特許第6852949号(P6852949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6852949-硬質ポリウレタンフォームの製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852949
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20210322BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20210322BHJP
   C08J 9/14 20060101ALI20210322BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20210322BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20210322BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
   C08G18/00 F
   C08G18/28 015
   C08J9/14
   C08G18/16
   E04B1/76 400H
   C08G101:00
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-209847(P2016-209847)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-70707(P2018-70707A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100113561
【弁理士】
【氏名又は名称】石村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】江原 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 達也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 幸雄
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−169357(JP,A)
【文献】 特開2005−105157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00−18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤及びアミン触媒を含むB液と、泡化能を有する有機金属触媒を含むC液とを混合して、現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含み、
前記B液と前記C液とを混合した後、前記A液を混合する工程を有する、
硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記有機金属触媒がスズ(II)化合物である、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
前記スズ(II)化合物が、炭素数6〜20の脂肪族カルボン酸とスズ(II)とのジカルボン酸塩である、請求項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記スズ(II)化合物がビス(ネオデカン酸)スズである、請求項又はに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤及びアミン触媒を含むB液と、泡化能を有する有機金属触媒を含むC液とを混合して、現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
前記有機金属触媒がビス(ネオデカン酸)スズであり、
前記B液と前記C液とを混合した後、前記A液を混合する工程を有する、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記C液が、分子量150〜8,000であり、かつ、ポリオキシアルキレン化合物、芳香族モノカルボン酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、及び脂肪族多価カルボン酸エステルのうちから選ばれる1種以上の化合物を、希釈剤として含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
前記希釈剤が、下記(a)〜(c)のうちから選ばれる1種以上の化合物である、請求項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
(a)ポリオキシアルキレンジオールの片末端又は両末端の水酸基が、炭素数3以上のアルキルオキシ基及びアルキレンオキシ基のうちから選ばれるいずれかの基で置き換わった構造を有するポリエーテル化合物
(b)ポリオキシアルキレングリセリルエーテルであるポリエーテルトリオール化合物
(c)芳香族モノカルボン酸、芳香族多価カルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、又は脂肪族多価カルボン酸の1個以上のカルボキシル基の水酸基部分が、炭素数3以上のアルキルオキシ基及びアルキレンオキシ基のうちから選ばれるいずれかの基で置き換わった構造を有するエステル化合物
【請求項8】
前記希釈剤が、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテルである、請求項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤及びアミン触媒を含むB液と、泡化能を有する有機金属触媒を含むC液とを混合して、現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
