特許第6852993号(P6852993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前田建設工業株式会社の特許一覧

特許6852993コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法
<>
  • 特許6852993-コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法 図000002
  • 特許6852993-コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法 図000003
  • 特許6852993-コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法 図000004
  • 特許6852993-コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法 図000005
  • 特許6852993-コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法 図000006
  • 特許6852993-コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法 図000007
  • 特許6852993-コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852993
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】コンクリート構造体、及びそのコンクリート構造体の形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/10 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   E04G9/10 105
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-139056(P2016-139056)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-31794(P2017-31794A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-151470(P2015-151470)
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】宗 永芳
(72)【発明者】
【氏名】西條 弘之
(72)【発明者】
【氏名】福光 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】吉羽 仁
【審査官】 園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05611183(US,A)
【文献】 特開2005−120626(JP,A)
【文献】 実開平08−000298(JP,U)
【文献】 実開昭55−118707(JP,U)
【文献】 特開昭63−035936(JP,A)
【文献】 特開平06−065973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00−19/00
E04G 25/00−25/08
E04G 21/02
E04B 1/16
E04B 2/84
E04B 2/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先打ちされる第1のコンクリート材、後打ちされる第2のコンクリート材、当該第1及び第2のコンクリート材間の打ち継ぎ面または打ち分け面に設置する仕切材からなるコンクリート構造体であって、
前記仕切材は、前記打ち継ぎ面または打ち分け面に沿って配置される網目を有する網体と、前記網体の表裏面に前記網目を塞ぐように形成されるセメント系接着剤からなる接着剤層と、を備えることを特徴とするコンクリート構造体。
【請求項2】
前記網体の周囲に形成されるコンクリート枠体を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造体。
【請求項3】
前記網体には、鉄筋通し穴が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート構造体。
【請求項4】
打ち継ぎ面または打ち分け面に沿って配置される網目を有する網体を有する仕切材に、前記網体の表裏面に前記網目を塞ぐようにセメント系接着剤からなる接着剤層を形成し、
前記仕切材の片面に、前記接着層と接するように第1のコンクリート材を打設し、
前記仕切材の他面に、前記接着層と接するように第2のコンクリート材を打設したことを特徴とする、コンクリート構造体の形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載のコンクリート構造体の形成方法であって、
前記網体には、鉄筋通し穴が形成されており、前記鉄筋通し穴に鉄筋を通した状態で前記打ち継ぎ面または打ち分け面に沿って前記網体を配置してから、
前記網体の表裏面に前記セメント系接着剤を塗布または吹き付けて前記接着剤層を形成することを特徴とするコンクリート構造体の形成方法。
【請求項6】
請求項4に記載のコンクリート構造体の形成方法であって、
