(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
20〜60の範囲の黄色度(ASTM E313)、及び/又は、少なくとも2.0の、未反応の残留求核剤及び/又はその酸化誘導体に対する、反応した求核剤の比を備える、請求項10に記載のイオノマー。
【背景技術】
【0002】
ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)すなわちIIRは、イソブチレンと、少量(通常、2.5モル%以下)のイソプレンとのランダムカチオン共重合により1940年代から製造されてきている。その分子構造の結果として、IIRは、優れた空気非透過性、高い損失モデュラス、酸化安定性、及び長期の耐疲労性を有する。
【0003】
ブチルゴムのハロゲン化は、エラストマー中に反応性のアリルハライド(allylic halide)官能基を作り出す。従来のブチルゴムハロゲン化法は、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(第5完全改訂版, A231巻, Elversら編)及び/又はMaurice Mortonによる “Rubber Technology”(第3版, 第10章(Van Nostrand Reinhold Company(著作権)1987年)、特に第297〜300頁に記載されている。
【0004】
ハロゲン化ブチルゴム(ハロブチル)の開発は、速い硬化速度をもたらし、一般用途ゴム、例えば、天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)との共加硫を可能にすることによって、ブチルの有用性を大きく広げてきた。ブチルゴム及びハロブチルゴムは価値の高いポリマーであり、なぜなら、それらの他に類を見ない特性の組み合わせ(優れた非透過性、良好な屈曲、良好な耐候性、及びハロブチルの場合には高不飽和ゴムとの共加硫)がそれらを様々な用途、例えば、タイヤのインナーチューブ及びタイヤのインナーライナーを作るのに好ましい材料にしているからである。
【0005】
アリルハライド官能基の存在は、求核的アルキル化反応を可能にする。固体状態において、窒素及び/又はリン系求核剤で臭素化ブチルゴム(BIIR)を処理することが、興味深い物理的及び化学的特性をもつIIR系イオノマーの生成をもたらすことが示されている(Parent J.S., Liskova A., Whitney R.A., Resendes R. Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 43, 5671-5679, 2005年; Parent J.S., Liskova A., Resendes R. Polymer 45, 8091-8096, 2004年; Parent J.S., Penciu A. Guillen-Castellanos S.A., Liskova A., Whitney R.A. Macromolecules 37, 7477-7483, 2004年を参照されたい)。イオノマーの官能性は、窒素又はリン系求核剤と、ハロゲン化ブチルゴム中のアリルハライド部位の反応によって生じ、それぞれアンモニウム又はホスホニウムイオン性基を作り出す。
【0006】
ホスホニウムブチルイオノマーの形成は既に開示されている。米国特許第7662480号明細書は、BIIRを、BIIRのアリルブロマイド(allylic bromide)含量に基づいて3モル当量のリン系求核剤と内部ミキサー中100℃で1時間混合することによる、ホスホニウムブチルイオノマーの合成を記載している。これが、全てのアリルブロマイド(allylic bromide)のホスホニウムイオノマーへの完全な転化をもたらした。
【0007】
同様に、国際公開第2012/083419号は、130℃及び60rpmにてBIIRをブラベンダー(Brabender)内部ミキサーに添加することによって調製されたブチルホスホニウムイオノマーを記載している。TPP(1.2モル当量)の添加の前に短時間ゴムが混合され、さらに7〜10分間混合された。この方法は、アリルブロマイドからホスホニウムアイオノマーへの65%の転化をもたらした。
【0008】
米国特許出願公開第2012/0059074号公報は、室温のミルでBIIRとTPP(臭化アリルに基づいて1.2モル当量)を予備混合し、次にそのミルの混合物を100℃に1時間加熱することによるブチルアイオノマー形成を記載しており、これは、全てのアリルブロマイドのホスホニウムアイオノマーへの完全な転化をもたらす。
【0009】
米国特許出願公開第2013/0217833号公報は、水及び溶媒を含まないゴムイオノマーを調製するためのエネルギー効率が良く環境に好ましい方法を記載しているが、得られるポリマーの特性は全く記載されていない。その方法は、臭素化ゴムを含む自由に流動する濃縮された流体と、少なくとも1種の揮発性化合物、並びに窒素又はリンを含む求核剤を、脱ガスセクション、蓄積セクション、及び取り出しセクションを有する押出機中へ供給し、そこで臭素化ゴムは部分的に反応させられてゴムイオノマーを形成することによる。
【0010】
上の参考文献では、ハロゲン化共重合体と混合された求核剤の全てが反応してイオノマーを形成するわけではない。未反応の求核剤がポリマー中に残留求核剤として残る。この残留求核剤が酸化剤とさらに反応して、求核剤の酸化誘導体を形成しうる。いくつかのゴムの用途にとっては、ブチルゴムは、有用かつ耐久性のある製品を得るようにコンパウンドされ、加硫されなければならない。しかし、過剰なトリフェニルホスフィン(TPP)及びトリフェニルホスフィンオキシド(TPP=O)は、イオノマーコンパウンドの加硫と、得られる物理的及び動力学的特性に悪影響を及ぼしうる。TPPは硫黄と反応して対応するトリフェニルホスフィンスルフィドを形成し、これは加硫のためのより少ない利用可能な硫黄をもたらす。さらに、TPPはペルオキシドと反応してTPP=Oを生成し、これが加硫のためのより少ない利用可能なペルオキシドをもたらす。加えて、高純度用途のためには、過剰な残留求核剤を含む抽出可能な物質は、そのような用途には適していない。
【0011】