前記C液が、分子量150〜8,000のポリオキシプロピレンモノブチルエーテルを希釈剤として含み、
前記B液と前記C液とを混合した後、前記A液を混合する工程を有する、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項10】
前記現場発泡が吹き付け発泡である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項11】
前記有機金属触媒を、前記B液100質量部に対して0.05〜1.0質量部添加する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性や結露防止性等が求められる建築物や構造物に対して、現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物と、水酸基を2個以上有するポリオール化合物とを、発泡剤、触媒及び整泡剤等とともに混合して、泡化反応及び樹脂化反応を同時に行うことにより、均一な樹脂発泡体として得られる。
【0003】
硬質ポリウレタンフォームの製造においては、発泡剤としては、従来は、クロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられていたが、オゾン層の破壊による環境問題の観点から、現在では、ハイドロフルオロカーボン(HFC)に置き換えられている。しかしながら、HFCは、温室効果ガスであり、近年、地球温暖化対策の観点から、削減が求められている。
【0004】
このため、ノンフロンタイプの発泡剤として、水を用いることが提案されている。ただし、水のみでは良好な断熱性能を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることが難しいため、実際には、HFCとの併用により、環境及びコストに対する負荷を軽減することとしている。
また、現場発泡では、作業の容易化の観点から、通常、ポリオールに、発泡剤、触媒、及び助剤である整泡剤や難燃剤等を予め混合した、いわゆるプレミックス液が用いられる。そして、ポリイソシアネート化合物含有液とプレミックス液の2成分を現場で混合し、発泡を行う。
しかしながら、水を発泡剤として使用し、かつ、ポリオールとしてポリエステルポリオールが用いられる場合、プレミックス液の貯蔵保管状態によっては、プレミックス液中に含まれる水により、ポリエステルポリオールの加水分解が進行し、アミン触媒が劣化して、樹脂化反応の反応性が著しく低下することがあった。
【0005】
一方、フッ素を含有するものの、オゾン層の破壊や温室効果ガスの環境問題対策に適合し得る新たな発泡剤として、主鎖に二重結合を有するハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)が注目されている。
しかしながら、HCFOは、HFCとともに一般的に使用されていたアミン触媒と経時的に反応・分解し、アミン触媒が劣化する場合があった。
【0006】
現場発泡における硬質ポリウレタンフォーム製造時のこれらの問題に対しては、種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1に、発泡剤の水を第3成分とし、これをスプレー発泡時に混合することにより、ポリエステルポリオールの加水分解を抑制することが記載されている。
また、特許文献2には、アミン触媒を第3成分とし、イソシアネート成分とポリオール成分との混合発泡の直前で、第3成分をポリオール成分中に混合することにより、アミン触媒の酸化劣化を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−105157号公報
【特許文献2】特開2009−35628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、水を発泡剤として用いた場合、現場発泡においては、気温変化に対応して、品質安定性を得ることが難しい。現場の気温が低い場合には、イソシアネートと水の反応が進行しにくく、ヒーター等を用いて加熱しなければ、均一な発泡体を得ることが困難である。
【0009】
一方、アミン触媒を第3成分とした場合、現場発泡においては、アミン触媒を第3成分用のタンクに移し替える等の操作を、現場作業者が行う必要がある。しかしながら、硬質ポリウレタンフォーム製造に用いられるアミン触媒は、強塩基性の液体又は蒸気であるため、目や皮膚に接触すると炎症を起こす危険性があり、このような観点から、現場において上記操作を行うことは、安全上、好ましくない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、現場発泡において、気温の変化に容易に対応することができ、かつ、品質安定性に優れた発泡体を安全に得ることができる硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、現場発泡における硬質ポリウレタンフォームの製造において、触媒として特定の金属触媒を第3成分として用いることにより、比較的低温環境下でも、良好な発泡状態の発泡体を安定的に得られることを見出したことに基づくものである。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1]ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤及びアミン触媒を含むB液と、泡化能を有する有機金属触媒を含むC液とを混合して、現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記B液と前記C液とを混合した後、前記A液を混合する工程を有する、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
