含有量は、脂肪から60%kcalである。%gベースでは、脂肪は35%gに相当し、大豆油が3%g、ラードは32%gである。
【0295】
方法:
順応期間の後、マウスに25週間DIN食事を与えた。マウスの体重は、25週間の食事期間の終了まで毎週測定した。食事期間6週間の時点で、マウスの体重を測定し、午前9時に、4時間絶食(10%フルクトースを通常の水で置換)した。その後、午後1時に血液を採取して、血糖値、血漿インスリン値、血漿ALT値、血漿AST値を測定した。血糖値と血漿インスリン値からHOMA−IRを計算した。HOMA−IR及びALT/AST値が最も低い15匹のマウスを除外した。マウスを、それらのHOMA−IR、ALT/AST、及び体重に応じて5つの同質グループに分け、3日ごとにビヒクル又は3種類の異なる用量のTEV−47498を皮下注射して処理した。OCAは食事の中に与えた。
【0296】
処理の6、10、15、及び19週目に、マウスを午前9時に4時間絶食(10%フルクトースを通常の水に置換)させ、血液を採取して、血糖値、血漿インスリン、ALT及びAST、総コレステロール及びトリグリセリド値を測定した。処理の19週目に、全てのマウスについて、分析を行うために、−80℃で保存された血清をドライアイスで出荷する前に分離するために、最後の投与後の4つの異なる時点(0、6、24、48時間)で採血(血液約100μL)した。1グループあたり5匹のマウスを投与後0時間と24時間で採血し、他の5匹は投与後6時間と48時間で採血した。最後の採血後、4%イソフルラン麻酔下で頸部脱臼によってマウスを犠牲にし、滅菌生理食塩水で放血した。
【0297】
結果:
この研究では、TE−47948の効果を、上記のDINマウスモデルにおいて、以下に記載するようにして評価した。NASHを誘発する食事を6週間摂取した後、C57Bl6マウスのサブグループに、3種類の異なる用量(20μg/kg、100μg/kg、及び500μg/kg)のTE−47948を、3日ごとに皮下投与し、これを19週間行なった。NASH進行に対するTE−47948の効果を対照と比較するために、NASHを発症するように誘導されたC57Bl6マウスのサブグループをビヒクル対照で処理し、NASHを発症するように誘導されたC57Bl6マウスのサブグループをFXRアゴニストであるオベチコール酸(OCA)で処理し、食事の中に混ぜて(25mg/kg)、これらのサブグループを並行して評価した。OCAは、その抗NASH特性の参照として用いた。
【0298】
TEV−47948は、DINマウスモデルで誘発された肝臓障害を用量依存的に有意に減少させた。この観察は、組織学的NASスコアの有意な低下、並びに、肝トランスアミナーゼ、肝臓脂質、炎症マーカー及び線維症マーカーの強力な低下によって証明された。例えば、
図15及び16を参照のこと。
【0299】
TE−47948は、肝臓への有益な効果に加えて、重要な抗糖尿病及び抗肥満特性をも明らかにした。例えば、
図17−20を参照のこと。これらの結果から、食事誘発性NASHの処理におけるTE−47948の有益な効果が確認された。
【0300】
<実施例14:糖尿病カニクイザルへ20kDa PEG−FGF−21 P(172)TQGAS(この実施例14では「グリコール−PEG−FGF−21」と称する)を投与したときの有効性に対する異なる処理計画及びその効果>
この実施例の目的は、異なる処理計画を用いて投与した場合のグリコ−PEG−FGF21の薬理学的効果及びその全身曝露を、自発性糖尿病カニクイザルにおいて調べることである。より具体的には、実験は、1週間に1回又は2週間に1回皮下注射により投与した場合のグリコ−PEG−FGF21の薬理学的効果を調べることを目的とする。
【0301】
実験計画:
[14.1:動物ハウジング]
自発性糖尿病のサルは、AAALAC(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)が承認したガイドラインに沿って飼育、管理されている。動物の生活環境と光周期の目標条件は次のとおりである。
温度:23±3°C
湿度:50±20%
光サイクル:明るい12時間と暗い12時間
【0302】
[14.2:サルの食事]
全ての動物は水を自由に摂取することができ、1日に2回、季節の果物を使った栄養バランスのとれた食事を与えた。
食事構成(%)
炭水化物 約51.8%
粗タンパク質 ≧16.0
粗脂肪 ≧4.0
水分 ≦10.0
灰分 ≦7.0
繊維 ≦4.0
カルシウム 0.8〜1.2
リン 0.6〜0.8
【0303】
[14.3:化合物、製剤、及び供給物]
調合された化合物は、20mMトリスHCL、70mM塩化ナトリウム、pH7.5の中に25mg/mLグリコ−PEG−FGF21を含む。
【0304】
[14.4:グループ分け、実験手順及び処理]
{14.4.1:グループ分け}
