(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
形鋼材の幅方向に沿って突出形成されるフランジ部の前記幅方向における一端に固定されると共に吊下対象物を吊下支持する吊下具を対象として、この吊下具の前記フランジ部からの脱落を抑止する脱落抑止具であって、
前記フランジ部の前記幅方向における他端に対して上下に亘る状態で当該フランジ部に係止される固定具と、
前記フランジ部の下方で前記吊下具及び前記固定具を前記幅方向の両側から狭着保持する保持具と、を備え、
前記固定具が、当該固定具の上下方向の揺動を規制する揺動規制部を有し、
前記揺動規制部が、前記保持具と前記フランジ部との間を前記幅方向に沿って延びて上下方向に見て前記保持具と重複する第一規制板部を含む脱落抑止具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8に示すように、吊下具130は、ボルト131によってフランジ部141に固定されており、また、吊棒132を介してエアコン等の吊下対象物(不図示)を吊下支持している。例えば、大規模な地震が発生する等して大きな外力が作用した場合には、吊下具130を固定しているボルト131が緩み、吊下具130にガタツキが生じることがある。すると、
図9に示すように、吊下具130は、地震によって揺れる吊下対象物の重みに耐えられずに、フランジ部141と接触する接触部133を支点にして下方(図中では反時計まわり)に揺動することがある。更に、固定具110も、フランジ部141と接触する接触部111を支点にして、吊下具130の揺動の向きと同様の向きに揺動する(図中では反時計まわり)。
【0005】
ここで、吊下具130が下方に揺動した際の姿勢は、吊下対象物の重みによって維持される。一方、固定具110は、
図10に示すように、揺動した際の反動により更に逆向き(図中では時計まわり)に揺動することがある。
【0006】
このように、吊下具130及び固定具110が上下方向に揺動した状態、すなわち、吊下具130が反時計まわりに揺動し、固定具110が時計まわりに揺動した状態では(
図10参照)、吊下具130及び固定具110のそれぞれの被保持部分どうしの幅方向Xの長さが、揺動していない当初の状態(
図8参照)に比べて狭くなる。保持部分121と保持部分122との間の幅方向Xの長さは不変であるから、保持部分121,122どうしの間の幅方向Xの当初長さA(
図8参照)と揺動後の長さB(
図10参照)との差に相当する隙間の分だけ、保持具120が幅方向Xに動くことが許容されるようになる。保持具120が幅方向Xに動いて保持部分121が吊下具130から外れることで、保持状態が解除された吊下具130も、幅方向Xに動くことが許容されるようになって、最終的にフランジ部141から脱落してしまう。すなわち、吊下具130及び固定具110の上下方向の揺動に起因して、吊下具130がフランジ部141から脱落する虞がある。
【0007】
そこで、大きな外力が作用した場合であっても形鋼材のフランジ部からの吊下具の脱落を抑止できる脱落抑止具の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る脱落抑止具は、
形鋼材の幅方向に沿って突出形成されるフランジ部の前記幅方向における一端に固定されると共に吊下対象物を吊下支持する吊下具を対象として、この吊下具の前記フランジ部からの脱落を抑止する脱落抑止具であって、
前記フランジ部の前記幅方向における他端に対して上下に亘る状態で当該フランジ部に係止される固定具と、
前記フランジ部の下方で前記吊下具及び前記固定具を前記幅方向の両側から狭着保持する保持具と、を備え、
前記固定具が、当該固定具の上下方向の揺動を規制する揺動規制部を有する。
【0009】
本構成によれば、例えば大規模な地震の発生等によって大きな外力が作用し、吊下具が上下方向に揺動した場合であっても、揺動規制部により固定具の上下方向の揺動を規制できる。すなわち、吊下具の揺動に連動して固定具が揺動することを規制でき、その結果、吊下具及び固定具の上下方向の揺動に起因して吊下具がフランジ部から脱落することを抑止できる。