[2]前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含む、上記[1]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0013】
[3]前記有機金属触媒を、前記B液100質量部に対して0.05〜1.0質量部添加する、上記[1]又は[2]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
[4]前記有機金属触媒がスズ(II)化合物である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
[5]前記スズ(II)化合物が、炭素数6〜20の脂肪族カルボン酸とスズ(II)とのジカルボン酸塩である、上記[4]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
[6]前記スズ(II)化合物がビス(ネオデカン酸)スズである、上記[4]又は[5]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0014】
[7]前記C液が、分子量150〜8,000であり、かつ、ポリオキシアルキレン化合物、芳香族モノカルボン酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、及び脂肪族多価カルボン酸エステルのうちから選ばれる1種以上の化合物を、希釈剤として含む、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
[8]前記希釈剤が、下記(a)〜(c)のうちから選ばれる1種以上の化合物である、上記[7]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
(a)ポリオキシアルキレンジオールの片末端又は両末端の水酸基が、炭素数3以上のアルキルオキシ基及びアルキレンオキシ基のうちから選ばれるいずれかの基で置き換わった構造を有するポリエーテル化合物
(b)ポリオキシアルキレングリセリルエーテルであるポリエーテルトリオール化合物 (c)芳香族モノカルボン酸、芳香族多価カルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、又は脂肪族多価カルボン酸の1個以上のカルボキシル基の水酸基部分が、炭素数3以上のアルキルオキシ基及びアルキレンオキシ基のうちから選ばれるいずれかの基で置き換わった構造を有するエステル化合物
[9]前記希釈剤が、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテルである、上記[7]又は[8]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0015】
[10]前記現場発泡が吹き付け発泡である、上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、現場発泡において、気温の変化に容易に対応することができ、かつ、良好な発泡状態の発泡体を安定的かつ安全に得ることができる。
また、本発明の製造方法を用いることにより、今後、需要の増加が見込まれるHFOやHCFO等の発泡剤の使用下においても、良好な発泡状態の硬質ポリウレタンフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施態様の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法について詳細に説明する。
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤及びアミン触媒を含むB液と、泡化能を有する有機金属触媒を含むC液とを混合して、現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、B液とC液とを混合した後、A液を混合する工程を有するものである。
本発明においては、主触媒である泡化能を有する有機金属触媒を第3成分とし、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合して発泡させる直前に、第3成分をポリオール化合物に混合する。
このような製造方法によれば、現場発泡において、比較的低温環境下でも、良好な発泡状態の発泡体を安定的に得ることができる。
【0019】
[A液]
A液は、ポリイソシアネート化合物を主成分として含む液である。
A液には、ポリイソシアネート化合物以外に、必要に応じて、溶剤や、整泡剤等の添加剤が含まれていてもよい。ただし、製造効率等の観点から、A液中のポリイソシアネート化合物の含有量は、90〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは95〜100質量%、さらに好ましくは97〜100質量%である。
【0020】
(ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物であり、B液中のポリオール化合物との重付加反応によりポリウレタン樹脂を生成する。
ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートのいずれでもよく、これらのうち1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
芳香族ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルエーテル−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、4,6−ジメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)等のモノメリックMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI又はポリメリックMDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートは、非環式又は脂環式のポリイソシアネートのいずれでもよく、具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これらのうち、反応性、及び製造される硬質ポリウレタンフォームの機械的強度等の観点から、2,2’−MDI、2,4’−MDI、4,4’−MDI等のモノメリックMDI、クルードMDI又はポリメリックMDIが好ましく、また、この中でも、コストの観点からは、クルードMDI又はポリメリックMDIが好適に用いられる。