前記第2のコンクリートの打設は、前記第1のコンクリートの打設から2週間以内に行われることを特徴とするコンクリート構造体の形成方法。
【請求項7】
請求項4に記載のコンクリート構造体の形成方法であって、
前記接着層を形成する前に、前記網体の脱脂処理を行うことを特徴とするコンクリート構造体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを打設する際の打ち継ぎ用または打ち分け用の仕切材を有するコンクリート構造体と、そのコンクリート構造体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
別日にコンクリートを打設するコンクリート打ち継ぎ方法として、ラス網溶接、エアフェンス設置、スポンジコン止設置などが一般的な工法として採用されている。
そして、本出願人は特許文献1において、柱と梁の強度の異なるコンクリートを打ち分けるコンクリート打ち分けに、PCaのコンクリート枠内にエキスパンドメタル(ラス網)を設置したコンクリート仕切板を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4398696(特開2005−120626)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のラス網溶接、エアフェンス設置、スポンジコン止設置や、特許文献1のコンクリート仕切板も、コンクリート打ち継ぎ面や打ち分け面には、コンクリートのノロ漏れが生じ、隣接部のコンクリート打設に先立ち、型枠の一部に掃除口を設けて、配筋済みの鉄筋の間から漏れたノロを撤去して清掃する必要がある。
【0005】
本発明の課題は、コンクリート打ち継ぎ面や打ち分け面のノロ漏れ発生を防止して事後の清掃処理を不要とするコンクリート構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
先打ちされる第1のコンクリート材、後打ちされる第2のコンクリート材、当該第1及び第2のコンクリート材間の打ち継ぎ面または打ち分け面に設置する仕切材からなるコンクリート構造体であって、
前記仕切材は、前記打ち継ぎ面または打ち分け面に沿って配置される網目を有する網体、前記網体の表裏面に前記網目を塞ぐように形成されるセメント系接着剤からなる接着剤層と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のコンクリート構造体であって、
前記網体の周囲に形成されるコンクリート枠体を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
請求項1または2に記載のコンクリート構造体であって、
前記網体には、鉄筋通し穴が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、
打ち継ぎ面または打ち分け面に沿って配置される網目を有する網体を有する仕切材に、前記網体の表裏面に前記網目を塞ぐようにセメント系接着剤からなる接着剤層を形成し、
前記仕切材の片面に、前記接着層と接するように第1のコンクリート材を打設し、
前記仕切材の他面に、前記接着層と接するように第2のコンクリート材を打設したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載のコンクリート構造体の形成方法であって、
前記網体には、鉄筋通し穴が形成されており、前記鉄筋通し穴に鉄筋を通した状態で前記打ち継ぎ面または打ち分け面に沿って前記網体を配置してから、
前記網体の表裏面に前記セメント系接着剤を塗布または吹き付けて前記接着剤層を形成することを特徴とする
【0011】
請求項6に記載の発明は、
請求項4に記載のコンクリート構造体の形成方法であって、
前記第2のコンクリートの打設は、前記第1のコンクリートの打設から2週間以内に行われることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、
請求項4に記載のコンクリート構造体の形成方法であって、
前記接着層を形成する前に、前記網体の脱脂処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンクリート打ち継ぎ面や打ち分け面のノロ漏れ発生を防止して事後の清掃処理を不要とするコンクリート打設用仕切材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用したコンクリート打設用仕切材の設置の一実施形態の構成を示す概略側面図である。
図2図1のコンクリート打設用仕切材の形状例を示す斜視図である。
図3】鉄筋地組み時のコンクリート打設用仕切材の設置状態を示す斜視図である。
図4】鉄筋とともにコンクリート打設用仕切材を型枠内に設置した状態例を示すもので、網体への接着剤層の形成例を示した斜視図である。
図5図4のコンクリート打設用仕切材設置部分の拡大図である。
図6】網体の脱脂処理を示す概略斜視図である。
図7】網体のプライマー処理を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は本発明を適用したコンクリート打設用仕切材の設置の一実施形態の概略構成を示すもので、1はコンクリート打設用仕切材、2は型枠である。
【0015】
図示のように、コンクリート打設用仕切材1は、型枠2内において、コンクリート打ち継ぎ面に沿って配置される網体11と、その網体11の表裏面に網目を塞いで形成される接着剤層13と、を備える。
【0016】