従来技術のホスホニウムブチルイオノマーポリマーは、様々な望ましくない副反応及び分解反応による明瞭な黄色から褐色の着色を有する。この特徴は、消費者にとって、特にコーティング及びフィルムなどの用途のためには技術的に許容できない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、イオノマー、及びそのイオノマーを製造する方法を目的としている。本明細書で用いる場合、「イオノマー性イソオレフィン系コポリマー」、「イオノマー性コポリマー」、「イオノマー」は交換可能に用いることができる。
【0023】
本発明の方法によれば、イオノマーは、混合機(ミキサー)中でハロゲン化コポリマーを求核剤と反応させ、次にその混合物を押出機又はマルチロールミルに送り込むことによって得ることができる。
【0024】
コポリマーは、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、少なくとも1種のマルチオレフィンモノマー及び/又はβ−ピネンを含み、かつ任意選択により1種以上のさらなる共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。本明細書で用いる場合、「イソオレフィンコポリマー」、「イソオレフィン-マルチオレフィンコポリマー」、及び「コポリマー」は交換可能に用いられる。
【0025】
好適なイソオレフィンモノマーには、4〜16個の炭素原子を有する炭化水素モノマーが含まれる。一つの態様では、イソオレフィンは4〜7個の炭素原子を有する。好適なイソオレフィンの例には、イソブテン(イソブチレン)、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、及びそれらの混合物が含まれる。好ましいイソオレフィンモノマーはイソブテン(イソブチレン)である。
【0026】
イソオレフィンモノマーと共重合可能なマルチオレフィンモノマーにはジエン類、例えば共役ジエンが含まれうる。マルチオレフィンモノマーの具体例には、4〜14個の範囲の炭素原子を有するものが含まれる。好適なマルチオレフィンの例には、イソプレン、ブタジエン、2−メチルブタジエン、2,4−ジメチルブタジエン、ピペリレン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、4−ブチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジブチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,6−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1−ビニル−シクロヘキサジエン、及びそれらの混合物が含まれる。特に好ましい共役ジエンはイソプレンである。β−ピネンはまた、マルチオレフィンモノマーの代わりに又はマルチオレフィンモノマーに加えて用いることができる。ここで、マルチオレフィン/β−ピネンモノマーとは、1種以上のマルチオレフィンモノマー及び/又はβ−ピネンモノマーの存在又は使用をいう。
【0027】
コポリマーは、任意選択により、1種以上の追加の共重合可能なモノマーを、イソオレフィン及びマルチオレフィン/β−ピネンモノマーとともに含んでいてもよい。追加の共重合可能なモノマーには、イソオレフィン及び/又はマルチオレフィン/β−ピネンモノマーと共重合可能なモノマーが含まれる。好適な共重合可能なモノマーには、例えば、スチレン系モノマー、例えば、アルキル置換ビニル芳香族コモノマーが含まれ、それにはC
1〜C
4アルキル置換スチレンが含まれるがそれらに限定されない。共重合可能なモノマーの具体例には、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン、及びメチルシクロペンタジエンが含まれる。一つの態様では、ブチルゴムポリマーは、イソブチレン、イソプレン、及びp−メチルスチレンのランダムコポリマーを含みうる。
【0028】
コポリマーは、ここに記載したモノマーの混合物から形成される。一つの態様では、モノマー混合物は、約80質量%〜約99質量%のイソオレフィンモノマー、及び約1質量%〜20質量%のマルチオレフィン/β−ピネンモノマーを含む。別の態様では、モノマー混合物は、約85質量%〜約99質量%のイソオレフィンモノマー、及び約1質量%〜15質量%のマルチオレフィン/β−ピネンモノマーを含む。ある態様では、3種のモノマーを用いることができる。これらの態様では、モノマー混合物は、約80質量%〜約99質量%のイソオレフィンモノマー、約0.5質量%〜約5質量%のマルチオレフィン/β−ピネンモノマー、及び約0.5質量%〜約15質量%の、イソオレフィン及び/又はマルチオレフィン/β−ピネンモノマーと共重合可能な第三のモノマーを含むことができる。一つの態様では、モノマー混合物は、約68質量%〜約99質量%のイソオレフィンモノマー、約0.5質量%〜約7質量%のマルチオレフィン/β−ピネンモノマー、及び約0.5質量%〜約25質量%の、イソオレフィン及び/又はマルチオレフィン/β−ピネンモノマーと共重合可能な第三のモノマーを含む。
【0029】
コポリマーは、任意の好適な方法で調製することができ、そのいくつかは当技術分野で公知である。例えば、モノマーの重合は、重合プロセスを開始することができるAlCl
3及びプロトン源及び/又はカチオン源の存在下で行うことができる。プロトン源には、AlCl
3又はAlCl
3を含む組成物に添加したときにプロトンを発生する任意の化合物が含まれる。プロトンは、AlCl
3と、プロトン及び対応する副生成物を生成するプロトン源、例えば、水、アルコール、又はフェノールとの反応によって生じうる。そのような反応は、プロトン源の反応が、それとモノマーとの反応と比較して、プロトン化された添加物とのあいだでより速い場合に好ましいであろう。その他のプロトンを発生する反応剤には、チオール、カルボン酸などが含まれる。最も好ましいプロトン源は水である。AlCl
3と水との好ましい比は、質量で5:1〜100:1である。AlCl
3を誘導しうる触媒システム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化エチルアルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、又はメチルアルモキサンをさらに導入することが有利でありうる。ブチル重合のために当業者に公知の不活性な溶媒又は希釈剤が、溶媒又は希釈剤(反応媒体)として考えられる。これらには、アルカン、クロロアルカン、シクロアルカン、又は芳香族が含まれ、これらはしばしばハロゲンでモノ又はポリ置換されている。ヘキサン/クロロアルカン混合物、塩化メチル、ジクロロメタン、又はそれらの混合物が好ましいであろう。クロロアルカン類が好ましく用いられる。モノマーは一般にカチオン重合され、好ましくは、−120℃〜+20℃の範囲の温度で、好ましくは−100℃〜−20℃の範囲で、かつ0.1〜4バールの範囲の圧力下で重合される。
