特許第6853037号(P6853037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853037
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20210322BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210322BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A61K8/894
   A61K8/31
   A61K8/73
   A61K8/29
   A61K8/06
   A61K8/81
   A61Q1/02
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-256852(P2016-256852)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-108952(P2018-108952A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】池田 智子
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/010652(WO,A1)
【文献】 特開2009−155244(JP,A)
【文献】 特開2016−190841(JP,A)
【文献】 特開2013−253022(JP,A)
【文献】 特開平09−031358(JP,A)
【文献】 特表2007−523199(JP,A)
【文献】 特開2013−079264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃で液状でありかつIOB値が0.1を超える極性油、
(B)炭化水素油、
(C)下記一般式(I):
【化1】
(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、xは5〜50、yは1〜30、zは20〜200、aは2〜20、bは1〜5、cは2〜20、dは0〜20の整数を表す)
で表されるポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、及び
(D)N−アシルアミノ酸及びメチルポリシロキサンで表面処理された粉体、
を含有し、
(B)炭化水素油の配合量が油中水型乳化化粧料全量に対して0.1〜10質量%である
ことを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
増粘剤をさらに含有する、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
増粘剤がパルミチン酸デキストリンである、請求項2に記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。より詳しくは、なめらかな使用感を有し、のびが軽く、粉体の分散安定性に優れた、クリームファンデーション等の油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油相を外相、水相を内相とした油中水型の乳化組成物は、油溶性の有効成分、例えばエモリエント油、油溶性の薬剤、紫外線吸収剤等を効率的に皮膚上に展開できることから皮膚外用剤に適した剤型であり、化粧品分野ではファンデーションやスキンケアクリーム等に広く活用されている。
【0003】
従来の油中水型乳化化粧料においては、外相を構成する油をゲル化させ、水滴を不動化し、粒子同士の衝突頻度を低下させることで安定化を図ることが多く、必然的に粘度が高くなる傾向があった。そのため、油中水型乳化化粧料では、低粘度化と安定化の両立は困難とされており、塗布時ののびや使用感と経時安定性とを同時に改善することは難しかった。
【0004】
これまでに、低粘度かつ安定な油中水型乳化化粧料の実現に向けて、種々の試みがなされてきた。例えば、特許文献1には、乳化安定化剤として表面をジメチルポリシロキサンで処理した疎水化シリカを用い、乳化剤として特定のシリコーン系界面活性剤を用いることにより、乳化状態の経時安定性、感触、使用性を改善することが提案されている。
また、特許文献2には、非乳化性の非被覆シリコーンエラストマー、N-アシルアミノ酸処理した複数の顔料、及び乳化剤を含む、エマルション形態の皮膚メークアップ用組成物が提案されている。非被覆シリコーンエラストマーを配合することによりエマルションが安定化し、顔料を非シリコーン化合物であるN-アシルアミノ酸処理することにより保存中に顔料が再凝集しにくくなるとされている。
さらに、特許文献3には、優れた貯蔵安定性と皮膚への均一なメイクアップを可能にするファンデーション組成物を得るために、アルキルジメチコーンコポリオール、ジメチコーンコポリオール、疎水性被覆顔料、及び大量の揮発性油の混合物を使用することが提案されている。
【0005】
しかし、上記の油中水型乳化化粧料はシリコーン油をベースとしており、なめらかさや肌馴染みに欠けるという問題があった。また、使用感の向上のためにこれらの油中水型乳化化粧料に炭化水素油や極性油を配合しても、なめらかさの十分な改善はみられず、却って安定性が損なわれ、顔料の凝集による色縞が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3403223号公報
【特許文献2】特許第5791859号公報
【特許文献3】特許第4373141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、なめらかな使用感を有し、塗布時ののびが軽く、粉末の分散安定性にも優れた、低粘度の油中水型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、油分として少なくとも極性油及び炭化水素油を配合し、さらに、特定の活性剤と、特定の表面処理を施した粉体とを組み合わせて配合することにより、粉体の分散安定性を保持しつつ、優れたなめらかさとのびの良さを備えた低粘度の油中水型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)25℃で液状でありかつIOB値が0.1を超える極性油、
(B)炭化水素油、
(C)下記一般式(I):
【化1】
(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、xは5〜50、yは1〜30、zは20〜200、aは2〜20、bは1〜5、cは2〜20、dは0〜20の整数を表す)