30匹の自発性糖尿病カニクイザルをスクリーニングして、試験の包含基準に適合する24匹の糖尿病サル被験体を選択する。少なくとも30匹の動物から血清を採取し、グルコース、インスリン、脂質、肝臓酵素などの幾つかのパラメータを測定した。選択した動物(n=24)を本試験に登録し、体重、グルコース、脂質、インスリン値に関して実験グループ間で均等に配分した。
【0305】
試験のために選択された糖尿病動物を、表12に記載されているように、ビヒクル又は試験品のいずれかで処理する。
【表12】
表12は、グループの設計、投与量、頻度、及び投与経路を示す。
【0306】
{14.4.2:グリコール−PEG−FGF−21を用いた実験手順と処理計画}
実施例14の実験計画とデータ収集のフローチャートを以下に示す。
【表E】
【0307】
本試験は、処理前段階と処理段階の2つの段階を含む。効果は、ビヒクル又はグリコ−PEG−FGF21製剤化合物のいずれかの皮下投与後に観察される。観察、データ収集、及び処理の時間経過をフローチャート(上記)に示し、また、表13にまとめている。
【0308】
前処理:
実験動物の全ては、順化に1週間を要し、その後、経口グルコース耐性試験(GTT)、生化学(トリグリセリド、HDL、LDL、ALT、グルコース)体重(BW)、FGF−21及び食物摂取量のベースラインデータを収集するために2週間を要する。動物は、BW測定のために一晩絶食させ、脂質測定及び血糖測定のために血液試料を採取する。0日目をベースラインとして、経口グルコース−バナナGTT(1.0g/kgグルコース+10g/kgバナナ:バナナの真ん中にグルコースを埋め込んで動物に与える)(0、15、30、60、120、180分)を実施する。
【0309】
処理:
動物は、表12に従ってビヒクル(PBS)又はグリコ−PEG−FGF21の皮下投与により処理される。動物は、処理前に、一晩絶食される。1回目と最後の(28日目)の皮下投与の後、一連の血液試料が、投与前、投与してから6、24、48、72、120、及び168時間後に薬物動態(PK)のために収集される。14日目に、全ての動物を次の投与前にPKのために採血される。PKバイオ分析用の血液(2ml/1回)は、伏在静脈又は頭静脈から適切なチューブに引き込まれ、薬力学的(PD)アッセイのためにバタフライ針で挿入される。全ての試料は室温で簡単に凝固されることができ、その後、4℃、3500rpmで10分間遠心分離する。血清は、予めラベル付けされたポリプロピレン製スクリューキャップバイアルに移し、分析するまで直ちに−80℃の冷凍庫に保存する。食物消費は毎週行ない、経口グルコースバナナGTTは4週目に実施する。
【0310】
ウォッシュアウト:
2週間のBWウォッシュアウト期間中、食物摂取は毎週行われ、ウォッシュアウト期間終了時に生化学及びPKのための血液採取(42、43、44日目)を行なった。6週目に経口グルコースバナナGTTが実施される。
【0311】
試験期間中は、動物の活動、行動、食欲、下痢などの臨床的観察が行われる。異常な変化があれば全て記録され、報告される。
【0312】
[14.5:血液採取と血清採取]
【表13】
表13は、PK/PD試験のタイムポイントと血液量を示す。
【0313】
{14.5.1:PK及びアディポネクチンアッセイの試料}
血液試料(2mL/1回)は、投与直前及び投与後の連続した時点(投与前、6時間後、24時間後、48時間後、72時間後、120時間後、及び168時間後)に、頭頂静脈又は伏在静脈からBD血清分離器Vacutainer(登録商標)チューブに収集される。全ての試料は、室温で最低30分間凝固させ、その後、冷蔵遠心分離機(4℃)で、3,500rpm、10分間遠心分離する。血清は、予めラベル付けされたポリプロピレン製スクリューキャップバイアルに移し、直ちに、上記のように分析されるまで、−80℃の冷凍庫に保管される。
【0314】
この試料分析研究(Alliance Pharma)では、マウス抗ヒトFGF21、IgG1モノクローナル抗体(キャプチャー抗体)を96ウェルマイクロプレートにコーティングした。分析物(TEV−47948)は、標準物質、品質管理(QC)、及びプレート上のキャプチャー抗体に結合された試験動物の血清試験試料の中に存在する。TEV−47948は、さらに、発色性HRP基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を触媒するワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されたマウス抗PEG、IgMモノクローナル抗体に結合され、青色を呈する。その後、硫酸を含む停止液を加えることで青色が黄色に変化し、450nmで吸光度が最大になった。450nmの吸光度から562nmのバックグラウンド読取値を引いた値は、校正用標準試料、QC試料、及び試験試料中のTEV−47948の量に比例していた。