【0030】
コポリマーはまた、国際出願公開第2011/089083号及びそこに記載された参考文献に概要が記載されている溶液法によっても製造できる。C6溶媒は、溶液法において用いるための特に好ましい選択肢である。本発明において用いるために適したC6溶媒は、50℃〜69℃の沸点を有することが好ましい。好ましいC6溶媒の例には、n−ヘキサン又はヘキサン異性体、例えば、2−メチルペンタン又は3−メチルペンタン、あるいはn−ヘキサンとそのような異性体との混合物並びにシクロヘキサンが含まれる。
【0031】
コポリマーは、マルチオレフィン/β−ピネンモノマーから誘導された少なくとも0.5モル%の繰り返し単位を含みうる。いくつかの態様では、マルチオレフィン/β−ピネンモノマーから誘導された繰り返し単位は、コポリマー中に、少なくとも0.75モル%、又は少なくとも1.0モル%、又は少なくとも1.5モル%、又は少なくとも2.0モル%、又は少なくとも2.5モル%、又は少なくとも3.0モル%、又は少なくとも3.5モル%、又は少なくとも4.0モル%、又は少なくとも5.0モル%、又は少なくとも6.0モル%、又は少なくとも7.0モル%の量で存在しうる。一つの態様では、ブチルゴムポリマーは、0.5〜2.2モル%のマルチオレフィン/β−ピネンモノマーを含みうる。べつの態様では、コポリマーは、より高いマルチオレフィン/β−ピネンモノマー含量、例えば、3.0モル%以上を含みうる。好適な高マルチオレフィン/β−ピネンブチルゴムポリマーの調製は、カナダ国特許出願2,418,884号に記載されている。
【0032】
一つの態様では、ハロゲン化コポリマーは、1種以上のイソオレフィン、及び1種以上のマルチオレフィン及び/又はβ−ピネン、特に上に記載したものを含むモノマー混合物からコポリマーを最初に調製し、次に、得られたコポリマーをハロゲン化工程にかけてハロゲン化コポリマーを生成させることによって得ることができる。ハロゲン化は、当業者に公知の方法、例えば、Rubber Technology, 第3版, Maurice Morton編, Kluwer Academic Publishers, 第297-300頁及びそこに引用されたさらなる文献に記載されている方法にしたがって行うことができる。ハロゲン化には、臭素化及び/又は塩素化が含まれうる。臭素化されたコポリマーは特に注目されうる。例えば、イソブチレン及び2.2モル%未満のイソプレンを含む臭素化ブチルゴムは、LANXESS Deutschland GmbHから市販されており、BB2030
TMの名称で販売されている。
【0033】
ハロゲン化コポリマー中で、マルチオレフィンモノマーに由来する1つ以上の繰り返し単位が、アリルハライド部分(allilic halogen moiety)を含む。ハロゲン化時に、コポリマーのマルチオレフィン及び/又はβ−ピネン含有量のいくらか又は全てが、アリルハライド(allylic halide)を含む単位に変換される。ハロゲン化コポリマー中のこれらのアリルハライド部位は、非ハロゲン化コポリマー中に最初に存在したマルチオレフィンモノマー及び/又はβ−ピネンから誘導される繰り返し単位からもたらされる。ハロゲン化コポリマーの合計のアリルハライド含量は、元となるコポリマーの最初のマルチオレフィン及び/又はβ−ピネン含量を超えることはできないが、残存するアリルハライド及び/又は残存するマルチオレフィンが存在してもよい。このアリルハライド部位は、1種以上の求核剤と反応して、それをハロゲン化コポリマーに結合させることを可能にする。ハロゲン化コポリマーは、0.05〜2.0モル%の合計アリルハライド含量を有しうる。ハロゲン化コポリマーはまた、2〜10モル%の範囲の残存マルチオレフィン量を含みうる。
【0034】
本発明のイオノマーは、ハロゲン化コポリマーを、ペンダントビニル基をもたない求核剤、ペンダントビニル基を含む求核剤、又はそれらの混合物と反応させることによって得ることができる。ハロゲン化コポリマーは、ペンダントビニル基を有しない求核剤と最初に反応させ、次にペンダントビニル基を有する求核剤と反応させうる。
【0035】
イオノマーを調製するために適した求核剤は、少なくとも1つの中性のリン又は窒素中心を含むことができ、これらは孤立電子対を有し、この孤立電子対は、求核置換反応における関与のために電子的及び立体的の両方で利用可能である。そのような求核剤から得られるイオノマーは、リンに基づく又は窒素に基づくイオン性部分を含む。
【0036】
一つの態様では、ハロゲン化コポリマーのアリルハライド部位を、下記式(I)を有する求核剤(ペンダントビニル基あり又はなし)と反応させる。
【化1】
式中、
Aは窒素又はリンであり;
R
1、R
2、及びR
3は独立に、ビニル基、直鎖状又は分枝状のC
1〜C
18アルキル基;O、N、S、B、Si、及びPからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含む直鎖状又は分枝状のC
1〜C
18アルキル基;C
6〜C
10アリール基;C
3〜C
6ヘテロアリール基;C
3〜C
6シクロアルキル基;C
3〜C
6ヘテロシクロアルキル基;又はそれらの組み合わせである。求核剤がペンダントビニル基を有する場合、そのビニル基はR
1、R
2、又はR
3の1つであってよく、又はR
1、R
2、又はR
3基の1つ以上からぶら下がっていることができる。R
1、R
2、及びR
3基の2つ又は3つ全てが一緒に縮合していてもよい。
【0037】