で表されるポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、及び
(D)N−アシルアミノ酸及びメチルポリシロキサンで表面処理された粉体、
を含有する、油中水型乳化化粧料を要旨とするものである。
また、本発明の油中水型乳化化粧料は、増粘剤をさらに含有することが好ましく、特に増粘剤がパルミチン酸デキストリンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る油中水型乳化化粧料によれば、安定性を保持しつつ低粘度とすることができるため、スキンケアのようななめらかさと、のびのあるさっぱりした使用感を実現することができる。同時に、粉体の分散安定性にも優れているため、粉体同士の凝集による色縞の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の油中水型乳化化粧料は、(A)極性油、(B)炭化水素油、(C)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、(D)表面処理粉体を必須に含むことを特徴とする。以下、本発明について詳述する。
【0012】
<(A)極性油>
本発明の油中水型乳化化粧料に用いられる(A)極性油は、25℃で液状でありかつIOB値が0.1を超えるもの、特に好ましくはIOB値が0.1より大きく0.5よりも小さい範囲のものである。
IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図−基礎と応用−」p11〜17、三共出版、1984年発行参照)。
【0013】
このような条件を満たす極性油の例としては、オレイン酸(IOB値=0.42)、イソステアリン酸(IOB値=0.43)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB値=0.18)、パルミチン酸オクチル(IOB値=0.13)、パルミチン酸イソプロピル(IOB値=0.16)、ステアリン酸ブチル(IOB値=0.14)、ラウリン酸ヘキシル(IOB値=0.17)、ミリスチン酸ミリスチル(IOB値=0.11)、オレイン酸デシル(IOB値=0.11)、イソノナン酸イソノニル(IOB値=0.20)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB値=0.15)、エチルヘキサン酸セチル(IOB値=0.13)、ジステアリン酸グリコール(IOB値=0.16)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB値=0.29)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB値=0.25)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB値=0.28)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)(IOB値=0.35)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.33)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、アジピン酸ジイソブチル(IOB値=0.46)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル(IOB値=0.29)、アジピン酸2−ヘキシルデシル(IOB値=0.16)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB値=0.40)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(IOB値=0.28)、オリーブ油(IOB値=0.16)、ヒマシ油(IOB値=0.43)、デシルテトラデカノール(IOB値=0.21)、オクチルドデカノール(IOB値=0.26)、オレイルアルコール(IOB値=0.28)等が挙げられる。
【0014】
(A)極性油の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。(A)極性油の配合量が0.01質量%未満では十分な使用感が得られにくく、30質量%を超えて配合すると安定性が損なわれることがある。
【0015】
<(B)炭化水素油>
本発明の油中水型乳化化粧料に用いられる(B)炭化水素油は、一般に非極性油又は低極性油として知られた炭化水素油を使用することができる。炭化水素油の例としては、流動パラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカン、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0016】
(B)炭化水素油の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。(B)炭化水素油の配合量が0.01質量%未満では十分な使用感が得られにくく、30質量%を超えて配合すると肌上でののびが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。また、炭化水素油は、全油分中0質量%より多く、50質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、5〜40質量%、10〜30質量%であることが好ましい。油分中における炭化水素油の含有量が50質量%よりも多いと、肌上でののびが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0017】
<(C)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン>
本発明の油中水型乳化化粧料に用いられる(C)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンは、下記一般式(I)で示される。
【化2】
(一般式(I)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、xは5〜50、yは1〜30、zは20〜200、aは2〜20、bは1〜5、cは2〜20、dは0〜20の整数を表す。)
【0018】
このようなポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーンの好適な例は、セチルジメチコンコポリオール(セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン)であり、市販品としては、例えばKF−6048(信越化学工業株式会社製)、ABIL EM 90(デグサジャパン株式会社製)等を使用することができる。なかでも、なめらかさにおいて特に優れた効果を発揮することから、KF−6048(信越化学工業株式会社製)が好ましい。
【0019】
係る(C)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンを、上記(A)極性油及び(B)炭化水素油と組み合わせて用いることにより、なめらかさに優れた油中水型乳化化粧料を得ることができる。
本発明において(C)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンの配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、0.01〜10質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。配合量が0.01質量%未満では安定性が損なわれる傾向があり、一方、配合量が10質量%を超える場合にはなめらかな使用感が損なわれる傾向がある。
【0020】
<(D)N−アシルアミノ酸及びメチルポリシロキサンで表面処理された粉体>
本発明の油中水型乳化化粧料に用いられる(D)N−アシルアミノ酸及びメチルポリシロキサンで表面処理された粉体(本明細書中、単に「表面処理粉体」と称する場合がある)は、粉体の表面が、N−アシルアミノ酸からなる層とメチルポリシロキサンからなる層によって被覆されている。N−アシルアミノ酸とメチルポリシロキサンの両方で被覆することにより、上記(A)極性油及び(B)炭化水素油に対して安定に分散でき、粒子の凝集による色縞の発生を抑えることができる。
【0021】
(D)表面処理粉体のコアとなる粉体は、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等)等が挙げられる。
また、コアとして、通常化粧料に紫外線散乱剤として配合される無機粉体を用いることもできる。紫外線散乱剤をコアとすることにより、本発明の油中水型乳化化粧料に紫外線防御効果を付与することができる。コアとなる紫外線散乱剤としては、平均一次粒子径が10nm〜100nm、より好ましくは10nm〜50nmの微粒子酸化チタン及び微粒子酸化亜鉛を挙げることができる。
【0022】
粉体の表面を被覆するN−アシルアミノ酸は、アミノ酸のアミノ基及び/又はイミノ基がアシル化されたもの、又はこれらの塩である。N−アシルアミノ酸は、例えば、N−ステアロイル−L−グルタミン酸、N−ラウロイル−L−リジン等であり、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
また、メチルポリシロキサンは、粉体の十分な分散性を得るために、重合度が10〜100程度のものを使用するのが好ましい。
【0023】
本発明で使用できる(D)表面処理粉体は、例えば、特開2001−72527号公報に開示されている方法によって製造できる。市販品としては、例えば、SA/NAI−CR−50P、SA/NAI−R−516P、SA/NAI−LL−100P、SA/NAI−BL−100P(いずれも三好化成株式会社製)を用いることができる。
【0024】
本発明において(D)表面処理粉体の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、1〜50質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。(D)表面処理粉体の配合量が、化粧料に対して1質量%未満であると十分な化粧効果が得られにくく、50質量%を超えるときしみの発生等、使用性に悪影響を与える傾向がある。
【0025】
<その他の成分>
本発明の油中水型乳化化粧料には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で通常化粧料に用いられる他の成分、例えば、各種水性溶媒、油分、増粘剤、上記以外の油分、粉末成分、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、糖、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0026】
水性溶媒
水性溶媒としては、水(イオン交換水、精製水、自然水等)、あるいは低級アルコールや多価アルコール等の水性成分を、化粧料の安定性を損なわない範囲で配合することができる。
【0027】
油分
本発明の油中水型乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記(A)極性油及び(B)炭化水素油以外の油分を含んでもよい。特に、シリコーン油を配合することにより、さっぱりとした使用感や、耐油性・耐水性を得ることができる。配合可能なシリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、クロロアルキル変性シリコーン、アルキル高級アルコールエステル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。これらのシリコーン油のうち、メチルポリシクロシロキサン(シクロメチコン)は、皮膚に対する安全性や使用感、さらには現時点における入手の容易性から好ましい。
【0028】
増粘剤
本発明の油中水型乳化化粧料には、安定性を向上させるために増粘剤を配合することが好ましい。しかし、従来の油中水型ファンデーションに汎用されているジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト等の有機変性粘土鉱物を配合すると、なめらかさが失われ、化粧料ののびが重たくなる傾向がある。本発明の油中水型乳化化粧料においては、増粘剤として特に、パルミチン酸デキストリン(例えば、レオパールKL(千葉製粉株式会社製))、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル(例えば、ノムコートHK−G(日清オイリオグループ株式会社製))、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10(例えば、ノムコートHK−P(日清オイリオグループ株式会社製)、酢酸ステアリン酸スクロース及びステアリン酸スクロースなどのショ糖脂肪酸エステル、ジブチルラウロイルグルタミド(例えば、GP−1(味の素株式会社製))、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド(例えば、EB−21(味の素株式会社製))、ポリアミド−8などのポリアミド樹脂、ヒドロキシステアリン酸(例えば、12−ヒドロキシステアリン酸(川研ファインケミカル株式会社製))を配合することにより、優れたなめらかさとのびの良さを実現できることがわかっている。