【0021】
[B液]
B液は、ポリオール化合物を主成分とし、さらに、発泡剤、及び助触媒としてのアミン触媒を含む液である。B液には、ポリオール化合物、発泡剤及びアミン触媒以外に、必要に応じて、溶剤や、整泡剤、難燃剤、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
ただし、製造効率等の観点から、主成分であるB液中のポリオール化合物の含有量は、40〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは45〜70質量%、さらに好ましくは50〜65質量%である。
なお、B液は、現場での作業効率性及び安全性等の観点から、プレミックスとして調製されたものを用いることが好ましい。特に、アミン触媒は、皮膚刺激性又は皮膚腐食性を有するものが多く、単独での取り扱いに注意を要するが、予めプレミックス中に混合されていることにより、現場作業時の安全性の向上を図ることができる。
【0022】
(ポリオール化合物)
ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有するアルコール化合物であり、A液中のイソシアネート化合物との重付加反応によりポリウレタン樹脂を生成する。
ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール等が挙げられ、これらのうちから選ばれるいずれかを用いることが好ましく、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。難燃性を付与する観点からは、ポリエステルポリオールの方が多いことが好ましい。ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの数平均分子量は、反応性、及び製造される硬質ポリウレタンフォームの機械的強度等の観点から、50〜5,000であることが好ましく、より好ましくは100〜3,000、さらに好ましくは200〜1,000である。
ポリオール化合物は、ポリイソシアネート化合物との反応性を考慮した上で、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、40〜100質量部添加されることが好ましく、より好ましくは45〜95質量部、さらに好ましくは50〜75質量部である。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA等の多価アルコールと、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、アゼライン酸、トリメリット酸、グルタコン酸、α−ヒドロムコン酸、β−ジエチルサクシン酸、ヘミメリチン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸とを重縮合させたものが挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを、多価ジオールでエステル交換したもの等も挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、グリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコールや芳香族アミン、脂肪族アミン等に、プロピレンオキサイドやエチレンオキサイド等アルキレンオキサイドを付加重合させたもの等が挙げられる。
【0024】
(発泡剤)
発泡剤は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とが反応してポリウレタン樹脂を生成する際の発熱により気化し、ポリウレタン樹脂を発泡させる作用を有するものである。
発泡剤としては、今後、需要の増加が見込まれるHFO又はHCFOが好適に用いられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、従来から用いられているHFC、又は水も用いることができ、これらを1種単独で用いても、他の種類の発泡剤と併用してもよい。
HFO又はHCFOとしては、具体的には、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス−HFO−1234ze)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz)、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロぺン(HCFO−1233zd)等が挙げられる。
発泡剤は、適度にポリウレタン樹脂を発泡させる観点から、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、5〜40質量部添加されることが好ましく、より好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは15〜25質量部である。
【0025】
なお、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、水と反応してアミノ基を生成する際、二酸化炭素を発生し、これも、ポリウレタン樹脂の生成反応の初期段階における発泡の誘因となることから、発泡剤として水が含まれていることが好ましい。