好適な求核剤には以下のものが含まれるがこれらに限定はされない:トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノスチレン、アリルジフェニルホスフィン、ジアリルフェニルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、トリアリルホスフィン、2-ジメチルアミノエタノール、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、2-(イソプロピルアミノ)エタノール、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、N-メチルジエタノールアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、4-(ジメチルアミノ)-1-ブタノール、N-エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、3-(ジエチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、2-{[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノール、4-ジエチルアミノ-2-ブチン-1-オール、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、N-ブチルジエタノールアミン、N-tert-ブチルジエタノールアミン、2-(メチルフェニルアミノ)エタノール、3-(ジメチルアミノ)ベンジルアルコール、2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、2-(N-エチルアニリノ)エタノール、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、2-(ジブチルアミノ)エタノール、2-(N-エチル-N-m-トルイジノ)エタノール、2,2′-(4-メチルフェニルイミノ)-ジエタノール、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、3-(ジベンジルアミノ)-1-プロパノール、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルフタルイミド、9-ビニルカルバゾール、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、又はそれらの混合物。
【0038】
本発明のイオノマーを形成させるために、ハロゲン化コポリマーと求核剤を
密閉式ミキサー、例えば、接線式ミキサー、
密閉式メッシユミキサー、ニーダー、又はゴム工業で一般的に使用されるその他のミキサー中で混合する。求核剤とハロゲン化コポリマーの間の反応は、約40〜200℃の範囲であってよい昇温した温度で行うことができる。より好ましくは、求核剤とハロゲン化コポリマーの間の反応は、約80〜200℃の範囲の温度で実施できる。別の態様では、求核剤とハロゲン化コポリマーの間の反応を、約100〜160℃の範囲の温度で実施することができる。求核剤とハロゲン化コポリマーをミキサー中で一緒にし、0.5〜30分、好ましくは1〜20分、より好ましくは2〜15分、なおさらに好ましくは5〜10分撹拌してよい。
【0039】
そこで得られた混合物は、次に0.5〜30分、好ましくは1〜20分、より好ましくは2〜15分、なおさらに好ましくは5〜10分、押出機を通してホットフィード(熱間押出)又はコールドフィード(冷間押出)することができる。
【0040】
押出機は約50〜200℃の範囲、好ましくは約60〜175℃、より好ましくは約80〜150℃の範囲の温度に加熱することができる。押出機は、また、他の押出機と組み合わせてもよい。あるいは、得られた混合物をマルチロールミル、好ましくは2本ロールミルに、約0.5〜90分、好ましくは約5〜60分、さらに好ましくは約10〜30分かけてもよい。このミルは、約50〜200℃、好ましくは約60〜175℃、さらに好ましくは約80〜150℃の範囲の温度に加熱してもよい。
【0041】
好適な押出機のタイプには、任意の数のバレルと任意のタイプのスクリューエレメントを含む単軸スクリュー及び多軸スクリュー押出機、及びその他の単軸又は多軸搬送ニーダーが含まれる。多軸スクリュー押出機の可能な態様は、2軸スクリュー押出機、リング押出機(ring extruder)、又は遊星ローラー押出機であり、2軸スクリュー押出機が好ましい。押出ユニットは、1つまたは直列に繋げた2つ以上の押出機を含むことができる。
【0042】
特に好ましい態様では、求核剤とハロゲン化ポリマーは最初に撹拌機(ミキサー)中で混合され、次に押出機を通して押し出される。ミキサー中での混合は、常温又は40〜200℃の温度で行うことができる。ミキサー中での混合は、0.5〜30分間行うことができる。押出機を通しての押出しは、80〜150℃の範囲の温度で行うことができる。押出機を通しての押出しは、0.5〜30分行うことができる。
【0043】
本発明の別の態様では、イオノマーは、より糸(ストランド)、リボン、ペレット、フライアブルベール(fryable bale)、又は圧縮ベールの形態であってよい。
【0044】
イオノマーをペレット化するために、乾式又は水中式ペレタイザーを使用することができる。乾式切断ペレタイザーを使用する場合、切断前のブチルゴムイオノマーの温度は約0〜180℃、好ましくは約5〜160℃、さらに好ましくは約25〜100℃の範囲であることができる。水中式ペレタイザーを使用する場合には、水の温度は約0.1〜90℃、好ましくは約1〜70℃、より好ましくは約2〜40℃、なおさらに好ましくは約10〜30℃の範囲であることができる。水中式ペレタイザーにおいて水に添加物を添加しても添加しなくてもよく、添加物は、乳化剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、界面活性剤、又は増粘剤を含んでよく、水中油型エマルションを安定化させるために従来から用いられているアニオン性、カチオン性、又はノニオン性乳化剤であってよい。この効果は、乳化剤によって引き起こされる、有機ポリマー相と水相の間の表面張力の低下に基づく。乳化剤の定義は、特に、有機相と水相の間の表面張力の値を10mN/m未満、好ましくは1mN/m未満になるようにする乳化剤を含む。例としては、この定義には、親水性末端基、好ましくはスルホネート末端基、サルフェート末端基、カルボキシレート末端基、ホスフェート末端基、又はアンモニウム末端基を有する、8〜30炭素原子をもつ脂肪族及び/又は芳香族炭化水素が含まれる。この定義にはまた、官能基を有するノニオン性界面活性剤も含まれ、その例はポリアルコール、ポリエーテル、及び/又はポリエステルである。この定義にはまた、脂肪酸塩、例えば、オレイン酸のナトリウム及び/又はカリウム塩、アルキルアリールスルホン酸の塩及びナフチルスルホン酸の塩も含まれ、また、それらの縮合物、例えばホルムアルデヒドとの縮合物も含まれ、また、アルキルコハク酸の塩及びアルキルスルホコハク酸の対応する塩も含まれる。さらに、線状アルキルポリエーテルスルホネート、アルキルポリエーテルグリコールエーテル、ポリエチレングリコールエステル、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマー、グリセロール、ポリグリセロールエステル、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、アルコールアルコキシレートが好適な乳化剤でありうる。用いる場合には、乳化剤は、水中の乳化剤の濃度が約10〜250,000ppm、好ましくは約50〜100,000ppm、さらに好ましくは約5000〜50,000ppmであることができる。