増粘剤を配合する場合、油中水型乳化化粧料全量に対して、0.01〜10質量%とすることが好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0029】
球状樹脂粉末
本発明の油中水型乳化化粧料には、使用感の向上のため、通常化粧品に用いられる球状樹脂粉末を配合することが好ましい。使用可能な球状樹脂粉末として、例えば、ポリアミド樹脂(ナイロン粉末)ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリウレタン粉末、ポリスチレン粉末、ポリアクリル酸アルキル粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、シリコーン粉末、架橋型シリコーン粉末等が挙げられる。
【0030】
紫外線散乱剤
本発明の油中水型乳化化粧料には、紫外線防御効果を付与又は向上させるために紫外線散乱剤を配合することができる。本発明に用いる紫外線散乱剤は特に限定されないが、例えば、平均一次粒子径が10nm〜100nm、より好ましくは10nm〜50nmの微粒子酸化チタン及び微粒子酸化亜鉛を挙げることができる。また、紫外線散乱剤は公知の方法で疎水化処理されていてもよく、疎水化処理方法としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類を用いた処理;オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のシラン化合物を用いた処理;パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理;前記脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等を用いた金属セッケン処理;パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルトリメトキシシラン等を用いたフッ素処理等が挙げられる。
【0031】
紫外線吸収剤
本発明の油中水型乳化化粧料には、紫外線防御効果を付与又は向上させるために紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤は特に限定されるものでないが、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β−ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4−ジアリールブタジエン誘導体等を挙げることができる。より具体的には、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン−15、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン−3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0032】
本発明の油中水型乳化化粧料は、常法により調製することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば、水相と油相をそれぞれ70℃程度に加温し、加温した水相を油相に徐々に添加して、乳化機で乳化し、その後、室温まで放冷する等の方法が挙げられるが、これに限定されるものでない。
【0033】
本発明にかかる油中水型乳化化粧料は、化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、乳化ファンデーション、サンケア化粧料、化粧下地等とすることができる。
また本発明は、容器形態を限定されるものではない。たとえばこの化粧料を含浸体に含浸させて、気密性を備えたコンパクト容器内に収容することも可能である。含浸体としては、樹脂、パルプ、綿等の単一又は混合素材からなる不織布、樹脂加工した繊維体、スポンジなどの発泡体、連続気孔を備えた多孔質体などが挙げられる。また含浸体の素材としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、ウレタン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、EVA(エチレン酢酸ビニル)、PVA(ポリビニルアルコール)、シリコン、エラストマー、などの例が挙げられるが、化粧料を含むことのできる含浸体であればこれらの素材に限られるものではない。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。実施例に先立ち、本発明で用いた評価方法を説明する。
【0035】
(1)なめらかさ、のびの軽さ
各試料について専門パネル10名によって実使用試験を実施した。具体的には、各試料の乳化ファンデーションを各パネルの顔に塗布し、なめらかさ、のびの軽さを下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
A:優れていると評価したのが10名中7名以上
B:優れていると評価したのが10名中5名以上7名未満
C:優れていると評価したのが10名中5名未満
【0036】
(2)色縞(粉体分散性)
各試料を透明ガラス容器に充填し、そのまま1時間静置した後に、粉体が不均一化することによって生じる縞の発生を目視により評価した。
A:縞模様が全くみられない
B:僅かに縞模様がみられるが、許容できる
C:縞模様がみられ、化粧料としての使用に耐えない
【0037】
下記の表1〜2に示す処方にて乳化ファンデーションを調製し、上記評価方法に従って各特性を評価した。結果を表1〜2に併せて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
*1)KF−6048(信越化学工業株式会社製)
*2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
*3)以下の組成の原料粉体にN-アシルアミノ酸およびメチルポリシロキサンにて表面処理を行った表面処理粉体
酸化チタン 80%
ベンガラ 4%
黄酸化鉄 15%
黒酸化鉄 1%
*4)以下の組成の原料粉体にトリエトキシカプリリルシランにて表面処理を行った表面処理粉体
酸化チタン 80%
ベンガラ 4%
黄酸化鉄 15%
黒酸化鉄 1%