ただし、水は、B液の貯蔵保管状態によっては、ポリエステルポリオールを加水分解させるおそれがあるため、その他の発泡剤よりも含有量が少ないことが好ましい。水以外の上記の発泡剤100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜18質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。
【0026】
(アミン触媒)
本発明においては、C液に含まれる泡化能を有する有機金属触媒が主触媒として作用するが、さらに、泡化反応及び樹脂化反応を促進する上で、助触媒としてアミン触媒が用いられる。
アミン触媒としては、硬質ポリウレタンフォームの製造において公知のものを用いることができるが、HFO又はHCFOを発泡剤として用いる場合には、これらの発泡剤と併存させた場合においても、貯蔵安定性に優れているものが好ましい。例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジエチルメチルベンゼンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アミン触媒は、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部添加されることが好ましく、より好ましくは0.1〜8質量部、さらに好ましくは0.2〜5質量部である。
【0027】
(その他の成分)
その他の成分としては、溶剤や、整泡剤、難燃剤、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤が挙げられる。
溶剤は、B液中の各成分を均一に混合する観点から、必要に応じて用いられるものであり、水溶性有機溶剤であることが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらは、市販のアミン触媒製品に含まれている場合もある。
整泡剤は、硬質ポリウレタンフォームの製造において公知のものを用いることができ、シリコーン系整泡剤が好適に用いられ、例えば、シロキサン−ポリアルキレンオキサイド共重合体等が挙げられる。
難燃剤も、硬質ポリウレタンフォームの製造において公知のものを用いることができ、例えば、非ハロゲンリン酸エステル系のトリクレジルホスフェートや含ハロゲンリン酸エステル系のトリスクロロプロピルホスフェート等が挙げられる。
界面活性剤、着色剤及び酸化防止剤も、硬質ポリウレタンフォームの製造において公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
これらの添加剤の含有量は、ポリウレタン樹脂の泡化反応及び樹脂化反応に影響を及ぼさない範囲内において、得られる発泡体の所望の物性に応じて適宜調整することができる。前記添加剤の合計含有量は、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは5〜20質量部である。
【0028】
[C液]
C液は、主触媒である泡化能を有する有機金属触媒を主成分として含む液である。
このような泡化能を有する触媒を、ポリウレタン樹脂原料であるポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物とは別に、第3成分として用い、その混合量を調整することによって、比較的低温環境下でも、良好な発泡状態の発泡体を安定的に得ることが可能となる。このため、発泡剤及びアミン触媒を含むB液の配合組成を、使用環境温度の変化に応じて変更調整する必要がなく、季節や気温の変動等に関係なく、一定の配合組成のプレミックスを用いて、安定した発泡状態の硬質ポリウレタンフォームを容易に製造することができる。
【0029】
C液は、前記有機金属触媒を溶液として供給可能とするための希釈剤(溶剤)を含むことが好ましい。その他、必要に応じて、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
ただし、製造効率や前記有機金属触媒の溶解性等の観点から、C液中の前記有機金属触媒の含有量は、1〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。また、前記添加剤の含有量は、有機金属触媒の泡化能に影響を及ぼさない範囲の量とする。
【0030】
(有機金属触媒)
有機金属触媒は、ポリウレタン樹脂の泡化反応を促進する作用を有するものであり、泡化能を有するものが用いられる。本発明において、「泡化能を有する」とは、ポリオール化合物70〜75質量部、水3〜4質量部、及び有機金属触媒1質量部の混合液と、ポリイソシアネート化合物100質量部とを、15℃で撹拌して均一に混合した試料について、撹拌終了時からクリーム状の混合物が膨張を開始するまでの時間、すなわち、クリームタイム(Cream Time:C.T.)が60秒以下であることを言うものとする。この有機金属触媒の泡化能の指標となるC.T.は、具体的には、後述する実施例に記載の評価試験方法により測定される。
有機金属触媒は、泡化反応と樹脂化反応の速度のバランスの観点から、B液100質量部に対して0.05〜1質量部添加することが好ましく、より好ましくは0.08〜0.8質量部、さらに好ましくは0.1〜0.5質量部添加する。
【0031】
泡化能を有する有機金属触媒としては、例えば、スズ(II)化合物、スズ(IV)化合物、鉛(II)化合物、ビスマス(III)化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物、クロム化合物、マンガン化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、銅化合物、リチウム化合物等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、泡化能の観点から、スズ(II)化合物が好ましく、特に、炭素数6〜20の脂肪族カルボン酸とスズ(II)とのジカルボン酸塩が好ましい。前記脂肪族カルボン酸としては、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