【0045】
ペレット化されたイオノマーは粉をまぶしても、まぶさなくてもよい。散布剤(dusting agent)は、イオノマーペレットの全質量に基づいて約0.01〜10質量%、好ましくは約0.05〜5質量%、さらに好ましくは約0.1〜4質量%の量で、ペレットの表面に存在しうる。好適な散布剤には、無機フィラー、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、クレー、タルク、カオリン、バライト粉、マイカ、シリカ、二酸化チタンなど、並びに樹脂(レジン)及びポリエチレン粉末、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の別の態様では、ハロゲン化コポリマーと反応させる核剤の量は、ハロゲン化コポリマー中に存在するアリルハライド(allilic halide)の全モル数に基づいて、約0.01〜1.1モル当量、より好ましくは約0.05〜1モル当量、なおさらに好ましくは約0.2〜0.8モル当量の範囲であることができる。得られたブチルゴムイオノマーは、好ましくは、約0.01〜10モル%、より好ましくは約0.1〜1.0モル%、なおさらに好ましくは約0.2〜0.8モル%、なおさらに好ましくは約0.2〜0.5モル%のイオノマー基を有する。得られたブチルゴムイオノマーは、イオノマー基とアリルハライド官能基の全モル量が最初のアリルハライド含量を超えない量で存在する、ポリマーに結合したイオノマー基とアリルハライドの混合であることができる。
【0047】
本発明のある態様では、イオノマーは、反応混合物に添加した求核剤の当初の量に基づいて、約0〜50%、好ましくは約0.5〜30%、さらに好ましくは約5〜20%の範囲のある量の未反応残留求核剤又はその酸化誘導体を有するであろう。
【0048】
本発明の別の態様では、イオノマーは、少なくとも2.0、好ましくは2.0〜100.0、より好ましくは2.5〜100.0、さらにより好ましくは2.5〜20.0、なおさらにより好ましくは2.7〜20.0の、未反応残留求核剤又はその酸化誘導体に対する、反応
した求核剤の割合を示す。
【0049】
本発明の方法にしたがって調製されたイオノマーは改善された色特性を有し、それはそのイオノマーをフィルム及びコーティングに適したものにする。ASTM E313において定義されている黄色度は、ある物が好ましい白色から黄色にむかってどのくらい離れているかの尺度である。本発明のある態様によれば、ポリマーの黄色度は、ASTM E313に準拠して測定して、約1〜100、好ましくは約10〜70、より好ましくは約20〜60、なおより好ましくは約20〜41である。
【0050】
特定の理論に束縛されることなしに、黄色度は最終ポリマー中のイソプレン量によって示されるポリマー分解と少なくとも部分的に関連がありうると考えられる。イオノマーの分解は、ポリマー鎖のイソブテンセグメントとは対照的に1,4−イソプレンマルチオレフィンセグメントにおいて最も起こりやすい。1,4−イソプレン量の低下は、したがって、イオノマーの分解を示している。これは多くの理由により好ましくなく、中でも注目すべきは、加硫のための反応部位の減少が、より低い状態の硬化をもたらし、その結果、より劣る物理的及び動力学的特性をもつ物品をもたらすことである。
【0051】
そのような分解は、長時間、昇温した温度への曝露とともに進行すると考えられる。そのような条件は、しかしながら、イオノマーを形成させるために用いられた求核剤の高い転化を確実にするために一般的には必要とされる。
【0052】
したがって、本発明による混合及び温度のやり方が高い転化率と併せて許容できる程度のポリマー分解に保つという両方を可能にすることは驚くべきことである。
【0053】
本発明のある態様では、イオノマーの最終的なマルチオレフィン含有量は、イオノマーを形成するために反応させたハロゲン化コポリマーのマルチオレフィン含有量に基づいて、約50〜100%、好ましくは約60〜99%、より好ましくは約75〜99%である。
【0054】
別の態様では、イオノマーは0.5モル%以上のマルチオレフィン含有量を有している。
【0055】
別の態様では、イオノマーは0.5モル%〜8.0モル%、好ましくは0.5モル%〜2.0モル%のマルチオレフィン含有量を有する。
【0056】
追加の成分を、上述した工程時にハロゲン化コポリマー及び求核剤と混合してイオノマー複合材料を形成することができる。これらの成分は、ゴム工業で一般的である1種以上の他のポリマー、エラストマー、プラスチック、フィラー、抗酸化剤、安定化剤、オイル、粘着性付与剤、ゲル、レジン、加工助剤、促進剤、硬化剤又は加硫剤、硬化遅延剤、及びその他の成分を含んでいてよい。混合されたハロゲン化コポリマー及び求核剤は、イオノマー複合材料の全質量の約1〜100質量%、約5〜99質量%、約10〜90質量%、又は約15〜80質量%の量で存在することができる。
【0057】
上述したイオノマーは、硬化した又は未硬化のコンパウンドを形成するための二次的工程において用いることができる。いずれの場合も、コンパウンドは、ゴム工業で一般的なその他のポリマー、エラストマー、プラスチック、フィラー、抗酸化剤、安定化剤、オイル、粘着性付与剤、ゲル、レジン、加工助剤、促進剤、硬化遅延剤、及びその他の成分を含むことができる。イオノマーを硬化したコンパウンドにおいて用いる場合は、硬化剤又は加硫剤を添加することができる。
【0058】