*5)以下の組成の原料粉体にパーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン及びジメチコンにて表面処理を行った表面処理粉体
酸化チタン 80%
ベンガラ 4%
黄酸化鉄 15%
黒酸化鉄 1%
【0041】
表1に示されるとおり、(A)極性油、(B)炭化水素油、(C)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、(D)表面処理粉体を配合した場合には、全ての評価項目において十分な効果が得られた(実施例1〜5)。一方、表2に示されるとおり、(A)〜(D)のいずれかを欠く場合にはなめらかさやのびが劣り(比較例1〜3)、さらに、(D)以外の粉体を配合した場合には許容限度を超える色縞の発生が認められた(比較例4〜5)。
【0042】
処方例
以下に、本発明の油中水型乳化化粧料の処方例を挙げる。本発明はこれらの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。尚、配合量は全て製品全量に対する質量%で表す。
【0043】
処方例1.(化粧下地)
(成分名) 配合量(%)
(1)セチルジメチコンコポリオール*6)
(2)ポリエーテル変性シリコーン 0.5
(3)イソドデカン 5
(4)エチルヘキサン酸セチル 5
(5)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
(6)シクロメチコン 10
(7)パルミチン酸デキストリン*2) 0.5
(8)表面処理粉体A*3)
(9)ポリメタクリル酸メチル 10
(10)ジプロピレングリコール 5
(11)グリセリン 1
(12)水 残余
*6)ABIL EM 90(デグサジャパン株式会社製)
【0044】
製法
(1)〜(7)を均一に加熱混合して油相部を調製し、この油相部に粉末部(8)及び(9)を分散させて混合物を得た。次いで、(10)〜(12)を加温溶解して水相部を調製し、前記混合物に添加、混合して化粧下地を得た。
【0045】
処方例2.(化粧下地)
(成分名) 配合量(%)
(1)セチルジメチコンコポリオール*6)
(2)ポリエーテル変性シリコーン 1
(3)イソドデカン 5
(4)トリメチルシロキシケイ酸 5
(5)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 8
(6)ポリシリコーン−15 2
(7)ビスエチルヘキシルオキフシフェノールメトキシフェニルトリアジン

(8)t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 1
(9)エチルヘキシルトリアゾン 0.5
(10)シクロメチコン 10
(11)パルミチン酸デキストリン*2) 0.5
(12)N-アシルアミノ酸およびメチルポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン

(13)ポリウレタン球状樹脂 10
(14)ジプロピレングリコール 5
(15)グリセリン 1
(16)水 残余
【0046】
製法
(1)〜(11)を均一に加熱混合して油相部を調製し、この油相部に粉末部(12)及び(13)を分散させて混合物を得た。次いで、(14)〜(16)を加温溶解して水相部を調製し、前記混合物に添加、混合して化粧下地を得た。
【0047】
処方例3.(化粧下地)
(成分名) 配合量(%)
(1)セチルジメチコンコポリオール*6)
(2)ポリエーテル変性シリコーン 1
(3)イソドデカン 5
(4)トリメチルシロキシケイ酸 5
(5)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 8
(6)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
(7)2−ヒドロキシ−4−メトキシベゾフェノン 1
(8)シクロメチコン 10
(9)パルミチン酸デキストリン*2) 0.5
(10)N-アシルアミノ酸およびメチルポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン

(11)ポリウレタン球状樹脂 10
(12)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 1
(13)トリエタノールアミン 適量
(14)ジプロピレングリコール 5
(15)グリセリン 1
(16)水 残余
【0048】
製法
(1)〜(9)を均一に加熱混合して油相部を調製し、この油相部に粉末部(10)及び(11)を分散させて混合物を得た。次いで、(12)〜(16)を加温溶解して水相部を調製し、前記混合物に添加、混合して化粧下地を得た。
【0049】
処方例4.(サンスクリーン)
(成分名) 配合量(%)
(1)セチルジメチコンコポリオール*6)
(2)ポリエーテル変性シリコーン 1
(3)イソドデカン 5
(4)トリメチルシロキシケイ酸 5
(5)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 8
(6)シクロメチコン 10
(7)パルミチン酸デキストリン*2) 0.5
(8)N-アシルアミノ酸およびメチルポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン

(9)ポリウレタン球状樹脂 10
(10)ジプロピレングリコール 5
(11)グリセリン 1
(12)水 残余
【0050】
製法
(1)〜(7)を均一に加熱混合して油相部を調製し、この油相部に粉末部(8)及び(9)を分散させて混合物を得た。次いで、(10)〜(12)を加温溶解して水相部を調製し、前記混合物に添加、混合してサンスクリーンを得た。
【0051】
処方例5.(ファンデーション)
(成分名) 配合量(%)
(1)セチルジメチコンコポリオール*6)
(2)ポリエーテル変性シリコーン 0.5
(3)イソドデカン 5
(4)エチルヘキサン酸セチル 5
(5)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
(6)シクロメチコン 10
(7)ジブチルラウロイルグルタミド*7) 0.2
(8)表面処理粉体A*3) 15
(9)シリカ 5
(10)ジプロピレングリコール 5
(11)グリセリン 1
(12)水 残余
*7)GP−1(味の素株式会社製)
【0052】
製法
(1)〜(7)を均一に加熱混合して油相部を調製し、この油相部に粉末部(8)及び(9)を分散させて混合物を得た。次いで、(10)〜(12)を加温溶解して水相部を調製し、前記混合物に添加、混合してファンデーションを得た。