スズ(II)化合物としては、具体的には、ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ(II)、ビス(ネオデカン酸)スズ(II)等が好適に用いられ、化合物の安定性の観点から、特に、ビス(ネオデカン酸)スズ(II)が好ましい。
【0032】
(希釈剤)
有機金属触媒の希釈剤としては、ポリオキシアルキレン化合物、芳香族モノカルボン酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、又は脂肪族多価カルボン酸エステルであり、分子量150〜8,000の溶剤が好ましい。これらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記分子量は、より好ましくは200〜7,000、さらに好ましくは300〜6,000である。なお、ここで言う分子量とは、ポリマー化合物においては数平均分子量を指す。
前記化合物は、有機金属触媒を溶解することができ、かつ、吸水性が低いため、有機金属触媒の加水分解が抑制されることから好適である。また、上記範囲内の分子量であれば、C液を、B液と混合する上で支障のない程度の粘度に保つことができる。
【0033】
前記溶剤の化合物のうち、ポリオキシアルキレンジオールの片末端又は両末端の水酸基が、炭素数3以上のアルキルオキシ基又はアルキレンオキシ基で置き換わった構造を有するポリエーテル化合物が好適に用いられる。前記ポリエーテル化合物が、ポリオキシアルキレンジオールの両末端の水酸基が置き換わった構造である場合、置き換わるアルキルオキシ基又はアルキレンオキシ基は、同一であっても、異なっていてもよい。
前記ポリエーテル化合物としては、具体的には、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシアルキレンモノブチルエーテル等が挙げられ、特に、有機金属触媒がスズ(II)化合物である場合は、スズが2価から、より安定な4価に酸化されて、泡化能が低下することを抑制する観点から、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテルがより好ましい。
【0034】
また、前記溶剤の化合物としては、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルであるポリエーテルトリオール化合物も好適に用いられる。
前記ポリエーテルトリオール化合物としては、具体的には、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル等が挙げられる。
【0035】
また、前記溶剤の化合物としては、芳香族モノカルボン酸、芳香族多価カルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、又は脂肪族多価カルボン酸の1個以上のカルボキシル基の水酸基部分が、炭素数3以上のアルキルオキシ基又はアルキレンオキシ基で置き換わった構造を有するエステル化合物も好適に用いられる。前記エステル化合物が、芳香族多価カルボン酸又は脂肪族多価カルボン酸であり、2個以上のカルボキシル基の水酸基部分が置き換わった構造である場合、置き換わるアルキルオキシ基又はアルキレンオキシ基は、同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
前記エステル化合物としては、具体的には、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等が挙げられ、特に、有機金属触媒がスズ(II)化合物である場合は、スズが2価から、より安定な4価に酸化されて泡化能が低下することを抑制する観点から、フタル酸ジイソノニルがより好ましい。
【0036】
[製造工程]
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、現場発泡による製造方法である。
ここで言う「現場発泡」とは、断熱等の目的で硬質ポリウレタンフォームを設けることが必要とされる建築物や構造物等がある現場に、硬質ポリウレタンフォームの原料液及び現場発泡機を持ち込んで、その場で硬質ポリウレタンフォームの発泡成形を行う施工方法を意味する。具体的な手法としては、スプレー法や注入法等が挙げられる。本発明においては、施工容易性等の観点から、スプレー法、すなわち、現場吹き付け発泡が好ましい。
【0037】
図1に、現場発泡における本発明の実施態様の一例の概要を示す。以下、図1に基づいて、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造工程を説明する。
イソシアネート化合物を含むA液はA液タンク1に、ポリオール化合物、発泡剤及びアミン触媒を含むB液はB液タンク2に、また、泡化能を有する有機金属触媒を含むC液はC液タンク3に、それぞれ貯蔵される。現場発泡機5には、A液タンク1から送液ポンプP1によってA液が供給されるラインが接続され、また、これとは別に、B液タンク2から送液ポンプP2によってB液が供給されるラインが接続されている。そして、B液のラインには、C液タンク3から送液ポンプP3によってC液が供給され、その供給量は、混合調整弁4によって調整可能とされている。
なお、有機金属触媒が均一に混合されるようにする観点から、C液は、窒素ガス等の不活性ガスを用いて起泡化し、クリーム状にして、B液に混合するようにしてもよい。
A液、B液及びC液をこのように供給することにより、B液とC液とが混合された直後に、この混合液とA液とを、現場発泡機において混合して、発泡を行うことができる。したがって、現場環境の温度変化による発泡状態の変化に対して、C液の混合量の調整によって簡便に対応することができ、しかも、現場作業の安全性も確保される。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0039】