共硬化可能なポリマーは、例えば、1つ以上の不飽和単位を含むエラストマーを含む。その1つ以上の不飽和単位は好ましくは炭素−炭素二重結合、例えば、オレフィン及び/又はジエン中の炭素−炭素二重結合である。ジエンエラストマーが特に注目される。共硬化可能なエラストマーは、ブチルゴムエラストマー、非ブチルゴムエラストマー、又はそれらの混合物であってよい。ブチルゴムエラストマーのいくつかの例には、ブチルゴム(IIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、及びそれらの混合物が含まれる。具体的な非ブチルゴムエラストマーのいくつかの例には、以下のものが含まれる:イソブチレン−メチルスチレン(BIMS)ゴム(商品名Exxpro
TMで市販されている)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ブタジエンゴム(BR)、溶液スチレンブタジエンゴム(sSBR)、エマルションスチレンブタジエンゴム(eSBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ポリウレタン(PU)、ポリイソプレンゴム、ポリアクリル又はポリアクリレート(ACM)、クロロプレン(CR)、クロロスルホニルポリエチレン又はクロロスルホネート化ポリエチレン(CSM)、エチレンアクリル(AEM)、熱可塑性ポリエステルウレタン(AU)、熱可塑性ポリエーテルウレタン(EU)、エピクロロヒドリン(ECO)、フルオロエチレンプロピレン−パーフルオロアルコキシ(FEP又はPFA)、テトラフルオロエチレン/プロピレン(FEPM又はTFE/P)、パーフルオロエラストマー(FFKM/FFPM)、フルオロエラストマー又はフルオロカーボン(FKM/FPM)、フルオロシリコーン(FVMQ)、シリコーン(VMQ/PVMQ)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)ゴム、エチレンアクリレートゴム、ポリウレタンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリノルボルネンゴム(PNB)、ポリサルファイドゴム(TR)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン(SB)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン(SIBS)、アタクティックポリプロピレン(APP)、アイソタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、アモルファスポリアルファオレフィン(APAO)、又はポリエチレン(PE)、エチルビニルアセテート(EVA)など、及びそれらの混合物。
【0059】
フィラー(充填剤)は非鉱物フィラー、鉱物フィラー、又はそれらの混合物であることができる。非鉱物フィラーには、例えば、カーボンブラック、ゴムゲル、及びそれらの混合物が含まれうる。好適なカーボンブラックは、好ましくは、ランプブラック(油煙)、ファーネスブラック、又はガスブラック工程によって調製される。カーボンブラックは、好ましくは、約20〜200m
2/gのBET比表面積を有する。カーボンブラックのいくつかの具体例は、SAF、ISAF、HAF、FEF、及びGPFカーボンブラックである。ゴムゲルは、好ましくは、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、又はポリクロロプレンに基づくものである。好適な鉱物フィラーには、例えば、シリカ、シリケート、クレー、ベントナイト、バーミキュライト、ノントロナイト、バイデライト、フォルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、ラポナイト、サウコナイト、マガダイト、ケニアイト、レディカイト、石膏、アルミナ、タルク、ガラス、金属酸化物(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム)、金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛)、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、又はそれらの混合物が含まれる。鉱物フィラーとして用いるのに好適な乾燥したアモルファスシリカ粒子は、約1〜100ミクロン、又は約10〜50ミクロン、又は約10〜25ミクロンの範囲の平均凝集粒径を有していることができる。好適なアモルファス乾燥シリカは、例えば、DIN(ドイツ工業規格)66131に準拠して測定して、約50〜450平方メートル/gのBET表面積を有しうる。DIN53601に準拠して測定して、DBP吸収は、100グラムのシリカ当たり約150〜400グラムであることができる。DIN ISO 787/11に準拠して測定して、乾燥損失は約0〜10質量%であることができる。好適なシリカフィラーは、HiSil(登録商標)210、HiSil(登録商標)233、及びHiSil(登録商標)243の名称で市販されており、PPGインダストリーズ社から入手できる。同様に好ましいのは、BayerAGから市販されているVulkasil(登録商標)S及びVulkasil(登録商標)Nである。高アスペクト比のフィラーには、少なくとも1:3のアスペクト比をもつクレー、タルク、マイカなどが含まれうる。フィラーは、板状又は針状構造をもつ非円形または非等軸物質を含むことができる。アスペクト比は、プレートの平均厚さに対する、プレートの面と同じ面積の円の平均直径の比として定義される。針状及びファイバー形状のフィラーに対するアスペクト比は、直径に対する長さの比である。高アスペクト比のフィラーは、少なくとも1:5、又は少なくとも1:7、又は1:7〜1:200の範囲内のアスペクト比を有しうる。高アスペクト比のフィラーは、例えば、0.001〜100ミクロン、又は0.005〜50ミクロン、又は0.01〜10ミクロンの範囲の平均粒径を有することができる。好適な高アスペクト比のフィラーは、DIN(ドイツ工業規格)66131に準拠して測定して、5〜200m