【0010】
また、
前記揺動規制部が、前記保持具と前記フランジ部との間を前記幅方向に沿って延びて上下方向に見て前記保持具と重複する第一規制板部を含むと好適である。
【0011】
本構成によれば、固定具が上方に揺動するような力が作用した場合、すなわち、固定具におけるフランジ部の上方に亘る部分が吊下具側に近付くように傾くような力が作用した場合に、フランジ部よりも下方で、固定具の一部を構成する第一規制板部と保持具とが接触する。これにより、それ以上固定具が上方に揺動することを防止できる。固定具の上方への揺動を防止することで、その後の反動による下方への揺動も防止できる。従って、本構成によれば、固定具が上方へ過剰に揺動することに起因して吊下具がフランジ部から脱落することを抑止できる。
【0012】
また、上記構成において、
前記固定具が、前記フランジ部の延在方向に見て切欠部を有するC字状に形成されていると共に、前記切欠部の内縁に沿って内向きに屈曲する屈曲板部を有し、
前記第一規制板部が、前記屈曲板部の一部によって兼用構成されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、切欠部によって、固定具を容易かつ確実にフランジ部に係止することができる。また、切欠部の内縁が内向きに屈曲する屈曲板部となっているので、切欠部の強度を高くすることができる。更に、このような屈曲板部の一部を利用して当該一部を第一規制板部とすることができ、特別な追加構成を要することなく、固定具が上方へ過剰に揺動することを防止できる。
【0014】
また、
前記揺動規制部が、前記保持具の下方を前記幅方向に沿って延びて上下方向に見て前記保持具と重複する第二規制板部を含むと好適である。
【0015】
本構成によれば、固定具が下方に揺動するような力が作用した場合、すなわち、固定具におけるフランジ部の上方に亘る部分が吊下具から離れるように傾くような力が作用した場合に、フランジ部よりも下方で、固定具の一部を構成する第二規制板部と保持具とが接触する。これにより、それ以上固定具が下方に揺動することを防止できる。従って、本構成によれば、固定具が下方へ過剰に揺動することに起因して吊下具がフランジ部から脱落することを規制できる。
【0016】
また、上記構成において、
前記第二規制板部が、前記固定具の、前記幅方向における前記吊下具側の端部領域に設けられていると好適である。
【0017】
固定具が下方に揺動する際には、固定具の幅方向における吊下具側の端部が、幅方向における反対側の端部領域を支点にして上方に揺動する。本構成によれば、固定具が下方に揺動した場合には、固定具の幅方向における吊下具側の端部領域に設けられた第二規制板部が保持具と接触して、それ以上固定具が下方に揺動することを防止できる。従って、本構成によれば、第二規制板部が設けられる範囲を必要最小限の範囲又はそれに近い範囲に抑えつつ、固定具の下方への過剰な揺動を防止することができる。
【0018】
また、
前記固定具は、前記幅方向における前記吊下具側の端部に、前記保持具が挿通される挿通部を有する挿通板部を備え、
前記揺動規制部が、前記挿通板部における前記挿通部の上方側に張り出す上方側張出部分、及び、前記挿通板部における前記挿通部の下方側に張り出す下方側張出部分の少なくとも一方によって兼用構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、揺動規制部が上方側張出部分によって兼用構成されている場合には、固定具におけるフランジ部の下方に亘る部分が下方に揺動するような力が作用した際に、上方側張出部分と保持具とが接触して、それ以上固定具が揺動することを防止できる。揺動規制部が下方側張出部分によって兼用構成されている場合には、固定具におけるフランジ部の下方に亘る部分が上方に揺動するような力が作用した際に、下方側張出部分と保持具とが接触して、それ以上固定具が揺動することを防止できる。更に、揺動規制部が上方側張出部分及び下方側張出部分の双方によって兼用構成されている場合には、固定具が上方及び下方の両方向に揺動することを防止でき、固定具の上下方向の揺動を効果的に防止できる。