【0315】
{14.5.2:PD及びアディポネクチンアッセイの試料}
上記の表13に従って、頭部又は伏在静脈から採取した血液試料(2.5mL/1回)をBD血清分離器Vacutainer(登録商標)チューブに収集する。全ての試料は、室温で最低30分間凝固させ、その後、冷蔵遠心分離機(4℃)で3,500 rpm、10分間遠心分離する。
【0316】
血清化学パラメータ(トリグリセリド、HDL、LDL、ALT、グルコース)は、ADVIA(登録商標)R2400(SIEMENS)システムを使用して測定される。血清インスリンは、ADVIACentaur(登録商標)RXPイムノアッセイシステム(SIEMENS)を使用して、化学発光で測定される。
【0317】
アディポネクチンについては、各動物の適当な静脈から静脈血(1mL/回)を血清採取チューブに採取する。血液は、冷蔵条件下(+4℃を維持するように設定)にて、2400gで10分間遠心分離する。得られた血清は2つのアリコート(第1のアリコートが200μL;第2のアリコートが残りの約100μL)に分けられ、個々のチューブに移されて−80°Cで保存されるまで、濡れた氷の上に保持される。2つのアリコートは、発送まで(温度記録計を使用して)−80℃で保持され、アッセイが行われる。
【0318】
この試料分析試験(Alliance Pharma)では、アッセイの校正標準、マトリックス品質管理(mQC)試料、及び試験済みの動物血清試料におけるHMWアディポネクチンは、マイクロプレート上のマウスモノクローナル抗体(MoAb)に結合され、固定化される。結合されていない全ての物質を洗い流した後、HMWアディポネクチンに特異的なワサビペルオキシダーゼ(HRP)がコンジュゲートされたMoAbを、HMWアディポネクチンがさらに結合されたウェルに加えた。HRPがコンジュゲートされたMoAbは、発色性HRP基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を触媒し、青色になった。停止溶液を加えると、HRPとTMBの反応が停止し、色が青色から、450nmで最大吸光度を有する黄色に変わった。450nmでの吸光度から562nmでのバックグラウンド読取り値を引いた値は、校正標準、mQCサンプル、及び試験試料におけるHMWアディポネクチンの量に比例した。
【0319】
{14.5.2:HbA1cアッセイの試料}
血液試料(1.0mL/1回)は、上記の表13に従って、頭静脈又は伏在静脈からBD Vacutainer(登録商標)K2−EDTAチューブに集められる。採取した試料は、直ちに4℃の冷蔵庫に移すて保存されるか、又は。濡れた氷の上に置いてその日の分析に供される。HbA1cは、例えばBIO−RADから入手可能な糖化ヘモグロビン試験システムなどの標準的なアッセイを使用して、HPLCで測定する。
【0320】
{14.5.3:経口グルコースバナナGTTアッセイの試料}
グルコメータによる血糖測定のために、尾静脈に穿刺して一滴の血液を採取する。
【0321】
{14.5.4:内因性FGF21の試料}
内因性FGF−21の潜在的な分析のための試料を収集する。FGF−21を測定するためのアッセイは、例えば、BioVendor LLC(NC, USA)によって販売されている抗FGF−21キット(カタログ番号:RD191108200R)を使用して、製造業者のプロトコルに従って実施することができる。
【0322】
本明細書に記載された全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。前述の本発明は、明確さと理解を目的として詳細に記載してきたが、当業者であれば、本開示を読めば、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が可能であることは、理解されるであろう。
【0323】
方法及びキットの具体的な例は、例示の目的で本明細書に記載されている。これらは例示に過ぎない。本明細書で提供される技術は、上記の例示的なシステム以外のシステムに適用可能である。本発明の実施形態内では、多くの変更、修正、追加、省略、及び置換が可能である。本発明は、記載された実施形態について、当業者にとって自明な変形を含むものとし、前記変形は、特徴、要素及び/又は行為を同等の特徴、要素及び/又は行為に置き換えること、異なる実施形態の特徴、要素、及び/又は行為を組み合わせること、本明細書で説明される実施形態の特徴、要素、及び/又は行為を、他の技術の特徴、要素、及び/又は行為と組み合わせること、及び/又は、記載された実施形態からの特徴、要素及び/又は動作の組合せを省略すること、を含む。
【0324】
上述した本発明の実施形態は、例示のみを目的としている。当業者であれば、これらの実施形態に様々な詳細な修正を加えることができ、その全てが本発明の範囲内であることを理解するであろう。