2/gのBET表面積を有しうる。高アスペクト比フィラーは、ナノクレー、例えば、有機変性したナノクレーを含むことができる。ナノクレーの例には、天然の粉末化したスメクタイトクレー(例えば、ナトリウム又はカルシウムモンモリロナイト)又は合成クレー(例えば、ハイドロタルサイト又はラポナイト)が含まれる。一つの態様では、高アスペクトフィラーは、有機変性したモンモリロナイトナノクレーを含みうる。クレーは、当技術分野で知られているように、オニウムイオンのために遷移金属が置換することによって変性されて、クレーに界面活性機能を付与し、これが一般的に疎水性であるポリマー環境中にクレーを分散することに役立ち、それは例えばリンに基づく(例えば、ホスホニウムイオン)か又は窒素に基づき(例えば、アンモニウムイオン)、2〜20の炭素原子を有する官能基を含むオニウムイオンである。クレーは、例えば、ナノメートルスケールの粒径、例えば、体積基準で25μm未満の粒径で提供されうる。粒径は、1〜50μm、又は1〜30μm、又は2〜20μmの範囲であることができる。シリカに加えて、ナノクレーはまた、いくらかの割合のアルミナを含むこともできる。例えば、ナノクレーは、0.1〜10質量%のアルミナ、又は0.5〜5質量%のアルミナ、又は1〜3質量%のアルミナを含んでいてもよい。高アスペクト比鉱物フィラーとして市販されている有機変性ナノクレーの例には、例えば、Cliosite(登録商標)clay 10A、20A、6A、15A、30B、又は25Aが含まれる。
【0060】
イオノマーは、ブレンド物中に、約1〜99phr、又は約1〜90phr、又は約5〜75phr、又は50phr未満、又は約1〜50phr、又は約1phr〜約50phr未満、又は約10〜50phr、又は約5〜30phr、又は約15〜30phrの量で存在してよい。フィラーは、ブレンド物中に、約1〜100phr、又は約3〜80phr、又は約5〜60phr、又は約5〜30phr、又は約5〜15phrの量で存在してよい。
【0061】
成分は、従来の配合法(コンパウンディング法)を用いて一緒にコンパウンドすることができる。好適なコンパウンディング法は、例えば、成分を一緒に、例えば内部ミキサー(例えば、バンバリーミキサー)、小型内部ミキサー(例えば、ハーケ又はブラベンダーミキサー)、又は2本ロールミルミキサーを使用して混合する工程を含む。押出機もまた良好な混合をもたらし、より短い混合時間を可能にする。混合を2以上の段階で行うことができ、混合は、異なる複数の装置、例えば、内部ミキサーでの1つの段階、及び押出機での1つの段階で行うことができる。コンパウンド技術についてのさらなる情報のためには、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol. 4, p. 66以下(Compounding)を参照されたい。
【0062】
用いるのに適した硬化システムの選択は特に制限されず、当業者の視野の範囲内である。特定の態様では、硬化システムは、硫黄に基づくもの、パーオキシドに基づくもの、レジンに基づくもの、又は紫外(UV)光に基づくものであってよい。
【0063】
硫黄系の硬化システムは以下のものを含むことができる:(i) 金属酸化物、(ii) 元素硫黄、及び(iii) 少なくとも1つの硫黄系促進剤。硫黄硬化システム中の成分として金属酸化物を用いることは、当技術分野で周知である。好適な金属酸化物は酸化亜鉛であり、これは約1〜約10phrの量で用いてよい。別の態様では、酸化亜鉛は、約2〜約5phrの量で用いることができる。元素硫黄(成分(ii))は、典型的には、約0.2〜約2phrの量で用いられる。好適な硫黄系促進剤(成分(iii))は、約0.5〜約3phrの量で用いることができる。有用な硫黄系促進剤の非限定的な例には、チウラムスルフィド類(例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD))、チオカルバメート類(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDC)、及びチアジル又はベンゾチアジル化合物(例えば、メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTS))が含まれる。特に注目される硫黄系促進剤は、メルカプトベンゾチアジルジスルフィドである。
【0064】
パーオキシド系の硬化システムも適していることができ、特に、約0.2モル%を超える残存マルチオレフィン含有量を含むイオノマーに適している。パーオキシド系硬化システムは、パーオキシド硬化剤、例えば、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,2′-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(Vulcup(登録商標)40KE)、ベンゾイルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、(2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンなどを含むことができる。1つのそのようなパーオキシド硬化剤はジクミルパーオキシドを含み、DiCup 40Cの名称で市販されている。パーオキシド硬化剤は、約0.2〜7phr、又は約1〜6phr、又は約4phrの量で用いてよい。パーオキシド硬化共薬剤を用いることもできる。好適なパーオキシド硬化共薬剤には、例えば、DuPont社からDIAK 7の名称で市販されているトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、DuPont社又はDow社からのHVA−2として知られるN,N′-m-フェニレンジマレイミド、トリアリルシアヌレート(TAC)、又はRicon D 153(Ricon Resin社によって供給されている)として知られる液状ポリブタジエンが含まれる。パーオキシド硬化共薬剤は、パーオキシド硬化剤の量に相当する量又はそれ未満で用いてよい。パーオキシドで硬化された物品の状態は、増大した量の不飽和、例えば、少なくとも0.5モル%のマルチオレフィン含有量を含むブチルポリマーで向上される。
【0065】
ブレンド物は、レジン硬化システムと、必要であればそのレジン硬化を活性化させるための促進剤とによって硬化されてもよい。好適なレジンには、フェノールレジン、アルキルフェノールレジン、アルキル化フェノール類、ハロゲン化アルキルフェノールレジン、及びそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの場合には、硬化は、硬化システムの存在下で、好適な硬化温度にブレンド物を加熱することによって達成しうる。硬化温度は、約80℃〜約250℃、又は100℃〜約200℃、又は約120℃〜約180℃であってよい。
【0066】