【0020】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第一実施形態〕
脱落抑止具の第一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、脱落抑止具1は、形鋼材9の幅方向Xに沿って突出形成されるフランジ部92の幅方向Xにおける一端に固定されると共に吊下対象物(不図示)を吊下支持する吊下具8を対象として、この吊下具8のフランジ部92からの脱落を抑止する。
【0023】
形鋼材9は、店舗や工場等の建築物の天井面に沿って(水平方向に沿って)配置され、当該建築物の梁として用いられる。例えば、形鋼材9として断面形状がH形のH形鋼や、断面形状がL形のL形鋼等が用いられる。
図1に示す例では、形鋼材9として、上下方向に沿って延びる板状のウェブ部91と、ウェブ部91の下端部から水平方向に沿って延びる板状のフランジ部92と、を有するH形鋼が用いられている。
【0024】
本明細書では、形鋼材9の延在方向を延在方向Yとし、水平方向に沿うと共に延在方向Yに直交する方向を幅方向Xとする。以下では、延在方向Yの一方側を延在方向第一側Y1とし、他方側を延在方向第二側Y2として説明する。また、幅方向Xの一方側を幅方向第一側X1とし、他方側を幅方向第二側X2として説明する。
【0025】
なお、本明細書において、ある特定の方向に沿うとは、当該特定の方向に完全に平行である場合の他、設置や組付け等の製造上の誤差の範囲内において当該特定の方向に対して僅かに傾いている状態も含む概念である。より具体的には、当該特定の方向に対して±15°以下の範囲で傾いている状態も含む。
【0026】
脱落抑止具1が脱落を抑止する対象としての吊下具8は、形鋼材9のフランジ部92に固定された状態で、吊下対象物(不図示)を吊下支持する。吊下対象物としては、例えば電気機器や空調機器等を適用することができる。
【0027】
吊下具8は、フランジ部92の幅方向Xにおける一方側である幅方向第一側X1の端部に固定されている。
図1及び3に示す例では、吊下具8は、フランジ部92に固定された状態でフランジ部92の上方に配置されて幅方向Xに突出する上側突出部8Uと、フランジ部92の下方に配置されて幅方向Xに突出する下側突出部8Lと、フランジ部92の側方で上側突出部8Uと下側突出部8Lとを連結する連結部8Cと、を有している。
【0028】
図1及び3に示す例では、吊下具8は、上側突出部8Uを上下方向に貫通する固定孔81を有している。吊下具8は、固定孔81に対して上方から固定ボルト8Bが挿通することにより、フランジ部92に固定されている。固定ボルト8Bがねじ込まれて、固定ボルト8Bの先端部がフランジ部92の上面に強く当接することにより、吊下具8がフランジ部92に対して強固に固定される。
【0029】
図3に示す例では、吊下具8は、上側突出部8U及び下側突出部8Lの双方を上下方向に貫通する吊孔83を有している。吊下具8は、上側突出部8Uの上方から下側突出部8Lの下方に亘って吊孔83を挿通する吊棒84により、当該吊棒84の下端部において吊下対象物(不図示)を吊下支持している。吊棒84には、吊下具8の上下方向における両側からナット8Nが取り付けられている。これにより、吊棒84が抜け止めされている。
【0030】
図1及び3に示す例では、吊下具8は、フランジ部92に固定された状態で当該フランジ部92の底面と当接する当接板部85を有している。当接板部85は、下側突出部8Lにおける幅方向第二側X2の端部領域に形成されており、下側突出部8Lの一部を延在方向Yに沿って屈曲することにより形成されている。
【0031】