[試験1]有機金属触媒の泡化能評価試験(1)
下記表1に示す各種有機金属触媒について、ポリイソシアネート試験液(A液試料)及びポリオール試験液(B’液試料)を用いて、泡化能の評価を行った。比較のため、アミン触媒についても、同様の評価を行った。評価用触媒に用いた化合物及び各試験液の配合組成を以下に示す。
<A液試料>
(ポリイソシアネート化合物)
・ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI);「ミリオネート(登録商標) MR−200」、東ソー株式会社製;52.0g
<B’液試料>
(ポリオール化合物)
・芳香族系ポリエステルポリオール;「マキシモール(登録商標) RDK−133」、川崎化成工業株式会社製;36.5g
(発泡剤)
・水;2.0g
(整泡剤)
・シロキサン−ポリアルキレンオキサイド共重合体;「NIAX(登録商標) SILICONE L−6186NT」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製;1.0g
(難燃剤)
・トリスクロロプロピルホスフェート;「TMCPP」、大八化学工業株式会社製;10.0g
<触媒>
(有機金属触媒)
・ビス(ネオデカン酸)スズ(II);「ネオスタン U−50」、日東化成株式会社製
・ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ(II);「ネオスタン U−28」、日東化成株式会社製
・ビス(2−エチルヘキサン酸)鉛(II);「ニッカオクチックス鉛17%DINP」、日本化学産業株式会社製
・トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス(III);「プキャット25」、日本化学産業株式会社製
・マレイン酸ジブチルスズ(IV);「T−52NJ」、勝田化工株式会社製
(アミン触媒)
・HFO発泡剤用アミン触媒:酸ブロックアミン塩;「Polycat(登録商標) 201」、エアープロダクツジャパン株式会社製
・HFC発泡剤用アミン触媒:ポリエチレンポリアミン(第三級アミン);「TOYOCAT(登録商標)−TT」、東ソー株式会社製
【0040】
<評価試験方法>
泡化能の評価試験は、以下のようにして行った。
B’液試料49.5gに下記表1に示す各触媒0.5g(B’試料液100質量部に対して1.0質量部)を添加し、15℃で5〜10分間保温した。A液試料52.0gも15℃で5〜10分間保温した。これらの各液試料をポリプロピレン製500mlデスカップに投入し、3000rpmで10秒間混合撹拌した。
撹拌終了時からクリーム状の混合物が膨張を開始するまでの時間(C.T.)を計測した。このC.T.を触媒の泡化能の指標とした。
これらの評価試験結果を、下記表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示した結果から、上記の有機金属触媒(試料1〜5)は、HFO発泡剤用アミン触媒(試料6)よりもC.T.が短く、優れた泡化能を有する触媒であると言える。特に、スズ(II)化合物による触媒(試料1及び2)は、HFC発泡剤用アミン触媒(試料7)と同等レベルの優れた泡化能を有していると言える。
なお、HFO発泡剤用アミン触媒(試料6)は、GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)区分に基づく皮膚腐食性試験において、区分1に属するものであり、皮膚腐食性が高く、現場作業時の安全性の観点から、単独の状態で取り扱うことは好ましくない。
【0043】
[試験2]有機金属触媒の泡化能評価試験(2)
上記試験1の試料1で用いたビス(ネオデカン酸)スズ(II)(試料1)を有機金属触媒の代表例とし、これを用いて、使用温度(液温)及び触媒量を下記表2に示すように変化させて、泡化能の評価を行った。試験液は、試験1のB’液試料のうち、ポリオール化合物の配合量を37.0gに変更した以外は、試験1と同様とした。
【0044】
<評価試験方法>
泡化能の評価試験は、以下のようにして行った。
B’液試料50.0gに触媒0.05g、0.15g又は0.3g(B’液試料100質量部に対して0.1質量部、0.3質量部又は0.6質量部)を添加し、10℃又は20℃で5〜10分間保温した。A液試料52.0gも同じ温度で5〜10分間保温した。これらの各液試料をポリプロピレン製500mlデスカップに投入し、3000rpmで10秒間混合撹拌した。
撹拌終了時からのC.T.を計測した。なお、比較参照のため、触媒を添加しない場合についても、同様の評価試験を行った。
これらの評価試験結果を、下記表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示した結果から分かるように、使用温度が高い方がC.T.が短いことが認められた。また、低温でも、触媒量を増加することにより、C.T.を短くし、より高温である場合のC.T.と同等となるように調整することが可能であると言える。
【0047】
[試験3]有機金属触媒希釈液の評価試験
A液試料、B液試料、及び下記表3に示す各C液(有機金属触媒希釈液)試料を用いて、発泡状態の評価を行った。B液試料の配合組成、及びC液試料に用いた化合物を以下に示す。なお、A液試料は、試験1と同じものである。
<B液試料>
(ポリオール化合物)
・芳香族系ポリエステルポリオール;「マキシモール(登録商標) RDK−133」、川崎化成工業株式会社製;12.00g
・脂肪族アミン系ポリエーテルポリオール;「サンニックス NL−300」、三洋化成工業株式会社製;7.00g
・ポリエーテルポリオール;「DKポリオール 3776」、第一工業製薬株式会社製;10.95g
(発泡剤)
・水;0.85g
・HCFO発泡剤:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン;「Solstice(登録商標) LBA」、ハネウェルジャパン株式会社製;8.50g