共硬化性エラストマーへの添加剤としてイオノマーを添加することは、欧州特許出願番号13183546.4号に記載のように、未硬化のブレンド物のグリーン強度、曲げ疲労比、接着、引き裂き強度、制振、静止摩擦、及び亀裂成長抵抗性の1つ以上における改善をもたらしうる。
【0067】
イオノマー複合体は、硬化前に所望の物品に成形することができる。硬化したエラストマーコンパウンドを含む物品には、例えば、ベルト、ホース、靴底、ガスケット、O−リング、ワイヤ/ケーブル、膜、ローラー、ブラダ(例えば、硬化ブラダ)、タイヤのインナーライナー、タイヤのトレッド、ショックアブソーバー、機械のマウンティング、バルーン、ボール、ゴルフボール、保護衣、医療用チューブ、貯蔵タンクのライニング、電気絶縁材料、ベアリング、薬品用ストッパー、接着剤、容器、例えばボトル、トート、貯蔵タンクなど;容器の閉鎖部材又は蓋;シール又はシーラント、例えば、ガスケット又はコーキング材;物質を取り扱う装置、例えば、オーガ(auger)又はコンベアベルト;冷却塔;金属加工装置、あるいは金属加工用液体と接触する任意の装置;エンジン部品、例えば、燃料ライン、燃料フィルター、燃料貯蔵タンク、ガスケット、シールなど;液体ろ過のための膜、又はタンクシーリング、が含まれる。イオノマーを物品又はコーティングに用いることができる追加の例には、以下のものが含まれるがそれらに限定されない:電気製品、ベビー用品、浴室の作り付け備品、浴室の安全用物品、床材、食品貯蔵用品、ガーデン用品、キッチンの作り付け備品、キッチン用品、オフィス用品、ペット用品、シーラント及びグラウト材、温泉(スパ)用品、水のろ過及び貯蔵装置、食品調理用表面(food preparation surface)及び装置、ショッピングカート、表面施工品、貯蔵容器、履物、保護衣、スポーツ用品、カート、歯科用装置、ドアノブ、衣類、電話、おもちゃ、病院でのカテーテルを挿入した液体、容器及びパイプの表面、コーティング、食品加工、生物医学装置、フィルター、添加物、コンピュータ、船殻、シャワー用壁、生物付着の問題を最小限に抑えるためのチューブ、ペースメーカー、インプラント、傷の包帯(ドレッシング)、医療用布地、製氷機、ウォータークーラー、フルーツジュースディスペンサー、ソフトドリンク用機械、パイプ、貯蔵容器、計測システム、バルブ、フィッティング、アタッチメント、フィルターハウジング、ライニング、及びバリアコーティング、が含まれる。
【実施例】
【0068】
材料及び試薬:
BB2030(LANXESS社)、RB301(LANXESS社)、Bayprene 210(LANXESS社)、酸化亜鉛(St. Lawrence Chemical社)、カーボンブラック(Cabot社)、トリフェニルホスフィン(Alfa Aesar社)、トリフェニルホスフィンオキシド(Sigma Aldrich社)、ステアリン酸(HM Royal社)、WBC−41P(5phrの酸化亜鉛、6.4phrのLANXESS社Butyl 301、10phrのSP1045レジン, Rhein Chemie社)、ひまし油(Alfa Aesar社)は全てそれらの各供給会社から入手したまま使用した。
【0069】
コンパウンドの試験装置及び手順:
【表1】
【0070】
黄色度(イエローインデックス)については、サンプルを2mmの厚さである6インチ×6インチのシートに圧縮成形し、白色タイルの上に置き、5回の測定の平均をとった。
【0071】
例1:米国特許第7,662,480号明細書に記載された比較例:
48 g(100 phr)のLANXESS社BB2030(登録商標)及び4.7 g (9.7 phr, 臭化アリル含有量に基づいて3モル当量)のトリフェニルホスフィンを、100℃及び60 rpmのローター速度で運転しているブラベンダー内部ミキサー(容量75 g)に入れた。合計60分間、混合を行った。得られた特性を表2に示し、最も注目されるのは、残留/未結合TPPとその酸化された誘導体であるトリフェニルホスフィンオキシド(TPP=O)の顕著な量である。
【0072】
例2:国際公開第2012/083419号の明細書に記載された比較例:
LANXESS社BB2030(登録商標)(100 phr)を、TPP(4.3 phr)を添加する前に短時間、単独で混合するようにし、TPP添加後10分間撹拌した。得られた特性を表2に示し、最も注目されるのは、残留/未結合TPP及びその酸化誘導体であるトリフェニルホスフィンオキシド(TPP=O)が、65%転化率を示したことである。
【0073】
例3:本発明の例
LANXESS社のBB2030(登録商標)(100 phr)をバンバリーミキサーに入れ、次にトリフェニルホスフィン(3 phr, 臭化アリル含有量に基づいて0.6モル当量)を添加し、6分間撹拌した。混合物を次に100℃に加熱した単軸スクリュー押出機に通した。得られた特性を表2に示す。例3を例1及び例2と比較すると、例3はより少ない量の残留TPP及びTPP=Oを示している。さらに、例2及び例3は同程度のイオン含量を示しており、これは例3において、概要を説明した方法の改善された効率(84%転化率)を示している。
【0074】
【表2】
【0075】
例4:米国特許出願公開第2013/0217833号公報に記載されている比較例:
米国特許出願公開第2013/0217833号公報の例2に記載されたイオノマーの形成は、表2に示されている得られた特性をもつイオノマーをもたらした。残留する未結合TPP/TPP=Oに加えて、1,4-イソプレン(これはポリマー分解を示している)の増大及び黄色度の顕著な増大が、例3と比較して見られる。
【0076】
例5〜7:
加硫したコンパウンドへの残留TPP/TPP=Oの悪影響を実証するために、TPP(例6)及びTPP=O(例7)を、表3に概略を示した伝統的なブチル系レジン硬化配合物(例5)に組み込んだ。表4をみると、TPP及びTPP=Oの添加は両方とも、硬化がより劣った状態、及びそれによってより劣るコンパウンド特性をもたらしており、これは残留TPP/TPP=Oの少ない量の利点を目立たせている。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
本明細書で引用した全ての文献は、参照により本明細書に援用する。
【0080】
新規な特徴が、上記記載を検査したときに当業者に明らかになるであろう。しかし、特許請求の範囲の記載は上記態様によって限定されるべきでなく、特許請求の範囲の文言及び明細書全体と整合する最も広い解釈を与えられるべきであることが理解されなければならない。