図1及び3に示すように、脱落抑止具1は、フランジ部92の幅方向Xにおける他端である幅方向第二側X2の端部に対して上下に亘る状態で当該フランジ部92に係止される固定具2と、フランジ部92の下方で吊下具8及び固定具2を幅方向Xの両側から狭着保持する保持具3と、を備えている。
【0032】
保持具3は、吊下具8及び固定具2の双方を保持することで、吊下具8の脱落を抑止する。
図1及び3に示す例では、保持具3は、フランジ部92の下方において幅方向Xに沿って配置されている。本実施形態では、
図1〜3に示すように、保持具3は、吊下具8を保持する第一保持部材31と、第一保持部材31よりも幅方向第二側X2に配置されて固定具2を保持する第二保持部材32と、を有している。第一保持部材31と第二保持部材32とは、互いに着脱自在に構成されており、互いに連結した状態で吊下具8及び固定具2を狭着保持する。
【0033】
図1及び2に示す例では、第一保持部材31は、単一の部材により構成されている。第一保持部材31は、幅方向Xに延びる一対のアーム部31Aを延在方向Yに離間した状態で有している。一対のアーム部31Aのそれぞれにおける幅方向第一側X1の端部には、吊下具8を保持する第一保持部31Bが形成されている。一対の第一保持部31Bのそれぞれは、互いに対向する側(延在方向Yにおける内側)に向かって湾曲することで、上下方向に見てU字状を成すようにフック状に形成されている。第一保持部31Bは、吊下具8の連結部8Cの幅方向第一側X1における縁部に引っ掛かることで吊下具8を保持し、当該吊下具8が幅方向Xに沿って動くことを規制する。
【0034】
第一保持部材31は、幅方向Xにおける固定具2側(幅方向第二側X2)の端部に、一対のアーム部31Aどうしを連結する連結板部31Dを有している。連結板部31Dは、その主面が幅方向Xを向くように配置されている。連結板部31Dには、内周面にネジ部を有する連結孔31Cが形成されている。連結孔31Cに第二保持部材32が挿通することで、第一保持部材31と第二保持部材32とが連結される。
【0035】
第二保持部材32は、固定具2を保持する第二保持部32Bを有している。第二保持部32Bは、フランジ部92の幅方向第二側X2の端部近傍で固定具2を保持する。
図1及び2に示す例では、第二保持部材32は、ボルト32Aと、第二保持部32Bとしてのナットと、により構成されている。ボルト32Aが幅方向Xに固定具2を挿通し、更に幅方向第一側X1において第一保持部材31の連結孔31Cに螺合する。固定具2よりも幅方向第二側X2において、ボルト32Aに第二保持部32Bとしてのナットが取り付けられ、当該ナットが固定具2を幅方向第二側X2から保持する。
【0036】
固定具2は、フランジ部92において、吊下具8が固定されている幅方向第一側X1の端部とは反対側の幅方向第二側X2の端部に係止されている。
図1及び3に示す例では、固定具2は、フランジ部92の延在方向Yに見て切欠部25を有するC字状に形成されている。固定具2は、フランジ部92に係止された状態でフランジ部92の上方に配置されて幅方向Xに沿って延びる上顎部21Uと、フランジ部92の下方に配置されて幅方向Xに沿って延びる下顎部21Lと、フランジ部92の側方で上顎部21Uと下顎部21Lとを連結する顎連結部21Cと、を有している。
【0037】
本実施形態では、
図4及び5に示すように、固定具2は、幅方向Xに沿って延び且つ延在方向Yに離間して配置される一対の側壁部22と、一対の側壁部22の幅方向第二側X2の端部においてこれら一対の側壁部22を連結する連結壁部23と、から構成されている。一対の側壁部22は、その主面が延在方向Yを向くように配置され、連結壁部23は、その主面が幅方向Xを向くように配置されている。固定具2は、一対の側壁部22の間(延在方向Yにおける内側)及び連結壁部23の内側(連結壁部23の幅方向第一側X1)に内部空間を有する中空状に形成されている(
図1及び2も参照)。そして、固定具2は、切欠部25の内縁に沿って内向きに屈曲する屈曲板部25Aを有している。
【0038】