(アミン触媒)
・メチルジシクロヘキシルアミン;「Polycat(登録商標) 12」、エアープロダクツジャパン株式会社製;1.00g
・1,2−ジメチルイミダゾール/エチレングリコール;「TOYOCAT(登録商標) DM70」、東ソー株式会社製;1.00g
(難燃剤)
・トリスクロロプロピルホスフェート;「TMCPP」、大八化学工業株式会社製;8.00g
(整泡剤)
・シロキサン−ポリアルキレンオキサイド共重合体;「NIAX(登録商標) SILICONE L−6100NT」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製;0.70g
<C液試料>
(有機金属触媒)
・ビス(ネオデカン酸)スズ(II);「ネオスタン U−50」、日東化成株式会社製
・ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ(II);「NIAX(登録商標) D−19」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
(希釈剤)
・ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル;「ニューポール LB−65」、三洋化成工業株式会社製;粘度13.8mPa・s(25℃);数平均分子量340(水酸基価から求めた値)
・ポリオキシプロピレングリセリルエーテル;「サンニックス GP−3000」、三洋化成工業株式会社製;粘度485mPa・s(25℃);数平均分子量3,000(水酸基価から求めた値)
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル;「DKSプロピラン353」、第一工業製薬株式会社製;粘度891mPa・s(25℃);数平均分子量5,000(水酸基価から求めた値)
・フタル酸ジイソノニル;「DINP」、田岡化学工業株式会社製;粘度55.5mPa・s(25℃);分子量419
【0048】
<評価試験方法>
発泡状態の評価は、以下のようにして行った。
B液試料50.00gに、有機金属触媒0.10g(B液試料100質量部に対して0.2質量部)を希釈剤0.90gで希釈した下記表3に示す各C液試料1.00gを添加し、15℃で5〜10分間保温した。A液試料52.0gも15℃で5〜10分間保温した。これらの各液試料をポリプロピレン製500mlデスカップに投入し、3000rpmで2秒間混合撹拌した。
撹拌終了時からのC.T.を計測した。さらに、膨張が開始してから停止するまでの時間、すなわち、ライズタイム(泡の立ち上がり時間;Rise Time:R.T.)も計測した。
また、発泡して得られた硬質ポリウレタンフォームの上部から50mm×50mm×50mmの発泡体試料を採取して、重量を測定し、密度を算出した。
なお、比較参照のため、C液試料を混合しない場合についても、同様の評価試験を行った。
これらの評価試験結果を、下記表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示した結果から、有機金属触媒であるスズ(II)化合物を所定の希釈剤で希釈することにより、発泡時のC.T.を3秒以内、かつ、R.T.を約12秒とすることができ、現場発泡で液だれを生じたり、発泡不十分となったりすることなく、安定した密度の発泡体を形成することができると言える。なお、HFO発泡剤を用いた場合も、同様の結果が得られると推定される。
【0051】
[試験4]現場発泡試験
<実施例1>
上記試験3の試料16と同じ配合組成の、A液試料、B液試料及びC液試料を用いて、図1に示すような態様で各液試料を混合可能な現場発泡機にて、吹き付け発泡を行い、発泡状態及び発泡体の仕上がり状態の評価を行った。吹き付け条件及び評価方法は、以下のとおりである。
【0052】
(吹き付け条件)
・発泡機:「HF−1600型」、旧ガスマー社製;メインヒーター33℃、ホース30℃
・吹き付け対象:スレート板(繊維強化セメント板);25℃
・外気温湿度:25℃、53%RH
【0053】
(評価方法)
スレート板への吹き付け開始からのC.T.、及び吹き付け開始から発泡体表面に軽く触れた手に液が付かなくなるまでに要する時間、すなわち、タックフリータイム(Tack-Free Time:T.F.T.)を計測して、反応性を評価した。
また、形成された発泡体の仕上がり状態を、目視観察により評価した。
【0054】
<比較例1>
実施例1において、C液試料を混合せず、それ以外は実施例1と同様に、吹き付け発泡及び評価を行った。
【0055】
<実施例2>
実施例1において、スレート板への吹き付け発泡に代えて、ポリプロピレン製1000mlデスカップ(25℃)への注入発泡を行い、デスカップヘの注入開始からのC.T.及びR.T.の評価を行った。
【0056】
<比較例2>
実施例2において、C液試料を混合せず、それ以外は実施例2と同様に、注入発泡及び評価を行った。
【0057】
上記実施例及び比較例の評価結果を、表4にまとめて示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示す結果から分かるように、C液試料を混合した場合(実施例1及び2)は、C.T.及びR.T.が短くなり、泡化反応が促進されることが認められた。なお、吹き付け発泡(実施例1)の方が、注入発泡(実施例2)よりもC.T.が長いが、これは、吹き付け対象であるスレート板の熱伝導性が高く、吹き付けた混合液の熱が奪われるためである。
また、吹き付け発泡において、C液試料を混合した場合(実施例1)は、液だれがなく、発泡体表面が平滑な仕上りであり、T.F.T.が短くなった。これに対して、C液試料を混合しない場合(比較例1)は、液だれを生じ、発泡体表面に凹凸が目立ち、平滑性に劣っていた。
【符号の説明】
【0060】
1 A液タンク
2 B液タンク
3 C液タンク
4 混合調整弁
5 現場発泡機
P1,P2,P3 ポンプ
図1