図2はコンクリート打設用仕切材1の形状例を示すもので、コンクリート打設用仕切材1は、図示のように、エキスパンドメタル(ラス網)による網体11の周囲に形成されたコンクリート枠体12を一体に備えている。
なお、網体11には、必要な数の鉄筋通し穴11aを形成しておく。
【0017】
このようなコンクリート打設用仕切材1を、鉄筋地組み時において、図3に示すように、鉄筋通し穴11aに鉄筋3をそれぞれ通して、鉄筋3に組み付けてから、図4に示すように、地組みした鉄筋3とともに、例えば梁用の型枠2内のコンクリート打ち継ぎ位置に設置する。
【0018】
こうして、型枠2内のコンクリート打ち継ぎ位置に設置したコンクリート打設用仕切材1の網体11の裏表両面に、図5にも拡大して示すように、予めコンクリート打ち継ぎ専用の繊維補強ポリマーセメント系接着剤を各々塗布し(または吹き付け)、そのセメント系接着剤で網目を潰して硬化させてセメント系接着剤層13をそれぞれ形成する。
そして、型枠2内に先打ちコンクリートを打設する(図1参照)。
【0019】
このコンクリート打設用仕切材1により、表裏両面のセメント系接着剤層13で先打ちコンクリートとの接着強度を確保して一体化でき、かつ打ち継ぎ面の網体11の網目をほぼ完全に塞ぐことができて、ノロ漏れ発生を防止でき、事後の清掃処理を不要とすることができる。
【0020】
その後、別の日(または同日のうち)に、図1に示すように、型枠2内に後打ちコンクリートを打設する。
その後打ちコンクリートも、コンクリート打設用仕切材1の表裏両面のセメント系接着剤層13により先打ちコンクリートとの接着強度を確保して一体化できる。
【0021】
なお、セメント系接着剤層13は、コンクリート打継間隔が2週間程度まで有効である。
【0022】
以上、実施形態のコンクリート打設用仕切材1によれば、打ち継ぎ面に沿って配置される網体11と、網体11の周囲に形成されるコンクリート枠体12と、を備え、網体11の鉄筋通し穴11aに鉄筋3を通した状態で打ち継ぎ面に沿って網体11を配置してから、その網体11の表裏面に繊維補強ポリマーセメント系接着剤を塗布し(または吹き付け)てセメント系接着剤層13を形成する。
その後、鉄筋3とともにコンクリート打設用仕切材1を型枠2内に設置することで、コンクリート打ち継ぎ面のノロ漏れ発生を防止して事後の清掃処理を不要とすることができる。
【0023】
(変形例)
以上の実施形態においては、梁のコンクリート打ち継ぎに仕切材を用いたが、本発明の仕切材はこれに限定されるものではなく、あらゆる部位のコンクリート打ち継ぎに利用可能である。
また、実施形態では、仕切材をコンクリート打ち継ぎに用いたが、本発明の仕切材はこれに限定されるものではなく、強度の異なるコンクリートを打ち分けるコンクリート打ち分けに用いてもよい。
さらに、実施形態では、現場での鉄筋地組み時に仕切材を組み付けてから型枠内に設置したが、工場で予め鉄筋及び仕切材を組み立てた後、現場に運んで型枠内に設置したり、現場において、型枠内で鉄筋及び仕切材を組み立てるようにしてもよい。
また、接着剤の種類等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0024】
(網体の脱脂処理)
図6は網体11の脱脂処理の概略を示すもので、網体11の表裏面に接着剤を塗布または吹き付けて接着剤層13を形成する前に、網体11に付着した油脂を脱脂処理する。
すなわち、網体11の表裏面に接着剤を塗布または吹き付けて接着剤層13を形成する前の工程において、図示のように、トレイ4に入れた網体11に脱脂材5として例えば中性洗剤をかけて、ブラシ6で網体11をブラシ掛けすることで、網体11を脱脂処理する。その後、網体11を乾燥させる。
【0025】
このように、網体11を予め脱脂処理しておくことで、次の工程において、脱脂処理後の網体11の表裏面に対する繊維補強ポリマーセメント系接着剤の塗布(または吹き付け)によるセメント系接着剤層13の接着力を高めることができる。
【0026】
なお、脱脂材5としては、中性洗剤の他に、アセトンなどの有機溶剤や、ガソリンなどであってもよい。
【0027】
(網体のプライマー処理)
図7は網体11のプライマー処理の概略を示すもので、網体11の表裏面に接着剤を塗布または吹き付けて接着剤層13を形成する前に、網体11をプライマー処理する。
すなわち、網体11の表裏面に接着剤を塗布または吹き付けて接着剤層13を形成する前の工程において、図示のように、網体11に刷毛7でプライマー8として例えば不揮発分の少ない低粘度液体を塗布することで、網体11をプライマー処理する。その後、プライマー8を乾燥させる。
【0028】
このように、網体11を予めプライマー処理しておくことで、次の工程において、プライマー処理後の網体11の表裏面に対する繊維補強ポリマーセメント系接着の塗布(または吹き付け)によるセメント系接着剤層13の接着力を高めることができる。
【0029】
なお、プライマー8の塗布に代えて、網体11にプライマー8を吹き付けてもよい。
【0030】
また、網体11の脱脂処理後に、さらに網体11をプライマー処理してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 コンクリート打設用仕切材
11 網体
11a 鉄筋通し穴
12 コンクリート枠体
13 接着剤層
2 型枠
3 鉄筋
4 トレイ
5 脱脂材
6 ブラシ
7 刷毛
8 プライマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7