図2及び3に示す例では、固定具2は、連結壁部23を幅方向Xに貫通する係止孔23Aを有している。係止孔23Aは、下顎部21Lの上下方向の位置と同じ上下方向の位置となるように、連結壁部23に形成されている。前述した第二保持部材32は、係止孔23Aを幅方向Xに挿通すると共に、下顎部21Lの内部空間を通って第一保持部材31と連結する。すなわち、下顎部21Lの内部空間には、第二保持部材32が配置されている。
【0039】
ここで、例えば、大規模な地震が発生する等して大きな外力が作用した場合には、吊下具8を固定している固定ボルト8Bが緩み、吊下具8にガタツキが生じることがある。すると、吊下具8は、地震によって揺れる吊下対象物の重みに耐えられずに、フランジ部92の底面に当接する当接板部85を支点にして鉛直平面内において下方に揺動することがある。すなわち、上側突出部8Uが固定具2から離れるように、及び、下側突出部8Lが固定具2に近付くように、吊下具8が下方に傾く。
【0040】
固定具2は、吊下具8が下方に揺動することに連動して、第二保持部材32(保持具3)に対して鉛直平面内において上方に揺動することがある。すなわち、上顎部21Uが吊下具8に近付くように、及び、下顎部21Lが吊下具8から離れるように、固定具2が上方に傾く。吊下対象物の重みにより吊下具8の傾き姿勢は維持される。一方で、固定具2は上方に揺動した反動によって、下方に揺動することがある。すなわち、上顎部21Uが吊下具8から離れるように、及び、下顎部21Lが吊下具8に近付くように、下方に傾くことがある。
【0041】
吊下具8及び固定具2が下方に揺動した(傾いた)状態になると、不変である第一保持部31Bと第二保持部32Bとの間の距離に対して、本来これらに保持されるべき下側突出部8Lと下顎部21Lとの間の距離が短くなるため、保持具3が幅方向Xに動くことが許容されるようになる。保持具3が幅方向Xに動くことで、固定具2の連結部8Cに対する第一保持部31Bの引っ掛かりが外れ、吊下具8がフランジ部92から外れる可能性が高くなる。すなわち、固定具2が鉛直平面内において上下方向に揺動することに起因して、吊下具8がフランジ部92から脱落する可能性が高くなる。
【0042】
そこで、
図1〜3に示すように、固定具2は、当該固定具2の上下方向の揺動を規制する揺動規制部24を有している。これにより脱落抑止具1は、吊下具8の揺動に連動して固定具2が揺動することを規制でき、その結果、吊下具8及び固定具2の上下方向の揺動に起因して吊下具8がフランジ部92から脱落することを抑止できる。本実施形態では、揺動規制部24は、固定具2における下顎部21Lに設けられている。
【0043】
上述したように、固定具2は、フランジ部92の延在方向Yに見て切欠部25を有するC字状に形成されていると共に、切欠部25の内縁に沿って内向きに屈曲する屈曲板部25Aを有している。本実施形態では、切欠部25の内縁は、上顎部21U及び下顎部21Lに亘って形成されている。
図3に示す例では、切欠部25の内縁における上顎部21Uに形成された部分は、幅方向第一側X1の端部から幅方向第二側X2に向かって水平に所定長さ延びると共に、幅方向第二側X2の端部に向かって斜め下方に傾斜して延びるように形成されている。切欠部25の内縁における下顎部21Lに形成された部分は、幅方向第二側X2の端部から幅方向第一側X1の端部に向かって水平に延びるように形成されている。屈曲板部25Aは、切欠部25の内縁の全域に亘って連続的に形成されている。
【0044】
図2に示す例では、切欠部25の内縁は、一対の側壁部22のそれぞれに形成されている。屈曲板部25Aは、一対の側壁部22が互いに対向する側(延在方向Yにおける内側)に向かって屈曲している。屈曲板部25Aは一種のリブとして機能し、この屈曲板部25Aの存在によって、切欠部25ひいては固定具2の全体の強度が高くなっている。
【0045】
図1〜3に示すように、揺動規制部24は、保持具3とフランジ部92との間を幅方向Xに沿って延びて上下方向に見て保持具3と重複する第一規制板部24Aを含む(
図4も参照)。これにより、保持具3に対して固定具2が上方に揺動(下顎部21Lが下方に動くように揺動)した場合に、下顎部21Lの内部空間に配置された第二保持部材32(保持具3)と下顎部21Lに設けられた第一規制板部24Aとが接触する。そして、それ以上の固定具2の上方への揺動が防止される。
【0046】
本実施形態では、第一規制板部24Aは、屈曲板部25Aの一部によって兼用構成されている。
図1及び2に示す例では、第一規制板部24Aは、一対の側壁部22のそれぞれにおいて、当該一対の側壁部22が互いに対向する側(延在方向Yにおける内側)に向かって屈曲することにより形成されている。一対の第一規制板部24Aの延在方向Yにおける離間距離は、第二保持部材32の外径よりも短く形成されている。従って、
図4に示すように、第一規制板部24Aと第二保持部材32(保持具3)とは、上下方向に見て重複するように配置されている。
【0047】
また、本実施形態では、揺動規制部24が、保持具3の下方を幅方向Xに沿って延びて上下方向に見て保持具3と重複する第二規制板部24Bを含む(
図5も参照)。これにより、保持具3に対して固定具2が下方に揺動(下顎部21Lが上方に動くように揺動)した場合に、下顎部21Lの内部空間に配置された保持具3と下顎部21Lに設けられた第二規制板部24Bとが接触する。そして、それ以上の固定具2の下方への揺動が防止される。
図1及び2に示す例では、第二規制板部24Bは、一対の側壁部22のそれぞれにおいて、当該一対の側壁部22が互いに対向する側(延在方向Yにおける内側)に向かって屈曲することにより形成されている。一対の第二規制板部24Bの延在方向Yにおける離間距離は、第二保持部材32の外径よりも短く形成されている。従って、
図5に示すように、第二規制板部24Bと第二保持部材32(保持具3)とは、上下方向に見て重複するように配置されている。
【0048】
図1、2、3及び5に示す例では、第二規制板部24Bは、固定具2の、幅方向Xにおける吊下具8側の端部領域に設けられている。本実施形態では、第二規制板部24Bは、下顎部21Lにおける幅方向第一側X1の端部領域に設けられている。固定具2が下方に揺動する際には、下顎部21Lの幅方向第一側X1の端部が、幅方向第二側X2の端部領域を支点にして上方に揺動する。第二規制板部24Bが下顎部21Lにおける幅方向第一側X1の端部領域に設けられていることで、固定具2が下方に揺動した場合には、当該第二規制板部24Bが第二保持部材32(保持具3)と接触して、それ以上固定具2が下方に揺動することを防止できる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る脱落抑止具1によれば、例えば地震等によって大きな外力が作用した場合であっても、揺動規制部24を構成する第一規制板部24A及び第二規制板部24Bにより、固定具2が上方及び下方の両方向に揺動することを防止でき、固定具2の上下方向の揺動を効果的に防止できる。このため、第一保持部31Bと第二保持部32Bとの間の距離に対して下側突出部8Lと下顎部21Lとの間の距離が短くなるような事態が生じることがなく、保持具3が幅方向Xに動くことが許容されることもない。よって、吊下具8及び固定具2を幅方向Xの両側から狭着保持している保持具3の第一保持部31Bが吊下具8の連結部8Cに対して引っ掛かっている状態が適正に維持されるので、形鋼材9のフランジ部92からの吊下具8の脱落を効果的に抑止することができる。
【0050】
〔第二実施形態〕
次に、脱落抑止具の第二実施形態について、
図6を参照して説明する。第二実施形態では、固定具2の構成が第一実施形態と異なる。なお、以下で特に説明しない点については、第一実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、第二実施形態では、固定具2は、幅方向Xにおける吊下具側(幅方向第一側X1)の端部に、保持具3が挿通される挿通部26Aを有する挿通板部26を備えている。
図6に示す例では、挿通板部26は、下顎部21Lにおける幅方向第一側X1の端部において、主面を幅方向Xに向かわせた姿勢(延在方向Yに沿わせた姿勢)で配置されている。また、挿通板部26は、一対の側壁部22のうち一方の側壁部22を他方の側壁部22に向けて屈曲させることにより、下顎部21Lに形成されている。
【0052】
挿通部26Aは、挿通板部26を幅方向Xに貫通する孔状に形成されている。
図6に示す例では、挿通部26Aは、連結壁部23を貫通する係止孔23Aと幅方向Xにおいて一直線上に並ぶように配置されている。これにより、保持具3(第二保持部材32)は、係止孔23A及び挿通部26Aの双方を一度に挿通することができる。
【0053】
第二実施形態では、揺動規制部24が、挿通板部26における挿通部26Aの上方側に張り出す上方側張出部分27U、及び、挿通板部26における挿通部26Aの下方側に張り出す下方側張出部分27Lの両方によって兼用構成されている。
【0054】
図6に示す例では、上方側張出部分27Uは、保持具3とフランジ部(不図示)との間であって、上下方向に見て保持具3と重複する位置に配置されている。また、上方側張出部分27Uは、挿通部26Aの上方領域の全てを覆うように形成されている。これにより、上方側張出部分27Uは、固定具2が上方に揺動した場合(下顎部21Lが下方に動いた場合)に第二保持部材32(保持具3)と接触し、それ以上固定具2が上方に揺動することを防止することができる。
【0055】
図6に示す例では、下方側張出部分27Lは、保持具3の下方であって、上下方向に見て保持具3と重複する位置に配置されている。また、下方側張出部分27Lは、挿通部26Aの下方領域の全てを覆うように形成されている。これにより、下方側張出部分27Lは、固定具2が下方に揺動した場合(下顎部21Lが上方に動いた場合)に第二保持部材32(保持具3)と接触し、それ以上固定具2が下方に揺動することを防止することができる。
【0056】
第二実施形態の脱落抑止具1でも、第一実施形態と同様に、形鋼材9のフランジ部92からの吊下具8の脱落を効果的に抑止することができる。
【0057】
〔第三実施形態〕
次に、脱落抑止具の第三実施形態について、
図7を参照して説明する。第三実施形態では、固定具2の構成が上記の各実施形態と異なる。なお、以下で特に説明しない点については、上記の各実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、第三実施形態では、第一規制板部24Aは、下顎部21Lにおける幅方向Xの吊下具側(幅方向第一側X1)の端部領域だけに形成されている。また、図示は省略するが、このような構成に限らず、第一規制板部24Aは、下顎部21Lが配置される領域内の一部の領域だけに設けられていても良い。また、これらの場合には、上記第一実施形態のような切欠部25の内縁が延在方向Yの内側に屈曲された屈曲板部25A(
図1参照)は、設けられなくても良い。
【0059】
図7に示すように、第三実施形態では、第二規制板部24Bは、幅方向Xに沿って延びるように形成されている。例えば、第二規制板部24Bは、下顎部21Lにおける幅方向Xの全域又は略全域に亘って連続的に形成されていても良い。
【0060】
例えば、第三実施形態では、一対の側壁部22のそれぞれに、延在方向Yの外側に向かって膨出する膨出部22Aが形成されている。
図7に示す例では、膨出部22Aは、側壁部22における下顎部21Lに相当する部分に形成されている。また、膨出部22Aは、幅方向Xに沿う筋状に形成されている。これにより、上下方向に力が作用した場合の曲げ応力に対する下顎部21Lの耐久性が向上する。また、図示は省略するが、このような構成に限らず、膨出部22Aは、上下方向に沿う筋状に形成されていても良い。この場合には、水平方向に力が作用した場合の曲げ応力に対する側壁部22の耐久性が向上する。
【0061】
第三実施形態の脱落抑止具1でも、上記の各実施形態と同様に、形鋼材9のフランジ部92からの吊下具8の脱落を効果的に抑止することができる。
【0062】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る脱落抑止具の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。同様に、上述した第一及び第二の実施形態で開示された個々の構成どうしを、矛盾が生じない範囲内で適宜組み合わせることも可能である。
【0063】
(1)上記の実施形態では、固定具2は、一対の側壁部22の間(延在方向Yにおける内側)及び連結壁部23の内側(連結壁部23の幅方向第一側X1)に内部空間を有する中空状に形成されている例について説明した。しかし、本発明はこのような例に限定されない。固定具2は、内部空間を有さない固体状に形成されていても良い。この場合、固体状の固定具2に形成される挿通孔(第二保持部材32を構成するボルト32Aが挿通される孔部)の、ボルト32Aよりも上方に位置する上方側内面及び下方に位置する下方側内面が、揺動規制部24として機能する。
【0064】
(2)上記の実施形態では、固定具2が揺動規制部24として第一規制板部24A及び第二規制板部24Bの両方を含んでいる例について説明した。しかし、本発明はこのような例に限定されない。固定具2は、揺動規制部24として第一規制板部24Aだけを含んで構成されても良いし、第二規制板部24Bだけを含んで構成されても良い。
【0065】
(3)上記の実施形態では、第一規制板部24Aは、一対の側壁部22のそれぞれに形成された一対構造である例について説明した。しかし、本発明はこのような例に限定されない。第一規制板部24Aは、一対の側壁部22の一方から他方に向けて延在方向Yに突出するように形成された一片構造であっても良いし、側壁部22から延在方向Yに突出すると共に一対の側壁部22のそれぞれを連結して構成された一体構造であっても良い。なお、第二規制板部24Bについても同様に、一対構造でなく、一片構造又は一体構造であっても良い。
【0066】
(4)上記の実施形態では、第二規制板部24Bは、下顎部21Lにおける幅方向Xの吊下具8側の端部領域に設けられている例について説明した。しかし、本発明はこのような例に限定されない。第二規制板部24Bは、固定具2の下顎部21Lが配置される領域内のいずれかの領域に設けられていれば良い。例えば、第二規制板部24Bは、固定具2の下顎部21Lが配置される全領域に設けられていても良いし、当該領域のうち一部の領域だけに設けられていても良い。
【0067】
(5)第二実施形態では、固定具2が揺動規制部24として上方側張出部分27U及び下方側張出部分27Lの両方を含んでいる例について説明した。しかし、本発明はこのような例に限定されない。固定具2は、揺動規制部24として上方側張出部分27Uだけを含んで構成されても良いし、下方側張出部分27Lだけを含んで構成されても良い。
【0068】
(6)第二実施形態では、上方側張出部分27Uは、挿通部26Aの上方領域の全てを覆うように形成されている例について説明した。しかし、本発明はこのような例に限定されない。上方側張出部分27Uは、挿通部26Aの上方領域の一部を覆うように形成されていても良い。例えば、上方側張出部分27Uは、上下方向に沿って形成されるスリット部を有し、当該スリット部により延在方向Yに分断されて構成されていても良い。なお、下方側張出部分27Lについても同様に、上下方向に沿って形成されるスリット部を有し、当該スリット部により延在方向Yに沿って分断されて構成されていても良い。なお、挿通板部26は、延在方向Yに沿って形成されるスリット部を有し、当該スリット部により上下方向に分断されて構成されていても良い。この場合には、分断された上側部分が上方側張出部分27Uとなって挿通部26Aの上方領域を覆い、分断された下側部分が下方側張出部分27Lとなって挿通部26Aの下方領域を覆う。
【0069】
(7)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。